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特許7470227電源リセットユニットおよび該電源リセットユニットを備えた道路設備管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電源リセットユニットおよび該電源リセットユニットを備えた道路設備管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/097 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
G08G1/097 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023046835
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593153428
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 祥行
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】相馬 隆治
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-315900(JP,A)
【文献】特開平11-134597(JP,A)
【文献】特開2015-32236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路設備に備えられた機器を制御する制御装置が高温環境下において正常作動不能状態となった場合に、前記道路設備の作動を復帰させるための電源リセットユニットであって、
前記道路設備の電源線に備えられた回路遮断装置と、
該回路遮断装置のOFF/ONを切り替え可能とする切り替え作動手段と、
IPネットワーク網によって管理装置と接続され、前記制御装置の正常作動時には停止状態または待機状態となっており、当該制御装置が前記正常作動不能状態となった場合において、前記管理装置から前記IPネットワーク網を介して送信されたリセット指令信号を受信することにより作動して、前記切り替え作動手段に切り替え作動指令信号を出力し、当該切り替え作動手段の切り替え作動を行わせるリセット制御装置とを備えていることを特徴とする電源リセットユニット。
【請求項2】
請求項1記載の電源リセットユニットにおいて、
前記回路遮断装置、前記切り替え作動手段、および、前記リセット制御装置が、単一の筐体の内部に収容されて構成されていることを特徴とする電源リセットユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載の電源リセットユニットにおいて、
前記リセット制御装置は、自己が属するIPアドレスを指定した前記管理装置からの指定信号を受信した場合に、当該管理装置の表示画面上に、Webブラウザを利用した前記回路遮断装置の状態情報画像および前記リセット指令信号の送信を指示可能な操作画像を表示するための画像情報を生成する画像情報生成部を備えていることを特徴とする電源リセットユニット。
【請求項4】
請求項1または2記載の電源リセットユニットにおいて、
前記機器は、作動時に発熱を伴うものであり、
前記リセット制御装置の設置位置は、前記制御装置の設置位置に比べて前記機器から遠い位置に設置されていることを特徴とする電源リセットユニット。
【請求項5】
請求項1または2記載の電源リセットユニットにおいて、
前記リセット制御装置は前記制御装置よりも高い放熱性を有する構成が採用されていることを特徴とする電源リセットユニット。
【請求項6】
請求項1または2記載の電源リセットユニットにおいて、
前記切り替え作動手段による前記回路遮断装置のOFF/ONの切り替え作動は、当該回路遮断装置のOFF動作が行われた後、所定の遅延時間を存して当該回路遮断装置のON動作が行われるようになっていることを特徴とする電源リセットユニット。
【請求項7】
複数の道路設備それぞれに備えられた機器および該機器を制御する制御装置と、管理装置とが、IPネットワーク網によって接続されて構成された道路設備管理システムにおいて、
前記複数の道路設備それぞれには、前記制御装置が高温環境下において正常作動不能状態となった場合に、前記道路設備の作動を復帰させるための電源リセットユニットが備えられており、
前記電源リセットユニットは、
前記道路設備の電源線に備えられた回路遮断装置と、
該回路遮断装置のOFF/ONを切り替え可能とする切り替え作動手段と、
前記IPネットワーク網によって前記管理装置と接続され、前記制御装置の正常作動時には停止状態または待機状態となっており、当該制御装置が前記正常作動不能状態となった場合において、前記管理装置から前記IPネットワーク網を介して送信されたリセット指令信号を受信することにより作動して、前記切り替え作動手段に切り替え作動指令信号を出力し、当該切り替え作動手段の切り替え作動を行わせるリセット制御装置とを備えていることを特徴とする道路設備管理システム。
【請求項8】
請求項7記載の道路設備管理システムにおいて、
前記IPネットワーク網には、前記制御装置との間で情報の送受信が可能であって前記制御装置が前記正常作動不能状態となったことの認識が可能なサーバが接続されており、
前記サーバによって前記制御装置が前記正常作動不能状態となったことが認識されたことを条件として、手動または自動で、前記管理装置から前記IPネットワーク網を介して前記リセット制御装置にリセット指令信号が送信されることを特徴とする道路設備管理システム。
【請求項9】
請求項7記載の道路設備管理システムにおいて、
前記リセット制御装置は、前記回路遮断装置にトリップが生じた場合、その情報を前記管理装置に送信することを特徴とする道路設備管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源リセットユニットおよび該電源リセットユニットを備えた道路設備管理システムに係る。特に、本発明は、道路設備の電源リセットを行うための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2に開示されているように、高速道路等に設置される道路設備としては、ドライバに対して道路情報等を提供する電光掲示設備や道路状況を撮影する監視カメラ設備等といった種々の設備が存在している。これらの道路設備は、一般に屋外に設置されることから特に夏期にあっては太陽光輻射熱の影響も含めて高温環境下に曝されることになる。
【0003】
近年、情報通信技術の高度化に伴って各道路設備の制御部にはマイクロプロセッサ等のCPU(Central Processing Unit)が備えられている。また、この制御部は、一般に金属製の筐体に収容されている。このため、前述した如く道路設備が高温環境下に曝される状況では、CPUの表面温度が70℃程度(この場合、内部温度は90℃程度)にまで達することがあり、この場合、CPUのフリーズや熱暴走等が生じることがある。
【0004】
このようなCPUのフリーズや熱暴走等が生じた場合、道路設備の正常作動が全くできないことになり、既存通信手段による外部からの制御が行えない状態に陥ってしまい、遠隔でのリセット行為ができなくなる。このため、これまでは、作業者が現地まで出向き、手動操作によってCPU関連電源のリセット(所謂、電源リセット)を行っていた。一般に道路設備に使用されている電源回路は1A以上の比較的大きな電流が流れることから、回路遮断装置として、配線用遮断器(MCCBやELCB等)や、電磁接触器(MG)が用いられており、前記電源リセットでは、回路遮断装置を一旦OFF操作した後、ON操作するといった手動のリセット作業を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-126538号公報
【文献】特開2019-144980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電源リセットは、作業者が現地まで出向いてリセット作業を行う必要があったことから、道路設備の作動を復帰(復旧)させるまでに長い時間を要してしまうばかりでなく、作業者の労力が多大なものとなっていた。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御部に備えられたCPUのフリーズや熱暴走等が生じた場合の電源リセットを、労力の軽減を図りながらも早期に実施することができる電源リセットユニットおよび該電源リセットユニットを備えた道路設備管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、道路設備に備えられた機器を制御する制御装置が高温環境下において正常作動不能状態となった場合に、前記道路設備の作動を復帰させるための電源リセットユニットを対象とする。そして、この電源リセットユニットは、前記道路設備の電源線に備えられた回路遮断装置と、該回路遮断装置のOFF/ONを切り替え可能とする切り替え作動手段と、IPネットワーク網によって管理装置と接続され、前記制御装置の正常作動時には停止状態または待機状態となっており、当該制御装置が前記正常作動不能状態となった場合において、前記管理装置から前記IPネットワーク網を介して送信されたリセット指令信号を受信することにより作動して、前記切り替え作動手段に切り替え作動指令信号を出力し、当該切り替え作動手段の切り替え作動を行わせるリセット制御装置とを備えていることを特徴とする。
【0009】
制御装置(例えば機器を制御するためのCPU)は、道路設備に備えられた機器を継続的に制御しているため発熱しており、特に高温環境下にあってはフリーズや熱暴走等の正常作動不能状態となる場合がある。一方、リセット制御装置(例えば電源リセットのための専用のCPU)は、前記制御装置の正常作動時には停止状態または待機状態となっているため、制御装置が正常作動不能状態となるまでの発熱は殆ど無く、高温環境下であっても正常作動が可能な状態にある。このため、制御装置が正常作動不能状態となった場合、手動または自動で管理装置からIPネットワーク網を介してリセット制御装置にリセット指令信号を送信することにより、該リセット指令信号を受信したリセット制御装置は正常に作動して切り替え作動手段に切り替え作動指令信号を出力することになる。そして、この切り替え作動指令信号に従って、切り替え作動手段の切り替え作動が行われ、回路遮断装置のOFF/ONが切り替えられることにより道路設備の電源リセットが行われる。つまり、管理装置からの遠隔操作によって回路遮断装置のOFF/ONが切り替えられて道路設備の電源リセットが行われる。このため、作業者が道路設備の設置場所まで出向いてリセット作業を行う必要はなくなるので、制御装置が正常作動不能状態に陥った際の電源リセットを、労力の軽減を図りながらも早期に実施することが可能になる。
【0010】
また、前記回路遮断装置、前記切り替え作動手段、および、前記リセット制御装置は、単一の筐体の内部に収容されている。
【0011】
このように電源リセットユニットを所謂ワンパッケージ化したことにより、道路設備への取り付けが容易になり、特に既存の道路設備に対する後付けが容易になる。また、施工性、安全性、保守・メンテナンス性、経済性の向上を図ることもできる。
【0012】
また、前記リセット制御装置は、自己が属するIPアドレスを指定した前記管理装置からの指定信号を受信した場合に、当該管理装置の表示画面上に、Webブラウザを利用した前記回路遮断装置の状態情報画像および前記リセット指令信号の送信を指示可能な操作画像を表示するための画像情報を生成する画像情報生成部を備えている。
【0013】
これによれば、管理装置の表示画面上におけるWebブラウザを利用した画像を管理者が見ることで、当該管理者は、回路遮断装置の状態を確認したり、リセット指令信号の送信指示操作を行ったりすることができ、手動で管理装置からリセット制御装置にリセット指令信号を送信する際の利便性を高めることができ、また、誤操作を防止することもできる。
【0014】
また、より好ましい構成として、前記機器が作動時に発熱を伴うものである場合、前記リセット制御装置の設置位置を、前記制御装置の設置位置に比べて前記機器から遠い位置に設置するようにしてもよい。尚、この構成は本発明において必須とするものではない。
【0015】
この構成を採用した場合、リセット制御装置は、制御装置に比べて機器からの熱の影響を受け難い位置に設置されていることになる。従って、リセット制御装置は、制御装置が正常作動不能状態となるまでの温度上昇は殆ど無く、制御装置が正常作動不能状態となった場合における動作(切り替え作動手段への切り替え作動指令信号の出力動作)の信頼性を十分に確保することができる。
【0016】
また、より好ましい構成として、前記リセット制御装置に前記制御装置よりも高い放熱性を有する構成を採用するようにしてもよい。尚、この構成も本発明において必須とするものではない。
【0017】
この構成を採用した場合、高温環境下であって、制御装置がフリーズや熱暴走等の正常作動不能状態となる状況であっても、リセット制御装置の安定作動を期待することができる。このため、制御装置が正常作動不能状態となった場合に道路設備の電源リセットが行えることの信頼性を十分に確保することができる。
【0018】
また、前記切り替え作動手段による前記回路遮断装置のOFF/ONの切り替え作動は、当該回路遮断装置のOFF動作が行われた後、所定の遅延時間を存して当該回路遮断装置のON動作が行われるようになっている。
【0019】
道路設備の電源リセットに当たり、回路遮断装置を一旦OFFした後にONにするタイミングは、装置に内蔵されているDC出力のための定電圧電源の内蔵コンデンサ等に蓄えられている電荷を放電し、定電圧電源の出力を無くすように設定する必要がある。このため、本解決手段では、この放電が完了するまで、回路遮断装置をOFFしてからONするまでの遅延時間を設けるようにしている。
【0020】
また、前述した電源リセットユニットを含む道路設備管理システムも本発明の技術的思想の範疇である。具体的には、複数の道路設備それぞれに備えられた機器および該機器を制御する制御装置と、管理装置とが、IPネットワーク網によって接続されて構成された道路設備管理システムを対象とする。そして、この道路設備管理システムは、前記複数の道路設備それぞれに、前記制御装置が高温環境下において正常作動不能状態となった場合に、前記道路設備の作動を復帰させるための電源リセットユニットが備えられている。また、この電源リセットユニットは、前記道路設備の電源線に備えられた回路遮断装置と、該回路遮断装置のOFF/ONを切り替え可能とする切り替え作動手段と、前記IPネットワーク網によって前記管理装置と接続され、前記制御装置の正常作動時には停止状態または待機状態となっており、当該制御装置が前記正常作動不能状態となった場合において、前記管理装置から前記IPネットワーク網を介して送信されたリセット指令信号を受信することにより作動して、前記切り替え作動手段に切り替え作動指令信号を出力し、当該切り替え作動手段の切り替え作動を行わせるリセット制御装置とを備えていることを特徴とする。
【0021】
これにより、作業者が道路設備の設置場所まで出向いてリセット作業を行うといったことの必要がない道路設備管理システムを構築することができる。
【0022】
また、前記IPネットワーク網には、前記制御装置との間で情報の送受信が可能であって前記制御装置が前記正常作動不能状態となったことの認識が可能なサーバが接続されており、前記サーバによって前記制御装置が前記正常作動不能状態となったことが認識されたことを条件として、手動または自動で、前記管理装置から前記IPネットワーク網を介して前記リセット制御装置にリセット指令信号が送信されるようにしてもよい。
【0023】
これにより、制御装置が正常作動不能状態となった場合におけるリセット制御装置へのリセット指令信号の送信を迅速に行うことができる。
【0024】
また、前記リセット制御装置は、前記回路遮断装置にトリップが生じた場合、その情報を前記管理装置に送信するようにしてもよい。
【0025】
これにより、回路遮断装置にトリップが生じたことを管理装置によって迅速に認識することができ、その後の対策(回路遮断装置をONするための対策)を早期に実施することができ、道路設備の作動を早期に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、制御装置が高温環境下において正常作動不能状態となった場合、管理装置からの遠隔操作によって、制御装置の正常作動時には停止状態または待機状態となっていたリセット制御装置を作動させて回路遮断装置のOFF/ONを切り替えて道路設備の電源リセットを行うようにしている。このため、作業者が道路設備の設置場所まで出向いてリセット作業を行う必要はなくなる。その結果、制御装置が正常作動不能状態に陥った際の電源リセットを、労力の軽減を図りながらも早期に実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る道路設備管理システムの概略を示すブロック図である。
図2】制御ユニットおよび電源リセットユニットそれぞれに備えられたCPUの機能ブロック図である。
図3】事務所に設置された管理装置の表示画面上のWebブラウザ画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、本発明に係る電源リセットユニットを高速道路の電光掲示設備に備えさせた場合を例に挙げて説明する。尚、本発明に係る電源リセットユニットが適用可能な道路設備としては、電光掲示設備に限らず、監視カメラ設備や気象観測設備等の種々の設備が挙げられる。
【0029】
-道路設備管理システムの概略構成-
図1は、本実施形態に係る道路設備管理システム1の概略を示すブロック図である。この図1に示すように本実施形態に係る道路設備管理システム1は、複数の電光掲示設備2,2,…、管制室に設置されたサーバ3、および、事務所に設置された管理装置4が、IPネットワーク網Nを介して相互に信号の送受信が可能に接続された構成となっている。サーバ3および管理装置4は、通信部、CPU、メモリおよび入出力インターフェース等を備える一般的なパソコン等で構成されている。また、これらサーバ3および管理装置4は、タブレット、スマートフォン、専用機器など、他の種類の端末装置であってもよい。尚、図1では、複数の電光掲示設備2,2,…のうち一つの電光掲示設備2についてのみ内部構成を示しているが、他の電光掲示設備2,2,…も同様の構成となっている。また、複数の電光掲示設備2,2,…、サーバ3および管理装置4と、IPネットワーク網Nとの接続形態としては、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0030】
(電光掲示設備)
前述した如く各電光掲示設備2,2,…はそれぞれ同一の構成となっているので、ここでは、一つの電光掲示設備2を代表して説明する。
【0031】
電光掲示設備2は、高速道路を走行する車両のドライバに対して道路情報をLED等を利用した電光掲示によって提供するためのものであり、制御ユニット2A、電源リセットユニット2B、および、レイヤ2スイッチ(L2SW)2Cを含んだ構成となっている。
【0032】
<制御ユニット>
制御ユニット2Aは、CPU(制御装置)21、LED表示部(CPU21によって制御される機器)22、センサ群23等を備えている。
【0033】
図2は、制御ユニット2Aおよび電源リセットユニット2Bそれぞれに備えられたCPU21,27の機能ブロック図である。この図2に示すように、制御ユニット2AのCPU21は、コンピュータプログラムによって実現される機能部として、通信部21a、LED制御部21b、応答情報生成部21cを備えている。
【0034】
通信部21aは、L2SW2CおよびIPネットワーク網Nを介して管制室のサーバ3との間で信号の送受信を行う。サーバ3から制御ユニット2Aに向けて送信される信号としては、電光掲示制御信号や監視情報要求信号等が挙げられる。一方、制御ユニット2Aからサーバ3に向けて送信される信号としては、前記監視情報要求信号に応じた応答信号が挙げられる。具体的に、サーバ3から制御ユニット2Aに向けて所定時間毎または所定時刻に達したタイミングで監視情報要求信号が送信され、制御ユニット2Aは、通信部21aによってこの監視情報要求信号を受信する。そして、CPU21が正常に作動している場合には、応答情報生成部21cによって正常応答情報が生成され、該正常応答情報が応答信号として通信部21aによってサーバ3に向けて返信されることになる。一方、CPU21のフリーズや熱暴走等が生じており、制御ユニット2Aが正常に作動していない場合(正常作動不能状態となっている場合)には、この監視情報要求信号に応じた応答信号をサーバ3に向けて返信することができず、サーバ3は、この監視情報要求信号に応じた応答信号を受信しない状態となる。これにより、管制室では、CPU21のフリーズや熱暴走等が生じていることを認識できる。
【0035】
LED制御部21bは、LED表示部22に向けて当該LED表示部22に表示させるべき情報を送信する。この情報としては、高速道路を走行する車両のドライバに対して提供される道路情報である。例えば、各電光掲示設備2,2,…にセンサ群23が備えられている場合に、各センサ群23によって取得した情報(渋滞情報や交通事故の情報等)をサーバ3に集約し、該サーバ3から各電光掲示設備2,2,…のLED表示部22において表示させるのに適した情報を含む電光掲示制御信号を当該電光掲示設備2の制御ユニット2Aに送信し、当該情報がLED表示部22に表示されることになる。尚、LED表示部22は、図示しない点灯回路やLEDモジュールを備えており、多数組の点灯回路およびLEDモジュールが互いに接続されて構成されている。各LEDモジュールは多数のLED素子が配列されたLEDアレイを含み、複数のLEDモジュールが表示画面を形成している。各点灯回路は、LED用電源であり、商用電源などの入力電圧を、LED制御部21bの制御の下で、直流電流(電流波形、電流値などが制御された電流)に変換し、その直流電流をLEDモジュールに供給する。
【0036】
センサ群23としては、特に限定されるものではないが、例えば、高速道路を走行している各車両の車速を検出するセンサや、高速道路の渋滞の発生有無を検知するドップラ方式のセンサ等が挙げられる。これらセンサは、必ずしも電光掲示設備2に備えられている必要はない。
【0037】
<電源リセットユニット>
電源リセットユニット2Bは、回路遮断装置25、切り替え作動手段26、CPU(リセット制御装置)27等を備えている。これら回路遮断装置25、切り替え作動手段26およびCPU27は、単一の筐体の内部に収容されて所謂ワンパッケージ化されている。この筐体としては金属製または樹脂製のものが採用されている。また、この電源リセットユニット2Bと制御ユニット2Aとが単一の筐体の内部に収容されてワンパッケージ化された構成となっていてもよい。
【0038】
回路遮断装置25は、電光掲示設備2の電源線Lに備えられ、この電源線Lを含む電気回路のOFF/ONを行う。この回路遮断装置25は、電光掲示設備2の機器が過負荷になって定格電流以上の電流が流れた場合や電気回路に短絡が生じた場合に電気回路をOFF(トリップ)するものである。本実施形態にあっては、この回路遮断装置25として、配線用遮断器であるMCCBが採用されている。これに限らず、配線用遮断器であるELCBや、電磁接触器であるMGを採用してもよい。
【0039】
切り替え作動手段26は、回路遮断装置25のOFF/ONを切り替えるための作動部である。具体的に、回路遮断装置25にはOFF/ONを切り替えるための切り替えレバー(図示省略)が設けられている。この切り替えレバーは、例えば押し下げ操作されることで回路遮断装置25がOFF(電気回路を開放する状態)となり、例えば押し上げ操作されることで回路遮断装置25がON(電気回路を閉鎖する状態)となるものである。切り替え作動手段26は、この切り替えレバーの押し下げ操作および押し上げ操作を行うための機械的手段であって、公知のオートリセットブレーカと同様に、切り替えレバーに押圧力(押し下げおよび押し上げのための押圧力)を付加する作動部と、該作動部を昇降させるための駆動力を発生する電動モータとを備えた構成となっている。この電動モータは、CPU27から出力される切り替え作動指令信号に従って作動する。この切り替え作動指令信号に従って切り替え作動手段26による回路遮断装置25のOFF/ONが切り替えられる際、回路遮断装置25を一旦OFFした後、所定時間経過後に回路遮断装置25をONするようになっている。例えば、切り替え作動手段26の電動モータの作動制御プログラムに遅延処理が設けられている。電光掲示設備2の電源リセットに当たり、回路遮断装置25を一旦OFFした後にONにするタイミングは、装置に内蔵されているDC出力のための定電圧電源の内蔵コンデンサ等(図示省略)に蓄えられている電荷を放電し、定電圧電源の出力を無くすように設定する必要がある。このため、本実施形態では、この放電が完了するまで、回路遮断装置25をOFFしてからONするまでの遅延時間を設けるようにしている。この遅延時間は実験やシミュレーションによって予め設定されている。例えば5秒に設定されている。この値はこれに限定されるものではない。
【0040】
本実施形態にあっては、CPU27の設置位置は、CPU21の設置位置に比べてLED表示部22から遠い位置に設置されていることが好ましい。前述した如くCPU21は、LED制御部21bによってLED表示部22の表示を制御するものであることから、これらCPU21とLED表示部22とを接続する信号線の長さを短くしたい要求を満たすべく当該CPU21はLED表示部22に近い位置に設置されているのに対し、CPU27にはこのような要求がないためにLED表示部22から遠い位置に設置することができる。LED表示部22は、作動時に発熱を伴うものであるが、前述の如くCPU27の設置位置を設定する構成を採用した場合には、当該CPU27は、CPU21に比べてLED表示部22からの熱の影響を受け難い位置に設置されていることになる。
【0041】
また、CPU27はCPU21よりも高い放熱性を有する構成が採用されていることが好ましい。例えば、CPU27に適用されているヒートシンクがCPU21に適用されているヒートシンクよりも放熱性の高いものが採用されていたり、CPU27のCPUグリスがCPU21のCPUグリスよりも熱伝達率の高いものが採用されていること等が挙げられる。
【0042】
図2に示すように、CPU27は、コンピュータプログラムによって実現される機能部として、通信部27a、状態検出部27b、画像情報生成部27cを備えている。
【0043】
通信部27aは、L2SW2CおよびIPネットワーク網Nを介して事務所の管理装置4との間で信号の送受信を行う。管理装置4から電源リセットユニット2Bに向けて送信される信号としては、状態情報要求信号やリセット指令信号等が挙げられる。一方、電源リセットユニット2Bから管理装置4に向けて送信される信号としては、前記状態情報要求信号に応じた画像情報信号が挙げられる。
【0044】
具体的に、事務所に所属する管理者が特定の電光掲示設備2の回路遮断装置25の状態を監視したい場合、当該回路遮断装置25が属する電光掲示設備2におけるCPU27のIPアドレスを指定した状態情報要求信号(本発明でいう指定信号)を管理装置4の操作によって送信する。つまり、管理装置4には、各電光掲示設備2,2,…の設置場所(住所や緯度経度の情報)が各電光掲示設備2,2,…それぞれの個体情報として登録されており、管理者は監視したい電光掲示設備2のIPアドレスを指定した状態情報要求信号を管理装置4の操作によって送信する。この状態情報要求信号は、当該信号に含まれているIPアドレスのCPU27に向けて送信される。そして、この状態情報要求信号を受信した(通信部27aによって受信した)CPU27にあっては、状態検出部27bによって回路遮断装置25の状態(回路遮断装置25がON状態であるかOFF状態であるかの情報等)が検出され、この検出した回路遮断装置25の状態の情報が画像情報生成部27cに出力される。画像情報生成部27cでは、この回路遮断装置25の状態の情報を含む画像情報を、Webブラウザによる表示可能な情報に加工し、この情報を通信部27aに出力する。そして、通信部27aは、この情報を管理装置4に向けて送信し、管理装置4の表示画面上に、回路遮断装置25の状態の情報を含む画像がWebブラウザによって表示されることになる。ここで使用されるWebブラウザとしては一般に公開されているものが利用される。
【0045】
図3は、管理装置4の表示画面上のWebブラウザ画像の一例を示す図である。この図3に示すように、Webブラウザ画像としては、対象とする電光掲示設備2の設置位置情報領域41、ブレーカ監視情報領域42、ブレーカ制御操作領域43、名称設定領域44、ネットワーク設定領域45に区画されている。
【0046】
ブレーカ監視情報領域42には、現在の回路遮断装置25の状態としてON状態であるのかOFF状態であるのかの表示(本発明でいう回路遮断装置の状態情報画像の表示)や、回路遮断装置25の自動復帰が行われた回数や、制御ユニット(端末)2Aの状態の表示がなされる。
【0047】
ブレーカ制御操作領域43には、電源リセットユニット2Bに対して要求する動作の選択画面(本発明でいうリセット指令信号の送信を指示可能な操作画像)が表示される。この選択画面としては、回路遮断装置25のOFF/ONの切り替え(電源リセット)を要求する選択部、電源OFFとなっている場合に強制的に電源ONを要求する選択部、電源ONとなっている場合に強制的に電源OFFを要求する選択部、機器のメンテナンスを行う場合に選択される選択部を有している。何れかの選択部を選択した後に実行ボタンを操作することにより、この選択された要求情報を電源リセットユニット2Bに送信することになる。例えば回路遮断装置のOFF/ONの切り替えを要求する選択部が選択されて実行ボタンが操作された場合には、管理装置4からIPネットワーク網Nを介して、信号に含まれているIPアドレスの電源リセットユニット2Bにリセット指令信号が送信されることになる。そして、このリセット指令信号を受信した電源リセットユニット2BのCPU27は切り替え作動手段26に向けて切り替え作動指令信号を出力する。
【0048】
以下、前述の如く構成された道路設備管理システム1において、一つの電光掲示設備2のCPU21にフリーズや熱暴走等が生じた場合の動作について説明する。
【0049】
CPU21のフリーズや熱暴走等が生じた場合、前述したようにサーバ3は監視情報要求信号に応じた応答信号を受信しない状態となることから、管制室では、特定のIPアドレスのCPU21のフリーズや熱暴走等が生じていることが認識できる。そのことを事務所の管理者に連絡することにより、当該管理者は、管理装置4の操作によって、当該CPU(フリーズや熱暴走等が生じているCPU)21と同一の電光掲示設備2に備えられた電源リセットユニット2Bに向けてリセット指令信号を送信する。例えば、図3で示した管理装置4の表示画面上のWebブラウザ画像において、回路遮断装置のOFF/ONの切り替えを要求する選択部を選択して実行ボタンを操作することにより、管理装置4からIPネットワーク網Nを介して電源リセットユニット2Bにリセット指令信号が送信されることになる。
【0050】
電源リセットユニット2BのCPU27は、CPU21の正常作動時には停止している(または待機状態となっている)ため、CPU21が正常作動不能状態となるまでの発熱は殆ど無く、高温環境下であっても正常作動が可能な状態にある。このため、リセット指令信号を受信したCPU27は、切り替え作動手段26に向けて切り替え作動指令信号を出力する。切り替え作動手段26では、この切り替え作動指令信号に従って切り替え作動が行われ、回路遮断装置25のOFF/ONの作動が行われる。つまり、回路遮断装置25を一旦OFFした後、所定時間経過後に回路遮断装置25をONすることによる電源リセットが行われる。電源リセットが適切に行われたことは、例えば回路遮断装置25にリミットスイッチを設けておく等して検出され、その情報が管理装置4に送信され、事務所の管理者が確認できるようになっている。
【0051】
このようにして管理装置4からの遠隔操作によって回路遮断装置25のOFF/ONが切り替えられて電光掲示設備2の電源リセットが行われる。このため、作業者が電光掲示設備2の設置場所まで出向いてリセット作業を行う必要はなくなるので、制御ユニット2AのCPU21が正常作動不能状態に陥った際の電源リセットを、労力の軽減を図りながらも早期に実施することが可能になる。
【0052】
また、夏期においてCPU21の表面温度が70℃程度にまで達している状況であっても、CPU27の周辺の温度は55℃程度までしか上昇しない。つまり、各CPU21,27には15℃の温度差が生じている。これをアレニウス則に適用すると、CPU27およびその周辺回路の寿命は、CPU21およびその周辺回路の寿命よりも2.8倍程度長く確保することができる。
【0053】
また、本実施形態では、回路遮断装置25、切り替え作動手段26およびCPU27が、単一の筐体の内部に収容されて所謂ワンパッケージ化されている。このため、電光掲示設備2への取り付けが容易になり、特に既存の電光掲示設備2に対する後付けが容易になる。また、施工性、安全性、保守・メンテナンス性、経済性の向上を図ることもできる。
【0054】
また、CPU27の設置位置を、CPU21の設置位置に比べてLED表示部22から遠い位置に設置した場合には、CPU27は、CPU21が正常作動不能状態となるまでの温度上昇は殆ど無く、CPU21が正常作動不能状態となった場合における動作(切り替え作動手段26への切り替え作動指令信号の出力動作)の信頼性を十分に確保することができる。
【0055】
また、前述したようにCPU27にCPU21よりも高い放熱性を有する構成が採用されている場合には、高温環境下であって、CPU21がフリーズや熱暴走等の正常作動不能状態となる状況であっても、CPU27の安定作動を期待することができる。このため、CPU21が正常作動不能状態となった場合に電光掲示設備2の電源リセットが行えることの信頼性を十分に確保することができる。
【0056】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0057】
例えば、前記実施形態では、管理者が管理装置4を操作することによって電源リセットユニット2Bに向けてリセット指令信号を送信するようにしていた。本発明はこれに限らず、サーバ3からの情報(特定のIPアドレスのCPU21のフリーズや熱暴走等が生じていることの情報)を管理装置4が自動受信し、それに伴って管理装置4が電源リセットユニット2Bに向けてリセット指令信号を自動送信するようになっていてもよい。また、管理装置4が、特定のIPアドレスのCPU21のフリーズや熱暴走等が生じていることの情報を受信可能な構成とし、それに伴って当該管理装置4が電源リセットユニット2Bに向けてリセット指令信号を自動送信するようになっていてもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、回路遮断装置25、切り替え作動手段26およびCPU27が、単一の筐体の内部に収容されたものとしていた。本発明はこれに限らず、これら回路遮断装置25、切り替え作動手段26およびCPU27のうちの2つが単一の筐体の内部に収容された構成であってもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、管理者による管理装置4の操作と略同時に電源リセットユニット2Bに向けてリセット指令信号を送信するようにしていた。この場合、仮に電光掲示設備2の電源リセットが行えたとしても、CPU21が高温である場合には、その後の短時間のうちに再びフリーズや熱暴走等が生じてしまう可能性がある。このことを考慮し、例えば、CPU21に温度センサを備えさせ、管理者による管理装置4の操作が行われた後、温度センサによってCPU21の温度が所定温度(電光掲示設備2の電源リセットを行った後の短時間のうちに再びフリーズや熱暴走等が生じてしまう可能性がない温度)まで低下したタイミングで電源リセットユニット2Bに向けてリセット指令信号を送信するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、高速道路の電光掲示設備等における電源リセットユニットおよび該電源リセットユニットを備えた道路設備管理システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 道路設備管理システム
2 電光掲示設備(道路設備)
21 CPU(制御装置)
22 LED表示部(機器)
25 回路遮断装置
26 切り替え作動手段
27 CPU(リセット制御装置)
27c 画像情報生成部
2B 電源リセットユニット
4 管理装置
N IPネットワーク網
L 電源線
【要約】
【課題】制御部に備えられたCPUのフリーズや熱暴走等が生じた場合の電源リセットを、労力の軽減を図りながらも早期に実施することができる電源リセットユニットおよび該電源リセットユニットを備えた道路設備管理システムを提供する。
【解決手段】制御ユニット2AのCPU21が高温環境下においてフリーズや熱暴走した場合、管理装置4からの遠隔操作によって、CPU21の正常作動時には停止状態または待機状態となっていた電源リセットユニット2BのCPU27を作動させて回路遮断装置25のOFF/ONを切り替えて電源リセットを行う。このため、作業者が道路設備の設置場所まで出向いてリセット作業を行う必要はなくなる。その結果、CPU21がフリーズや熱暴走した際の電源リセットを、労力の軽減を図りながらも早期に実施することが可能になる。
【選択図】図1
図1
図2
図3