(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法
(51)【国際特許分類】
A41G 5/00 20060101AFI20240410BHJP
A41G 3/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A41G5/00
A41G3/00 J
(21)【出願番号】P 2023189196
(22)【出願日】2023-11-06
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝崎 龍二
(72)【発明者】
【氏名】板山 剛
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-096722(JP,B2)
【文献】特開2010-053489(JP,A)
【文献】国際公開第2006/025153(WO,A1)
【文献】特開2005-036336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 5/00
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛材(AH)を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
自毛(H)の頭皮(S)に近い位置に、「抜け止め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤で形成し、
自毛(H)における前記第1鋲部(1)と頭皮(S)の間に、毛材(AH)を巻き付け、
自毛(H)に毛材(AH)を巻き付けた部分を、第1鋲部(1)と共に挟み、「位置決め」として機能する第2鋲部(2)を該自毛(H)に光硬化接着剤で形成する、ことを特徴とする光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項2】
毛材を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
頭髪の自毛(H)が通過する程度の内径を有する管状部材(5)に毛材(AH)を取り付け、
自毛(H)の頭皮(S)に近い位置に、「抜け止め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤で形成し、
前記管状部材(5)を、第1鋲部(1)で通過させて自毛(H)に掛け止め、
自毛(H)に通した管状部材(5)を、第1鋲部(1)と共に挟み、「位置決め」として機能する第2鋲部
(2
)を該自毛(H)に光硬化接着剤で形成する、ことを特徴とする光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項3】
前記管状部材(5)に第1鋲部(1)を通過させ、該第1鋲部(1)から抜けないように、該管状部材(5)を潰して自毛(H)に掛け止める、ことを特徴とする請求項
2に記載の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項4】
毛材を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
頭髪の自毛(H)が通過する程度の内径を有する2個の管状部材(5)の間に、幹毛材(MAH)を連結し、該幹毛材(MAH)に複数本の枝毛材(BAH)を取り付け、
自毛(H)の頭皮(S)に近い位置の2か所に、「抜け止め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤でそれぞれ形成し、
各管状部材(5)を2か所の第1鋲部(1)にそれぞれ通過させ、各第1鋲部(1)から抜けないように、各管状部材(5)を潰して自毛(H)に掛け止める、ことを特徴とする光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項5】
毛材を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
頭髪の自毛(H)が通過する程度の内径を有する2個の管状部材(5)の間に、幹毛材(MAH)を連結し、該幹毛材(MAH)に複数本の枝毛材(BAH)を取り付け、
自毛(H)の頭皮(S)に近い位置の2か所に、「位置決め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤でそれぞれ形成し、
各管状部材(5)を2か所の第1鋲部(1)にそれぞれ通過させ、各第1鋲部(1)から抜けないように、各管状部材(5)を潰して自毛(H)に掛け止め
各管状部材(5)を2か所の第1鋲部(1)と共に挟むように、「位置決め」として機能する第2鋲(2)を光硬化接着剤で各自毛(H)に形成する、ことを特徴とする光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項6】
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)にLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことを特徴とする請求項
4に記載の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項7】
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)と第2鋲部(2)にLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことを特徴とする請求項
1、2又は5に記載の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項8】
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)にLED(発光ダイオード)の紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことを特徴とする請求項
4に記載の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【請求項9】
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)と第2鋲部(2)にLED(発光ダイオード)の紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことを特徴とする請求項
1、2又は5に記載の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増毛用の毛材(毛髪)を自毛に止着する際に、光硬化性の接着剤を用いて固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増毛する際には、人工毛を頭髪に結び付けて止着している。例えば、結着式の増毛方法は、頭髪の1本1本から太めの自毛(地毛)を丁寧に選び出し、その選んだ1本の自毛に2~8本の人工毛を地毛の根元近くに結び付け、髪を徐々に増やしていく技術である。
【0003】
増毛方法に関する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特公平7-96722号公報「増毛法および増毛用具」のように、地肌に近い部分に結び目を設けた自毛の、当該結び目と地肌との間に増毛用毛髪を結び付けて、当該増毛用毛髪が前記結び目より先に移動しないようにした増毛法、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の「増方法」は、人工毛(毛材)を止着する際に、自毛の地肌に近い部分に結び目を設け、この結び目に人工毛(毛材)を巻き付け、抜け止めとして機能させている。この自毛に結び目を作る作業は煩雑な作業であった。また、結び目を作る作業に長時間を要するという問題を有していた。
【0006】
本発明の発明者は、この抜け止めとして機能する自毛の結び目は、接着剤であれば容易に形成できることに着目した、特に、光硬化性の接着剤を用いることでより簡単かつ短時間でできると考えた。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、人工毛(毛材)を固定する部材に光硬化接着剤を用いることで、短時間で抜け止めを作成することができると共に、この毛材の締付状態の位置の修正、締付力を容易に修正することができる光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、毛材(AH)を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
自毛(H)の頭皮(S)に近い位置に、「抜け止め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤で形成し、
自毛(H)における前記第1鋲部(1)と頭皮(S)の間に、毛材(AH)を巻き付け、
自毛(H)に毛材(AH)を巻き付けた部分を、第1鋲部(1)と共に挟み、「位置決め」として機能する第2鋲部(2)を該自毛(H)に光硬化接着剤で形成する、ことを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、毛材を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
頭髪の自毛(H)が通過する程度の内径を有する管状部材(5)に毛材(AH)を取り付け、
自毛(H)の頭皮に近い位置に、「抜け止め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤で形成し、
前記管状部材(5)を、第1鋲部(1)で通過させて自毛(H)に掛け止め、
自毛(H)に通した管状部材(5)を、第1鋲部(1)と共に挟み、「位置決め」として機能する第2鋲部(2)を該自毛(H)に光硬化接着剤で形成する、ことを特徴とする。
前記管状部材(5)に第1鋲部(1)を通過させ、該第1鋲部(1)から抜けないように、該管状部材(5)を潰して自毛(H)に掛け止める、ことができる。
【0012】
第3の本発明は、毛材を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
頭髪の自毛(H)が通過する程度の内径を有する2個の管状部材(5)の間に、幹毛材(MAH)を連結し、該幹毛材(MAH)に複数本の枝毛材(BAH)を取り付け、
自毛(H)の頭皮に近い位置の2か所に、「抜け止め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤でそれぞれ形成し、
各管状部材(5)を2か所の第1鋲部(1)にそれぞれ通過させ、各第1鋲部(1)から抜けないように、各管状部材(5)を潰して自毛(H)に掛け止める、ことを特徴とする。
【0013】
または、毛材を人の頭髪に止着する際に、光硬化接着剤を用いてその人の頭髪に固定する光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法であって、
頭髪の自毛(H)が通過する程度の内径を有する2個の管状部材(5)の間に、幹毛材(MAH)を連結し、該幹毛材(MAH)に複数本の枝毛材(BAH)を取り付け、
自毛(H)の頭皮に近い位置の2か所に、「位置決め」として機能する第1鋲部(1)を光硬化接着剤でそれぞれ形成し、
各管状部材(5)を2か所の第1鋲部(1)にそれぞれ通過させ、各第1鋲部(1)から抜けないように、各管状部材(5)を潰して自毛(H)に掛け止め
各管状部材(5)を2か所の第1鋲部(1)と共に挟むように、「位置決め」として機能する第2鋲部(2)を光硬化接着剤で各自毛(H)に形成する、ことを特徴とする。
【0014】
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)にLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことができる。
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)と第2鋲部(2)にLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことができる。
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)にLED(発光ダイオード)の紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことができる。
前記光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)と第2鋲部(2)にLED(発光ダイオード)の紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる、ことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の毛材の装着方法では、自毛(H)に毛材(AH)を固定するための第1鋲部(1)と第2鋲部(2)に光硬化接着剤を用い、その硬化させる際にLED(発光ダイオード)の照射光を当てている。このLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光又は紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させることができる。従来の自然に硬化するときに比べて半分以下の時間で増毛作業を終了させることができる。
毛材(AH)は第1鋲部(1)と第2鋲部(2)の間に挟まれて固定されているので、自毛(H)での固定位置がずれたり、自毛(H)から簡単に外れることがない。増毛処理を安心して施してもらうことができる。
【0016】
第1の本発明では、自毛(H)に毛材(AH)の巻き付けた部分に光硬化接着剤を直接塗布していないので、光硬化接着剤から成る第1鋲部(1)と第2鋲部(2)が硬化した後でも毛材(AH)の修正処理が可能になる。例えば、毛材(AH)を締め付ける位置を修正したり、毛材(AH)の締め付け力が緩いときは、再度締め直すことができる。また毛材(AH)の破損があったときは容易に交換もすることができる。
【0017】
第2の本発明の管状部材(5)を用いた毛材の装着方法では、複数本の自毛(H)に管状部材(5)を掛け止めることができ、毛材(AH)を強固に頭髪に止着することができる。頭部の1か所に管状部材(5)を自毛(H)に取り付けるだけで、多数本の増毛が可能となる。この第2の本発明についても、潰す前の管状部材(5)については、種々の修正処理ができる。
【0018】
第3の本発明に係る2個の管状部材(5)の間に、幹毛材(MAH)を連結し、この幹毛材(MAH)に複数本の枝毛材(BAH)を取り付けた毛材の装着方法では、頭部の2か所に生えている自毛(H)に管状部材(5)を掛け止めるだけで、幹毛材(MAH)に多数の枝毛材(BAH)が取り付けられているので多数本の増毛が可能となる。この第3の本発明についても、潰す前の管状部材(5)については、種々の修正処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1の作業手順を示す説明図であり,(a)は処理前の自毛の状態、(b)は自毛に第1鋲部を形成した状態、(c)は自毛に毛材を巻き付ける状態、(d)は自毛に毛材を締め付けた状態、(e)は自毛に第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
【
図3】毛材を締め付ける位置を修正する状態を示す説明図であり、(a)は修正前の状態、(b)は修正後の状態である。
【
図4】自毛Hが成長したときに毛材を締め付ける位置を修正する状態を示す説明図であり、(a)は毛髪の成長前の状態、(b)は毛髪の成長後であって修正前の状態、(c)は修正後の状態である。
【
図5】実施例1の変形例の作業手順を示し、(a)は毛材にループ部を作った状態、(b)は自毛に第1鋲部を形成した状態、(c)は自毛に毛材のループ部を通過させる状態、(d)は自毛に毛材のループ部を締め付けた状態、(e)は自毛に第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
【
図6】実施例1の変形例の作業手順を示すフロー図である。
【
図7】実施例2の作業手順を示す説明図であり,(a)は処理前の自毛の状態、(b)は毛材に管状部材を取り付けた状態、(c)は自毛に第1鋲部を形成した状態、(d)は自毛に管状部材を差し込む状態、(e)は管状部材が第1鋲部を通るように通過させ、第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
【
図9】実施例2の管状部材の変形例を示す拡大正面図であり、(a)はラッパ形状、(b)は略円錐形状。(c)は巻き付け形状の部材である。
【
図10】実施例3の作業手順を示す説明図であり,(a)は処理前の複数本の自毛の状態、(b)はライン毛材に管状部材を取り付けた状態、(c)は2か所の自毛に第1鋲部をそれぞれ形成した状態、(d)は各管状部材が第1鋲部を通るように通過させた状態である。
【
図11】実施例3の作業手順を示す説明図であり,(e)は各管状部材が第1鋲部を通るように通過させ、第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
【
図12】実施例3の作業手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法は、自毛の頭皮に近い位置に、「抜け止め」として機能する第1鋲部を光硬化接着剤で形成し、この第1鋲部と頭皮の間に、毛材を巻き付ける装着方法である。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
<自毛に直接毛材を締め付ける構成>
図1は実施例1の作業手順を示す説明図であり,(a)は処理前の自毛の状態、(b)は自毛に第1鋲部を形成した状態、(c)は自毛に毛材を巻き付ける状態、(d)は自毛に毛材を締め付けた状態、(e)は自毛に第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
図2は実施例1の作業手順を示すフロー図である。なお、図示例では自毛を1本のみで表示しているが。1本に限定されず複数本でもよい。同じく毛材についても1本のみで表示しているが、1本に限定されず複数本でもよい。
実施例1の毛材の装着方法は、毛材AHを自毛Hに巻き付けて人の頭髪に固定する増毛方法である。増毛する人の自毛H(
図1(a))に、第1鋲部1を光硬化接着剤で形成する(
図1(b))。光硬化接着剤を用いた第1鋲部1は、その硬化させる際にLED(発光ダイオード)の照射光を当てている。このLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光又は紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させることができる。
【0022】
この第1鋲部1は、自毛Hの頭皮Sに近い位置において、「抜け止め」として機能する。第1鋲部1の外径は、自毛Hの直径より長ければ良い。第1鋲部1が大きすぎると隣接する自毛に接着剤が付着しやすくなる。そこで、自毛Hの直径の2~3倍程度の長さがあれば十分である。
図示例では第1鋲部1の形状は球形状を示しているが、正確な球形状にする必要はなく、「抜け止め」として機能する形状であれば良いので、滴(しずく)形状、ラグビーボールのような楕円体(長球)形状など種々の形状にすることができる。
【0023】
次に、この自毛Hに毛材AHを巻き付ける際に、この第1鋲部1により、毛材AHが外れづらくなり、毛材AHを迅速に巻き付けることができる。しかも、「抜け止め」として機能する第1鋲部1は光硬化接着剤を用いているので、自毛Hに塗布した直後の数秒で硬化する。次の作業を効率よく進めることができる。
【0024】
最後に、自毛Hに毛材AHを巻き付けた結び目部分Kに連続して、第2鋲部2を光硬化接着剤で形成する。この第2鋲部2は、第1鋲部1と共に巻き付けた結び目部分Kを挟み、「位置決め」として機能する。この第2鋲部2についても「位置決め」として機能する形状であれば良いので、球形状に限定されず、滴(しずく)形状、楕円体(長球)形状など種々の形状にすることができる。
【0025】
なお、この第2鋲部2は、必ずしも自毛Hに形成する必要はない。簡易的な増毛の場合は第1鋲部1の「抜け止め」のみでも自毛Hの締め付け固定をすることができる。
【0026】
第2鋲部2も光硬化接着剤を用い、その硬化させる際にLED(発光ダイオード)の照射光を当てている。第1鋲部1と同様に、このLED(発光ダイオード)の可視領域の照射光又は紫外線の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させることができる。従来の自然に硬化するときに比べて半分以下の時間で増毛作業を終了させることができる。
【0027】
毛材AHの結び目部分Kは、第1鋲部1と第2鋲部2の間に挟まれて固定されているので、自毛Hでの固定位置がずれたり、自毛Hから簡単に外れることがない。増毛処理を施してもらう人は、増毛処理を安心して施してもらうことができる。第1鋲部1のみのときは「抜け止め」として機能する。
【0028】
本発明に用いる光硬化接着剤は、紫外線硬化型、可視光硬化型のいずれでもよい。
例えば、アクリル系接着剤又はエポキシ系接着剤がある。光硬化接着剤は、各々の光照射装置により発生する波長領域に高感度に反応し、重合硬化する室温硬化型の接着剤を用いる。また、様々な接着構造に対応するため、硬化機構が紫外線と嫌気、または可視光と紫外線による複合硬化する接着剤を用いることも可能である。
【0029】
<毛材位置の修正例1>
図3は毛材を締め付ける位置を修正する状態を示す説明図であり、(a)は修正前の状態、(b)は修正後の状態である。
実施例1の毛材の装着方法は、自毛Hに毛材AHの巻き付けた結び目部分Kに光硬化接着剤(第1鋲部1、第2鋲部2)を直接塗布していない。これらの第1鋲部1、第2鋲部2が硬化した後でも毛材AHの修正処理が可能になる。例えば、毛材AHを締め付ける位置を
図3(a)の位置から
図3(b)の位置に修正することができる。毛材AHの締め付け力が緩いときは、再度締め直すことができ、また毛材AHの破損があったときは容易に交換することができる。
【0030】
<毛材位置の修正例2>
図4は自毛が成長したときに毛材を締め付ける位置を修正する状態を示す説明図であり、(a)は毛髪の成長前の状態、(b)は毛髪の成長後であって修正前の状態、(c)は修正後の状態である。
自毛Hの成長と共に毛材AHの位置が頭皮Sから離れていく。そこで、第2鋲部2を除去剤で除去し、毛材AHの結び目部分Kを頭皮Sに近づけるように移動させる。その後この結び目部分Kが抜けにように自毛Hに新たな第3鋲部3を光硬化接着剤で形成する。この第3鋲部3で結び目部分Kを挟むように第4鋲部4を光硬化接着剤で形成する。これにより、毛材AHの巻き付けた結び目部分Kの位置を頭皮Sの近くに移動させることができる。なお、第1鋲部1はそのまま自毛Hを残しておいても良いし、除去剤で除去しても良い。
【0031】
<実施例1の変形例>
図5は実施例1の変形例の作業手順を示し、(a)は毛材にループ部を作った状態、(b)は自毛に第1鋲部を形成した状態、(c)は自毛に毛材のループ部を通過させる状態、(d)は自毛に毛材のループ部を締め付けた状態、(e)は自毛に第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
図6は実施例1の変形例の作業手順を示すフロー図である。なお、毛材AHに予めループ部Lを形成する手順以外は実施例1の手順と略同じなためその説絵は省略する。 上述した実施例1の方法では、自毛Hの第1鋲部1に毛材AHを巻き付け、その後締め付けて止着する方法である。この実施例1の変形例では、毛材AHの結び目部分Kにループ部Lを予め形成しておく方法である。毛材AHの締め付けは、第1鋲部1に毛材AHを掛け止めた後に行う必要はない。予め締め付ける部分となるループ部Lを毛材AHに形成して置く。このように構成すれば、毛材AHの止着作業を短時間で終了させることができる。
【0032】
この実施例1の変形例においても、
図5(b)に示すように、自毛Hに第1鋲部1の光硬化接着剤を硬化させる際にLED(発光ダイオード)の照射光を当てている。更に、
図5(f)に示すように、第2鋲部2の光硬化接着剤を硬化させる際にもLEDの照射光を当てている。
【実施例2】
【0033】
<自毛に直接毛材を締め付ける構成>
図7は実施例2の作業手順を示す説明図であり,(a)は処理前の自毛の状態、(b)は毛材に管状部材を取り付けた状態、(c)は自毛に第1鋲部を形成した状態、(d)は自毛に管状部材を差し込む状態、(e)は管状部材が第1鋲部を通るように通過させ、第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。
図8は実施例2の作業手順を示すフロー図である。
なお、図示例では自毛を1本のみで表示しているが。1本に限定されず複数本でもよい。
実施例2の毛材の装着方法は、毛材AHをチップと称される管状部材5を用いて自毛Hに掛け止めて人の頭髪に固定する増毛方法である。実施例2の作業手順は、管状部材5を用いたこと以外の手順は、実施例1と略同様である。
【0034】
実施例2の毛材の装着方法は、先ず、金属製又はプラスチック製の管状部材5に毛材AHを複数本取り付けたものを準備する(
図7(b))。
人の自毛Hについては、実施例1と同様に、「抜け止め」として機能する第1鋲部1を光硬化接着剤で形成する(
図7(c))。この第1鋲部1を硬化させる際に、LED(発光ダイオード)の照射光を当てている。第1鋲部1の外径は、管状部材5より短く形成する。この管状部材5を第1鋲部1に通過させるためである(
図7(d))。実施例2においても、第1鋲部1の形状は球形状に限定されず、滴(しずく)形状、楕円体(長球)形状など種々の形状にすることができる。
【0035】
次に、この自毛Hに毛材AHの管状部材5を掛け止める際に、実施例2の毛材の装着方法でも自毛Hに第1鋲部1を形成したので、管状部材5が外れづらくなる(
図5(e))。しかも、「抜けとめ」として機能する第1鋲部1は光硬化接着剤を用いているので、自毛に塗布した直後の数秒で硬化する。次の作業を効率よく進めることができる。
【0036】
最後に、自毛Hに管状部材5を掛け止めた部分に連続して、第2鋲部2を光硬化接着剤で形成する。この第2鋲部2に、LED(発光ダイオード)の照射光を当てて硬化させる(
図7(f))。この第2鋲部2は、第1鋲部1と共に管状部材5を挟み、「位置決め」として機能する。この第2鋲部2についても上述したように「位置決め」として機能する形状であれば種々の形状にすることとができる
なお、実施例2の毛材の装着方法においても、この第2鋲部2は、必ずしも自毛Hに形成する必要はない。簡易的な増毛の場合は第1鋲部1の「抜け止め」のみでも自毛の締め付け固定をすることができる。
管状部材5は第1鋲部1と第2鋲部2の間に挟まれて固定されているので、自毛Hでの固定位置がずれたり、自毛Hから簡単に外れることがない。増毛処理を施してもらう人は、増毛処理を安心して施してもらうことができる。第1鋲部1のみのときは「抜け止め」として機能する。
【0037】
実施例2の毛材の装着方法においても、管状部材5は自毛Hに光硬化接着剤(第1鋲部1、第2鋲部2)を直接塗布していない。これらの第1鋲部1、第2鋲部2が硬化した後でも管状部材5の修正処理が可能になる。例えば、管状部材5を潰して固定する前であればその位置を修正することができ、また管状部材5の破損があったときは容易に交換することができる。
【0038】
なお、実施例2の毛材の装着方法において、自毛Hに第2鋲部2を形成した後に、自毛Hに管状部材5を通し、その後に第1鋲部1を形成する順番でもよい。
【0039】
<実施例2の変形例>
図9は実施例2の管状部材の変形例を示す拡大正面図であり、(a)はラッパ形状、(b)は略円錐形状、(c)は巻き付け形状の部材である。 実施例2の変形例は、管状部材5の形状を変形させたものである。管状部材5は単純な円筒形状に限定されない。
図9(a)に示すように、自毛Hに差し込みやすいように、管状部材5の一端は拡開するように形成したものでもよい。いわゆる「ラッパ形状」にすることができる。このように自毛Hを差し込む位置が広がっていると、自毛Hを容易に差し込むことができる。
【0040】
また、管状部材5は自毛Hに差込みやすく、その後潰した際に自毛Hから容易に外れなければ良いので、
図9(b)に示すような、略円錐形状にしたものでも良い。更に、当初から管形状を呈していなくてもよい。例えば、
図9(c)に示すように、横断面形状がV字形状を有し、これを自毛Hの側方から挟むように取り付け、その後潰すように変形させて自毛に止着する方法でもよい。
【実施例3】
【0041】
図10は実施例3の作業手順を示す説明図であり,(a)は処理前の複数本の自毛の状態、(b)はライン毛材に管状部材を取り付けた状態、(c)は2か所の自毛に第1鋲部をそれぞれ形成した状態、(d)は各管状部材が第1鋲部を通るように通過させた状態である。
図11は実施例3の作業手順を示す説明図であり、(e)は各管状部材が第1鋲部を通るように通過させ、第2鋲部を形成した状態、(f)は第2鋲部を硬化させる状態である。なお、図示例では自毛を1本のみで表示しているが、1本に限定されず複数本でもよい。
実施例3の毛材の装着方法は、いわゆる「ライン増毛方法」と称される方法である。この方法は、多数本の毛材(枝毛材BAH)を掛け止めた幹毛材MAHの両端それぞれに管状部材5を取り付けたものを自毛Hに止着する方法であり、1回の処理で多数本の増毛を可能にした装着方法である。
図12は実施例3の作業手順を示すフロー図である。
実施例3の毛材の装着方法は、幹毛材MAHを2か所の管状部材5を用いて自毛Hに掛け止めて人の頭髪に固定する増毛方法である。実施例3の作業手順は、管状部材5を2か所に止着すること以外の手順は、実施例2と略同様である。
【0042】
実施例3の毛材の装着方法は、先ず、幹毛材MAHの複数か所に枝毛材BAHを取り付ける。この幹毛材MAHの両端に管状部材5をそれぞれに取り付けたものを準備する(
図10(b))。図示例では1本の幹毛材MAHに5束の枝毛材BAHを取り付けた例を示しているが、この数に限定されない。
【0043】
人の自毛Hについては、実施例1と実施例2と同様に、「抜け止め」として機能する第1鋲部1を光硬化接着剤でそれぞれに形成する(
図10(c))。図示例では、幹毛材MAHの2か所に管状部材5を取り付けているので、第1鋲部1は2カ所で1組となる。実施例3においても、第1鋲部1の形状は球形状に限定されず、滴(しずく)形状、楕円体(長球)形状など種々の形状にすることができる。
【0044】
次に、この自毛Hに幹毛材MAHの管状部材5を掛け止める際に、実施例3の毛材の装着方法でも自毛Hの2カ所に第1鋲部1を形成したので、管状部材5が外れづらくなる(
図10(d))。しかも、「抜けとめ」として機能する第1鋲部1は光硬化接着剤を用いているので、自毛に塗布した直後の数秒で硬化する。次の作業を効率よく進めることができる。
【0045】
最後に、自毛Hに管状部材5を掛け止めた部分に連続して、第2鋲部2を光硬化接着剤で形成する(
図11(e))。この第1鋲部1と第2鋲部2に、LED(発光ダイオード)の照射光を当てて硬化させる(
図11(f))。第2鋲部2は、第1鋲部1と共に管状部材5を挟み、「位置決め」として機能する。
【0046】
実施例3の毛材の装着方法においても、管状部材5は自毛Hに光硬化接着剤(第1鋲部1、第2鋲部2)を直接塗布していない。これらの第1鋲部1、第2鋲部2が硬化した後でも管状部材5の修正処理が可能になる。例えば、管状部材5を潰して固定する前であればその位置を修正することができ、また管状部材5の破損があったときは容易に交換することができる。
【0047】
なお、本発明は、人工毛(毛材AH)を固定する部材に光硬化接着剤を用いることで、短時間で抜け止めを作成することができると共に、この毛材AHの締付状態の位置の修正、締付力を容易に修正することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の光硬化接着剤を用いた毛材の装着方法は、人の頭部を増毛する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1鋲部
2 第2鋲部
5 管状部材
MAH 幹毛材
BAH 枝毛材
AH 毛材
H 自毛
S 頭皮
K 結び目部分
L ループ部
【要約】
【課題】人工毛(毛材)を固定する部材に光硬化接着剤を用いることで、短時間で抜け止めを作成することができると共に、この毛材の締付状態の位置の修正、締付力を容易に修正することができる。
【解決手段】自毛Hの頭皮Sに近い位置に、「抜け止め」として機能する第1鋲部1を光硬化接着剤で形成し、自毛Hにおける第1鋲部1と頭皮Sの間に、毛材AHを巻き付け、自毛Hに毛材AHを巻き付けた部分を、第1鋲部1と共に挟み、「位置決め」として機能する第2鋲部2を自毛Hに光硬化接着剤で形成する、毛材の装着方法である。
【選択図】
図1