(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】装置、方法およびコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
B21C 23/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
B21C23/00
B21C23/00 A
(21)【出願番号】P 2021544681
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 GB2020050227
(87)【国際公開番号】W WO2020157514
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-14
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519340400
【氏名又は名称】インペリアル・カレッジ・イノベーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュンクアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、ズータオ
(72)【発明者】
【氏名】リン、ジアンゴ
(72)【発明者】
【氏名】ディーン、トレヴァー
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019532(JP,A)
【文献】特表2020-519447(JP,A)
【文献】特表2004-512955(JP,A)
【文献】特開2008-195978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00 - 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を
3次元的に曲がった形状に押し出す装置であって、
第1方向および第2方向から押し出される材料を受け入れるように構成される押出ダイを備え、
前記押出ダイは、材料が第3方向に押し出されるオリフィスを含み、
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向は、すべて同じ平面内にあるわけではなく、かつ、前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向のいずれも、他の方向と平行ではな
く、材料が前記オリフィスから3次元的に曲がった形状に押し出される、装置。
【請求項2】
前記第1方向および前記第2方向は実質的に直交している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向は実質的に直交している、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記押出ダイは、第4方向から押し出される材料を受け入れるように構成され、
前記第4方向は、前記第1方向と実質的に反対向きである、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記押出ダイは、第5方向から押し出される材料を受け入れるように構成され、
前記第5方向は、前記第2方向と実質的に反対向きである、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
複数の圧縮要素をさらに備え、
前記押出ダイが押し出される材料を受け入れるように構成されている各方向について、前記複数の圧縮要素のうちの1つが、押し出される材料にその方向に力を加えるように構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御するための指示を提供するように構成されるコントローラをさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも2つが同時に移動するように指示するように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記材料が押し出されるときに、前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの速度を変化させるように構成される、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
複数のチャンバをさらに備え、
前記押出ダイが押し出される材料を受け入れるように構成されている各方向について、押し出される材料の一部が前記複数のチャンバの1つに収容される、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
材料を
3次元的に曲がった形状に押し出す方法であって、
押し出される材料を第1方向から押出
ダイに供給することと、
押し出される材料を第2方向から
前記押出
ダイに供給することと、
前記押出ダイのオリフィスから第3方向に材料を押し出すことと、
を含み、
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向はすべて同じ平面内にあるわけではなく、前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向のいずれも他の方向と平行ではな
く、材料が前記オリフィスから3次元的に曲がった形状に押し出される、方法。
【請求項12】
前記第1方向およひ前記第2方向は、実質的に直交している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向は、実質的に直交している、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
押し出される材料を第4方向から
前記押出ダイに供給することをさらに含み、
前記第4方向は、前記第1方向とは実質的に反対向きである、請求項11から13のいずれかに記載の
方法。
【請求項15】
押し出される材料を第5方向から
前記押出ダイに提供することをさらに含み、
前記第5方向は、前記第2方向と実質的に反対向きである、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
押し出される材料が
前記押出ダイに供給される各方向について、その方向から押し出される材料を
前記押出ダイに提供することは、押し出される材料に、複数の圧縮要素のうちの1つの圧縮要素からその方向に力を加えることを含む、請求項11から15
のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御することをさらに含む、請求項16に、記載の方法。
【請求項18】
前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御することは、前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも2つを同時に動かすように指示することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御することは、前記材料が押し出されるときに前記複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの速度を変化させることを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
押し出される材料が前記押出ダイに提供される各方向について、その方向から前記押出ダイに押し出される材料を供給することは、押し出される前記材料の一部を複数のチャンバのうちの1つに収容することを含む、請求項11から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
コンピュータによって実行されると前記コンピュータに請求項11から20のいずれかに記載の前記方法を実行させる命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する実施の形態は、曲がった形材(curved material profiles)を形成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸、海、空の移動で使用されるコンポーネントの重量を減らすことは、燃料消費量の削減につながり、その結果、CO2排出量の削減にもつながる。曲がった形材は、輪郭の複雑さが高い構造物を製造するための工業製造における構成要素として広く使用されている。例えば、アルミニウム合金製形材は、航空機産業のシートレール、ストリンガー、フレームや、自動車産業のウィンドウフレーム、ルーフレールなどの軽量コンポーネント構造の製造に使用される。
【0003】
形材を曲げる既存の方法は、通常、形状圧延または押し出しにより直線的な形材を製造することから始まる。これに続いて、ストレッチ曲げ、ロータリードロー曲げ、プレス曲げ、またはロール曲げ(3ロール、4ロールおよび6ロール曲げ)などの曲げプロセスを行う。しかしながら、これらの方法には次の欠点がある。(i)所望の曲率の形材を実現するために複数のプロセスが必要であり、製造の生産性が低下する。(ii)曲げプロセスでは外部から大きな曲げひずみが加わるため、スプリングバック(spring-back)や断面の変形が生じることがある。(iii)中空構造の場合、断面の変形や座屈を避けるために、2次の曲げプロセスでさまざまな充填剤やマンドレルが使用される。(iv)形材を曲げるには大きな力が必要なため、重い機械が必要である。(v)骨組みが薄かったり、曲率がきつかったりすると、多くの中空形材を曲げることができない。
【0004】
別の既存の方法は、押出機からの材料の出口に直接隣接して設置された装置を使って、押出形材を曲げることを含む。この方法もまた、特殊で複雑な曲げ装置やガイド装置が必要であるという欠点があり、上述の(ii)~(v)の問題を抱えている。さらなる既存の方法は、押出ダイに特徴を持たせることで、押出オリフィスの断面における押し出される材料の流速の変化を得ることを含む。しかしながら、適切なオリフィスの設計を得るのが複雑であることに加え、工具を変更しないと押出成形品の曲率を変更することができないため、この方法の適用には限界があります。
【0005】
平面的に曲がった形材を製造する方法が存在する。これらの方法では、1回の作業で曲率が変化する形材を形成することができる。しかしながら、これらの方法で製造される形材は平面的な形材である(すなわち、材料は1つの平面でのみ曲がっている)。3次元形材を製造する(すなわち、材料に直交する2方向に曲率を持たせる)には、追加の作業が必要である。この追加作業には、上述の既存の方法を使用する必要があり、同様の欠点が生じる。
【0006】
したがって、曲がった形材の製造を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様および特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0008】
本発明の一態様によれば、材料を押し出すための装置が提供され、その装置は、第1方向および第2方向から押し出される材料を受け入れるように構成される押出ダイを備え、その押出ダイは材料が第3方向に押し出されるオリフィスを含み、第1方向、第2方向および第3方向はすべて同じ平面内にあるわけではなく、かつ、第1方向、第2方向および第3方向のいずれも他の方向と平行ではない。
【0009】
第1方向、第2方向および第3方向がすべて同じ平面内にあるわけではなく、かつ、第1方向、第2方向および第3方向のいずれも他の方向と平行ではないことを考えると、材料は3次元に曲がった形状(profile)としてオリフィスから押し出される。つまり、押し出された材料は2つの直交する方向に曲がっている。第1方向から材料を供給することは、2つの直交する方向のうちの一方の方向における押し出される材料の曲率に寄与し、第2方向から材料を供給することは、2つの直交する方向のうちの他方の方向における押し出される材料の曲げに寄与する。
【0010】
押出ダイは、第1方向に材料を選択的に供給することで押し出される材料を第1方向に曲げることができ、第2方向に材料を選択的に供給することで押し出される材料を第2方向に曲げることができるように、第1方向および第2方向から押し出される材料を受け入れるように構成されてもよい。押出ダイは、第1方向に材料を選択的に供給することで第1出力方向における押し出された材料の曲率を制御することができ、第2方向に材料を選択的に供給することで第2出力方向における押し出された材料の曲率を制御することができるように、第1方向および第2方向から押し出される材料を受け入れるように構成されてもよく、第1出力方向および第2出力方向は直交する。第1出力方向は、第3方向と直交してもよい。第2出力方向もまた、第3方向と直交してもよい。
【0011】
第1方向は、第1出力方向に平行な第1方向成分を持った3次元ベクトルで表わされてもよい。同様に、第2方向は、第2出力方向に平行な第2方向成分を持った3次元ベクトルで表わされてもよく、第2方向成分は、第1方向成分と直交する。押出ダイは、第1方向および第2方向がそれぞれ3次元ベクトルで表されるとき、第1方向成分が押し出される材料を第1出力方向に曲げ、第2方向成分が押し出される材料を第2出力方向に曲げるように構成されてもよい。したがって、第1方向成分および第2方向成分のそれぞれは、押し出される材料を第1出力方向および第2出力方向にそれぞれ曲げるのに十分な大きさであってもよい。
【0012】
第1方向および第2方向は、デカルト座標で表されてもよい。第1方向は、3次元ベクトルで表されてもよい。第1方向は、非ゼロx成分、y成分(ゼロまたは非ゼロである)およびゼロに等しいz成分を持った3次元ベクトルで表されてもよい。第2方向は、x成分(ゼロまたは非ゼロである)、y成分(ゼロまたは非ゼロである)および非ゼロz成分を持った3次元ベクトルで表されてもよい。第3方向(すなわち材料がオリフィスから押し出される方向)は、想定される(notional)y軸と平行であってもよい。この場合、第1方向のx成分により、y軸に沿って押し出された材料が想定されるx軸に向かって曲がる。同様に、第2方向のz成分により、y軸に沿って押し出された材料が想定されるz軸に向かった曲がる。第2方向のx成分が非ゼロの場合、第2方向のx成分は、第1方向のx成分から生じる曲率と累積するか、オフセットするかのいずれかである(第1方向と第2方向の相対的な向きに依存する)。
【0013】
第1方向および第3方向は、実質的に直交してもよい。第1方向と第3方向との間の角度を大きくすると、押出ダイにおける第1方向と第3方向との間の交点で発生する激しい塑性変形(SPD)の量が増加する。材料のSPDにより、超微細な粒径の押出形材が得られ、それにより押出形材の機械的特性が向上する。したがって、実質的に直交する構成は、押出ダイで発生するSPDの量を増加させ、その結果、改善された機械的特性を生じさせる。同様に、第2方向および第3方向も実質的に直交してもよく、これも機械的特性の向上をもたらす。
【0014】
第1方向および第2方向は、実質的に直交してもよい。第1方向と第2方向の実質的に直交する構成は、押し出された材料が曲がる方向に対する制御を向上させるので、押出しプロセスの改善された制御を提供する。説明すると、第1方向に材料を供給すると、押し出された材料は第1出力方向に曲がり、第2方向に材料を供給すると、押し出された材料は第1出力方向と直交する第2出力方向に曲がる。改良された制御は、第1方向に供給される材料が第2出力方向における材料の曲げに無視できる影響を与え、第2方向に供給される材料が第1出力方向における材料の曲げに無視できる影響を与えることから生じる。したがって、第1方向に材料を提供すると、第1方向に平行な第1出力方向に押し出される材料が曲がり、一方、第1出力方向に垂直な第2出力方向における押し出される材料の曲げに無視できる影響を与え、第2方向に材料を供給すると、第2出力方向に押し出される材料を曲がり、一方、第1出力方向における押し出される材料の曲げに無視できる影響を与えるように、第1方向および第2方向は実質的に直交していてもよい。
【0015】
これは、押し出される材料が曲がる2つの方向を個別に制御できることを意味する。第1方向に材料を供給すると、第1出力方向のみの曲率が制御され、第2方向に材料を供給すると、第2出力方向のみの曲率が制御される(第1出力方向と第2出力方向は直交する)。
【0016】
第1方向、第2方向および第3方向は、実質的に直交していてもよい。これにより、方向間の角度を大きくすることで生じるSPDの増加により、機械的特性が改善された押出形材が得られる。また、この構成により、押し出される材料の2つの曲げ方向を独立して制御することもできる。
【0017】
押出ダイはさらに、追加の方向(本明細書では第4方向と呼ばれ、材料は第1方向、第2方向および第4方向から受け入れられ、第3方向に押し出される)から押し出される材料を受け入れるように構成されてもよい。第4方向は、第1方向と実質的に反対向きであってもよい。すなわち、第1方向に材料を供給すると、押し出される材料は第1出力方向に曲がり、第1方向と実質的に反対向きである第4方向に材料を供給すると、押し出される材料は第1出力方向とは反対向きに曲がる。
【0018】
第1方向および第2方向(および任意に第3方向)が実質的に直交している場合、第4方向は第1方向と実質的に反対向きであってもよい。これは、第1方向から材料を供給すると、押し出される材料は第1出力方向に曲がり、一方、第1出力方向に垂直な第2出力方向における曲げに無視できる影響を与え、第2方向から材料を供給すると、押し出される材料は第2出力方向に曲がり、一方、第1出力方向における曲げに無視できる影響を与え、第4方向から材料を供給すると、押し出される材料は第1出力方向とは反対の出力方向(したがって第2出力方向にも垂直)に曲がり、一方、第2出力方向における曲げに無視できる影響を与えることを意味する。
【0019】
これは、第1方向および/または第4方向から材料を供給することで、第1出力方向および第3出力方向の平面における押し出される材料の曲率を制御できることを意味する。これは、第1方向から材料を供給すると、第4方向から材料が供給される場合とは反対方向に、押し出される材料が曲がるためである。これは、第1出力方向および第3出力方向の平面において、第1出力方向と平行な軸に沿って、押し出される材料が正または負の方向に曲がることを意味する。例えば、第1方向は想定されるx軸と平行であり、かつ、第4方向も想定されるx軸と平行であるが、第1方向とは反対向きであると仮定すると、第1方向から材料を供給すると、押し出される材料は正のx軸に向かって曲がり、第4方向から材料を供給すると、押し出される材料は負のx軸に向かって曲がる。
【0020】
したがって、第4方向から材料を供給することで、第1出力方向(かつ、第1出力方向および第3出力方向の平面内)における押し出される材料の曲率の制御が改善される。また、第4方向から材料を供給することで、押し出される材料を1つの軸に沿って正または負の方向に曲げることができるため、押し出しプロセスにさらなる柔軟性がもたらされる。
【0021】
押出ダイは、さらなる方向(本明細書では第5方向と呼ばれ、材料は第1方向、第2方向、第4方向および第5方向から受け入れられ、第3方向に押し出される)から押し出される材料を受け入れるように構成されてもよい。第5方向は、第3方向と実質的に反対向きであってもよい。すなわち、第2方向に材料を供給すると、押し出される材料は第2出力方向に曲がり、第2方向と実質的に反対向きである第5方向に材料を供給すると、押し出される材料は第2出力方向とは反対向きに曲がる。
【0022】
第1方向および第2方向(および任意に第3方向)が実質的に直交している場合、第5方向は第2方向と実質的に反対向きであってもよい。これは、第1方向および/または第4方向から材料を供給すると、押し出される材料は第1出力方向(または第1出力方向とは反対の方向)に曲がり、一方、第1出力方向に垂直な第2出力方向における曲げに無視できる影響を与え、第2方向から材料を供給すると、押し出される材料は第2出力方向に曲がり、一方、第1出力方向における曲げに無視できる影響を与え、第5方向から材料を供給すると、押し出される材料は第2出力方向とは反対の出力方向(したがって第1出力方向にも垂直)に曲がり、一方、第1出力方向における曲げに無視できる影響を与えることを意味する。
【0023】
これは、第2方向および/または第5方向から材料を供給することで、第2出力方向および第3出力方向の平面における押し出される材料の曲率を制御できることを意味する。これは、第2方向から材料を供給すると、第5方向から材料が供給される場合とは反対方向に、押し出される材料が曲がるためである。これは、第2出力方向および第3出力方向の平面において、第2出力方向と平行な軸に沿って、押し出される材料が正または負の方向に曲がることを意味する。例えば、第2方向は想定されるz軸と平行であり、かつ、第5方向も想定されるz軸と平行であるが、第2方向とは反対向きであると仮定すると、第2方向から材料を供給すると、押し出される材料は正のz軸に向かって曲がり、第5方向から材料を供給すると、押し出される材料は負のz軸に向かって曲がる。
【0024】
したがって、第5方向から材料を供給することで、第2出力方向(かつ、第2出力方向および第3出力方向の平面内)における押し出される材料の曲率の制御が改善される。したがって、第1方向、第2方向、第4方向および第5方向から材料を供給することで、押し出される材料が曲がる方向をさらに制御できる。また、第5方向から材料を供給することで、押し出される材料を2つの軸に沿って正または負の方向に曲げることができるため、押し出しプロセスにさらなる柔軟性がもたらされる。
【0025】
押出ダイは、異なる速度で第1方向および第2方向(および、存在する場合は追加の方向(複数可))から材料を受け入れるように構成されてもよい。押出ダイは、材料の第1部分を第1速度で受け入れ、材料の第2部分を第2速度で受け入れるように構成されてもよい。すなわち、材料の一部が各方向で受け入れられてもよく、押出ダイは、材料の各部分を異なる速度で受け入れるように構成されてもよい。材料がオリフィスから押し出されるときに、材料が第1方向に受け入れられる速度を変えることができる。材料が第1方向に受け入れられる速度を変化させることで、押し出される材料の第1出力方向の曲率を押し出し中に変化させることができる。これにより、第1出力方向の曲率が変化する形材が得られる。
【0026】
同様に、材料がオリフィスから押し出されるときに、材料が他の方向に受け入れられる速度も変化させてもよく、それにより、押し出される材料の曲率の制御を改善できる。
【0027】
押出ダイは、第1断面積を有する開口部を介して第1方向から材料を受け入れ、第2断面積を有する開口部を介して第2方向から材料を受け入れるように構成されてもよく、第2断面積は第1断面積とは異なる。断面積の違いにより、材料が供給される所定の速度において、異なる出力方向に異なる曲率が生じる。したがって、材料は、第1方向および第2方向に同じ速度で材料を供給しても、一方の出力方向の曲率が他方の出力方向に比べて大きくなりうる。押出ダイは、さらに、断面積を有するそれぞれの開口部を介して他の各方向から材料を受け入れるように構成されてもよい。ある開口部の断面積は、他の開口部の断面積と異なっていてもよい。
【0028】
装置は、複数の圧縮要素をさらに含んでいてもよく、押出ダイが押し出される材料を受け入れるように構成されている各方向について、複数の圧縮要素のうちの1つが、押し出される材料にその方向に力を加えるように構成される。例えば、第1圧縮要素は、材料に第1方向に力を与えるように構成され、第2圧縮要素は、材料に第2方向に力を与えるように構成されてもよい。各圧縮要素は、同時に移動するように構成されてもよい。各圧縮要素は、異なる速度で移動するように構成されてもよい。
【0029】
装置は、複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御するための指示を提供するように構成されるコントローラをさらに備えてもよい。コントローラは、各圧縮要素が独立して移動するように各圧縮要素を制御するように構成されてもよい。コントローラは、複数の圧縮要素のうちの少なくとも2つが同時に移動するように指示するように構成されてもよい。コントローラは、複数の圧縮要素のうちの少なくとも2つが異なる速度で移動するように指示するように構成されてもよい。コントローラは、材料が押し出されるときに、複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの速度を変化させるように構成されてもよい。
【0030】
装置は、複数のチャンバをさらに備えてもよく、押出ダイが押し出される材料を受け入れるように構成されている各方向について、押し出される材料の一部が複数のチャンバのうちの1つに収容される。例えば、第1チャンバが材料の第1部分を収容するように構成され、第2チャンバが材料の第2部分を収容するように構成されてもよい。各チャンバは、それぞれの開口部を介して押出ダイと連通してもよい。材料の各部分は、それぞれの開口部を介してそれぞれの方向から提供されてもよい。例えば、材料の第1部分は、第1開口部を介して第1方向から提供され、材料の第2部分は、第2開口部を介して第2方向から提供されてもよい。
【0031】
複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つは、複数のチャンバのうちの対応する1つの中に収容される材料の部分に力を加えるように構成される。複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、材料が供給される方向のそれぞれ1つと整列してもよい。例えば、第1チャンバが第1方向と整列し、第2チャンバが第2方向と整列してもよい。複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つは、複数のチャンバのうちの対応する1つの内部と連通するように構成されてもよい。
【0032】
装置は、複数の圧縮要素ノーズをさらに備えてもよい。複数の圧縮要素ノーズのうちの少なくとも1つは、複数の圧縮要素の対応する1つと、押し出される材料のうちの対応する部分とをインタフェースするように構成されてもよい。複数の圧縮要素ノーズのうちの少なくとも1つは、複数のチャンバのうちの対応する1つの中に摺動可能に受け入れられてもよい。複数の圧縮要素ノーズのうちの少なくとも1つは、複数のチャンバのうちの対応する1つにおいて、押し出される材料の対応する部分をインタフェースしてもよい。すなわち、複数の圧縮要素ノーズのうちの対応する1つを介して、押し出される材料の対応する部分に力が加えられてもよい。
【0033】
材料の少なくとも一部は、ビレットの形態であってもよい。各ビレットは、各圧縮要素によってビレットに力を加える前に、各チャンバに装填されてもよい。各ビレットは、各チャンバに装填される前に加熱されてもよい。
【0034】
本開示の別の態様によれば、材料を押し出す方法が提供され、この方法は、押し出される材料を第1方向から押出ダイに供給することと、押し出される材料を第2方向から押出ダイに供給することと、押出ダイのオリフィスから第3方向に材料を押し出すことと、を含み、第1方向、第2方向および第3方向はすべて同じ平面内にあるわけではなく、第1方向、第2方向、および第3方向のいずれも他の方向と平行ではない。
【0035】
第1方向および第2方向は、実質的に直交してもよい。第1方向、第2方向および第3方向は、実質的に直交してもよい。
【0036】
方法は、押し出される材料を第4方向から押出ダイに供給することをさらに含んでもよく、第4方向は、第1方向とは実質的に反対向きである。方法は、押し出される材料を第5方向から押出ダイに供給することをさらに含んでもよく、第5方向は、第2方向とは実質的に反対向きである。
【0037】
押し出される材料が押出ダイに供給される各方向について、その方向から押し出される材料を押出ダイに提供することは、押し出される材料に、複数の圧縮要素のうちの1つの圧縮要素からその方向に力を加えることを含んでもよい。
【0038】
方法は、複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御することをさらに含んでもよい。複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御することは、複数の圧縮要素のうちの少なくとも2つを同時に動かすように指示することを含んでもよい。複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの動きを制御することは、材料が押し出されるときに複数の圧縮要素のうちの少なくとも1つの速度を変化させることを含んでもよい。
【0039】
押し出される材料が押出ダイに供給される各方向について、その方向から押出ダイに押し出される材料を提供することは、押し出される材料の一部を複数のチャンバのうちの1つに収容することを含んでもよい。
【0040】
本開示の一実施例のさらなる態様によれば、コンピュータによって実行されると、コンピュータに上記の段落に記載された方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体が提供される。
【0041】
具体的な実施形態は、例示としてのみ、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、3つのチャンバを有する装置の斜視断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した装置のコントローラを示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1の装置を用いて押し出された曲がった第1形材の第1部分の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した第1部分を含む、
図1の装置を用いて押し出された曲がった第1形材の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1の装置を用いて押し出された曲がった第2形材の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の装置を用いて材料を押し出す方法のフロー図である。
【
図7】
図7は、4つのチャンバを有する装置の斜視断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の装置を用いて押し出された曲がった第3形材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示の実施形態は、特に形材の押出しに関連して以下に説明される。しかしながら、本明細書で説明する装置および方法は、プラスチック、ポリマー、セラミック、粒状材料または他の非金属などの他の材料の形材の押出しにも適していることが理解されるであろう。
【0044】
材料を押し出すための装置100を
図1に示す。装置100は、押出ダイ1を備える。押出ダイ1は、第1開口部2と、第2開口部3と、第3開口部4と、を備える。押出ダイ1はまた、動作中に材料が押し出されるオリフィス6を備える。
図1に示すように材料は、オリフィス6から負のy方向に押し出される。
【0045】
装置100はさらに、第1ビレットコンテナ7、第2ビレットコンテナ8および第3ビレットコンテナ9の形態の3つのチャンバをさらに備える。第1ビレットコンテナ7は、第1開口部2を介して押出ダイ1と連通している。第2ビレットコンテナ8は、第2開口部3を介して押出ダイ1と連通している。第3ビレットコンテナ9は、第3開口部4を介して押出ダイ1と連通している。
【0046】
押出ダイ1は、第1ビレット11、第2ビレット12および第3ビレット13の形態で押し出される材料を受け入れるように構成されている。
【0047】
第1ビレット11は、第1ビレットコンテナ7に収容されている。押出ダイ1は、第1開口部2を介して第1ビレット11を受け入れるように構成されている。
図1に示すように、押出ダイ1は正のx方向から第1ビレット11を受け入れるように構成されている。
【0048】
第2ビレット12は、第2ビレットコンテナ8に収容されている。押出ダイ1は、第2開口部3を介して第2ビレット12を受け入れるように構成されている。
図1に示すように、押出ダイ1は負のx方向から第2ビレット12を受け入れるように構成されている。
【0049】
第3ビレット13は、第3ビレットコンテナ9に収容されている。押出ダイ1は、第3開口部4を介して第3ビレット13を受け入れるように構成されている。
図1に示すように、押出ダイ1は正のz方向から第3ビレット13を受け入れるように構成されている。
【0050】
【0051】
装置100は、第1パンチノーズ15、第2パンチノーズ16および第3パンチノーズ17の形態の3つの圧縮要素ノーズをさらに備える。第1パンチノーズ15は、第1ビレット11および第1ビレットコンテナ7と適合する。第1パンチノーズ15は、第1ビレットコンテナ7内に摺動可能に受け入れられる。第2パンチノーズ16は、第2ビレット12および第2ビレットコンテナ8と適合する。第2パンチノーズ16は、第2ビレットコンテナ8内に摺動可能に受け入れられる。第3パンチノーズ17は、第3ビレット13および第3ビレットコンテナ9と適合する。第3パンチノーズ17は、第3ビレットコンテナ9内に摺動可能に受け入れられる。
【0052】
装置100は、第1パンチ19、第2パンチ20および第3パンチ21の形態の3つの圧縮要素をさらに備える。第1パンチ19は、押出ダイ1から第1開口部2を通して見たときに、第1パンチノーズ15の後方に位置する。第2パンチ20は、押出ダイ1から第2開口部3を通して見たときに、第2パンチノーズ16の後方に位置する。第3パンチ21は、押出ダイ1から第3開口部4を通して見たときに、第3パンチノーズ17の後方に位置する。
【0053】
図2に示すように、装置100は、コントローラ50をさらに備える。コントローラ50は、第1パンチ19、第2パンチ20および第3パンチ21の動きを制御するための指示を与えるように構成されている。コントローラ50は、アクチュエータ(不図示)を用いて各パンチの動きを制御する。コントローラ50は、動作時に、第1パンチ19、第2パンチ20および第3パンチ21が同時に移動するように指示するように構成されている。コントローラ50はまた、動作時に、第1パンチ19、第2パンチ20および第3パンチ21の速度を変化させるように構成されている。
【0054】
動作時には、第1パンチノーズ15、第2パンチノーズ16、第3パンチノーズ17に、それぞれ第1パンチ19、第2パンチ20、第3パンチ21を介して、同時に力が加えられる。
図1では、第1パンチノーズ15の速度はv
1と表記され、第2パンチノーズ16の速度はv
2と表記され、第3パンチノーズ17の速度はv
3と表記される。第1パンチノーズ15には、負のx方向に力が加えられる。第2パンチノーズ16には、正のx方向に力が加えられる。第3パンチノーズ17には、負のz方向に力が加えられる。
【0055】
第1パンチ19、第2パンチ20、第3パンチ21に力が加えられると、第1ビレット11、第2ビレット12、第3ビレット13が、それぞれ第1開口部2、第2開口部3、第3開口部4を介して押出ダイ1に押し込まれる。第1ビレット11は、第1開口部2を介して、正のx方向から押出ダイ1に押し込まれる。第2ビレット12は、第2開口部3を介して負のx方向から押出ダイ1に押し込まれる。第3ビレット13は、第3開口部4を介して正のz方向から押出ダイ1に押し込まれる。そして材料は、押出ダイ1のオリフィス6から負のy方向に押し出される。
【0056】
第1パンチノーズ15、第2パンチノーズ16および第3パンチノーズ17によって供給される質量流量を変化させることによって、3次元的に曲がった形材を生成することができる。すなわち、オリフィス6から負のy方向に押し出される材料(すなわち押出成形物)を、x方向およびz方向に1曲げることができる。
【0057】
図1の装置100を用いて押し出された、曲がった第1押出形材23の第1部分を
図3に示す。第1押出形材23を製造するために、第1パンチ19、第2パンチ20および第3パンチ21を押出ダイ1に向かって移動させる。押出成形物は、
図3において矢印で示す流れ方向24に押し出される。
【0058】
第1パンチノーズ15の速度v1は、第2パンチノーズ16の速度v2よりも遅くなるように制御される。これにより、押出ダイ1のオリフィス6を横切る流速勾配が生じ、その結果、押出成形物が正のx方向に曲がる。
【0059】
その一方で、第3パンチノーズ17は速度v3で負のz方向に移動する。第3パンチノーズ17の負のz方向への速度v3は、負のz方向における押出成形物の曲げをもたらす。
【0060】
正および負のx方向の速度v1およびv2と、負のz方向に沿った速度v3との共同作用は、点25から点26までの3次元的に曲がった形状を有する第1押出形材23をもたらす。
【0061】
図1の装置100を用いて押し出された、曲がった第1押出形材23の第2部分を
図4に示す。点26から点27まで、第1パンチノーズ15の速度v
1は、第2パンチノーズ16の速度v
2よりも速くなるように増加している。この速度差により、第1押出形材23は、負のx方向に曲がっている。
【0062】
点26から点27まで、第3パンチノーズ17の速度v3は維持される。正および負のx方向の速度v1およびv2と、負のz方向に沿った速度v3との共同作用は、点26から点27まで、点25から点26までの3次元的に曲がった形状とは異なる3次元的に曲がった形状を有する第1押出形材23をもたらす。
【0063】
図1の装置100を用いて押し出された、曲がった第2押出形材33を
図5に示す。押出成形物は、
図5において矢印で示す流れ方向34に押し出される。第2押出形材33を製造するために、第1パンチノーズ15の速度v
1は、第2パンチノーズ16の速度v
2よりも速い。これにより、押出ダイ1のオリフィス6を横切る流速勾配が生じ、その結果、押出成形物が負のx方向に曲がる。
【0064】
その一方で、第3パンチノーズ17は、速度v3で負のz方向に移動される。負のz方向における第3パンチノーズ17の速度v3は、負のz方向における押出成形物の曲げをもたらす。
【0065】
正および負のx方向の速度v1およびv2と、負のz方向に沿った速度v3との共同作用は、点35から点36までの3次元的に曲がった形状を有する第2押出形材33をもたらす。
【0066】
点36から点37にかけて、v1とv2の比(すなわちv1/v2)は減少し、これは、v1とv2の差が、材料が点35から点36まで押し出されたときの速度差よりも小さくなることを意味する。これは、第2押出形材33が、依然として負のx方向に曲がっているが曲率半径が大きくなっていることを意味する。
【0067】
その一方で、速度v3の方向は逆になり、これは、第3パンチノーズ17が後方(すなわち正のz方向)に移動することを意味する。第3パンチノーズ17は、v1およびv2よりも遅い速度v3で移動される。速度v3の方向の反転は、正のz方向における押出成形物の湾曲をもたらす。
【0068】
正および負のx方向の速度v1およびv2と、正のz方向の速度v3との共同作用は、点35から点36まで、点35から点36までの3次元的に曲がった形状とは異なる3次元的に曲がった形状を有する第2押出形材33をもたらす。
【0069】
図1の装置100を用いて材料を押し出す方法のフロー図を
図6に示す。ブロック60では、第1ビレット11、第2ビレット12、第3ビレット13は、それぞれ、第1ビレットコンテナ7、第2ビレットコンテナ8、第3ビレットコンテナ9に押し込まれる。ブロック62では、第1ビレット11が押出ダイ1に押し込まれるように、第1パンチノーズ15を速度v
1で移動させる力が加えられる。ブロック64では、第2ビレット12が押出ダイ1に押し込まれるように、第2パンチノーズ16を速度v
1とは異なる速度v
2で移動させる力が加えられる。ブロック66では、第3ビレット13が押出ダイ1に押し込まれるように、第3パンチノーズ17を速度v
3で移動させる力が加えられる。ブロック68では、材料が押出ダイ1のオリフィス6押し出される。
【0070】
図1に示した装置100の変形例を
図7に示す。
図7の装置170は、
図1の装置100のすべての特徴を含む。
【0071】
さらに、
図7の装置170の押出ダイ71は、第4開口部5を備える。
図7の装置170はまた、第4ビレットコンテナ10の形態の追加チャンバを備える。第4ビレットコンテナ10は、第4開口部5を介して押出ダイ71と連通している。押出ダイ71はされに、第4ビレット14の形態で押し出される材料を受け入れるように構成されている。
【0072】
第4ビレット14は、第4ビレットコンテナ10に収容されている。押出ダイ71はさらに、第4開口部5を介して第4ビレット14を受け入れるように構成されている。
図7に示すように、押出ダイ71は負のz方向から第4ビレット14を受け入れるように構成されている。
【0073】
図7の装置170は、第4パンチノーズ18の形態の追加の圧縮要素ノーズをさらに備える。第4パンチノーズ18は、第4ビレット14および第4ビレットコンテナ10と適合する。第4パンチノーズ18は、第4ビレットコンテナ10内に摺動可能に受け入れられる。
【0074】
図7の装置170は、第4パンチ22の形態の追加の圧縮要素をさらに備える。第4パンチ22は、押出ダイ1から第4開口部5を通して見たときに、第4パンチノーズ18の後方に位置する。コントローラ50(
図2に示される)は、
図7の装置170の第4パンチ22の動きを制御するための指示を与えるように構成されている。コントローラ50は、動作時に、第1パンチ19、第2パンチ20、第3パンチ21および第4パンチ22が同時に移動するように指示するように構成されている。コントローラ50はまた、動作時に、第4パンチ22の速度を変化させるように構成されている。
【0075】
動作時には、第1パンチノーズ15、第2パンチノーズ16、第3パンチノーズ17、第4パンチノーズ18に、それぞれ第1パンチ19、第2パンチ20、第3パンチ21、第4パンチ22を介して、同時に力が加えられる。
図7では、第1パンチノーズ15の速度はv
1と表記され、第2パンチノーズ16の速度はv
2と表記され、第3パンチノーズ17の速度はv
3と表記され、第3パンチノーズ17の速度はv
4と表記される。第1パンチノーズ15には、負のx方向に力が加えられる。第2パンチノーズ16には、正のx方向に力が加えられる。第3パンチノーズ17には、負のz方向に力が加えられる。第4パンチノーズ18には、正のz方向に力が加えられる。
【0076】
第1パンチ19、第2パンチ20、第3パンチ21、第4パンチ22に力が加えられると、第1ビレット11、第2ビレット12、第3ビレット13、第4ビレット14が、それぞれ第1開口部2、第2開口部3、第3開口部4、第4開口部5を介して押出ダイ71に押し込まれる。第1ビレット11は、第1開口部2を介して、正のx方向から押出ダイ71に押し込まれる。第2ビレット12は、第2開口部3を介して負のx方向から押出ダイ71に押し込まれる。第3ビレット13は、第3開口部4を介して正のz方向から押出ダイ71に押し込まれる。第4ビレット14は、第4開口部5を介して負のz方向から押出ダイ71に押し込まれる。そして材料は、押出ダイ71のオリフィス6から負のy方向に押し出される。
【0077】
第1パンチノーズ15、第2パンチノーズ16、第3パンチノーズ17および第4パンチノーズ18によって供給される質量流量を変化させることによって、3次元的に曲がった形材を生成することができる。すなわち、オリフィス6から負のy方向に押し出される材料(すなわち押出成形物)を、x方向およびz方向に曲げることができる。
【0078】
第4パンチノーズ18の追加は、v1とv2の比およびv3とv4の比の両方を任意に調整できることを意味する。これにより、押し出された材料の曲率をx方向とz方向に制御できる。
【0079】
図7の装置170を用いて押し出された、曲がった第3押出形材43を
図8に示す。第3押出形材43を製造するために、第1パンチ19、第2パンチ20、第3パンチ21および第4パンチ22を押出ダイ71に向かって移動させる。押出成形物は、
図8において矢印で示す流れ方向44に押し出される。
【0080】
点45から点45にかけて、第1パンチノーズ15の速度v1は第2パンチノーズ16のv2よりも速く、第3パンチノーズ17のv3は、第4パンチノーズ18の速度v4よりも遅い。これは、第3押出形材43が、負のx方向と正のz方向に同時に曲がっていることを意味する。したがって、第3押出形材は、点45から点46までの3次元的に曲がった形状を有する。
【0081】
点46から点47にかけて、第1パンチノーズ15の速度v1は第2パンチノーズ16の速度v2よりも遅く、第3パンチノーズ17の速度v3は第4パンチノーズ18の速度v4よりも速い。これは、第3押出形材43は、正のx方向と負のz方向と負のz方向に同時に曲がっていることを意味する。したがって、第3押出形材は、点45から点46までの3次元的に曲がった形状を有する。
【0082】
v1とv2の比およびv3とv4の比を調整することで、3次元押出形材の曲率を柔軟に変化させ、正確に制御することができる。
【0083】
図1の装置100の変形例について説明する。これらの変形例は、
図7の装置170にも適用できる。
【0084】
3次元に曲がった形材は、
図1の装置100または
図7の装置170を用いて、コンピュータ可読媒体に記憶された命令を使用することによって製造することができる。コンピュータ可読媒体は、命令が格納されているメモリと、プロセッサとを備えるコンピューティングデバイスによって実行されてもよい。プロセッサは、3次元に曲がった形材を製造するための命令を実行するように構成されている。例えば、コンピューティングデバイスは、
図2のコントローラ50であってもよい。コントローラ50は、押出形材を製造するために、第1パンチ15、第2パンチ16、第3パンチ17の動きを制御するための命令を実行してもよい。
【0085】
図1の装置100の押出ダイ1は、3方向(すなわち、正のx方向、負のx方向および正のz方向)から押し出される材料を受け入れるように構成されているように示されているが、装置が2方向から材料を受け入れるように構成されている場合でも、3次元に曲がった形材を製造することができる。この場合、装置は、例えば、第2開口部3、第2ビレットコンテナ8、第2パンチノーズ16、第2パンチ20を備えていなくてもよい。したがって、この例では、第2ビレット12は使用されない。
【0086】
図1に示す装置の構成を参照すると、材料が正のx方向と正のz方向からのみ受け入れられる場合、負のx方向の速度v
1により、押し出された材料は負のx方向に曲がり、負のz方向の速度v
3により、押し出された材料は負のz方向に曲がる。
【0087】
これは、負のx方向と負のz方向に同時に曲がった押出形材が製造されることを意味する。したがって、3次元に曲がった形材を製造できる。正のx方向および正のz方向への曲げは、
図1の装置100に介して上述したように、速度v
1およびv
3の方向を反転させることで達成できる。
【0088】
また、押し出される材料を受け入れるために押出ダイが配置される方向は、互いに直交する必要はない。また、押し出される材料を受け入れるために押出ダイが配置される各方向は、材料がオリフィスから押し出される方向と直交する必要はない。
【0089】
図1に示す座標系では、押出ダイは、3次元速度ベクトル{x
1,y
1,z
1}で表される第1方向と、3次元速度ベクトル{x
2,y
2,z
2}で表される第2方向から、押し出される材料を受け入れるように構成されてもよい。押出ダイはさらに、オリフィスを介して材料を押し出すように構成されてもよい。この例では、オリフィスは、想定されるy軸と平行である。
【0090】
第1方向から材料を供給することは、押し出された材料が第1方向に曲がっていることを意味する。同様に、第2方向から材料を供給することは、押し出された材料が第2方向に曲がっていることを意味する。第1方向を表す速度ベクトルのx1がゼロでない場合、第1方向に材料を供給すると、押し出された材料はx方向に曲がる。例えば、x1が負の場合、押し出された材料は負のx方向に曲がる。
【0091】
同様に、第2方向を表す速度ベクトルのz2がゼロでない場合、第2方向に材料を供給すると、押し出された材料はz方向に曲がる。例えば、z2が負の場合、押し出された材料は負のz方向に曲がる。
【0092】
この例では、2つの方向の相対的な向きは、z成分がゼロである速度ベクトルで第1方向を概念的に表すことで、より簡単に理解することができる。したがって、x方向に曲がった材料を押し出すためには、第1方向は非ゼロのx成分を持つことになる。速度ベクトルのy成分は、ゼロまたは非ゼロにすることができる。したがって、第1方向の速度ベクトルは、{x1≠0,y1,z1=0}と表すことができる。
【0093】
第2方向は、第1方向と直交している必要はない。z方向に曲がった材料を押し出すために、第2方向は非ゼロのz成分を持つ速度ベクトルを有する。速度ベクトルのx成分およびy成分は、それぞれゼロまたは非ゼロとすることができる。したがって、第2方向の速度ベクトルは、{x2,y2=0,z2≠0}と表すことができる。
【0094】
第1方向の非ゼロのx成分は、押し出された材料がx方向に曲がっていることを意味する。第2方向の非ゼロのz成分は、押し出された材料がz方向に曲がっていることを意味する。第2方向のx成分が非ゼロの場合、2つの方向のx成分の相対的な大きさと方向に応じて、第1方向のx成分と累積するか、第1方向のx成分による曲率を減少させることになる。
【0095】
3次元押出形材は、材料が押出ダイに受け入れられる開口部の断面積を調整することによって、製造されてもよい。断面積を調整すると、所定のパンチ速度における押出ダイへの材料の質量流量が変化する。質量流量は、開口部の断面積を調整したり、パンチの速度を調整したりすることによっても変更できる。
【0096】
ホットビレットまたはコールドビレットが、熱間押出または冷間押出ためのチャンバに配置されてもよい。中空の押出形材を製造するために、マンドレルを押出ダイの中に配置してもよい。
【0097】
上述の実施形態は例示としてのみ記載されており、記載された実施形態はすべての点で例示としてのみ考慮されるべきであり、限定的ではない。記載された実施形態の変形は、本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。また、記載されていないが、添付の特許請求の範囲内にある多くの変形例があることも明らかであろう。