(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】熱処理装置および被処理物の加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
F27B 9/36 20060101AFI20240410BHJP
F27B 9/02 20060101ALI20240410BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F27B9/36
F27B9/02
F27D11/02 A
(21)【出願番号】P 2023171084
(22)【出願日】2023-10-02
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大竹 英明
(72)【発明者】
【氏名】大威 英晃
(72)【発明者】
【氏名】米川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 清志
(72)【発明者】
【氏名】石田 洋史
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508593(JP,A)
【文献】特開2003-192374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
B23K 26/00-27/70
C21D 1/00
C21D 9/46- 9/48
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物にレーザ光を照射し加熱するレーザ装置を有する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱された前記被処理物をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置を有する第2加熱部と
を備え
、
前記レーザ装置は、前記被処理物の少なくとも幅方向に沿った照射領域が設定されている、
熱処理装置。
【請求項2】
予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物にレーザ光を照射し加熱するレーザ装置を有する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱された前記被処理物をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置を有する第2加熱部と
を備え
、
前記第2加熱部に設定されている搬送経路は、前記第1加熱部に設定されている搬送経路よりも長い、
熱処理装置。
【請求項3】
予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物にレーザ光を照射し加熱するレーザ装置を有する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱された前記被処理物をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置を有する第2加熱部と
を備え
、
前記加熱装置は、赤外線加熱装置である、
熱処理装置。
【請求項4】
予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物にレーザ光を照射し加熱するレーザ装置を有する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱された前記被処理物をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置を有する第2加熱部と
、
前記被処理物を巻出す巻出部と、
処理された前記被処理物を巻取る巻取部と
を備え
、
前記巻出部と、前記第1加熱部と、前記第2加熱部と、前記巻取部とには、前記被処理物が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている、
熱処理装置。
【請求項5】
前記搬送空間を減圧する真空ポンプをさらに備える、請求項
4に記載された熱処理装置。
【請求項6】
前記搬送空間に予め定められたガスを供給する供給装置をさらに備える、請求項
4に記載された熱処理装置。
【請求項7】
前記レーザ装置は、前記被処理物の少なくとも幅方向に沿った照射領域が設定されている、請求項2~6のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項8】
前記第1加熱部は、前記レーザ装置によって加熱された前記被処理物の温度を検出する温度検出装置と、前記温度検出装置によって検出された温度に基づいて前記レーザ装置の出力を制御する出力制御装置とを備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項9】
予め定められた搬送経路に沿って搬送される帯状の被処理物にレーザ光を照射し加熱する第1加熱工程と、
前記搬送経路に沿って搬送される、前記第1加熱工程で加熱された前記被処理物をレーザ以外の方法で加熱する第2加熱工程と
を備える、
被処理物の加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理装置および被処理物の加熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第7285360号公報には、加熱処理部と、冷却部と、巻取部とを備えた熱処理装置が開示されている。加熱処理部では、シートが搬送されつつ加熱処理される。冷却部では、加熱処理部で加熱処理されたシートが搬送されつつ冷却される。巻取部では、冷却部で冷却されたシートが巻取られる。加熱処理部内の上方および下方には、ガイドローラが入口から出口に向かって並べられている。シートは、ガイドローラによって折り返され、上下に行ったり来たりしつつ、入口から出口に向かって搬送されている。シートの間隙や周囲には、シートと対向するように遠赤外線加熱式のヒータが設けられている。かかる構成によって、加熱処理部においてシートが搬送される距離が長くなり、シートが効率よく乾燥されるとされている。
【0003】
特開2014-107237号公報には、ロール状の電極シートを乾燥する電極シート乾燥装置が開示されている。同公報に開示されている乾燥装置は、チャンバと、チャンバ内を真空圧力にする真空排気装置と、巻出し軸と、巻取り軸と、ガイドローラと、赤外線照射部とを備えている。チャンバは、巻出し側収容部と、巻取り側収容部と、連通部とを備えている。巻出し側収容部には、巻取り軸が収容されている。巻取り側収容部には、巻取り軸が収容されている。連通部は、巻出し側収容部と巻取り側収容部とを連通している。赤外線照射部は、チャンバの外側に設けられている。赤外線照射部は、連通部を通る電極シートに対し、連通部の途中に設けた透過窓を介して赤外線を照射する。かかる乾燥装置によって、電極シート全体を均一に乾燥でき、また、電極シートの熱劣化させることなく乾燥時間を従来以上に大幅に短縮できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7285360号公報
【文献】特開2014-107237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、帯状の被処理物の処理効率を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される熱処理装置は、搬送装置と、第1加熱部と、第2加熱部とを備えている。搬送装置は、予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物を搬送する。第1加熱部は、被処理物にレーザ光を照射し加熱するレーザ装置を有している。第2加熱部は、第1加熱部で加熱された前記被処理物をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置を有している。かかる熱処理装置では、帯状の被処理物の処理効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、熱処理装置10を示す模式図である。
【
図2】
図2は、被処理物20を駆動する駆動機構を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1加熱部40、第2加熱部50および冷却部60の模式図である。
【
図4】
図4は、被処理物20の温度の推移を示すグラフである。
【
図5】
図5は、他の実施形態にかかる第1加熱部40Aを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0009】
図1は、熱処理装置10を示す模式図である。
図1では、巻出部30と巻取部70の内部の構成が模式的に示されている。
図2は、被処理物20を駆動する駆動機構を示す模式図である。
図2では、巻出部30と巻取部70の間の第1加熱部40、第2加熱部50および冷却部60の図示は省略されている。また、
図2では、巻出部30の張力検出ローラ34bと、フィードローラ34cと、ダンサーローラ34d以外のローラ34の図示は省略されている。
図2では、巻取部70の張力検出ローラ74c以外のローラ74の図示は省略されている。
図3は、第1加熱部40、第2加熱部50および冷却部60の模式図である。
【0010】
〈熱処理装置10〉
熱処理装置10は、帯状の被処理物20を加熱処理するための設備である。この実施形態では、熱処理装置10は、いわゆるロールtoロール方式で帯状の被処理物を搬送しつつ連続的に乾燥させるための装置である。被処理物20は、例えば、シート基材の両面にそれぞれ電極材料が塗工された二次電池の電極シート、フレキシブル銅張積層板FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)、ポリイミドシートなど帯状のものであれば特に限定されない。ここで開示される熱処理装置10は、帯状(シート状)の種々の被処理物の処理に用いられうる。
【0011】
被処理物20は、
図1に示されているように、熱処理装置10を用いて加熱処理される。被処理物20の加熱処理方法は、第1加熱工程と、第2加熱工程とを含んでいる。被処理物20の加熱処理方法は、冷却工程を含んでいてもよい。
【0012】
熱処理装置10は、搬送装置80と、第1加熱部40と、第2加熱部50とを備えている。被処理物20は、熱処理装置10において予め定められた搬送経路に沿って搬送される。被処理物20は、第1加熱部40および第2加熱部50において搬送経路に沿って搬送されつつ加熱処理される。この実施形態では、熱処理装置10は、巻出部30と、巻取部70とを備えている。被処理物20の搬送経路は、巻出部30の巻出ロール22から巻取部70の巻取ロール24の間に設定されている。この実施形態では、熱処理装置10は、冷却部60を備えている。被処理物20は、第2加熱部50と巻取部70の間に設けられている。このため、被処理物20は、巻出部30で巻出され、第1加熱部40で加熱処理され、第2加熱部50で加熱処理され、冷却部60で冷却され、巻取部70で巻き取られる。
【0013】
〈搬送装置80,82〉
搬送装置80は、予め定められた搬送経路に沿って被処理物20を搬送する装置である。この実施形態では、搬送装置80,82は、巻出部30の巻出ロール22が取り付けられている第1軸32、および、巻取部70の巻取ロール24が取り付けられている第2軸72を回転駆動する装置である。この実施形態では、搬送装置80,82としてモータが用いられている。
【0014】
図2に示されているように、搬送装置80,82は、巻出部30の一方の外壁30aおよび巻取部70の一方の外壁70aにそれぞれ取り付けられている。第1軸32は、搬送装置80に接続されている。搬送装置80によって第1軸32が回転駆動され、巻出ロール22から被処理物20が巻出される。第2軸72は、搬送装置82に接続されている。搬送装置82によって第2軸72が回転駆動され、巻取ロール24に被処理物20が巻取られる。搬送装置80,82は、それぞれ外壁30a,70aに囲まれた空間内に設けられた大気ボックスに設置されていてもよい。
【0015】
熱処理装置10では、被処理物20の処理効率を向上させるために、被処理物20は、高速で搬送されうる。特に限定されないが、被処理物20の搬送速度は、1m/分~200m/分程度に設定されうる。この実施形態では、被処理物20の搬送速度は、100m/分程度に設定されている。熱処理装置10では、被処理物20の搬送速度は、制御装置15によって制御されている。
【0016】
〈制御装置15〉
制御装置15は、予め定められた搬送条件に応じて被処理物20が搬送されるように、被処理物20の搬送速度や被処理物20にかかる張力を制御する。この実施形態では、制御装置15は、被処理物20を巻出す時の巻出し張力と、処理されている被処理物20にかかる炉内張力と、処理された被処理物20を巻取る時の巻取り張力とをそれぞれ制御する。
図2に示されているように、制御装置15は、搬送装置80,82に接続されている。また、制御装置15は、張力検出ローラ34b、フィードローラ34c、ダンサーローラ34d、張力検出ローラ74c等と接続されている。張力検出ローラ34b、フィードローラ34c、ダンサーローラ34dおよび張力検出ローラ74cについては、後述する。制御装置15は、張力検出ローラ34bが検出する巻出し張力を搬送装置80にフィードバックし、第1軸32のトルクを制御する。これによって、巻出し張力が調整される。また、制御装置15は、処理されている被処理物20が掛けられた張力検出ローラ(この実施形態では、冷却部60内(
図1参照)に設けられた張力検出ローラ74c)が検出する炉内張力をダンサーローラ34dにフィードバックする。検出された炉内張力に応じてダンサーローラ34dが移動する。これによって、炉内張力が調整される。なお、炉内張力が一定の状態でダンサーローラ34dの位置が基準の位置に戻るように、フィードローラ34cの回転速度が制御される。また、制御装置15は、張力検出ローラ74cが検出する巻取り張力を搬送装置82にフィードバックし、第2軸72のトルクを制御する。これによって、巻取り張力が調整される。
【0017】
〈巻出部30〉
巻出部30は、被処理物20を巻き出す部位である。
図1に示されているように、巻出部30は、加熱処理前の被処理物20が巻付けられた状態の巻出ロール22を収容している。巻出部30は、内部の設備と、巻出ロール22を囲う外壁30aとを有している。この実施形態では、外壁30aの内部には、被処理物20が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている。巻出部30には、第1軸32と、複数のローラ34とが内部に設けられている。第1軸32は、加熱処理前の被処理物20が巻かれた巻出ロール22が取り付けられる軸である。この実施形態では、第1軸32が回転駆動されることによって、第1軸32が回転駆動されることによって、第1軸32に取り付けられた巻出ロール22から帯状のシート20が巻出される。
【0018】
巻出部30の外壁30aで囲まれた空間内には、被処理物20の搬送経路を設定する複数のローラ34が設けられている。第1軸32に取り付けられた巻出ロール22から巻出された被処理物20は、複数のローラ34に予め定められた順番で掛け廻されて、第1加熱部40に向けて搬送される。複数のローラ34は、ガイドローラ34aと、張力検出ローラ34bと、フィードローラ34cと、ダンサーローラ34dとを含んでいる。張力検出ローラ34bは、被処理物20にかかる張力を検出するためのローラである。張力検出ローラ34bには、図示しない張力検出器が取り付けられている。ダンサーローラ34dは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ34dが移動することによって、被処理物20の張力が調整される。フィードローラ34cは、図示しない搬送装置によって回転駆動される。フィードローラ34cの回転が制御されることによって、ダンサーローラ34dの位置が調整される。
【0019】
巻出部30は、連結部90を介して第1加熱部40と接続されている。連結部90は、巻出部30の出口と、第1加熱部40の入口とを備えている。被処理物20は、連結部90を通って第1加熱部40に搬送される。
【0020】
〈第1加熱部40〉
第1加熱部40は、被処理物20をレーザ加熱により加熱処理する部位である。
図3に示されているように、第1加熱部40は、レーザ装置42を備えている。第1加熱部40では、巻出ロール22から巻出される被処理物20が搬送されつつレーザ装置42によって加熱処理される。
【0021】
図4は、被処理物20の温度の推移を示すグラフである。
図4では、第1加熱部においてレーザ加熱が実施され、第2加熱部50において赤外線加熱が実施される熱処理装置10における被処理物20の温度の推移が実線で示されている。また、
図4では、第1加熱部および第2加熱部の両方において赤外線加熱が実施された熱処理装置における被処理物の温度の推移が破線で示されている。
図4に示されているように、被処理物20は、第1加熱部40のレーザ装置42によって予め定められた設定温度まで昇温する。設定温度は、処理対象である被処理物20の構成等に応じて適宜設定されうる。
【0022】
図3に示されているように、第1加熱部40は、外壁40aと、複数のサポートローラ44とを備えている。この実施形態では、外壁40aの内部には、被処理物20が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている。外壁40aは、複数のサポートローラ44が配置された空間を囲っている。レーザ装置42は、外壁40aの外側に配置されている。第1加熱部40には、外壁40aおよびレーザ装置42を囲うカバー40bが設けられていてもよい。外壁40aの外側、かつ、カバー40bの内側の空間は、被処理物20が搬送される空間から隔離されており、レーザ装置42が配置されている。この実施形態では、外壁40aの外側、かつ、カバー40bの内側の空間は、外部と連通しており、大気圧環境である。
【0023】
この実施形態では、第1加熱部40における被処理物20の搬送経路は、前後方向に沿った直線状に設定されている。被処理物20は、複数のサポートローラ44によって支持されている。なお、第1加熱部40における搬送経路は、直線状に限定されず、例えば、第1加熱部40内で折り返されていてもよい。第1加熱部40内には、サポートローラ44以外にも、被処理物20の搬送経路を設定するガイドローラ等が設けられていてもよい。
【0024】
〈サポートローラ44〉
サポートローラ44は、第1加熱部40内を搬送される被処理物20を支持するローラである。サポートローラ44は、円柱状のローラである。サポートローラ44は、予め定められたピッチで前後方向に沿って並べられている。複数のサポートローラ44は、それぞれ略同一の高さに並べられている。複数のサポートローラ44の上端は、巻出部30の出口付近のガイドローラ34a(
図1参照)の上端と略同一の高さになるように配置されている。これによって、巻出部30から搬送される被処理物20は、前方に向かって略水平に搬送される。
【0025】
この実施形態では、サポートローラ44は、第2面20bから被処理物20を支持している。被処理物20は、サポートローラ44に支持されることよって、被処理物20自体の重さによるたわみが低減されうる。その結果、レーザ加熱時の焦点が合いやすく、面方向における加熱のムラが低減されうる。
【0026】
〈レーザ装置42〉
レーザ装置42は、被処理物20に対してレーザを照射し加熱する装置である。被処理物20は、レーザ装置42によって加熱されることにより、急速に昇温する(
図4参照)。この実施形態では、レーザ装置42として、半導体で形成された素子を含んだ半導体レーザが用いられている。レーザ装置42は、発振器42aと、伝送ファイバ42bと、加工ヘッド42cとを備えている。レーザ装置42には、伝送ファイバ42bを介して加工ヘッド42cが接続されている。レーザ装置42は、加工ヘッド42cからレーザ光Pを照射可能に構成されている。加工ヘッド42cの向きは、レーザ光Pの光軸がシート状の被処理物20に対して略垂直に入射するように設定されている。
【0027】
レーザ装置42の加工ヘッド42cは、外壁40aの外部に配置されている。この実施形態では、レーザ装置42の加工ヘッド42cは、第1加熱部40の上方に配置されている。加工ヘッド42cは、下方を向いている。外壁40aのうち少なくとも天井部には、レーザ光Pを透過する窓40a1が設けられているとよい。かかるレーザ光Pを透過する窓40a1は、例えば、石英ガラスで構成されているとよい。加工ヘッド42cから照射されるレーザ光Pは、窓40a1を透過する。第1加熱部40内では、被処理物20にレーザ光Pが照射され、被処理物20は、加熱される。この実施形態では、被処理物20は、サポートローラ44によって支持されている第2面20bとは反対側の第1面20aからレーザ光Pが当てられる。加工ヘッド42cの周囲は、石英ガラスに向けられている面を除いて、遮蔽板40cによって遮蔽されている。
【0028】
レーザ装置42として、被処理物20に対して二次元の照射領域が設定された装置が用いられていてもよい。この実施形態では、レーザ装置42として、被処理物20の面方向に対して略均一に略矩形状のレーザ光Pを照射可能な装置が用いられている。レーザ光Pの照射領域は、例えば、加工ヘッド42cの高さを調整する等、被処理物20の照射面と加工ヘッド42cの間の距離の調整によって設定されてもよい。レーザ光Pの照射領域は、加工ヘッド42c内の光学系ユニット42c1によって設定されてもよい。光学系ユニット42c1を調整することによって、レーザ光Pの照射幅が調整されうる。加工ヘッド42cから被処理物20に向かって、レーザ光Pの照射幅は広がっている。レーザ装置42としては、例えば、レーザーライン社製の半導体レーザが用いられうる。被処理物20の面方向に対して広い範囲に略均一にレーザ光Pが照射され加熱されることによって、被処理物20の面方向において加熱条件(昇温条件)を略一定とすることができる。その結果、処理後の被処理物20の品質が向上しうる。かかる観点から、レーザ装置42としては、被処理物20を局所的に加熱するレーザ装置と比較して、被処理物20の少なくとも幅方向に沿った照射領域が設定された装置が用いられることが好ましく、被処理物20の面方向に沿った照射領域が設定された装置が用いられることがより好ましい。レーザ光Pの照射領域は、被処理物20の寸法に応じて適宜定められうる。
【0029】
レーザ装置42の数は特に限定されず、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。レーザ装置42の数は、被処理物20の処理条件、搬送条件等に応じて適宜設定されうる。この実施形態では、第1加熱部40には、2つのレーザ装置42が設けられている。2つのレーザ装置42の加工ヘッド42cは、搬送経路に沿って並べられている。これによって、被処理物20の加熱効率が向上しうる。また、搬送経路に沿って加熱条件を変えることができ、加熱処理の自由度が向上しうる。第1加熱部40に複数のレーザ装置42が用いられている場合、レーザ装置42は、搬送方向に沿って並べられていてもよく、被処理物20の幅方向に沿って並べられていてもよい。レーザ装置42が被処理物20の幅方向に沿って並べられていることによって、広い照射領域が確保されうる。複数のレーザ装置42は、それぞれのレーザ装置42の照射領域が重なるように配置されていてもよい。また、複数のレーザ装置42は、搬送方向に沿って並べられ、かつ、幅方向においてずれた位置に配置されていてもよい。これによって、幅方向において、複数のレーザ装置42の照射領域を重ねることができ、被処理物20の幅方向における熱履歴の差が低減されうる。例えば、複数のレーザ装置42は、搬送方向に沿って左右に交互に配置されていてもよい。
【0030】
第1加熱部40に複数のレーザ装置42が用いられている場合、それぞれの照射領域は、互いに離れていてもよく、重なっていてもよい。また、レーザ装置42の配置は、特に限定されない。レーザ装置42は、第2面20bから加熱できるように配置されていてもよく、第1面20aと第2面20bの両面から加熱できるように配置されていてもよい。
【0031】
第1加熱部40は、連結部91を介して第2加熱部50と接続されている。連結部91は、第1加熱部40の出口と、第2加熱部50の入口とを備えている。設定温度まで昇温した被処理物20は、連結部91を通って第2加熱部50に搬送される。
【0032】
〈第2加熱部50〉
第2加熱部50は、第1加熱部40で加熱された被処理物20をレーザ加熱以外の方法で加熱する部位である。第2加熱部50では、被処理物20は、第1加熱部40とは異なる条件で加熱処理される。この実施形態では、第2加熱部50において、被処理物20は、第1加熱部40において設定温度まで昇温された状態を維持するように加熱される(
図4参照)。これによって、被処理物20は、乾燥される。
【0033】
この実施形態では、第2加熱部50は、加熱装置52と、ガイドローラ54a~54dと、外壁50aとを備えている。この実施形態では、外壁50aの内部には、被処理物20が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている。外壁50aは、加熱装置52と、ガイドローラ54a~54dとが配置された空間を囲っている。
【0034】
〈ガイドローラ54a~54d〉
ガイドローラ54a~54dは、第2加熱部50において被処理物20が搬送される搬送経路を設定するためのローラである。この実施形態では、ガイドローラ54a~54dは、円柱状のローラである。ガイドローラ54a~54dの軸は、それぞれ左右方向に向けられている。ガイドローラ54aは、第2加熱部50の入口(連結部91)付近に設けられている。ガイドローラ54aの上端は、第1加熱部40のサポートローラ44の上端の高さと略同一の高さになるように配置されている。これによって、被処理物20は、第1加熱部40から第2加熱部50に向かって略水平に搬送される。複数のガイドローラ54bは、第2加熱部50の下方において前後方向に順に予め定められたピッチで並べられている。複数のガイドローラ54cは、第2加熱部50の上方において、第2加熱部50の入口から出口に向かって複数のガイドローラ54bとは半ピッチずれて並べられている。ガイドローラ54dは、第2加熱部50の出口(連結部92)付近に設けられている。被処理物20は、第2加熱部50の入口付近のガイドローラ54aに掛けられ下方に搬送される。その後、被処理物20は、上下のガイドローラ54b,54cに後方から前方に向けて順に交互に掛け廻される。これにより、第2加熱部50での被処理物20は、入口から出口に向かって上下に行ったり来たりしつつ進む。そして、出口付近に設けられたガイドローラ54dに掛けられて、冷却部60に向けて搬送される。
【0035】
〈加熱装置52〉
加熱装置52は、レーザ加熱以外の方法で被処理物20を加熱するための装置である。加熱装置52としては、波長等が揃ったレーザ光を用いない方法で被処理物20を加熱可能な種々の装置を用いることができる。この実施形態では、加熱装置52として、赤外線加熱装置が用いられている。赤外線加熱装置を用いることによって、第2加熱部50内の雰囲気によらず被処理物20を加熱処理することができる。また、被処理物20の面方向の均熱効率が良好である。ここでは、加熱装置52は、遠赤外線加熱式の板状のプレートヒータである。加熱装置52としては、加熱温度や加熱雰囲気等に応じて種々のヒータが用いられうる。加熱装置52としては、例えば、板状のプレートヒータの他に、例えば、筒状のヒータが用いされてもよい。加熱装置52の材質は特に限定されず、金属シースヒータ、セラミックヒータ、ランプヒータ等が用いられてもよい。また、加熱装置52は、遠赤外線加熱式のヒータに限られない。雰囲気炉の場合は、加熱装置52としては、例えば、被処理物に熱風が吹き付けられる熱風加熱式のヒータが用いられてもよい。
【0036】
この実施形態では、加熱装置52は、ガイドローラ54a~54dに掛けられて、上下に行ったり来たりしつつ、入口から出口に向かって進む被処理物20の周りに、被処理物20に対向するように配置されている。加熱装置52は、ガイドローラ54b,54cに掛けられて、上下に行ったり来たりする被処理物20の間隙や、搬送される被処理物20の周りに、被処理物20に対向するように配置されている。加熱装置52は、例えば、ホルダおよび支柱によって固定されてもよい。外壁50aの底壁には、ホルダを固定するための支柱が立てられていてもよい。支柱には、ホルダが固定されていてもよい。加熱装置52は、ホルダによって固定されてもよい。また、加熱装置52は、例えば、外壁40aの側壁(
図3参照)に支持されていてもよい。
【0037】
ガイドローラ54a~54dが上記のように配置されていることによって、第2加熱部50において被処理物20が搬送される距離が長くなっている。このように、第2加熱部50に設定されている搬送経路は、第1加熱部40に設定されている搬送経路よりも長くなっている。このため、被処理物20は、効率よく乾燥されうる。また、被処理物20の第1面20aと第2面20bに対して、それぞれ加熱装置52からの熱が同じように当たる。このため、被処理物20の第1面20aと第2面20bの加熱条件が近くなりうる。これによって、被処理物20の第1面20aと第2面20bの熱履歴の差を小さくすることができる。熱履歴は、被処理物20が加熱および冷却された履歴である。被処理物20内で加熱条件と冷却条件を合わせることによって、被処理物20内の熱履歴の差が小さくなりうる。
【0038】
なお、加熱装置52やガイドローラ54a~54dの配置は、かかる形態に限定されない。加熱装置52やガイドローラ54a~54dの配置は、被処理物20の種類や加熱処理の条件等に応じて適宜設定されるとよい。例えば、被処理物20の第1面20aと第2面20bで異なる材料が形成されている場合等、第1面20aと第2面20bが異なる条件で加熱処理されるように、加熱装置52の配置や出力等が設定されてもよい。
【0039】
第2加熱部50は、連結部92を介して冷却部60と接続されている。連結部92は、第2加熱部50の出口と、冷却部60の入口とを備えている。設定温度で維持された被処理物20は、連結部92を通って冷却部60に搬送される。
【0040】
〈冷却部60〉
冷却部60は、第2加熱部50で加熱処理された被処理物20が搬送されつつ冷却される部位である。冷却部60が設けられていることによって、温度を低下させた状態で被処理物20を巻取ロール24に巻き取ることができる。冷却部60は、第1加熱部40および第2加熱部50における被処理物20の処理温度が高い時に特に有効である。冷却部60は、冷却ローラ62と、複数のガイドローラ68と、外壁60aとを有している。この実施形態では、外壁60aの内部には、被処理物20が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている。この実施形態では、冷却部60には、複数の冷却ローラ62が設けられている。複数の冷却ローラ62と複数のガイドローラ68は、冷却部60において被処理物20が搬送される搬送経路を設定している。冷却ローラ62は単数でもよいが、複数であるほうがより好ましい。
【0041】
〈冷却ローラ62〉
冷却ローラ62は、内部に冷媒が流通するように構成されたローラである。この実施形態では、冷却ローラ62は、少なくとも1つの第1冷却ローラ62aと、少なくとも1つの第2冷却ローラ62bとを有している。ここで、第1冷却ローラ62aは、被処理物20の第1面20aが接するように掛け廻される冷却ローラ62である。第2冷却ローラ62bは、被処理物20の第2面20bが接するように掛け廻される冷却ローラ62である。この実施形態では、冷却ローラ62は、図示しない駆動装置が接続されている。冷却ローラ62は、に搬送方向に沿って、設定された搬送速度に合わせて回転する。この実施形態では、被処理物20は、冷却部60において、室温程度まで冷却される(
図4参照)。なお、冷却される被処理物20の温度は、特に限定されない。
【0042】
この実施形態では、第1冷却ローラ62aおよび第2冷却ローラ62bは、それぞれ複数(この実施形態では、4つずつ)設けられている。冷却ローラ62の数は特に限定されない。第1冷却ローラ62aおよび第2冷却ローラ62bは、例えば、それぞれ1つずつ設けられていてもよい。
【0043】
この実施形態では、複数の第1冷却ローラ62aは、冷却部60の前方(出口側)に高さ方向に沿って予め定められたピッチで一列に並べられている。複数の第2冷却ローラ62bは、冷却部60の後方(入口側)において、高さ方向に沿って予め定められたピッチで一列に並べられている。隣り合う第1冷却ローラ62aの間隔および隣り合う第2冷却ローラ62bの間隔はそれぞれ、冷却ローラ62の外径よりも狭くなるように設定されている。なお、第1冷却ローラ62aおよび第2冷却ローラ62bの配置は、特に限定されない。例えば、複数の第1冷却ローラ62aおよび複数の第2冷却ローラ62bはそれぞれ、冷却部60の入口側から出口側に向かって並べられていてもよい。複数の第1冷却ローラ62aは、冷却部60の上方に予め定められたピッチで一列に並べられていてもよい。複数の第2冷却ローラ62bは、冷却部60の下方に予め定められたピッチで一列に並べられていてもよい。隣り合う第1冷却ローラ62aの間隔および隣り合う第2冷却ローラ62bの間隔はそれぞれ、冷却ローラ62の外径よりも広くなるように設定されていてもよい。
【0044】
この実施形態では、第1冷却ローラ62aと第2冷却ローラ62bは、同じピッチで並べられており、第2冷却ローラ62bの高さは、下から順に、第1冷却ローラ62aよりも半ピッチ高い位置に配置されている。これにより、複数の第1冷却ローラ62aと複数の第2冷却ローラ62bとは、冷却部60の前後で順に高さがずれるように配置されている。換言すると、複数の第1冷却ローラ62aと複数の第2冷却ローラ62bとが千鳥に配置されている。第1冷却ローラ62aと第2冷却ローラ62bがこのように配置されていることによって、冷却部60を高さ方向に長い構造とすることができる。他方で、冷却部60の専有面積を小さくすることができ、設備の省スペース化が図られる。
【0045】
〈ガイドローラ68〉
ガイドローラ68は、被処理物20を案内するローラである。この実施形態では、ガイドローラ68は、円柱状のローラである。ガイドローラ68の軸は、冷却部60において左右方向に向けられ冷却部60に設けられている。冷却部60には、複数のガイドローラ68によって、入口(連結部92)から複数の冷却ローラ62を通り、複数の冷却ローラ62から出口(連結部93)に向かうように、被処理物20の搬送経路が設定されている。なお、複数のガイドローラ68は、被処理物20にかかる張力を検出する張力検出ローラを含んでいる。
【0046】
被処理物20は、冷却部60の入口から、ガイドローラ68aを通って冷却部60に導入され、複数の冷却ローラ62の上流側で下方に搬送される。被処理物20は、ガイドローラ68bを通して最下端に配置された第1冷却ローラ62aに搬送される。被処理物20は、第1冷却ローラ62aと第2冷却ローラ62bに下側から順に交互に掛け廻され、最上端の第2冷却ローラ62bからガイドローラ68cに向けて搬送される。被処理物20は、ガイドローラ68cを通して下方に搬送され、ガイドローラ68dを通して冷却部60の出口から巻取部70に搬送されている。この際、被処理物20は、第1冷却ローラ62aに被処理物20の第1面20aが接触し、第2冷却ローラ62bに被処理物20の第2面20bが接触するように掛け廻される。このため、被処理物20の第1面20aと第2面20bとが順に冷却ローラ62によって冷却される。これにより、被処理物20の第1面20aと第2面20bとの熱履歴の差が小さくなる。
【0047】
冷却部60は、連結部93を介して巻取部70と接続されている。連結部93は、冷却部60の出口と、巻取部70の入口とを備えている。冷却された被処理物20は、連結部93を通って巻取部70に搬送される。
【0048】
〈巻取部70〉
巻取部70は、被処理物20を巻き取る部位である。巻取部70は、
図1に示されているように、冷却ローラ62を通じて冷却された被処理物20を巻取るための巻取ロール24を収容している。巻取部70は、内部の設備を囲う外壁70aを有している。この実施形態では、外壁70aの内部には、被処理物20が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている。巻取部70には、第2軸72と、複数のローラ74とが設けられている。第2軸72には、第1加熱部40および第2加熱部50で加熱処理され、冷却部60で冷却された被処理物20が巻き取られた巻取ロール24が取り付けられる。第2軸72が回転駆動されることによって、巻取ロール24に被処理物20が巻取られる。
【0049】
複数のローラ74は、巻取部70において被処理物20が搬送される搬送経路を設定する。冷却部60から搬送された被処理物20は、巻取部70の入口(連結部93)付近のローラ74に掛けられた後に、複数のローラ74に予め定められた順番に掛け廻され、巻取ロール24に巻取られる。複数のローラ74は、ガイドローラ74aと、ローラ74bと、張力検出ローラ74cと、フィードローラ74dとを含んでいる。ローラ74bは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ローラ74bは、例えば、巻取ロール24が交換される際に、被処理物20の必要な余長を確保するために移動されうる。張力検出ローラ74cには、図示しない張力検出器が取り付けられている。フィードローラ74dは、巻取ロール24を交換するときに交換後の巻取ロール24に被処理物20を貼り付ける際の、貼り付けに必要な余長を送り出す。
【0050】
ところで、本発明者は、帯状の被処理物の処理効率を向上させることを検討している。例えば、被処理物の搬送速度を上げることによって処理効率を向上させることができる。しかしながら、被処理物の搬送速度を上げた場合には、被処理物が加熱部を通過する速度が早くなる。被処理物の昇温速度は変わらないため、被処理物を設定温度まで昇温させるためには、搬送速度を上げることに伴って、加熱部内の搬送経路を長くする必要がある。加熱部内の搬送経路を長くするためには、設備の大型化が必要となる。また、被処理物の加熱にかかるエネルギーコストも大きくなる。
【0051】
上述した実施形態では、熱処理装置10は、搬送装置80,82と、第1加熱部40と、第2加熱部50とを備えている。搬送装置80,82は、予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物20を搬送する。第1加熱部40は、被処理物20にレーザ光Pを照射し加熱するレーザ装置42を有している。第2加熱部50は、第1加熱部40で加熱された被処理物20をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置52を有している。
【0052】
かかる熱処理装置10では、第2加熱部50において被処理物20が設定温度で維持される前に、第1加熱部40においてレーザ装置42によって加熱されている。レーザ光Pの照射領域を設定可能なレーザ装置42を用いることによって、被処理物20の加熱したい領域を効率的に加熱することができる。これによって、エネルギーのロスを抑えて被処理物20を加熱することがでる。例えば、
図4に示されているように、赤外線加熱のみで被処理物を加熱する場合と比較して、被処理物20の昇温速度を向上させることができる。また、被処理物20を昇温させるための第1加熱部40における搬送経路を短くすることができ、設備を小型化することができる。
【0053】
なお、本発明者の知見では、レーザ加熱では、単位時間あたりに被処理物20に与えられるエネルギーが大きいため、被処理物20は急速に昇温される。このため、被処理物20の面内において温度がばらつく場合がある。上述した実施形態では、第2加熱部50では、レーザ加熱された被処理物20は、加熱装置52によって加熱されている。これによって、レーザ加熱された急速に昇温された被処理物20は、レーザ加熱以外の方法で加熱されることによって、第2加熱部50内を搬送中に均熱化されやすくなる。これによって、第1加熱部40および第2加熱部50での加熱処理後の被処理物20の品質が良好である。ここで開示される熱処理装置10によって、品質を維持しつつ効率的に被処理物20を処理することができる。
【0054】
上述した実施形態では、第2加熱部50に設定されている搬送経路は、第1加熱部40に設定されている搬送経路よりも長い。かかる熱処理装置10では、第1加熱部40の設備が小型化されている。第2加熱部50においては、搬送経路が長く設定されていることによって、被処理物20を均熱化しやすく、被処理物20の処理後の品質が良好になりうる。
【0055】
上述した実施形態では、巻出部30と、第1加熱部40と、第2加熱部50と、冷却部60と、巻取部70とには、被処理物20が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている。これによって、被処理物20を外部から隔離された空間で処理することができ、処理条件が安定しうる。また、搬送空間内の雰囲気を、被処理物20の処理目的に応じた雰囲気に制御することができる。
【0056】
この実施形態では、
図1に示されているように、熱処理装置10は、搬送空間を減圧する真空ポンプ12を備えている。真空ポンプ12は、巻出部30、第1加熱部40、第2加熱部50、冷却部60および巻取部70の各部に接続されている。被処理物20は、大気圧よりも低い予め定められた真空雰囲気下で処理される。なお、真空ポンプ12の接続構成は、かかる形態に限定されない。例えば、巻出部30、第1加熱部40、第2加熱部50、冷却部60および巻取部70は、複数の真空ポンプ12によって内部が減圧されるように構成されていてもよい。例えば、複数の真空ポンプ12が、各部にそれぞれ接続されていてもよい。被処理物を減圧環境下で処理することによって、被処理物20の乾燥効率が向上し、被処理物20の処理効率が良好である。第1加熱部40の入口(この実施形態では、連結部90)および冷却部60の出口(この実施形態では、連結部93)には、それぞれ扉90a,93aが設けられている。
【0057】
真空ポンプ12の配管には、各部の真空度を調整するための真空バルブ12a~12eが設けられている。真空バルブ12a~12eは、各部と真空ポンプ12の接続および各部と真空ポンプ12の切断を切り替え可能に構成されている。各部の真空度を調整しない場合には、真空バルブ12a~12eの替わりに開閉バルブが使用されうる。この実施形態では、搬送空間の真空度は、制御装置15によって制御されている。なお、搬送空間の制御装置15とは別の装置によって制御されてもよい。
【0058】
制御装置15は、各部の真空度を調整できるように、真空ポンプ12および真空バルブ12a~12eに接続されている。制御装置15は、各部の真空度を検出するための図示しない真空度検出器に接続されていてもよい。被処理物20が熱処理装置10で処理される際には、真空バルブ12a~12eが開かれる。定常運転時は扉90a,93aは開かれた状態であり、各部の真空度は同じである。
【0059】
ロールが交換される際には、制御装置15は、真空バルブ12a~12eそれぞれの開閉を制御することによって、各部の真空度が切り替えられうる。巻出ロール22が交換される際には、扉90aが閉じられた状態で、真空バルブ12aが閉じられる。これによって、第1加熱部40の雰囲気を保つことができ、巻出ロール22を取り替えた後の装置の復旧が早くなる。巻取ロール24が交換される際には、扉93aが閉じられた状態で、真空バルブ12eが閉じられる。これによって、冷却部60の雰囲気を保つことができ、巻出ロール22を取り替えた後の装置の復旧が早くなる。ロールが交換される際には、ロールが交換される部屋は、図示しない大気開放弁によって大気開放される。大気開放弁は、第1加熱部40、第2加熱部50および冷却部60にも設けられていてもよい。制御装置15は、加熱処理時やロール交換時に真空バルブ12a~12eおよび大気開放弁の開閉を制御しうる。
【0060】
なお、熱処理装置10は、被処理物20を予め定められた雰囲気で加熱処理する雰囲気炉であってもよい。熱処理装置10が雰囲気炉である場合においても、上述したように、品質を維持しつつ効率的に被処理物20を処理することができる。なお、熱処理装置10が雰囲気炉である場合、熱処理装置10は、搬送空間に予め定められたガスを供給する供給装置をさらに備えているとよい。供給装置は、雰囲気ガスを供給するためのガスボンベ等から構成されうる。雰囲気ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、空気、酸素、二酸化炭素、水素等が用いられうる。雰囲気ガスは、被処理物の加熱条件等に応じて適宜選択される。また、熱処理装置10には、搬送空間内のガスを排気する排気ポンプなどの排気装置が接続されていてもよい。
【0061】
〈第1加熱部40A〉
図5は、他の実施形態にかかる第1加熱部40Aを示す模式図である。
図5に示されている実施形態では、第1加熱部40は、温度検出装置46と、出力制御装置48とを備えている。温度検出装置46は、レーザ装置42によって加熱された被処理物20の温度を検出する装置である。温度検出装置46としては、例えば、赤外線温度計が用いられうる。出力制御装置48は、レーザ装置42の出力を制御する装置である。出力制御装置48は、温度検出装置46および発振器42aと接続されていてもよい。出力制御装置48は、温度検出装置46によって検出された温度に基づいてレーザ装置42の出力を制御する。出力制御装置48は、温度検出装置46が検出する温度が設定値よりも高い場合にはレーザ装置42の出力を下げ、設定値よりも低い場合にはレーザ装置42の出力を上げるように、レーザ装置42の出力を制御してもよい。出力を上げる基準となる設定値と、出力を下げる基準となる設定値は、同じでなくてもよい。出力を上げる基準となる設定値は、出力を下げる基準となる設定値よりも低くてもよい。
【0062】
温度検出装置46は、被処理物20の幅方向において複数の点の温度を検出できるように構成されていてもよい。温度検出装置46は、被処理物20の幅方向に沿って複数設けられていてもよい。温度検出装置46によって、被処理物20の幅方向における温度差が検出される場合、出力制御装置48は、幅方向においてレーザ装置42の出力を制御してもよい。出力制御装置48は、例えば、レーザ装置42が被処理物20の幅方向に沿って複数並んでいる場合には、被処理物20の幅方向における温度差を低減させるように、レーザ装置42の出力を制御してもよい。
【0063】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0064】
なお、本明細書は以下の項1~9を含んでいる。以下の項1~9は、上記した実施形態には限定されない。
【0065】
項1:
予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物を搬送する搬送装置と、
前記被処理物にレーザ光を照射し加熱するレーザ装置を有する第1加熱部と、
前記第1加熱部で加熱された前記被処理物をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置を有する第2加熱部と
を備える、
熱処理装置。
【0066】
項2:
前記レーザ装置は、前記被処理物の少なくとも幅方向に沿った照射領域が設定されている、項1に記載された熱処理装置。
【0067】
項3:
前記第2加熱部に設定されている搬送経路は、前記第1加熱部に設定されている搬送経路よりも長い、項1または2に記載された熱処理装置。
【0068】
項4:
前記加熱装置は、赤外線加熱装置である、項1~3のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0069】
項5:
前記被処理物を巻出す巻出部と、
処理された前記被処理物を巻取る巻取部と
をさらに備え、
前記巻出部と、前記第1加熱部と、前記第2加熱部と、前記巻取部とには、前記被処理物が搬送され、かつ、外部から隔離された搬送空間が形成されている、項1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0070】
項6:
前記搬送空間を減圧する真空ポンプをさらに備える、項5に記載された熱処理装置。
【0071】
項7:
前記第1加熱部は、前記レーザ装置によって加熱された前記被処理物の温度を検出する温度検出装置と、前記温度検出装置によって検出された温度に基づいて前記レーザ装置の出力を制御する出力制御装置とを備える、項1~6のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0072】
項8:
前記搬送空間に予め定められたガスを供給する供給装置をさらに備える、項5に記載された熱処理装置。
【0073】
項9:
予め定められた搬送経路に沿って搬送される帯状の被処理物にレーザ光を照射し加熱する第1加熱工程と、
前記搬送経路に沿って搬送される、前記第1加熱工程で加熱された前記被処理物をレーザ以外の方法で加熱する第2加熱工程と
を備える、
被処理物の加熱処理方法。
【符号の説明】
【0074】
10 熱処理装置
12 真空ポンプ
12a~12e 真空バルブ
15 制御装置
20 被処理物
22 巻出ロール
24 巻取ロール
30 巻出部
30a,40a,50a,60a,70a 外壁
32 第1軸
34 ローラ
40 第1加熱部
40a1 窓
40b カバー
40c 遮蔽板
42 レーザ装置
42a 発振器
42b 伝送ファイバ
42c 加工ヘッド
44 サポートローラ
46 温度検出装置
48 出力制御装置
50 第2加熱部
52 加熱装置
54a~54d ガイドローラ
60 冷却部
62 冷却ローラ
68 ガイドローラ
70 巻取部
72 第2軸
74 ローラ
80,82 搬送装置
90~93 連結部
90a,93a 扉
P レーザ光
【要約】
【課題】帯状の被処理物の処理効率向上。
【解決手段】熱処理装置10は、搬送装置80,82と、第1加熱部40と、第2加熱部50とを備えている。搬送装置80,82は、予め定められた搬送経路に沿って帯状の被処理物20を搬送する。第1加熱部40は、被処理物20にレーザ光Pを照射し加熱するレーザ装置42を有している。第2加熱部50は、第1加熱部40で加熱された被処理物20をレーザ加熱以外の方法で加熱する加熱装置52を有している。
【選択図】
図3