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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20240410BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240410BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240410BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M4/66 A
H01M4/64 A
H01M10/04 Z
B23K11/14
H01M50/534
H01M50/533
H01M10/0587
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021550339
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025842
(87)【国際公開番号】W WO2021065127
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019179957
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 友春
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】大門 徹也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 将史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 篤
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196959(JP,A)
【文献】特開2018-174075(JP,A)
【文献】特許第5917407(JP,B2)
【文献】特開2005-259511(JP,A)
【文献】特開2015-039713(JP,A)
【文献】特開2000-200594(JP,A)
【文献】特開2005-005215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/536
H01M 4/66
H01M 4/64
H01M 10/04
B23K 11/14
H01M 50/534
H01M 50/538
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、セパレータとを有し、前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して積層されてなる電極体と、負極集電体とを備える二次電池の製造方法であって、
前記負極は、表面粗さが0μm以上2.0μm以下であり、光沢度が50以上350以下の銅箔で構成される負極芯体と、前記負極芯体の表面が露出する露出領域を残して前記負極芯体の表面に形成される負極合材層とを含み、
前記電極体は、前記負極の前記露出領域が積層されてなる芯体積層部を有し、
前記負極集電体は、第1部材及び第2部材を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、高さが0.37mm以上0.44mm以下のプロジェクションを形成する工程と
前記第1部材及び前記第2部材によって前記芯体積層部が両側から挟まれ、前記プロジェクションが前記芯体積層部に当接した状態で、前記負極集電体と前記芯体積層部を抵抗溶接する工程と、
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記芯体積層部は、前記負極芯体を40層以上積層して形成される、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記プロジェクションは、直径が1.41mm以上1.49mm以下の円丘状に形成される、請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記プロジェクションと重なる位置において前記プロジェクションが形成された面と反対側の面に、直径が1.10mm以上1.30mm以下の凹部が形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記芯体積層部と前記負極集電体の間に、直径が4.1mm以上4.3mm以下の孔を有する絶縁シートを配置し、
前記絶縁シートの孔を介して前記芯体積層部と前記負極集電体を抵抗溶接する、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記銅箔の前記光沢度は、50以上96以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記プロジェクションは、前記第2部材のみに形成され、
前記第1部材の厚みは、前記第2部材の厚みより薄い、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の製造方法、及び二次電池に関し、特に負極芯体と負極集電体が抵抗溶接される二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体を構成する負極と、封口板等に設けられた負極端子が負極集電体を介して電気的に接続された二次電池が知られている。一般的に、負極の芯体には銅箔が用いられ、この銅箔に負極集電体が溶接される。例えば、特許文献1には、一方の表面と他方の表面との動摩擦係数が0.5以下であり、かつ銅箔表面に0.5~4nmの厚みの酸化膜及び/又は防錆皮膜が形成された銅箔からなる負極芯体が開示されている。特許文献1には、この負極芯体を用いることにより負極集電体との溶接性が向上すると記載されている。また、銅箔の表面粗さ、光沢度等を制御することで負極集電体との溶接性を改善することも提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0003】
また、負極集電体の負極芯体と接する面にプロジェクションと呼ばれる突起を設けることで、負極芯体と負極集電体の溶接性を改善する方法も知られている(例えば、特許文献4参照)。プロジェクションを設けることにより、抵抗溶接時にプロジェクションの先端部分に電流が集中して無効電流が減少するため、効率良く良好な抵抗溶接が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-99351号公報
【文献】特開2014-120399号公報
【文献】特開2018-174075号公報
【文献】特開2009-32640号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、負極芯体と負極集電体の溶接部において、芯体と集電体の間にボイドが発生する場合がある。特に、負極集電体に溶接される負極芯体の積層数が多くなると、ボイドが発生し易くなる。かかるボイドが発生すると、溶接部がはずれる、溶接部の抵抗が高くなる等の不具合が起こり得る。したがって、ボイドの発生を抑制することは重要な課題である。なお、特許文献1~4を含む従来の技術は、ボイドの抑制について未だ改良の余地がある。
【0006】
本開示の目的は、負極芯体と負極集電体の溶接部におけるボイドの発生を抑制して、芯体と集電体をしっかり溶接することが可能な方法を提供することである。
【0007】
本開示の一態様である二次電池の製造方法は、正極と、負極と、セパレータとを有し、前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して積層されてなる電極体と、負極集電体とを備える二次電池の製造方法であって、前記負極は、表面粗さが0μm以上2.0μm以下であり、光沢度が50以上350以下の銅箔で構成される負極芯体と、前記負極芯体の表面が露出する露出領域を残して前記負極芯体の表面に形成される負極合材層とを含み、前記電極体は、前記負極の前記露出領域が積層されてなる芯体積層部を有し、前記負極集電体は、構成する第1部材及び第2部材の少なくとも一方に、高さが0.36mm以上0.45mm以下のプロジェクションを有し、前記第1部材及び前記第2部材によって前記芯体積層部が両側から挟まれ、前記プロジェクションが前記芯体積層部に当接した状態で、前記負極集電体と前記芯体積層部を抵抗溶接する工程を含むことを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様である二次電池は、正極と、負極と、セパレータとを有し、前記正極と前記負極とが前記セパレータを介して積層された電極体と、負極集電体とを備える二次電池であって、前記負極は、表面粗さが2.0μm以下であり、光沢度が50以上350以下の銅箔で構成される負極芯体と、前記負極芯体の表面が露出する露出領域を残して前記負極芯体の表面に形成された負極合材層とを含み、前記電極体は、前記負極の前記露出領域が積層された芯体積層部を有し、前記芯体積層部は、前記負極集電体を構成する第1部材及び第2部材によって両側から挟まれた状態で当該各部材と溶接され、溶接により形成されたナゲットを含み、前記芯体積層部と前記負極集電体の界面には長さが1.0mmを超えるボイドが存在せず、前記ナゲットの最大径が1.6mm以上であることを特徴とする。
【0009】
本開示に係る二次電池の製造方法によれば、負極芯体と負極集電体の溶接部におけるボイドの発生が抑制され、芯体と集電体をしっかり溶接することができる。本開示に係る二次電池では、負極芯体と負極集電体の溶接部の強度が高く、低抵抗である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である二次電池の外観を示す斜視図である。
図2】実施形態の一例である電極体及び封口板の斜視図である。
図3】実施形態の一例である負極芯体と負極集電体の溶接部の断面図である。
図4】実施形態の一例である負極芯体と負極集電体の溶接工程を示す図である。
図5】実施形態の一例である負極集電体を構成する第2部材の正面図である。
図6図5中のAA線断面図である。
図7】比較例である負極芯体と負極集電体の溶接部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において、「数値A~数値B」との記載は特に断らない限り、「数値A以上数値B以下」を意味する。
【0012】
図1は実施形態の一例である二次電池10の外観を示す斜視図、図2は二次電池10を構成する電極体11及び封口板15の斜視図である。図1に例示する二次電池10は、角形の外装缶14を備える角形電池であるが、電池の外装体は外装缶14に限定されず、例えば、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された外装体であってもよく、円筒形の外装缶であってもよい。
【0013】
図1及び図2に例示するように、二次電池10は、電極体11と、電解質と、これらを収容する角形の外装缶14とを備える。外装缶14は、開口部を有する扁平な略直方体形状の金属製容器である。電極体11は、正極20と負極30がセパレータ32を介して渦巻き状に巻回され、扁平状に成形された巻回型の電極体である。正極20、負極30、及びセパレータ32はいずれも帯状の長尺体である。また、二次電池10は、正極20に接続される正極集電体25と、負極30に接続される負極集電体35とを有する。なお、電極体は、複数の正極及び複数の負極がセパレータ32を介して1枚ずつ交互に積層された積層型の電極体であってもよい。
【0014】
電解質は、水系電解質であってもよく、非水電解質であってもよい。本実施形態では、非水電解質を用いるものとする。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。なお、電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0015】
二次電池10は、正極集電体25を介して正極20と電気的に接続される正極端子12と、負極集電体35を介して負極30と電気的に接続される負極端子13とを備える。また、二次電池10は、外装缶14の開口部を塞ぐ封口板15を備える。外装缶14及び封口板15は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成される。
【0016】
本実施形態では、封口板15が細長い矩形形状を有し、封口板15の長手方向一端側に正極端子12が、他端側に負極端子13がそれぞれ配置されている。正極端子12及び負極端子13は、ほかの二次電池10や負荷に接続される外部接続端子であって、絶縁部材を介して封口板15に固定される。封口板15には、一般的に、ガス排出弁16及び電解液注入部17が設けられる。
【0017】
電極体11は、平坦部、及び一対の湾曲部を含む。電極体11は、巻回軸方向が外装缶14の横方向(正極端子12と負極端子13が並ぶ方向)に沿い、一対の湾曲部が並ぶ電極体11の幅方向が二次電池10の高さ方向(外装缶14の横方向及び厚み方向に直交する方向)に沿った状態で外装缶14に収容されている。詳しくは後述するが、電極体11の軸方向一端部には正極20の芯体積層部24が、軸方向他端部には負極30の芯体積層部34がそれぞれ形成されており、各芯体積層部が集電体を介して外部接続端子と電気的に接続されている。なお、電極体11と外装缶14の内面の間には、絶縁性の電極体ホルダ(絶縁シート)が配置されてもよい。
【0018】
正極20は、正極芯体21と、正極芯体21の表面が露出する露出領域23を残して正極芯体21の表面に形成された正極合材層(図示せず)とを含む。正極芯体21には、電池作動電圧範囲において、アルミニウムなどの正極20の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、リチウム遷移金属化合物等の正極活物質と、アセチレンブラック等の導電材と、ポリフッ化ビニリデン等の結着材とを含む。正極合材層は、正極芯体21の両面に形成される。
【0019】
正極20には、正極合材層が形成されず、正極芯体21の表面が露出した露出領域23が設けられる。露出領域23は、正極20の幅方向一端部に、正極20の長手方向に沿って帯状に形成される。また、露出領域23は、正極20の幅方向一端から略一定の幅で正極20の両面に形成される。正極20は、露出領域23が電極体11の軸方向一端に配置され、露出領域23同士がセパレータ32等を介することなく重なるように巻回される。
【0020】
負極30は、負極芯体31と、負極芯体31の表面が露出する露出領域33を残して負極芯体31の表面に形成された負極合材層(図示せず)とを含む。負極合材層は、黒鉛、Si含有化合物等の負極活物質と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の結着材とを含む。負極合材層は、負極芯体31の両面に形成される。負極芯体31の厚みは、例えば5μm~10μmであり、好ましくは8μm以下(5μm以上)である。
【0021】
負極芯体31は、表面粗さが2.0μm以下であり、光沢度が50~350の銅箔で構成される。銅箔は、Cuを主成分とし、Cr等のCu以外の金属元素を少量含有していてもよい。負極芯体31は、表面粗さが2.0μm以下、光沢度が50~350の銅箔を含む材料で構成されていればよい。負極芯体31として、表面粗さが2.0μm以下、光沢度が50~350の銅箔を用いることで、後述するプロジェクション38との相乗作用により、高強度で低抵抗な負極芯体31と負極集電体35の溶接部を形成できる。
【0022】
負極芯体31(銅箔)の表面粗さは、両面とも0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。負極芯体31の表面粗さの好適な一例は、表面の凹凸が少ない、0μm以上1.60μm以下である。表面粗さは、JIS B 0601 1994に定められた測定方法に従い、表面粗さ測定機(Kosaka製、SE1700α)を用いて非接触法で測定される。
【0023】
負極芯体31(銅箔)の光沢度は、両面とも50~350であることが好ましい。負極芯体31の光沢度の好適な一例は、50~96である。光沢度は、JIS(Z8741)に定められた測定方法に従い、表面光沢測定器(BYK製、Micro-gloss)を用いて60°の入射角で測定される。
【0024】
負極30には、負極合材層が形成されず、負極芯体31の表面が露出した露出領域33が設けられる。露出領域33は、負極30の幅方向一端部に、負極30の長手方向に沿って帯状に形成される。また、露出領域33は、負極30の幅方向一端から略一定の幅で負極30の両面に形成される。露出領域33の幅は、例えば12mm以上である。負極30は、露出領域33が電極体11の軸方向他端に配置され、露出領域33同士がセパレータ32等を介することなく重なるように巻回される。
【0025】
電極体11は、正極20の露出領域23が複数層重なって形成された芯体積層部24と、負極30の露出領域33が複数層重なって形成された芯体積層部34とを有する。上記のように、正極20の露出領域23は電極体11の軸方向一端部に形成され、負極30の露出領域33は電極体11の軸方向他端部に形成される。正極20と負極30は、セパレータ32を介して正極合材層と負極合材層が対向するように配置されるが、正極20の露出領域23が負極30と対向しないように、また負極30の露出領域33が正極20と対向しないように、正負極を電極体11の軸方向にずらして配置される。
【0026】
芯体積層部24,34は、例えば、正極芯体21及び負極芯体31をそれぞれ40層以上積層して形成される。芯体積層部24,34における芯体の積層数は、正極20及び負極30の巻回数に依存し、巻回数が多くなるほど積層数は増加する。なお、正極20及び負極30の巻回数を多くすることで、二次電池10の高容量及び高出力化を図ることができる。一方、芯体積層部24,34における芯体の積層数が増えると、芯体の表面状態のばらつきの影響を受け、集電体との界面にボイドが発生し易くなる等、溶接不良が起こり易くなる。特に、銅箔で構成される芯体積層部34と負極集電体35の溶接が問題となる。
【0027】
以下では、芯体積層部と集電体の溶接部について、負極30を例に挙げて説明する。なお、正極20の芯体積層部24と正極集電体25の溶接部には、以下で説明する負極30の場合と同様の構成を適用できる。或いは、芯体積層部24と正極集電体25の溶接部には、従来公知の構成を適用してもよい。
【0028】
負極集電体35は、例えば、銅を主成分とする金属で構成される。負極集電体35は、第1部材36、及び第2部材37を含むことが好ましい。芯体積層部34は、第1部材36及び第2部材37によって電極体11の厚み方向両側から挟まれた状態で、第1部材36及び第2部材37に溶接されている。芯体積層部34は、電極体11の厚み方向に圧縮され、重なり合う露出領域33同士が接触している。
【0029】
負極集電体35を構成する第1部材36は、芯体積層部34の一方の面に溶接され、封口板15側に延びて負極端子13に接続されている。第2部材37は、略矩形状の板状部材であって、溶接時に発生するスパッタを防ぐ等の観点から、端部が芯体積層部34と反対側に折り曲げられていてもよい。第2部材37は、芯体積層部34の他方の面に溶接され、他の部材と接続されていない。したがって、負極端子13と負極30を電気的に接続する集電機能を有する部材は第1部材36である。第2部材37は、第1部材36と共に芯体積層部34を挟持して、芯体積層部34と負極集電体35の良好な溶接性を確保するための受け部材といえる。
【0030】
図3は、芯体積層部34と負極集電体35の溶接部及びその近傍の断面図である。図3に例示するように、芯体積層部34と負極集電体35の溶接部には、溶接によりナゲット40が形成されている。ナゲット40は、芯体積層部34を形成する負極芯体31及び負極集電体35が溶融して塊状となった領域を意味する。芯体積層部34と負極集電体35の溶接部には、大きなナゲット40が形成され、その最大径(X)は1.6mm以上であることが好ましい。ナゲット40は、例えば、芯体積層部34の厚み方向中央部を中心として球状に形成されるが、一般的にその直径には多少のばらつきが存在する。ナゲット40の最大径(X)とは、ナゲット40の最大差し渡し径を意味する。
【0031】
芯体積層部34は、上記のように、第1部材36及び第2部材37によって両側から挟まれた状態で当該各部材と溶接され、溶接により形成されたナゲット40を含む。芯体積層部34のナゲット40と、第1部材36及び第2部材37の接触長(Y)は、それぞれ1.0mm以上であることが好ましい。芯体積層部34と負極集電体35(第1部材36及び第2部材37)の界面には長さ(最大差し渡し長さ)が1.0mmを超える、後述の図7に例示するようなボイドが存在せず、芯体積層部34と負極集電体35が強く接合している。このため、芯体積層部34と負極集電体35の溶接部は、高強度かつ低抵抗である。
【0032】
ナゲット40の最大径(X)に対する、ナゲット40と負極集電体35の接触長(Y)の割合(Y/X)は、40%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。ナゲット40の最大径(X)が同じである場合、例えば、芯体積層部34と負極集電体35の界面に存在するボイドが減少するほど、接触長(Y)は長くなり、Y/Xは高い値となる。
【0033】
図3では図示していないが(図2及び後述の図5参照)、芯体積層部34と負極集電体35の間には、直径が4.1mm~4.3mmの孔42を有する絶縁シート41が配置されていることが好ましい。このような直径にすることで、抵抗溶接時に絶縁シートが融けることを防ぐことができる。
【0034】
以下、図4図6を参照しながら、上記構成を備える二次電池10の製造方法の一例について詳説する。図4は芯体積層部34と負極集電体35の溶接工程を示す図、図5及び図6は芯体積層部34に溶接される前の負極集電体35を構成する第2部材37を示す図である。
【0035】
図4に例示するように、二次電池10の製造工程では、一対の電極棒50を用いて芯体積層部34と負極集電体35を抵抗溶接する。二次電池10の製造工程には、下記の工程が含まれる。
(1)負極集電体35を構成する第1部材36及び第2部材37の少なくとも一方にプロジェクション38を形成する工程。
(2)芯体積層部34が第1部材36及び第2部材37によって両側から挟まれ、プロジェクション38が芯体積層部34に当接した状態で、芯体積層部34と負極集電体35を抵抗溶接する工程。
【0036】
二次電池10の製造工程には、さらに、正極20を作製する工程、負極30を作製する工程、電極体11を作製する工程、集電体と外部接続端子を溶接する工程、及び二次電池10を構成する各部材を組み立てる工程が含まれる。負極30は、例えば長尺状の銅箔からなる負極芯体31の両面に、長手方向に沿った帯状の露出領域33を残して、負極活物質及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合材層を負極芯体31の両面に形成することにより作製できる。正極20についても負極30と同様に、合材スラリーを用いて作製できる。
【0037】
電極体11は、芯体積層部24,34が形成されるようにセパレータ32を介して正極20及び負極30を渦巻き状に巻回した後、扁平状にプレス成形して電極体11を作製する。なお、正極20及び負極30を扁平状に巻回して電極体11を作製することも可能である。露出領域23,33が互いに反対側に位置するように、かつ露出領域23が負極30及びセパレータ32と重ならないように、また露出領域33が正極20及びセパレータ32と重ならないように、セパレータ32を介して正極20及び負極30を重ね合わせ、所定の巻芯を用いて巻回することで電極体11を作製する。
【0038】
図4図6に示す例では、負極集電体35を構成する第2部材37にプロジェクション38が形成されている。プロジェクション38は、芯体積層部34に当接する突起であって、芯体積層部34側に突出している。負極集電体35にプロジェクション38を形成することにより、抵抗溶接時にプロジェクション38の先端部分に電流が集中して無効電流が減少するため、効率良く良好な抵抗溶接を可能とする。なお、プロジェクション38は第1部材36のみに形成されてもよく、第1部材36及び第2部材37の両方に形成されてもよい。
【0039】
負極集電体35(第1部材36及び第2部材37)の芯体積層部34に当接する面(以下、「当接面」という場合がある)は、プロジェクション38が形成される部分を除き略平坦である。例えば、第1部材36の厚みは0.95mm~1.05mmであり、第2部材37の厚みは0.77mm~0.83mmである。本実施形態のように、プロジェクション38が芯体積層部34を挟む2つの部材のうち一方のみに形成される場合、プロジェクション38が形成される第2部材37の厚みを、プロジェクション38が形成されない第1部材36の厚みより薄くすることが好ましい。このように厚みに差をもたすことで、全体の熱バランスが安定し、つまりは溶接の安定性につながる。
【0040】
本実施形態では、第2部材37の当接面に、高さ(h)が0.36mm~0.45mmのプロジェクション38を形成する。プロジェクション38の高さ(h)を当該範囲内に制御することにより、高さ(h)が当該範囲外である場合と比べて、芯体積層部34と負極集電体35の間におけるボイドの発生が大幅に抑制され、きれいなナゲット40が形成される。
【0041】
プロジェクション38の高さ(h)は、0.37mm~0.44mmが好ましく、0.38mm~0.43mmがより好ましく、0.39mm~0.42mmが特に好ましい。なお、プロジェクション38の高さ(h)とは、負極集電体35の当接面の平坦な領域からプロジェクション38の先端までの負極集電体35の厚み方向に沿った長さを意味する。第2部材37の当接面は、プロジェクション38が形成された領域を除き平坦である。プロジェクション38の高さが0.45mmを超えると、抵抗溶接を行う前の加圧で電極体11が傾き、プロジェクション38と芯体積層部34の接触抵抗がばらつくことがあるため、上述の範囲とする。
【0042】
プロジェクション38は、例えば、先端が平坦な断面視略台形状に形成されてもよいが、好ましくは円丘状に形成される。プロジェクション38を円丘状に形成することにより、その先端に集中する電流を増やすことができ、より効率良く良好な抵抗溶接が可能となる。また、円丘状のプロジェクション38の直径(d)は、1.41mm~1.49mmに制御されることが好ましい。直径(d)を当該範囲内に制御することにより、直径(d)が当該範囲外である場合と比べて、ボイドの発生が抑制され、きれいなナゲット40が形成される。
【0043】
プロジェクション38は、第2部材37の当接面に複数形成されてもよいが、抵抗溶接時の電流集中の観点から、好ましくは第2部材37に1つ形成される。プロジェクション38は、第1部材36及び第2部材37の当接面に1つずつ形成されてもよい。プロジェクション38は、上記寸法を満たし、溶接操作に支障がない限り、第2部材37の当接面のいずれに形成されてもよい。但し、第1部材36及び第2部材37に1つずつプロジェクション38を形成する場合は、芯体積層部34を挟んで各プロジェクション38が対向するように形成される。
【0044】
プロジェクション38は、例えば、当接面と反対側の面から第2部材37をプレス加工して形成される。このため、第2部材37には、プロジェクション38と第2部材37の厚み方向に重なる位置において、プロジェクション38(当接面)と反対側の面に凹部39が形成される。なお、芯体積層部34と負極集電体35の抵抗溶接時に、プロジェクション38は溶融して潰れるが、凹部39の形状は残るため、凹部39の形状、寸法、及び第2部材37の厚み等から、プロジェクション38の形状、寸法等を推定できる。
【0045】
凹部39の直径(D)は、例えば1.10mm~1.30mmであり、好ましくは1.15mm~1.25mmである。図6に例示するように、凹部39は、プロジェクション38側に向かって直径が小さくなった断面視略台形状に形成される。この場合、直径(D)は凹部39の入口における最大径を意味する。また、凹部39の深さ(H)は、例えば0.40mm~0.60mmであり、好ましくは0.45mm~0.55mmである。なお、第1部材36にプロジェクション38が形成される場合は、第1部材36に凹部39が形成される。
【0046】
二次電池10の製造工程では、上記のように、芯体積層部34を第1部材36及び第2部材37で挟み、プロジェクション38を芯体積層部34に押し当てた状態で、芯体積層部34と負極集電体35を抵抗溶接する。このとき、芯体積層部34と第1部材36の間に絶縁シート41を配置し、また芯体積層部34と第2部材37の間に絶縁シート41を配置する。抵抗溶接工程では、一対の電極棒50を用いて芯体積層部34及び負極集電体35を厚み方向両側から加圧しながら、電流を流してジュール熱を発生させることにより各部材を溶融させてナゲット40を形成する。
【0047】
抵抗溶接は、芯体積層部34と負極集電体35の間に、直径が4.1mm~4.3mmの孔42を有する絶縁シート41(図5参照)を配置した状態で行われることが好ましい。即ち、絶縁シート41の孔42を介して芯体積層部34と負極集電体35を抵抗溶接する。絶縁シート41を設けることにより、抵抗溶接時に起こるスパッタによって発生する導電性のチリが飛散することを抑制できる。また、第2部材37のプロジェクション以外の部分と芯体積層部34の接触を防ぐことができる。本工程は、絶縁シート41の孔42にプロジェクション38を配置した状態で行う。
【実施例
【0048】
以下、実施例により本開示をさらに詳説するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>
[正極の作製]
正極合材スラリーを幅127mmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に塗布(塗布幅108mm)して塗膜を形成、乾燥し、塗膜を圧縮した。塗膜(正極合材層)が形成された正極芯体を所定の電極サイズに切断して、正極を作製した。正極には、正極合材スラリーが塗布されず、芯体表面が露出した露出領域が正極の長手方向に沿って一定の幅で帯状に形成されている。
【0050】
[負極の作製]
負極合材スラリーを幅130mm、厚み8μmの負極芯体の両面に塗布(塗布幅117mm)して塗膜を形成、乾燥し、塗膜を圧縮した。塗膜(負極合材層)が形成された負極芯体を所定の電極サイズに切断して、負極を作製した。実施例1では、負極芯体として、表面粗さが1.9μm、光沢度が340の銅箔を用いた。負極には、負極合材スラリーが塗布されず、芯体表面が露出した露出領域が負極の長手方向に沿って一定の幅(13mm)で帯状に形成されている。
【0051】
[電極体の作製]
作製した正極及び負極を、各々の露出領域が電極の幅方向反対側に位置するように幅119mmのセパレータを介して重ね合わせ、巻回体の径方向にセパレータA/負極/セパレータB/正極/セパレータA・・・の順で積層されるように渦巻き状に巻回した後、巻回体の径方向にプレス(温度25℃、プレス圧85kN、プレス時間5s)して、厚み15.7mm(30個作製したときの平均厚み)の扁平状の巻回型電極体を作製した。電極体の軸方向一端部には、正極の芯体露出領域が積層された正極芯体積層部が形成され、軸方向他端部には、負極の芯体露出領域が積層された負極芯体積層部が形成される。負極芯体積層部における負極芯体の積層数は84層であった。
【0052】
[溶接工程]
次に、負極集電体を構成する第1部材を封口体にかしめ固定して負極端子と接続し、当該第1部材と、負極集電体の第2部材とで、負極芯体積層部を圧縮し、積層部と負極集電体を抵抗溶接する。第1部材及び第2部材は銅製の部材であって、第1部材の厚みは1.0mm、第2部材の厚み0.8mmである。実施例1では、負極集電体の第2部材をプレス加工して、高さ(h)が0.41mm、直径(d)が1.45mmの円丘状のプロジェクションを形成した。第2部材の芯体積層部に当接する当接面と反対側の面には、直径(D)が1.20mm、深さ(H)が0.5mmの凹部が形成された。
【0053】
また、負極芯体積層部と、第1部材及び第2部材との間に、直径4.2mmの孔が形成された厚み0.1mmの絶縁シートを配置した。このとき、2枚の絶縁シートの孔が芯体積層部の厚み方向に重なり、かつ第2部材のプロジェクションが孔の中心に位置するように絶縁シートを配置した。
【0054】
上記のように、絶縁シートを介して負極集電体の第1部材及び第2部材を負極芯体積層部の厚み方向両側に配置した後、第1部材及び第2部材に一対の電極棒を押し当てて積層部を圧縮した状態で(加圧力1600N)、2段通電方式で電流を流して抵抗溶接を行った。第1通電は通電時間を2.3msとし、第2通電は通電時間を3msとした。
【0055】
[溶接部の評価]
下記の手順で負極芯体積層部と負極集電体の溶接部を評価した。
・ ニッパーを使って溶接部の近傍を切り取る。
・ 切り取ったサンプル片をエポキシ樹脂で固める。
・ ナゲットの中心部までエポキシ樹脂で固めたサンプル片を削る。
・ ナゲットが観察し易いように不要物をエッチング除去する。
・ 処理したサンプル片を光学顕微鏡で観察する。
【0056】
上記方法で溶接部を観察したところ、芯体積層部と集電体の界面に小さなボイドが見られたものの、最大径1.6mmを超える大きなナゲットの形成が確認された。また、芯体積層部と集電体の界面には長さ1.0mmを超えるボイドは存在せず、ナゲットと集電体の接触長は1.0mm以上であった。また、絶縁シートの溶融も見られなかった。
【0057】
島津製作所製のオートグラフを用いて溶接部の強度(剥離強度)を測定した結果、剥離強度は626Nであった。また日置電機製の抵抗測定器を用いて負極抵抗を測定した結果、抵抗値は0.0056mΩであった。以下の実施例、比較例についても、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
<実施例2>
負極芯体として、表面粗さが1.6μm、光沢度が96の銅箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0059】
<実施例3>
負極集電体の第2部材に形成するプロジェクションの高さ(h)を0.36mm、直径(d)を1.19mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0060】
<比較例1>
負極集電体の第2部材にプロジェクションを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0061】
<比較例2>
負極芯体として、表面粗さが2.1μm、光沢度が355の銅箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0062】
<比較例3>
負極芯体として、表面粗さが2.1μm、光沢度が175の銅箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0063】
<比較例4>
負極芯体として、表面粗さが1.6μm、光沢度が355の銅箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0064】
<比較例5>
負極集電体の第2部材に形成するプロジェクションの高さ(h)を0.28mm、直径(d)を1.11mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で電極体を作製し、負極芯体積層部と負極集電体を抵抗溶接して溶接部の評価を行った。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、実施例では、負極芯体積層部と負極集電体の溶接部におけるボイドの発生が大幅に抑制され、剥離強度が高く、低抵抗な溶接部が得られた。特に、実施例2では、溶接部にボイドが見られず、きれいなナゲットが形成された。
【0067】
他方、比較例では、図7に示すように、負極集電体の第1部材と芯体積層部の間に、最大差し渡し長さ(Z)が1.0mmを超えるボイドが形成され、溶接はずれの頻度が大きく上昇した。また、絶縁シートの溶融も発生した。特に、プロジェクションを有さない第2部材を用いた比較例1では、第1部材と芯体積層部の間だけでなく、第2部材と芯体積層部の間にも、大きなボイドが確認された。
【符号の説明】
【0068】
10 二次電池
11 電極体
12 正極端子
13 負極端子
14 外装缶
15 封口板
16 ガス排出弁
17 電解液注入部
20 正極
21 正極芯体
23,33 露出領域
24,34 芯体積層部
25 正極集電体
30 負極
31 負極芯体
32 セパレータ
35 負極集電体
36 第1部材
37 第2部材
38 プロジェクション
39 凹部
40 ナゲット
41 絶縁シート
42 孔
50 電極棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7