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特許7470248タイヤの外来ノイズ・シミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】タイヤの外来ノイズ・シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/15 20200101AFI20240410BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240410BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240410BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20240410BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20240410BHJP
【FI】
G06F30/15
B60C19/00 Z
G01M17/02
G06F30/23
G06F111:10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023501133
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021068533
(87)【国際公開番号】W WO2022008457
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】102020000016372
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】マルコ エミリアーニ
(72)【発明者】
【氏名】ガエターノ フォルトゥナート
(72)【発明者】
【氏名】ビンチェンツォ シアラヴォラ
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-230458(JP,A)
【文献】特開2009-161115(JP,A)
【文献】Yintao Wei et al.,A Simulation Methodology for Tire/Road Vibration Noise analysis,Proceedings of the 43rd International Congress on Noise Control Engineering,2014年11月16日,Retrieved from the Internet: <URL: https://www.acoustics.asn.au/conference_proceedings/INTERNOISE2014/papers/p833.pdf>
【文献】Souli Mhamed et al.,BEM Methods For acoustic and vibroacoustic problems in LSDYNA,2012年12月14日,Retrieved from the Internet: <URL: https://dynamore.de/de/download/papers/dynamore/de/download/papers/ls-dyna-forum-2012/documents/multiphysics-1-1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/15
B60C 19/00
G01M 17/02
G06F 30/23
G06F 111/10
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが発生する外来ノイズ、特に転動するタイヤの通過騒音(PBN)のシミュレーションをコンピュータで実現する方法であって、
(i) 転動するタイヤの構造モデルを用意するステップであって、該構造モデルはモデル化されるパターンの特徴を含み、該モデル化されるパターンの特徴は、横溝、サイプ、及びシャンファーのうちの1つ以上を含み、該構造モデルは有限要素(FE)モデルであることが好ましく、前記構造モデルは複数のノードを有する構造メッシュを含み、前記構造メッシュのノードの各々の瞬時位置を、モデル化された基準面との相互作用に起因する振動によって生じるタイヤの構造変形に基づいて計算するステップと、
(ii) 前記タイヤの構造モデルをマッピング手順への入力として提供するステップであって、該マッピング手順はタイヤの音響モデルを出力し、該音響モデルは複数のノードを有する音響メッシュを含み、前記マッピング手順は、
(iia) 前記音響メッシュノード毎に、特定のサンプリング瞬時における、前記構造メッシュの複数の最寄りのノード、好適には前記構造メッシュにおける1~8個のノードを選択するサブステップと、
(iib) 前記音響メッシュノードについて、振動変数の値を、前記構造モデルの前記最寄りのノードの前記振動変数の値から開始して、前記最寄りのノードの前記振動変数の値の加重平均値として計算するサブステップであって、前記加重平均値は距離の逆数の基準を用いて計算されるサブステップと、
(iic) 前記音響メッシュノード毎に、前記振動変数を周波数領域内で得るサブステップとを含むステップと、
(iii) 前記タイヤの音響モデルが発生する音圧場を計算するステップであって、サブステップ(iib)の前記振動変数を境界条件として用いるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記転動するタイヤの構造モデルが、軸対称のタイヤのモデルまたは非軸対称のタイヤのモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記振動変数が、速度、加速度、及び変位のうちから選択した振動変数である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マッピング手順が、前記構造メッシュのノードの各々の瞬時位置のみを考慮に入れ、角度位置もタイヤの角速度も考慮しない、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
陽的FEMソルバーを用いて、前記転動するタイヤの構造モデルを得る、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記サブステップ(iic)が、約20~2000Hzの範囲内、好適には500~2000Hzの範囲内で動作する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記サブステップ(iia)~(iic)において、前記構造メッシュ及び前記音響メッシュを共に、複数個の、好適には2~20個のサブセクションに分割し、前記サブステップ(iia)~(iic)を前記サブセクションの各々に対して個別に実行する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記加重平均値を次式:
【数1】
のように計算し、ここに、
A=正規化係数、
j=前記音響メッシュのノードのうちのj番目のノードにおける振動
i=前記構造メッシュのノードのうちのi番目のノードにおける振動
i,j=前記構造メッシュのノードのうちのi番目のノードと前記音響メッシュのノードのうちのj番目のノードとの間の距離
である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法を含む、タイヤの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、タイヤが発生する外来ノイズ、特に転動するタイヤの通過騒音(PBN:Pass-by Noise:パズバイノイズ)のシミュレーションのコンピュータ実現方法に関するものである。この方法は、全種類の外来ノイズ問題、即ちタイヤ音パワー計算またはタイヤ放射ノイズに適している。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タイヤ外来ノイズの低減は、特に他の性能及び現在/将来の規制制限との重要なトレードオフを考慮すれば、設計者及び製造業者にとって非常に挑戦的な任務になってきた。
【0003】
ノイズ低減は、構造変更によって、即ちタイヤ構成部品の材料及び幾何学的形状に影響を与えることによって、あるいはタイヤのトレッド(踏面)パターンの幾何学的特徴に特化した設計によって達成することができる。
【0004】
近頃、音響FEM(Finite Element Method:有限要素法)シミュレーションが、パターン及び構造的特徴を考慮に入れることによって、タイヤ外来ノイズの効果的改善に向けて技術者を支援するためのツールとして用いられてきた。
【0005】
しかし、現在技術において利用可能なFEMシミュレーション技術及びツールも、重大な限界を示す。特に、現在のFEMツールの能力は、転動しないタイヤの音響シミュレーションに限定され、転動するタイヤのより現実的な事例に詳細なトレッドパターン・モデルで対処するように強化された方法は存在しない。
【0006】
重要点は、タイヤの音響挙動のマッピングでもあり、異なる補間技術が、異なる精度を有することがあり、多岐の結果をもたらすことがある。適切なタイヤのモデル化に必要な多数のノード及び補間ステップを考慮すれば、計算時間も重要なパラメータである。
【0007】
シミュレーション・プロセスでは、タイヤパターンの存在も重要な要素である、というのは、横方向のタイヤ溝がタイヤの幾何学的形状を軸対称でなくして、一部の既知技術の補間アルゴリズムが役に立たない状況にするからである。
【0008】
従って、タイヤの音響挙動のシミュレーションをするために利用可能な現在のFEM技術及びツールは、タイヤの外来ノイズ、特にPBNを分析し低減するためにタイヤの設計者及び製造業者を支援するに当たり、効果的かつ効率的であるものと判明していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の根底にある技術的課題は、最先端技術を参照して上述した欠点の少なくとも一部を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、請求項1によるシミュレーション方法によって解決される。
本発明の好適な特徴は従属請求項の対象である。
【0011】
本発明は、 全面パターンの転動するタイヤの外来ノイズ・シミュレーション用の方法及びシステムを提供する。特に、このシミュレーションは、全パターンの特徴、例えば横方向の溝、サイプ(細溝)、シャンファー(面取り)を含むことができ-軸対称モデルにおける溝だけではない。
【0012】
本発明の好適例では、上記方法が以下に要約する2つの主要ステップを含む。
・転動するタイヤのFEMシミュレーションを実行する。実際のタイヤの全部の構造及びパターンの特徴を有するタイヤに対して、陽的FEMシミュレーションを実行することが好ましい。シミュレーション環境内で、タイヤを基準面(道路またはドラム)に対して載荷して、所望の速度で回転させる。基準面は、完全に平滑にすることも、実際のアスファルトのより現実的な幾何学的特徴(例えば、微小または粗大な粗さ)を含むこともできる。このシミュレーションは、時間領域でラグランジュ法を用いて実行することが好ましい。好適例では、ノードを有するメッシュによってタイヤを表現して、サンプリングの瞬時毎に、時間と共に位置が変化するノード毎に、タイヤ振動を計算する。このようにして、サンプリングの瞬時毎に振動マップが得られる。後続する音響シミュレーション・ステップと区別するために、転動するタイヤのFEMシミュレーションを以後「構造」シミュレーションとして定義し、使用するメッシュを「構造メッシュ」として定義する。タイヤの構造メッシュは、タイヤの全構成部品及び全特徴(即ち、タイヤの内部からタイヤの外表面-接地するトレッドまで)を含む3D(three-dimensional:3次元)または2D(two-dimensional:2次元)要素で構成されるメッシュである。
・マッピング・プロセスを実行して、前のステップの構造シミュレーション結果から始まる後続ステップの走行中の音響シミュレーションを可能にする。実際には、大部分の効率的な音響ソルバー(問題解決プログラム)は、静止メッシュ(移動しないノード)を有する周波数領域内で機能することを考慮すれば、(タイヤの転動に起因してノードが時間と共に移動する)前のステップの構造シミュレーションから来るデータを直接使用することはほとんど不可能である。
マッピング・プロセスはカスタマイズされたアルゴリズムに基づき、このアルゴリズムは、タイヤの転動シミュレーションの出力、即ち振動マップまたは転動メッシュ(即ち構造メッシュ)を非転動メッシュ(以後タイヤの音響メッシュと称する)に変換する。このステップは、振動を、ラグランジュ領域(転動メッシュ)からオイラー領域(非転動メッシュ)に変換することが好ましく、後者を音響シミュレーション用に用いる。タイヤの音響メッシュは2D要素のみで構成されるメッシュであり、タイヤの構造メッシュの外層(または表皮)をコピー/再現する(但し必ずしも一致しない)。具体的実現では、タイヤの音響メッシュを、関心事の周波数範囲に応じた分解能(即ち、メッシュサイズ)のレベルに簡略化する(例えば、より粗くして、比較的小さい細部を除去する)。
・音響シミュレーションを実行する。前のステップのマッピング・プロセスから得られる振動場を、タイヤの外側の音響的挙動のFEMシミュレーションの境界条件として用いる。
【0013】
本発明は、外来ノイズの要件を有する全てのタイヤにおける、タイヤ設計段階用、例えばモールド(金型)設計及び特性規格の両者用のツールを提供する。
【0014】
特に、このシミュレーション方法は、物理的な実験的検査を置き換えるのではなく、設計によってタイヤを改良することを可能にする。
【0015】
本発明の他の利点、特徴及び応用形態は、以下の具体的実施形態の詳細な説明において説明し、この説明は例として提供し限定を目的としない。
【0016】
次の添付した図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好適な実施形態によるシミュレーション方法のステップのうちマッピング・プロセス中に使用する構造的タイヤメッシュ及び簡略化した音響的タイヤメッシュを示す図である。
図2】本発明の好適な実施形態による具体的なシミュレーションのサブステップの概略表現を示す図である。
図3図3A及び3Bの各々は、それぞれの周波数における、本発明の好適な実施形態によって得られる種類(特にODS、動作たわみ形状)の振動マップを表すグラフを示す図である。
図4図4Aは、実験的検査から得られるノイズ・スペクトルを表すのに対し、図4Bは、本発明による方法の一実施形態から得られるノイズ・スペクトルを表し;本発明の目的は、同じノイズ発生現象を表すような同様なスペクトル形状を有することにある。
図5図1のマッピング・プロセス中に補間を加速するために、横方向のセクション内での構造的タイヤメッシュ及び音響的タイヤメッシュの好適な再分割を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の好適な実施形態の詳細な説明
タイヤの外来ノイズ、特に通過騒音(PBN)は、タイヤ/道路の相互作用によって誘発される振動に起因し、この相互作用がノイズに変換される。本発明によれば、転動するタイヤの音響シミュレーションを実行する。好適な実施形態では、このシミュレーションは次のステップに基づく。
【0019】
第1のステップでは、転動するタイヤの構造シミュレーションを実行して、タイヤ外表面上の、即ちタイヤの輪郭におけるタイヤ振動を計算する。
【0020】
このステップは、現在技術において利用可能な有限要素法(FEM)及び有限要素解析(FEA:Finite Element Analysis)ツールを用いることによって実行することができる。
【0021】
このステップは、構造及びパターン要素の幾何学的形状を含む完結したタイヤモデルを開発または提供することを伴う。タイヤパターンの特徴-例えば溝、サイプ等-は、モデルを非軸対称にし得るし、転動中の(更なる)振動を発生し得る。
【0022】
振動は、メッシュのノードの速度、加速度、または変位として表現することが好ましい。
【0023】
このステップの結果は、サンプリングの瞬時毎の振動モデルまたは振動マップであり、これについては以下で詳細に説明する。
【0024】
このシミュレーション環境では、膨らんだタイヤをモデル化して基準面上に載荷し、即ち基準面に関連させ、ここではタイヤが特定速度で特定期間だけ回転する。
【0025】
シミュレーション期間中には、タイヤ外側の振動、即ち各ノードの位置、速度または加速度を、サンプリングの瞬時またはフレーム(即ち、シミュレーションの時間増分)毎に記憶し、サンプリング時刻のピッチ(間隔)は関心事の周波数範囲に応じて選定することができる。このようにして、サンプリングの瞬時毎の振動マップが得られる。
【0026】
上述したように、このステップの出力は、転動するタイヤの構造モデル、メッシュまたは振動マップであり、各ノードの瞬時の位置は、振動と圧力、及び負荷の適用に由来するタイヤの構造変化によって定まる。
【0027】
このステップは、例えば、市販のAbaqus Explicit(登録商標)ソフトウェアツールを用いることによって、または等価な手段によって実行することができる。陽的FEMソルバーは、タイヤ転動中の、トレッドブロックの地面に対する周期的な衝突のような動的事象のシミュレーションをすることに特に適している。陰的なソルバーとは異なり、陽的なソフトウェアは、時間を通した運動方程式を解き、全ての慣性効果、及び複雑な非線形問題を伴う他の多数の計算上の利点を含む
【0028】
図1に例示するように、第2のステップでは、上記方法が、上記の構造シミュレーション・ステップによって得られた構造的転動メッシュの結果を、(静的な非転動の)音響メッシュにマッピングすることを提供する。このステップは、振動マップ、即ち第1のステップにおいてラグランジュ領域から得られた転動の構造メッシュをオイラー領域に変換することが好ましく、後者はその後にノイズ・シミュレーション用に用いる。
【0029】
好適な実施形態によれば、このマッピングは次のように得られる。
【0030】
ターゲットの音響メッシュの振動変数を選択し、この変数は、速度、加速度及び変位の中から選定することが好ましい。速度及び加速度の方が変位よりも好ましくあり得る。
【0031】
図2に例示するように、サンプリングの瞬時毎に、振動変数を次のように計算する。
・音響メッシュのノード毎に、構造メッシュの複数の最寄りのノードを選択する。
・構造メッシュのノードと音響メッシュのノードとの間の補間を実行して、振動結果を音響メッシュに変換する。具体的には、音響メッシュのノードについて振動変数の加重平均値を計算し、この計算は、構造メッシュ上で選択した最寄りのノードの上記振動変数の値から開始する。
・構造メッシュの最寄りのノードの数は1~8の好適な範囲であり、次式の距離の逆数で重み付けした補間を用いる
【数1】
ここに、
A=正規化係数
j=音響メッシュのノードjにおける振動
i=構造メッシュのノードiにおける振動
i,j=構造メッシュのノードiと音響メッシュのノードjとの間の距離
【0032】
この数値的方法は、(>1M(百万個超)になり得るノード/要素の数を有する)非常に重いメッシュをもたらす、(サイプのような非常に小さいパターンの特徴を含む)全パターンの特徴を有する実際のタイヤのFE(Finite Element:有限要素)モデルに適用されることを意図している。
【0033】
シミュレーションの全時間ステップ(サンプリング周波数によるが、一般に>1000~2000(1000~2000回超)の時間増分)について反復される、こうした規模の2つのメッシュ(ラグランジュとオイラー)間の補間は、要求される計算が非常に多数回になる。
【0034】
計算時間を低減するために、図5に示すように、ラグランジュ(入力)メッシュ及びオイラー(ターゲット)メッシュを共に、タイヤの回転軸に垂直に得られる横方向の複数の複数のセクション(区分)に分割することができる。
【0035】
補間は、より少数のノードを有する、対応する各タイヤセクション内で別個に行われ、全体の計算時間を大幅に低減する。
【0036】
上記の補間プロセスを全タイムフレームについて反復した後に、音響(ターゲット)メッシュの全ノードについての時間歴が、上記振動変数のそれぞれの値と共に利用可能になる。
【0037】
従って、ノード毎に、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)または等価なツールを計算して、周波数領域内の振動変数を有する。このステップの結果は、任意の特定周波数におけるタイヤ振動マップ(ODS-Operational Deflection Shape:動作たわみ形状、実稼働振動形状)であり、図3A及び3Bのグラフに例示され、これらの図では、所定の周波数帯域(図3Aでは低周波帯域100~300Hz、図3Bでは高周波帯域400~600Hz)について静止メッシュの各ノードの変位を対数尺度で表す。
【0038】
このステップでは、約20~2000Hz、好適には500~2000Hzの範囲内の動作を提供することが好ましい。
【0039】
特定例では、音響メッシュを、メッシュサイズ(より粗いメッシュ)及び/または含めるパターン要素(例えば、縦溝のみをモデル化することができる)に関して簡略化したものとすることができる。簡略化したメッシュの使用は、結果に対する影響の可能性を最小にしつつ計算時間を低減する。実際に、より低い空間分解能(即ち、より少数のノード及び要素)の音響メッシュを用いると、(構造シミュレーションのためのシミュレーション時間の変化なしに)補間ステップ及び音響シミュレーション・ステップがより高速になる。
【0040】
このステップは、Matlab(登録商標)またはあらゆる等価な計算コードまたはツールによって実現することができる。
【0041】
第3のステップでは、第2のステップで得られた静止メッシュを、音響シミュレーション・ツールによってノイズ、特に自由音場条件で伝搬するノイズに変換する。第2のステップでマッピングした振動データを、この音響シミュレーション用の境界条件として用いる。
【0042】
この方法は、音響応答(音圧場)を、空間の任意の位置で、サンプリングの瞬時毎に計算し、こうして実験的検査を、PbN(通過騒音)を測定するもののように再現する。
【0043】
このステップは市販の音響ソルバーを用いることによって実行することができる。このステップ用に好適なツールは、例えばシーメンス(Siemens)社のVIRTUALLAB(登録商標)、FFT ACTRAN(登録商標)、またはダッソー・システムズ(Dassault Systems)社のWAVE6(登録商標)のような市販のソフトウェアを用いた音響FEMに基づく。PML(Perfectly Matching Layer:完全適合層)として知られている技術を、自由音場伝搬のシミュレーション用に用いることができ、PMLを使用することの主要な利点は、音響FEM領域の薄い層のみをモデル化すればよいことにある。
【0044】
その代わりに、BEM(Boundary Element Method:境界要素法)を用いることができる。
【0045】
図4A及び4Bは、方法の性能を実験的検査に対して表すグラフを示す図である。このグラフは、マイクロホンで測定したタイヤから7.5mの所の音圧レベル(SPL:Sound Pressure Level)スペクトル(図4A-点線)と、本発明によるシミュレーショ方法の実施形態によりシミュレーションをしたSPLスペクトル(図4B-実線)との比較を示す。
【0046】
これまで、好適な実施形態を参照しながら本発明を説明してきた。以下の特許請求の範囲によって規定される同じ発明の概念を参照する他の実施形態が存在することを意図している。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5