IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AssistMotion株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-アシストウェア 図1
  • 特許-アシストウェア 図2
  • 特許-アシストウェア 図3
  • 特許-アシストウェア 図4
  • 特許-アシストウェア 図5
  • 特許-アシストウェア 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】アシストウェア
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20240411BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H3/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020132176
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029066
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518385899
【氏名又は名称】AssistMotion株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 稔
(72)【発明者】
【氏名】小林 美嘉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 志津江
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102995(JP,A)
【文献】特開2006-320350(JP,A)
【文献】特開2013-070786(JP,A)
【文献】特開2009-213538(JP,A)
【文献】特開2007-089634(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081710(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 11/00
A61H 1/03- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の動作をアシストするアシストウェアであって、
当該アシストウェアの構成部品を前記装着者の被固定部位に巻き付けて固定するための固定バンドを備え、
前記固定バンドには、巻き付けた状態の当該固定バンドの内周を気体の供給によって縮径させる気体袋が配設され
前記気体袋は、複数エリアに分割されると共に当該各エリアにチューブが個別に接続されて当該チューブを介して当該各エリアに空気が供給されることによって均等に膨張するように構成されているアシストウェア。
【請求項2】
前記装着者の側腰部における股関節に対向する部位に配設される前記構成部品としての第1の駆動部と、基端部が前記第1の駆動部に接続されて先端部で当該第1の駆動部の駆動力を大腿部に作用させる前記構成部品としての第1のアームと、前記被固定部位としての前記大腿部に巻き付けて前記第1のアームの先端部を当該大腿部に固定するための第1の前記固定バンドと、前記装着者の膝部の外側部に配設される前記構成部品としての第2の駆動部と、前記被固定部位としての前記大腿部に巻き付けて前記第2の駆動部を当該大腿部に固定するための第2の前記固定バンドと、基端部が前記第2の駆動部に接続されて先端部で当該第2の駆動部の駆動力を下腿部に作用させる前記構成部品としての第2のアームと、前記被固定部位としての前記下腿部に巻き付けて前記第2のアームの先端部を当該下腿部に固定するための第3の前記固定バンドとを備え、
前記第1の固定バンド、前記第2の固定バンド、および前記第3の固定バンドに前記気体袋がそれぞれ配設されている請求項1記載のアシストウェア。
【請求項3】
前記気体袋に前記気体を圧送する手動式の1つの加圧装置を備え、
前記加圧装置から全ての前記気体袋に対して前記気体を圧送可能に構成されている請求項2記載のアシストウェア。
【請求項4】
ズボン型の下衣部を備え、
前記第1の固定バンド、前記第2の固定バンド、および前記第3の固定バンドは前記下衣部の内側に取り付けられている請求項2または3記載のアシストウェア。
【請求項5】
前記下衣部は、前記装着者の脚部が挿入される挿入部の前部がファスナーによって接合および分離可能に構成されている請求項4記載のアシストウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の動作をアシストするアシストウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のアシストウェアとして、下記特許文献1に開示されたアシストウェアシステムが知られている。このアシストウェアシステムは、ウエア、股関節アシスト装置および膝関節アシスト装置を備えている。このアシストウェアシステムでは、股関節アシスト装置の駆動力が第2アシスト力伝達板を介して大腿部に伝達されると共に、膝関節アシスト装置の駆動力が第1アシスト力伝達板および第2アシスト力伝達板を介して下腿部に伝達されることによって装着者の動作がアシストされる。この場合、このアシストウェアシステムでは、面ファスナーが取り付けられたバンドを大腿部および下腿部に巻き付け、面ファスナーを用いて締め付けた状態に維持し、これによって第1アシスト力伝達板および第2アシスト力伝達板を大腿部および下腿部に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-222017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来のアシストウェアシステムには、解決すべき以下の課題がある。具体的には、上述したアシストウェアシステムでは、大腿部および下腿部に巻き付けたバンドを面ファスナーを用いて締め付けた状態に維持している。しかしながら、この構成では、面ファスナーだけを用いてバンドを締め付けているため、十分な締め付けが困難な結果、各アシスト力伝達板を大腿部および下腿部に確実に固定することが困難である。また、アシストウェアシステムを装着した状態では前傾姿勢が取りにくいため、この構成では、アシストウェアシステムを装着したままで弛んだバンドを自ら締め付ける(増し締めする)ことも困難である。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、駆動力を作用させるアームを大腿部および下腿部に確実かつ容易に固定し得るアシストウェアを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のアシストウェアは、装着者の動作をアシストするアシストウェアであって、当該アシストウェアの構成部品を前記装着者の被固定部位に巻き付けて固定するための固定バンドを備え、前記固定バンドには、巻き付けた状態の当該固定バンドの内周を気体の供給によって縮径させる気体袋が配設され、前記気体袋は、複数エリアに分割されると共に当該各エリアにチューブが個別に接続されて当該チューブを介して当該各エリアに空気が供給されることによって均等に膨張するように構成されている。
【0007】
また、請求項2記載のアシストウェアは、請求項1記載のアシストウェアにおいて、前記装着者の側腰部における股関節に対向する部位に配設される前記構成部品としての第1の駆動部と、基端部が前記第1の駆動部に接続されて先端部で当該第1の駆動部の駆動力を大腿部に作用させる前記構成部品としての第1のアームと、前記被固定部位としての前記大腿部に巻き付けて前記第1のアームの先端部を当該大腿部に固定するための第1の前記固定バンドと、前記装着者の膝部の外側部に配設される前記構成部品としての第2の駆動部と、前記被固定部位としての前記大腿部に巻き付けて前記第2の駆動部を当該大腿部に固定するための第2の前記固定バンドと、基端部が前記第2の駆動部に接続されて先端部で当該第2の駆動部の駆動力を下腿部に作用させる前記構成部品としての第2のアームと、前記被固定部位としての前記下腿部に巻き付けて前記第2のアームの先端部を当該下腿部に固定するための第3の前記固定バンドとを備え、前記第1の固定バンド、前記第2の固定バンド、および前記第3の固定バンドに前記気体袋がそれぞれ配設されている。
【0008】
また、請求項3記載のアシストウェアは、請求項2記載のアシストウェアにおいて、前記気体袋に前記気体を圧送する手動式の1つの加圧装置を備え、前記加圧装置から全ての前記気体袋に対して前記気体を圧送可能に構成されている。
【0009】
また、請求項4記載のアシストウェアは、請求項2または3記載のアシストウェアにおいて、ズボン型の下衣部を備え、前記第1の固定バンド、前記第2の固定バンド、および前記第3の固定バンドは前記下衣部の内側に取り付けられている。
【0010】
また、請求項5記載のアシストウェアは、請求項4記載のアシストウェアにおいて、前記下衣部は、前記装着者の脚部が挿入される挿入部の前部がファスナーによって接合および分離可能に構成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のアシストウェアによれば、アシストウェアの構成部品を装着者の被固定部位に巻き付けて固定するための固定バンドに気体袋を配設したことにより、気体袋に気体を供給して気体袋を膨張させることで、巻き付けた状態の固定バンドの内周を縮径させて固定バンドを締め付ける事ができるため、面ファスナーだけを用いてバンドを締め付ける従来の構成と比較して、大腿部および下腿部に対する各固定バンドの締め付けを確実に行うことができる。また、このアシストウェアによれば、装着者が前傾姿勢を取ることなく気体袋に気体を供給することで、各固定バンドを容易に締め付ける(増し締めする)ことができる。したがって、このアシストウェアによれば、アシストウェアの構成部品を装着者の被固定部位に確実かつ容易に固定することができる。
【0012】
また、請求項2記載のアシストウェアによれば、第1の固定バンド、第2の固定バンド、および第3の固定バンドに気体袋をそれぞれ配設したことにより、構成部品としての第1のアーム、第2の駆動部および第2のアームを、被固定部位としての大腿部または下腿部に確実かつ容易に固定することができる。
【0013】
また、請求項3記載のアシストウェアによれば、1つの加圧装置から全ての気体袋に対して気体を圧送可能に構成したことにより、気体袋毎に個別の加圧装置を設ける構成や各とバンド毎に個別の加圧装置を設ける構成とは異なり、全ての気体袋に気体を一度に供給して大腿部または下腿部に対する各固定バンドの締め付けを一度に行うことができるため、各固定バンドの締め付けの作業を短時間で行うことができる。
【0014】
また、請求項4記載のアシストウェアによれば、ズボン型の下衣部を備え、各固定バンドを下衣部の内側に取り付けたことにより、下衣部を装着(履く)ことで、固定バンドを大腿部および下腿部に巻き付けることができるため、アシストウェアを容易に装着することができる。
【0015】
また、請求項5記載のアシストウェアによれば、脚部の挿入部の前部がファスナーによって接合および分離可能に下衣部を構成したことにより、下衣部の着脱を容易に行うことができるため、アシストウェアの着脱を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】装着者200がアシストウェア1を装着した状態の正面図である。
図2】装着者200がアシストウェア1を装着した状態の背面図である。
図3】装着者200がアシストウェア1を装着した状態の側面図である。
図4】固定バンド23,30,33の平面図である。
図5】装着者200がアシストウェア1Aを装着した状態の正面図である。
図6】装着者200がアシストウェア1Aを装着した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、アシストウェアの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
最初に、アシストウェアの一実施例としての図1に示すアシストウェア1の構成について説明する。アシストウェア1は、装着者200が重量物を持ち上げる際の挙上動作をアシストする挙上動作アシスト機能、および装着者200の歩行動作をアシストする歩行動作アシスト機能を備えている。
【0019】
具体的には、アシストウェア1は、図1~3に示すように、ウエストバンド11a、サスペンダ11b、一対の股関節ユニット12、一対の膝関節ユニット13、ゴム球14、バッテリ15、制御装置16、並びにバッテリ15および制御装置16を収容するコントロールボックス50を備えて構成されている。
【0020】
ウエストバンド11aは、一例として、一部に硬質の材料が用いられると共に一部に弾性を有する材料が用いられたバンドと、そのバンドの両端部に配設された連結部材(例えば、面ファスナー)とを備えて長さ調整可能に構成されて、図1~3に示すように、装着者200の腰部(股関節の上部)に巻き付けて装着される。
【0021】
サスペンダ11bは、図2に示すように、ウエストバンド11aに取り付けられたコントロールボックス50の荷重を装着者200の肩で分担するための部材であって、各先端部がコントロールボックス50に接続された肩掛け用のバンドで構成されている。
【0022】
各股関節ユニット12は、図1~3に示すように、股関節アクチュエータ21、アーム22、固定バンド23をそれぞれ備えて構成されている。股関節アクチュエータ21は、第1の駆動部に相当し、回転軸を回転させて回転力(駆動力)を発生するモータと、モータの回転軸の回転数をアシストに適した回転数に減速する減速機と、モータおよび減速機を保持する保持部21aとを備えて構成されている。また、各股関節ユニット12は、装着者200の左右の側腰部における左右の股関節にそれぞれ対向する部位に減速機の回転軸が位置するように、保持部21aの先端部側(図1~3における上端部側)がウエストバンド11aに固定されている。
【0023】
アーム22は、第1のアームに相当し、図1~3に示すように、股関節アクチュエータ21における減速機の回転軸に基端部(図1~3における上端部)が接続されている。また、アーム22は、固定バンド23によって先端部が大腿部に固定され、股関節アクチュエータ21が発生する回転力を、固定バンド23を介して装着者200の大腿部に作用させる。
【0024】
固定バンド23は、第1の固定バンドに相当し、図4に示すように、バンド23a、連結部材23b、気体袋23cを備えて構成され、アーム22の先端部側に取り付けられている。この固定バンド23は、図1~3に示すように、装着者200の大腿部(膝上部)に巻き付けるように装着されて、アーム22の先端部側を大腿部の先端部側に固定する機能を有している。
【0025】
バンド23aは、一例として、ウエストバンド11aと同様に、一部に硬質の材料が用いられると共に一部に弾性を有する材料が用いられて帯状に形成されている。連結部材23bは、一例として、面ファスナーで構成されて、バンド23aの両端部の連結および連結解除を行う。
【0026】
気体袋23cは、バンド23aの内側に配設されて、気体(この例では、空気)の供給によって膨張する。このバンド23aは、大腿部に巻き付けた状態のバンド23aの内側と大腿部との間で膨張する(つまり、大腿部に巻き付けた状態の固定バンド23の内周を縮径させる)ことで、大腿部に対して固定バンド23を締め付ける機能を有している。この場合、気体袋23cは、図4に示すように、複数(この例では、4つ)のエリアに分割され各エリアにチューブ41を介して空気が供給されることで均等に膨張して、大腿部に対して固定バンド23を均等に締め付けることが可能となっている。
【0027】
各膝関節ユニット13は、図1~3に示すように、膝関節アクチュエータ31、アーム32、固定バンド30および固定バンド33をそれぞれ備えて構成されている。膝関節アクチュエータ31は、第2の駆動部に相当し、回転軸を回転させて回転力(駆動力)を発生するモータと、モータの回転軸の回転数をアシストに適した回転数に減速する減速機と、モータおよび減速機を保持する保持部31aとを備えて構成されている。また、各膝関節ユニット13は、装着者200における左右の膝部の外側にそれぞれ対向する部位に減速機の回転軸が位置するように、保持部31aの先端部側(図1~3における上端部側)が固定バンド30に固定される。なお、以下の説明において、股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を合わせて「アクチュエータ21,31」もいう。
【0028】
固定バンド30は、第2の固定バンドに相当し、図4に示すように、バンド30a、連結部材30b、気体袋30cを備えて構成され、膝関節ユニット13の膝関節アクチュエータ31の保持部31aの先端部側(図1~3における上端部側)に取り付けられている。この固定バンド30は、図1~3に示すように、装着者200の大腿部(膝上部)に巻き付けるように装着されて、膝関節アクチュエータ31の保持部31aの先端部側を大腿部の先端部側に固定する機能を有している。
【0029】
この場合、バンド30aは、バンド23aと同様に形成され、連結部材30bは、連結部材23bと同様に形成され、気体袋30cは、気体袋23cと同様に形成されている。
【0030】
アーム32は、第2アームに相当し、図1~3に示すように、膝関節アクチュエータ31における減速機の回転軸に基端部(図1~3における上端部)が接続されている。また、アーム32は、固定バンド33によって先端部が下腿部に固定され、膝関節アクチュエータ31が発生する回転力を、固定バンド33を介して装着者200の下腿部に作用させる。
【0031】
固定バンド33は、第3の固定バンドに相当し、図4に示すように、バンド33a、連結部材33b、気体袋33cを備えて構成され、膝関節ユニット13のアーム32の先端部側(図1~3における下端部側)に取り付けられている。この固定バンド33は、図1~3に示すように、装着者200の下腿部の先端部側に巻き付けるように装着されて、膝関節アクチュエータ31のアーム32の先端部側を下腿部の先端部側に固定する機能を有している。
【0032】
この場合、バンド33aは、バンド23aと同様に形成され、連結部材33bは、連結部材23bと同様に形成され、気体袋30cは、気体袋23cと同様に形成されている。
【0033】
ゴム球14は、手動式の加圧装置の一例であって、気体袋23c,30c,33cに気体(この例では、空気)を圧送する。また、ゴム球14は、全ての各気体袋23c,30c,33cにチューブ41で接続されている。このため、このアシストウェア1では、1つのゴム球14から全ての気体袋23c,30c,33cに対して空気を圧送することが可能となっている。
【0034】
バッテリ15は、股関節アクチュエータ21、膝関節アクチュエータ31および制御装置16の駆動用の電力を出力する。また、バッテリ15は、図2に示すように、ウエストバンド11aおよびサスペンダ11bに取り付けられたコントロールボックス50内に制御装置16と共に収容されている。
【0035】
制御装置16は、股関節アクチュエータ21および膝関節アクチュエータ31を制御する。具体的には、制御装置16は、装着者200の動作に同調して、装着者200の上体と大腿部との角度が拡縮する向きの回転力を発生させるように股関節アクチュエータ21を制御すると共に、大腿部と下腿部との角度が拡縮する向きの回転力を発生させるように膝関節アクチュエータ31を制御して装着者200の動作をアシストする同調制御を実行する。
【0036】
また、制御装置16は、一例として、制御用PC、アンプ、AD変換器、I/Oインターフェース、D/A変換器およびモータドライバを備えて構成されている。この制御装置16では、制御用PCが、同調制御用プログラム(動作アシスト用プログラム)を実行することにより、同調制御のためのゲイン調整部、解析部およびPID制御部として機能して、アシストウェア1の各アクチュエータ21,31に対して神経振動子を用いた同調制御を行う。
【0037】
具体的には、アクチュエータ21,31のトルクセンサによって検出される装着者200とアクチュエータ21,31との間の相互作用トルクが、アンプを介して増幅され、AD変換器によってデジタル信号に変換された後に、I/Oインターフェースを介して制御用PCに取り込まれる。取り込まれた相互作用トルクは、装着者200とアシストウェア1との同調の度合いを調整するゲイン調整部を介して、解析部に入力される。解析部では、神経振動子モデルにより解析して、装着者200の上体と大腿部との角度の目標角、および大腿部と下腿部との角度の目標角度を求め、現在の各角度と目標角度との差をPID制御部に出力する。
【0038】
PID制御部は、モータを駆動した結果得られる相互作用トルクをトルクセンサによって再度検出し、解析部によって新たに目標角度を設定して、再度モータを駆動制御する。このようなモータの駆動を補正制御(PID制御)する操作を繰り返し行うことにより、同調制御が行われる。また、制御用PCは、PID制御部から出力される指令電圧をD/A変換器を介してモータドライバに供給し、指令電圧に基づきモータドライバによりアクチュエータ21,31のモータを駆動する。
【0039】
次に、アシストウェア1の使用方法、およびその際のアシストウェア1の動作について図面を参照して説明する。
【0040】
最初に、アシストウェア1の装着方法について説明する。まず、装着者200が起立した状態で、コントロールボックス50が取り付けられているサスペンダ11bを装着者200の肩に掛けて長さを調整する。次いで、ウエストバンド11aを装着者200の要部に巻き付けて締め付け、連結部材で両端部を連結する。
【0041】
続いて、装着者200が椅子に腰掛けた状態で、左右両方の固定バンド23のバンド23aを大腿部に巻き付けて締め付け、次いで、連結部材23bを連結する。続いて、左右両方の固定バンド30を大腿部の下部に巻き付けて締め付け、次いで、連結部材30bを連結する。続いて、固定バンド33のバンド33aを下腿部の先端側に巻き付けて締め付け、続いて連結部材33bを連結する。
【0042】
次いで、図1に示すように、装着者200が起立した状態で、各固定バンド23,30,33の増し締めを行う。具体的には、ゴム球14の押し潰し、および押し潰し解除の操作を繰り返す(以下、この一連の操作を「給気操作」とも言う)。この給気操作によってゴム球14から押し出された空気がチューブ41を介して各気体袋23c,30c,33cに圧送される。また、空気の圧送によって各気体袋23c,30c,33cがバンド23a,30a,33aの内側と大腿部または下腿部との間で膨張する(つまり、大腿部または下腿部に巻き付けた状態の固定バンド23,30,33の内周を縮径させる)ことで、大腿部または下腿部に対して固定バンド23,30,33が締め付けられる。この場合、気体袋23c,30c,33cが、複数のエリアに分割され各エリアに空気が供給されることで均等に膨張するため、大腿部または下腿部に対して固定バンド23,30,33が均等に締め付けられる。
【0043】
続いて、各固定バンド23,30,33が十分に締め付けられたときには、ゴム球14を用いた給気操作を停止する。この場合、このアシストウェア1では、ゴム球14が全ての各気体袋23c,30c,33cにチューブ41で接続されているため、ゴム球14から全ての気体袋23c,30c,33cに対して一度に空気を圧送される。この結果、このアシストウェア1では、大腿部または下腿部に対する固定バンド23,30,33の締め付けを一度に行うことが可能となっている。以上により装着が完了する。
【0044】
次に、バッテリ15の電源を投入する。この際に、制御装置16に電源が供給され制御装置16が作動する。次いで、制御装置16は、挙上動作アシスト用プログラムに従って第1の同調制御を開始する。
【0045】
続いて、装着者200が重量物を持ち上げる際の挙上動作をアシストする挙上動作アシスト機能を利用するときには、図外の操作部を用いて挙上動作アシスト機能を有効とする操作を行う。この状態において、装着者200が重量物を掴むために、直立状態(初期状態)から膝を曲げたときには、装着者200の上体と大腿部との角度θ1が縮小すると共に、装着者200の大腿部と下腿部との角度θ2が縮小する。次いで、装着者200が重量物を掴んで、挙上動作を行ったときには、上述した角度θ1が拡大すると共に、角度θ2が拡大する。
【0046】
一方、アシストウェア1側では、制御装置16が、装着者200の上体と大腿部との角度θ1に対応する股関節アクチュエータ21の保持部21aとアーム22との角度を、モータのエンコーダからの出力信号に基づいて検出すると共に、装着者200の大腿部と下腿部との角度θ2に対応する膝関節アクチュエータ31の保持部31aとアーム32との角度を、モータのエンコーダからの出力信号に基づいて検出する。また、制御装置16は、アクチュエータ21,31のトルクセンサからの出力信号に基づいてアクチュエータ21,31と装着者200との間の相互作用トルクを検出する。
【0047】
また、制御装置16は、角度θ1,θ2の経時変化から角度θ1,θ2の目標角を求め、現在の角度θ1,θ2と目標角度との差を算出して、差に応じた指令電圧を出力する。続いて、制御装置16は、指令電圧をD/A変換器を介してモータドライバに供給することによってアクチュエータ21,31のモータを駆動制御する。
【0048】
また、制御装置16は、相互作用トルクをトルクセンサによって再度検出すると共に、新たに目標角度を設定して、再度アクチュエータ21,31のモータを駆動制御する。制御装置16は、このようなモータの駆動を補正制御(PID制御)するプロセスを繰り返して行うことによって第1の同調制御を行い、これにより、装着者200の動作がアシストされる。この場合、このアシストウェア1では、上述したように、装着者200の挙上動作において、上体と大腿部との角度θ1が拡縮する動作のアシストに加えて、大腿部と下腿部との角度θ2が拡縮する動作のアシストが行われるため、膝の屈伸を伴う挙上動作に対して十分なアシスト効果が実現される。
【0049】
一方、装着者200の歩行動作をアシストするアシストウェア1の歩行動作アシスト機能を利用するときには、図外の操作部を用いて歩行動作アシスト機能を有効とする操作を行う。この状態において、装着者200が歩行動作を開始したときには、制御装置16が、上述した角度θ1,θ2の経時変化から装着者200が歩行動作に移行したことを判別し、装着者200の歩行動作をアシストする第2の同調制御を実行する。この第2の同調制御では、制御装置16は、上述した第1の同調制御と同様に、角度θ1,θ2をモータのエンコーダからの出力信号に基づいて検出すると共に、アクチュエータ21,31のトルクセンサからの出力信号に基づいてアクチュエータ21,31と装着者200との間の相互作用トルクを検出する。また、制御装置16は、角度θ1,θ2および相互作用トルクに基づいて補正制御(PID制御)を行いつつ指令電圧を供給することによってアクチュエータ21,31のモータを駆動制御する。これにより、装着者200の歩行動作がアシストされる。
【0050】
このように、本願のアシストウェア1によれば、巻き付けた状態の各固定バンド23,30,33の内周を気体の供給によって縮径させる気体袋23c,30c,33cを固定バンド23,30,33にそれぞれ配設したことにより、固定バンド23,30,33に気体を供給して固定バンド23,30,33を膨張させることで、面ファスナーだけを用いてバンドを締め付ける従来の構成と比較して、大腿部および下腿部に対する各固定バンド23,30,33の締め付けを確実に行うことができる。また、このアシストウェア1によれば、装着者が前傾姿勢を取ることなく気体袋23c,30c,33cに気体を供給することで、各固定バンド23,30,33を容易に締め付ける(増し締めする)ことができる。したがって、このアシストウェア1によれば、各アーム22,32を大腿部および下腿部に確実かつ容易に固定することができる。
【0051】
また、本願のアシストウェア1によれば、1つのゴム球14から全ての気体袋23c,30c,33cに対して気体を圧送可能に構成したことにより、気体袋23c,30c,33c毎に個別のゴム球14を設ける構成や固定バンド23,30,33毎に個別のゴム球14を設ける構成とは異なり、全ての固定バンド23,30,33に空気を一度に供給して大腿部または下腿部に対する各固定バンド23,30,33の締め付けを一度に行うことができるため、各固定バンド23,30,33の締め付けの作業を短時間で行うことができる。
【0052】
次に、アシストウェアの他の実施例としての図5に示すアシストウェア1Aの構成について説明する。なお、以下の説明において、上述したアシストウェア1と同様の構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0053】
アシストウェア1Aは、図5に示すように、上述したアシストウェア1の各構成要素に加えて、ズボン型の下衣部17を備えて構成されている。また、このアシストウェア1Aでは、図5,6に示すように、上述した固定バンド23,30が1本の固定バンド34で構成されている(第1の固定バンドおよび第2の固体バンドが一体に構成されている)。また、このアシストウェア1Aでは、各固定バンド33,34が下衣部17の内側に取り付けられている。
【0054】
また、このアシストウェア1Aでは、図6に示すように、股関節ユニット12における股関節アクチュエータ21のモータおよび減速機が下衣部17の外側に配置され、アーム22の先端部側が下衣部17の外側における固定バンド34の対向部位に面ファスナーで固定されている。また、膝関節ユニット13における膝関節アクチュエータ31のモータおよび減速機が下衣部17の外側に配置され、保持部31aの先端部側が下衣部17の外側における固定バンド34の対向部位に面ファスナーで固定され、アーム32の先端部側が下衣部17の外側における固定バンド33の対向部位に面ファスナーで固定されている。
【0055】
また、図5に示すように、下衣部17には、装着者200の脚部が挿入される挿入部分の前部に線ファスナー72a,72bが設けられており、この線ファスナー72a,72bによって下衣部17の前部を接合および分離することが可能となっている。なお、線ファスナー72a,72bに代えて面ファスナーを用いることもでき、線ファスナー72a,72bと面ファスナーの双方を用いることもできる。
【0056】
このアシストウェア1Aによれば、ズボン型の下衣部17を備え、各固定バンド23,30,33を下衣部17の内側に取り付けたことにより、下衣部17を装着(履く)ことで、各固定バンド23,30,33を大腿部および下腿部に巻き付けることができるため、アシストウェア1Aを容易に装着することができる。
【0057】
また、このアシストウェア1Aによれば、装着者200の各脚部の挿入部分の前部が線ファスナー72a,72bによって接合および分離可能に下衣部17を構成したことにより、下衣部17の着脱を容易に行うことができるため、アシストウェア1Aの着脱を容易に行うことができる。
【0058】
なお、上述したアシストウェア1,1Aの構成は、本願のアシストウェアの一例であって、適宜変更した構成を採用することができる。例えば、上述したアシストウェア1,1Aでは、1つのゴム球14から全ての気体袋23c,30c,33cに空気を供給する構成を採用しているが、複数のゴム球14から気体袋23c,30c,33cに空気を供給する構成を採用することもできる。また、4つのエリアに分割した気体袋23c,30c,33cを用いる例について上述したが、任意の複数に分割した気体袋23c,30c,33cを用いることができる。また、エリアに分割していない気体袋23c,30c,33cを用いることもできる。
【0059】
また、加圧装置としての手動式のゴム球14を用いて固定バンド23,30,33に空気を供給する例について上述したが、他の加圧装置(例えば、電動式のコンプレッサー等)を用いて気体袋23c,30c,33cに空気を供給する構成を採用することもできる。また、空気以外の気体(例えば、炭酸ガスや窒素ガス等)を気体袋23c,30c,33cに供給する構成を採用することもできる。
【0060】
また、上述した例では、固定バンド23,30,33,34に気体袋23c,30c,33cを配設しているが、これらに加えて、ウエストバンド11aに気体袋を配設することもできる。
【0061】
また、挙上動作アシスト機能および歩行動作アシスト機能を備えたアシストウェア1,1Aに適用した例について上述したが、これらの機能に加えて(または、これらの機能に代えて)、装着者200が起立した状態から着座する着座動作をアシストする着座アシスト機能や、装着者200が着座した状態から起立(立ち上がる)する起立動作(立ち上がり動作)をアシストする起立アシスト機能(立ち上がりアシスト機能)を備えたアシストウェアに適用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1,1A アシストウェア
14 ゴム球
17 下衣部
21 股関節アクチュエータ
22,32 アーム
23,30,33,34 固定バンド
23c,30c,33c 気体袋
31 膝関節アクチュエータ
72a,72b 線ファスナー
200 装着者
図1
図2
図3
図4
図5
図6