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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】低部分放電高電圧コネクタ及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/53 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H01R13/53
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022158401
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2023053934
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】17/492,474
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522388235
【氏名又は名称】テレダイン ディフェンス エレクトロニクス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サムナン・ボウ
(72)【発明者】
【氏名】ハマヒト・ホウキョウ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・エー・モンタルヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ケー・バルツァ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・エス・ヨシオカ
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076163(JP,A)
【文献】特開2017-103854(JP,A)
【文献】特表2001-503564(JP,A)
【文献】特開平01-140572(JP,A)
【文献】特開昭51-042980(JP,A)
【文献】特開平9-93779(JP,A)
【文献】特開2005-166337(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001280(JP,U)
【文献】特開2003-243101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグ部材とレセプタクル部材とを結合させてコネクタを提供するステップであって、前記プラグ部材及び/または前記レセプタクル部材によって形成されたキャビティ内にシール部材が配置され、前記シール部材は、径方向内側の最内層と、径方向外側の最外層と、前記最内層及び前記最外層の間に配置された中間層とを含む、該ステップと、
前記プラグ部材と前記レセプタクル部材との結合に応答して、前記中間層の長さ方向の両端面である第1の面及び外側の第2の面を含む初期接触領域で前記シール部材を圧縮するステップと、
前記シール部材の圧縮に応答して、前記初期接触領域に存在する空気を、前記シール部材の前記最内層に向けて半径方向内向きに、及び、前記シール部材の前記最外層に向けて半径方向外向きに押し出し、前記コネクタに関連する部分放電を低減させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって
記シール部材は、前記最内層が半導体材料を含み、前記中間層が絶縁材料を含み、かつ、前記最外層が半導体材料を含み、全体として、前記初期接触領域に存在する前記空気を、前記最内層に向けて半径方向内向きに、及び、前記最外層に向けて半径方向外向きに押し出すことを容易にする柔軟な界面を提供するハイブリッド構造として構成される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記シール部材は、前記シール部材の前記最内層と前記最外層との間の前記初期接触領域で前記シール部材の圧縮を開始させる凸状の形状を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記レセプタクル部材の面及び前記プラグ部材の面が、前記シール部材の前記最内層と前記最外層との間の前記初期接触領域で前記圧縮を開始させる凸状の形状を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記レセプタクル部材の導電性部材が前記シール部材を貫通して前記プラグ部材の導電性ソケットピンの第1の端部に結合することによって、前記レセプタクル部材と前記プラグ部材との間の電気的接続が形成される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記導電性ソケットピンは、前記プラグ部材の導体部材に埋め込まれ、
前記導体部材は、前記導電性ソケットピンの均一な形状を保持し、
前記導体部材は、第1の絶縁層内に成形され、
前記第1の絶縁層は、前記導体部材と、前記第1の絶縁層の周囲に形成された前記プラグ部材の外部導電性シェルとの間の絶縁破壊を防止する、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
前記導電性ソケットピンの第2の端部は、ケーブルアセンブリの導体に結合され、
前記ケーブルアセンブリは、前記導体を含み、
前記導体は、前記導体の電界を減衰させる内側半導体層内に成形され、
前記内側半導体層は、前記内側半導体層と外側半導体層との間の絶縁破壊を防止する絶縁層内に成形され、
前記絶縁層は、前記外側半導体層内に成形され、
前記外側半導体層は、編組メッシュシールドによって取り囲まれ、
前記編組メッシュシールドは、前記プラグ部材内で、前記プラグ部材の外部導電性シェルに結合され、
前記編組メッシュシールドは、ボイドレス絶縁材料にさらに埋め込まれている、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
前記レセプタクル部材の前記導電性部材は、第2の絶縁層内に成形され、
前記第2の絶縁層は、前記導電性部材と、前記第2の絶縁層の周囲に形成された前記レセプタクル部材の外部導電性シェルとの間の絶縁破壊を防止する、方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、
前記レセプタクル部材の非結合端部が、前記レセプタクル部材の前記非結合端部からの絶縁破壊を防止するボイドレス絶縁体から構成される絶縁体でオーバーモールドされている、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記プラグ部材と前記レセプタクル部材との結合は、前記プラグ部材の外部導電性シェルに取り付けた結合ナットを回転させて、前記レセプタクル部材の外部導電性シェルのねじ山を締め付けることによってなされる、方法。
【請求項11】
レセプタクル部材と、
前記レセプタクル部材と結合してコネクタを提供するように構成されたプラグ部材と、
前記プラグ部材及び/または前記レセプタクル部材によって形成されたキャビティ内に配置されたシール部材であって、前記シール部材は、径方向内側の内側層と、径方向外側の外側層と、前記内側層及び前記外側層の間に配置された中間層とを含み、前記プラグ部材と前記レセプタクル部材との結合に応答して、前記中間層の長さ方向の両端面である第1の面及び外側の第2の面を含む初期接触領域において圧縮されるように構成された、該シール部材と、を備え、
前記シール部材の圧縮に応答して、前記初期接触領域に存在する空気を、前記シール部材の前記最内層に向けて半径方向内向きに、及び、前記シール部材の前記最外層に向けて半径方向外向きに押し出し、前記コネクタに関連する部分放電を低減させるように構成された、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって
記シール部材は、前記最内層が半導体材料を含み、前記中間層が絶縁材料を含み、かつ、前記最外層が半導体材料を含み、全体として、前記初期接触領域に存在する前記空気を、前記最内層に向けて半径方向内向きに、及び、前記最外層に向けて半径方向外向きに押し出すことを容易にする柔軟な界面を提供するハイブリッド構造として構成される、システム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムであって、
前記シール部材は、前記シール部材の前記最内層と前記最外層との間の前記初期接触領域で前記シール部材の圧縮を開始させる凸状の形状を有する、システム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムであって、
前記レセプタクル部材の面及び前記プラグ部材の面が、前記シール部材の前記最内層と前記最外層との間の前記初期接触領域で前記圧縮を開始させる凸状の形状を有する、システム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムであって、
前記レセプタクル部材の導電性部材が前記シール部材を貫通して前記プラグ部材の導電性ソケットピンの第1の端部に結合することによって、前記レセプタクル部材と前記プラグ部材との間の電気的接続が形成される、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記導電性ソケットピンは、前記プラグ部材の導体部材に埋め込まれ、
前記導体部材は、前記導電性ソケットピンの均一な形状を保持し、
前記導体部材は、第1の絶縁層内に成形され、
前記第1の絶縁層は、前記導体部材と、前記第1の絶縁層の周囲に形成された前記プラグ部材の外部導電性シェルとの間の絶縁破壊を防止する、システム。
【請求項17】
請求項15に記載のシステムであって、
前記導電性ソケットピンの第2の端部は、ケーブルアセンブリの導体に結合され、
前記ケーブルアセンブリは、前記導体を含み、
前記導体は、前記導体の電界を減衰させる内側半導体層内に成形され、
前記内側半導体層は、前記内側半導体層と外側半導体層との間の絶縁破壊を防止する絶縁層内に成形され、
前記絶縁層は、前記外側半導体層内に成形され、
前記外側半導体層は、編組メッシュシールドによって取り囲まれ、
前記編組メッシュシールドは、前記プラグ部材内で、前記プラグ部材の外部導電性シェルに結合され、
前記編組メッシュシールドは、ボイドレス絶縁材料にさらに埋め込まれている、システム。
【請求項18】
請求項15に記載のシステムであって、
前記レセプタクル部材の前記導電性部材は、第2の絶縁層内に成形され、
前記第2の絶縁層は、前記導電性部材と、前記第2の絶縁層の周囲に形成された前記レセプタクル部材の外部導電性シェルとの間の絶縁破壊を防止する、システム。
【請求項19】
請求項15に記載のシステムであって、
前記レセプタクル部材の非結合端部が、前記レセプタクル部材の前記非結合端部からの絶縁破壊を防止するボイドレス絶縁体から構成される絶縁体でオーバーモールドされている、システム。
【請求項20】
請求項11に記載のシステムであって、
前記プラグ部材と前記レセプタクル部材との結合は、前記プラグ部材の外部導電性シェルに取り付けた結合ナットを回転させて、前記レセプタクル部材の外部導電性シェルのねじ山を締め付けることによってなされる、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高電圧及び低ノイズ用途のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
超低電気ノイズが求められる用途や高い信頼性が要求される用途では、部分放電(例えば、放電)が特に懸念される。ハイエンド機器では、非常に少量の部分放電でも、信号が不安定になることがある。すなわち、高感度な機器では、相互接続システム内で発生する小さな放電でさえも、伝送される信号に干渉するのに十分であり得る。
【0003】
この部分放電は、閉じ込められた空気の両端に電圧勾配が存在する場合に発生し得る。従来の相互接続のシール領域で部分放電が発生しやすいため、絶縁材料間の境界に沿った部分放電を最小化することが課題である。さらに、部分放電を低減することにより、最終製品の保守が容易でない航空宇宙産業や深宇宙産業において強く求められているシステムの長寿命化が可能となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ハイエンドの産業用途、医療用途、軍事用途、及び他の高信頼性コネクタ用途のための低雑音コネクタソリューションを提供するための様々な技術が開示されている。例えば、低部分放電高電圧コネクタは、コネクタ設計のための部分放電の原因となる要素を低減または除去する。
【0005】
一実施形態では、本開示は、プラグ部材とレセプタクル部材とを結合させてコネクタを提供するステップであって、前記プラグ部材及び/または前記レセプタクル部材によって形成されたキャビティ内にシール部材が配置される、該ステップと、前記プラグ部材と前記レセプタクル部材との結合に応答して、前記シール部材の最内層と最外層との間に位置する初期接触領域で前記シール部材を圧縮するステップと、前記シール部材の圧縮に応答して、前記初期接触領域に存在する空気を、前記シール部材の前記最内層に向けて半径方向内向きに、及び、前記シール部材の前記最外層に向けて半径方向外向きに押し出し、前記コネクタに関連する部分放電を低減させるステップと、を含む、方法を提供する。
【0006】
別の実施形態では、本開示は、レセプタクル部材と、前記レセプタクル部材と結合してコネクタを提供するように構成されたプラグ部材と、前記プラグ部材及び/または前記レセプタクル部材によって形成されたキャビティ内に配置されたシール部材であって、前記プラグ部材と前記レセプタクル部材との結合に応答して、前記シール部材の最内層と最外層との間に位置する初期接触領域において圧縮されるように構成された、該シール部材と、を備え、前記シール部材の圧縮に応答して、前記初期接触領域に存在する空気を、前記シール部材の前記最内層に向けて半径方向内向きに、及び、前記シール部材の前記最外層に向けて半径方向外向きに押し出し、前記コネクタに関連する部分放電を低減させるように構成された、システムを提供する。
【0007】
本発明の範囲は、参照により本セクションに組み込まれる特許請求の範囲によって定義される。本発明の実施形態のより完全な理解は、1つまたは複数の実施形態の以下の詳細な説明を考慮することによって、その追加の利点の実現とともに、当業者に提供される。最初に簡単に説明される添付図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態による低部分放電高電圧コネクタアセンブリの組立図である。
図2図2は、図1の2-2線に沿って切り取った、低部分放電高電圧コネクタアセンブリ断面図である。
図3図3は、図1に示したシール部材の等角図である。
図4図4は、図1の2-2の線に沿って切り取った、レセプタクル部材の断面図である。
図5図5は、図1の2-2の線に沿って切り取った、プラグ部材の断面図である。
図6図6は、図1の2-2の線に沿って切り取った、プラグ部材の断面図であり、絶縁層の平坦な結合面に係合するシール部材の中間層の結合面が凸形状を有することを示す。
図7図7は、図1の2-2の線に沿って切り取った、プラグ部材の断面図であり、シール部材の中間層の平坦な係合面に当接するプラグ部材の絶縁層の係合面が凸形状を有することを示す。
図8図8は、本開示の一実施形態による低部分放電高電圧コネクタアセンブリの製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0009】
本発明の実施形態及びその利点は、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解される。図面間の相互参照を容易にするために、図中の同様の構成要素には同様の参照番号が付与されていることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に述べる詳細な説明は、本技術の様々な構成の説明を意図しており、本技術を実施することができる唯一の構成を示すことを意図しない。添付図面は、本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明には、本技術の完全な理解を提供する目的で、具体的な詳細を含んでいる。しかしながら、本技術は本明細書に記載された特定の詳細に限定されず、1つ以上の実施形態を用いて実施され得ることは、当業者には明確かつ明白であろう。1つまたは複数の例において、構造及び構成要素は、本技術の概念を不明瞭にすることを避けるために、ブロック図の形態で示される。本開示の1つまたは複数の実施形態は、1つまたは複数の図を参照して図示及び/または説明され、特許請求の範囲に記載される。
【0011】
1以上の実施形態において、低部分放電高電圧コネクタ(例えば、コネクタアセンブリとも呼ばれる)は、コネクタの部分放電感受性領域から、電束が減少した(例えば、非常に低い値または0の値)コネクタの他の領域に空気を移動させるように構成されたハイブリッド電気シール設計を含む。シール及び/または結合面は、シール部材の最内層と最外層との間に位置する初期接触領域(例えば、シールと結合面との間の接触領域)においてシールと結合面との初期接触が生じるように、凸状の形状を有している。シール部材の圧縮性材料が軸方向に圧縮されると、圧縮性材料の変形は、初期接触領域から遠ざかるように、シール部材の最内層に向かって半径方向内向きに、及び、シール部材の最外層に向かって半径方向外向きに進行する。この幾何学的な力は、中心絶縁領域に存在する空気を、中心絶縁領域から最内側の半導体層及び最外側の半導体層に向けて押し出す。
【0012】
押し出された空気は、電界の勾配が減少するシール部材の半導体部分の内部または外部の領域に集まり、それにより、シールされた部分及びコネクタ付き部分において部分放電が生じることを防止する。シールは、最内層または最外層ではなく、シール部材の最内層と最外層との間で開始されるので、各シール距離は、従来のシール機構のシール距離の約半分である。このシール距離の減少により、高応力領域から空気を除去するのに必要とされる結合力の量は、劇的に減少する。
【0013】
すなわち、局所的な絶縁破壊を受けやすい領域で部分放電が発生することを防止するために、コネクタは、高い電界勾配を有する領域から空気を除去するのに十分な力で結合されなければならない。低部分放電または微小放電を必要とする現在の市場における一般的な高電圧コネクタ設計は、レセプタクル部材とプラグ部材との間のシール領域における高い電束を補償するために、比較的大きなシール直径を必要とする傾向がある。シール領域はコネクタ直径によって二次的に増加するので、コネクタ設計が大きい場合、コネクタの部分放電感受性領域から空気を移動させる能力を犠牲にすることなく合理的なシール力を維持する、という困難な問題に直面する。
【0014】
シール領域内の空気を完全に移動させるのに必要な力を大幅に低減するために、凸状の形状が利用される。この凸状の形状は、シール部材の材質や製造方法にかかわらず、コネクタに適用可能である。以下の製造方法に限定しないが、シール部材は、オーバーモールド設計を有するコネクタ本体の一部として、あるいは、機械的に捕捉され、及び/または、コネクタのレセプタクルまたはプラグ端部となるように結合される独立部品として、一体化されてもよい。シール部材と結合面とが最初に接触する環状リングは、シール部材の最内層と最外層との間、すなわち中間に設けられている。コネクタアセンブリのプラグ及びレセプタクルが係合し始めると、シールはシール部材の最内層と最外層との間から圧縮を開始するが、圧縮は、初期接触領域から遠ざかるように、シール部材の最内層に向かって半径方向内向きに、及び、シール部材の最外層に向かって半径方向外向きに進む。このミドルアウトシール設計により、空気除去機構の有効性を犠牲にすることなく、同様の高電圧の低放電コネクタ設計における円錐形シールの場合と比較して、シール領域を完全に結合するために必要な長手方向距離が大幅に減少する。これにより、シール面に沿って均等な圧縮を得るのに必要な力が劇的に減少する。その結果、シール領域から空気を除去する労力と、高電界セクションから空気を押し出すシールの能力の有効性が最適化される。
【0015】
上述のミドルアウトシール設計は、すべての高電圧コネクタ設計に対して独立して適用可能であるが、ハイブリッド半導体シール部材と組み合わせて使用すると、その有効性が増大する。ハイブリッドシール設計は、交互の半導体層及び絶縁層を含むマルチパートのシールである。絶縁領域が電気破壊を防止するための部分として機能する一方で、半導体層は、ガウスの磁束定理にしたがってあらゆる電束を除去することにより、ガス状ポケット、クラック、ボイド、または含有物から発生する部分的な放電を防止する保護バリアとして機能し、導体によって囲まれたボイド内の電荷は減少する。さらに、イオン化された空気またはプラズマ形成の除去は、特にシード位置がトリプルジャンクションにおいて生じる場合、絶縁破壊のなだれ挙動のシードを減少させる。
【0016】
低部分放電高電圧コネクタのレセプタクル部材とプラグ部材との間の電気回路は、シール部材の半導体層を、プラグ部材とレセプタクル部材との結合面に対して圧縮することによって完成する。シール部材の絶縁面から、プラグ部材及びレセプタクル部材の半導体層及び導電性シェルの内部または背後に空気が移動すると、シール部材が配置されるプラグ部材及び/またはレセプタクル部材によって形成されるキャビティは、もはや部分放電を生じない。
【0017】
次に図面を参照すると、図1は、本開示の実施形態による低部分放電高電圧コネクタアセンブリの組立図を示す。低部分放電高電圧コネクタアセンブリ100は、レセプタクル部材102と、プラグ部材104と、シール部材106(図2-3及び図6-7を参照)とを含み、ケーブルアセンブリ138はプラグ部材104に結合され、レセプタクル部材102の導電性部材118は、例えば、配電ユニット、電気パネル、変圧器などに結合される。図2は、本開示の実施形態による図1の低部分放電高電圧コネクタアセンブリ100を、断面2-2の線に沿って見た断面図である。低部分放電高電圧コネクタアセンブリ100は、レセプタクル部材102と、プラグ部材104と、シール部材106とを含む。図3の等角図において、シール部材106はまた、最内層108、中間層110、及び最外層112の断面を明らかにするために、一部が取り除かれた状態で別々に示されている。
【0018】
最内層108は、半導体材料から構成される。いくつかの実施態様では、最内層108が絶縁材料で構成された中間層110によってオーバーモールドされた後、中間層110が半導体材料で構成された最外層112によってオーバーモールドされるが、これらはすべて同心環状リングである。いくつかの実施態様では、最内層108、中間層110及び最外層112は、同時に共押出される。半導体材料で構成された最内層108は、第1のシールド層として機能し、材料がレセプタクル部材102の導電性部材及びプラグ部材104の導電性部材と同じ電位を維持しない非導電性特性で作製された場合には、放電し得る変位したエアポケット上の電界を減衰させる。絶縁材料から構成された中間層110は、最内層108と最外層112との間の絶縁破壊を防止する。半導体材料から構成された最外層112は、最外層がレセプタクル部材102の外部導電性シェル及びプラグ部材104の外部導電性シェルの電位を維持することを除いて、最内層108と同様に機能する。したがって、半導体層(最内層108)、絶縁体(中間層110)、半導体層(最外層112)のハイブリッド構造は、全体として、初期接触領域に存在する空気を中央に押し出すことを容易にする柔軟な界面を提供する。この構成は、完全絶縁シールを使用する従来のコネクタ設計とは異なり、低部分放電高電圧コネクタアセンブリ100の全長に沿って半径方向の電界分布を均一にすることができる。最内層108及び最外層112を半導体材料で構成することによって、周囲のガスの過電圧及びイオン化は、ガウスの磁束定理により、発生しない。
【0019】
図1に示される断面2-2の線に沿って見られるように、図4の断面図においても別々に示されるレセプタクル部材102は、外部導電性シェル114、絶縁層116、導電性部材118、及び絶縁体120を含む。絶縁層116の周囲に形成された外部導電性シェル114は、シール部材106の最外層112と同径方向に整列して均一かつ連続した遷移を維持することにより、望ましくない電界強化を防止する。導電性部材118の周囲に成形された絶縁層116は、シール部材106の中間層110と整列し、中間層110と相補的であるので、絶縁層116は、導電性部材118と外部導電性シェル114との間の絶縁破壊を防止する。図示のように、絶縁層116の結合面122は、シール部材106の中間層110の隣接する結合面と結合する。すなわち、レセプタクル部材102は、外部導電性シェル114、ポスト124、絶縁層116の結合面122、及びプラグ部材104の絶縁層130の結合面136によって境界付けられたキャビティ162を提供する。導電性部材118は、ポスト124が先端部126を露出させるシール部材106の中心を通ってスライドすることにより、先端部126がプラグ部材104の導電性ソケット部材に電気的に結合することによって連続的な電界を維持するように、シール部材106の最内層108と整列する。絶縁体120は、シリコーンゴム、ポリウレタン等のようなボイドレス絶縁材料から構成され、導電性部材118の端部の周囲にオーバーモールドされ、レセプタクル部材102の端部からの電気破壊を防止する。絶縁体120を通って突出する導電性部材118の露出部分は、例えば、配電ユニット、電気パネル、変圧器などに結合することにより、電気的流れの連続性を提供する。
【0020】
図1に示される断面2-2の線に沿って見られるように、図5の断面図において別々に示されるプラグ部材104は、外部導電性シェル128、絶縁層130、導体部材132、及び導電性ソケットピン134を含む。絶縁層130の周囲に形成された外部導電性シェル128は、シール部材106の最外層112と同径方向に整列して均一かつ連続した遷移を維持することにより、望ましくない電界強化を防止する。導体部材132の周囲に成形された絶縁層130は、シール部材106の中間層110と整列し、中間層110と相補的であるので、絶縁層130は、導体部材132と外部導電性シェル128との間の絶縁破壊を防止する。図示のように、絶縁層130の結合面136は、シール部材106の中間層110の隣接する結合面と結合する。導電性ソケットピン134は、導体部材132内に成形されるか、埋め込まれ、これにより、導電性ソケットピン134の均一な形状が保持される。すなわち、導体部材132は、滑らかな電界を維持するために、シール部材106の最内層108と整列する。しかしながら、導電性部材118の先端部126が導電性ソケットピン134と結合すると、すなわち、レセプタクル部材102及びプラグ部材104が結合するときに先端部126が導電性ソケットピン134の開放端に摺動すると、先端部126が導電性ソケットピン134に結合することによって生じ得る変形は、導体部材132によって保持される。
【0021】
プラグ部材104はさらに、導体140と、内側半導体層142と、絶縁層144と、外側半導体層146と、編組メッシュシールド148とを含むケーブルアセンブリ138を含む。図の右側に延びるケーブルアセンブリ138は、電子機器に結合されてもよい。導体140は、圧着、はんだ付けなどによって導電性ソケットピン134の他端に永久的に結合されることにより、連続的な電界を維持する。内側半導体層142は、導体140の周囲に成形され、導体140の電界を減衰させる。絶縁層144は、内側半導体層142の周囲に成形され、内側半導体層142と外側半導体層146との間の絶縁破壊を防止する。外側半導体層146は、絶縁層144の周囲に成形され、ケーブルアセンブリ138の電位を維持する。ケーブルアセンブリ138とプラグ部材104の外側部分との間の遷移ギャップは、ボイドレスの絶縁材料150に埋め込まれた編組メッシュシールド148を有するボイドレスの絶縁材料150から構成される。すなわち、編組メッシュシールド148内のギャップによって、ボイドレスの絶縁材料150がギャップ内に埋め込まれ、これにより、編組メッシュシールド148とボイドレスの絶縁材料150とが接合される。編組メッシュシールド148は、外部導電性シェル128にさらに接合されることにより、外部導電性シェル128の外径を増大させ、これにより、外側半導体層146のシールド効果を失う前に、導体140からのクリープ距離が最大化する。
【0022】
レセプタクル部材102とプラグ部材104とが結合するときには、シール部材106がレセプタクル部材102に挿入され、結合ナット152がレセプタクル部材102の外部導電性シェル114のねじ154の周りを回転することにより、レセプタクル部材102がプラグ部材104に完全に結合する。結合ナット152は、ねじ154上で回転し、結合ナット152のキャッチ156がプラグ部材104の止め部158と接触すると、完全に結合する。例示的な実施形態によれば、ミドルアウトシール設計は、異なる方法で達成されてもよい。
【0023】
第1の実施形態では、レセプタクル部材102の絶縁層116の結合面122及びプラグ部材104の絶縁層130の結合面136と結合するシール部材106の中間層110の面は、凸状の形状を有する。図6は、図1に示される断面2-2の線に沿って見られるように、本開示の実施形態による、プラグ部材104の絶縁層130の平坦な結合面136と接触するシール部材106の中間層110の結合面160の凸状の形状の断面図を示す。図6には示されていないが、シール部材106の反対側の中間層110の同様の凸状の形状は、レセプタクル部材102の絶縁層116の平坦な結合面122と接触する。したがって、プラグ部材104がレセプタクル部材102に結合すると、平坦な結合面136に接触する結合面160の凸状の形状によって、また同様に、平坦な結合面122に接触するシール部材106の反対側の中間層110の凸状の形状によって、空気は、部分放電感受性領域(例えば、閉じ込められた空気に電圧勾配がある、局所的な絶縁破壊を受けやすい領域、すなわち、シール部材106の最内層108と最外層112との間の領域)から遠ざかるように、シール部材106及びレセプタクル部材102のポスト124の最内層に向かって半径方向内向きに、及び、シール部材106及び外部導電性シェル114の最外層に向かって半径方向外向きに押し出される。第2の実施形態では、シール部材106の中間層110の面と結合するレセプタクル部材102の絶縁層116の結合面122と、プラグ部材104の絶縁層130の結合面136とは、凸状の形状を有する。図7は、図1に示される断面2-2の線に沿って見られる、本開示の実施形態による、シール部材106の中間層110の平坦な結合面163と接触するプラグ部材104の絶縁層130の結合面137の凸状の形状の断面図を示す。図7には示されていないが、レセプタクル部材102の絶縁層116の結合面122の同様の凸状の形状は、シール部材106の反対側の中間層110の平坦な結合面に接触する。したがって、プラグ部材104がレセプタクル部材102に結合すると、平坦な結合面163に接触する結合面137の凸状の形状によって、また同様に、シール部材106の反対側の中間層110の平坦な結合面に接触する結合面122の凸状の形状によって、空気は、部分放電感受性領域(すなわち、閉じ込められた空気に電圧勾配がある、局所的な絶縁破壊を受けやすい領域、またはシール部材106の最内層108と最外層112との間の領域)から遠ざかるように、シール部材106及びレセプタクル部材102のポスト124の最内層に向かって半径方向内向きに、及び、シール部材106及び外部導電性シェル114の最外層に向かって半径方向外向きに押し出される。
【0024】
いずれの実施形態においても、シール部材106の結合面が、レセプタクル部材102の絶縁層116の結合面122及びプラグ部材104の絶縁層130の結合面136と最初に結合すると、中間層110は、初期接触領域から遠ざかるように、シール部材106の最内層108に向かって半径方向内向きに、及び、シール部材106の最外層112に向かって半径方向外向きに圧縮される。このミドルアウトシール設計により、空気除去機構の有効性を犠牲にすることなく、同様の高電圧の低放電コネクタ設計における円錐形シールの場合と比較して、シール部材106を完全に結合するために必要な長手方向距離が大幅に減少する。これにより、シール面に沿って均一な圧縮を得るのに必要な力が劇的に減少する。その結果、シール領域から空気を除去する労力と、高電界セクションから空気を押し出すシールの能力の有効性が最適化される。
【0025】
図8は、本開示の一実施形態による低部分放電高電圧コネクタアセンブリを形成するプロセス800を示す。ブロック802において、プラグ部材104はレセプタクル部材102に結合され、シール部材106は、プラグ部材104及び/またはレセプタクル部材102によって形成されたキャビティ内に配置される。ブロック804において、結合に応答して、シール部材106は、シール部材106の最内層108と最外層112との間の初期接触領域で圧縮される。ブロック806において、圧縮に応答して、初期接触領域から遠ざかるように、シール部材106の最内層108に向かって半径方向内向きに、及び、シール部材106の最外層112に向かって半径方向外向きに空気が押し出されることにより、コネクタに関連する部分放電を低減させる。
【0026】
適用可能な場合、本開示によって提供される様々な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用して実施することができる。また、適用可能な場合、本明細書に記載された様々なハードウェアコンポーネント及び/またはソフトウェアコンポーネントは、本開示の精神から逸脱することなく、ソフトウェア、ハードウェア、及び/またはその両方を含む複合コンポーネントに組み合わせることができる。適用可能な場合、本明細書に記載された様々なハードウェア構成要素及び/またはソフトウェア構成要素は、本開示の精神から逸脱することなく、ソフトウェア、ハードウェア、またはその両方を含むサブ構成要素に分離することができる。さらに、適用可能な場合、ソフトウェアコンポーネントはハードウェアコンポーネントとして実装することができ、またその逆も可能である。
【0027】
プログラムコード及び/またはデータなどの本開示によるソフトウェアは、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体に格納することができる。本明細書中で特定されるソフトウェアは、1つ以上の汎用または特定の目的のコンピュータ及び/またはコンピュータシステムを使用して、ネットワーク化された及び/またはその他の方法で実装することもできる。適用可能な場合、本明細書に記載される様々なステップの順序は、本明細書に記載される特徴を提供するために、変更する、複合ステップに組み合わせる、及び/または、サブステップに分離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ソフトウェア制御機械(3Dプリンタなど)を使用して、シール部材10及び/または本発明に記載される他の構成要素を製造することができる。
【0028】
上述の実施形態は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。また、本発明の原理に従って、様々な変更及び変形が可能であることも理解されたい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8