(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
F28D 1/047 20060101AFI20240411BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20240411BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20240411BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20240411BHJP
【FI】
F28D1/047 B
F24H1/14 C
F28F1/00 B
F28F1/00 E
F24H9/00 A
(21)【出願番号】P 2020068371
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】瀬 直己
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-232922(JP,A)
【文献】特開2005-241240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0227712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D1/047
F28F1/00-1/44
F24H1/14,9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のx方向に延び、かつx方向に対して交差するz方向に間隔を隔てて並ぶ複数の直管部が、複数の曲管部を介して一連に繋がった蛇行状であり、かつ加熱用媒体が流通する領域に、x,z方向とは交差するy方向に積層して配されている複数の伝熱管を備えており、
これら複数の伝熱管として、y方向において互いに隣り合い、かつy方向視において前記複数の直管部どうしが非オーバラップ状態となり、かつ前記複数の曲管部の一部分どうしがオーバラップ状態となるように、z方向に位置ずれした第1および第2の伝熱管を有している、熱交換器であって、
前記第1および第2の伝熱管の前記各曲管部には、互いにオーバラップする箇所のy方向の厚みを、他の部分と比較して部分的に小さくする第1の凹部および第2の凹部がそれぞれ設けられており、
前記第1の凹部は、前記第1の伝熱管の前記各曲管部のz方向の幅方向中心線からz方向に偏った配置とされ、かつ前記各曲管部のy方向に対向する両側面部の片側に複数併存しないように設けられている一方、
前記第2の凹部は、前記第2の伝熱管の前記各曲管部のz方向の幅方向中心線から前記第1の凹部の偏り方向とは反対側に偏った配置とされ、かつ前記各曲管部のy方向に対向する両側面部の片側に複数併存しないように設けられており、
前記第2の伝熱管は、前記第1の伝熱管と形状およびサイズが同一の伝熱管が、z方向において反転した構成とされているとともに、前記第1および第2の凹部の形成箇所どうしは、嵌合していることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1の凹部は、前記第1の伝熱管の前記各曲管部のy方向において対向する両側面部に、一対で設けられている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1の凹部は、前記第1の伝熱管の前記各曲管部のy方向において対向する両側面部の一方のみに設けられている、熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置などの温水装置の構成要素として用いられ、燃焼ガスなどの加熱用媒体から伝熱管を利用して熱回収を行なうタイプの熱交換器、およびこれを備えた温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の熱交換器においては、燃焼ガスから熱回収を行なうための伝熱管として、蛇行状の伝熱管が用いられている。蛇行状の伝熱管は、複数の直管部が複数の曲管部を介して繋がった構成である。前記文献においては、このような蛇行状の伝熱管として、複数の伝熱管が用いられ、かつこれらはたとえば上下高さ方向に積層されている。また、互いに隣り合う伝熱管どうしは、たとえば略水平方向に位置ずれした配列に設定され、燃焼ガスが各伝熱管に作用し易くなるように配慮されている。
【0003】
一方、前記各伝熱管のうち、曲管部は、扁平状に加工され、直管部よりも厚みが小さくされている。このことにより、互いに隣接する伝熱管どうしを互いに接近させることが可能である。その結果、複数の伝熱管の全体の積層方向の幅を小さくし、熱交換器全体の小サイズ化を図ることが可能となっている。
【0004】
しかしながら、前記従来技術によれば、次に述べるように、未だ改善すべき余地がある。
【0005】
第1に、蛇行状の伝熱管の各曲管部の全体を扁平状に形成しているため、伝熱管の内部を加熱対象流体が流通する際の抵抗(流路抵抗)が大きくなる不利がある。
第2に、各曲管部の全体を扁平状に形成するための加工量が多いため、残留応力が大きくなる。これは、伝熱管に応力割れを生じさせる要因となり、好ましくない。熱交換器の使用時には、たとえばウォータハンマ現象に起因して、伝熱管に大きな圧力が作用する場合があるため、前記した残留応力はできる限り小さくすることが望まれる。
第3に、蛇行状の伝熱管の各曲管部を偏平状にする手段としては、たとえば
図13に示すように、伝熱管2eの曲管部21に対し、曲管部21の曲げ方向とは交差する方向にプレス加工する手段が考えられる。ところが、このようなプレス加工を行なうと、矢印Naに示すように、曲管部21の両端が開く方向に変形しようとする力が発生する。特許文献1においては、プレス加工量が多いため、前記した変形を生じ易く、伝熱管2eが本来の仕様とは相違したものとなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、蛇行状の伝熱管の流路抵抗が大きくなることや、伝熱管に多くの残留応力が発生するなどの不具合を解消し得るとともに、全体の小サイズ化を適切に図ることが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、所定のx方向に延び、かつx方向に対して交差するz方向に間隔を隔てて並ぶ複数の直管部が、複数の曲管部を介して一連に繋がった蛇行状であり、かつ加熱用媒体が流通する領域に、x,z方向とは交差するy方向に積層して配されている複数の伝熱管を備えており、これら複数の伝熱管として、y方向において互いに隣り合い、かつy方向視において前記複数の直管部どうしが非オーバラップ状態となり、かつ前記複数の曲管部の一部分どうしがオーバラップ状態となるように、z方向に位置ずれした第1および第2の伝熱管を有している、熱交換器であって、前記第1および第2の伝熱管のうち、少なくとも第1の伝熱管の前記各曲管部には、前記第2の伝熱管の前記各曲管部とオーバラップする箇所のy方向の厚みを、前記各曲管部の他の部分と比較して部分的に小さくする第1の凹部が設けられており、この第1の凹部に、前記第2の伝熱管の前記各曲管部の一部分が嵌入していることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、互いに隣り合う蛇行状の第1および第2の伝熱管のうち、少なくとも第1の伝熱管の各曲管部に設けられている第1の凹部に、第2の伝熱管の各曲管部の一部が嵌入しているため、第1および第2の伝熱管のy方向の配列ピッチを小さくすることができる。その結果、y方向における複数の伝熱管の全体の幅を小さくし、熱交換器の小サイズ化を図ることが可能である。また、本発明によれば、そのようなことに加え、次に述べるような効果がさらに得られる。
第1に、特許文献1とは異なり、伝熱管の曲管部の全体を扁平状に形成しておらず、曲管部の一部分に第1の凹部を部分的に設けているに過ぎないため、伝熱管の内部を加熱対象流体が流通する際の抵抗(流路抵抗)を小さくすることができる。
第2に、特許文献1の曲管部の全体を扁平状に形成する手段と比較すると、曲管部に第1の凹部を部分的に設けるための加工は、その加工量が少なく、残留応力を小さくすることが可能である。したがって、伝熱管に応力割れを生じ難くすることができ、伝熱管には、たとえばウォータハンマ現象に対しても十分な耐久強度をもたせることが可能である。
第3に、伝熱管の曲管部に第1の凹部を形成する手段として、前記曲管部にプレス加工を施す場合、そのプレス加工量は少なくすることができる。このため、
図13を参照して説明した場合とは異なり、曲管部の両端が開く方向に伝熱管が大きく変形することは回避され、伝熱管が本来の仕様とは相違したものとなる虞を適切に解消することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記第1の凹部は、前記第1の伝熱管の前記各曲管部のy方向において対向する両側面部に、一対で設けられている。
【0012】
このような構成によれば、各曲管部の所定の両側面部の片側のみに第1の凹部を設ける場合と比較すると、各第1の凹部の深さを小さくしつつ、第1および第2の伝熱管のy方向の配列ピッチを小さくすることが可能である。第1の凹部の深さを大きくすると、この第1の凹部の加工に起因する残留応力が大きくなる虞があるが、前記構成によれば、そのような虞を回避しつつ、伝熱管の配列ピッチを小さくすることが可能である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記第1の凹部は、前記第1の伝熱管の前記各曲管部のy方向において対向する両側面部の一方のみに設けられている。
【0014】
このような構成によれば、各曲管部の所定の両側面部の両側に、第1の凹部を一対で設ける場合と比較すると、伝熱管の構造を簡素にすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記第2の伝熱管の前記各曲管部には、y方向の厚みを前記各曲管部の他の部分と比較して部分的に小さくする第2の凹部が設けられており、前
記第1および第2の凹部の形成箇所どうしは嵌合している。
【0016】
このような構成によれば、第1および第2の凹部のそれぞれの深さを小さくしつつ、複数の伝熱管のy方向の配列ピッチを小さくすることが可能となる。したがって、第1および第2の凹部を形成することに起因する残留応力を小さくする上で、一層好ましいものとなる。また、第1の凹部のみが設けられている構成と比較すると、複数の伝熱管のy方向の配列ピッチをより小さくし、熱交換器の小型化をより促進することも可能である。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記第2の伝熱管は、前記第1の伝熱管と形状およびサイズが同一の伝熱管が、上下反転した構成である。
【0018】
このような構成によれば、第1および第2の伝熱管として、形状やサイズが相違するものを用いる場合と比較すると、熱交換器の製造コストを廉価にすることが可能である。
【0019】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器を備えていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1の熱交換器を用いた温水装置の概略構成を示し、同図の実線で示す熱交換器は、
図1のII-II断面図に相当する。
【
図4】
図1~
図3に示す熱交換器において用いられている伝熱管(第1および第2の伝熱管)を示す斜視図である。
【
図5】(a)は、
図4に示す伝熱管の要部正面図であり、(b)は、(a)のVb-Vb 断面図であり、(c)は、(a)の矢視Vcの側面図であり、(d)は、(a)のVd-Vd断面図であり、(e)は、(a)のVe-Ve断面図である。
【
図6】(a)は、
図5に示す伝熱管を重ねた状態での要部正面図であり、(b)は、(a)のVIb-VIb断面図であり、(c)は、(a)のVIc-VIc断面図である。
【
図8】(a)は、
図7に示す伝熱管の要部正面図であり、(b)は、(a)のVIIIb-VIIIb断面図であり、(c)は、(a)のVIIIc-VIIIc断面図である。
【
図10】(a)は、
図9に示す伝熱管の要部正面図であり、(b)は、(a)のXb-Xb断面図であり、(c)は、(a)のXc-Xc断面図である。
【
図12】(a)は、
図11に示す伝熱管の要部正面図であり、(b)は、(a)のXIIb-XIIb断面図であり、(c)は、(a)のXIIc-XIIc断面図である。
【
図13】従来技術における作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1~
図3に示す熱交換器HEは、ケース1、蛇行状の複数の伝熱管2、ならびに入水
用および出湯用の一対のヘッダ部7a,7bを備えている。
【0025】
ケース1は、上面部および下面部が開口した略矩形筒状または枠状であり、このケース1の内部に加熱用媒体が供給される。
図2には、熱交換器HEを用いた温水装置WHが示されている。この温水装置WHにおいては、ケース1の上側にバーナ80、および他の熱交換器81が設けられている。他の熱交換器81は、顕熱回収用の1次熱交換器であり、本実施形態の熱交換器HEは、潜熱回収用の2次熱交換器である。温水装置WHにおいては、バーナ80によって発生された燃焼ガス(加熱用媒体)が下向きに進行し、熱交換器81,HEを順次通過することにより、燃焼ガスから顕熱および潜熱が順次回収され、この回収された熱を利用して湯水加熱がなされる。この湯水は、たとえば台所の給湯栓や、浴室の給湯栓、浴槽などに供給される。
【0026】
複数の伝熱管2は、たとえばステンレスなどの金属製であって、蛇行状伝熱管であり、ケース1内に収容されている。
より具体的には、各伝熱管2は、
図3によく表れているように、ケース1の前後方向(本発明でいうx方向の一例)に延び、かつ上下高さ方向(本発明でいうz方向の一例)に間隔を隔てて並んだ複数の直管部20が、側面視半円弧状の複数の曲管部21を介して一連に繋がった蛇行状である。
各伝熱管2の両端部は、ケース1の側壁部10を貫通しており、かつこの側壁部10の外面側に設けられているヘッダ部7a,7bに接続されている。このことにより、ヘッダ部7aに外部から供給された湯水は、各伝熱管2内を通過してヘッダ部7bに到達し、出湯する。このような過程において、前記湯水は、燃焼ガスにより加熱される。
【0027】
複数の伝熱管2は、第1および第2の伝熱管2A,2Bに区分され、これらには第1および第2の凹部3A,3Bが設けられている。以下、この点をより詳細に説明する。
【0028】
複数の伝熱管2は、ケース1の横幅方向(
図2の左右方向であり、本発明でいうy方向の一例)に並べられているが、互いに隣り合う伝熱管2どうしは、上下高さ方向に適当な寸法Laだけ、位置ずれして設けられている。本実施形態においては、高さが低い側が、第1の伝熱管2A(2)であり、高さが高い側が第2の伝熱管2B(2)である。これら第1および第2の伝熱管2A,2Bは、複数の直管部20どうしが上下高さ方向において互いにオーバラップしないように位置ずれしている。ただし、複数の曲管部21の一部分どうしは、互いにオーバラップしている(
図3の符号OVで示す箇所がオーバラップ部OVである)。
【0029】
第1の凹部3Aは、
図4に示すように、第1の伝熱管2Aの各曲管部21のうち、前記したオーバラップ部OVに相当する箇所に設けられている。
図5によく表れているように、第1の凹部3Aは、曲管部21の中心線CLからオフセットした配置であり、かつ曲管部21の左右両側面部(y方向に対向する両側面部)に、左右一対で互いに対向して設けられている。このことにより、曲管部21の一対の第1の凹部3Aの形成箇所の幅Lbは、他の部分の幅Lc(伝熱管2の外径に相当)よりも小さい。第1の凹部3Aは、曲管部21に部分的なプレス加工を施すことにより形成することができる。
【0030】
第2の凹部3Bは、第2の伝熱管2Bの各曲管部21のうち、前記したオーバラップ部OVに相当する箇所に設けられている。ここで、本実施形態における第2の伝熱管2Bは、第1の伝熱管2Aを上下反転させた構成に相当している。したがって、第2の凹部3Bは、前記した第1の凹部3Aと同様に、各曲管部21の左右両側面部に、左右一対で互いに対向して設けられている。
複数の第1および第2の伝熱管2A,2Bは、第1の凹部3Aの形成箇所と、第2の凹
部3Bの形成箇所とが互いに嵌合した状態、つまり第1の凹部3Aに第2の凹部3Bの形成箇所が嵌入し、かつ第2の凹部3Bに第1の凹部3Aの形成箇所が嵌入する状態)に設定されている(
図2および
図6を参照)。
【0031】
次に、前記した熱交換器HEの作用について説明する。
【0032】
まず、既述したように、第1および第2の伝熱管2A,2Bの各曲管部21のオーバラップ部OVにおいては、幅が小さくされている第1および第2の凹部3A,3Bの形成箇所どうしが嵌合している。このため、第1および第2の伝熱管2A,2Bのそれぞれの直管部20どうしを、
図2の一部拡大図に示すように、適当な寸法Ldだけケース1の横幅方向にオーバラップさせた配置とすることが可能である。このようなことから、複数の伝熱管2の全体の横幅L1を小さくし、熱交換器HEの小サイズ化を図ることができる。
【0033】
第1および第2の凹部3A,3Bは、各曲管部21に部分的に設けられているに過ぎない。このため、第1および第2の凹部3A,3Bの存在に起因して、伝熱管2の内部を湯水が流れる際の流路抵抗がかなり大きくなることは防止され、伝熱管2への通水に苦慮するといった虞を生じないものとすることが可能である。また、各曲管部21に第1および第2の凹部3A,3Bをプレス加工により設ける場合、それら第1および第2の凹部3A,3Bは、比較的小サイズでよいため、プレス加工量(変形量)は少なくすることができる。したがって、プレス加工による残留応力を小さくし、耐久強度に優れたものとすることもできる。さらに、曲管部21に対するプレス加工量が多いと、曲管部21の両端部が開くように、伝熱管2が変形する虞があるが、本実施形態においては、そのような虞もなくすことが可能である。
【0034】
図7~
図12は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0035】
図7および
図8に示す実施形態においては、第1および第2の伝熱管2A,2Bのそれぞれの曲管部21の左右両側面部の片側のみに第1および第2の凹部3A,3Bが設けられており、反対の片側には、第1および第2の凹部3A,3Bは設けられていない。第2の伝熱管2Bは、前記実施形態と同様に、第1の伝熱管2Aを上下反転させた構成に相当している。
図8(c)によく表れているように、第1の伝熱管2Aの曲管部21の片側においては、第1の凹部3Aの形成箇所に第2の凹部3Bの形成箇所が嵌入している。これに対し、第1の伝熱管2Aの曲管部21の前記とは反対の片側においては、第1および第2の凹部3A,3Bが形成されていない箇所どうしが対向接触または対向接近した配置とされる。
【0036】
本実施形態においては、
図8(b)に示すように、第1および第2の伝熱管2A,2Bの直管部20どうしをケース1の横幅方向に適当な寸法Leだけオーバラップさせることができる。したがって、前記実施形態と同様に、複数の伝熱管2(2A,2B)の全体の横幅を小さくすることができる。第1および第2の凹部3A,3Bが、曲管部21の左右両側面部に設けられている前記実施形態と比較すると、各伝熱管2の構成の簡素化を図ることも可能である。
【0037】
図9および
図10に示す実施形態においては、第1の伝熱管2Aには、各曲管部21の左右両側面部に一対の第1の凹部3Aが設けられているのに対し、第2の伝熱管2Bには、第2の凹部3Bに相当する部位は設けられていない。第2の伝熱管2Bとしては、既存の蛇行状管体を用いることが可能である。
図10(c)によく表れているように、第1の伝熱管2Aの一対の第1の凹部3Aには、第2の伝熱管2Bの曲管部21の一部がそのまま嵌入している。
【0038】
本実施形態においては、
図10(b)に示すように、第1および第2の伝熱管2A,2Bの直管部20どうしをケース1の横幅方向に適当な寸法Lfだけオーバラップさせることができる。したがって、前記実施形態と同様に、複数の伝熱管2(2A,2B)の全体の横幅を小さくすることが可能である。第2の伝熱管2Bとしては、第2の凹部3Bを有しない既存の伝熱管を用いることができるため、製造コストを廉価にすることが可能である。
【0039】
図11および
図12に示す実施形態においては、第1の伝熱管2Aには、各曲管部21の左右両側面部の片側のみに第1の凹部3Aが設けられている。第2の伝熱管2Bには、第2の凹部3Bに相当する部位は設けられていない。
図12(c)によく表れているように、第1の伝熱管2Aのうち、第1の凹部3Aには、第2の伝熱管2Bの曲管部21の一部が嵌入しているのに対し、第1の凹部3Aとは反対の片側には、第2の伝熱管2Bの曲管部21の外周面が当接または近接している。
【0040】
本実施形態においては、
図12(b)に示すように、第1および第2の伝熱管2A,2Bの直管部20どうしをケース1の横幅方向に適当な寸法Lgだけオーバラップさせることができる。したがって、前記実施形態と同様に、複数の伝熱管2(2A,2B)の全体の横幅を小さくすることが可能である。第2の伝熱管2Bとしては、第2の凹部3Bを有しない既存の伝熱管を用いることができ、また第1の伝熱管2Aには、片側のみに第1の凹部3Aを設けていることにより、製造コストを廉価にすることが可能である。
【0041】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0042】
第1および第2の凹部の具体的な形状、サイズ、深さなどは限定されない。伝熱管の曲管部の左右両側面部に設けられる場合と、その片側のみに設けられる場合とで、それらの形状などが相違したものとされていてもかまわない。
上述の実施形態においては、上下高さ方向に位置ずれした複数の伝熱管のうち、高さが低い側の一方を第1の伝熱管とし、他方を第2の伝熱管として説明したが、これに限定されず、上述の実施形態とは逆にしてもよい。
また、上述の実施形態においては、本発明でいうx,y方向が略水平方向であり、かつz方向が上下高さ方向に相当しているが、本発明はこれに限定されず、これらの方向を適宜に選択することができる。たとえば、略水平方向に寝た姿勢の複数の伝熱管が、上下高さ方向に積層(配列)された構成、つまりy方向が上下高さ方向である構成とすることも可能である。この場合には、複数の伝熱管の全体の上下高さ方向の幅を小さくし、熱交換器の小サイズ化を図ることができる。
【0043】
伝熱管は、蛇行状であるが、直管部および曲管部の具体的なサイズ、数、材質などは限定されない。伝熱管は、単一の管体部材に曲げ加工を施すことにより形成することが可能であるが、これに代えて、直管部と曲管部とを別部材により形成し、かつこれらを一体的に接続した構成とすることもできる。
【0044】
本発明でいう加熱用媒体は、バーナによって発生された燃焼ガスに限らず、高温の排ガスなどであってもよい。
本発明に係る熱交換器は、潜熱回収用以外のものとすることが可能である。
本発明でいう温水装置は、一般給湯用や風呂給湯用などの給湯装置の他、温水暖房用、あるいは融雪用などの温水装置も含む概念である。
【符号の説明】
【0045】
HE 熱交換器
WH 温水装置
1 ケース
2 伝熱管
2A,2B 第1および第2の伝熱管(伝熱管)
3A,3B 第1および第2の凹部