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特許7470267燃料電池用のセパレータプレートを製造する方法、セパレータプレートおよびセパレータプレート用の中間製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】燃料電池用のセパレータプレートを製造する方法、セパレータプレートおよびセパレータプレート用の中間製品
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20240411BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20240411BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20240411BHJP
   H01M 8/0226 20160101ALI20240411BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240411BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/0226
H01M8/10 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019528451
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 IB2017001586
(87)【国際公開番号】W WO2018115952
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】102016015318.0
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145791
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 志麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ウルマン,ファルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルタ,ヘルゲ
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-113810(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0093701(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0129737(US,A1)
【文献】特開2005-317388(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068051(WO,A1)
【文献】特開2002-216784(JP,A)
【文献】特開2007-169461(JP,A)
【文献】特開2003-176327(JP,A)
【文献】特開2007-157387(JP,A)
【文献】特開2009-093965(JP,A)
【文献】特開2007-122899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0228
H01M 8/0221
H01M 8/0213
H01M 8/0226
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用のセパレータプレート(12)を製造する方法であって、
第1の加工ステーション(18)においてキャリヤ材料(14)上に、硬化可能な導電性の材料(20)を被着し、該材料(20)に、燃料電池に供給可能な反応物のための流れフィールド(34)を形成し、該流れフィールド(34)の形成に続いて、前記材料(20)を硬化させる、
方法において、
- 硬化させられる前記材料(20)を備えた前記キャリヤ材料(14)が、複数の加工ステーション(24,26,30)を通過し、
- 前記材料(20)を、前記流れフィールド(34)の加工前に、それぞれの前記加工ステーション(24,26,30)において少なくとも部分的に乾燥させ、かつ/またはゲル化し、かつ/または予備硬化させ、
- 次いで、型押し成形工具により、かつ/またはロールフォーミングにより、前記材料(20)に前記流れフィールド(34)を形成し、
硬化させられる前記材料(20)を提供するために、導電性の充填材を含んだ少なくとも1種のプラスチックと、溶媒とを含む混合物(28)を使用し、かつ/またはフィルムを使用し、
前記混合物(28)が導電性の充填材を3重量%~30重量%の割合で含み、
前記導電性の充填材はグラフェンである、
方法。
【請求項2】
前記材料(20)を、前記流れフィールド(34)の加工前に、それぞれの前記加工ステーション(24,26,30)において少なくとも部分的に乾燥させ、次いで、ゲル化し、かつ/または予備硬化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料(20)は、UV光の照射により硬化可能である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料(20)を、UV光の照射により予備硬化させる、請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
導電性の充填材を含んだ前記少なくとも1種のプラスチックは、エポキシ樹脂および/またはアクリル樹脂である、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は、少なくとも1種の光開始剤を含有する、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記フィルムはポリエステルフィルムである、請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムは二軸配向である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリヤ材料(14)を、連続した材料ウェブとして提供し、前記セパレータプレート(12)を製造するために、硬化させられた前記材料(20)を備えた前記キャリヤ材料(14)から少なくとも1つの領域(44)を取り除く、請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
硬化させられる前記材料(20)を、前記キャリヤ材料(14)上に50μm~150μmの厚さ(52)で提供する、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記セパレータプレート(12)を提供するために、硬化させられた前記材料(20)を前記キャリヤ材料(14)から剥離する、請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
硬化させられた導電性の材料(20)であって、前記材料(20)に、燃料電池に供給可能な反応物のための流れフィールド(34)が形成される材料を備え、
前記材料(20)は、導電性の充填材を含んだ少なくとも1種のプラスチックを含む混合物(28)であり、
前記混合物(28)が導電性の充填材を3重量%~30重量%の割合で含み、
前記導電性の充填材はグラフェンである、
燃料電池用のセパレータプレート(12)。
【請求項13】
導電性の充填材を含んだ前記少なくとも1種のプラスチックは、エポキシ樹脂および/またはアクリル樹脂である、請求項12に記載のセパレータプレート(12)。
【請求項14】
前記導電性の充填材はグラフェンである、請求項12から13のいずれか1つに記載のセパレータプレート(12)。
【請求項15】
硬化させられた前記材料(20)がキャリヤ材料(14)上に形成されている、請求項12から14のいずれか1つに記載のセパレータプレート(12)用の中間製品。
【請求項16】
フィルムが前記キャリヤ材料(14)として用いられる、請求項15に記載の中間製品。
【請求項17】
前記フィルムはポリエステルフィルムである、請求項16に記載の中間製品。
【請求項18】
前記ポリエステルフィルムは二軸配向である、請求項17に記載の中間製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータプレートを製造する方法に関する。さらに本発明は、燃料電池積層体に使用することができるような燃料電池用のセパレータプレートと、このようなセパレータプレート用の中間製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子膜型燃料電池(Polymer-Elektrolyt-Membran-Brennstoffzelle)、略してPEMFC(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)の原理的な構造は以下の通りである。PEMFCは、アノード、カソードおよびアノードとカソードとの間に配置された固体高分子膜(Polymer-Elektrolyt-Membran)(アイオノマー膜(Ionomer-Membran)とも云う)、略してPEMから構成されている膜・電極接合体(Membran-Elektroden-Anordnung)、略してMEAを含んでいる。MEA自体も、2つのセパレータプレートの間に配置されている。一方のセパレータプレートは、燃料を分配するための通路を有していて、他方のセパレータプレートは、酸化剤を分配するための通路を有しており、これらの通路は、MEAに面している。これらの通路は、通路構造(Kanalstruktur)、つまりいわゆるフローフィールド(Flow Field)または流れフィールド(Stromungsfeld)を形成する。電極、つまりアノードおよびカソードは、特にガス拡散電極(Gasdiffusionselektroden)、略してGDEとして形成されていてよい。ガス拡散電極は、電気化学的な反応(たとえば2H2+O2→2H2O)時に発生する電流を導出し、反応物質、つまり遊離体および生成物を完全に拡散させる機能を有している。GDEは、少なくとも1つのガス拡散層(Gasdiffusionsschicht)もしくはガス拡散レイヤ(Gasdiffusionslage)、略してGDLと、触媒層とから成っていて、触媒層は、PEMに面していて、この触媒層において電気化学的な反応が行われる。GDEは、さらにガス分配層を有していてよく、このガス分配層は、ガス拡散層に続いていて、PEMFC内でセパレータプレートに面している。ガス拡散層とガス分配層とは、特にその細孔径、ひいては反応物質のための搬送メカニズムの種類(拡散もしくは分配)の点で互いに異なっている。他方では、触媒層がガス拡散層ではなく、PEMの一方または両方の主表面に被着されている場合、これは概して触媒層付き膜(Catalyst Coated Membrane)、略してCCMと呼ばれる。
【0003】
このような燃料電池は、比較的低い運転温度で、高い出力を有する電流を発生させることができる。実際の燃料電池は大抵の場合、高い出力放出を達成するために、積層されていわゆる燃料電池積層体、略してスタックを形成する。この構成では、単極のセパレータプレートの代わりに、双極のセパレータプレート、いわゆるバイポーラプレートが使用され、単極のセパレータプレートは、スタックの両端の接続部のみを形成する。これらの単極のセパレータプレートは、時にはエンドプレートと呼ばれ、構造的にバイポーラプレートとは著しく異なっている。
【0004】
バイポーラプレートは、概して2つの部分プレートから組み立てられている。これらの部分プレートは、実質的に相補的かつ、対称面に関して鏡像的な形状を有している。しかし、部分プレートは、必ずしも鏡像的でなくてもよい。重要であるのは、部分プレートが、少なくとも1つの共通の接触面を有しており、この接触面においてこれらの部分プレートが結合され得ることだけである。部分プレートは、凹凸のあるトポグラフィを有している。これにより、部分プレートの、それぞれ互いに離れる方向に向いている表面には、既に上述した通路構造が生じる。部分プレートのそれぞれ互いに面している表面には、たとえば型押し加工された金属製の部分プレートでは、上述の通路構造に対して相補的な通路構造が存在している。これにより、両部分プレートを重ね合わせた場合に、部分プレート同士の間で、これらの部分プレートの互いに向かい合っている表面において中空室が生じる。この中空室は、互いに接続された複数のトンネルの系から成っている。中空室もしくはトンネルの系は、実質的に部分プレートの縁部領域を取り囲んでいる接合部により液密に縁取りされている。冷媒供給および冷媒導出のための開口が設けられているので、中空室は冷媒の分配のために使用することができる。
【0005】
したがって、パイポーラプレートの役目は、以下の通りである。酸化剤および還元剤の分配;冷媒の分配、ひいては燃料電池の冷却(より正確には温度調整);スタックの個別セル相互の流体的な分離;さらにスタックの直列接続された個別セルの電気的な接触、ひいては個別セルにより発生させられた電流の導通。
【0006】
したがって、セパレータプレートもしくはバイポーラプレートは、燃料電池積層体において反応物または反応ガスと冷媒とを互いに隔て、かつ反応物および冷媒を燃料電池反応領域へと分配する。この構成では、セパレータプレートが電気的かつ熱的に良伝導性であり、燃料電池内における化学的な影響に対して頑丈であることが必要である。さらに、セパレータプレートは、燃料電池積層体における機械的な圧着圧に耐えることができるように、十分に高い機械的な安定性を有していることが望ましい。ガス状および/または液状の反応物もしくは媒体を個別の燃料電池にガイドするためには、大抵の場合、相応する媒体供給ならびに媒体導出のための構造がセパレータプレートに直接に一体化されている。
【0007】
バイポーラプレートは、極めて高コストの構成部材であり、現在の製造技術水準では、燃料電池積層体のコストの30パーセント~45パーセントを占めている。その理由は、特に、微細な溝構造を備える表面を、同時にできるだけ小さな肉厚もしくは残存肉厚で提供することに要求が課せられる点にある。
【0008】
バイポーラプレートのための材料として、たとえば特殊鋼またはチタンもしくはチタン合金のような金属が考慮される。さらに、バイポーラプレートのための材料は、グラファイト、熱硬化性樹脂-複合材料または熱可塑性樹脂-複合材料ならびに膨張黒鉛シートのような非金属材料を含む。
【0009】
しかし、充填材としてカーボンブラックを含んでいるプラスチック材料から成るバイポーラプレートは脆く、製造が高価である。さらに金属製のバイポーラプレートも高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の方法を改良して、特に簡単かつ廉価な方法を提供すること、ならびに相応のセパレータプレートおよびこのようなセパレータプレートのための中間製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備える方法と、請求項10に記載の特徴を備えるセパレータプレートと、請求項11に記載の特徴を備える中間製品とにより解決される。本発明の合理的な改良形態を備える有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0012】
燃料電池用のセパレータプレートを製造するための本発明に係る方法では、キャリヤ材料上に、硬化可能なかつ導電性の材料が被着される(aufgebracht)。硬化可能な材料に、燃料電池に供給可能な反応物のための流れフィールドが形成される。流れフィールドの形成に続いて、材料が硬化させられる。硬化させられた材料により、セパレータプレートを形成することができる。
【0013】
このような製造法では、たとえば独国特許出願公開第102007058714号明細書に記載されている、いわゆる転写塗膜(Transferlackfolie)の自体公知の製造から得ることができる知見を利用することができる。したがって、セパレータプレートは、セパレータプレートを形成するために使用可能な硬化可能な材料をキャリヤ材料上に提供することにより、特に簡単かつ廉価に製造することができる。つまり、特に低いコストで生産性の高い製造法が達成可能である。
【0014】
さらに、硬化可能なかつ導電性の材料を準備するための原料コストは特に低く、特に従来のセパレータプレートもしくはバイポーラプレートのための材料を準備するためのコストよりも低い。このことは、特に廉価な製造にとっても有益である。さらにこのような製造法は、セパレータプレートの製造時に極めて高い生産個数を達成することができるように、容易にスケーリングすることができる。
【0015】
さらに、セパレータプレートは、特に小さな厚さもしくは肉厚で提供される。したがって所定の大きさを有する燃料電池積層体において、燃料電池の個数が増大させられる。したがって、高められたエネルギ密度を有する燃料電池積層体を提供することができる。
【0016】
さらに、金属製のセパレータプレートもしくはバイポーラプレートにおいて燃料電池の運転時に発生してしまうような腐食が生じない。したがって、燃料電池の特に長い寿命を達成することができる。さらに、硬化可能なかつ導電性の材料の特性を、製造されたセパレータプレートが脆くならないように、特に簡単に調整することができる。このことは、セパレータプレートの延長された耐久性のためにも有益である。
【0017】
特にいわゆる転写塗膜の製造時に得られる知見の利用は、セパレータプレートの製造にとって有利である。このような転写塗膜は、たとえば自動車構成部材のための、耐候性かつUV光に対して耐性である装飾膜として使用される。たとえば、自動車のフロントガラスの側縁に配置された撥水加工部にこのような転写塗膜を備えることができる。
【0018】
塗膜技術の基礎は、通常、単層または二層のシステムである。キャリヤ材料上に、二層のシステムを形成するために、たとえば水ベースの付着層を被着させることができる。この付着層は、顔料を含んでいてよい。この付着層上に、たとえばアクリラートベースの溶媒を含む第2の層を配置することができる。この溶媒を含む第2の層は、特にUV光のような放射線によりかつ/または加熱により硬化させることができる。キャリヤ材料およびこのキャリヤ材料上に被着された1つまたは複数の塗料層を含むこのような転写塗膜は、好適にはコイルコーティングプロセスで製造される。
【0019】
このためには、まず、第1のコーティング工程において、付着層もしくは顔料が加えられて所望のカラートーンにされた付着塗料が、キャリヤ材料、特にキャリヤフィルム上に被着される。このキャリヤ材料から、付着塗料は後に再び剥離される。付着塗料を備えたキャリヤフィルムは、場合によっては巻成されて、一時的に貯蔵することができる。第2の方法工程において、キャリヤフィルムは、たとえば溶媒を含む、放射線硬化可能なアクリラート-クリアラッカ材料(Acrylat-Klarlackmaterial)を含んでいてよい。このアクリラート-クリアラッカ材料は、付着層上に被着される。このクリアラッカは、乾燥させられて、次いで好適にはUV光により、または粒子線により一瞬にして硬化させられる。さらにクリアラッカ上には保護フィルムを被着することができる。
【0020】
保護フィルムを備える転写塗膜は、次いで自動車構成部材をコーティングするために使用することができる。特に、転写塗膜はロール製品として提供することができ、いわゆる母材ロールを成す。このロール製品は、後続処理のために、種々異なるサイズに切断することができる。一例として、たとえばアルミニウムベルトのような金属製の構成部材に、たとえば押出加工されたPVC(ポリ塩化ビニル)を備えることができる。次いで、保護フィルムを備えた転写塗膜から保護フィルムが引き剥がされる。次いで、転写塗膜の、これにより露出させられた表面が、押出加工されたPVC材料上に被着される。したがって、キャリヤフィルム上に被着されたラッカ層(Lackschichten)は、PVC層とキャリヤフィルムとの間に位置しており、PVC層は、金属製の構成部材上に配置されている。次いで、キャリヤフィルムを引き剥がすことができ、ラッカ層がPVC層上に残留する。結果として、ラッカ層は、押出加工されたPVCを備えるアルミニウムベルト上に転写させられる。
【0021】
今、セパレータプレートをこのような転写塗膜の形態で製造した場合に、セパレータプレートを形成する材料の化学的かつ物理的な特性を簡単に調整することができる。さらに、所望の層厚さと、特に流れフィールドの形態の所望の表面構造とを製造プロセスにおいて規定して調整することができる。
【0022】
通常、本発明では、キャリヤ材料上に、硬化可能な材料から成る層を被着すれば十分である。(上述のような)二層式のシステムは、本発明の枠内では好適には不要である。
【0023】
好適には、硬化可能な材料を備えたキャリヤ材料は、複数の加工ステーションを通過する。したがって、1つの加工ステーションにおいて流れフィールドを形成することができ、別の加工ステーションにおいて材料を硬化させることができる。特に、セパレータプレートの極めて経済的な連続生産を達成することができる。材料は、特に放射線、たとえば電子放射線またはUV光の照射によって硬化させることができる。これにより、硬化を特に迅速に実現することができる。熱硬化も可能である。場合によっては、たとえばデュアル-キュア-ラッカ(Dual-Cure-Lack)の使用時に熱および放射線による連続的な硬化が提供されてもよい。デュアル-キュア-ラッカは、熱的に硬化可能である少なくとも1種の成分と、放射線により、特にUV放射線により硬化可能である少なくとも1種の別の成分とを含んでいる。たとえば、デュアル-キュア-ラッカは、水酸基またはイソシアネート基を介して熱架橋することができ、アクリル基を介してラジカル架橋することができるウレタンアクリラート樹脂を含んでいてよい。
【0024】
材料を流れフィールドの加工前に少なくとも部分的に乾燥させ、かつ/またはゲル化するとさらに有利であることが判った。したがって、このようなゲル化時には、材料がゲル状の中間状態で存在する。この中間状態は、材料に流れフィールドを形成するために適している。乾燥させるために、材料に熱を加えることができる。特に、材料は、UV光のような放射線の照射により、または熱的に、予備硬化させるか、もしくは部分的に硬化させることができるので、次いで、特に良好に流れフィールドのような構造エレメントまたは構造を材料に加工することができる。
【0025】
特に、材料を1つのステップにおいてゲル化しながら熱的に硬化させ、後続の別のステップにおいて放射線により、特にUV放射線により硬化させることが提供されてもよい。このためには、特に上述のデュアル-キュア-ラッカを使用することができる。熱による硬化後に、このようなラッカに塑性変形によって流れフィールドのような構造を問題なく加工することができる。次いで、ラッカへの照射により、その後の塑性変形による構造の加工がほとんど不可能である最終的な固化を行うことができる。
【0026】
好適には、流れフィールドが型押し工具により、かつ/またはロールフォーミング(Rollformen)により材料に形成される。これにより、流れフィールドを特に正確かつ再現可能に提供することができる。さらに、特にロールフォーミング時またはロール成形(Rollprofilieren)時に、キャリヤ材料は、流れフィールドの形成に役立つ加工ステーションを連続的に通過することができる。これに対して、流れフィールドを形成するために型押し工具を使用する場合には、流れフィールドの形成中にキャリヤ材料を送り方向でさらに移動させないことがより容易である。
【0027】
好適には、硬化させられる材料を提供するために混合物が使用される。この混合物は、導電性の充填材を含んだ少なくとも1種のプラスチックと、溶媒とを含んでいる。特に、少なくとも1種のプラスチックとして、エポキシ樹脂および/またはアクリル樹脂および/またはポリウレタン樹脂および/またはポリエステルアクリラート樹脂を使用することができる。さらに、混合物は、少なくとも1種の光開始剤を含有していてよく、これにより、材料を特に容易に光、特にUV光により硬化させることができる。材料の加工性は、溶媒割合と固体割合との相応の調整により確保することができる。さらに、混合物は、硬化剤を含んでいてよく、たとえばポリウレタン樹脂の場合にはイソシアネート硬化剤を含んでいてよい。
【0028】
しかし、プラスチックとして、デュアル-キュア-ラッカを使用することもでき、たとえば上述したウレタンアクリラート樹脂をベースとするデュアル-キュア-ラッカを使用することができる。
【0029】
基本的には、乾燥させる必要のない、溶媒不含の混合物を使用することも可能である。したがって、溶媒不含の混合物は、導電性の充填材およびプラスチックしか含んでいない。このような混合物のゲル化は、上述した予備硬化または部分的な硬化により引き起こすことができる。
【0030】
溶媒が使用される場合、この溶媒は好適には有機溶媒または溶媒混合物、たとえば酢酸ブチルである。しかし基本的には、プラスチックとして水ベースの樹脂、たとえば水ベースのポリウレタン樹脂を使用することも可能である。
【0031】
さらに、プラスチックは、好適には、たとえばカーボンブラックおよび/またはグラファイトのような十分に導電性の充填材を、特に約10mΩ/cm2~約30mΩ/cm2の範囲の材料の電気抵抗が得られるような量で含む。このような混合物の使用により、硬化可能な材料から成るセパレータプレートを特に簡単に提供することができる。混合物は、別の充填材を含んでいてもよい。
【0032】
好適な実施形態では、混合物は、導電性の充填材として、活性炭(AC)、活性炭繊維(AFC)、カーボンエアロゲル、グラファイト、グラフェンおよびカーボンナノチューブ(CNT)の群から成る炭素ベースの材料を含んでいる。
【0033】
活性炭は、周知のように、大きな内部表面積を有する多孔質の特に微粒子の炭素改質物である。
【0034】
活性炭繊維は、活性炭から獲得することができる。活性炭繊維は、同様に多孔質であり、大きな内部表面積を有していて、大抵の場合は約10μmの典型的な直径を有している。高い比容量の他に、活性炭繊維は、繊維軸線に沿った極めて良好な導電性を有している。
【0035】
カーボンエアロゲルは、有機質のゲルから成る多孔質の合成材料である。このゲルでは、ゲルの液状の成分が熱分解により気体に置換されている。カーボンエアロゲルは、たとえばレソルシノール-ホルムアルデヒドの熱分解により製造することができる。カーボンエアロゲルは、活性炭よりも良好な導電性を有している。
【0036】
グラフェンは、二次元構造を有する炭素改質物である。連鎖した多数のベンゾール環がハニカム状のパターンを形成する。このパターンにおいて、各炭素原子は、120°の角度で別の3つの炭素原子により取り囲まれていて、全ての炭素原子は、sp2混成されている。グラフェンは、理論的には、重量単位毎の炭素により達成可能な最大面積を提供する。
【0037】
カーボンナノチューブは、円筒状のナノチューブに変形されたグラフェン層である。単壁のナノチューブおよび複壁のナノチューブがある。複壁のナノチューブでは、複数の単壁のナノチューブが互いに内外に入り組んで同軸的に配置されている。
【0038】
当然ながら、上述の炭素ベースの材料は、互いに組み合わせて使用することもできる。その際に、あらゆる混合比が可能である。特に好適な実施形態では、混合物が導電性の充填材としてグラフェンを含んでいる。
【0039】
特に、導電性の充填材としてグラフェンを使用する場合には、セパレータプレートの製造のために、思いのほか少ない量の充填材で十分であることが判った。混合物中のグラフェンの割合は、好適には3重量%~10重量%の範囲にある。
【0040】
特に好適な実施形態では、混合物が以下の成分を以下の割合で含んでいる。
・3重量%~30重量%、好適には3重量%~20重量%、特に好適には3重量%~10重量%の割合の導電性の充填材、特にグラフェン、
・40重量%~97重量%の割合のプラスチック、特にウレタンアクリラート樹脂、
・場合によっては、0.1重量%~10重量%の割合の、混合物の加工特性または製造すべきセパレータプレートの特性に影響を与えるための少なくとも1種の添加剤。
【0041】
溶媒を含む改良形では、混合物は、さらに溶媒または溶媒混合物を10重量%~50重量%、好適には10重量%~30重量%の割合で含んでいる。
【0042】
全ての改良形において、混合物の成分の重量割合が合計で100重量%になると好適である。
【0043】
添加剤として、混合物に、たとえば光開始剤、消泡剤およびレベリング剤を添加することができる。
【0044】
付加的または代替的に、キャリヤ材料としてフィルムが使用されると有利であることが判った。好適には、フィルムは、実質的にプラスチック、特にエチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリルニトリル-ブタジエン-スチロール(ABS)、アクリル-スチロール-アクリルニトリル(ASA)、アクリルニトリル-ブタジエン-スチロール/ポリカーボネート(ABS/PC)、アクリル-スチロール-アクリルニトリル/ポリカーボネート(ASA/PC)、ポリアクリラート、ポリスチロール、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)および/またはポリメチルメタクリレートのようなフッ化ポリマから成っている。
【0045】
特に、キャリヤ材料としてポリエステルフィルム、好適には二軸配向もしくは二軸延伸されたポリエステルフィルムを使用することができる。たとえば、製造者DuPontの名称「Mylar A」で入手可能である、PETフィルム(PET=ポリエチレンテレフタレート)を使用することができる。このようなキャリヤ材料は、硬化可能な材料を被着させるために良好に適しており、特にその高い引っ張り強度に基づいて、セパレータプレートの製造時に複数の加工ステーションを通過するために適している。
【0046】
好適には、キャリヤ材料が、連続した材料ウェブとして提供される。セパレータプレートを製造するために、硬化させられた材料を備えたキャリヤ材料から少なくとも1つの領域が取り除かれる。したがって、セパレータプレートを形成する材料に簡単に開口または貫通部を設けることができ、これらの開口または貫通部は、燃料流入部および燃料流出部、酸化剤流入部および酸化剤流出部ならびに冷媒流入部および冷媒流出部として働く。さらに、たとえばセパレータプレートの所望の外側輪郭を設けることができる。分離は、打抜き加工および/または切断加工、特にレーザ切断等により行うことができる。
【0047】
好適には、硬化させられる材料が約50μm~150μmの厚さでキャリヤ材料上に提供される。特に、硬化させられる材料が、100μmよりも小さな厚さ、たとえば約90μm、80μm、70μm、60μmまたは50μmの厚さを有している場合、流れフィールドを形成する溝または同様の構造の高さもしくは深さに対する材料の厚さの極めて有利な比を調整することができる。さらに、硬化させられる材料の小さな厚さは、提供すべき材料量の減少につながる。さらに、材料の乾燥および/または硬化にかかる時間を特に大幅に減じることができる。
【0048】
硬化させられる材料が熱可塑性の特性をもはや有していない、つまり硬化させられる材料の、加熱下での可逆的な塑性変形がもはや不可能であると有利である。
【0049】
セパレータプレートを提供するために、好適には硬化させられた材料がキャリヤ材料から剥離される。特に、こうして、別の部分プレートとの結合によりセパレータプレートまたはバイポーラプレートを形成することができる部分プレートを提供することができる。したがって、部分プレート同士の間に設けられた中空室は、冷媒流れフィールドを形成することができる。硬化させられた材料をキャリヤ材料から剥離することにより、特に簡単な形式でセパレータプレートが導電性であることを確保することができる。
【0050】
本発明は、燃料電池用のセパレータプレートにも関する。セパレータプレートは、本発明に係る方法により得られる。さらに本発明は、このようなセパレータプレート用の中間製品にも関する。この中間製品では、硬化させられた材料がキャリヤ材料上に配置されている。硬化させられた材料を備えたキャリヤ材料は、特にロールの形で中間製品または半製品を提供することができる。この場合、ロールから、セパレータプレートを製造するための所望のプレート状の部分、特に部分プレートを簡単に分離することができる。
【0051】
本発明に係る方法のために説明された利点および有利な実施形態は、本発明に係るセパレータプレートおよび本発明に係る中間製品にも当てはまり、逆もまた然りである。
【0052】
本発明に係るセパレータプレートおよび本発明に係る中間製品は、好適には熱可塑性の特性をもはや有していない硬化させられる上述の材料から成る母材を含んでいて、この母材に、導電性の充填材、特に好適にはグラフェンが入れられているという点において傑出している。上述の構成に一致して、導電性の充填材、特に好適にはグラフェンの割合は、好適には少なくとも3重量%である。さらに好適な実施形態では、この割合は、3重量%~40重量%、好適には3重量%~30重量%、特に好適には3重量%~20重量%、特に3重量%~12重量%の範囲にある。
【0053】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は、以下の好適な実施例の説明ならびに図面から明らかになる。上述の説明で挙げられた特徴および特徴の組み合わせならびに以下の図面の説明において挙げられ、かつ/または図面にのみ示された特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ記載された組み合わせにおいても、本発明の範囲を逸脱することなしに、別の組み合わせにおいても、または単独でも使用可能である。
本発明は、以下の発明を含む。
[発明1]
燃料電池用のセパレータプレート(12)を製造する方法であって、
第1の加工ステーション(18)においてキャリヤ材料(14)上に、硬化可能な導電性の材料(20)を被着し、該材料(20)に、前記燃料電池に供給可能な反応物のための流れフィールド(34)を形成し、該流れフィールド(34)の形成に続いて、前記材料(20)を硬化させる、
方法において、
- 硬化させられる前記材料(20)を備えた前記キャリヤ材料(14)が、複数の加工ステーション(24,26,30)を通過し、
- 前記材料(20)を、前記流れフィールド(34)の加工前に、それぞれの前記加工ステーション(24,26,30)において少なくとも部分的に乾燥させ、かつ/またはゲル化し、かつ/または予備硬化させ、
- 次いで、型押し成形工具により、かつ/またはロールフォーミングにより、前記材料(20)に前記流れフィールド(34)を形成する、
ことを特徴とする、方法。
[発明2]
前記材料(20)を、前記流れフィールド(34)の加工前に、それぞれの前記加工ステーション(24,26,30)において少なくとも部分的に乾燥させ、次いで、ゲル化し、かつ/または予備硬化させる、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記材料(20)は、UV光の照射により硬化可能である、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
前記材料(20)を、UV光の照射により予備硬化させる、発明1から3のいずれか1つに記載の方法。
[発明5]
硬化させられる前記材料(20)を提供するために、導電性の充填材を含んだ少なくとも1種のプラスチック、特にエポキシ樹脂および/またはアクリル樹脂と、溶媒とを含む、特に少なくとも1種の光開始剤を含有する混合物(28)を使用し、かつ/または前記キャリヤ材料(14)として、フィルム、特に好適には二軸配向のポリエステルフィルムを使用する、発明1から4のいずれか1つに記載の方法。
[発明6]
前記混合物(28)が、導電性の充填材、好適にはグラフェンを、3重量%~30重量%、好適には3重量%~20重量%、特に好適には3重量%~10重量%の割合で含む、発明5に記載の方法。
[発明7]
前記キャリヤ材料(14)を、連続した材料ウェブとして提供し、前記セパレータプレート(12)を製造するために、硬化させられた前記材料(20)を備えた前記キャリヤ材料(14)から少なくとも1つの領域(44)を取り除く、発明1から6のいずれか1つに記載の方法。
[発明8]
硬化させられる前記材料(20)を、前記キャリヤ材料(14)上に約50μm~約150μmの厚さ(52)で提供する、発明1から7のいずれか1つに記載の方法。
[発明9]
前記セパレータプレート(12)を提供するために、硬化させられた前記材料(20)を前記キャリヤ材料(14)から剥離する、発明1から8のいずれか1つに記載の方法。
[発明10]
発明1から9のいずれか1つに記載の方法により得られる、燃料電池用のセパレータプレート(12)。
[発明11]
硬化させられた材料(20)がキャリヤ材料(14)上に配置されている、発明10に記載のセパレータプレート(12)用の中間製品。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】燃料電池積層体の燃料電池用のバイポーラプレートを製造するための製造設備を示す概略図である。
図2】製造されたバイポーラプレートを拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1に概略的に示されている製造設備10は、セパレータプレートを製造するために用いられる。バイポーラプレート12の形態の双極のセパレータプレートは、図2に平面図で示されている。このバイポーラプレート12は、製造設備10で製造することができる。バイポーラプレート12は、たとえば自動車に使用することができるような燃料電池積層体の複数の燃料電池のために提供される。
【0056】
バイポーラプレート12の製造時には、まず、この実施形態ではキャリヤフィルム14の形態のキャリヤ材料が準備される。キャリヤフィルム14は、ロール16に巻かれて存在していてよい。キャリヤフィルム14として、特に二軸延伸もしくは二軸配向のポリエステルフィルムを使用することができる。
【0057】
ロール16から、キャリヤフィルム14が繰り出されて、次いで、製造設備10の後続の加工ステーションに供給される。第1の加工ステーション18において、キャリヤフィルム14上に混合物28が被着される。この混合物28は、導電性の材料20を含んでいて、この材料20は硬化させることができる。たとえば、スリットノズル22またはこれに類する被着装置を介してキャリヤフィルム14に混合物28が供給されてよい。混合物28は、エポキシ樹脂および/またはアクリル樹脂、少なくとも1種の溶媒、光開始剤およびたとえばカーボンブラックおよび/またはグラファイトのような導電性の充填材を含んでいる。さらに、混合物28は別の充填材を含有していてもよい。後続の加工ステーション24において、混合物28から溶媒が揮発される。これにより、材料20のコンシステンシが変化する。この揮発は、たとえば約1分にわたって実施することができる。
【0058】
特に好適な実施形態では、エポキシ樹脂および/またはアクリル樹脂を含有する混合物の代わりに、以下の成分から成る混合物を混合物28として使用することができる。
・5.7%のOH含有量および3.5mol/kgの二重結合密度を有する、9.4重量%の二重結合を有するポリオール(溶媒なし)
・5.4%のNCO含有量および1.5mol/kgの二重結合密度を有する、28.2重量%の二重結合を有するウレタンアクリラート(溶媒なし)
・2℃のガラス転移温度(10℃/分の加熱速度における動的示差熱量測定により規定される)および4mol/kgの二重結合密度を有する、28.2重量%の二重結合を有するウレタンアクリラート(溶媒なし)
・1.4重量%の市販の光開始剤
・0.5重量%の市販のレベリング剤
・1.0重量%の市販の消泡剤
・25.3重量%の酢酸ブチル
・6重量%のグラフェン。
【0059】
次いで、たとえば加熱装置26により、キャリヤフィルム14上に被着されている混合物28もしくは材料20が予備乾燥させられる。加熱装置26において混合物28に熱を加えることは、混合物28もしくは材料20のゲル化または部分ゲル化(Angelieren)につながる。後続の任意の加工ステーション30において、材料20を付加的に部分硬化させるか、もしくは予備硬化させることができる。このためには、加工ステーション30において、材料20に光、特にUV光を照射することができる。
【0060】
次いで、部分ゲル化もしくは部分硬化された材料20に、たとえば通路32の形態の構造が加工される(図2を参照)。これらの通路32は、完成したバイポーラプレート12において流れフィールド34を形成する。混合物28における溶媒および固体の割合を相応に調整することによって、予備乾燥もしくは部分ゲル化され、かつ/または加工ステーション30においてUV光により部分硬化させられた材料20に所望の表面構造を形成することを達成することができる。
【0061】
バイポーラプレート12の、流れフィールド34を含む表面構造を形成するために、工具36として、たとえば特に2つの部分から成る型押し工具を使用することができる。付加的または代替的に、この構造化はロールフォーミングまたはロール成形のために適した工具36により実施することができる。特に、こうして、通路32もしくは溝構造を材料20に形成することができる。
【0062】
相応の工具36により形成された流れフィールド34(図2を参照)は、燃料電池の膜・電極接合体(図示せず)に反応物、たとえば燃料としての水素もしくは酸化剤としての酸素または空気を供給することを可能にする。表面構造には、工具36によってさらに構造エレメントを提供することができる。この構造エレメントは、バイポーラプレート12において、流れフィールド34と、燃料電池反応に関与する反応物のための相応の流入部もしくは流出部との間のそれぞれの移行領域40に設けられている(図2を参照)。
【0063】
混合物28中に光開始剤を含有させることに基づいて、後続の加工ステップにおいて、材料20を完全に硬化させることができる。このためには、後続の加工ステーションにおいて、相応の光源38、特にUV光源が設けられている。たとえば光源38から放射されたUV光による材料20の硬化後に、相応の構造が材料20に永久的に形成されている。
【0064】
後続の加工ステップにおいて、たとえば打抜き加工42により複数の貫通部44を材料20に形成することができる(図2を参照)。このような貫通部44により、通常、燃料流入部および燃料流出部、酸化剤流入部および酸化剤流出部ならびに冷媒流入部および冷媒流出部が提供されている。互いに積層された燃料電池において、これらの貫通部44は、反応物もしくは冷媒の供給および導出のための相応の通路を形成する。
【0065】
後続の加工ステップもしくは後続の加工ステーションにおいて、切断加工46により、バイポーラプレート12の外側輪郭56を所望のように製作することができる。切断加工46のために、特にレーザ等を使用することができる。さらに、レーザによって、硬化させられた材料20から複数の領域を除去することができ、これによりバイポーラプレート12に所望の構造を形成することができる。
【0066】
さらに、材料20は、適切な接合法により、特に接着により、材料20から上記で説明したように形成された別の部分に結合可能である。したがって、材料20により、バイポーラプレート12の第1の部分プレートを提供することができる。この第1の部分プレートは、接合48によって、バイポーラプレート12の第2の部分プレートに結合することができる。こうして、このような2つの部分プレートの間の中空室または中間室50(図2を参照)に、冷媒のための流れフィールドが提供される。好適には、硬化させられた材料20の厚さ52(図2を参照)は、極めて小さい。特に厚さ52は、好適には反応物のための流れフィールド34の領域もしくは冷媒のための流れフィールドの領域において形成されている溝もしくは通路32の深さ54よりも明らかに小さい。
【0067】
さらに、材料20は、空気もしくは酸素に対して、かつ水素に対して密である。さらに、材料20は、十分な機械的な強度と、燃料電池積層体の燃料電池に使用することが望ましいバイポーラプレート12を提供するための構造統一性とを有している。電気抵抗は、たとえばカーボンブラック粒子もしくはグラファイト粒子のような適切な充填材により、材料20が良好な導電性を有しているように調整されている。たとえば、材料20の電気抵抗は10mΩ/cm2~30mΩ/cm2の範囲であってよい。
【0068】
硬化させられた材料20を備えたキャリヤフィルム14が、まず、中間製品もしくは半製品として提供され、その後、たとえば打抜き加工42、切断加工46もしくは接合48のような相応の別の加工ステップにより、バイポーラプレート12にその最終的な形状が与えられてもよい。中間製品は、特に巻成されてロールを形成していてよい。
【0069】
さらに、硬化させられた材料20を備えたキャリヤフィルム14から、たとえば貫通部44のような複数の領域が取り除かれ、こうして、硬化させられた材料20を備えたキャリヤフィルム14を含む中間製品もしくは半製品が提供されて、特に巻成されてロールを形成することが提供されてもよい。次いで、このような中間製品から、キャリヤフィルム14からの材料20の剥離後に、切断加工46および接合48により、所望の外側輪郭56を備えたバイポーラプレート12を形成することができる。特に、まず中間製品が切断され、キャリヤフィルム14からの材料20の剥離後に、これにより得られた部分プレートを接合することによりバイポーラプレート12を形成することができる。
図1
図2