(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】車両用表示システム、車両システム及び車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/50 20060101AFI20240410BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
B60Q1/00 G
(21)【出願番号】P 2023061720
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2020541273の分割
【原出願日】2019-09-04
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018166043
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018166044
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018166045
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】紅林 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】中林 政昭
(72)【発明者】
【氏名】滝井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】伏見 美昭
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/50
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両システムであって、
前記車両の走行を制御するように構成された車両制御部と、
車両用表示システムと、
を備え、
前記車両用表示システムは、
前記車両の内部に位置すると共に、所定の情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記所定の情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイ(HUD)と、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された路面描画装置と、
前記路面描画装置及び前記HUDを動作させるべきかどうかを決定すると共に、前記路面描画装置及び前記HUDの動作を制御するように構成された表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、
第1プロセッサと、第1メモリとを備え、前記HUDの動作を制御するように構成された第1電子制御ユニットと、
第2プロセッサと、第2メモリとを備えた第2電子制御ユニットと、
を有し、
前記HUDが動作していない場合に、前記第2電子制御ユニットが、前記路面描画装置の動作を制御し、
前記HUDが動作している場合に、前記第1電子制御ユニットが、前記HUD及び前記路面描画装置の動作を制御する、車両システム。
【請求項2】
前記車両用表示システムは、
前記車両の外部に向けてロービーム及び/又はハイビームを出射するように構成された照明装置をさらに備え、
前記HUDが動作していない場合に、前記第2電子制御ユニットが、前記路面描画装置及び前記照明装置の動作を制御し、
前記HUDが動作している場合に、前記第1電子制御ユニットが、前記HUD及び前記路面描画装置の動作を制御する一方、前記第2電子制御ユニットが、前記照明装置の動作を制御する、請求項1に記載の車両システム。
【請求項3】
前記車両用表示システムは、
前記車両の外部に向けてロービーム及び/又はハイビームを出射するように構成された照明装置をさらに備え、
前記HUDが動作していない場合に、前記第2電子制御ユニットが、前記路面描画装置及び前記照明装置の動作を制御し、
前記HUDが動作している場合に、前記第1電子制御ユニットが、前記HUD、前記路面描画装置及び前記照明装置の動作を制御する、請求項1に記載の車両システム。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両システムを備えた、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示システム、車両システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車の自動運転技術の研究が各国で盛んに行われており、自動運転モードで車両(以下、「車両」は自動車のことを指す。)が公道を走行することができるための法整備が各国で検討されている。ここで、自動運転モードでは、車両システムが車両の走行を自動的に制御する。具体的には、自動運転モードでは、車両システムは、カメラ、レーダ(例えば、レーザレーダやミリ波レーダ)等のセンサから得られる車両の周辺環境を示す情報(周辺環境情報)に基づいてステアリング制御(車両の進行方向の制御)、ブレーキ制御及びアクセル制御(車両の制動、加減速の制御)のうちの少なくとも1つを自動的に行う。一方、以下に述べる手動運転モードでは、従来型の車両の多くがそうであるように、運転者が車両の走行を制御する。具体的には、手動運転モードでは、運転者の操作(ステアリング操作、ブレーキ操作、アクセル操作)に従って車両の走行が制御され、車両システムはステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御を自動的に行わない。尚、車両の運転モードとは、一部の車両のみに存在する概念ではなく、自動運転機能を有さない従来型の車両も含めた全ての車両において存在する概念であって、例えば、車両制御方法等に応じて分類される。
【0003】
このように、将来において、公道上では自動運転モードで走行中の車両(以下、適宜、「自動運転車」という。)と手動運転モードで走行中の車両(以下、適宜、「手動運転車」という。)が混在することが予想される。
【0004】
自動運転技術の一例として、特許文献1には、先行車に後続車が自動追従走行した自動追従走行システムが開示されている。当該自動追従走行システムでは、先行車と後続車の各々が照明システムを備えており、先行車と後続車との間に他車が割り込むことを防止するための文字情報が先行車の照明システムに表示されると共に、自動追従走行である旨を示す文字情報が後続車の照明システムに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
将来の自動運転社会では、自動運転車と人間との間の視覚的コミュニケーションが重要になっていくことが予想される。特に、車両と当該車両の外部に存在する歩行者等の対象物との間の視覚的コミュニケーション及び車両と当該車両の乗員との間の視覚的コミュニケーションが益々重要になっていくことが予想される。この点において、光パターンを路面上に出射する路面描画装置を用いて車両と対象物との間の視覚的コミュニケーションを実現することができると共に、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いて車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを実現することができる。
【0007】
ところで、通常では車両用表示システムの表示制御部(車載コンピュータ)が光パターンの出射を自動的に制御しているが、車両の周辺環境の状況に応じて、乗員自身が光パターンの出射を手動で制御したい場合がある。例えば、光パターンが路面上に出射されていない状況において、乗員が車両の周辺に存在する特定の歩行者に向けて光パターンを出射したい場合等が想定される。このように、光パターンの出射の手動制御の観点より車両用表示システムをさらに改善する余地がある。
【0008】
また、路面描画装置およびHUDが搭載された車両では、路面描画装置及びHUDのうちの少なくとも一方に異常が生じた場合、車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを継続できなくなる。このように、路面描画装置及びHUDのうちの少なくとも一方に異常が生じた場合であっても車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを継続可能な車両用表示システムについて検討する余地がある。
【0009】
さらに、車両と人間との間の視覚的コミュニケーションの信頼性をさらに高めるために、路面描画装置とHUDの動作をより高速化させたいといった要望も少なからず存在する。このように、路面描画装置とHUDの動作の高速化の観点から車両システムをさらに改善する余地がある。
【0010】
本開示の第1の目的は、乗員が光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した車両用表示システム及び車両を提供することである。
【0011】
本開示の第2の目的は、車両用表示システムに異常が生じた場合でも車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを継続可能な車両用表示システム及び車両を提供することである。
【0012】
本開示の第3の目的は、HUDと路面描画装置の動作を高速化させることが可能な車両システム及び車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様の車両用表示システムは、車両に設けられ、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第1表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、所定の情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記所定の情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成された第2表示装置と、
前記第1表示装置を制御するように構成された表示制御部と、を備える。
前記表示制御部は、前記所定の情報が表示可能な表示領域に対する前記乗員の入力操作に応じて、前記光パターンの出射を制御するように構成されている。
【0014】
上記構成によれば、表示領域に対する乗員の入力操作に応じて光パターンの出射が制御される。このように、乗員は、直感的な入力操作によって光パターンの出射を制御することが可能となる。したがって、乗員が光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した車両用表示システムを提供することができる。
【0015】
また、前記表示制御部は、前記乗員の視点の位置と前記入力操作の入力位置に基づいて、前記光パターンの出射位置を制御するように構成されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、乗員の視点の位置と乗員の入力操作の入力位置に基づいて、光パターンの出射位置が制御される。このように、乗員は、直感的な入力操作により光パターンの出射位置を決定することが可能となる。したがって、乗員が光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した車両用表示システムを提供することができる。
【0017】
また、前記表示制御部は、前記表示領域に対する前記入力操作に応じて、前記光パターンの出射を開始するように構成されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、表示領域に対する入力操作に応じて光パターンの出射が開始される。このように、乗員による直感的な入力操作によって車両の外部に存在する対象物(例えば、歩行者等)に向けて光パターンを出射することができる。
【0019】
また、前記表示制御部は、
前記乗員の視点の位置と、前記入力操作の第1入力位置に基づいて、前記路面上における前記光パターンの開始位置を特定し、
前記視点の位置と、前記入力操作の第2入力位置に基づいて、前記路面上における前記光パターンの終了位置を特定し、
前記開始位置と前記終了位置とに基づいて、前記光パターンを前記路面上に出射する、ように構成されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、乗員の視点の位置と入力操作の第1入力位置に基づいて光パターンの開始位置が特定されると共に、乗員の視点と入力操作の第2入力位置に基づいて光パターンの終了位置が特定される。さらに、光パターンの開始位置と終了位置に基づいて光パターンが路面上に出射される。このように、乗員による直感的な入力操作によって車両の外部の対象物に向けて光パターンを出射することができる。
【0021】
また、前記表示制御部は、前記表示領域に対する前記入力操作に応じて、前記光パターンの出射位置を変更するように構成されてもよい。
【0022】
上記構成によれば、表示領域に対する入力操作に応じて光パターンの出射位置が変更される。このように、乗員による直感的な入力操作によって光パターンの出射位置を変更することができる。
【0023】
また、前記表示制御部は、
前記乗員の視点の位置と、前記入力操作の第3入力位置に基づいて、前記路面上における第1指定位置を特定し、
前記第1指定位置が前記路面上に出射された光パターンと重なる場合に、前記視点の位置と、前記入力操作の第4入力位置に基づいて、前記路面上における第2指定位置を特定し、
前記第2指定位置に基づいて、前記光パターンの出射位置を変更する、
ように構成されてもよい。
【0024】
上記構成によれば、第1指定位置が光パターンの出射位置と重なる場合に、光パターンの出射位置が第2指定位置に変更される。このように、乗員による直感的な入力操作によって光パターンの出射位置を変更することができる。
【0025】
また、前記表示領域は、前記入力操作を受付けるように構成されたタッチパネルを有してもよい。
【0026】
上記構成によれば、タッチパネルに対する乗員の入力操作に応じて光パターンの出射が制御される。このように、乗員による直感的な入力操作によって光パターンの出射を制御することが可能となる。
【0027】
また、車両用表示システムは、前記車両の内部に位置すると共に、前記乗員を示す画像データを取得するように構成されたトラッキングカメラをさらに備えてもよい。
前記表示制御部は、
前記画像データに基づいて、前記乗員の視点の位置及び前記乗員の手の位置を特定し、
前記手の位置に基づいて、前記入力操作の入力位置を特定し、
前記視点の位置と前記入力操作の入力位置に基づいて、前記光パターンの出射位置を制御するように構成されてもよい。
【0028】
上記構成によれば、トラッキングカメラによって取得された画像データに基づいて乗員の視点の位置と乗員の手の位置が特定された上で、乗員の手の位置に基づいて乗員の入力操作の入力位置が特定される。さらに、乗員の視点の位置と入力操作の入力位置に基づいて光パターンの出射位置が制御される。このように、(タッチパネルを用いない)空間中の手の動作によって光パターンの出射位置を制御することが可能となる。したがって、乗員が光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した車両用表示システムを提供することができる。
【0029】
本開示の一態様に係る車両用表示システムは、車両に設けられた車両用表示システムであって、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第1表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、前記車両の走行に関連した車両走行情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記車両走行情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成された第2表示装置と、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置を制御するように構成された表示制御部と、
を備える。
前記表示制御部は、
前記第1表示装置に異常があると判断された場合に、前記光パターンに対応する情報を前記第2表示装置に表示させる。
【0030】
上記構成によれば、第1表示装置に異常があると判断された場合に、光パターンに対応する情報を第2表示装置に表示させる。このように、第1表示装置に異常が生じた場合でも車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを行うことが可能な車両用表示システムを提供することができる。
【0031】
また、第1表示装置に異常があると判断された場合に、前記表示制御部は、前記第1表示装置が複数の前記光パターンを出射している場合には、前記複数の光パターンにそれぞれ対応する情報を前記第2表示装置に表示させてもよい。
【0032】
上記構成によれば、全ての光パターンに対応する情報を第2表示装置に表示させる。このように、乗員は、第1表示装置に異常が生じた場合でも、異常前と同じ情報を継続的に把握することができる。
【0033】
また、前記表示制御部は、前記第1表示装置の異常情報を前記第2表示装置に表示させてもよい。
【0034】
上記構成によれば、第1表示装置が異常である情報を第2表示装置に表示させる。このように、乗員は、第1表示装置が異常であることを把握することができる。
【0035】
また、前記表示制御部は、前記第2表示装置に異常があると判断された場合に、前記車両走行情報に対応する光パターンを前記第1表示装置に出射させる。
【0036】
上記構成によれば、第2表示装置に異常があると判断された場合に、車両走行情報に対応する光パターンを第1表示装置に出射させる。このように、第2表示装置に異常が生じた場合でも車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを行うことが可能な車両用表示システムを提供することができる。
【0037】
本開示の他の態様に係る車両用表示システムは、車両に設けられた車両用表示システムであって、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第1表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、前記車両の走行に関連した車両走行情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記車両走行情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成された第2表示装置と、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置を制御するように構成された表示制御部と、
を備える。
前記表示制御部は、
前記第2表示装置に異常があると判断された場合に、前記車両走行情報に対応する光パターンを前記第1表示装置に出射させる。
【0038】
上記構成によれば、第2表示装置に異常があると判断された場合に、車両走行情報に対応する光パターンを第1表示装置に出射させる。このように、第2表示装置に異常が生じた場合でも車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを行うことが可能な車両用表示システムを提供することができる。
【0039】
また、第2表示装置に異常があると判断された場合に、前記表示制御部は、前記第2表示装置が複数の前記車両走行情報を表示している場合には、前記複数の車両走行情報の少なくとも1つの車両走行情報に対応する光パターンを前記第1表示装置に出射させてもよい。
【0040】
上記構成によれば、複数の車両走行情報のうち少なくとも1つの情報に対応する光パターンを第1表示装置に出射させる。例えば、複数の車両走行情報のうち、光パターンから読み取ることが容易な図形の情報や簡単な文字の情報からなる車両走行情報に対応する光パターンを第1表示装置に出射させる。このように、乗員は、第2表示装置に異常が生じた場合でも、異常前とほぼ同じ情報を継続的に且つ正確に把握することができる。
【0041】
また、上記車両用表示システムを備えた、車両が提供されてもよい。
【0042】
上記構成によれば、車両用表示システムに異常が生じた場合でも車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを継続可能な車両用表示システムを提供することができる。
【0043】
本開示の一態様の車両システムは、車両に設けられており、前記車両の走行を制御するように構成された車両制御部と、車両用表示システムと、を備える。
前記車両用表示システムは、
前記車両の内部に位置すると共に、所定の情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記所定の情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイ(HUD)と、
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された路面描画装置と、
前記路面描画装置及び前記HUDを動作させるべきかどうかを決定すると共に、前記路面描画装置及び前記HUDの動作を制御するように構成された表示制御部と、を備える。
【0044】
上記構成によれば、車両制御部に代わって、表示制御部が路面描画装置及びHUDを動作させるべきかどうかを決定すると共に、路面描画装置及びHUDの動作を制御する。このように、車両制御部による演算負荷を減らすことができると共に、路面描画装置及びHUDの動作を高速化させることが可能となる。
【0045】
また、前記表示制御部は、
第1プロセッサと、第1メモリとを備え、前記HUDの動作を制御するように構成された第1電子制御ユニットと、
第2プロセッサと、第2メモリとを備えた第2電子制御ユニットと、
を有してもよい。
前記HUDが動作していない場合に、前記第2電子制御ユニットが、前記路面描画装置の動作を制御してもよい。
前記HUDが動作している場合に、前記第1電子制御ユニットが、前記HUD及び前記路面描画装置の動作を制御してもよい。
【0046】
上記構成によれば、HUDが動作していない場合に、第2電子制御ユニットが路面描画装置の動作を制御する一方で、HUDが動作している場合に、第1電子制御ユニットがHUD及び路面描画装置の動作を制御する。このように、HUDと路面描画装置の両方が動作している場合にHUDと路面描画装置のうちの少なくとも一方を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。特に、HUDと路面描画装置が互いに協調して動作している場合に(換言すれば、HUDと路面描画装置のうちの一方の動作内容に応じて他方の動作内容が決定される場合に)、第1電子制御ユニットは、HUDの動作を制御するための制御信号だけでなく路面描画装置の動作を制御するための制御信号を生成する。このため、HUDの動作内容を考慮した上で路面描画装置を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。または、路面描画装置の動作内容を考慮した上でHUDを効率的且つ高速に動作させることが可能となる。
【0047】
また、前記車両用表示システムは、
前記車両の外部に向けてロービーム及び/又はハイビームを出射するように構成された照明装置をさらに備えてもよい。
前記HUDが動作していない場合に、前記第2電子制御ユニットが、前記路面描画装置及び前記照明装置の動作を制御してもよい。
前記HUDが動作している場合に、前記第1電子制御ユニットが、前記HUD及び前記路面描画装置の動作を制御する一方、前記第2電子制御ユニットが、前記照明装置の動作を制御してもよい。
【0048】
上記構成によれば、HUDが動作していない場合に、第2電子制御ユニットが路面描画装置及び照明装置の動作を制御する一方で、HUDが動作している場合に、第1電子制御ユニットがHUD及び路面描画装置の両方の動作を制御する。このように、HUDと路面描画装置の両方が動作している場合にHUDと路面描画装置のうちの少なくとも一方を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。
【0049】
また、前記車両用表示システムは、
前記車両の外部に向けてロービーム及び/又はハイビームを出射するように構成された照明装置をさらに備えてもよい。
前記HUDが動作していない場合に、前記第2電子制御ユニットが、前記路面描画装置及び前記照明装置の動作を制御してもよい。
前記HUDが動作している場合に、前記第1電子制御ユニットが、前記HUD、前記路面描画装置及び前記照明装置の動作を制御してもよい。
【0050】
上記構成によれば、HUDが動作していない場合に、第2電子制御ユニットが路面描画装置及び照明装置の動作を制御する一方で、HUDが動作している場合に、第1電子制御ユニットがHUD、路面描画装置及び照明装置の全ての動作を制御する。このように、HUD、路面描画装置、照明装置の全てが動作している場合に、HUD、路面描画装置及び照明装置のうちの少なくとも一方を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。特に、HUDと、路面描画装置と、照明装置とが互いに協調して動作している場合に、第1電子制御ユニットは、HUDの動作を制御するための制御信号だけでなく路面描画装置の動作を制御するための制御信号および照明装置の動作を制御するための制御信号を生成する。このため、HUDの動作内容を考慮した上で路面描画装置及び照明装置を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。または、路面描画装置と照明装置の動作内容を考慮した上でHUDを効率的且つ高速に動作させることが可能となる。
【0051】
また、上記車両システムを備えた車両が提供される。
【0052】
上記によれば、HUDと路面描画装置の動作を高速化させることが可能な車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0053】
本開示によれば、乗員が光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した車両用表示システム及び車両を提供することができる。
【0054】
また、車両用表示システムに異常が生じた場合でも車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを継続可能な車両用表示システム及び当該車両用表示システムを備えた車両を提供することができる。
【0055】
さらに、HUDと路面描画装置の動作を高速化させることが可能な車両システム及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両システムが搭載された車両の正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両システムのブロック図である。
【
図3】車両の乗員と、ダッシュボード上に配置されたHUD(Head-Up Display)と、乗員の視点をトラッキングする内部カメラとをそれぞれ示す図である。
【
図4】第1実施形態の表示システムの第1動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】車両と車両の周辺に存在する歩行者を示す図である。
【
図6】乗員の視点の位置とタッチ位置とに基づいて光パターンの開始位置を特定する方法を説明するための図である。
【
図7】スワイプ操作によってHUD表示領域上における2つの入力位置が指定される様子を示す図である。
【
図8】スワイプ操作によって指定された2つの入力位置に基づいて光パターンが路面上に出射される様子を示す図である。
【
図9】車両から歩行者に向けて出射された光パターンを示す図である。
【
図10】第1実施形態の表示システムの第2動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】車両から出射された光パターンを示す図である。
【
図12】乗員の視界において乗員の入力操作によって指定された第1指定位置と光パターンが重なる様子を示す図である。
【
図13】HUD表示領域に対する乗員のスワイプ操作によって光パターンの出射位置が変更される様子を示す図である。
【
図14】車両から出射された光パターンの出射位置が変更される様子を示す図である。
【
図15】内部カメラによって取得された画像データに基づいて入力操作の入力位置を特定する方法を説明するための図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る車両システムのブロック図である。
【
図17】第2実施形態に係る表示制御部による表示制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図18A】第2実施形態に係る路面描画表示の一例を説明するための図である。
【
図18B】第2実施形態に係るHUD表示の一例を説明するための図である。
【
図19】第2実施形態に係る路面描画表示異常時のHUD表示の一例を説明するための図である。
【
図20A】第2実施形態に係るHUD表示の一例を説明するための図である。
【
図20B】第2実施形態に係る路面描画表示の一例を説明するための図である。
【
図21】第2実施形態に係るHUD表示異常時の路面描画表示の一例を説明するための図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る表示制御部による表示制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図23】第2実施形態に係る表示制御部による表示制御の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図24】第3実施形態に係る表示制御部による表示制御の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図25】本発明の第4実施形態に係る車両システムが搭載された車両の正面図である。
【
図26】第4実施形態に係る車両システムのブロック図である。
【
図27】HUDから出射された光が乗員の目に到達する様子を示す図である。
【
図28】第4実施形態の表示システムの動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図29】車両が車両の周辺に存在する歩行者に向けて光パターンを出射する様子を示す図である。
【
図30】HUD表示領域に表示されたHUD情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0058】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。前後方向は、
図1では示されていないが、左右方向及び上下方向に直交する方向である。
【0059】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る車両システム2について以下に説明する。
図1は、車両システム2が搭載された車両1の正面図である。
図2は、車両システム2のブロック図である。車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0060】
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、車両用表示システム4(以下、単に「表示システム4」という。)と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7とを備える。さらに、車両システム2は、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、記憶装置11と、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0061】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びTPU(Tensor Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、コンピュータシステムは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。さらに、コンピュータシステムは、ノイマン型コンピュータと非ノイマン型コンピュータの組み合わせによって構成されてもよい。
【0062】
表示システム4は、左側ヘッドランプ20Lと、右側ヘッドランプ20Rと、左側路面描画装置45Lと、右側路面描画装置45Rとを備える。さらに、表示システム4は、HUD(Head-Up Display)42と、表示制御部43とを備える。
【0063】
図1に示すように、左側ヘッドランプ20Lは、車両1の左側前面に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。右側ヘッドランプ20Rは、車両1の右側前面に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。ロービームランプとハイビームランプの各々は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の1以上の発光素子と、レンズ及びリフレクタ等の光学部材を有する。また、以降では、説明の便宜上、左側ヘッドランプ20L及び右側ヘッドランプ20Rを単にヘッドランプ20と総称する場合がある。
【0064】
左側路面描画装置45L(第1表示装置の一例)は、左側ヘッドランプ20Lの灯室内に配置されている。左側路面描画装置45Lは、車両1の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。左側路面描画装置45Lは、例えば、光源部と、駆動ミラーと、レンズやミラー等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、レーザ光源又はLED光源である。例えば、レーザ光源は、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、DMD(Digital Mirror Device)、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。光源部がRGBレーザ光源である場合、左側路面描画装置45Lは、レーザ光を走査することで様々の色の光パターンを路面上に描画することが可能となる。例えば、光パターンは、車両1の進行方向を示す矢印形状の光パターンであってもよい。
【0065】
右側路面描画装置45R(第1表示装置の一例)は、右側ヘッドランプ20Rの灯室内に配置されている。右側路面描画装置45Rは、車両1の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。左側路面描画装置45Lと同様に、右側路面描画装置45Rは、光源部と、駆動ミラーと、レンズ等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。
【0066】
また、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rの描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP(Digital Light Processing)方式又はLCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、光源部はLED光源であってもよい。また、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rの描画方式として、プロジェクション方式が採用されてもよい。プロジェクション方式が採用される場合、光源部は、マトリクス状に並んだ複数のLED光源であってもよい。さらに、本実施形態では、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rは、車体ルーフ100A上に配置されてもよい。この点において、1つの路面描画装置が車体ルーフ100A上に配置されてもよい。以降では、説明の便宜上、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rを単に路面描画装置45と総称する場合がある。また、以降の説明において、路面描画装置45は、左側路面描画装置45L、右側路面描画装置45R又は左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45Rの組み合わせを示すものとする。
【0067】
HUD42(第2表示装置の一例)は、車両1の内部に位置する。具体的には、HUD42は、車両1の室内の所定箇所に設置されている。例えば、
図3に示すように、HUD42は、車両1のダッシュボード上に配置されてもよい。HUD42は、車両1と乗員Hとの間の視覚的インターフェースとして機能する。HUD42は、所定の情報(以下、HUD情報という。)が車両1の外部の現実空間(特に、車両1の前方の周辺環境)と重畳されるように当該HUD情報を乗員Hに向けて表示するように構成されている。このように、HUD42は、AR(Augmented Reality)ディスプレイとして機能する。HUD42によって表示されるHUD情報は、例えば、車両1の走行に関連した車両走行情報及び/又は車両1の周辺環境に関連した周辺環境情報(特に、車両1の外部に存在する対象物に関連した情報)である。
【0068】
図3に示すように、HUD42は、HUD本体部420と、透明スクリーン421とを有する。HUD本体部420は、光源部と、駆動ミラーと、光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、例えば、レーザ光源又はLED光源である。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑光レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMSミラー、DMD、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光学系は、プリズム、レンズ、拡散板、拡大鏡のうち少なくとも一つを含む。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43から送信された画像データに基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43から送信された画像データに基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。
【0069】
透明スクリーン421は、透明なコンバイナー(透明な板状部材)である。透明スクリーン421は、HUD情報が表示可能なHUD表示領域D1を有する(
図6,7等を参照)。HUD本体部420から出射された光(画像)は、透明スクリーン421のHUD表示領域D1に照射される。次に、HUD表示領域D1は、HUD本体部420から出射された光を乗員Hの視点Eに向けて反射する。この結果、乗員Hは、HUD本体部420から出射された光(画像)を透明スクリーン421の前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。このように、HUD42によって表示されるHUD情報(画像)が車両1の前方の現実空間に重畳される結果、乗員Eは、当該HUD情報が道路上に浮いているように感じることができる。
【0070】
また、透明スクリーン421は、乗員Hの入力操作を受け付けるように構成されたタッチパネルを有する。特に、透明スクリーン421のHUD表示領域D1にタッチパネルが設けられている。乗員HがHUD表示領域D1を手指で触れることで、透明スクリーン421(特に、タッチパネル)から乗員Hの入力操作に対応する所定の操作信号が生成された上、当該操作信号が表示制御部43に送信される。このように、表示制御部43は、タッチパネルに対する乗員Hの入力操作に応じて所定の処理を実行するように構成されている。
【0071】
尚、本実施形態では、透明スクリーン421はフロントウィンドウ60の一部によって構成されてもよい。この場合でも、フロントウィンドウ60の一部はHUD表示領域D1を有する。さらに、乗員Hは、HUD本体部420から出射された光(画像)を、フロントウィンドウ60の前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。
【0072】
また、虚像が形成される位置(虚像形成位置)は、HUD42の光学系の位置(特に、投影光学系の焦点距離)を調整することで可変されてもよい。この点において、表示制御部43は、車両1の前方に存在する対象物の位置情報に基づいて、対象物の位置と虚像形成位置が略一致するように、HUD42を制御することができる。また、HUD42の描画方式は、ラスタースキャン方向、DLP方式又はLCOS方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、HUD42の光源部はLED光源であってもよい。
【0073】
表示制御部43は、路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)、ヘッドランプ20(具体的には、左側ヘッドランプ20Lと右側ヘッドランプ20R)及びHUD42の動作を制御するように構成されている。この点において、表示制御部43は、路面上の所定の位置に光パターンが照射されるように路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)の動作を制御するように構成されている。特に、表示制御部43は、HUD表示領域D1(タッチパネル)に対する乗員Hの入力操作に応じて、光パターンの出射を制御するように構成されている。さらに、表示制御部43は、HUD情報がHUD表示領域D1に表示されるようにHUD42の動作を制御するように構成されている。
【0074】
表示制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPU及びTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0075】
本実施形態では、車両制御部3と表示制御部43は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3と表示制御部43は一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部43と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、表示制御部43は、ヘッドランプ20と路面描画装置45の動作を制御するように構成された電子制御ユニットと、HUD42の動作を制御するように構成された電子制御ユニットの2つの電子制御ユニットによって構成されてもよい。
【0076】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一つを含む。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。
【0077】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6は、一以上の外部カメラ6Aと、内部カメラ6Bとを含む。外部カメラ6Aは、車両1の周辺環境を示す画像データを取得した上で、当該画像データを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された画像データに基づいて、周辺環境情報を取得する。ここで、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物(歩行者、他車両、標識等)に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物の属性に関する情報と、車両1に対する対象物の距離や位置に関する情報とを含んでもよい。外部カメラ6Aは、単眼カメラとしても構成されてもよいし、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0078】
内部カメラ6Bは、車両1の内部に配置されると共に、乗員Hを示す画像データを取得するように構成されている。内部カメラ6Bは、車両1の天井の所定の位置に配置されてもよいし(
図3参照)、ダッシュボード上に配置されてもよい。内部カメラ6Bは、乗員Hの視点Eをトラッキングするトラッキングカメラとして機能する。ここで、乗員Hの視点Eは、乗員Hの左目の視点又は右目の視点のいずれかであってもよい。または、視点Eは、左目の視点と右目の視点を結んだ線分の中点として規定されてもよい。表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて、乗員Hの視点Eの位置を特定してもよい。乗員Hの視点Eの位置は、画像データに基づいて、所定の周期で更新されてもよいし、車両1の起動時に一回だけ決定されてもよい。
【0079】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ及びレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)のうちの少なくとも一つを含む。例えば、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0080】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイ(HUDを除く)である。GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0081】
無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部10は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両1の自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器とアドホックモードにより直接通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。さらに、車両1は、図示しない通信ネットワークを介して他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と通信してもよい。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)及び無線アクセスネットワーク(RAN)のうちの少なくとも一つを含む。無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA、DSRC(登録商標)又はLi-Fiである。また、車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と第5世代移動通信システム(5G)を用いて通信してもよい。
【0082】
記憶装置11は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置である。記憶装置11には、2次元又は3次元の地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3次元の地図情報は、3Dマッピングデータ(点群データ)によって構成されてもよい。記憶装置11は、車両制御部3からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部3に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部10と通信ネットワークを介して更新されてもよい。
【0083】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、車両1の走行を自動的に制御する。つまり、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0084】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0085】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0086】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0087】
次に、
図4から
図9を参照することで本実施形態の表示システム4の第1動作例について以下に説明する。
図4は、本実施形態の表示システム4の第1動作例を説明するためのフローチャートである。
図5は、車両1と車両1の周辺に存在する歩行者P1を示す図である。
図6は、乗員Hの視点Eの位置とタッチ位置C1とに基づいて光パターンL1の開始位置e1を特定する方法を説明するための図である。
図7は、スワイプ操作によってHUD表示領域D1上における2つの入力位置(タッチ位置C1と終了位置C2)が指定される様子を示す図である。
図8は、スワイプ操作によって指定された2つの入力位置に基づいて光パターンL1が路面上に出射される様子を示す図である。
図9は、車両1から歩行者P1に向けて出射された光パターンL1を示す図である。尚、
図7,8では、透明スクリーン421のHUD表示領域D1を通じて乗員Eにより視認される前方の周辺環境が示されている。
【0088】
図4に示すように、ステップS1において、表示制御部43は、HUD表示領域D1(タッチパネル)に対する乗員Hのタッチ操作が検出されたかどうかを判定する。ステップS1の判定結果がYESの場合、処理はステップS2に進む。一方、ステップS1の判定結果がNOである場合、タッチ操作が検出されるまでステップS1の判定処理が繰り返し実行される。
【0089】
次に、ステップS2において、表示制御部43は、乗員Hの視点Eの位置と乗員Hの手Tのタッチ位置C1(第1入力位置の一例、
図7参照)とに基づいて、路面上における光パターンL1の開始位置e1(
図9参照)を特定する。具体的には、表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された乗員Hを示す画像データに基づいて、乗員Hの視点Eの位置を特定する。また、透明スクリーン421(タッチパネル)は、乗員Hのタッチ操作に応じて手Tのタッチ位置C1を示す操作信号を生成した上で、当該操作信号を表示制御部43に送信する。次に、表示制御部43は、視点Eの位置とタッチ位置C1とに基づいて光パターンL1の開始位置e1を特定する。この点において、
図6に示すように、視点Eの位置とタッチ位置C1とを通る直線と路面との交点が開始位置e1として特定される。
【0090】
次に、ステップS3において、表示制御部43は、HUD表示領域D1に対する乗員Hのスワイプ操作が終了したかどうかを判定する。ステップS3の判定結果がYESの場合、処理はステップS4に進む。一方、ステップS3の判定結果がNOである場合、表示制御部43は乗員Hのスワイプ操作が終了するまで待機する。
【0091】
次に、ステップS4において、表示制御部43は、乗員Hの視点Eの位置とスワイプ操作の終了位置C2(第2入力位置の一例、
図7参照)とに基づいて、路面上における光パターンL1の終了位置e2(
図9参照)を特定する。具体的には、表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて、乗員Hの視点Eの位置を特定する。さらに、透明スクリーン421は、乗員Hのスワイプ操作の終了位置C2を示す操作信号を生成した上で、当該操作信号を表示制御部43に送信する。次に、表示制御部43は、視点Eの位置と終了位置C2とに基づいて光パターンL1の終了位置e2を特定する。
【0092】
次に、ステップS5において、表示制御部43は、開始位置e1と終了位置e2とに基づいて光パターンL1を路面上に出射させる。特に、
図9に示すように、表示制御部43は、光パターンL1の一端が開始位置e1に対応すると共に、光パターンL1の他端が終了位置e2に対応するように光パターンL1の出射を制御する。また、
図8に示すように、乗員Hの視界において、タッチ位置C1は光パターンL1の一端に重なると共に、スワイプ操作の終了位置C2は光パターンL1の他端に重なる。
【0093】
表示システム4の第1動作例によれば、HUD表示領域D1に対する乗員Hの入力操作に応じて光パターンの出射が制御される。このように、乗員Hは、直感的な入力操作(例えば、スワイプ操作)によって光パターンの出射を制御することが可能となる。したがって、乗員Hが光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した表示システム4を提供することができる。
【0094】
特に、本動作例では、HUD表示領域D1に対する入力操作に応じて光パターンL1の出射が開始される。より具体的には、乗員Hの視点Eの位置とタッチ位置C1とに基づいて光パターンL1の開始位置e1が特定されると共に、視点Eの位置とスワイプ操作の終了位置C2とに基づいて光パターンL1の終了位置e2が特定される。さらに、開始位置e1と終了位置e2に基づいて光パターンL1が路面上に出射される。このように、乗員Hによる直感的な入力操作によって車両1の外部に存在する歩行者P1等の対象物に向けて光パターンL1を出射することができる。歩行者P1は、路面上に出射された光パターンL1を見ることで、車両1が歩行者P1を認識していることを明確に把握することができるため、安心することができる。このように、光パターンL1によって車両1と歩行者P1等の対象物との間のリッチな視覚的コミュニケーションを実現することが可能となる。
【0095】
尚、本実施形態では、乗員Hのスワイプ操作によって光パターンの出射が制御されているが、乗員Hの入力操作はスワイプ操作に限定されるものではない。例えば、スワイプ操作以外の入力操作(2回のタッチ操作)によって光パターンの出射が制御されてもよい。この場合、1回目のタッチ操作によって光パターンL1の開始位置e1が特定されると共に、2回目のタッチ操作によって光パターンL1の終了位置e2が特定されてもよい。
【0096】
さらに、本実施形態の説明では、光パターンL1は直線状の光パターンであるが、光パターンL1の形状は、直線状に限定されるものではなく、三角形状や矢印形状等の任意の形状であってもよい。また、本実施形態では、視点Eの位置は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて所定の周期で更新されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、視点Eの位置は車両1の起動時に一回だけ決定されてもよい。
【0097】
次に、
図10から
図14を参照することで本実施形態の表示システム4の第2動作例について以下に説明する。
図10は、本実施形態の表示システム4の第2動作例を説明するためのフローチャートである。
図11は、車両1から出射された光パターンL2を示す図である。
図12は、乗員Hの視界において乗員Hの入力操作によって指定された第1指定位置C3と光パターンL2が重なる様子を示す図である。
図13は、HUD表示領域D1に対する乗員Hのスワイプ操作によって光パターンL2の出射位置が変更される様子を示す図である。
図14は、車両1から出射された光パターンL2の出射位置が変更される様子を示す図である。尚、本動作例では、前提条件として、車両1は路面上に光パターンL2を既に出射しているものとする。
【0098】
図10に示すように、ステップS10において、表示制御部43は、HUD表示領域D1に対する乗員Hのタッチ操作が検出されたかどうかを判定する。ステップS10の判定結果がYESの場合、処理はステップS11に進む。一方、ステップS10の判定結果がNOである場合、タッチ操作が検出されるまでステップS10の判定処理が繰り返し実行される。
【0099】
次に、ステップS11において、表示制御部43は、乗員Hの視点Eの位置と乗員Hの手Tのタッチ位置C3(第3入力位置の一例、
図12参照)とに基づいて、乗員Hによって指定された路面上の第1指定位置e3(
図14参照)を特定する。ここで、第1指定位置e3は、視点Eの位置とタッチ位置C3とを通る直線と路面との交点として特定される。
【0100】
次に、ステップS12において、表示制御部43は、路面上の第1指定位置e3が路面上に出射されている光パターンL2と重なるかどうかを判定する。ステップS12の判定結果がYESの場合、処理はステップS13に進む。一方、ステップS12の判定結果がNOである場合、処理は終了する。次に、表示制御部43は、HUD表示領域D1に対する乗員Hのスワイプ操作が終了したかどうかを判定する(ステップS13)。ステップS13の判定結果がYESの場合、処理はステップS14に進む。一方、ステップS13の判定結果がNOである場合、表示制御部43は乗員Hのスワイプ操作が終了するまで待機する。
【0101】
次に、ステップS14において、表示制御部43は、乗員Hの視点Eの位置とスワイプ操作の終了位置C4(第4入力位置の一例、
図13参照)とに基づいて、路面上における第2指定位置e4(
図14参照)を特定する。具体的には、表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて、乗員Hの視点Eの位置を特定する。さらに、透明スクリーン421は、乗員Hのスワイプ操作の終了位置C4を示す操作信号を生成した上で、当該操作信号を表示制御部43に送信する。次に、表示制御部43は、視点Eの位置と終了位置C4とに基づいて第2指定位置e4を特定する。
【0102】
次に、ステップS15において、表示制御部43は、第2指定位置e4に基づいて光パターンL2の出射位置を変更する。この点において、
図14に示すように、表示制御部43は、光パターンL2の所定の位置が第2指定位置e4に重なるように光パターンL2の出射位置を変更する。例えば、第1指定位置e3と重なる光パターンL2の所定の位置が第2指定位置e4に重なるように光パターンL2の出射位置が変更されてもよい。また、
図13に示すように、乗員Hの視界において、スワイプ操作の終了位置C4は光パターンL2の所定の位置と重なる。
【0103】
表示システム4の第2動作例によれば、HUD表示領域D1に対する入力操作に応じて光パターンL2の出射位置が変更される。このように、乗員Hによる直感的な入力操作(例えば、スワイプ操作)によって光パターンL2の出射位置を変更することができる。したがって、乗員Hが光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した表示システム4を提供することができる。
【0104】
特に、本動作例では、第1指定位置e3が光パターンL2の出射位置と重なる場合に、視点Eの位置とスワイプ操作の終了位置C4に基づいて第2指定位置e4が特定された上で、第2指定位置e4に基づいて光パターンL2の出射位置が変更される。このように、乗員Hによる直感的な入力操作によって光パターンL2の出射位置を変更することができる。
【0105】
尚、表示システム4の第1動作例及び第2動作例の説明では、表示制御部43は、タッチパネルによって生成された操作信号に基づいて、乗員Hの入力操作の2つの入力位置(タッチ位置及びスワイプ操作の終了位置)を特定しているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、透明スクリーン421はタッチパネルを有さなくてもよい。この場合、内部カメラ6Bによって乗員Hの入力操作の入力位置が特定されてもよい。具体的には、
図15に示すように、表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて乗員Hの手Tの位置を特定した上で、手Tの位置に基づいて入力操作の入力位置C0を特定してもよい。さらに、表示制御部43は、当該画像データに基づいて、乗員Hの視点Eの位置を特定してもよい。このように、表示制御部43は、視点Eの位置と入力位置C0とに基づいて光パターンの出射位置を制御することができる。ここで、視点Eと入力位置C0とを通る直線と路面との交点が光パターンの出射に関連する位置e0として特定される。また、入力位置C0は、手Tの人差し指の先端の位置に対応してもよい。
【0106】
このように、タッチパネルに対する入力操作ではなく、空間中の手Tの動作によって光パターンの出射位置を制御することが可能となる。特に、ホログラム式のHUDがHUD42として採用される場合に、空間中の手Tの動作によって入力位置が決定されてもよい。したがって、乗員Hが光パターンを手動制御する場合におけるユーザビリティが向上した表示システム4を提供することができる。
【0107】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態(以下、第2実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。また、以降では、第1実施形態において既に説明された構成要素と同一の参照番号を有する構成要素については特に再度説明しない。
【0108】
最初に、
図16を参照して、本実施形態に係る車両システム2Aについて以下に説明する。車両システム2Aは、車両1A(
図18A参照)に搭載されている。
図16は、車両システム2Aのブロック図である。車両1Aは、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0109】
図16に示すように、車両システム2Aは、車両制御部3と、車両用表示システム4A(以下、単に「表示システム4A」という。)と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7とを備える。さらに、車両システム2Aは、HMI8と、GPS9と、無線通信部10と、記憶装置11とを備える。さらに、車両システム2Aは、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0110】
表示システム4Aは、表示制御部40Aと、照明装置41Aと、路面描画装置42Aと、ヘッドアップディスプレイ(HUD)43Aと、を備える。路面描画装置42Aは、第1表示装置の一例である。HUD43Aは、第2表示装置の一例である。
【0111】
照明装置41Aは、車両の外部に向けて光を出射するように構成されている。照明装置41Aは、例えば、車両の前部に設けられるヘッドランプやポジションランプ、車両の後部に設けられるリアコンビネーションランプ、車両の前部または側部に設けられるターンシグナルランプ、歩行者や他車両のドライバーに自車両の状況を知らせる各種ランプなどを備える。
【0112】
路面描画装置42Aは、車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。路面描画装置42Aは、例えば、レーザ光を出射するように構成されたレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光を偏向するように構成された光偏向装置と、レンズ等の光学系部材とを備える。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光偏向装置は、例えば、MEMSミラー、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。路面描画装置42Aは、レーザ光を走査することで光パターンM0,M1(
図19A参照)を路面上に描画するように構成されている。レーザ光源がRGBレーザ光源である場合、路面描画装置42Aは、様々な色の光パターンを路面上に描画することが可能となる。
【0113】
路面描画装置42Aは、路面上に光パターンを描画することが可能である限りにおいて、路面描画装置42Aの数、配置場所及び形状は特に限定されるものではない。例えば、路面描画装置42Aの数が1つである場合、車体ルーフ上の前側または後側における左右方向の真ん中に配置されてもよい。また、路面描画装置42Aの数が2つである場合、左側ヘッドランプ(図示せず)および右側ヘッドランプ(図示せず)またはそれらの近傍、あるいは、左側リアコンビネーションランプ(図示せず)及び右側リアコンビネーションランプ(図示せず)内またはそれらの近傍にそれぞれ1つの路面描画装置42Aが搭載されてもよい。また、路面描画装置42Aの数が4つである場合、左側ヘッドランプ(図示せず)、右側ヘッドランプ(図示せず)、左側リアコンビネーションランプ(図示せず)及び右側リアコンビネーションランプ(図示せず)内またはそれらの近傍にそれぞれ1つの路面描画装置42Aが搭載されてもよい。
【0114】
また、路面描画装置42Aの描画方式は、DLP方式又はLCOS方式であってもよい。この場合、光源としてレーザの代わりにLEDが使用される。
【0115】
HUD43Aは、車両の車内の所定箇所に設置されている。例えば、
図18Bに示すように、HUD43Aは、車両のダッシュボード上に設置されている。尚、HUD43Aの設置個所については特に限定されない。HUD43Aは、車両と乗員との間の視覚的インターフェースとして機能する。特に、HUD43Aは、車両の走行に関連した車両走行情報を車両の乗員に向けて表示するように構成されている。車両走行情報は、車両1Aの運転に係る情報(例えば、自動運転に関連する情報等)や歩行者情報等を含む。例えば、HUD43Aは、車両と他車両との間の車車間通信及び/又は車両とインフラ設備(信号機等)との間の路車間通信によって得られた情報を表示するように構成されている。この点において、HUD43Aは、他車両及び/又はインフラ設備から送信されたメッセージを表示するように構成されている。車両の乗員は、HUD43Aによって表示されたメッセージを見ることで、他車両の意図等を把握することができる。また、例えば、HUD43Aは、センサ5及び/又はカメラ6から得られた情報を表示するように構成されている。車両の乗員は、HUD43Aによって表示されたメッセージを見ることで、車両の走行状態及び/又は歩行者情報等を把握することができる。
【0116】
HUD43Aによって表示された情報は、車両の前方の現実空間に重畳されるように車両の乗員に視覚的に提示される。このように、HUD43Aは、ARディスプレイとして機能する。
【0117】
HUD43Aは、画像生成ユニットと、画像生成ユニットにより生成された画像が表示される透明スクリーンとを備える。HUD43Aの描画方式がレーザプロジェクタ方式である場合、画像生成ユニットは、例えば、レーザ光を出射するように構成されたレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光を偏向するように構成された光偏向装置と、レンズ等の光学系部材とを備える。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光偏向装置は、例えば、MEMSミラーである。尚、HUD43Aの描画方式は、DLP方式又はLCOS方式であってもよい。この場合、光源としてレーザの代わりにLEDが使用される。
【0118】
また、HUD43Aは、透明スクリーンを備えなくてもよい。この場合、画像生成ユニットにより生成された画像は、車両のフロントガラス上に表示されてもよい。
【0119】
HMI8は、路面描画装置42A及び/又はHUD43Aの異常を知らせる異常スイッチ等をさらに含む。
【0120】
表示制御部40Aは、照明装置41Aの駆動を制御するように構成されている。例えば、表示制御部40Aは、車両に関連する情報又は車両の周辺環境に関連する情報に基づいて、所定の光を出射するように照明装置41Aを制御する。また、表示制御部40Aは、路面描画装置42A及びHUD43Aの駆動を制御するように構成されている。例えば、表示制御部40Aは、車両に関連する情報又は車両の周辺環境に関連する情報に基づいて、対象物(歩行者、他車両、等)又は乗員に向けて所定の光パターンが提示されるように路面描画装置42Aを制御する。また、表示制御部40Aは、車両に関連する情報又は車両の周辺環境に関連する情報に基づいて、乗員に向けて所定のメッセージが提示されるようにHUD43Aを制御する。
【0121】
また、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aに異常があると判断された場合、光パターンに対応する情報を表示するようにHUD43Aを制御する。例えば、光パターンを出射している路面描画装置42Aに異常があると判断された場合、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aにより出射されている光パターンに対応する情報を表示するようにHUD43Aを制御する。また、光パターンを出射する前に路面描画装置42Aに異常があると判断された場合、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aにより出射予定の光パターンに対応する情報を表示するようにHUD43Aを制御する。また、光パターンが複数ある場合、表示制御部40Aは、複数の光パターンにそれぞれ対応する情報を表示するようにHUD43Aを制御してもよい。また、表示制御部40Aは、複数の光パターンのうち一部の光パターンに対応する情報を表示するようHUD43Aを制御してもよい。一部の光パターンは、例えば、車両の乗員向け光パターン(例えば、ナビゲーション用光パターン)、路面描画装置42AおよびHUD43Aの両方で表示されている共通の情報がある場合には共通の情報以外の情報、等である。また、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aの異常情報を表示するようにHUD43Aを制御してもよい。
【0122】
また、表示制御部40Aは、HUD43Aに異常があると判断された場合、車両走行情報に対応する光パターンを表示するように路面描画装置42Aを制御する。例えば、車両走行情報を表示しているHUD43Aに異常があると判断された場合、表示制御部40Aは、HUD43Aに表示されている車両走行情報に対応する光パターンを出射するように路面描画装置42Aを制御する。また、車両走行情報を表示する前にHUD43Aに異常があると判断された場合、表示制御部40Aは、HUD43Aに表示予定の車両走行情報に対応する光パターンを出射するように路面描画装置42Aを制御する。また、車両走行情報が複数ある場合、表示制御部40Aは、複数の車両走行情報の少なくとも1つの車両走行情報に対応する光パターンを出射するように路面描画装置42Aを制御してもよい。例えば、複数の車両走行情報のうち、光パターンから読み取ることが容易な図形の情報や簡単な文字の情報からなる車両走行情報に対応する光パターンを出射するように路面描画装置42Aを制御する。また、各車両走行情報は、図形の情報、文字の情報、または、それらを組み合わせた情報からなる。例えば、車両走行情報の中に光パターンから読み取ることが難しい情報(例えば、文字情報)が含まれる場合、表示制御部40Aは、車両走行情報を修正(削除、又は、光パターンから読み取ることが容易な情報(例えば、図形情報)に変換)し、修正した車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させてもよい。
【0123】
表示制御部40Aは、電子制御ユニット(ECU)により構成されており、図示しない電源に電気的に接続されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成されるアナログ処理回路とを含む。アナログ処理回路は、照明装置41Aのランプの駆動を制御するように構成されたランプ駆動回路(例えば、LEDドライバ等)を備える。また、アナログ処理回路は、路面描画装置42Aのレーザ光源の駆動を制御するように構成された第1レーザ光源制御回路と、路面描画装置42Aの光偏向装置の駆動を制御するように構成された第1光偏向装置制御回路とを含む。また、アナログ処理回路は、HUD43Aのレーザ光源の駆動を制御するように構成された第2レーザ光源制御回路と、HUD43Aの光偏向装置の駆動を制御するように構成された第2光偏向装置制御回路とを含む。プロセッサは、例えば、CPU、MPU、GPU及び/又はTPUである。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0124】
例えば、表示制御部40Aのコンピュータシステムは、車両制御部3から送信された指示信号に基づいて、車両の外部に照射される光パターンを特定した上で、当該特定された光パターンを示す信号を第1レーザ光源制御回路及び第1光偏向装置制御回路に送信する。第1レーザ光源制御回路は、光パターンを示す信号に基づいて、レーザ光源の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を路面描画装置42Aのレーザ光源に送信する。一方、第1光偏向装置制御回路は、光パターンを示す信号に基づいて、光偏向装置の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を路面描画装置42Aの光偏向装置に送信する。このようにして、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aの駆動を制御することができる。
【0125】
また、表示制御部40Aのコンピュータシステムは、車両制御部3から送信された指示信号に基づいて、HUD43Aに表示される画像情報(例えば、文字や図形の情報)を特定した上で、当該特定された画像情報を示す信号を第2レーザ光源制御回路及び第2光偏向装置制御回路に送信する。第2レーザ光源制御回路は、画像情報を示す信号に基づいて、レーザ光源の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号をHUD43Aのレーザ光源に送信する。一方、第2光偏向装置制御回路は、画像情報を示す信号に基づいて、光偏向装置の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号をHUD43Aの光偏向装置に送信する。このようにして、表示制御部40Aは、HUD43Aの駆動を制御することができる。
【0126】
また、表示制御部40Aのコンピュータシステムは、路面描画装置42Aが異常であると判断された場合、上記特定された光パターンに基づいて、HUD43Aに表示される画像情報(例えば、文字や図形の情報)を特定する。そして、表示制御部40Aのコンピュータシステムは、特定された画像情報を示す信号を第2レーザ光源制御回路及び第2光偏向装置制御回路に送信する。
【0127】
また、表示制御部40Aのコンピュータシステムは、HUD43Aが異常であると判断された場合、上記特定されたHUD43Aに表示される画像情報に基づいて、路面描画装置42Aにより車両の外部に照射される光パターンを特定する。そして、表示制御部40Aのコンピュータシステムは、特定された光パターンを示す信号を第1レーザ光源制御回路及び第1光偏向装置制御回路に送信する。
【0128】
尚、本実施形態では、照明装置41A、路面描画装置42A及びHUD43Aに対して共通の表示制御部40Aが設けられているが、それぞれに対して別個の表示制御部が設けられてもよい。また、本実施形態では、車両制御部3と表示制御部40Aは、別個の構成として設けられているが、車両制御部3と表示制御部40Aは一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部40Aと車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。この場合、車両用表示システム4Aは、車両制御部3も含んだ構成となる。
【0129】
路面描画装置42AおよびHUD43Aの異常の判断は、例えば、表示制御部40Aにて行われる。表示制御部40Aは、例えば、路面上に描画されている光パターンの撮像画像に基づいて路面描画装置42Aの異常の判断を行う。表示制御部40Aは、カメラ6により撮像された光パターンの撮像画像を車両制御部3から取得し、当該撮像画像の光パターンが、路面描画装置42Aにより出射された光パターンと一致するか判断する。例えば、撮像画像に光パターンが含まれていない場合、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aのレーザ光源又はレーザ光源への信号経路に異常が発生していると判断する。また、撮像画像に含まれる光パターンの形状が、参照用光パターンの形状と一致しない場合、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aの光偏向装置に異常が発生していると判断する。参照用光パターンは、表示制御部40Aのメモリまたは記憶装置11に予め記憶されており、例えば、各光パターンを路面上に描画して撮像し、該撮像画像から抽出した光パターンである。
【0130】
また、表示制御部40Aは、例えば、路面描画装置42Aからの信号に基づいて路面描画装置42Aの異常の判断を行う。路面描画装置42Aは、自己診断機能を有しており、異常が発生した場合、表示制御部40Aへ異常信号を送信してもよい。また、路面描画装置42Aは、表示制御部40Aから信号(例えば、光パターンを示す信号)を受信すると表示制御部40Aへ受信確認信号を送信する構成を有する場合、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aから受信確認信号を受信しない場合、路面描画装置42Aに異常が発生していると判断してもよい。
【0131】
また、表示制御部40Aは、例えば、車両の乗員からの異常信号に基づいて路面描画装置42Aの異常の判断を行う。車両の乗員は、路面上に描画されている光パターンを確認し、光パターンが異常であると判断した場合、HMI8の異常スイッチ等を操作する。表示制御部40Aは、車両制御部3から、異常スイッチの操作に基づく異常信号を受信した場合に、路面描画装置42Aに異常が発生していると判断してもよい。
【0132】
表示制御部40Aは、同様に、例えば、HUD43Aからの信号(例えば、異常信号や受信確認信号)に基づいて、車両の乗員からの異常信号に基づいて、または、車両の車内に設置されたカメラ6により撮像されたHUD43Aの表示画面の撮像画像に基づいて、HUD43Aの異常の判断を行う。
【0133】
尚、路面描画装置42AおよびHUD43Aの異常の判断は、表示制御部40Aの代わりに車両制御部3が行ってもよい。車両制御部3は、路面描画装置42A又はHUD43Aに異常が発生したと判断した場合、異常信号を表示制御部40Aへ送信する。
【0134】
次に、第2実施形態に係る表示制御部40Aの表示制御の一例について
図17から
図21を主に参照して説明する。
図17は、第2実施形態に係る表示制御部による表示制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図18Aは、第2実施形態に係る路面描画表示の一例を説明するための図である。
図18Bは、第2実施形態に係るHUD表示の一例を説明するための図である。
図19は、第2実施形態に係る路面描画表示異常時のHUD表示の一例を説明するための図である。
図20Aは、第2実施形態に係るHUD表示の一例を説明するための図である。
図20Bは、第2実施形態に係る路面描画表示の一例を説明するための図である。
図21は、第2実施形態に係るHUD表示異常時の路面描画表示の一例を説明するための図である。
【0135】
第2実施形態に係る表示制御部40Aは、所定の光パターンを出射している路面描画装置42Aまたは所定の車両走行情報を表示しているHUD43Aに異常があると判断した場合、異常と判断した装置により表示すべき情報を、正常である装置に表示させる。
【0136】
図17に示すように、ステップS21において、表示制御部40Aは、車両制御部3から取得した周辺環境情報等に基づいて、路面に向けて所定の光パターンを出射するよう路面描画装置42Aを制御する。ステップS22において、表示制御部40Aは、車両制御部3から取得した走行状態情報等に基づいて、車両走行情報を表示するようHUD43Aを制御する。
図18Aは、路面描画装置42Aにより路面上に描画された光パターンM0、
図18Bは、HUD43Aに表示された車両走行情報M1を示す。光パターンM0は、20mの文字情報および左折を示す矢印の図形情報からなり、車両1Aの乗員に20m先を左折することを促すナビゲーション用光パターンである。車両走行情報M1は、現在時速50キロで走行していることを示す車両の速度情報である。
【0137】
次に、ステップS23において、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aに異常が発生しているか否かを判断する。路面描画装置42Aが異常である場合には(ステップS23のYES)、表示制御部40Aは、ステップS24において、HUD43Aに異常が発生しているか否かを判断する。表示制御部40Aは、例えば、光パターンの撮像画像に基づいて、路面描画装置42Aからの信号(例えば、異常信号)に基づいて、または、車両の乗員からの異常信号に基づいて、路面描画装置42Aの異常の判断を行う。また、表示制御部40Aは、例えば、HUD43Aの表示画面の撮像画像に基づいて、HUD43Aからの信号(例えば、異常信号)に基づいて、または、車両の乗員からの異常信号に基づいて、HUD43Aの異常の判断を行う。
【0138】
HUD43Aが正常である場合には(ステップS24のNO)、表示制御部40Aは、ステップS25において、路面描画装置42Aにより出射している光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させる。また、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aによる光パターンの表示を中止してもよい。例えば、路面描画装置42AおよびHUD43Aが
図18A及び
図18Bの表示を行っている場合、表示制御部40Aは、
図19に示すように、路面上に描画された光パターンM0に対応する情報M2をHUD43Aに表示させる。また、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aによる光パターンM0の表示を中止する。また、表示制御部40Aは、光パターンM0に対応する情報M2の他に、路面描画装置42Aに異常が発生している旨のメッセージM3をHUD43Aに表示してもよい。一方、ステップS24において、HUD43Aが異常である場合には、表示制御部40Aは、ステップS26において、路面描画装置42AおよびHUD43Aによる表示を中止する。尚、
図19において、情報M2は、光パターンM0と同じ文字情報および図形情報を使用しているが、これに限定されない。
【0139】
ステップS23において、路面描画装置42Aが正常である場合には(ステップS23のNO)、表示制御部40Aは、ステップS27において、路面描画装置42Aの表示を継続する。次に、ステップS28において、表示制御部40Aは、HUD43Aに異常が発生しているか否かを判断する。HUD43Aが異常である場合には(ステップS28のYES)、表示制御部40Aは、ステップS29において、HUD43Aに表示している車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させる。
【0140】
例えば、
図20Aは、HUD43Aに表示された車両走行情報M1および車両走行情報(歩行者情報)M4、
図20Bは、路面描画装置42Aにより路面上に描画された光パターンM5を示す。車両走行情報M4は、20m先の左側から歩行者101が進入することを示す歩行者情報である。光パターンM5は、矢印の図形により車両1Aの乗員に直進を促すナビゲーション用光パターンである。ステップS21およびステップS22において、HUD43Aおよび路面描画装置42Aが
図20A及び
図20Bの表示を行っている場合、表示制御部40Aは、HUD43Aに異常が発生していると判断すると、
図21に示すように、HUD43Aに表示されている車両走行情報M4に対応する光パターンM6を出射するよう路面描画装置42Aを制御する。光パターンM6は、車両走行情報M4の文字情報(「左側から進入」)を一部含まず、また、車両走行情報M4とは異なる図形情報を用いている。一方、ステップS28において、HUD43Aが正常である場合には(ステップS28のNO)、表示制御部40Aは、ステップS30において、HUD43Aの表示を継続する。尚、
図21において、光パターンM6は、車両走行情報M4とは異なる文字情報および図形情報を使用しているが、これに限定されない。
【0141】
このように、本実施形態では、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aに異常があると判断された場合、路面描画装置42Aにより出射されている光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させる。また、表示制御部40Aは、HUD43Aに異常があると判断された場合、HUD43Aに表示している車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させる。このように、路面描画装置42Aおよび/またはHUD43Aに異常があると判断された場合でも、車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを継続することができる。
【0142】
また、HUD43Aに異常があると判断された場合、表示制御部40Aは、HUD43Aに表示されている複数の車両走行情報M1,M4のうち、光パターンから読み取ることが容易な車両走行情報M4に対応する光パターンM6を路面描画装置42Aに出射させる。また、表示制御部40Aは、車両走行情報M4の中で、光パターンから読み取ることが容易な情報(例えば、図形情報や簡単な文字情報)のみを含む光パターンM6を路面描画装置42Aに出射させる。これにより、車両の乗員は、異常前とほぼ同じ情報を正確に把握することができる。また、表示制御部40Aは、車両走行情報M4の中の一部の情報(例えば、図形情報)を光パターンから読み取ることが容易な情報に変換(例えば、異なる図形情報に変換)し、変換した情報を含む光パターンM6を路面描画装置42Aに出射させる。これにより、車両の乗員は、車両走行情報とほぼ同じ情報をより正確に把握することができる。
【0143】
尚、本実施形態では、
図18A及び
図19において、路面描画装置42Aが一つの光パターンM0を出射し、HUD43Aがこの光パターンM0に対応する情報M2を表示しているが、これに限定されない。路面描画装置42Aが複数の光パターンを出射している場合、表示制御部40Aは、すべて又は一部の光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させてもよい。
【0144】
また、
図20A及び
図21では、HUD43Aが表示している車両走行情報M1および車両走行情報M4のうち、車両走行情報M4に対応する光パターンM6を路面描画装置42Aにより出射しているが、これに限定されない。表示制御部40Aは、すべての車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させてもよい。
【0145】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態(以下、第3実施形態という。)に係る表示制御部40Aの表示制御の一例について
図22を主に参照して説明する。
図22は、第3実施形態に係る表示制御部による表示制御の一例を説明するためのフローチャートである。尚、第3実施形態の説明では、第2実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0146】
第3実施形態に係る表示制御部40Aは、車両制御部3から送信された指示信号に基づいて路面描画装置42AおよびHUD43Aに所定の光パターンおよび所定の車両走行情報を表示させる前に路面描画装置42AまたはHUD43Aに異常があると判断した場合、異常と判断された装置により表示すべき情報を、正常な装置に表示させる。
【0147】
図22に示すように、表示制御部40Aは、車両制御部3から路面描画表示及びHUD表示の指示信号を受信すると、ステップS31において、路面描画装置に異常が発生しているか否かを判断する。路面描画装置42Aが異常である場合には(ステップS31のYES)、表示制御部40Aは、ステップS32において、HUD43Aに異常が発生しているか否かを判断する。表示制御部40Aは、例えば、路面描画装置42AおよびHUD43Aへ光パターンまたは画像情報を示す信号を送信し、路面描画装置42AまたはHUD43Aから受信確認信号を所定期間内に受信しない場合には、路面描画装置42AまたはHUD43Aに異常が発生していると判断する。また、表示制御部40Aは、メモリまたは記憶装置11に路面描画装置42AおよびHUD43Aの異常情報を記憶しておき、この異常情報に基づき、路面描画装置42AまたはHUD43Aの異常判断を行ってもよい。異常情報は、例えば、路面描画装置42A、HUD43A又は車両の乗員から異常信号を受信したタイミングや、過去の路面描画表示又はHUD表示において異常を判断したタイミングで、表示制御部40Aによりメモリまたは記憶装置11に記憶される。
【0148】
HUD43Aが正常である場合には(ステップS32のNO)、表示制御部40Aは、ステップS33において、車両制御部3から取得した周辺環境情報等に基づいて特定した光パターンを路面描画装置42Aから出射させずに、該光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させる。例えば、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aが異常であると判断した場合には、路面描画装置42Aによる
図18Aの光パターンM0の路面描画は行わず、
図19に示すように光パターンM0に対応する情報M2をHUD43Aに表示させる。また、表示制御部40Aは、光パターンM0に対応する情報M2の他に、路面描画装置42Aに異常が発生している旨のメッセージM3をHUD43Aに表示してもよい。一方、ステップS32において、HUD43Aが異常である場合には(ステップS32のYES)、表示制御部40Aは、ステップS34において、路面描画装置42AおよびHUD43Aによる表示を行わない。
【0149】
ステップS31において、路面描画装置42Aが正常である場合には(ステップS31のNO)、表示制御部40Aは、ステップS35において、車両制御部3から取得した周辺環境情報等に基づいて、路面に向けて所定の光パターンを出射するよう路面描画装置42Aを制御する。例えば、表示制御部40Aは、
図18Aに示すように、路面描画装置42Aから光パターンM0を出射させる。次に、ステップS36において、表示制御部40Aは、HUD43Aに異常が発生しているか否かを判断する。HUD43Aが異常である場合には(ステップS36のYES)、表示制御部40Aは、ステップS37において、車両制御部3から取得した走行状態情報等に基づいて特定した車両走行情報をHUD43Aには表示させずに、該車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させる。例えば、表示制御部40Aは、HUD43Aが異常であると判断した場合には、HUD43Aによる
図20Aの車両走行情報M1および車両走行情報M4の表示は行わず、車両走行情報M4に対応する光パターンM6を路面描画装置42Aにより出射させる。一方、ステップS36において、HUD43Aが正常である場合には(ステップS36のNO)、表示制御部40Aは、ステップS38において、所定の車両走行情報を表示するようにHUD43Aを制御する。例えば、表示制御部40Aは、
図20Aに示すように、HUD43Aに車両走行情報M1および車両走行情報M4を表示させる。
【0150】
このように、本実施形態では、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aに異常があると判断された場合、路面描画装置42Aにより出射予定の光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させる。また、表示制御部40Aは、HUD43Aに異常があると判断された場合、HUD43Aに表示予定の車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させる。このように、路面描画装置42Aおよび/またはHUD43Aに異常があると判断された場合でも、車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを行うことができる。
【0151】
また、HUD43Aに異常があると判断された場合、表示制御部40Aは、HUD43Aに表示予定の複数の車両走行情報M1,M4のうち、光パターンから読み取ることが容易な車両走行情報M4に対応する光パターンM6を路面描画装置42Aに出射させる。また、表示制御部40Aは、車両走行情報M4の中で、光パターンから読み取ることが容易な情報(例えば、図形情報や簡単な文字情報)のみを含む光パターンM6を路面描画装置42Aに出射させる。また、表示制御部40Aは、車両走行情報M4の中の一部の情報(例えば、図形情報)を光パターンから読み取ることが容易な情報に変換(例えば、異なる図形情報に変換)し、変換した情報を含む光パターンM6を路面描画装置42Aに出射させる。これにより、車両の乗員へ所定の情報を正確に伝えることができる。
【0152】
尚、本実施形態では、ステップ33において、表示制御部40Aは複数の光パターンを特定した場合、すべて又は一部の光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させてもよい。
【0153】
また、ステップS37において、表示制御部40Aは複数の車両走行情報を特定した場合、すべての車両走行情報に対応する光パターンを路面描画装置42Aに出射させてもよい。
【0154】
上記実施形態では、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aの異常を判断した後に、HUD43Aの異常を判断しているが、これに限定されない。表示制御部40Aは、HUD43Aの異常を判断した後に、路面描画装置42Aの異常を判断してもよい。
【0155】
また、上記実施形態では、表示制御部40Aは、路面描画装置42A及びHUD43Aの両方の異常を判断しているが、これに限定されない。表示制御部40Aは、路面描画装置42A及びHUD43Aの何れか一方の異常を判断し、路面描画装置42A及びHUD43Aの一方が異常と判断した場合には、異常と判断された路面描画装置42A及びHUD43Aの一方に表示すべき情報を、路面描画装置42A及びHUD43Aの他方に、表示させてもよい。例えば、
図23または
図24に示すように、表示制御部40Aは、路面描画装置42Aの異常を判断し、路面描画装置42Aを異常と判断した場合、光パターンに対応する情報をHUD43Aに表示させてもよい。
図23のステップS41~44は、
図17のステップS21、S23、S25、S27に対応し、
図24のステップS51~S53は、
図22のステップS31、S33、S35に対応するため、その詳細な説明は省略する。尚、
図23および
図24は路面描画装置の異常を判断する例を示しているが、同様にHUD43Aのみの異常を判断してもよい。
【0156】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0157】
最初に、
図25及び
図26を参照して、本実施形態に係る車両システム2Bについて以下に説明する。
図25は、車両システム2Bが搭載された車両1Bの正面図である。
図26は、車両システム2Bのブロック図である。車両1Bは、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0158】
図26に示すように、車両システム2Bは、車両制御部3と、車両用表示システム4B(以下、単に「表示システム4B」という。)と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7とを備える。さらに、車両システム2Bは、HMI8と、GPS9と、無線通信部10と、記憶装置11と、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0159】
表示システム4Bは、左側ヘッドランプ20Lと、右側ヘッドランプ20Rと、左側路面描画装置45Lと、右側路面描画装置45Rとを備える。さらに、表示システム4Bは、HUD42Bと、表示制御部43BBとを備える。
【0160】
HUD42Bは、車両1Bの内部に位置する。具体的には、HUD42Bは、車両1Bの室内の所定箇所に設置されている。例えば、
図27に示すように、HUD42Bは、車両1Bのダッシュボード内に配置されてもよい。HUD42Bは、車両1Bと乗員Hとの間の視覚的インターフェースとして機能する。HUD42Bは、所定の情報(以下、HUD情報という。)が車両1Bの外部の現実空間(特に、車両1Bの前方の周辺環境)と重畳されるように当該HUD情報を乗員Hに向けて表示するように構成されている。このように、HUD42Bは、ARディスプレイとして機能する。HUD42Bによって表示されるHUD情報は、例えば、車両1Bの走行に関連した車両走行情報及び/又は車両1Bの周辺環境に関連した周辺環境情報(特に、車両1Bの外部に存在する対象物に関連した情報)である。
【0161】
図27に示すように、HUD42Bは、HUD本体部420Bと、透明スクリーン421Bとを有する。HUD本体部420Bは、光源部と、駆動ミラーと、光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、例えば、レーザ光源又はLED光源である。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑光レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMSミラー、DMD、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光学系は、プリズム、レンズ、拡散板、拡大鏡のうち少なくとも一つを含む。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43Bから送信された画像データに基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43Bから送信された画像データに基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。
【0162】
透明スクリーン421Bは、フロントウィンドウ60の一部によって構成されている。透明スクリーン421Bは、HUD情報が表示可能なHUD表示領域D10を有する(
図30参照)。HUD本体部420Bから出射された光(画像)は、透明スクリーン421BのHUD表示領域D10に照射される。次に、HUD表示領域D10は、HUD本体部420Bから出射された光を乗員Hの視点Eに向けて反射する。この結果、乗員Hは、HUD本体部420Bから出射された光(画像)を透明スクリーン421Bの前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。このように、HUD42Bによって表示されるHUD情報(画像)が車両1Bの前方の現実空間に重畳される結果、乗員Hは、当該HUD情報が道路上に浮いているように感じることができる。
【0163】
尚、透明スクリーン421Bは、フロントウィンドウ60から分離した透明なコンバイナーとして構成されてもよい。この場合でも、コンバイナーはHUD表示領域を有する。さらに、乗員Hは、HUD本体部420Bから出射された光(画像)をコンバイナーの前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。また、虚像が形成される位置(虚像形成位置)は、HUD42Bの光学系の位置(特に、投影光学系の焦点距離)を調整することで可変されてもよい。この点において、表示制御部43B(特に、第1電子制御ユニット47B)は、車両1Bの前方に存在する対象物の位置情報に基づいて、対象物の位置と虚像形成位置が略一致するように、HUD42Bを制御することができる。また、HUD42Bの描画方式は、ラスタースキャン方向、DLP方式又はLCOS方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、HUD42Bの光源部はLED光源であってもよい。
【0164】
表示制御部43Bは、路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)、ヘッドランプ20(具体的には、左側ヘッドランプ20Lと右側ヘッドランプ20R)及びHUD42Bの動作を制御するように構成されている。この点において、表示制御部43Bは、路面上の所定の位置に光パターンが照射されるように路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)の動作を制御するように構成されている。さらに、表示制御部43Bは、HUD情報がHUD表示領域D10に表示されるようにHUD42Bの動作を制御するように構成されている。また、表示制御部43Bは、路面描画装置45及びHUD42Bを動作させるべきかどうかを決定するように構成されている。つまり、本実施形態では、表示制御部43Bは、車両制御部3からの指示信号に応じて路面描画装置45及びHUD42Bの駆動を制御するようには構成されていない。寧ろ、表示制御部43Bは、車両制御部3から送信された車載センサの検出データ(例えば、画像データ等)に基づいて、車両1Bの周辺の対象物を特定した上で、路面描画装置45及びHUD42Bを動作させるべきかどうかを決定するように構成されている。
【0165】
表示制御部43Bは、第1電子制御ユニット47Bと、第2電子制御ユニット48Bとを備える。第1電子制御ユニット47Bは、HUD42Bの動作を制御するように構成されている。さらに、HUD42B及び路面描画装置45の両方が動作する場合では、第1電子制御ユニット47Bは、HUD42B及び路面描画装置45の両方の動作を制御する。第1電子制御ユニット47Bは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPU及びTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0166】
第2電子制御ユニット48Bは、ヘッドランプ20と路面描画装置45の動作を制御するように構成されている。特に、HUD42Bが動作しない一方で、ヘッドランプ20と路面描画装置45が動作する場合では、第2電子制御ユニット48Bは、ヘッドランプ20と路面描画装置45の動作を制御するように構成されている。一方、HUD42Bと、ヘッドランプ20と、路面描画装置45が動作する場合では、第1電子制御ユニット47BがHUD42B及び路面描画装置45の両方の動作を制御する一方で、第2電子制御ユニット48Bがヘッドランプ20の動作を制御する。第2電子制御ユニット48Bは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPU及びTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0167】
本実施形態では、表示制御部43Bを構成する第1電子制御ユニット47B及び第2電子制御ユニット48Bの一方または両方が、HUD42B、路面描画装置45及びヘッドランプ20のうちの少なくとも一つを動作させるべきかどうかを決定してもよい。例えば、第1電子制御ユニット47BがHUD42Bを動作させるべきかどうかを決定する一方で、第2電子制御ユニット48Bが路面描画装置45及びヘッドランプ20のそれぞれを動作させるべきかどうかを決定してもよい。また、第1電子制御ユニット47B(又は第2電子制御ユニット48B)がHUD42B、路面描画装置45及びヘッドランプ20のそれぞれを動作させるべきかどうかを決定してもよい。
【0168】
本実施形態では、第1電子制御ユニット47Bと第2電子制御ユニット48Bは、別個の構成として設けられているが、第1電子制御ユニット47Bと第2電子制御ユニット48Bは一体的に構成されてもよい。この点において、第1電子制御ユニット47Bと第2電子制御ユニット48Bは、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。一方、本実施形態では、車両制御部3と表示制御部43Bは、別個の構成として設けられている。
【0169】
次に、
図28から
図30を主に参照することで本実施形態の表示システム4Bの動作例について以下に説明する。
図28は、表示システム4Bの動作例を説明するためのフローチャートである。
図29は、車両1Bが車両1Bの周辺に存在する歩行者P1(対象物の一例)に向けて光パターンL10を出射する様子を示す図である。
図30は、HUD表示領域D10に表示されるHUD情報の一例を示す図である。特に、
図30では、乗員Hの視界におけるHUD情報M11~M14と路面上に出射された光パターンL10が示される。
【0170】
尚、以降の説明では、第1電子制御ユニット47BがHUD42B、路面描画装置45及びヘッドランプ20のそれぞれを動作させるべきかどうかを決定するものとする。
【0171】
図28に示すように、ステップS61において、第1電子制御ユニット47Bは、車両制御部3から外部カメラ6A及び/又はレーダ7によって取得された検出データ(例えば、画像データや3Dマッピングデータ等)を受信する。その後、第1電子制御ユニット47Bは、検出データに基づいて、歩行者P1の存在を特定した場合に(ステップS61でYES)、歩行者P1は車両1Bから所定の距離以内に存在するかどうかを判定する(ステップS62)。一方、ステップS61の判定結果がNOの場合、本処理が終了する。
【0172】
次に、第1電子制御ユニット47Bは、歩行者P1が車両1Bから所定の距離以内に存在すると判定した場合に(ステップS62でYES)、HUD情報をHUD42Bに表示することを決定すると共に、歩行者P1に向けて光パターンL10を出射することを決定する(ステップS63)。さらに、ステップS63において、第1電子制御ユニット47Bは、画像データや3Dマッピングデータ等の検出データに基づいて、対象物(本例では、歩行者P1)に関連した情報(例えば、対象物の属性情報、車両1Bに対する対象物の位置情報、及び対象物の将来行動に関連する情報)を生成する。
【0173】
次に、第1電子制御ユニット47Bは、対象物に関連した情報に基づいて、HUD情報M11~M14がHUD42B(特に、HUD表示領域D10)に表示されるようにHUD42Bの動作を制御する。特に、第1電子制御ユニット47Bは、HUD42Bの動作を制御するための制御信号をHUD42Bに送信する。当該制御信号に基づいて、HUD表示領域D10上にHUD情報M11~M14が表示される。ここで、HUD情報M11は、対象物の属性情報と車両1Bに対する対象物の位置情報を含む。
図30に示すように、HUD情報M11は、対象物の属性情報として歩行者を示すと共に、対象物の位置情報として26mを示す。また、HUD情報M12は、対象物の行動予測に関連する情報を含む。
図30に示すように、HUD情報M12は、歩行者P1の行動予測情報として歩行者P1が横断歩道Cを渡る予定であることを示す。
【0174】
また、HUD情報M13は、対象物の存在を示す情報を含む。
図30に示すように、HUD情報M13は、歩行者P1の存在を示す情報として歩行者マークを示す。尚、HUD情報M13は、対象物の存在を示す情報として、「歩行者がいます」等のテキスト情報やエクスクラメーションマーク等の図形情報を含んでもよい。HUD情報M14は、歩行者P1を囲む枠パターンである。
【0175】
一方、ステップS63において、第1電子制御ユニット47Bは、対象物に関連した情報に基づいて、路面描画装置45が歩行者P1に向けて路面上に光パターンL10を出射するように路面描画装置45の動作を制御する。特に、第1電子制御ユニット47Bは、第2電子制御ユニット48Bを介して路面描画装置45の動作を制御するための制御信号を路面描画装置45に送信する。当該制御信号に基づいて、路面描画装置45は、路面上に光パターンL10を出射する。
図29に示すように、光パターンL10は、車両1Bから歩行者P1に向かって延びる直線状の光パターンである。このように、光パターンL10は、車両1Bと歩行者P1を視覚的に関連付けることができる。さらに、車両1Bの乗員Hは、光パターンL10を視認することで歩行者P1の存在を明確に把握することができる。光パターンL10の形状は、直線状に限定されるものではなく、三角形状や矢印形状等の任意の形状であってもよい。
【0176】
尚、本実施形態では、乗員Hが車両1Bに存在することを前提としている。このため、車両1Bと乗員Hとの間の視覚コミュニケーションを実現するためにHUD42Bが動作しているが、乗員Hが車両1Bに存在しない場合にはHUD42Bは動作しなくてもよい。換言すれば、車両1Bが乗員Hなしに完全自動運転モードで走行中の場合には、歩行者P1に向けて光パターンL10が出射される一方で、HUD42Bには歩行者P1に関連するHUD情報は表示されない。かかる場合では、第2電子制御ユニット48BがステップS61~S63の処理を実行してもよい。特に、ステップS63において、第2電子制御ユニット48Bが歩行者P1に向けて光パターンL10を出射することを決定した上で、歩行者P1に向けて路面上に光パターンL10が出射されるように路面描画装置45の動作を制御する。このように、HUD42Bが動作する場合には、第1電子制御ユニット47BがHUD42Bと路面描画装置45の動作を制御する。一方で、HUD42Bが動作しない場合には、第2電子制御ユニット48Bが路面描画装置45の動作を制御する。
【0177】
また、ヘッドランプ20の動作制御について言及すると、ヘッドランプ20の動作は第2電子制御ユニット48Bによって常に制御されてもよい。つまり、HUD42Bが動作しない場合では、第2電子制御ユニット48Bが路面描画装置45及びヘッドランプ20の動作を制御してもよい。一方、HUD42Bが動作する場合では、第1電子制御ユニット47BがHUD42B及び路面描画装置45の動作を制御する一方で、第2電子制御ユニット48Bがヘッドランプ20の動作を制御してもよい。
【0178】
本実施形態によれば、車両1Bの走行を制御する車両制御部3に代わって、表示制御部43B(特に、第1電子制御ユニット47B)が路面描画装置45及びHUD42Bを動作させるべきかどうかを決定すると共に、路面描画装置45及びHUD42Bの動作を制御する。このように、車両制御部3による演算負荷を低減することができると共に、路面描画装置45及びHUD42Bの動作を高速化させることが可能となる。
【0179】
また、HUD42Bが動作していない場合には、第2電子制御ユニット48Bが路面描画装置45の動作を制御する。一方で、HUD42Bが動作している場合には、第1電子制御ユニット47BがHUD42B及び路面描画装置45の動作を制御する。このように、HUD42Bと路面描画装置45の両方が動作している場合に、HUD42Bと路面描画装置45のうちの少なくとも一方を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。特に、HUD42Bと路面描画装置45が互いに協調して動作している場合に(例えば、HUD情報の表示位置に応じて光パターンL10の出射位置が決定される場合若しくは光パターンL10の出射位置に応じてHUD情報の表示位置が決定される場合等)、第1電子制御ユニット47Bは、HUD42Bの動作を制御するための制御信号と路面描画装置45の動作を制御するための制御信号を生成する。このため、HUD42Bの動作内容を考慮した上で路面描画装置45を効率的且つ高速に動作させることが可能となる。または、路面描画装置45の動作内容を考慮した上でHUD42Bを効率的且つ高速に動作させることが可能となる。
【0180】
尚、本実施形態では、ヘッドランプ20の動作は第2電子制御ユニット48Bによって常に制御されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、HUD42Bが動作する場合では、第1電子制御ユニット47Bは、HUD42B、路面描画装置45及びヘッドランプ20の全ての動作を制御してもよい。HUD42B、路面描画装置45及びヘッドランプ20の全てが動作している場合に、これらのうちの少なくとも一つを効率的且つ高速に動作させることが可能となる。特に、HUD42Bの動作内容を考慮した上で路面描画装置45及び/又はヘッドランプ20を効率且つ高速に動作させることが可能となる。または、路面描画装置45及び/又はヘッドランプ20の動作内容を考慮した上でHUD42Bを効率的且つ高速に動作させることが可能となる。
【0181】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0182】
本実施形態では、車両の運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードと、手動運転モードとを含むものとして説明したが、車両の運転モードは、これら4つのモードに限定されるべきではない。車両の運転モードの区分は、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って適宜変更されてもよい。同様に、本実施形態の説明で記載された「完全自動運転モード」、「高度運転支援モード」、「運転支援モード」のそれぞれの定義はあくまでも一例であって、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って、これらの定義は適宜変更されてもよい。
【0183】
本出願は、2018年9月5日に出願された日本国特許出願(特願2018-166043号)に開示された内容と、2018年9月5日に出願された日本国特許出願(特願2018-166044号)に開示された内容と、2018年9月5日に出願された日本国特許出願(特願2018-166045号)に開示された内容を適宜援用する。