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特許7470138突刺部バルーンシールを有する改良された経中隔突刺システムを含む医療処置用の方向性バルーン経中隔挿入デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】突刺部バルーンシールを有する改良された経中隔突刺システムを含む医療処置用の方向性バルーン経中隔挿入デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A61B17/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021573542
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 US2020036965
(87)【国際公開番号】W WO2020251999
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】62/859,943
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520034646
【氏名又は名称】イースト エンド メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】マイーニ,ブリジェシュワー,エス.
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0029722(US,A1)
【文献】特表2005-511199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓心房中隔の正確かつ安全な経中隔穿刺を容易にするのに適した経中隔挿入デバイスであって、
前記経中隔挿入デバイスが使用されている時、患者の前記心臓心房中隔に向かって配置される遠位端と、前記患者の外部にある近位端とを有するシースであって、前記シースの前記近位端及び前記遠位端の間に延びている少なくとも1つの管腔を含むシースと、
前記シースの前記遠位端に隣接して前記シースから外側に半径方向に延びている少なくとも1つの位置決めバルーンであって、膨張位置から収縮位置に移動可能であり、前記膨張位置において、前記シースの前記遠位端を越えて張り出して延出し、前記心臓心房中隔の偶発的な穿刺を防止し、前記心臓心房中隔の卵円窩に対して前記経中隔挿入デバイスを安定させる前記少なくとも1つの位置決めバルーンと、
前記シースの前記少なくとも1つの管腔内に長手方向に延びている突刺部であって、遠位端を有する前記突刺部と、
前記突刺部の前記遠位端に隣接して前記突刺部から外側に半径方向に延びている突刺部バルーンと、
を含み、
前記シースが、前記少なくとも1つの位置決めバルーンに隣接して配置された少なくとも1つの収縮ポートを含み、前記少なくとも1つの収縮ポートが、前記シースの前記少なくとも1つの管腔及び前記少なくとも1つの位置決めバルーン間の流体連通を提供し、前記突刺部が、前記突刺部の前記遠位端が前記シースの前記少なくとも1つの管腔内に位置する引込位置から、前記突刺部の前記遠位端が前記シースの前記遠位端から遠位方向に延出している動作位置に移動可能であり、前記突刺部がポート及び管腔を含み、前記突刺部の前記管腔及び前記ポートが流体連通して前記突刺部の前記管腔及び前記突刺部バルーン間の流体連通を提供し、前記突刺部バルーンが収縮位置から膨張位置に移動可能であり、前記膨張位置において前記突刺部が前記引込位置にある時、前記突刺部バルーンは前記シースの前記少なくとも1つの収縮ポートに隣接して配置されて前記シースの前記少なくとも1つの収縮ポートを密封し、前記少なくとも1つの位置決めバルーンが前記収縮位置から前記膨張位置に移動可能であり、前記突刺部が前記動作位置にある時、前記突刺部バルーンは前記シースの前記少なくとも1つの収縮ポートから遠位に配置されて前記シースの前記少なくとも1つの収縮ポートを開放し、前記少なくとも1つの位置決めバルーンが前記膨張位置から前記収縮位置に移動可能であることを特徴とする経中隔挿入デバイス。
【請求項2】
前記シースが、前記少なくとも1つの位置決めバルーンを膨張させる少なくとも1つの膨張ポートを含むことを特徴とする請求項1に記載の経中隔挿入デバイス。
【請求項3】
前記シースが、前記シースの前記少なくとも1つの膨張ポートに接続された少なくとも1つのハイポチューブを含み、前記少なくとも1つの位置決めバルーンが、前記少なくとも1つのハイポチューブを通って供給される流体により膨張されることを特徴とする請求項2に記載の経中隔挿入デバイス。
【請求項4】
前記シースの前記少なくとも1つの収縮ポートが、前記シースの前記少なくとも1つの膨張ポートよりも遠位に配置されることを特徴とする請求項2に記載の経中隔挿入デバイス。
【請求項5】
前記突刺部が、前記突刺部の前記遠位端から前記近位端に延びている中心管腔を含み、そして、前記突刺部の前記中心管腔内に配置された経中隔ワイヤを含み、前記経中隔ワイヤは、前記心臓心房中隔を正確に突刺するように構成された遠位端を有することを特徴とする請求項1に記載の経中隔挿入デバイス。
【請求項6】
前記突刺部が、前記突刺部の前記遠位端に高周波(RF)先端を含み、前記高周波先端は高周波エネルギを伝達するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の経中隔挿入デバイス。
【請求項7】
前記突刺部が、前記高周波先端に伝送される高周波エネルギを生成する高周波発生器を含むことを特徴とする請求項6に記載の経中隔挿入デバイス。
【請求項8】
さらに、前記少なくとも1つの位置決めバルーンの表面上に、超音波を放射及び受信し、前記超音波を電気信号に変換する少なくとも1つの超音波送受信機を含むことを特徴とする請求項1に記載の経中隔挿入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年6月11日に出願された米国仮出願第62/859,943号に基づく優先権を主張し、この出願は、参照によりその全体が本願に援用される。
【0002】
本発明は、包括的には、心臓カテーテルに関し、詳しくは、左心房介入の実施において左心房へのアクセスを提供するために、迅速かつ安全な経中隔穿刺及び心中隔を通るカテーテルの挿入を容易にするのに適した経中隔挿入デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓カテーテル法は、診断又は治療を目的として、細長いチューブ又はカテーテルを動脈又は静脈を通して心臓の特定の領域に挿入する医療処置である。より具体的には、カテーテルは、心室、血管及び弁に挿入できる。
【0004】
心臓カテーテル法は、冠動脈造影及び左心室造影等の検査に用いられる。冠動脈造影検査では、先に動脈に挿入されたカテーテルに染料(造影剤)を注入した患者のX線画像を撮影することによって、冠動脈の可視化と閉塞の可能性の発見が容易になる。左心室造影検査では、左側の心室と心臓の左側の弁の機能を調べることができ、冠動脈造影と併用することもある。心臓カテーテル法は、心臓の4つの心室全体の圧力を測定し、主要な心臓弁の圧力差を評価するためにも使用できる。更なる用途では、心臓カテーテル法を使用して、心拍出量、又は心臓によって毎分送り出される血液量を推定できる。
【0005】
一部の医療処置では、心臓の左心房へのカテーテル挿入が必要になることがある。この目的では、大動脈内にカテーテルを配置する必要を回避するために、左心房へのアクセスは、通常、右心房へのアクセス、心臓の左心房と右心房の間の心房中隔への穿刺、及び中隔を通って左心房にカテーテルを通すことによって達成される。誤って周囲の組織を穿刺すると心臓に非常に重大な損傷を与える可能性があるため、経中隔穿刺は、極めて正確に行わなければならない。更に、経中隔穿刺は、複雑な器具を必要とする場合があり、これらの器具は、穿刺の精度を保証することに寄与しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
心房中隔を穿刺し心臓カテーテル法を実施しようとする医師にとって、今日利用可能なデバイスの使用には、多くの課題がある。すなわち、今日、心臓カテーテル法を実施する施術者が直面する多くの課題の例としては、心房中隔の位置を特定すること、穿刺デバイスの遠位端を中隔の所望の位置に適切に配置すること、心房中隔を安全に穿刺すること、偶発的な穿刺を回避すること、及び穿刺後のカテーテルの追跡及び操作が挙げられる。
【0007】
したがって、左心房介入の実施において、左心房へのアクセスを提供するための迅速かつ安全な経中隔穿刺を容易にするのに適したデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの及び他の利点は、例えば、心臓心房中隔の正確かつ安全な経中隔穿刺を容易にするのに適した経中隔挿入デバイスによって提供される。前記経中隔挿入デバイスは、内部に少なくとも1つの管腔を画定し、前記経中隔挿入デバイスが使用されている時、患者の前記心臓心房中隔に向かって配置される遠位端と、前記患者の外部にある近位端とを有するシースと、前記シースの前記遠位端に接続された1以上の位置決めバルーンであって、前記経中隔挿入デバイスが使用されている時に膨張し、前記シースの前記遠位端を越えて張り出して延出し、前記心臓心房中隔の偶発的な穿刺を防止し、前記心臓心房中隔の卵円窩に対して前記経中隔挿入デバイスを安定させる前記1以上の位置決めバルーンと、前記少なくとも1つの管腔内に移動可能に配置された突刺部であって、前記患者の前記心臓心房中隔に向かって配置された遠位端を有する前記突刺部と、前記突刺部上に配置された突刺部バルーンと、を含み、前記シースが、前記1以上の位置決めバルーンを収縮させる1以上の収縮ポートを含み、前記突刺部バルーンが、膨張時に、前記シースの前記1以上の収縮ポートを密封することができ、それにより、前記1以上の位置決めバルーンが膨張することを可能にする。
【0009】
これらの及び他の利点は、例えば、経中隔挿入デバイスにより心臓心房中隔の正確かつ安全な経中隔穿刺を容易にするのに適した方法によって提供される。前記方法は、患者の心臓心房中隔に向かって配置された遠位端を有する突刺部上に配置された突刺部バルーンを膨張させ、膨張した前記突刺部バルーンによりシースに配置された1以上の収縮ポートを密封し、前記シースの遠位端に接続された1以上の位置決めバルーンを膨張させ、膨張した前記1以上の位置決めバルーンが前記シースの前記遠位端を越えて張り出して延出し、前記1以上の位置決めバルーンが膨張している間、前記心臓心房中隔の卵円窩に対して前記突刺部を位置決めし、前記卵円窩に向かって前記突刺部を前進させ、前記突刺部の前記遠位端が張り出した前記1以上の位置決めバルーンを越えて延出し、前記突刺部が前進している間、前記突刺部バルーンが前記1以上の収縮ポートから離れ、前記突刺部の前記遠位端が前記卵円窩を押している間、前記1以上の位置決めバルーンを収縮させる、ことを含む。
【0010】
本明細書に記載され、以下の図面によって示される好ましい実施形態は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、ここで、同様の符号は同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】経中隔挿入デバイスの実施形態の側面斜視断面図である。
図1B】デバイスを通って部分的に延び、デバイスから延出する拡張器を示す、経中隔挿入デバイスの実施形態の側面斜視断面図である。
図1C】デバイスを通って部分的に延びる拡張器を示す、経中隔挿入デバイスの実施形態の側面斜視断面図である。
図2A】1以上のバルーンに接続されたハイポチューブを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視図である。
図2B】1以上のバルーンに接続されたハイポチューブを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の正面図である。
図2C】超音波撮像又は可視化機能を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図2D】超音波撮像又は可視化機能を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図3A】複数のバルーンと、複数のバルーンに接続された複数のハイポチューブと、を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視図である。
図3B】複数のバルーンと、複数のバルーンに接続された複数のハイポチューブと、を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の正面図である。
図4】高周波エネルギ機能を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図5】拡張器に接続された駆動装置と、駆動装置に接続されたノブと、を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視図である。
図6】膨張されて張り出したバルーンと、経中隔挿入デバイス内に配置され、張り出したバルーンに対してサブ平面状の拡張器と、を示す経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図7】膨張されて張り出したバルーンを有し、心臓心房中隔に突刺する前の拡張器及び経中隔挿入デバイスの実施形態の端部断面図である。
図8】心房中隔をテンティングする為に前進した拡張器を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図9】心房中隔を通る突刺後に前進した経中隔ワイヤを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図10A】異なる角度を有する可撓性経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図10B】異なる角度を有する可撓性経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図10C】異なる角度を有する可撓性経中隔挿入デバイスの実施形態の斜視断面図である。
図11】マーキングを有する張り出しバルーンを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図12】マーカバンドを有する張り出しバルーンを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図13】電極先端を有する拡張器を含む経中隔挿入デバイスの実施形態の側面断面図である。
図14】機械的偏向機能を有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図15】経中隔挿入デバイスの実施形態で使用できる湾曲した拡張器の実施形態の側面図である。
図16】ハンドル及び安定器を示す経中隔挿入デバイスの実施形態の近位端の斜視側面図である。
図17A】差別的に膨張可能なバルーンを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図17B】差別的に膨張可能なバルーンを有する経中隔挿入デバイスの実施形態の側面図である。
図18】複数の角度を有する可撓性経中隔挿入デバイスの実施形態で使用できる可鍛性又は可撓性経中隔針の側面図である。
図19A】収縮した突刺部バルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の側面図である。
図19B】収縮した突刺部バルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の拡大側面図である。
図19C】収縮した突刺部バルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の端部断面図である。
図20A】膨張した突刺部バルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の側面図である。
図20B】膨張した突刺部バルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の拡大側面図である。
図20C】膨張した突刺部バルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の端部断面図である。
図21A】膨張した位置決めバルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の側面断面図である。
図21B】膨張した位置決めバルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の拡大側面断面図である。
図22A】収縮した位置決めバルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の側面断面図である。
図22B】収縮した位置決めバルーンを有する突刺部バルーンシールによる改良された経中隔突刺システムの実施形態の突刺先端の拡大側面断面図である。
図23A】経中隔突刺デバイスの突刺部多腔延出部の遠位端部の側面図である。
図23B】経中隔突刺デバイスの突刺部多腔延出部の遠位端部の側面図である。
図23C】経中隔突刺デバイスの突刺部多腔延出部の遠位端部の側面図である。
図23D】経中隔突刺デバイスの突刺部多腔延出部の遠位端部の側面図である。
図24】経中隔挿入デバイスにより心臓心房中隔の正確かつ安全な経中隔穿刺を容易にするのに適した方法のワークフロー図である、
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、説明される実施形態又は説明される実施形態の用途及び使用を限定することを意図するものではない。ここで使用する用語「例示的」又は「例証的」は、「例、具体例、又は例証として用いられる」ことを意味する。「例示的」又は「例証的」として記載される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利であるとは解釈されない。以下に記載する実施形態の全ては、当業者が本開示の実施形態を作成又は使用することを可能にするために提供される例示的な実施形態であり、特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を制限することを意図しない。更に、上記の技術分野、背景技術、発明の概要又は下記の詳細な説明において提示する何れかの明示的又は黙示的な理論の何れかに拘束される意図もない。添付の図面に示し、以下の説明に記載する特定のデバイス及びプロセスは、特許請求の範囲に定義する発明の概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、本明細書に開示する実施形態に関連する特定の寸法及び他の物理的特性は、特許請求の範囲で別段の明示的な記載がない限り、限定的には解釈されない。
【0013】
図1A図1Cには、経中隔挿入デバイス又はカテーテル10の実施形態が図示されている。ここでは、経中隔挿入デバイス10の遠位端、即ち開口を有する経中隔挿入デバイス10の端部が図示されており、その開口を通って拡張器、カテーテル、及び針が、例えば心臓心房中隔を突刺する為に、延出する。図1Aに示すように、経中隔挿入デバイス10は、外側シース又はバルーンシャフト12と、経中隔挿入デバイス10の遠位端13に配置された1以上のバルーン14と、を含む。シース12は、中心管腔15を含み且つ画定することができる。シース12は、ポリマ、例えば、PEBA(例えば、Pebax(登録商標))等の熱可塑性エラストマー(thermoplastics elastomer:TPE)、ナイロン、Pellathane等の熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane:TPU)、これらに類する材料、及びこれらの組み合わせを含む様々な材料から形成できる。シース12は、カテーテルシャフトとも呼ばれ、心臓カテーテル法に使用できる。穿刺後、シース12は、中隔を通して左心房に挿入されることができる。あるいは、シース12は、穿刺後に中隔を通して挿入される別個のカテーテルを含んでもよい。経中隔挿入デバイス10は、図1Bに示すように、中心管腔15に配置された拡張器16も含む。1以上のバルーン14は、好ましくは、その両端でシース12に密封され、気密かつ水密である。
【0014】
引き続き図1Aを参照すると、この図では、張り出している1以上のバルーン14は、膨張していない。ここでは、遠位端13の頂部及び底部にバルーン14の断面を示しているが、バルーン14は、好ましくは、経中隔挿入デバイス10(図4参照)の遠位端又は端部13の周囲に延びる。張り出している1以上のバルーン14は、膨張したときにバルーン14がシース12の遠位端13から張り出し又は延出するような形態を有する。
【0015】
図1Bでは、拡張器16は、シース12内に配置されるとともに、デバイス10の遠位端13を越えて、シース12から部分的に延出している。張り出している1以上のバルーン14は、膨張されておらず、拡張器16は、バルーン14を越えて延出する。なお、ここに示すシース12及び拡張器16の相対的なサイズは、例示の目的のためであり、拡張器16の直径は、図示のサイズよりシース12の直径に対して相対的に大きくても小さくてもよいが、拡張器16は、必然的にシース12よりも小さい直径を有する。拡張器16は、尖った端部を有するように示されているが、拡張器16は、丸みを帯びた端部又は比較的平坦な端部を有してもよい。ここに記載する実施形態は、針又は他の鋭利な器具を使用せずに中隔を穿刺するように設計及び意図されている。
【0016】
ここで、図1Cでは、拡張器16は、シース12の中心管腔15内に配置されている。拡張器16の先端部は、経中隔挿入デバイス10の端部に対してサブ平面状(sub-planar)であり、経中隔挿入デバイス10の遠位端13内に配置されている。ここに示す位置は、1以上のバルーン14の膨張直前に拡張器16が配置される位置であってもよい。なお、ここに示すカテーテル/シース12及び拡張器16の相対的なサイズは、例示の目的のためであり、拡張器16の直径は、図示のサイズよりシース12の直径に対して相対的に大きくても小さくてもよい。通常、拡張器16は、カテーテル/シース12よりも小さい直径又はゲージを有するが、拡張器16のカテーテル/シース12への嵌合は、拡張器16が経中隔挿入デバイス10内の位置に対して(横方向又は軸方向に)移動しないように又は「ぐらつかない」ように、十分に密着して適合していることが好ましい。拡張器16は、必然的にシース12よりも小さい直径を有する。幾つかの実施形態において、シース12材料は、大径の拡張器16及び他の大径デバイスがシース12を通過できるように、十分な可鍛性を有する(malleable)ものであってもよい。このような実施形態では、シース12は、より大きな直径の拡張器16又は他のデバイスを収容するように伸張する。
【0017】
図2Aには、経中隔挿入デバイス又はカテーテル200の実施形態の側面斜視図が図示されている。図2Aには、経中隔挿入デバイス200の遠位端、即ち開口を有する経中隔挿入デバイス200の端部が図示されており、その開口を通って拡張器、カテーテル、及び針が、例えば心臓心房中隔を突刺する為に、延出する。ここに記載の実施形態において、針は心臓心房中隔を突刺又は貫通する為に鋭利な針であってもよく、又は心臓心房中隔を突刺又は貫通する為にエネルギ伝達機能を備えていてもよい。図2Aに図示されているように、経中隔挿入デバイス200は、外側シース又はカテーテルシャフト212と、経中隔挿入デバイス200の遠位端213に配置された1以上のバルーン214と、を含む。シース212は、中心管腔215を画定する管腔シャフト211を含む。シース212は、ポリマ、例えば、PEBA(例えば、Pebax(登録商標))等の熱可塑性エラストマー(thermoplastics elastomer:TPE)、ナイロン、Pellathane等の熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane:TPU)、これらに類する材料、及びこれらの組み合わせを含む様々な材料から形成できる。シース212は、カテーテルシャフトとも呼ばれ、心臓カテーテル法に使用できる。穿刺後、シース212は、中隔を通して左心房に挿入されることができる。あるいは、シース212は、複数の管腔を分離して画定する複数の管腔シャフトを含んでもよい。経中隔挿入デバイス200は、中心管腔215に配置された拡張器216も含む。1以上のバルーン214は、好ましくは、その両端でシース212に密封され、気密かつ水密である。経中隔挿入デバイス200は、1以上のバルーン214の膨張又は収縮の為のハイポチューブ217を含む。ハイポチューブ217は、シース又はカテーテルシャフト212内に収容される。経中隔挿入デバイス200はさらに、1以上のバルーン214を膨張させる為にガス又は流体を供給する為に、又は、1以上のバルーン214を収縮させる為に1以上のバルーン214からガス又は流体を除去する為に、ハイポチューブ217に接続された(不図示の)ポートを含む。1以上のバルーン214は、完全に膨張又は収縮することができ、又は、所望の程度に膨張又は収縮することができる。図2Bには、シース212、中心管腔215、及びハイポチューブ217の断面図を示す、経中隔挿入デバイス200の実施形態の遠位端213の正面断面図が図示されている。
【0018】
図2A及び図2Bに図示されている実施形態において、経中隔挿入デバイス200は、超音波撮像又は可視化の為の超音波チップ又はトランスデューサ26を含む(図2C及び図2D参照)。経中隔シース212又はバルーン214は、挿入処置を誘導する為に使用することができる超音波チップ又はトランスデューサを(内部又は上に)収容することができる。超音波チップ又はトランスデューサは、既知の超音波可視化装置により検出可能な超音波エネルギを放射及び受信し、心室(例えば、右心房、窩、心房中隔、左心房、心耳、僧帽弁、心室等)の画像を生成する。超音波チップ及びトランスデューサは、超音波を電気信号に変換し、及び/又は、電気信号を超音波に変換するトランスデューサである。送信及び受信の両方を実行するこれらの機器は、超音波送受信機とも呼ばれ、多くの超音波センサは、検出及び送信の両方を実行できるので、センサだけでなく送受信機である。そのような撮像は、経中隔挿入デバイス200の操作者が、心室を可視化することを可能にし、そして、経中隔挿入デバイス200の遠位端又は端部213の位置を決定することを可能にし、それにより、経中隔挿入デバイス200のより精密な操作が可能になる。使用されるそのような超音波チップ又はトランスデューサは、参照により本願に援用される米国特許出願公開第2003/019546号に記載の超音波チップ又はトランスデューサと同様のものであり、又は、当業者には既知の任意の他の超音波トランスデューサをシース212又はバルーン214内又は上に配置するのに十分な程度の小ささに作成することができる。
【0019】
図2C及び図2Dには、超音波撮像又は可視化機能を有する経中隔挿入デバイス200の実施形態が図示されている。図示されているバルーン14は、バルーン14内又は上に配置された1以上の超音波チップ又はトランスデューサ26を含む。超音波チップ又はトランスデューサ26は、超音波の放射及び受信の両方を実行し、超音波を電気信号に変換し、例えばシース12を通るワイヤを通して電気信号を送信する超音波送受信機であることができる。超音波チップ又はトランスデューサ26は、WiFi又は他の無線接続を介して、受信した信号から画像(静止画及び動画の両方)を生成する外部撮像装置に接続されることができる。
【0020】
超音波チップ又はトランスデューサ26は、バルーン14の内面又は外面に取り付けられることができる。超音波チップ又はトランスデューサ26は、線状、円盤状、又は十字状に配置されることができる。超音波チップ又はトランスデューサ26は、図2Cに図示されているように、前向きに(例えば、バルーンの遠位端上に心房中隔の方を向いて)配置されることができ、又は、図2Dに図示されているように、前向き及び横向き(心房中隔の方を向いて、そして、遠位端又は前端に対して垂直な方を向いて)等の異なる方向に配置されることができる。事実、超音波チップ又はトランスデューサ26の向きは、バルーン14が膨張しているか否かに依存する。バルーン14が完全に膨張された時、超音波トランスデューサ26は、図2Cに図示されているように、前向きであることができ、又は、図2Dに図示されているように、前向き及び垂直方向向きであることができる。しかしながら、バルーン14が収縮された時、超音波トランスデューサ26は、平坦に折りたたまれ、シース12の遠位端13の側面上に配置される。したがって、バルーン14が収縮された時、超音波チップ又はトランスデューサ26は、横向きであることができる。膨張時に、超音波トランスデューサ26の向きは、バルーン14が膨張するにしたがって変化する(横向きから図2Cに図示されている超音波トランスデューサのような前向きに移動する)。したがって、経中隔挿入デバイス200の操作者は、バルーン14の膨張を変化させることにより、異なる撮像表示の為に超音波トランスデューサ26の異なる向きを達成することができる。
【0021】
超音波チップ又はトランスデューサ26は、超音波を放射し、及び/又は、例えば心房内の、表面及び構造から反射した超音波を受信/検出し、その後、例えばシース12内の管腔15を通って延びているワイヤ又はケーブルを介して超音波チップ又はトランスデューサ26に接続されている(不図示の)撮像システムにより読み出すことができる。この方法により、超音波チップ又はトランスデューサ26は、心房中隔及び左心房構造の可視化を可能にする。
【0022】
超音波チップ又はトランスデューサ26は、シース12の遠位端13上(シース12内又はシース上の他の位置)に配置することもできる。超音波チップ又はトランスデューサ26は、前向きに(シース12の遠位端の方を向いて)構成されるか、又は、設置されることができる。あるいは、超音波チップ又はトランスデューサ26は、後向きに(シース12の近位端の方を向いて)反転されることもできる。超音波チップ又はトランスデューサ26の向きを変更することができる。
【0023】
図3A及び図3Bには、中心管腔315を画定する中心管腔シャフト311を取り囲む複数のバルーン314と、複数のバルーン314に接続された複数のハイポチューブ317及び中心管腔シャフト311を含むシース又はカテーテルシャフト312と、を含む経中隔挿入デバイス300が図示されている。図3Aは、シース又はカテーテルシャフト312の側面図であり、図3Bは、シース又はカテーテルシャフト312の正面断面図である。バルーン314は、円形、円筒形、球状、涙形状又は洋梨形状等の様々な形状であることができ、様々な長さであることができる。バルーン314は、張り出したオーバーシャフトを有していても有していなくてもよい。バルーン314は、遠位端又は端部313の周りに配置され、遠位端又は端部313の周囲の周りに延出することができる。複数のバルーン314は、1以上のハイポチューブ317に接続され、シース又はカテーテルシャフト312内に収容されるハイポチューブ317を介して膨張又は収縮される。各バルーン314は、バルーン314の膨張及び収縮を独立して制御する、対応するハイポチューブ317に接続される。あるいは、複数のバルーン314は、1以上のハイポチューブ317を共有することができる。膨張流体又はガスは、ハイポチューブ317を通って流れ、バルーン314を膨張又は収縮させる。外側被覆319が複数のバルーン314を被覆することができる。
【0024】
複数のバルーン314の間に、1以上の超音波チップ又はトランスデューサ326が配置され、超音波撮像又は可視化機能を提供する。説明の目的で、図3Bには、複数のバルーン314の間に配置された超音波チップ又はトランスデューサ326が図示されているが、超音波チップ又はトランスデューサ326はバルーン314内又は上に配置することもできる。超音波チップ又はトランスデューサ326はバルーン314の内面又は外面に取り付けることができる。超音波チップ又はトランスデューサ326は、超音波の放射及び受信の両方を実行し、超音波を電気信号に変換し、例えばシース又はカテーテルシャフト312内を通るワイヤ320を通して電気信号を送信する超音波送受信機であることができる。しかしながら、超音波チップ又はトランスデューサ326は、WiFi又は他の無線接続を介して、受信した信号から画像(静止画及び動画の両方)を生成する外部撮像装置に無線接続されることができる。
【0025】
超音波チップ又はトランスデューサ326は、バルーン314の形状に基づいて設計されることができる。バルーン314は、円形、円筒形、球状、涙形状又は洋梨形状であることができ、張り出し部を有していても有していなくてもよい。超音波チップ又はトランスデューサ326は、バルーン314の形状に対応する形状を有することができる。あるいは、1以上の超音波チップ又はトランスデューサ326は、バルーン314の形状に対応する形状に配置されることができる。バルーン314の形状により、超音波チップ又はトランスデューサ326は、横向き、前向き、又は後向きであることができる。超音波チップ又はトランスデューサ326は、線状、円盤状、又は十字形に配置されることができる。超音波チップ又はトランスデューサ326は、前向きに(例えば、バルーンの遠位端上に心房中隔の方を向いて)配置されることができ、又は、前向き及び横向き(心房中隔の方を向いて、そして、遠位端又は前端に対して垂直な方を向いて)等の異なる方向に配置されることができる。
【0026】
超音波チップ又はトランスデューサ326の向きは、バルーン314が膨張しているか否かに依存する。バルーン314が完全に膨張された時、超音波トランスデューサ326は前向きであることができる。しかしながら、バルーン314が収縮された時、超音波チップ又はトランスデューサ326は、平坦に折りたたまれ、中心管腔315の遠位端313の側面上に配置される。したがって、バルーン314が収縮された時、超音波チップ又はトランスデューサ326は横向きであることができる。膨張時に、超音波チップ又はトランスデューサ326の向きは、バルーン314が膨張するにしたがって変化する(横向きから前向きに移動する)。したがって、経中隔挿入デバイス300の操作者は、バルーン314の膨張を変化させることにより、異なる撮像表示の為に超音波チップ又はトランスデューサ326の異なる向きを達成することができる。
【0027】
ここで、図4には、高周波エネルギ機能を有する経中隔挿入デバイス10の実施形態が図示されている。図示されている経中隔挿入デバイス10は、シース12、張り出している1以上のバルーン14、及び拡張器16を含む。拡張器16は、図示されているように遠位端に、高周波エネルギ機能を有し又は高周波エネルギを伝達可能なキャップ又はクラウン22を含むことができる。あるいは、キャップ又はクラウンは、高周波電極を含んでもよく又は高周波電極であってもよい。拡張器16は、例えば、外部ハブにおいて、高周波エネルギをキャップ又はクラウン22に供給する(不図示の)高周波エネルギ源に、例えば、(不図示の)近位端で接続することができる。高周波エネルギは、拡張器16を介して伝達してもよい。このようにキャップ又はクラウン22を備えた拡張器16は、心房中隔をテンティングし、高周波エネルギの伝達によって心房中隔を穿刺できる。この実施形態において、鋭い針の使用を回避できる。高周波エネルギ機能を有し又は高周波エネルギを伝達可能なキャップ又はクラウンを遠位端に有する拡張器は、図2A図2B及び図3A図3Bに図示されている経中隔挿入デバイス200及び300に使用することができる。
【0028】
図5には、拡張器416に接続された駆動装置421と、駆動装置421に接続され、シース又はカテーテルシャフト412の軸方向に沿って拡張器416が横断することを引き起こすノブ422と、を含む経中隔挿入デバイス400が図示されている。拡張器416は、ノブ422が回転している間、シース412の軸方向に沿って前進又は後進することができる。駆動装置421は、拡張器416を駆動するナットアセンブリを含むことができる。拡張器416は、高周波エネルギ機能を有していても有していなくてもよい。
【0029】
ここで、図6には、(不図示の)ハイポチューブを通してバルーン14内にガス又は流体を供給することにより張り出しバルーン14が膨張された経中隔挿入デバイス10の実施形態の遠位端が図示されている。拡張器16は、シース12の中心管腔15内に配置され、拡張器16の先端は、経中隔挿入デバイス10の遠位端13に配置され、張り出しバルーン14に対してサブ平面状であることが示されている。ここで言う平面とは、張り出しバルーン14の端部によって形成される、経中隔挿入デバイス10及び拡張器16の軸線に直交する平面である。したがって、拡張器16は、操作者がバルーン14を収縮させ、拡張器16が心房中隔100をテンティングし穿刺しようとするまでは、張り出しバルーン14に対してサブ平面状のままである。上述のように、バルーン14は、好ましくは、経中隔挿入デバイス10の遠位端13の周囲を完全に包囲するように延出する。したがって、図7は、膨張バルーン14の断面のみを示している。
【0030】
ここで、図7には、張り出しバルーン14が膨張された経中隔挿入デバイス10の実施形態の遠位端の正面断面図が図示されている。図示されているように、膨張した張り出しバルーン14は、好ましくは、シース12(したがって、デバイス10)の全周に亘って延出することが好ましい。シース12の管腔15内には、拡張器16の先端が示されている。拡張器16の先端は、遠位端13を越えて延出して心臓心房中隔を穿刺する前においては、経中隔挿入デバイス10の遠位端13内に配置される。
【0031】
ここで、図8には、心房中隔100をテンティングするために拡張器16を前方に前進させた経中隔挿入デバイス10の実施形態の遠位端が図示されている。拡張器16は、シース12の中心管腔15を通って延び、張り出しバルーン14を通過するように示されている。この段階で、バルーン14は、ハイポチューブを通してバルーン14内のガス又は流体を除去することにより収縮される。このように延ばされて心房中隔100に押し付けられた拡張器16は、心房中隔100をテンティングし、心房中隔100を経中隔挿入デバイス10から遠ざける。
【0032】
ここで、図9には、(例えば、ここに記述するような拡張器16を介したエネルギの印加によって)中隔壁を穿刺し、拡張器16を通って経中隔ワイヤ又はワイヤレール20が左心房110内に延出した後、拡張器16が心房中隔100を通って前方に進められた経中隔挿入デバイス10の実施形態の遠位端が図示されている。ワイヤレール20は、拡張器16の管腔19内に位置することができる。拡張器16は、ワイヤレール20を左心房内に進める導管として使用できる。
【0033】
ワイヤレール20は、経中隔挿入デバイス10によって穿設された中隔壁の穿刺部を通って左心房に入るデバイスのためのガイドとして機能することができる。例えば、ワイヤレール20は、経中隔挿入デバイス10又は他のカテーテルを左心房内に案内できる。このようにして、カテーテルは、ワイヤレール20によって案内され、又はワイヤレール20上を安全に左心房内に進められる。実施形態では、(例えば、経中隔挿入デバイス10の近位端の供給源から供給されたエネルギで中隔を切除又は穿刺するために)ワイヤレール20に通電してもよい。
【0034】
引き続き図9を参照すると、拡張器16は、その先端を通って延びる開口又は管腔19を画定すると共にこれを含み、ここを通して、経中隔ワイヤ20が延出している。図示されているように拡張器16を延出して心房中隔をテンティングすることにより、中隔は、拡張器16の先端のキャップ又は電極を通して伝達されるエネルギによって穿刺でき、経中隔ワイヤレール20は、拡張器16の先端の開口を通って、拡張器16のキャップによって心房中隔に穿設された穿刺部を通って延出される。
【0035】
図10A図10Cには、異なる角度で屈曲又は角度付けされた可撓性シース12を有する経中隔挿入デバイス10の実施形態の異なる図が図示されている。経中隔挿入デバイス10は、シース12の管腔シャフト内に挿入され、シース12を屈曲させる角度固定拡張器16を用いて、心房の解剖学的構造に応じて屈曲又は角度付けすることができる。このような角度固定拡張器16は、例えば、0~270°の任意の角度に固定できる。あるいは、シース12、管腔シャフト及び拡張器16は、いずれも可撓性を有していてもよく(好ましくは、このような可撓性シース12を通して挿入されるハイポチューブ、針及びカテーテルは、少なくとも部分的に可撓性又は可鍛性を有し)、経中隔挿入デバイス10は屈曲又は角度付けしてもよく、これによって、例えば、デバイス10の遠位端13に接続された(不図示の)ハンドル又はワイヤを用いて、シース12及び拡張器16を屈曲又は角度付けしてもよい。また、ハンドル及び/又はワイヤを用いて、経中隔挿入デバイス10の遠位端13を回転又は屈曲又は移動させてもよく、例えば、図示されているように、シース12の軸に対して、シースの遠位端13を「上」、「下」、「左」、又は「右」に移動させ、或いは遠位端13を角度付けしてもよい。
【0036】
ここで、図11には、膨張した張り出しバルーン14を有する経中隔挿入デバイス10の実施形態の遠位端が図示されている。図示されているバルーン14は、1以上のマーカ24を有する実施形態である。マーカ24は、例えば、放射線不透過性及び/又はエコー源性マーカ24であってもよい。放射線不透過性又はエコー源性マーカとして、マーカ24は、心臓カテーテル法の施術者によって使用されるスキャナー上で可視である。マーカ24は、E又はCのような文字の形態であってもよい。マーカ24は、画像を用いてマーカ24、したがって、バルーン14の位置を目視することによって、バルーン14及びシース12を3次元空間(例えば、心房)に適切に配置することを可能にする。
【0037】
具体的には、実際の動作において、遠位端13の位置が後方から遠いほど、E(又はC)のより多くの部分が可視となる。経中隔挿入デバイス10の操作者が遠位端13を患者の後方に向けて回動又は回転させると、目視できるEの横線が短くなる。好ましい実施形態では、Eの縦線のみが目視される(すなわち、Iとして現れる)場合、遠位端13は、その最大後方位置まで回転されている。
【0038】
引き続き図11について説明すると、バルーン14は、膨張した状態で示されている。しかしながら、拡張器16の遠位端は、膨張したバルーン14の遠位端によって形成された平面を通過して、バルーン14から遠位方向に突出又は延出していることが示されている。これにより、拡張器16は、心房中隔に隣接する、テンティング位置及び穿刺位置に移動されている。この段階で、バルーン14は、収縮しており又は間もなく収縮し、心房中隔の穿刺が行われようとしている。
【0039】
ここで、図12には、経中隔挿入デバイス10の実施形態に配置できる張り出しバルーン14の他の実施形態が図示されている。張り出しバルーン14は、バルーン14の一部の周りにリング又はバンド28を含むことができる。リング又はバンド28は、図11に示すマーカ24と同様に、マーカとして機能できる。したがって、リング28は、放射線不透過性又はエコー源性であってもよく、心臓カテーテル法(例えば、透視撮像装置)における可視化に使用される走査装置によって目視できる。文字E又はCと同様に、リング28の見え方は、経中隔挿入デバイス10の遠位端13がより後方に移動するにつれて変化する。最も後方から遠い位置にある場合、リング28は、経中隔挿入デバイス10の軸を横切って配置された単なる線又はバンドとして現れる。デバイス10を回転させて遠位端13を後方にかなり接近させると、リング28は、完全な「平らな」円又はリングとして現れる。図12において、遠位端13は、部分的に回転されており、したがって、リング28が部分的に見えている。
【0040】
図11及び図12の両方では、マーカ24及びリング28は、バルーン14上に配置された状態で記載及び図示されている。他の実施形態において、マーカ24及び/又はリング28は、シース12及び/又は拡張器16上に配置してもよい。このように配置した場合、マーカ24及び/又はリング28は、上述と実質的に同じ手法で機能する(すなわち、遠位端がより後方に移動するにつれてEの横線が見えなくなり、リングがより見えるようになる)。マーカ24及び/又はリング28は、バルーン14、シース12、及び拡張器16の3つの全て又はこれらの組み合わせに配置してもよい。
【0041】
ここで、図13には、電極先端を有する拡張器16を含む経中隔挿入デバイス10の実施形態の遠位端が図示されている。拡張器16のシャフトは、中心管腔50を画定し、これを含む。管腔50は、以下に限定されるものではないが、0.020~0.040インチ(0.508~1.016mm)の範囲で画定してもよい。拡張器16は、ポリマ材料(例えば、HDPE、LDPE、PTFE、又はこれらの組み合わせ)から形成してもよい。図示されている拡張器シャフト16は、遠位電極先端52を含む。電極先端52は、金属合金(例えば、PtIr、Au、又はこれらの組み合わせ)を含むことができる。好ましい実施形態では、電極先端52のサイズ及び形状は、以下に限定されるものではないが、20~30Wの印加電力範囲において、組織の生体内切除(in vivo ablation)のためのプラズマを生成するのに十分であるように選択される。導電体54は、電極先端52から拡張器16の(不図示の)近位端まで延びる。導電体54は、拡張器シャフト16によって画定され、これに含まれる追加の管腔56を軸方向に貫通してもよい。導電体54は、拡張器16の曲げ又は屈曲の際の延長に適応するために、コイル要素58を含むことができる。
【0042】
シース12の遠位端には、ハイポチューブ17に接続された張り出しバルーン14が取り付けられている。張り出しバルーン14は、ポリマ材料(例えば、PET、ナイロン、ポリウレタン、ポリアミド、又はこれらの組み合わせ)から形成してもよい。張り出しバルーン14は、以下に限定されるものではないが、直径が5~20mm、長さが20~30mmの範囲であってもよい。張り出しバルーン14は、バルーン14に接続されたハイポチューブ17を通したガス又は流体の注入により膨張されることができる。張り出しバルーン14は、バルーン14に接続されたハイポチューブ17を通したバルーン14内のガス又は流体の除去により収縮されることができる。心房中隔を穿刺するための経中隔挿入デバイス10の適切な機能又は動作中に、拡張器16が管腔15から外側に移動すると、バルーン14からガス又は流体を除去することによりバルーン14が収縮する。張り出しバルーン14は、このようなバルーン14がシース12の遠位端13から張り出し又は延出する形態である。張り出し又は延出60は、以下に限定されるものではないが、0.0~5.0mmの範囲内であってもよい。張り出し又は延出60の端部は、拡張器16が心房中隔をテンティングして穿刺するまでサブ平面状のままである平面である。
【0043】
ここで、図14には、機械的偏向機構を含む経中隔挿入デバイス10の実施形態が図示されている。機械的偏向機構は、シース12の遠位端を、経中隔挿入デバイス10の軸に対して様々な角度に偏向又は角度付けすることを可能にする。機械的偏向機構は、シース12の遠位端に取り付けられたプルワイヤアンカ40、及び(不図示の)プルワイヤによってプルワイヤアンカ40に接続されたプルワイヤアクチュエータ42を含んでもよい。図示されているように、プルワイヤアクチュエータ42を回転させることにより、シース12の遠位端を偏向又は角度付けする力をプルワイヤアンカ40に加えることができる。プルワイヤアクチュエータ42は、これに接続された(不図示の)ハンドルによって回転できる。シース12の遠位端の偏向又は角度付けは、心房中隔とのより良好な交差(例えば、より垂直、同一平面)を実現でき、したがって、経中隔挿入デバイス10によるより良好な穿刺及び挿入を実現できる。
【0044】
ここで、図15には、それぞれが異なる曲線プロファイル(すなわち、偏向又は曲線の異なる角度)を有する湾曲した拡張器16の3つの実施形態が図示されている。湾曲した拡張器16は、可撓性又は可鍛性のシース12を有する経中隔挿入デバイス10の実施形態において使用できる。このような可撓性又は可鍛性のシース12は、シース12内に挿入された湾曲した拡張器16によって「操縦される」ので、操縦可能なシース12と呼ぶことができる。
【0045】
ここで、図16には、外部安定器80を備えた経中隔挿入デバイス10の実施形態が図示されている。安定器80は、経中隔挿入デバイス10の近位端を安定した状態に保つと共に、デバイス10の遠位端及び近位端に向けた経中隔挿入デバイス10の移動、デバイス10の近位端の回転/トルク動作、及びデバイス10のダイヤル又は他の操作子の操作を可能にする。実際に、安定器80は、経中隔挿入デバイス10、及び重要な点として、シース12の遠位端、バルーン14、及び拡張器16の望ましくない動きを実質的に防止する。
【0046】
安定器80は、経中隔挿入デバイス10の近位端で安定器80をハンドル70に連結する連結ロッド又はアーム82を含む。連結アーム82は、安定器プラットフォーム84に取り付けられる。連結アーム82は、好ましくは、所望の回転運動及び制御操作を可能にしながら、ハンドル70を確実に且つ緊密に保持する。安定器プラットフォーム84は、安定器ベース86に移動可能に取り付けられ、これにより安定器プラットフォーム84、したがって、ハンドル70及び経中隔挿入デバイス10は、経中隔挿入デバイス10の軸線に沿って前方及び後方に、患者の挿入点(典型的には、患者の鼠径部の大腿静脈)に向かって及びそこから離れるように摺動できる。安定器ベース86は、通常、テーブル又は患者の脚部のような平坦で安定した表面に固定される。このように構成された安定器80は、経中隔挿入デバイス10及びそのハンドル70の望ましくない垂直、回転、又は他の移動を防止し、経中隔挿入デバイス10及びそのハンドル70を安定した状態に維持しつつ、ハンドル70の正確な操作及びその制御を可能にする。
【0047】
引き続き図16を参照して、図示されているように、経中隔挿入デバイス10の近位端は、経中隔挿入デバイス10、特に拡張器16及び拡張器16の遠位端の操作及び制御の為のハンドル70を含むことができる。ハンドル70は、拡張器16の遠位端を回転又は偏向する為に使用することができる第1のダイヤル72を含むことができ、効果的に、(図16の矢印により示されているように)経中隔挿入デバイス10の軸に対して拡張器16の遠位端を上下に移動する。ハンドル70は、シース12の外に拡張器16の遠位端を押出/延出し、そして、シース12内に拡張器16を引き戻す為の第2のダイヤル74も含むことができ、効果的に、(図16の矢印により示されているように)経中隔挿入デバイス10の軸に沿って拡張器16を移動する。図16の回転する矢印により示されているように、ハンドル70は、経中隔挿入デバイス10の軸に対して左右に経中隔挿入デバイスの遠位端を偏向又は回転させる為に、回転することもでき、その方向における拡張器16の偏向の角度を増加又は減少する。第1のダイヤル72が拡張器16の遠位端をY軸に沿って移動する場合、経中隔挿入デバイス10の軸はZ軸とみなされ、したがって、第2のダイヤル74は拡張器16をZ軸に沿って移動し、回転ハンドル70は経中隔挿入デバイス10の遠位端(即ち、拡張器16の遠位端)をX軸に沿って移動する。ハンドル70は、経中隔挿入デバイス10内に挿入される拡張器16及び他の装置が挿入されるポートを含む。ハンドル70は、外部ハブ、外部エネルギ源、及び膨張液又はガスへの接続を可能にする1以上の管又は他のポートも含むことができる。
【0048】
ここに示されている実施形態において、バルーン14及び拡張器16は、左心房内のエネルギ源として使用することができ、左心房内に存在する肺静脈、左心耳、僧帽弁、及び左心室にエネルギを伝達する為に使用することができる。そのような実施形態は、シース12内の管腔に延びているワイヤ又は他の導体を通して、バルーン14及び/又は拡張器16に接続された外部エネルギ源を含む。バルーン14及び/又は拡張器16を介したエネルギの伝達は、熱/低温又は高周波、レーザ又は電気エネルギであることができる。そのようなエネルギは、バルーン14の内部又は外部のニチノールケージ等の金属プラットフォームを通して伝達される。経中隔挿入デバイス10は、バルーン14と連動してバルーン14にエネルギを伝達する、シースの近位端の外部のエネルギ源も含むことができる。
【0049】
図17A及び図17Bには、バルーン14の差別的膨張を可能にする経中隔挿入デバイス10の実施形態が図示されている。バルーン14の差別的膨張は、患者の心臓内の状態及びデバイス操作者のニーズに基づいてバルーン14の膨張を調節することを可能にする。例えば、心房中隔の卵円窩部分の寸法が、突刺部位(卵円窩を通して突刺される場合は心房中隔)で必要な膨張バルーン14の所望の寸法を規定することができる。複数の窩は寸法がかなり相違することができる。窩が大きくなるにつれて、バルーン14により心房中隔をテンティングすることがより困難になる。大きな窩は、垂れ下がる傾向があり、操作がより困難になる。したがって、大きな窩では、バルーン14のより大きな遠位端が心房中隔の適切なテンティングをより容易にする。事実、窩を通過又は交差するまでバルーン14を均一に膨張することが理想的であり、その後、窩をどかす為にバルーン14の遠位端142が差別的に膨張される。図17Aにおいて、バルーン14の遠位端又は遠位部142は、バルーン14の近位端144よりも小さい(より膨張していない)。
【0050】
反対に、窩が小さくなるにつれて、心房中隔のテンティングがより簡単になるが、心房中隔の近くでバルーン14を操作する空間は少なくなる。その結果、より小さなバルーン14の遠位端が望ましい。近位部144をより膨張させることは、バルーン14を正しい場所に固定することを補助する為にも利点がある。図17Bにおいて、バルーン14の遠位端又は遠位部はバルーン14の近位端又は近位部よりも大きい(より膨張している)。図17A及び図17Bの両方において、拡張器16は、バルーン14の遠位端を超えてシース12から押出され、心房中隔100をテンティングし、突刺が行われようとしている。
【0051】
バルーン14のこの差別的膨張は、バルーン14の異なる部分に異なる材料を使用すること(例えば、遠位端142に近位端又は近位部144よりも膨張しやすい材料を使用すること、又はその反対)により達成される。一般的に、バルーン14は、適合性材料又は非適合性材料、又はその組合せから成ることができる。適合性材料は、バルーン14に膨張液又はガスが追加されるにつれて(少なくとも破損するまで)膨張し続ける。非適合性材料は、設定又は指定された膨張レベルまでしか膨張しない。差別的に膨張するバルーン14を提供する為に、適合性材料及び非適合性材料の組合せを使用することができる。例えば、遠位端142は適合性材料により形成し、近位端144は非適合性材料により形成することによって、より大きな遠位端142が可能になる。反対に、近位端144は適合性材料により形成し、遠位端142は非適合性材料により形成することによって、より大きな近位端144が可能になる。バルーン14の異なる部分にエネルギを加えてその部分の適合性及び膨張性を増加又は減少する等のバルーン14の差別的な膨張を提供する他の手段を使用することもできる。
【0052】
バルーン14は、これらの解剖場所内に他の装置を案内する為に使用することもでき、又は、血管造影又は血行動態監視バルーンとして使用することもできる。バルーン14の差別的膨張は、そのような装置を適切な方向に向ける為に使用することができる。
【0053】
図18には、可撓性シースを有する、又は、複数の角度に角度付け可能な経中隔挿入デバイス10と共に使用することができる可鍛性経中隔針90の実施形態が図示されている。実施形態において、可鍛性経中隔針90は、様々な直径及び長さであることができる。例えば、実施形態は、71cm、89cm、及び98cmの長さで入手可能な18ゲージの経中隔針を含むことができる。実施形態において、可鍛性経中隔針90は、近位部92、遠位部94、及びその間の中間部96において異なる剛性を有する。例えば、可鍛性経中隔針90は、近位部92及び遠位部94においてより剛性が高く、中間部96においてより可撓性が高い(剛性が低い)ことができる。中間部は、経中隔挿入デバイス10及び拡張器16が角度付けされる場所であることができる。実施形態において、可鍛性経中隔針90が使用され、そして、提供された制御ハンドルが、三次元の移動を可能にする。図示されている可鍛性経中隔針90は、好ましくは、少なくとも部分的に可鍛性又は可撓性である。可鍛性経中隔針90の近位端92は、剛性である(例えば、金属等の剛性材料から成る)ことができる。可鍛性経中隔針90の中間部96は、可鍛性又は可撓性である(例えば、ゴム等の可撓性、可鍛性材料から成る)ことができる。したがって、中間部は屈曲又は湾曲することができ、可鍛性経中隔針90が、角度付けされた又は屈曲したシース12を通過することを可能にする。
【0054】
可鍛性経中隔針90の遠位端94(即ち、心臓心房中隔を突刺する端部)は剛性であることができ、そして、心房中隔を突刺する為に心房中隔にエネルギを伝達する為に、先端にキャップ又は電極を有することができる。実施形態において、経中隔針は、制御された中隔突刺を引き起こす高周波エネルギを伝送することができる。そのような経中隔針は、可鍛性であっても、可鍛性でなくともよいが、遠位端の先端のキャップ又はクラウン(例えば、電極)を通して高周波エネルギを伝達することができる。可鍛性経中隔針90の実施形態は、機械的又は物理的に心房中隔を突刺又は貫通する為に、剛性で鋭利な端部を含むことができる。経中隔針90は、例えば、(不図示の)近位端において、針を通して遠位端の先端に高周波エネルギを提供する(不図示の)高周波(RF)エネルギ源に、例えば、外部ハブにおいて接続されることができる。そのような実施形態において、拡張器16は、心房中隔をテンティングし、そして、高周波エネルギを伝達可能な経中隔針が、高周波エネルギの伝達により心房中隔の突刺を引き起こすことができる。
【0055】
実施形態は、シース12の遠位端、又はシースの長さ全体を拡張することができる追加の拡張器を含むことができ、それにより、シース12のフレンチサイズをかなり増加させる。例えば、シース12内に配置されたバルーンは、シース12を拡張する為に膨張されることもできる。そのような実施形態において、経中隔挿入デバイス10は、より大きな装置を収容及び伝達するために使用されることができ、又は、一度シース12から押出されて塞栓形成された(embolized)装置を引き戻すことができる。そのようなバルーンは、1以上のハイポチューブを通して膨張させることができる。
【0056】
実施形態において、エネルギ、通常、電気エネルギは、経中隔挿入デバイス10を通して導かれ、シース12のフレンチサイズを増加又は減少する為に使用されることができる。そのような実施形態において、シース12は、特定のエネルギが加えられると膨張する、又は、可鍛性が増加することが知られている材料から作製される。この方法により、シース12のフレンチサイズを所与の処置中に必要な寸法に調節することができる。そのようなエネルギは、シース12又は経中隔挿入デバイス10の他の要素内に取り付けられ、経中隔挿入デバイス10の近位端の外部のエネルギ源に接続されたワイヤ又は導電材を通して加えられることができる。同様に、経中隔挿入デバイス10の部品又は部分は、エネルギの印加により、選択的により剛性を高くし、又はより可撓性/柔軟性を高くすることができる。したがって、異なる時間に経中隔挿入デバイス10の異なる部品に異なるエネルギを加えることにより、通常カテーテルよりも大きくてかさばる様々な装置がカテーテルを通ることを可能にする為に経中隔挿入デバイス10の寸法を調節することができる。実施形態において、経中隔挿入デバイス10は、36フレンチサイズまでの装置を収容することができる。
【0057】
経中隔挿入デバイス10の実施形態において、MRI技術を使用して関心のある胸腔内領域の可視化が提供される。例えば、実施形態は、遠位部及び近位部を有する中空針を含む針システムを提供することができ、前記遠位部は心筋壁を貫通する為に鋭利にされた最遠端を有する。針は、第1の導体、前記針の近位部にわたって第1の導体を被覆するように加えられた絶縁体、及び絶縁体を被覆するように加えられた第2の導体を含むことができる。方法はさらに、針システムが心筋壁に近接するように導き、能動的MRI追跡を使用して針システムの進行を追跡し、心筋壁を貫通して関心のある胸腔内領域に接近し、そして、針システムをMRIアンテナとして使用し、関心のある胸腔内領域から磁気共鳴信号を受信する。
【0058】
関連する実施形態において、上述の超音波チップ又はトランスデューサ226又は326と同様に、MRIアンテナは、シース12の遠位端13、拡張器16又はバルーン14上に設置することができる。そのようなMRIアンテナ又は他のMRI要素を接続するワイヤは、シース12又は拡張器16内の管腔を通過することができ、そして、経中隔挿入デバイス10の近位端の外部の適切な磁気共鳴エネルギ源と接続する。
【0059】
図19A図20Cには、突刺部バルーンシール504による改良された経中隔突刺デバイス500の実施形態が図示されている。図19A図19Cには、突刺部バルーン504が収縮した時の経中隔突刺デバイス500の側面図、部分Cの拡大側面図、及び断面D-Dの断面図がそれぞれ図示されている。図20A図20Cには、突刺部バルーン504が膨張した時の経中隔突刺デバイス500の側面図、部分Eの拡大側面図、及び断面F-Fの断面図がそれぞれ図示されている。
【0060】
図19A図20Cを参照して、経中隔突刺デバイス500は、高周波(RF)発生器プラグ501、Yコネクタ502、並びに、シース514及び突刺部515(図21B参照)を含む突刺部多腔延出部503を含む。高周波発生器プラグ501は、Yコネクタ502を介して突刺部多腔延出部503に接続され、突刺部多腔延出部503に配置された突刺部515に位置する(不図示の)高周波発生器に電力を供給する。突刺部515は、シース514内に配置され、経中隔突刺デバイス500の使用時に、患者の心臓心房中隔に向かって配置される遠位端506を有する。突刺部バルーン504は突刺部515上に取り付けられ、突刺部515の遠位端506の近くに配置される。図19Bの拡大側面図及び図19Cの断面図は、収縮した突刺部バルーン504を示しており、図20Bの拡大側面図及び図20Cの断面図は、膨張した突刺部バルーン504を示している。
【0061】
突刺部515は、突刺部バルーン504を膨張させる膨張ポート507と、膨張ポート507に接続され、突刺部バルーン504を膨張させる為に膨張ポート507にガス又は流体を供給する管腔508と、を含む。また、突刺部515は、突刺部515の遠位端506に少なくとも1つの高周波先端505を含む。高周波先端505は高周波エネルギを伝達することができる。(不図示の)高周波発生器は高周波エネルギを生成し、高周波エネルギは高周波先端505に供給される。突刺部515は、高周波先端505に高周波エネルギを伝達するワイヤの為の管腔509を含む。
【0062】
図21A及び図21Bには、位置決めバルーン510が膨張した時の経中隔突刺デバイス500の側面図及び部分Dの拡大側面図がそれぞれ図示されている。突刺部多腔延出部503は、シース514及び突刺部515を含む。シース514は、シースマーカバンド513と、シースマーカバンド513に位置合わせされ、突刺部515上に取り付けられた突刺部バルーン504と、を含む。シース514は、1以上の位置決めバルーン510と、位置決めバルーン510に接続された1以上の膨張ポート512と、位置決めバルーン510を膨張させる為に膨張ポート512にガス又は流体を供給する少なくとも1つの管516と、を含む。管516は、ハイポチューブ17(図13参照)でもよい。また、シース514は、位置決めバルーン510に接続された1以上の収縮ポート511を含む。突刺部バルーン504が膨張した時、膨張した突刺部バルーン504がシース514の1以上の収縮ポート511を密封し、位置決めバルーン510からの漏れを防止し、位置決めバルーン510の膨張を可能にする。その後、位置決めバルーン510は、シース514の膨張ポート512を通して膨張される。非順応性又は半順応性突刺部バルーン504が、シース514の収縮ポート511を密封し、位置決めバルーン510が膨張することを可能にし、突刺部515の遠位端506を卵円窩(例えば、図6参照)に対して位置決めする。
【0063】
図22A及び図22Bには、突刺部515が卵円窩に向かって前進した時の経中隔突刺デバイス500の側面図及び部分Bの拡大側面図がそれぞれ図示されている。正確に位置決めされると、その後、突刺部515は、卵円窩に向かって遠位方向に押される。膨張した突刺部バルーン504が収縮ポート511から離れ、収縮ポート511を露出させる。収縮ポート511を通して位置決めバルーン510が収縮する。しかしながら、位置決めバルーン510は、収縮ポート511及び膨張ポート512の両方を通して収縮されてもよい。
【0064】
図23A図23Dには、本発明の経中隔突刺デバイス500の突刺部多腔延出部503の遠位端部の側面図が図示されている。経中隔突刺デバイス500は、内部に少なくとも1つの管腔を画定するシース514と、シース514の遠位端506に接続された1以上の位置決めバルーン510と、少なくとも1つの管腔517内に移動可能に配置された突刺部515と、突刺部515上に取り付けられた突刺部バルーン504と、を含む。シース514は、1以上の収縮ポート511及び1以上の膨張ポート512を有する。膨張ポート512は、位置決めバルーン510にガス又は流体を供給する少なくとも1つの管516に接続される。突刺部515は、膨張ポート507を有し、突刺部バルーン504を膨張させる為に膨張ポート507を通してガス又は流体が供給される。突刺部バルーン504は、膨張ポート507を通して収縮されてもよい。突刺部515は、内部に中心管腔518を画定し、中心管腔518内に経中隔ワイヤ519が配置される。経中隔ワイヤ519は、遠位端を有し、心臓心房中隔を正確に突刺するように設計され、そして、心臓心房中隔を正確に突刺することができる。
【0065】
図23Aを参照すると、突刺部バルーン504が収縮され、収縮ポート511が開いている。図23Bを参照すると、突刺部バルーン504が膨張され、収縮ポート511を密封している。図23Cを参照すると、膨張ポート512を通してガス又は流体を供給することにより、位置決めバルーン510が膨張されている。膨張した突刺部バルーン504により収縮ポート511が密封されているので、ガス又は流体が漏れることなく位置決めバルーン510を膨張させることができる。図23Dを参照して、突刺部515が前進すると、膨張した突刺部バルーン504が収縮ポート511から離れる。その結果、収縮ポート511が開き、位置決めバルーン510は収縮ポート511を通して収縮し始める。
【0066】
図24には、経中隔挿入デバイスにより心臓心房中隔の正確かつ安全な経中隔穿刺を容易にするのに適した方法600のワークフロー図が図示されている。突刺部515上に配置された突刺部バルーン504を膨張させる(ステップ610)。突刺部515は、患者の心臓心房中隔に向かって配置された遠位端506を有する。シース514に配置された1以上の収縮ポート511が、膨張した突刺部バルーン504により密封される(ステップ611)。シース514の遠位端に接続された1以上の位置決めバルーン510を膨張させる(ステップ612)。膨張した位置決めバルーン510がシース514の遠位端を超えて張り出して延出する。位置決めバルーン510が膨張している間、突刺部515が心臓心房中隔の卵円窩に対して位置決めされる(ステップ613)。突刺部515を卵円窩に向かって移動させる(ステップ614)。このステップにおいて、突刺部515の遠位端が張り出した1以上の位置決めバルーン510を超えて延出し、突刺部515が前進している間、突刺部バルーン504が1以上の収縮ポート511から離れる。突刺部515の遠位端が卵円窩を押している間、1以上の位置決めバルーン510が収縮される(ステップ615)。
【0067】
ここに記載した本発明の好ましい実施形態には、多くの修正、変形、及び変更を詳細に行うことができるため、前述の説明及び添付の図面に示す全ての事項は、限定的な意味ではなく、例示的なものとして解釈される。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びこれらの法的等価物によって決定されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
10 経中隔挿入デバイス
12 シース
13 10の遠位端
14 バルーン
15 管腔
16 拡張器
17 ハイポチューブ
20 ワイヤレール
22 キャップ
24 マーカ
26 超音波チップ又はトランスデューサ
28 リング
40 プルワイヤアンカ
42 プルワイヤアクチュエータ
50 管腔
52 電極先端
54 導電体
56 追加の管腔
58 コイル要素
70 ハンドル
72 第1のダイヤル
74 第2のダイヤル
80 安定器
82 連結アーム
84 安定器プラットフォーム
86 安定器ベース
90 可鍛性経中隔針
92 90の近位部
94 90の遠位部
96 90の中間部
100 心房中隔
142 14の遠位端
144 14の近位端
200 経中隔挿入デバイス
211 管腔シャフト
212 シース、カテーテルシャフト
213 200の遠位端
214 バルーン
215 中心管腔
216 拡張器
217 ハイポチューブ
300 経中隔挿入デバイス
311 管腔シャフト
312 シース、カテーテルシャフト
313 300の遠位端
314 バルーン
315 中心管腔
317 ハイポチューブ
319 外側被覆
320 ワイヤ
326 超音波チップ又はトランスデューサ
400 経中隔挿入デバイス
412 シース、カテーテルシャフト
416 拡張器
421 駆動装置
422 ノブ
500 経中隔突刺デバイス
501 高周波発生器プラグ
502 Yコネクタ
503 突刺部多腔延出部
504 突刺部バルーン
505 高周波先端
506 515の遠位端
507 膨張ポート
508 管腔
509 管腔
510 位置決めバルーン
511 収縮ポート
512 膨張ポート
513 シースマーカバンド
514 シース
515 突刺部
516 管
517 管腔
518 中心管腔
519 経中隔ワイヤ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図24