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特許7470193温度センサー及び温度センサーの製造方法
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  • 特許-温度センサー及び温度センサーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】温度センサー及び温度センサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20240410BHJP
   G01K 13/02 20210101ALI20240410BHJP
【FI】
G01K1/14 B
G01K13/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022545673
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031173
(87)【国際公開番号】W WO2022045198
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020142551
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】390024729
【氏名又は名称】SEMITEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中島 卓彦
(72)【発明者】
【氏名】池谷 聡
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-221179(JP,A)
【文献】特開2002-005757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に端子部を有する樹脂製のコネクタ部と、前記端子部に接続された温度感知素子を覆って前記コネクタ部に接続された金属製の筐体部と、を有するセンサー部と、
流体が流れる樹脂製の配管部と、を有し、
前記コネクタ部が、前記配管部外に露出し前記配管部の側壁部に埋設された状態で、かつ前記筐体部が、前記配管部内に突出し前記側壁部に埋設された状態で、それぞれ前記配管部と一体成形されている、
ことを特徴とする温度センサー。
【請求項2】
前記コネクタ部と前記筐体部との境界に配置されたシール部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載された温度センサー。
【請求項3】
前記シール部が、Oリングであり、前記側壁部に埋設された
ことを特徴とする請求項2に記載された温度センサー。
【請求項4】
前記筐体部が円柱状である
ことを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載された温度センサー。
【請求項5】
内側に端子部を有する樹脂製のコネクタ部と、前記端子部に接続された温度感知素子を覆って前記コネクタ部に接続された金属製の筐体部と、を有するセンサー部を、
測温対象である流体が流れる樹脂製の配管部に対して、前記コネクタ部が前記配管部外に露出した状態で、かつ、前記筐体部が前記配管部内に突出した状態で、前記配管部と共にインサート成形する、
ことを特徴とする温度センサーの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測温対象である流体の温度を感知する温度センサー、及び、温度センサーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車、自動二輪車、航空機、船舶等(以下、「自動車等」と記す。)のエンジンや、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)は、ロングライフクーラント(LLC:Long Life Coolant)等の冷却用の流体を流すための配管を有し、この配管には、温度センサーが取り付けられている。
【0003】
下記特許文献1に記載された温度センサー(以下、「公知文献1発明」と記す。)は、エンジンの外壁に予め形成された孔に挿入され、外側からネジで固定される。公知文献1発明は、サーミスタが内蔵され、センサー本体は、樹脂製であって、Oリングが一体成形されている。
【0004】
下記特許文献2に記載されたセンサー部材の取付構造(以下、「公知文献2発明」と記す。)は、管状である本体に予め形成された貫通孔に、センサー取付座を介して温度センサーが挿入される。貫通孔には、取付面が形成され、センサー取付座は、温度センサーを螺合させるナット部材が一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-12415号公報
【文献】特開2007-127176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したとおり、公知文献1発明では、センサー本体が樹脂製であるため、熱伝導率が悪い。したがって、サーミスタによるセンシングが遅い。一方で、公知文献2発明では、貫通孔に取付面が形成されナット部材と一体成形されたセンサー取付座が、取付面に取り付けられ、ナット部材に温度センサーが螺合されるため、部品数が多く、材料費や組立作業も嵩む。また、センサー取付座を取り付けるためのスペースを確保する必要があり、レイアウトが制限される。
【0007】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、高速のセンシング、低コスト、自由なレイアウト設計を実現しつつ、煩雑な作業を要しない温度センサー及び温度センサーの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る温度センサーは、流体が流れる配管部と、前記配管部外に露出した状態で前記配管部の側壁部に埋設されたコネクタ部と、前記コネクタ部と接続された温度感知素子を覆うと共に前記配管部内に突出した状態で前記側壁部に埋設された金属製の筐体部と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る温度センサーは、前記配管部と前記コネクタ部とが樹脂製であり、前記コネクタ部と前記筐体部とが、前記配管部と一体成形されている、ことを特徴とする。すなわち、前記コネクタ部と前記筐体部とが、前記配管部と共にインサート成形されている。
【0010】
本発明に係る温度センサーは、前記コネクタ部と前記筐体部との境界に配置されたシール部を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る温度センサーは、前記シール部が、Oリングであり、前記側壁部に埋設された、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る温度センサーは、前記筐体部が円柱状である、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る温度センサーの製造方法は、コネクタ部と、前記コネクタ部に接続された温度感知素子を覆う金属製の筐体部と、を有するセンサー部を、測温対象である流体が流れる配管部に対して、前記コネクタ部が前記配管部外に露出した状態で、かつ、前記筐体部が前記配管部内に突出した状態で、前記配管部と共にインサート成形する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る温度センサーは、流体が流れる配管部と、配管部外に露出した状態で配管部の側壁部に埋設されたコネクタ部と、コネクタ部と接続された温度感知素子を覆うと共に配管部内に突出した状態で側壁部に埋設された金属製の筐体部とを有している。すなわち、金属製の筐体部は、熱伝導率が優れているため、流体の温度を、温度感知素子に速く伝導する。したがって、高速のセンシングが実現する。温度センサーは、配管部、コネクタ部及び筐体部で構成されているため、部品数が少ないうえ、また、各部が予め埋設されていることから、組立作業を要しない。したがって、低コストが実現する。筐体部を挿入するための孔や、台座を要しないため、これらのスペースを確保する必要がないし、筐体部の埋設箇所は任意であるため、自由なレイアウト設計が実現する。
【0015】
本発明に係る温度センサーは、配管部とコネクタ部とが樹脂製であり、コネクタ部と筐体部とが、配管部と一体成形されている。すなわち、筐体部以外の各部が樹脂製であるため、温度感知素子への熱伝導において、外気からの影響を抑えることができる。温度センサーは、一体成形であるため、組立作業を要しない。したがって、低コストが実現する。また、一体成形であれば、筐体部を挿入するための孔や台座のスペースを確保する必要がないし、配管部の形状や筐体部の配置が任意であるため、自由なレイアウト設計が実現する。
【0016】
本発明に係る温度センサーは、コネクタ部と筐体部との境界に配置されたシール部を有している。したがって、高い気密性が実現する。
【0017】
本発明に係る温度センサーは、シール部が、Oリングであり、側壁部に埋設されている。すなわち、Oリングは汎用性があるため、簡便な構成が実現する。また、Oリングが、コネクタ部と筐体部との境界において、側壁部に埋設されたことで、更に高い気密性が実現する。
【0018】
本発明に係る温度センサーは、筐体部が円柱状である。したがって、筐体部における熱伝導が、均等となるため、正確なセンシングが実現する。
【0019】
本発明に係る温度センサーの製造方法は、コネクタ部と、コネクタ部に接続された温度感知素子を覆う金属製の筐体部と、を有するセンサー部を、測温対象である流体が流れる配管部に対して、コネクタ部が配管部外に露出した状態で、かつ、筐体部が配管部内に突出した状態で、配管部と共にインサート成形するものである。したがって、上記した効果を奏する温度センサーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る温度センサーの外観斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る温度センサーの上面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る温度センサーの正面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る温度センサーの側面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る温度センサーにおけるセンサー部の上面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る温度センサーにおけるセンサー部の正面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る温度センサーにおけるセンサー部の下面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る温度センサーにおけるセンサー部の側面図である。
図9図9は、図8のIX-IX断面であって、本発明の実施形態に係る温度センサーにおけるセンサー部の背面断面図である。
図10図10は、図2のX-X断面であって、本発明の実施形態に係る温度センサーの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態に係る温度センサーを図面に基づいて説明する。図1ないし図4は、本実施形態に係る温度センサー1の外観が示されている。
【0022】
図1ないし図4に示されているとおり、温度センサー1は、エンジンやPCU(いずれも図示省略。)の配管として用いられるものであり、測温対象であるLCC等の流体が流れる配管部2と、この配管部2と一体成形されたセンサー部6とを有している。すなわち、センサー部6が、配管部2の金型内(図示省略。)に設置され、両部材2,6が、インサート成形や多色成形等の射出成形によって、単一の部材として成形されている。
【0023】
配管部2は、樹脂製であり、円筒状である。配管部2の側壁部3は、センサー部6が埋設された埋設部4を有している。埋設部4は、側壁部3から外側に向けて突出している。側壁部3のうち、埋設部4の両側方には、それぞれフランジ部5が形成されている。両フランジ部5は、配管部2の外周に沿った環状である。
【0024】
ここで、センサー部6を図面に基づいて説明する。図5ないし図9は、センサー部6の外観及び断面が示されている。
【0025】
図5ないし図9に示されているとおり、センサー部6は、外部機器(図示省略。)が接続されるコネクタ部7と、このコネクタ部7に接続された温度感知素子10と、この温度感知素子10を覆うと共にコネクタ部7に連接された筐体部11と、コネクタ部7と筐体部11との境界に配置されたシール部15とを有している。
【0026】
コネクタ部7は、樹脂製であり、先端側にコネクタ側埋設部8を有し、内側に一対の端子部9を有している。端子部9は、コネクタ部7に埋設されたリード線(図示省略。)を介して温度感知素子10と接続されている。温度感知素子10は、例えばサーミスタ等である。温度感知素子10は、筐体部11で覆われている。筐体部11は、コネクタ側埋設部8と接続されている。
【0027】
筐体部11は、金属製であり、円柱状である。筐体部11は、先端側に露出部12を有し、コネクタ部7のコネクタ側埋設部8と接続された側である埋設基部13に、環状の溝部14を有している。溝部14はシール部15が取り付けられている。すなわち、シール部15は、コネクタ部7と筐体部11との境界に配置されている。シール部15は、例えばOリング等である。
【0028】
ここで、センサー部6と配管部2との配置を図面に基づいて説明する。図10は、温度センサー1の断面であって、センサー部6が、配管部2に対してどのような状態で埋設されているかが示されている。
【0029】
図10に示されているとおり、センサー部6のコネクタ部7は、配管部2の外側に露出した状態で、配管部2の側壁部3に埋設され、センサー部6の筐体部11は、配管部2の内側に突出した状態で側壁部3に埋設されている。詳説すれば、コネクタ部7のコネクタ側埋設部8は、側壁部3の埋設部4に埋設され、コネクタ部7の端子部9は、配管部2の外側に配置されている。筐体部11の埋設基部13は、埋設部4に埋設され、筐体部11の露出部12は、配管部2の内側に配置されている。コネクタ側埋設部8と埋設基部13とが、埋設部4に埋設されていることから、シール部15も埋設部4に埋設されている。
【0030】
上記のとおり、本実施形態が構成されている。
【0031】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0032】
上記したとおり、本実施形態では、温度センサー1のセンサー部6において、温度感知素子10を覆う筐体部11が、金属製である。すなわち、金属製の筐体部11は、熱伝導率が優れているため、流体の温度を、温度感知素子10に速く伝導する。したがって、高速のセンシングが実現する。また、筐体部11は、円柱状であることから、筐体部11における熱伝導が、均等となるため、正確なセンシングが実現する。
【0033】
本実施形態は、センサー部6を、配管部2に対して、コネクタ部7の端子部9が配管部2の外側に露出し、コネクタ部7のコネクタ側埋設部8が側壁部3の埋設部4に埋設された状態で、かつ、筐体部11の露出部12が配管部2の内側に配置され、筐体部11の埋設基部13が埋設部4に埋設された状態で、射出成形したものである。すなわち、温度センサー1は、配管部2及びセンサー部6で構成されているため、部品数が少ないうえ、一体成形であって、コネクタ側埋設部8及び埋設基部13が予め埋設されているため、組立作業を要しない。したがって、低コストが実現する。一体成形であれば、筐体部11を挿入するための孔や台座を要しないため、これらのスペースを確保する必要がないし、配管部2の形状やセンサー部6の埋設箇所は、任意であるため、自由なレイアウト設計が実現する。
【0034】
本実施形態では、シール部15が、筐体部11の溝部14に取り付けられたことで、コネクタ部7と筐体部11との境界に配置され、このシール部15も埋設部4に埋設されている。したがって、高い気密性が実現する。また、Oリングは汎用性があるため、簡便な構成が実現する。また、溝部14は、埋設基部13の外周面に形成された環状の隆起部であるバルジ部と、コネクタ側埋設部8との間に形成され、この溝部14に、シール部15が取り付けられているため、シール部15は、バルジ部とコネクタ側埋設部8とで確実に圧縮挟持され、位置がずれることもない。更に、インサート成形の際、樹脂圧力によって、シール部15を外側から確実に圧縮させることができるため、高い気密性が実現する。
【0035】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0036】
センサー部6のセンシング性能試験を行った。実施例は、金属製(SUS316)の筐体部11を有するセンサー部6であり、比較例は、樹脂製(PBT:ポリブチレンテレフタレート)の筐体部を有するセンサー部である。試験では、実施例及び比較例を、室温25度Cの静止空気中に置き、負荷として、100度Cの攪拌オイルに、それぞれの筐体部を浸漬して熱時定数を測定した。浸漬の深さは0.5ミリメートルである。実施例、比較例それぞれについて、2回の試験を行った。各試験では、それぞれ3回ずつ熱時定数を測定し、3回の平均値を求め、更に、2回の試験の平均値をとった。試験結果を、表1及び表2に示す。
【0037】
[表1]実施例
n=2 各3回測定した平均値
【0038】
[表2]比較例
n=2 各3回測定した平均値
【0039】
表1及び表2に示されているとおり、実施例は、比較例と比べて、熱時定数の値が低いため、センシング性能が優れていることがわかる。
【0040】
更に、温度センサー1の気密性能試験を行った。実施例は、シール部15を有している。試験では、配管部2に、350キロパスカルの圧力を加え、10分後に、埋設部4からの気体の漏れを測定した。測定の結果、埋設部4から気体が漏れていないことがわかった。したがって、シール部15が埋設部4に埋設されて、一体成形された温度センサー1は、気密性能が優れていることがわかる。
【0041】
本発明に係る他の実施形態では、配管部の形状は任意であり、センサー部が埋設される位置は任意である。
他の実施形態では、側壁部に埋設部が形成されていない。すなわち、側壁部は、センサー部のコネクタ側埋設部と埋設基部とが埋設されるために必要な厚みを有している。
他の実施形態は、配管部、コネクタ部、筐体部、温度感知素子及び端子が、一体成形されている。すなわち、当該実施形態は、センサー部を構成することなく、一体成形されている。
他の実施形態では、筐体部の形状は、円柱状ではなく、任意である。
【0042】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 温度センサー
2 配管部
3 側壁部
4 埋設部
5 フランジ部
6 センサー部
7 コネクタ部
8 コネクタ側埋設部
9 端子部
10 温度感知素子
11 筐体部
12 露出部
13 埋設基部
14 溝部
15 シール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10