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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240410BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240410BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20240410BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20240410BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20240410BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240410BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240410BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240410BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/22
C08K5/06
C08K7/18
C08L33/12
C08L71/02
G02F1/13357
G02B1/04
G02B5/02 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021536930
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027682
(87)【国際公開番号】W WO2021020148
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019139942
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰史
(72)【発明者】
【氏名】楠本 信彦
(72)【発明者】
【氏名】入江 康行
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113422(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/125690(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/097901(WO,A1)
【文献】特開2013-197024(JP,A)
【文献】特開2012-134022(JP,A)
【文献】特開2020-132666(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172243(WO,A1)
【文献】特開2020-117705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
G02F 1/13357
G02B 1/04
G02B 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂またはポリメチルメタクリレート樹脂(A)100質量部に対し、平均粒径が500~2500nmである酸化チタンまたは酸化亜鉛の球状微粒子(B)を0.0001~0.09質量部、下記一般式で表される芳香族化合物(C)を0.001~1質量部またはポリアルキレングリコール(D)を0.001~1.0質量部含有し、球状微粒子(B)とポリカーボネート樹脂またはポリメチルメタクリレート樹脂(A)との屈折率差が0.3以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【化1】
式中、Yは窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、或いは水素原子である。kは1または2の整数を表し、kが2の場合、Y同一であってもよく異なるものであってもよい
【請求項2】
請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
【請求項3】
面発光体である請求項に記載の成形体。
【請求項4】
厚さ3mmの成形体の側面に沿って配置されたLED光源から入光した際、成形体端面の入光部近傍の測定点と、成形体端面から50mm遠ざかった点で測定して得られた三刺激値(XYZ)の混色比xの差Δxの絶対値が0.01未満である請求項またはに記載の成形体。
【請求項5】
厚さ3mmの成形体の側面に沿って配置されたLED光源から入光した際、成形体端面の入光部近傍の測定点と、成形体端面から50mm遠ざかった点で測定して得られた三刺激値(XYZ)の混色比yの差Δyの絶対値が0.01未満である請求項またはに記載の成形体。
【請求項6】
厚さ3mmで測定した際のヘイズが0.5~20%である請求項またはに記載の成形体。
【請求項7】
エッジライト方式用成形体である請求項のいずれかに記載の成形体。
【請求項8】
映像投影用成形体である請求項のいずれかに記載の成形体。
【請求項9】
導光部材である請求項のいずれかに記載の成形体。
【請求項10】
ディスプレイ用部材である請求項のいずれかに記載の成形体。
【請求項11】
自動車のランプ機器用部材である請求項のいずれかに記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び成形体に関し、詳しくは、入射した光の散乱波長選択性をなくし、面発光色相衰退を低減した成形体を可能とする熱可塑性樹脂及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光拡散性が要求される用途に、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂のような透明熱可塑性樹脂に有機物や無機物の光拡散剤を分散させた材料が広く用いられている。
【0003】
光拡散性を有するポリカーボネート樹脂組成物としては、例えば特許文献1-2等に記載されているが、得られる成形品の光線透過率はいずれも低いものであった。また、特許文献3にはポリメチルメタクリレート等の透明樹脂に酸化物微粒子を配合してなる導光板の記載があるが、光透過性が低下しやすく、充分な面発光性は得難い欠点がある。
【0004】
そして、近年は、液晶表示装置に用いられるバックライト用面光源体としては、ポリメチルメタクリレート樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂からなる光拡散シートや導光板の側面にLED光源を取り付けたエッジライト方式が主流となっている。
【0005】
光拡散シートや導光板の光拡散剤としては、例えば粒径が200~300nmの酸化チタン等が用いられているが、このような粒径の光拡散剤は可視光、特に粒径の2倍である400~600nmの可視光を強く散乱する性質があり、エッジライト光源して白色LEDを使用した場合は、青色付近が先に散乱し、光源から遠くなると黄色以降の波長が残り、色相が減衰するという問題がある。
近年、LEDを用いた照明器具、各種ディスプレイ、液晶表示装置に対する要求性能は益々高度化しており、上記したような、入射光の散乱波長選択性をなくし、面発光色相衰退を低減した樹脂組成物が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-143950号公報
【文献】特開平6-32973号公報
【文献】特開平5-341284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的(課題)は、入射光の散乱波長選択性をなくし、面発光色相衰退を低減した熱可塑性樹脂組成物を提供することにあり、また、これを用いた、面発光色相衰退がなく優れた面発光色相を発現する成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、500~2500nmという、従来より大きな特定の平均粒径を有する球状微粒子を特定の量で含有した熱可塑性樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下の熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
【0009】
[1]透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、平均粒径が500~2500nmである球状微粒子(B)を0.0001~0.09質量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]透明熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂である上記[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]球状微粒子(B)と透明熱可塑性樹脂(A)との屈折率差が0.3以上である上記[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]球状微粒子(B)が酸化チタン、酸化亜鉛または酸化ジルコニウムである上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
[6]面発光体である上記[5]に記載の成型体。
[7]厚さ3mmの成形体の側面に沿って配置されたLED光源から入光した際、成形体端面の入光部近傍の測定点と、成形体端面から50mm遠ざかった点で測定して得られた三刺激値(XYZ)の混色比xの差Δxの絶対値が0.01未満である上記[5]または[6]に記載の成形体。
[8]厚さ3mmの成形体の側面に沿って配置されたLED光源から入光した際、成形体端面の入光部近傍の測定点と、成形体端面から50mm遠ざかった点で測定して得られた三刺激値(XYZ)の混色比yの差Δyの絶対値が0.01未満である上記[5]または[6]に記載の成形体。
[9]厚さ3mmで測定した際のヘイズが0.5~20%である上記[5]または[6]に記載の成形体。
[10]エッジライト方式用成形体である上記[5]~[9]のいずれかに記載の成形体。
[11]映像投影用成形体である上記[5]~[9]のいずれかに記載の成形体。
[12]導光部材である上記[5]~[9]のいずれかに記載の成形体。
[13]ディスプレイ用部材である上記[5]~[9]のいずれかに記載の成形体。
[14]自動車のランプ機器用部材である上記[5]~[9]のいずれかに記載の成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、入射光の散乱波長選択性が少なく、面発光色相衰退を低減でき、面発光色相衰退がなく優れた面発光色相を発現する成形体、面発光体を提供することができる。そして、得られた成形体は、特にエッジライト用成形体、映像投影用成形体あるいは導光部材、照明機器やディスプレイ装置用の部材等として、特に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例2と比較例5で得られた成形品の、光入射時の面発光の状態を示す写真である。
図2】実施例及び比較例において、平板状プレートの三刺激値(XYZ)の混色比を測定した測定点を示すための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、平均粒径が500~2500nmである球状微粒子(B)を0.0001~0.09質量部含有することを特徴とする。
【0014】
[透明熱可塑性樹脂(A)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる透明熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の非晶性ポリエステル樹脂;ポリスチレン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、又は2種類以上のこれらの熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを挙げることができる。
なかでも、透明性の点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂を使用することが好ましく、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0015】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂は、その種類に制限はない。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:-[-O-X-O-C(=O)-]-で表わされる、炭酸結合を有する基本構造の重合体である。なお、式中、Xは、一般には炭化水素基であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0016】
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0017】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0018】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0019】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0020】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0021】
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールAが好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0022】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-2-プロピルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10-ジオール等のアルカンジオール類;
【0023】
シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4-テトラメチル-シクロブタン-1,3-ジオール等のシクロアルカンジオール類;
【0024】
エチレングリコール、2,2’-オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
【0025】
1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6-ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’-ビフェニルジメタノール、4,4’-ビフェニルジエタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
【0026】
1,2-エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2-エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,4-エポキシシクロヘキサン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシノルボルナン、1,3-エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
【0027】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0028】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0029】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0030】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
【0031】
<界面重合法>
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
【0032】
ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物のなかでもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0033】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0034】
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10~12にコントロールするために、5~10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10~12、好ましくは10~11になる様にコントロールするために、ジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、なかでも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、なかでも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0035】
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’-ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’-ジメチルアニリン、N,N’-ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0036】
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、なかでも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;0-オキシン安息香酸、2-メチル-6-ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0037】
分子量調節剤の使用量は、原料であるジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、得られたポリカーボネート樹脂を熱可塑性樹脂組成物に使用した際に、熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
【0038】
重合反応の際に、反応基質(原料)、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)~数時間(例えば、6時間)である。
【0039】
<溶融エステル交換法>
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物、カーボネートエステルは、上述したものを用いるが、用いるカーボネートエステルとしては、なかでもジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、カーボネートエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、カーボネートエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0040】
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
【0041】
カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、カーボネートエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0042】
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0043】
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100~320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質(原料)、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、なかでも、ポリカーボネート樹脂及び樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0044】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
【0045】
ポリカーボネート樹脂は、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することも好ましい。
構造粘性指数Nとは、溶融体の流動特性を評価する指標である。通常、ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、数式:γ=a・σにより表示することができる。
なお、式中、γ:剪断速度、a:定数、σ:応力、N:構造粘性指数を表す。
【0046】
上述の数式において、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。つまり、構造粘性指数Nの大小により溶融体の流動特性が評価される。一般に、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂は、低剪断領域における溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂を別のポリカーボネート樹脂と混合した場合、得られる樹脂組成物の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。
【0047】
構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有する場合、構造粘性指数Nは好ましくは1.2以上、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.28以上であり、また、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.7以下のポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。このように構造粘性指数Nが高いポリカーボネート樹脂を含有させることにより、本発明の樹脂組成物の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。また、構造粘性指数Nを前記範囲の上限値以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の成形性を良好な範囲に維持できる。
【0048】
なお、構造粘性指数Nは、例えば特開2005-232442号公報に記載されているように、上述の式を誘導した、Logη=〔(1-N)/N〕×Logγ+Cによって表示することも可能である。なお、前記式中、N:構造粘性指数、γ:剪断速度、C:定数、η:見かけの粘度を表す。この式から分かるように、粘度挙動が大きく異なる低剪断領域におけるγとηからN値を評価することもできる。例えば、γ=12.16sec-1及びγ=24.32sec-1でのηからN値を決定することができる。
【0049】
本発明の樹脂組成物において使用されるポリカーボネート樹脂が、上述した構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を含む場合は、ポリカーボネート樹脂中、20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限に制限はなく、通常100質量%以下であるが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。
【0050】
上述の構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を製造するには、上述のポリカーボネート樹脂の製造方法に従って製造することで構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を得ることができるが、好ましくは、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂(以下、適宜「分岐ポリカーボネート樹脂」という。)を製造するようにすると、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂が得られやすく、好ましい。分岐ポリカーボネート樹脂は構造粘性指数Nが高くなる傾向があるためである。
【0051】
分岐ポリカーボネート樹脂の製造方法の例を挙げると、特開平8-259687号公報、特開平8-245782号公報等に記載の方法が挙げられる。これらの文献に記載の方法では、溶融エステル交換法によりジヒドロキシ化合物と炭酸のジエステルとを反応させる際、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を使用することなく、構造粘性指数が高く、加水分解安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0052】
また、分岐ポリカーボネート樹脂を製造する他の方法として、上述のポリカーボネート樹脂の原料である、ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物の他に、三官能以上の多官能性化合物(分岐剤)を用い、界面重合法又は溶融エステル交換法にて、これらを共重合する方法が挙げられる。
三官能以上の多官能性化合物としては、例えば、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン(フロログルシン)、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-3、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物類;3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインド-ル(即ち、イサチンビスフェノール)、5-クロロイサチン、5,7-ジクロロイサチン、5-ブロムイサチン等が挙げられる。なかでも1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0053】
多官能性化合物は、前記ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用することができる。多官能性芳香族化合物の使用量は、原料の全ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上であり、また、通常10モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
なお、多官能性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0054】
分岐ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、上述した方法のなかでも、上述の溶融エステル交換法によって分岐ポリカーボネート樹脂を製造する製造方法が特に好ましい。比較的安価で、工業的入手のしやすい原料により製造できるためである。このため、ポリカーボネート樹脂も、溶融エステル交換法により製造することが好ましい。
なお、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂は、単独の樹脂を用いてもよく、異なる樹脂2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0055】
<ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項>
ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは14000以上、より好ましくは16000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0056】
ポリカーボネート樹脂は、高分子量のポリカーボネート樹脂、例えば好ましくは粘度平均分子量[Mv]が、50000~95000のポリカーボネート樹脂を含有することも好ましい。高分子量ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、より好ましくは55000以上であり、さらに好ましくは60000以上、中でも61000以上、特には62000以上が好ましく、また、より好ましくは90000以下、さらに好ましくは85000以下、中でも80000以下、とりわけ75000以下、特には70000以下が好ましい。
【0057】
高分子量ポリカーボネート樹脂を含む場合は、ポリカーボネート樹脂中、5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0058】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、
η=1.23×10-4Mv0.83 から算出される値を意味する。
また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【0059】
【数1】
【0060】
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。これにより本発明の樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明の樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0061】
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0062】
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂は、メチルメタクリレート系の樹脂が好ましく、メチルメタクリレートの構成単位のモノマー量が全構成単位の総モノマー量に対して80モル%以上、好ましくは90モル%以上であることが好ましい。アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと他のメチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレート等との共重合体であることも好ましい。
【0063】
また、アクリル樹脂は、質量平均分子量が20000~200000が好ましく、50000~150000であることが好ましい。
アクリル樹脂の質量平均分子量は、標準試料として標準ポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0064】
アクリル樹脂の製造方法は一般的に乳化重合法、懸濁重合法、連続重合法に大別されるが、本発明に使用されるアクリル樹脂は連続重合法により製造されたアクリル樹脂が好ましい。更に、連続製造法には連続塊状重合法と連続溶液重合法とに分けることができるが、本発明においてはいずれの製法で得られたアクリル樹脂も用いることができる。
【0065】
アクリル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0066】
前記したように、透明熱可塑性樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂以外のその他の、前記した熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0067】
[球状微粒子(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、球状微粒子(B)を含有する。そして、平均粒径が500~2500nmの球状微粒子(B)を、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.0001~0.09質量部の量で含有する。
【0068】
従来から、熱可塑性樹脂に酸化チタン等の拡散微粒子を配合した面発光体があるが、通常、実際に使用されているものの粒径は光の波長に対して相対的に小さいために、入射光の散乱メカニズムは均一なミー散乱となり、光源から遠ざかるにつれて、色相が変化し、黄色みを帯びるようになる。これに対して、上記した大きな粒径の球状微粒子(B)は、入射した光の散乱波長選択性がなくなり、面発光色相衰退を低減した良好な面発光色相を可能とする。
【0069】
図1は、実施例2と比較例5で得られた成形品の光入射時の面発光の状態を示す写真である。図1中、左側にあるのが、平均粒径が200nmの光拡散剤(酸化チタン)を配合した比較例5の成形体であり、成形体の下部には白色LEDのエッジライト光源(不図示)が取り付けられており、光源から遠ざかるに従って黄色味が増し、エッジライトから反対側の上端部近傍に至ると、かなりの黄色になっていることが分かる。
一方、図1の右側にあるのが、平均粒径が1000nmの光拡散剤(酸化チタン)を配合した実施例2の成形体であり、エッジライト近傍から、反対側の上端に至るまで面発光は均一で面発光の減衰が少ないことが分かる。
【0070】
球状微粒子(B)は、上記のとおり、平均粒径が500~2500nmであり、好ましくは600nm以上、より好ましくは700nm以上、さらに好ましくは800nm以上であり、好ましくは2300nm以下、より好ましくは2200nm以下、さらに好ましくは2000nm以下である。平均粒径が2500nmを超えると、非点灯時に異物感が見られるようになり、透明といい難くなる。
【0071】
ここで、平均粒径は、レーザ回折散乱方式により測定された中央値(D50)である。
【0072】
なお、球状微粒子(B)の球状とは、真球状であってもよく、断面楕円状等であってもよく、卵形などを含む略球状を意味し、具体的にはアスペクト比(長径と短径の比)が通常1.3以下であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
【0073】
球状微粒子(B)は、透明熱可塑性樹脂(A)との屈折率の差(本明細書では「差」とは両者の差の絶対値のことをいう)が0.3以上であるように選択して組み合わせて使用することが好ましい。屈折率の差は、より好ましくは0.4以上、さらには0.8以上、特には1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.6以下、なかでも1.4以下、特には1.3以下であることが好ましい。屈折率の差がかかる範囲内であれば、面発光色相衰退の低減効果をさらに向上させることができる。
【0074】
球状微粒子(B)としては、無機系粒子が好ましく、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タンタル等を用いることができる。これらの中では、二酸化チタン、酸化亜鉛または酸化ジルコニウムが好ましく、特には二酸化チタンが好ましい。
【0075】
球状微粒子(B)の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.0001~0.09質量部である。含有量が0.0001質量部未満の場合は、面発光輝度が不十分で、本発明の良好な面発光とならず、0.09質量部を超える場合は、透明性の低下及び光源から離れた箇所の面発光輝度が低下し、本発明の特徴的な面発光となりにくい。
【0076】
[芳香族化合物(C)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される芳香族化合物(C)を含有することが好ましい。
【化1】
【0077】
(一般式(1)中、Yは窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基、或いは水素原子である。
Yが水素原子の場合、Xはアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、Yが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基の場合、Xは、窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基であり、この場合において、XとYは同一であっても異なるものでもあってよい。
gは1又は2の整数を表す。
nは0~5の整数を表し、nが2以上の場合、n個のXは同一であってもよく異なるものであってもよい。
kは1~4の整数を表し、kが2以上の場合、Yが該有機基である2個以上の-(CHOY基は同一であってもよく異なるものであってもよい。ただし、n+kは6以下である。)
【0078】
本発明のペレットが芳香族化合物(C)を含むことで、さらに優れた色相の改善効果が得られる。
【0079】
一般式(1)において、k=2でCHOY基を2個有する場合、CHOY基の置換位置は、1,4-位が好ましい。
【0080】
一般式(1)におけるgは1で、kは1であることが色相の改善効果の観点から好ましい。従って、一般式(1)で表される芳香族化合物(C)は、下記一般式(1A)で表されるベンジルオキシ系化合物又はベンジルアルコール系化合物であることが好ましい。
【0081】
【化2】
(一般式(1A)中、X、Y、nは前記一般式(1)におけると同義である。)
【0082】
一般式(1),(1A)において、X,Yが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基の場合、当該有機基は、着色の原因となる窒素、硫黄、ハロゲンのいずれの元素も含まないものであればよく、特に制限はないが、通常、炭素原子と水素原子、或いは炭素原子と水素原子と酸素原子とで構成される置換基が挙げられ、具体的には、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、これらの基に水酸基やエーテル基、その他の基が導入された基等が挙げられる。
【0083】
Yが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基の場合、Xとしては、特にアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましい。
Yが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基の場合も、水素原子の場合も、Xのアリール基としてはフェニル基が好ましい。該フェニル基は置換基としてアルキル基を有していてもよい。該アルキル基としては、Xのアルキル基として以下に記載するものが挙げられる。
【0084】
Yが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基の場合も、水素原子の場合も、Xのアルキル基としては炭素数1~10のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。Xのアルキル基は直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であっても、環状アルキル基であってもよいが、好ましくは直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基である。
【0085】
一般式(1),(1A)中の置換基Xの数を表すnは0~4である。
Yが水素原子の場合、nは好ましくは0~3、より好ましくは0~2、特に好ましくは0(非置換)又は1である。
なお、nが2以上の場合、複数の置換基Xは互いに同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0086】
Xの置換位置としては、一つの-CHOY基を有する場合、-CHOY基に対してオルト位及び/又はパラ位が好ましい。
【0087】
(Yが水素原子の場合)
一般式(1),(1A)中のYが水素原子である芳香族アルコールの場合、k=1のベンジルアルコール系化合物の具体例としては、ベンジルアルコール(即ち、フェニルメタノール)、4-メチルフェニルメタノール、2-メチルフェニルメタノール、3-メチルフェニルメタノール、4-エチルフェニルメタノール、2-エチルフェニルメタノール、4-イソプロピルフェニルメタノール、4-tert-ブチルフェニルメタノール、4-フェニルベンジルアルコール(即ち、4-フェニルフェニルメタノール)、3-フェニルフェニルメタノール、2,3-ジメチルフェニルメタノール、2,4-ジメチルフェニルメタノール、2-メチル-3-フェニルフェニルメタノール、3,5-tert-ブチルフェニルメタノール、2,4,6-トリメチルフェニルメタノール、2,3,5,6-テトラメチルフェニルメタノール等が挙げられる。
【0088】
k=2のベンゼンジメタノール系化合物の具体例としては、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール等が挙げられる。
【0089】
これらのうち、好ましくはベンジルアルコール、4-フェニルベンジルアルコール、2-メチルフェニルメタノール、4-メチルフェニルメタノール、4-tert-ブチルフェニルメタノール、1,4-ベンゼンジメタノールである。
【0090】
(Yが有機基の場合)
一般式(1),(1A)中のYが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基の場合、Yとしては、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ベンゼン環に置換基を有していてもよいベンジル基が挙げられる。
【0091】
Yのアルキル基は好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。Yのアルキル基は直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であっても、環状アルキル基であってもよいが、好ましくは直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基である。
【0092】
Yのアルケニル基は好ましくは炭素数2~5のアルケニル基であり、より好ましくはアリル基(-CH-CH=CH)である。
【0093】
Yのアルキルカルボニル基は好ましくは炭素数2~5のアルキルカルボニル基(-C(=O)-(CH-CH(jは0~3の整数))である。
【0094】
Yのアリールカルボニル基としては、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基(-C(=O)-C)が挙げられる。
【0095】
Yのアリール基としてはフェニル基が好ましい。
ヒドロキシアルキル基としては-(CHOH(mは1~4の整数)で表される基が挙げられる。
ヒドロキシアルキルオキシアルキル基としては-CHCH-O-CHCH-OHが挙げられる。
【0096】
Yに含まれるフェニル基等のアリール基やベンジル基等のベンゼン環が有していてもよい置換基としてはアルキル基が挙げられる。該アルキル基としては、Xのアルキル基として前述したものが挙げられる。
【0097】
Yは、好ましくはメチル基等のアルキル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基(-CHOH)、ヒドロキシエチル基(-COH)、-CH-CH=CH、-C(=O)-(CH-CH(jは0~3の整数)、又は-C(=O)-Cである。
【0098】
Yが窒素、硫黄、及びハロゲンのいずれの元素も含まない有機基である芳香族化合物(C)の具体例としては、ジベンジルエーテル(C-CH-O-CH-C)、ベンジルメチルエーテル(C-CH-O-CH)、2-ベンジルオキシエタノール(C-CH-O-COH)、アリルベンジルエーテル(C-CH-O-CH-CH=CH)、ベンジルアセテート(C-CH-O-C(=O)-CH)、ベンジルベンゾエート(C-CH-O-C(=O)-C)、ベンジルブチレート(C-CH-O-C(=O)-C)、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン(CH-O-CH-C-CH-O-CH)等が挙げられる。これらのうち、好ましくはジベンジルエーテル、ベンジルメチルエーテル、2-ベンジルオキシエタノールである。
【0099】
これらの芳香族化合物(C)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0100】
芳香族化合物(C)を含有する場合の好ましい含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001~1質量部である。芳香族化合物(C)の含有量が過度に多いと成形品が白濁したり、熱や光に対する耐久性が悪化するおそれがある。含有量はより好ましくは0.05~1質量部、さらに好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0101】
[ポリアルキレングリコール(D)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアルキレングリコールを含有することも好ましい。ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(2)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と下記一般式(2A)~(2D)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)が好ましいものとして挙げられる。
【0102】
【化3】
一般式(2)中、tは3~6の整数を示す。
【0103】
【化4】
【0104】
一般式(2A)~(2D)中、R31~R40は各々独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。一般式(2A)~(2D)においてR31~R40の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基である。
【0105】
一般式(2)で示される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)としては、それをグリコールとして記載すると、tが3のトリメチレングリコール、tが4のテトラメチレングリコール、tが5のペンタメチレングリコール、tが6のヘキサメチレングリコールが挙げられる。好ましくはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0106】
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。バイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造してもよい。
【0107】
一般式(2A)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)エチレングリコール(プロピレングリコール)、(2-エチル)エチレングリコール(ブチレングリコール)、(2,2-ジメチル)エチレングリコール(ネオペンチルグリコール)などが挙げられる。
【0108】
一般式(2B)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)トリメチレングリコール、(3-メチル)トリメチレングリコール、(2-エチル)トリメチレングリコール、(3-エチル)トリエチレングリコール、(2,2-ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2-メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2-ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3-ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3-ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられる。
【0109】
一般式(2C)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)テトラメチレングリコール、(4-メチル)テトラメチレングリコール、(3-エチル)テトラメチレングリコール、(4-エチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、(3-メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0110】
一般式(2D)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)ペンタメチレングリコール、(4-メチル)ペンタメチレングリコール、(5-メチル)ペンタメチレングリコール、(3-エチル)ペンタメチレングリコール、(4-エチル)ペンタメチレングリコール、(5-エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられる。
【0111】
以上、分岐アルキレンエーテル単位(P2)を構成する一般式(2A)~(2D)で表される単位を便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0112】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)として好ましいものを挙げると、テトラメチレンエーテル(テトラメチレングリコール)単位と一般式(2A)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にテトラメチレンエーテル(テトラメチレングリコール)単位と2-メチルエチレンエーテル(プロピレングリコール)単位及び/又は(2-エチル)エチレングリコール(ブチレングリコール)単位からなる共重合体が好ましい。テトラメチレンエーテル単位と2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
【0113】
直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)を製造する方法は公知であり、上記したようなグリコール、アルキレンオキシドあるいはそのポリエーテル形成性誘導体を、通常、酸触媒を用いて重縮合させることによって製造することができる。
【0114】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0115】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)の末端基はヒドロキシル基であることが好ましい。ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、その片末端あるいは両末端がアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、脂肪酸エステル、アリールエステルなどで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、エーテル化物又はエステル化物が同様に使用できる。
【0116】
アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、炭素数1~22のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。アルキルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールのメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0117】
アリールエーテルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6~22、より好ましくは炭素数6~12、さらに好ましくは炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7~23、より好ましくは炭素数7~13、さらに好ましくは炭素数7~11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0118】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。
【0119】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1~22の1価又は2価の脂肪酸が挙げられる。1価の飽和脂肪酸として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられる。1価の不飽和脂肪酸として、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素数10以上の二価の脂肪酸として、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸およびデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
【0120】
アリールエステルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6~22、より好ましくは炭素数6~12、さらに好ましくは炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。末端封止する基は、アラルキル基であってもポリカーボネート樹脂(A)と良好な相溶性を示すことから、アリール基と同様の作用を発現できる。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7~23、より好ましくは炭素数7~13、さらに好ましくは炭素数7~11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0121】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)としては、なかでもテトラメチレンエーテル単位と2-メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と3-メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体が特に好ましい。このようなポリアルキレングリコール共重合体の市販品としては、日油社製商品名「ポリセリンDCB」、保土谷化学社製商品名「PTG-L」、旭化成せんい社製商品名「PTXG」などが挙げられる。
【0122】
テトラメチレンエーテル単位と2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体は特開2016-125038号公報に記載の方法で製造することも可能である。
【0123】
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物も好ましいものとして挙げられる。下記一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物は、他の共重合成分との共重合体であってもよいが、単独重合体が好ましい。
【0124】
【化5】
【0125】
一般式(3A)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を示す。QおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~23の脂肪族アシル基、又は炭素数1~23のアルキル基を示す。rは5~400の整数を示す。
【0126】
【化6】
【0127】
一般式(3B)中、Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数2~23の脂肪族アシル基又は炭素数1~22のアルキル基を示す。pは2~6の整数、qは6~100の整数を示す。
【0128】
一般式(3A)において、整数(重合度)rは、5~400であるが、好ましくは10~200、更に好ましくは15~100、特に好ましくは20~50である。重合度rが5未満の場合、成形時のガス発生量が多くなり、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する可能性がある。重合度rが400を超える場合、本発明のペレットの色相を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。
【0129】
分岐型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(3A)中、Q,Qが水素原子で、Rがメチル基であるポリプロピレングリコール(ポリ(2-メチル)エチレングリコール)やエチル基であるポリブチレングリコール(ポリ(2-エチル)エチレングリコール)が好ましく、特に好ましくはポリブチレングリコール(ポリ(2-エチル)エチレングリコール)である。
【0130】
一般式(3B)において、q(重合度)は、6~100の整数であるが、好ましくは8~90、より好ましくは10~80である。重合度qが6未満の場合、成形時にガスが発生するので好ましくない。重合度qが100を超える場合、相溶性が低下するので好ましくない。
【0131】
直鎖型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(3B)中のQ及びQが水素原子で、pが2のポリエチレングリコール、pが3のポリトリメチレングリコール、pが4のポリテトラメチレングリコール、pが5のポリペンタメチレングリコール、pが6のポリヘキサメチレングリコールが好ましく挙げられ、より好ましくはポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールあるいはそのエステル化物又はエーテル化物である。
【0132】
ポリアルキレングリコール化合物として、その片末端あるいは両末端が脂肪酸またはアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、脂肪酸エステル化物またはエーテル化物を同様に使用することができる。従って、一般式(3A),(3B)中のQ~Qは炭素数1~23の脂肪族アシル基又はアルキル基であってもよい。
【0133】
脂肪酸エステル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用できる。脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
【0134】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1~23の1価又は2価の脂肪酸が挙げられる。1価の飽和脂肪酸として、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられる。1価の不飽和脂肪酸として、具体的には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素数10以上の二価の脂肪酸として、具体的には、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
【0135】
脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0136】
分岐型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、一般式(3A)において、Rがメチル基、QおよびQが炭素数18の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールステアレート、Rがメチル基、QおよびQが炭素数22の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールベヘネートが挙げられる。直鎖型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリアルキレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコールジステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリアルキレングリコールベヘネート等が挙げられる。
【0137】
ポリアルキレングリコールのアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1~23のアルキル基が挙げられる。ポリアルキレングリコール化合物としては、ポリアルキレングリコールのアルキルメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0138】
一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物の市販品としては、日油社製商品名「ユニオールD-1000」、「ユニオールPB-1000」などが挙げられる。
【0139】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)、一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物、一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物等のポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量は、200~5000が好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下、特に好ましくは2000以下、とりわけ好ましくは1000未満であり、800以下であることが最も好ましい。数平均分子量が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。数平均分子量が上記下限を下回ると成形時にガスが発生する傾向がある。ポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0140】
これらのポリアルキレングリコール化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0141】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がポリアルキレングリコール化合物を含む場合、その含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.001~1.0質量部、より好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.1~0.5質量部である。ポリアルキレングリコール化合物の含有量が上記下限未満であっても、上記上限を超えても、得られる成形品の色相が劣る傾向がある。
【0142】
<エポキシ化合物(E)・オキセタン化合物(F)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物はエポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物を含有することも好ましい。エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物をポリアルキレングリコール(D)と併せて含有することで耐熱変色性をより向上させることができる。
【0143】
<エポキシ化合物(E)>
エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシル)ブチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6’-メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス-エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス-エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2-イソプロピル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-t-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n-ブチル-3-t-ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。
【0144】
これらのうち、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられ、特に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましい。
【0145】
また、片末端もしくは両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコール誘導体も好ましく使用することができる。特に、両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。
【0146】
構造中にエポキシ基を含有するポリアルキレングリコール誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体が好ましいものとして挙げられる。
【0147】
エポキシ化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0148】
<オキセタン化合物(F)>
オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン基を有する化合物であればいずれも使用することができ、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物および分子中にオキセタン基を2個以上有する2官能以上のポリオキセタン化合物のいずれをも使用することができる。
【0149】
モノオキセタン化合物としては、下記の一般式(I-a)又は(I-b)で表される化合物などを好ましく例示することができる。ポリオキセタン化合物としては下記一般式(II)で表される分子中にオキセタン基を2個有するジオキセタン化合物などを好ましく例示することができる。
【0150】
【化7】
【化8】
【0151】
(式中、Rはアルキル基を、Rはアルキル基またはフェニル基を、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基をそれぞれ示し、nは0または1を示す。)
【0152】
上記一般式(I-a)、(I-b)及び(II)において、Rはアルキル基であるが、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましく、特に好ましくはエチル基である。
【0153】
上記一般式(I-b)において、Rはアルキル基またはフェニル基であるが、好ましくは炭素数2~10のアルキル基であり、鎖状のアルキル基、分岐したアルキル基または脂環式アルキル基のいずれであってもよく、或いはアルキル鎖の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する鎖状または分岐状のアルキル基であってもよい。Rの具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3-オキシペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などを挙げることができる。そのうちでも、Rは2-エチルヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0154】
一般式(I-a)で表される化合物の具体例としては、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタンなどを好ましく挙げることができる。そのうちでも、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン等が特に好ましい。
一般式(I-b)で表される化合物の具体例としては、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等が特に好ましい。
【0155】
上記一般式(II)において、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基であるが、その例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基等の炭素数1~12の直鎖状または分岐状のアルキレン基、フェニレン基、式:-CH-Ph-CH-または-CH-Ph-Ph-CH-(ここで、Phはフェニル基を示す)で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
【0156】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-プロピル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-ブチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等を特に好ましく挙げることができる。
【0157】
オキセタン化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0158】
エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物の好ましい含有量(エポキシ化合物とオキセタン化合物を含む場合はその合計の含有量)は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であり、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物の含有量が、0.0005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、0.2質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化しやすく、色相や湿熱安定性も低下しやすい。
【0159】
[難燃剤(G)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤を含有することが好ましく、難燃剤としては、透明性の観点から、有機スルホン酸アルカリ金属塩が好ましい。有機スルホン酸アルカリ金属塩を含有することで、樹脂組成物の燃焼時の炭化層形成を促進し、難燃性をより高めることができると共に、耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性、電気的特性などの性質を良好に維持できる。
【0160】
有機スルホン酸アルカリ金属塩のアルカリ金属塩の金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられ、なかでも、ナトリウム、カリウム、セシウムが最も好ましい。
【0161】
有機スルホン酸アルカリ金属塩のうち、好ましいものの例としては、含フッ素脂肪族スルホン酸又は芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。そのなかでも好ましいものの具体例を挙げると、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム等の、分子中に少なくとも1つのC-F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩;ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸カリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸セシウム、(ポリ)スチレンスルホン酸セシウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム、トリクロロベンゼンスルホン酸セシウム等の、分子中に少なくとも1種の芳香族基を有する芳香族スルホン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0162】
上述した例示物のなかでも、含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩が特に好ましく、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましく、具体的にはパーフルオロブタンスルホン酸カリウム等が好ましい。
【0163】
有機スルホン酸アルカリ金属塩は単独の化合物のみを用いてもよく、異なる2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0164】
有機スルホン酸アルカリ金属塩を含有する場合の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上0.2質量部未満、より好ましくは0.05~0.15質量部、さらに好ましくは0.05~0.1質量部である。有機スルホン酸金属塩の含有量が上記下限未満では、難燃性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると、透明性が低下するので好ましくない。
【0165】
[紫外線吸収剤(H)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに紫外線吸収剤を含有することも好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0166】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、中でも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0167】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM-40」、BASF社製「ユビヌルMS-40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」等が挙げられる。
【0168】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0169】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN-35」、「ユビヌルN-539」等が挙げられる。
【0170】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0171】
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR-25」、BASF社製「B-CAP」等が挙げられる。
【0172】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0173】
[安定剤(J)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、リン系安定剤及び/又はフェノール系酸化防止剤を含有することが好ましい。
リン系安定剤を含有することで樹脂組成物の熱安定性、耐熱変色性、耐候性等を向上させることができる。リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0174】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0175】
リン系安定剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.005質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常0.5質量部以下、好ましくは0.4質量以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値を下回ると、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0176】
フェノール系酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0177】
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
なお、フェノール系酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0178】
フェノール系酸化防止剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.005質量部以上であり、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。フェノール系酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フェノール系酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0179】
[離型剤(K)]
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤(滑剤)を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0180】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0181】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
【0182】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0183】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0184】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0185】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
【0186】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
【0187】
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0188】
離型剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0189】
[着色剤(L)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、染顔料を含有することも好ましい。染顔料としては、特に橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈するブルーイング染料が好ましい。
【0190】
好ましいブルーイング染料としては、例えば、ソルベントブルー97及びソルベントバイオレット36が好ましい。一般名がソルベントブルー97(Solvent Blue97)の染料としては、具体的にはランクセス株式会社製の商品名「マクロレックスブルーRR」を挙げることができる。一般名がソルベントバイオレット36(Solvent Violet36)の染料としては、具体的にはランクセス株式会社製の商品名「マクロレックスバイオレット3R」を挙げることができる。
【0191】
ブルーイング染料を含有する場合の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中、0.001~0.1質量ppmであることが好ましい。
【0192】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0193】
<樹脂添加剤>
樹脂添加剤としては、例えば、難燃助剤、蛍光増白剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0194】
帯電防止剤としては例えばドデシルベンゼンスルホン酸の塩、パーフルオロアルキルスルホニル誘導体の窒素オニウム塩等のイオン液体型帯電防止剤、ジグリセリンモノラウレートなどが好ましく使用できる。その配合量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲であることが好ましい。
【0195】
[熱可塑性樹脂組成物の製造]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、透明熱可塑性樹脂(A)及び球状微粒子(B)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、球状微粒子(B)はサイドフィードすることも好ましい。
【0196】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、このマスターバッチを基材となる樹脂ペレットと混合して直接、成形機に投入して成形体を製造することも出来る。また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
【0197】
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形して成形体とされる。
成形体を製造する方法は、熱可塑性樹脂組成物に一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられ、また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
これらの中でも、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などの射出成形法、シート押出成形法、異形押出成形法等が好ましい。
【0198】
前述したように、本発明の樹脂組成物から得られた成形体は、面発光性能を有する成形体であり、入射光の散乱波長選択性が少なく、面発光色相衰退を低減でき、面発光色相衰退がなく優れた面発光色相を発現する。図1は従来の通常の成形品(左側)と本発明の樹脂組成物からなる成形品(右側)の、光入射時の面発光の状態を示す写真である。図中では、成形体の下側端面(図中の下方)からLED光を入光させている。図1の左側にある従来例のものは、光源から遠ざかるに従って均一な発光ではなくなり黄色味が増してしまうのに対し、図1の右側にある実施例の成形体は、反対側の上端に至るまで面発光は均一で面発光の減衰が少ないことが特徴的である。
【0199】
このような本発明による成形体は、XYZ表色系の三刺激値を測定し、好ましくは以下のような混色比で規定することができる。
すなわち、成形体は、厚さ3mmの成形体の側面に沿って配置されたLED光源から入光した際、成形体端面の入光部近傍の測定点と、成形体端面から50mm遠ざかった点で測定して得られた三刺激値(XYZ)から得られる混色比xの差Δx、即ち
(x[入光部]-x[成形体端面から50mm遠ざかった個所])の絶対値が、好ましくは0.01未満、より好ましくは0.009未満、さらに好ましくは0.008未満である。
また、成形体は、厚さ3mmの成形体の側面に沿って配置されたLED光源から入光した際、成形体端面の入光部近傍の測定点と、成形体端面から50mm遠ざかった点で測定して得られた三刺激値(XYZ)から得られる混色比yの差Δy、即ち
(y[入光部]-y[成形体端面から50mm遠ざかった個所])の絶対値が、好ましくは0.01未満、より好ましくは0.009未満、さらに好ましくは0.008未満である。
本発明による成形体は、ΔxとΔyの両方が、上記した好ましい値を満たすことが特に好ましい。
【0200】
ここで、混色比x、yは、輝度計を用い、XYZ表色系の三刺激値(三原刺激の混色量、X、Y、Z)と、比率(三原刺激の混色比、x、y、z)を測定して求めることができる。具体的には、輝度計により測定して求められ、その詳細は実施例に記載するとおりである。
【0201】
なお、混色比はLED光源当接部、即ち0mmの位置で測定するのは装置上困難であるので、入光部近傍で測定する。ここで「入光部近傍」とは、側面にLED光源を当接した成形体の側部端面から反対方向に向かって10mmまでの任意の距離、好ましくは8mm以内の部分を意味する。具体的にはLED光源を当接した成形体の側部端面から8mmの点で測定することが好ましい。
【0202】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された厚さ3mmの成形体のヘイズは、好ましく0.5~20%であることが好ましく、1~20%であることが好ましい。ヘイズが20%を超えると、透明性が低下して、本発明の面発光の輝度がLED光源から遠ざかるにつれ著しく低下するので好ましくない。
【0203】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して用いる成形体の形状は限定されず、平板であってもよいし、曲面形状等の非平面形状であってもよく、例えばドーム状、半球状、円筒状、ピラミッド状、波板状等、あるいは平面や非平面を結合した複雑な形状のものであってもよい。
【0204】
本発明の樹脂組成物を成形した好ましい成形体としては、LED等を光源として用いた各種の光学部材が挙げられる。代表的には導光板、導光用部材、面発光体用部材、照明用部材等の面発光する部材(面発光体)として幅広く使用することができる。
より好ましいものとして、LED光源を成形体の縁部に備えたエッジライト方式のための面発光成形体が挙げられる。面発光成形体では、LED光源の発した光が、成形した平板状の成形体の側部から入射した後、球状微粒子(B)により入射した光が散乱波長選択性なく拡散され、入射角に対して垂直に、すなわちその成形体の表面が出射面となって、面発光する。
例えば、自動車の内装用の、照明用部材(室内やトランクルーム等)やディスプレイ用の部材等としても好適である。
【0205】
また、成形体の内部にLED等の光源を直接入射させることなく、本発明の成形体の均一な光散乱性を利用して、各種のディスプレイ装置や照明機器等の光拡散性の部材としても好適に利用できる。
例えば、透過型スクリーンあるいは反射型スクリーン等のスクリーン用部材等が挙げられ、本発明の成形体に向けて投影された画像を視認することができる。同様にヘッドアップディスプレイ(例えば車両用、航空機用)としても利用できる。
また、自動車等の車両用ランプ(ヘッドランプ、リアランプ等)の周囲やライトガイド等に用いて、非点灯時は透明で点灯時は白色等に変化するような意匠性の高いライト構成とすることもできる。
【0206】
また、成形体内部に直接導光するかしないかに係らず、成形体の適用例を挙げると、例えば、光学部品、照明機器、各種表示用のカバーやレンズ、レンズカバー、その他の照明器具等の照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイ、電気・電子機器、ノートパソコン、携帯電話やウェアラブル機器などのモバイル機器、パチンコ、パチスロ、ゲーム等のアミューズメント機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品(ライト、内装部品、パネル)、屋内用内装(例えば店舗内の意匠性の高い照明部材、案内表示等)、透明パーティション、商品ディスプレイ(例えばショーケース)などのパネル部材、自動販売機、券売機などの間仕切り板、道路標識、看板、時計、アクセサリー等の部品が挙げられる。車両内装用の照明・ディスプレイ用部材、導光部材、自動車用照明装置の導光部材等に好適に使用できる。
【実施例
【0207】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは「質量部」を表す。
実施例及び比較例に使用した各成分は、以下の表1の通りである。
【0208】
【表1】
【0209】
(実施例19~29、参考例1~18、比較例1~10)
[樹脂ペレット製造]
表1に記載した各成分を、後記表2以下に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーミキサーにて20分混合した後、田辺プラスチックス機械社製単軸押出機「VS40-32V」に供給し、スクリュー回転数100rpm、吐出量25kg/hr、バレル温度280℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押し出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0210】
[試験片の成形]
上記の方法で得られたペレットを、120℃で4時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、住友重機械工業社製射出成形機「SE-50DUZ」により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、長辺111mm×短辺36mm×厚さ3mmの平板状プレートを成形した。
【0211】
[ヘイズ(3mmt、単位:%)]
上記の方法で得られた平板状プレート(3mm厚)を、JIS K7136、JIS K7361に準拠し、濁度計(日本電色工業社製「NDH-2000」)を用いて、D65光源、10°視野にて、ヘイズ(単位:%)を測定した。
【0212】
[平面の平均輝度(単位:cd/cm)]
上記平板状プレートの長辺の端部の側面に、LED白色光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)を当接させて、LED光を入射させた時に、発光面から上方30cmの位置に設置した輝度計(コニカミノルタ社製「CA-2500」)により、平板状プレートの発光面全体を縦5×横5=25に分割した測定点の輝度を測定した。得られた25点の測定値から平均輝度を算出した。
【0213】
[Δx、Δy]
図2に示すように、上記平板状プレートの長辺の端部の側面に、LED白色光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)を当接させて、LED光を入射させ、発光面から上方30cmの位置に設置した輝度計(コニカミノルタ社製「CA-2500」)により、平板状プレートのLED光源当接部端面から8mmの距離にあって、かつプレート長辺から18mmの中心線上の測定点P1、及び、前記測定点から平板状プレート長辺の中心線に沿って42mm離れた測定点P2(即ち、前記LED光源当接部端面から50mmの点)で測定して、発光色の三刺激値X,Y,Z、及び混色比x、yを得、混色比の差ΔxとΔyの絶対値を求めた。
【0214】
Δxが小さいことは、簡単にいうと、赤み成分(又は青み成分)の変化が少ないことを意味し、Δyが小さいことは、分かりやすくいえば、緑み成分(又は青み成分)の変化が少ないことを意味し、光の散乱波長選択性が小さく、面発光色相衰退を低減できていることを示す。
Δx、Δyの評価として、以下の3段階、良い順にA,B,Cの基準で判定した。
<Δxの判定>
A:0.01未満
B:0.01以上0.025未満
C:0.025以上
<Δyの判定>
A:0.01未満
B:0.01以上0.025未満
C:0.025以上
ΔxとΔyの両方が、Aであることが特に好ましい。
【0215】
実施例2と比較例5で得られたペレットを、120℃で4時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、ファナック社製射出成形機「FUNUC ROBOSHOT S-2000i 150B」により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、100×150×2mmの平板状プレートを得た。これにLED光源を平板状プレートの下側に当接させ、図1中の下側からLED光を入射させた。これの発光の状態を示す写真を図1(左が実施例2、右側が比較例5のもの)に示した。
【0216】
以上の結果を、以下の表2以下に示す。
【0217】
【表2】
【0218】
【表3】
【0219】
【表4】
【0220】
【表5】
【0221】
【表6】
【0222】
上記表から、実施例のものは、入射光の散乱波長選択性が極めて小さく、面発光色相衰退を低減できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、LED等を光源として用いる各種の光学部材等に広く好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。
図1
図2