(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】無人航空機システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B61L 23/06 20060101AFI20240411BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240411BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240411BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B61L23/06
B64C27/08
B64D47/08
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2019109963
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591146893
【氏名又は名称】九州旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517106408
【氏名又は名称】株式会社A.L.I.Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 智宏
(72)【発明者】
【氏名】深江 良輔
(72)【発明者】
【氏名】隈部 佳
(72)【発明者】
【氏名】市村 彰
(72)【発明者】
【氏名】小松 周平
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021811(WO,A1)
【文献】特開2005-289309(JP,A)
【文献】特開2006-188151(JP,A)
【文献】特開2016-072748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/06
B64C 27/08
B64D 47/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機システムの制御方法であって、
作業地点から所定距離離れた位置を飛行するよう制御するステップと、
列車の接近を検知するステップと、
列車の接近を報知するステップ
であって、作業者が携帯する受信装置に、列車が接近した旨通知を送信し、接近する列車の受信装置に、前記作業者が携帯する受信装置が前記通知を受信したことを確認した旨通知を送信するステップと、
を含む、無人航空機システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無人航空機システムの制御方法であって、
前記検知するステップは、画像認識技術により列車を検知することを特徴とする、
無人航空機システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の無人航空機システムの制御方法であって、
前記報知するステップは、前記無人航空機が作業位置まで飛行することを含む、無人航空機システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道内や隣接する箇所で保全や工事を行う作業員の安全を確保するため、見張り員が列車の接近を工事管理者や作業員に知らせる。
【0003】
また、列車の接近をより確実に報知するため、作業員にGPS端末を配布し、端末から得られる位置情報を地図上にマッピングし、作業員から所定の距離の範囲に列車が接近したときに報知するシステムが開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、既存の軌道回路を利用し、所定に警報ゾーンに列車が接近したことを検知したときに警報を発するシステムが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-41284号公報
【文献】特開平8-48247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献に記載のいずれのシステムにおいても、軌道回路による列車の位置情報取得を前提としており、接近検知の誤動作時にフェールセーフ機能として安全は保証されても、その一方で、所定時間作業を休止させることにもなり得る。
【0007】
そこで、本発明は、作業員の安全をさらに担保しつつ、誤作動の少ない精度の高い見張り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の実施形態は、無人航空機の制御方法であって、作業地点から所定距離離れた位置を飛行するよう制御するステップと、列車の接近を検知するステップと、列車の接近を報知するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業員の安全をさらに担保しつつ、誤作動の少ない精度の高い見張り方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による第1の実施の形態による無人航空機の機能ブロック図である。
【
図2】本発明による第1の実施の形態による無人航空機の列車の検知を説明する概観図である。
【
図3】本発明による第1の実施の形態による無人航空機の制御にかかるフローチャート図である。
【
図4】本発明による第1の実施の形態による作業者の受信装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明による第1の実施の形態による作業者の受信装置の表示画面の他の例を示す図である。
【
図6】本発明による第2の実施の形態による無人航空機の制御にかかるフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による無人航空機システムの制御方法は、以下のような構成を備える。
[項目1]
無人航空機システムの制御方法であって、
作業地点から所定距離離れた位置を飛行するよう制御するステップと、
列車の接近を検知するステップと、
列車の接近を報知するステップと、
を含む、無人航空機システムの制御方法。
[項目2]
請求項1に記載の無人航空機システムの制御方法であって、
前記検知するステップは、画像認識技術により列車を検知することを特徴とする、
無人航空機システムの制御方法。
[項目3]
請求項1に記載の無人航空機システムの制御方法であって、
前記報知するステップは、作業者が携帯する受信装置に、列車が接近した旨通知を送信することを含む、無人航空機システムの制御方法。
[項目4]
請求項3に記載の無人航空機システムの制御方法であって、
前記報知するステップは、接近する列車の受信装置に、前記携帯端末が前記通知を受信したことを確認した旨通知を送信することを含む、
無人航空機システムの制御方法。
[項目5]
請求項1に記載の無人航空機システムの制御方法であって、
前記報知するステップは、前記無人航空機が作業位置まで飛行することを含む、無人航空機システムの制御方法。
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態による無人航空機システムの制御方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明による第1の実施の形態による無人航空機の機能ブロック図である。
【0013】
(概略)本実施の形態は、無人航空機を利用した見張りシステムに関するもので、無人航空機が見張りとして取得した情報を作業者受信機に送信し、作業者受信機が情報を受信することで、作業者の安全を確保することを可能とするものである。
【0014】
本実施の形態における無人航空機10は以下を構成有し、
図1を参照して説明する。
【0015】
フライトコントローラ2は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。
【0016】
フライトコントローラ2は、メモリ3を有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0017】
メモリ3は、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。カメラ7は無人航空機にジンバルを介して設置される。
【0018】
フライトコントローラ2は、無人航空機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する無人航空機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESCを経由して無人航空機の推進機構(モータ等)を制御する。モータによりプロペラが回転することで無人航空機の揚力を生じさせる。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0019】
フライトコントローラ2は、1つ以上の外部のデバイス(例えば、送受信機6(プロポ)、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機6は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。
【0020】
例えば、送受信部5は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。
【0021】
送受信部5は、センサ類で取得したデータ、フライトコントローラが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0022】
本実施の形態によるセンサ類4は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0023】
受信装置8は、作業者および列車乗務員が備える受信機(例えば、いわゆるインカムのようなヘッドセット付きトランシーバーやスマートフォン、タブレットなどの端末)により、無人航空機から送信された情報を受信し、作業者は、無人航空機の見張りの結果をもとに、列車の通過を回避し、安全な作業を遂行できる。列車乗務員は、無人航空機から情報を受信、作業者が無人航空機から送信された情報を受信した旨、または、安全な場所に退避した旨情報を受信し、安全を再確認することができる。
【0024】
本実施の形態における無人航空機システムの制御の方法について
図3を用いて説明する。
【0025】
(ステップ1)
図2aに示すように、無人航空機を線路上に配置し、無人航空機は、列車を検知し画像認識を行う。ここで、配置とは、線路上を飛行することも含み、無人航空機がより高い高度で飛行することで、列車を検知するタイミングを早めることができる。画像認識については、既知の方法を採用することができるが、例えば、取得された画像を基にエッジや線分を検出し、その輪郭を特定することで、列車であると判別する手法や、列車の画像データを機械学習させて特徴量を抽出し、取得された画像の特徴量から画像内に列車が写っているかを判別する、といった方法等が挙げられる。
【0026】
(ステップ2)無人航空機は、列車を検知した場合、作業者及び列車乗務員が携帯する受信装置にアラートを送信する。アラートとしては、Eメール、テキストメッセージ、ポップアップメッセージ、警報音、着信音、バイブレーション等の形態が挙げられる。
【0027】
(ステップ3)
図2bに示すように、無人航空機から送られたアラートが、作業者および列車乗務員が携帯する受信装置において受信される。作業者は、上述のような形態のアラートを受信することで、列車の接近を知得することができる。
図4に、作業者の受信装置に表示される画面の例を示す。画面中、メッセージ表示部10において、列車が接近中である旨警告が表示されている。また、作業現場から列車までの距離、及び作業現場と見張り位置と列車の現在位置とが直感で理解されるようにマップとアイコンが表示されている。また、無人航空機から撮影される動画像が画像表示部11に表示される。これにより、作業者は、列車の現在の状況を理解できる。また、列車乗務員は、アラートを受信することにより、無人航空機が自己の運転する列車を感知したことを知得し、作業者が線路から回避していることを知ることができる。
【0028】
(ステップ4)作業者は、受信装置で受信した情報を基に、列車の通過を回避するために線路から離れる。ここで、作業者は、アラートを受領したことを確認する旨の通知、及び/または、安全な場所に退避したときに、安全を確認する通知を、列車乗務員が携帯する受信装置に送信することができる。ここで、作業員は、受信装置上で、例えば、退避した旨の確認ボタンを選択することで、通知を生成し送信することができる。または、受信装置に内蔵されたGPS等を検知して、安全な場所に退避した旨を知らせる通知を列車乗務員の受信装置に自動送信することもできる。
図5に、作業員が安全な場所に退避した際に表示される画面を示す。作業員が安全な場所にいる旨がメッセージ表示部に表示される。これにより、さらに作業員の安全を確保することができる。
【0029】
(ステップ5)また、無人航空機の充電が必要になった場合、線路沿いに備えられている充電機能を有する箇所へ飛行させ、または自ら飛行し、必要な充電を行う。充電方法として、線路脇の電柱等から電流を取り、充電専用のスペース(導電板やコネクタ等)に待機することで充電するか、パンタグラフのようなすり板を架線に接触させることで架線から直接充電する形態が挙げられる。無人航空機が搭載可能なバッテリーの量を考えると、短時間周期に短い時間で充電することが好ましい。
【0030】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における無人航空機システムの制御の方法を、
図6を用いて説明する。本実施の形態における無人航空機及びシステムの構成は第1の実施の形態と同等であるため、説明を省略する。
【0031】
(ステップ11)第1の実施の形態と同様、無人航空機を線路上に配置し、無人航空機は、列車を検知し画像認識を行う。無人航空機はより高い高度で飛行することで、列車を検知するタイミングを早めることができる。画像認識方法については、第1の実施の形態において述べたので説明を省略する。
【0032】
(ステップ12)無人航空機は、列車の接近を検知すると、作業現場まで飛行する。これにより、作業員は直接列車の接近を知得することができる。この際、無人航空機は、警報音を発したり、照明を点滅する等の措置を取ることもできる。通常、無人航空機の飛行速度は、列車の走行速度より遅い場合が多いので、無人航空機は十分に早いタイミング(列車との距離が相当程度あるタイミング)にて飛行を開始しなければならない。作業員は、携帯する受信装置がアラートを受信したことに気づかない場合もあるので、無人航空機が直接作業員のもとに飛行することで、より確実に鉄道の接近を知らせることができる。
【0033】
(ステップ13)無人飛行機は、作業員のもとに到着すると、すなわち、作業現場に到着すると、その旨を列車乗務員の受信装置に送信する。作業現場に到着した旨は、無人航空機に内蔵されたGPSにより検知できる。列車乗務員は受信したメッセージを基に作業員の安全を知ることができる。
【0034】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 無人飛行機
2 フライトコントローラ
3 メモリ
4 センサ類
5 送受信部
6 送受信機
7 カメラ
8 受信装置
10 メッセージ表示部
11 画像表示部