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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】抗ウイルス衛生マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240411BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022556844
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039312
(87)【国際公開番号】W WO2022085060
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594103862
【氏名又は名称】松井 嗣光
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 嗣光
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1578506(KR,B1)
【文献】特開昭61-209673(JP,A)
【文献】実開昭62-001643(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着者の頭部の一部に装着可能なストラップを備え、その展開状態において、少なくとも被着者の顔面の一部を覆うシート本体に、被着者の呼気に対して交番磁界を付与する永久磁石を備えた滅菌部が設けられ、当該滅菌部が、被着者の呼気の風圧により回動するプロペラファン機構と、このプロペラファン機構の少なくとも一部に固着した永久磁石とから構成されていることを特徴とする抗ウイルス衛生マスク。
【請求項2】
プロペラファン機構に、被着者の吸気時のみにプロペラファンが回動する逆止弁機構、ベアリング軸機構、フリーホイール軸機構、ワンウェイラチェット軸機構、又はカムクラッチ軸機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の抗ウイルス衛生マスク。
【請求項3】
シート本体に開設された吸気口と、この吸気口に着脱自在に取り付け可能な滅菌部とからなり、滅菌部が、回転軸に取付けられるハブの周囲に複数の翼ブレードを固着してなるプロペラファンを備えてなり、このプロペラファン又は前記ハブに複数の永久磁石を固着し、当該プロペラファン又はハブが回動することで、吸気中に交番磁界を付与することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の抗ウイルス衛生マスク。
【請求項4】
シート本体に吸気口と分画して排気口が設けられていることを特徴とする請求項記載の抗ウイルス衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生マスクに関するもので、とくに、磁界の創出あるいは磁気作用によりウイルスや細菌を死滅させその感染を予防する抗ウイルス衛生マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維や抗菌材等様々な素材が衛生マスクに使用され、人体へのウイルスや細菌の侵入を防止又は捕集ことが図られてきた。しかし、ウイルスや細菌の侵入は防ぐことはできたが、これらを死滅させることや不活性化させることはできなかった。
【0003】
近年十数年の間、様々な伝染病が世界各地で流行しており、2002年~2003年にはSARSコロナウイルス(SARS-CoV)による呼吸器系感染症、2012~2013年には「中東呼吸器症候群(MERS)、その中でもとくに、最近全世界的に流行している新型コロナウイスル(COVID-19)による肺炎等の呼吸器疾患に罹患することが深刻で、世界レベルでの社会や経済に深刻な打撃を与えている。このため、これに対応し得る有効な衛生マスクの開発は喫緊の課題となっている。
【0004】
これらの呼吸器疾患は主にウイルスや細菌を含んだ飛沫を感染経路とするものであり、人々が近距離で接触するだけで、患者の咳やくしゃみの時に噴出した呼吸飛沫によってウイルスや細菌(以下、まとめて病原体と記す)が至るところで発散されるため、感染度が極めて高く、広域な集団感染を起こす可能性が高い。しかし、人同士の接触、交流は避けられない。
【0005】
病原体の蔓延を効果的に防止するためには、病原体の主要な感染媒体である飛沫を効果的に遮断しなければならない。そのため、衛生マスクは最適な選択となり、防疫に欠かせない役割を担っている。
【0006】
また、人々は上述した病原体に起因する伝染病の脅威に加えて、深刻な大気汚染問題にも直面している。工業社会の発展によってもたらされた大量の有害な汚染物質が大気中に浮遊し、深刻な大気汚染問題を引き起こしている。これらの大気中の汚染物質の防塵対策としても、現在、衛生マスクは日常的防護用品となっている。
【0007】
以上の問題に対して、衛生マスクの防護効能を強化するとともに衛生問題を解決して、伝染病と外部の汚染物に対する抵抗力を高めるために、効果的な濾過機能を有しつつ、抗菌機能あるいは殺菌機能を有するマスクを設計する必要がある。咳やくしゃみなどによって飛び散る飛沫(直径約5μm)に含まれる病原体の遮断性、すなわちフィルター捕集効率が極めて高い医療用サージカルマスクが提供されている。
【0008】
しかしながら、このような医療用サージカルマスクにおいても大気の濾過機能しか備えておらず、抗菌や殺菌といった機能はほとんどない。他にも、例えば、着用時の口元の動きに対応して形状が崩れ難くなるようにするために、マスク本体部が3枚以上の複数のシート材が積層されてなるシート部と、シート部に取り付けられ、マスク本体の着用者の口元付近の形状を維持する口部補強材とを備え、口部補強材は、シートの肌から最も遠い面のシート材又は肌から最も近い面のシート材の少なくともいずれか一方に対して固定しないことで、着用時の口元の動きに対応して形状が崩れ難くなるように工夫したものがある(特許文献1参照。)。
【0009】
また、衛生マスクを長時間使用すると、その表面に、遮断された病原体や有害物質が蓄積され、内層は湿った暖かい雰囲気になって、細菌を繁殖させやすくなり、その結果、マスク内が病原体繁殖の温床になるおそれがある。
【0010】
そこで、例えば、細胞の壁に穴を開けて内部浸透圧により細胞自体を破裂させ、細菌を死滅に至らせる溶菌酵素からなる殺菌酵素フィルターを挟んで、外側及び内側に捕集補助用の外被層及び内側保護層を設け、口腔への侵入を防止する構成としたマスク(特許文献2参照。)。
【0011】
マスク本体を、光触媒となる酸化チタンに加え、電極となる銀と、吸着剤となるヒドロキシアパタイトが固着された不織布にアクリル系バインダー樹脂を用いてフォトクロミック染料を固着させ、光触媒機能が付与された外側不織布と、これらの不織布の間に挿入されたメルトブローン不織布等の防塵フィルターからなる中間不織布との三層からなるマスク(特許文献3参照。)。
【0012】
マスク本体とストラップとを備え、マスク本体は、外側から内側に向かって順番に配置された表面層、フィルター層と皮膚接触層を備えており、表面層と皮膚接触層はいずれも水溶性亜鉛からなる抗菌抑菌材で作られ、フィルター層は静電気エレクトレット処理されたフィルター材で作られたもの(特許文献4参照。)。等、抗菌又は制菌機能を備えたマスクが種々提案されている。
【0013】
一方で、磁場あるいは磁気の機能性を採用して雰囲気中の脱臭等の空気清浄、除菌消臭を目的とした装置がある。
【0014】
例えば、特許文献5には、有機溶剤を使用する化学工場、ゴム加工工場、塗装工場等において発生する炭化水素成分排気の脱臭を行うために、臭気ガスを、磁場が形成され加熱された酸化銅粉及び鉄粉中を通過させる方法及びその装置が開示されている。当該文献によれば、ドラム内に発生した磁場により臭気ガスを伴う空気中の酸素が臭気成分を酸化分解するとされている。また、特許文献6には、空気通路内に磁気発生手段(永久磁石)を設けて、空気中の酸素を磁気により活性化させて清浄化する空気浄化装置が提案されている。
【0015】
他にも、空気調和機内部の熱交換器の底部に備られた凝縮水を受けるドレンパンの表面、さらに、送風ファン及び送風口に備えられた送風フラップを磁性体素材で構成して磁気を発生させ雑菌の発生を防ぐことができる空気清浄器が(特許文献7参照)。空気が流通する筒状体で囲繞される空気経路に設けられ、空気経路の中心側から外周に向けて放射状に設けられた複数の磁性体で構成されるコアを備え、コアを筒状体に嵌着可能に形成し、空気経路を流通する空気に磁場を付与させる空気清浄装置(特許文献8参照)が提案されている。
【0016】
また、室内空気を磁場装置に通過させ、一般細菌および真菌について「浮遊微生物」、「床面落下微生物」を時間単位で採取測定した試験において、空気を流動させると、床面に存在していた微生物が舞い上がることにより初期は増加するが、以降は磁場の存在が浮遊一般細菌数、浮遊真菌数を共に減少させる結果を得られたことが報告されている(本明細書に添付の図6及び図7のグラフ参照)。
【0017】
そして、このような空調機で使用するプロペラファンとして、例えば特許文献9に記載のものを挙げることができる。これはモーターの回転軸に円筒状のボス部を取付けると共に、このボス部の外周部に所定の間隔を置いて円筒状のハブ部を配置し、ボス部とハブ部とを複数のブリッジリブにて連結し、さらにハブ部の外周部に羽根を装着した構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2018-188743号公報
【文献】実用新案登録第3097786号公報
【文献】特開2005-120482号公報
【文献】実用新案登録第3224548号公報
【文献】特開平2-194811号公報
【文献】特開2001-201169号公報
【文献】特開2006-175167号公報
【文献】特開平5-133610号公報
【文献】特開平5-256299号公報
【文献】磁場が流動する気層中の微生物に及ぼす影響[岩手県工61業技術センター食品技術部 山本忠 他:岩手県工業技術センター報告報告-第12号(2005)]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上述べたように、従来の衛生マスクは基本的には濾過機能しか備えておらず、病原体の抗菌や殺菌といった機能がほとんどない。
【0020】
ここで、本発明者は、農作物に群棲する病害虫の磁性細菌に磁石の特性であるN極とS極の磁場を交互に反復して発生させ、病害虫の生活行動圏内に、N、Sの交互磁場を造り出すことにより、地磁気対応感覚を麻痺又は迷走させ、栄養摂取行動を撹乱させる。あるいは、繁殖行動を阻害し、生命維持活動を妨害する要因を創出できることをすでに知得している。
【0021】
本発明は上記従来技術の課題に鑑み、病原体の人体への侵入を遮断することは無論のこと、呼吸時に侵入する外気中の病原体を死滅又は減滅することができる抗ウイルス衛生マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、本発明の抗ウイルス衛生マスクは、被着者の頭部の一部に装着可能なストラップを備え、その展開状態において、少なくとも被着者の顔面の一部を覆うシート本体に、被着者の呼気に対して交番磁界を付与する永久磁石を備えた滅菌部が設けられ、当該滅菌部が、被着者の呼気の風圧により回動するプロペラファン機構と、このプロペラファン機構の少なくとも一部に固着した永久磁石とから構成されていることを第1の特徴とする。また、プロペラファン機構に、被着者の吸気時のみにプロペラファンが回動する逆止弁機構、ベアリング軸機構、フリーホイール軸機構、ワンウェイラチェット軸機構、又はカムクラッチ軸機構が設けられていることを第2の特徴とする。さらに、シート本体に開設された吸気口と、この吸気口に着脱自在に取り付け可能な滅菌部とからなり、滅菌部が、回転軸に取付けられるハブの周囲に複数の翼ブレードを固着してなるプロペラファンを備えてなり、このプロペラファン又は前記ハブに複数の永久磁石を固着し、当該プロペラファン又はハブが回動することで、吸気中に交番磁界を付与することを第3の特徴とする。さらにまた、シート本体に吸気口と分画して排気口が設けられていることを第4の特徴とする。

【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の抗ウイルス衛生マスクの一実施例を示す斜視図である。
図2図1に示す衛生マスクの分解斜視図である。
図3】(a)は図1のA-A線断面図、(b)は図1のC-C線断面図である。
図4】(a)は本発明の抗ウイルス衛生マスクの他の実施例を示す分解斜視図、(b)はプロペラファンのフリーホール機構の一例を示す要部断面正面図である。
図5】(a)は本発明の抗ウイルス衛生マスクを一般的な既成マスクのインナーとして使用する状態を示す斜視図、(b)は(a)のC-C線断面図である。
図6】実験結果を示し、経過時間ごとの大気中の一般細菌数を示すグラフである。
図7】実験結果を示し、経過時間ごとの大気中の真菌数を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明に係る抗ウイルス衛生マスクの好ましい実施の形態を説明する。尚、便宜上、同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1乃至図3に示す抗ウイルス衛生マスク(以下、単に衛生マスクと称する)は、被着者の頭部の一部に装着可能な一対のストラップ1aを備え、その展開状態において、少なくとも被着者の顔面の一部を覆うシート本体1の正面側に、被着者の呼気に交番磁界を付与する永久磁石6を備えた呼気滅菌部DUが設けられている。
【0026】
呼気滅菌部DUは、一方の側面のみが開放された略矩形の筐体2と、その正面側に突出した円筒形状の吸気口2aと、筐体2内にプロペラファン機構5が収納されて概ね構成される。
【0027】
プロペラファン機構5は、短円柱状のハブ5cの外周部にその径方向に延びる6枚の翼ブレード5aが各々周方向等間隔に固着して形成されている。ハブ5cは、円盤状のプラスチック又はアルミニウム合金等の非磁性体製で、ベアリング8が固着された筐体2背面部への固定盤7を介して回転自在に軸承されている。そして、このプロペラファン機構5は、被着者の呼気(吸気)の風圧(引圧)により回動する。尚、図中7aはベアリング8の固着凹所である。
【0028】
プロペラファン機構5の翼ブレード5aには、各々に磁石嵌装孔5cが穿設されており、この磁石嵌装孔5cに略円柱状の永久磁石6が嵌合固着して埋設されている。尚、翼ブレード5aの耐久性及び被着者の呼気によって回動することを考慮すると、その材質としては、軽量で柔軟かつ剛性の高い、上記ハブ5cと同様に、例えばアルミニウム合金やプラスチック製のものが好ましい。
【0029】
呼気滅菌部DUの筐体2側面の開口2cには、被着者が吸気した時のみに開いて通気し、排気する時はこの開口2cを塞いで通気を遮断する逆止弁機構が形成されている。この逆止弁機構は、弁体9の上端軸の左右両突片9aを筐体2側面上端の凹所2bに可動自在に嵌合し、排気時には弁体9を筐体2内上方に突出したストッパー段部2dに係止させて非通気状態にする。すなわち、被着者の吸気時のみに通気した空気によりプロペラファン5が回動し、排気による通気ではプロペラファン5は回動しないようにされている。
【0030】
そして、翼ブレード5aに装填する永久磁石としては、例えば、ネオジウム系磁石、サマリウム系磁石などの表面200mT(ミリテスラ;2000ガウス)以上、好ましくは450mT(ミリステラ;4500ガウス)以上のものを使用するのが好ましい。そして、静磁場であっても病原体の細胞の運動に磁場暴露によるローレンツ力が働き、病原体の運動を物理的に抑制するものと考察されることが報告されている。
【0031】
また、呼気滅菌部DUの筐体2の側面の開口2cは、隣接した排気ユニット3の通気口3bに連通されると共に、マスク本体1に開設された吸排気窓口10に連通されている。ここで、排気ユニット3は中間に隔壁3cが区画形成され、その排気孔3aから被着者の排気のみが送出できるようにされている。排気については、図3(a)に示すように、マスク本体1の上辺縁カバー12に複数の排気孔12aを形成するもの、図3(b)に示すように、排気流にのみ外方へ開く可撓性のある弁膜16を設けるものでもよい。尚、これら吸排気の通気部分には周知材料による濾過フィルター等を貼設できることは言うまでもない。
【実施例2】
【0032】
図4(a)に本発明の他の実施例を示す。この実施例では、吸気する側の呼気滅菌部DUと対称に排気孔12aを分画して設けている。また、実施例1の逆止弁機構に代えて、被着者の吸気時のみにプロペラファン機構5が回動するフリーホイール軸機構8を採用している。図4(a)及び図4(b)に示すように、フリーホイール軸機構8は、中心にプロペラファンの回動軸を嵌合固定する回転軸固定孔8aを中心に、円筒歯車(ラック)8cをカム8bの辺縁に支軸8eで軸承され、板ばね8fで常時起立状態になるように付勢された歯止爪8dにより、トルクを一方向のみに伝達し、反対方向への回転は空転するようにされている。そして、被着者の吸気時にはプロペラファン機構5が回転し、排気時には回転しないようにされている。すなわち、実施例1の逆止弁機構の部品点数を削減して簡易にしたものである。フリーホイール軸機構8と同様の機構としては、ワンウェイラチェット軸機構、又はカムクラッチ軸機構等が考えられる。
【実施例3】
【0033】
図5(a)に示す衛生マスクは、一般的に市販されている綿、合成繊維(ポリプロピレン等)や紙等からなる既成の衛生マスク15を外装とし、そのインナーとして装着できるようにしたものであり、密閉性の高い材質で作られた半球カップ状のマスク本体1の正面部に呼気滅菌部DUを固着し、その下部辺縁に排気口12を開設したものである。本実施例においては、上記各実施例のようなプロペラファン機構5ではなく、筐体2内には複数の永久磁石6が固着されており、吸気口2aから流入した大気を磁化する構成とされている。尚、本実施例のように既成の衛生マスク15のインナーとして使用する場合、マスクやマスクカバーに袋状部分を設けて、この中に収納するようにしてもよい。
【0034】
以上、各実施例の衛生マスクは、強力な磁力を有する永久磁石を配置すること、又はプロペラファンにより回転させることによって、被着者の呼気雰囲気中に磁界又は交互磁場を創出して呼気を磁化させることができる。
【0035】
本発明者は地球上に生息する生物は、多かれ少なかれ地磁気に反応する羅針盤的機能を持ち合わせていることに着目した。例えば、1960年に磁気感知細菌が発見されているように、磁気細菌はマグネタイト微粒子を体内に保持している。そして、北半球に生息する磁気細菌はS極を指標として、南半球に生息する磁気細菌はN極を指標として行動することが判明している。面白いことに、北半球の磁性細菌は北(磁石のS極)指向性、南半球の磁性細菌は南(磁石のN極)指向性という傾向をしめす。また、回遊魚、生誕魚、昆虫、渡り鳥等の帰巣本能も内在する磁気物質が関与しているものと考察できる。
【0036】
したがって、農作物に群棲する病害虫も磁性細菌を保有し、行動している可能性がある。そこで、磁石の特性であるN極とS極の磁場を交互に反復して発生させ、病害虫の生活行動圏内に、N、Sの交互磁場を造り出すことにより、地磁気対応感覚を麻痺又は迷走させ、栄養摂取行動を撹乱させる。あるいは、繁殖行動を阻害し、生命維持活動を妨害する要因を創出することができることを知得した。
【0037】
そして、N、Sの交互磁場を造り出すことにより、病害虫の地磁気対応感覚を麻痺又は迷走させ、栄養摂取行動を撹乱、あるいは、繁殖行動を阻害し、生命維持活動を妨害することも判明している。
【0038】
すなわち、害虫等の磁性細菌保有体を忌避することを目的とする雰囲気内に、磁界を創出又は交互磁力を放射して、害虫の生活圏内の磁界を攪乱しその活動を妨害し、農作物に寄生し食害をもたらす害虫に適用することから、磁界や交互磁力線により、細菌やウイルスを減滅又は滅菌することが十分推測できる。目的とする大気中(本発明では呼気中)に磁界を創出あるいは交互磁力線を放射し、細菌やウイルス源体に磁力擦化の過熱現象を生じせしめ減滅あるいは滅菌することが可能であると推測した。これは、磁力線に沿って、磁場の強い点があると弱い磁場から走ってきた粒子は、磁場の強い点の近傍で跳ね返されるミラー磁場よるプラズマ振動、磁石が周期運動するときの磁気モーメント、線流電磁場等の電磁流体としての電磁場によるストレスを病原体が受けることに起因すると考察される。
【0039】
また、極性の変化する変動磁場下では、脳下垂体近傍の松果体に影響を与えて、メラトニンの分泌抑制を誘発することが報告されている。メラトニンは体内時計のリズムを刻むことに関係するホルモンで、変動磁場はこの体内時計や他様々な生理現象に影響を与えることが知られている。したがって、病原体の行動に対しても変動磁場が影響するものと考察される。
【0040】
以下、本発明の衛生マスクの各種機能性の検証及び実験結果を記す。
【0041】
[検証1:磁化又は交互磁力線の作用について]
(1)人体に磁界又は磁力線を付与すると、水素原子や酸素原子の原子核に磁気共鳴が生じて体内エネルギー状態に変化が起き血行が促進される。本作用は、磁界又は交互磁場の発生する電磁波受射によるものと考察される。
(2)磁界又は交互磁力線は害虫等の磁性細菌保有体を忌避する。目的とする雰囲気内で、交互磁力を放射して、害虫の生活圏内の磁界を攪乱しその活動を妨害する。農作物に寄生し食害をもたらす害虫にも適用できる。
(3)目的とする大気中に磁界又は交互磁力線を放射し、細菌やウイルス源体に磁力擦化の過熱現象を生じせしめ減滅あるいは滅菌する。
(4)体内に入った細菌やウイルスについては、磁界又は交互磁力線を帯びた風を直接鼻腔や口腔を介して深呼吸して肺まで送り込む、(例えば、大きく口から息を吸って、いったん息を止め、ゆっくり鼻から吐き出す動作を行う又はこれと逆の動作を行う)。ことでインフルエンザ発症者が快方する結果を得た。このことは、体内の活性酸素内の善玉因子及び悪玉因子に異変が生じ、細胞質内を介して出芽するウイルスの増殖になんらかの妨害を加えることと、磁界又は交互磁場の磁力線受射による体温の上昇作用で免疫機能の向上活性化によるもの等が考察される。
【0042】
以下、磁場の有無による空気中に浮遊する一般微生物及び真菌に与える影響について、非特許文献1で報告されている実験例を細菌やウイルスの減滅又は死滅の根拠として示す。
【0043】
[実験例]
微生物試験は、衛生試験法(例えば、日本薬学会編:衛生試験法・注解、金原出版(2000)に記載)に準じて行った。また、微生物の試験の吸引は、エアサンプラーを用い、熱交換器の送出口から3m離れた高さ1.5mの地点で行った。
一般細菌は、空気を200リットル吸引したあとアガーストリップTC(バイオテスト株式会社製)を用いて、30℃で2日間の培養で測定した。真菌の生育は、空気を1000リットル吸引したあとアガーストリップYM(バイオテスト株式会社製)を用いて25℃で5日間の培養で測定した。この実験において、熱交換器として、東芝株式会社製熱交換・換気ユニットVN-350SS2を用いた。
【0044】
(1)経過時間ごとの室内の空気(1000ml)中の一般細菌の個数の増減図6のグラフに結果を示す。磁場を設けないで空気を流した場合、開始時菌数に対して、3時間で2.5倍以上になり、以降減少に転じ、24時間後には開始時の同数以上に戻っていた。一方、磁場を設けて空気を流した場合、開始時菌数に対して、1時間で2倍近くになり磁場なしと類似の関係であったが、3時間後には大幅に減少し、24時間後でも減少を維持していた。このように、空気を流動させると、磁場の存在が浮遊一般細菌数を減少させる結果となった。
【0045】
(2)経過時間ごとの室内の空気(1000ml)中の真菌の個数
図7に結果を示す、浮遊真菌類については、初発菌数自体が多くなったが、磁場を設けないで空気を流した場合には、3時間で2倍近くになり、その後若干減少したが、24時間後には開始時の菌数以上になった。一方、磁場を設けて空気を流した場合には、1時間後には半減し、9時間以降には真菌は検出されなかった。このように、空気を流動させると、磁場の存在が浮遊真菌数を減少させる結果となった。
【0046】
以上の結果より、磁性体で形成した磁場の中に空気を通過させた場合、浮遊一般微生物は、磁場を通過させないものに比べ大きく減少し、極めて効果が高いことが判った。また、空気中に浮遊している微生物が磁場の影響を受け、その繁殖が抑制される可能性が大きいということも分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の抗ウイルスマスクによれば、以下の優れた効果が得られる。
(1)創出される磁界又は放射される交互磁力線により害虫等の磁性細菌保有体を忌避する。
(2)創出される磁界又放射される交互磁力線により、細菌やウイルス源体に磁力擦化の過熱現象を生じせしめ死滅あるいは減滅させる。
(3)毒性のある薬剤等を使用しないので、自然環境にやさしく、人体に悪影響を及ぼすことがない。
【符号の説明】
【0048】
1 マスク本体
1a ストラップ
2 吸気ユニット(筐体)
2a 吸気口
2b 逆止プレート嵌着凹所
2c 筐体側面の通気開口
2d 逆止プレートの係止段部
3 排気ユニット
3a 排気孔
3b 通気路
3c 隔壁
4 キャップ
4a 通気プレート
5 プロペラファン
5a 翼ブレード
5b 磁石嵌合孔
5c ハブ
6 永久磁石
7 プロペラファン固定プレート
7a ベアリング嵌合凹所
8 ベアリング又はフリーホイール
8a 回転軸固定孔
8b カム
8c 円筒歯車(ラック)
8d 歯止爪
8e 支軸
8f 板ばね
9 逆止弁プレート
10 吸排気窓口
11 濾過フィルター
12 上辺縁カバー
12a排気孔
13 下辺縁カバー
14 シリコーン製リング
15 既成の衛生マスク
16 可撓性弁膜
DU 呼気滅菌部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7