IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図1
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図2
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図3
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図4
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図5
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図6
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図7
  • 特許-留置針組立体および医療用弁 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】留置針組立体および医療用弁
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240411BHJP
   A61M 39/26 20060101ALI20240411BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20240411BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M39/26
A61M5/158 500H
A61M39/06 122
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020554987
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019043073
(87)【国際公開番号】W WO2020091055
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018207790
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-116791(JP,A)
【文献】特開2015-053975(JP,A)
【文献】特開2016-150063(JP,A)
【文献】米国特許第05290246(US,A)
【文献】国際公開第2013/121769(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331935(US,A1)
【文献】国際公開第2016/133138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 39/26
A61M 5/158
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針ハブに装着されて全体としてディスク状の弾性体からなり表裏に貫通するスリットが形成されたディスク弁からなる弾性弁体に内針が挿通される留置針組立体において、
前記弾性弁体の外周部分に形成された内側係止溝と外側係止溝に対して、前記外針ハブの基端に設けられた内側係止爪と外側係止爪が係止されていると共に、該内側係止爪と該外側係止爪の少なくとも一方によって該弾性弁体が径方向で圧縮されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記外側係止爪によって前記弾性弁体が径方向で圧縮されている請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記外針ハブの外側面と前記弾性弁体の外側面とが滑らかな表面でつながっている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記外針ハブにおける前記弾性弁体よりも先端側の内部領域を外部に連通するエア抜き通路が形成されていると共に、気体の通過は許容するが液体の通過を阻止するフィルタが、該エア抜き通路における該内部領域への開口部から離隔した位置に配されている請求項1~3の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記エア抜き通路が先端側に向かって延びている請求項4に記載の留置針組立体。
【請求項6】
前記弾性弁体は、前記内側係止溝及び前記外側係止溝よりも外周側において先端側に延びる先端側支持部を備えており、該先端側支持部の内面と前記外針ハブとの間において先端側に向かって延びる前記エア抜き通路が構成されている請求項5に記載の留置針組立体。
【請求項7】
前記外針ハブにおける前記内側係止爪の形成部分には径方向の貫通孔が形成されており、前記エア抜き通路が該貫通孔を含んで構成されている請求項4~6の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項8】
前記フィルタが、前記外針ハブの内部に配されている請求項4~7の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項9】
前記外針ハブが、前記外側係止爪を備える外部ハウジングと前記内側係止爪を備える内部ハウジングとを含んで構成されており、該外部ハウジングと該内部ハウジングを含む複数の部材が凹凸嵌合により固定されている請求項1~8の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項10】
ディスク状の弾性弁体が装着されて雄コネクタ接続用のポートが設けられていると共に、該弾性弁体の外周部分に形成された内側係止溝と外側係止溝に対してハウジングに形成された内側爪部と外側爪部が係止されて支持されている医療用弁において、
前記雄コネクタ接続用のポートの流体が流入可能な内部領域を外部に連通するエア抜き通路が、前記ハウジングにおける前記内側爪部の形成部分に設けられた径方向の貫通孔を含んで形成されていると共に、該エア抜き通路上において気体の通過は許容するが液体の通過を阻止するフィルタが、該エア抜き通路を通じて該内部領域に連通されて配されていることを特徴とする医療用弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性弁体を備えた留置針組立体および医療用弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析などの処置を行う際の医療用具として、留置針組立体が知られている。この留置針組立体としては、例えば特表2012-517326号公報(特許文献1)に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の留置針組立体は、外針ハブに弾性弁体が装着されると共に当該弾性弁体に内針が挿通された構造を有している。そして、留置針組立体の穿刺後に内針を引き抜くことで外針ハブ内に逆流した血液の漏出が、弾性弁体により防止され得る。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の留置針組立体では、外針ハブ内に、雄コネクタの接続時において弾性弁体のスリットを開放させるための部材(隔壁起動部材)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-517326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題とするところは、外針ハブ内に特別な部材を設けることなく、雄コネクタの接続時に弾性弁体のスリットを開放することのできる、新規な構造の留置針組立体および医療用弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0007】
本発明の第1の態様は、外針ハブに装着されて全体としてディスク状の弾性体からなり表裏に貫通するスリットが形成されたディスク弁からなる弾性弁体に内針が挿通される留置針組立体において、前記弾性弁体の外周部分に形成された内側係止溝と外側係止溝に対して、前記外針ハブの基端に設けられた内側係止爪と外側係止爪が係止されていると共に、該内側係止爪と該外側係止爪の少なくとも一方によって該弾性弁体が径方向で圧縮されていることを特徴とするものである。
【0008】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、弾性弁体に雄コネクタを直接挿抜することでスリットを開閉することができる。
【0009】
また、本態様に係る留置針組立体では、内外の係止爪の少なくとも一方によって弾性弁体が径方向で圧縮されていることから、弾性弁体の支持力の向上と共に弾性弁体の液密性の向上が図られ得る。それ故、外針ハブの基端に弾性弁体が位置している本態様において、例えば弾性弁体への内針の挿通下での滅菌処理等による熱履歴や長期間に亘って内針が挿通された場合の癖づけなどに起因して内針の抜去時における液密性が低下して使用者等へ血液が付着することが回避される。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る留置針組立体において、前記外側係止爪によって前記弾性弁体が径方向で圧縮されているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、外針ハブ内に流入した血液により弾性弁体のスリットが意図せず外方へ開放させられることが効果的に防止され得る。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る留置針組立体において、前記外針ハブの外側面と前記弾性弁体の外側面とが滑らかな表面でつながっているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、弾性弁体の外側面への処理等が容易となり、例えば雄コネクタの接続前後に、弾性弁体の外側面をアルコールなどを染み込ませた布や綿などで拭く消毒等の処理も容易に行うことができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記第1~第3の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記外針ハブにおける前記弾性弁体よりも先端側の内部領域を外部に連通するエア抜き通路が形成されていると共に、気体の通過は許容するが液体の通過を阻止するフィルタが、該エア抜き通路における該内部領域への開口部から離隔した位置に配されているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、外針ハブ内に流入した血液のうち、流路断面積が小さいエア抜き通路に流入した血液のみがフィルタに接触することから、フィルタに接触する血液の量を少なく抑えることができて、液体の接触によるフィルタの通気機能の低下や血液の漏出が防止され得る。
【0016】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様に係る留置針組立体において、前記エア抜き通路が先端側に向かって延びているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、例えば外針ハブを大径化することなく、フィルタを内部領域から十分に離隔させて配置することもできて、フィルタに対して血液を接触させにくくすることもできる。
【0018】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る留置針組立体において、前記弾性弁体は、前記内側係止溝及び前記外側係止溝よりも外周側において先端側に延びる先端側支持部を備えており、該先端側支持部の内面と前記外針ハブとの間において先端側に向かって延びる前記エア抜き通路が構成されているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、弾性弁体において先端側に延びる先端側支持部を巧く利用して、先端側に延びるエア抜き通路が構成され得る。
【0020】
本発明の第7の態様は、前記第4~第6の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記外針ハブにおける前記内側係止爪の形成部分には径方向の貫通孔が形成されており、前記エア抜き通路が該貫通孔を含んで構成されているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内側係止爪による弾性弁体の有効な支持構造を採用しつつ、エア抜き通路を通じた外針ハブの内部領域における空気の排出路が安定して形成され得る。
【0022】
本発明の第8の態様は、前記第4~第7の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記フィルタが、前記外針ハブの内部に配されているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、例えばフィルタに外部から触れることでフィルタが変形して血液が漏出したり、血液に接触したフィルタに外部から触れることで使用者の手指に血液が付着することなどが効果的に防止され得る。
【0024】
本発明の第9の態様は、前記第1~第8の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記外針ハブが、前記外側係止爪を備える外部ハウジングと前記内側係止爪を備える内部ハウジングとを含んで構成されており、該外部ハウジングと該内部ハウジングを含む複数の部材が凹凸嵌合により固定されているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、超音波溶着等による固定に比べて、固定構造を簡略化できて、外針ハブの大径化を回避することも可能になる。特に、外側係止爪と内側係止爪とを別部材にすることで、外針ハブへの弾性弁体の組み付けも容易とされ得る。
【0026】
本発明の第10の態様は、ディスク状の弾性弁体が装着されて雄コネクタ接続用のポートが設けられていると共に、該弾性弁体の外周部分に形成された内側係止溝と外側係止溝に対してハウジングに形成された内側爪部と外側爪部が係止されて支持されている医療用弁において、前記雄コネクタ接続用のポートの流体が流入可能な内部領域を外部に連通するエア抜き通路が、前記ハウジングにおける前記内側爪部の形成部分に設けられた径方向の貫通孔を含んで形成されていると共に、該エア抜き通路上において気体の通過は許容するが液体の通過を阻止するフィルタが、該エア抜き通路を通じて該内部領域に連通されて配されていることを特徴とするものである。
【0027】
本態様に従う構造とされた医療用弁によれば、内外の爪部による弾性弁体の支持と、エア抜き通路を通じた空気の排出とが両立して達成され得る。また、エア抜き通路内に流入した液体のみがフィルタに接触することから、フィルタに接触する液体の量を少なく抑えることができて、フィルタによる液体の漏出防止効果が良好に発揮され得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従う構造とされた留置針組立体によれば、スリット開放用の特別な部材を外針ハブ内に設けることなく、雄コネクタの接続時に弾性弁体のスリットを開放することができる。また、本発明に従う構造とされた医療用弁によれば、弾性弁体における優れた保持力に加えて、良好な気体排出性も発揮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の1実施形態としての留置針組立体を示す縦断面図。
図2図1に示された留置針組立体の要部を示す縦断面図。
図3図1に示された留置針組立体を構成する弾性弁体を示す斜視図。
図4図3に示された弾性弁体の縦断面図。
図5図1に示された留置針組立体から内針を抜去した状態を示す斜視図。
図6図5における縦断面図。
図7図5に示された外針ハブに対して雄コネクタを接続した状態を示す縦断面図。
図8】本発明の別の実施形態としての医療用弁を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
先ず、図1,2には、本発明の1実施形態としての留置針組立体10が示されている。この留置針組立体10は、内針ユニット12と外針ユニット14とを備えており、外針ユニット14に対して内針ユニット12が挿通されることで構成されている。なお、以下の説明において、軸方向とは、図1中の左右方向をいう。また、先端側とは、図1中の左側をいうとともに、基端側とは、図1中の右側をいう。
【0032】
より詳細には、内針ユニット12は、先端に針先16を有する内針18と、当該内針18の基端側に設けられる内針ハブとを含んで構成されている。この内針18は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタンまたはそれらの合金などの公知の材料から形成された中空針であり、先端の針先16が鋭利な形状とされている。尤も、内針18は、中実針であってもよい。また、内針ハブの形状としては、従来公知のものが採用され得ることから図示を省略する。
【0033】
また、外針ユニット14は、外針20と、当該外針20の基端側に設けられる外針ハブ22とを含んで構成されている。この外針20は、チューブ形状とされており、適度な可撓性を有する材料、例えばエチレン―テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン樹脂等の各種の軟質樹脂により形成されている。なお、外針20の先端部分の外周面は、先細となるテーパ状外周面24とされており、これにより生体への穿刺抵抗の軽減が図られ得る。また、外針20の先端部分の周壁に貫通孔を設けることで、外針20に対する流体の流通効率の向上を図ることなども可能である。
【0034】
さらに、外針ハブ22は、全体として軸方向に延びる略円筒形状とされている。本実施形態の外針ハブ22は、複数の部材により構成されており、何れも略筒形状とされたベース部材26と内部ハウジング28と外部ハウジング30との3部品により構成されている。なお、これらベース部材26、内部ハウジング28、外部ハウジング30は、何れも硬質の合成樹脂により形成されることが好適である。
【0035】
このベース部材26は、全体として軸方向に延びる略筒状とされており、軸方向中間部分が略一定の厚さ寸法をもって略ストレートに延びている一方、先端部分が、先端に向かって略一定の厚さ寸法をもって径寸法が小さくされるテーパ部32とされている。このテーパ部32の内周面にはカシメピン34が固定されており、これらテーパ部32とカシメピン34との間で外針20の基端が挟まれて支持されて、必要に応じて接着剤などで固着されている。これにより、外針20の基端側に外針ハブ22が固定的に設けられている。
【0036】
一方、ベース部材26の基端部分には、外周側に突出する膨出部36が形成されており、本実施形態では、略半円形の断面形状をもって周方向の全周に亘って形成されている。そして、この膨出部36の外周面には、外周側に突出する係合爪38が設けられている。本実施形態では、この係合爪38が、ベース部材26の外周面において、径方向1方向の両側(図1中の上下方向両側)に一対設けられており、各係合爪38が、所定の周方向寸法を有して、平面視において略矩形状とされている。なお、この係合爪38の外周面は、先端側に向かって外周側に傾斜する傾斜面40とされている。一方、係合爪38の先端側端面は、軸直角方向に広がる平坦面41とされている。
【0037】
また、ベース部材26の外周面において、係合爪38,38の対向方向と直交する方向(図1中の紙面直交方向)には、膨出部36から基端側に延びる位置決め突起42,42(図5参照)が設けられている。
【0038】
さらに、ベース部材26の基端は更に外径寸法が小さくされており、係合爪38に対して基端側に隣接する部分には、環状の段差面44が形成されている。そして、当該段差面44の基端側には、膨出部36よりも外径寸法が小さくされた略筒状の内挿部46が設けられており、当該内挿部46が、後述する略筒状のフィルタ108に内挿されるようになっている。更にまた、当該内挿部46の基端側端面における径方向中間部分には、基端側に突出する環状支持部48が形成されている。
【0039】
また、内部ハウジング28は、全体として軸方向に延びる略筒形状とされている。この内部ハウジング28の基端部分には、雁首状の屈曲断面で内周側へ狭まった環状の受座部50が形成されており、更に当該受座部50の内周縁部には、基端側に向かって突出する環状の内側爪部としての内側係止爪52が形成されている。さらに、本実施形態では、内側係止爪52の内周面が、全体として内周側に向かって凸となる湾曲状面54とされている。なお、当該湾曲状面54は、全体として湾曲面になっていればよく、全面に亘って一定の曲率半径をもって形成される必要はないし、例えば平面状とされた部分を有していてもよい。
【0040】
一方、内部ハウジング28の先端部には、略一定の厚さ寸法(軸方向)で外周側に突出する環状先端部56が設けられている。
【0041】
ここにおいて、内側係止爪52の軸方向中間部分には、径方向で貫通する貫通孔58が形成されている。本実施形態では、環状とされた内側係止爪52において、ベース部材26における係合爪38,38と対応する周方向位置で、一対の貫通孔58,58が径方向で相互に対向して形成されており、当該貫通孔58,58を通じて内部ハウジング28の内外が相互に連通されている。
【0042】
また、内部ハウジング28の外周面には、軸方向の略全長に亘って延びる連通溝60が形成されている。この連通溝60は、例えば外周側に開口する矩形断面の溝であり、貫通孔58における外周側開口部の先端部分から先端側に連続して延び出して、更に環状先端部56の基端側端面および外周面を通じて、環状先端部56の先端側端面に開口している。本実施形態では、かかる連通溝60が、貫通孔58と対応する周方向位置に形成されており、一対の連通溝60,60が径方向で相互に対向して形成されている。
【0043】
さらに、外部ハウジング30は、全体として軸方向に延びる周壁部62を備えた略筒形状とされている。この周壁部62は、基端側に比べて先端側の方が、内径寸法および外径寸法が大きくされており、厚さ寸法も大きくされている。また、周壁部62の基端における外周面には、雄ねじ部64が設けられており、外部ハウジング30(外針ハブ22)に対してルアーロックタイプの雄コネクタが接続可能とされている。
【0044】
一方、周壁部62の基端における内周面には、内周側へ突出する円環状の基端壁部66が設けられているとともに、基端壁部66の内周縁部には、軸方向内方に折り返されるようにして先端側へ突出する外側爪部としての外側係止爪68が形成されている。なお、本実施形態では、外側係止爪68が周方向の全周に亘る円環形状で形成されている。特に、本実施形態では、外側係止爪68の内径寸法A(図2参照)が、内側係止爪52の内径寸法B(図2参照)より小さくされており、内部ハウジング28と外部ハウジング30とが組み付けられた状態では、外側係止爪68の内周面が、内側係止爪52の内周面(湾曲状面54)よりも内周側に位置している。さらに、外側係止爪68の外周側には、径方向で所定幅をもって周方向に延びる外側保持溝70が、先端側に開口する円環状溝として形成されている。
【0045】
また、本実施形態では、外側係止爪68の突出先端(軸方向内方の端部)における内周面において、軸方向内方に向かって次第に拡径する傾斜面72が設けられており、特に本実施形態では、当該傾斜面72が、略一定の傾斜角度を有するテーパ面とされている。そして、後述するように内部ハウジング28と外部ハウジング30とが相互に組み付けられた状態では、内側係止爪52と外側係止爪68とが、外針ハブ22の基端において軸方向で相互に対向しており、テーパ面(傾斜面)72の軸方向内方への延長線上に内側係止爪52の内周面である湾曲状面54が位置している。
【0046】
さらに、外部ハウジング30の周壁部62において、先端部分には、厚さ方向(径方向)で貫通する貫通窓74が形成されている。この貫通窓74は、ベース部材26における係合爪38と対応する周方向位置および形状とされており、径方向(図1中の上下方向)で対向して一対設けられているとともに、平面視で略矩形状とされている。また、周壁部62には、ベース部材26における位置決め突起42と対応する切欠き76が形成されている。本実施形態では、貫通窓74,74の対向方向と直交する方向の両側において、周壁部62の先端から基端側に向かって延びる一対の切欠き76,76(図5参照)が形成されている。
【0047】
以上の如き構造とされたベース部材26と内部ハウジング28と外部ハウジング30とが組み付けられて外針ハブ22が構成されるとともに、当該外針ハブ22には弾性弁体78が装着されている。具体的には、外針ハブ22において、内部ハウジング28と外部ハウジング30との間に弾性弁体78が挟まれて支持されている。
【0048】
図3,4には、外針ハブ22に組み付けられる以前の単品状態の弾性弁体78が示されている。本実施形態の弾性弁体78は、全体として略ディスク状とされており、ゴムやエラストマなどの弾性体により形成されている。また、この弾性弁体78の中央部分80には、厚さ方向で貫通するスリット82が形成されている。本実施形態では、スリット82が直線状(一文字状)とされているが、スリット82の形状は何等限定されるものではなく、十文字状や、中心から放射状に延びる形状であってもよい。さらに、本実施形態では、単品状態の弾性弁体78において幅寸法が略0とされたスリット82が設けられているが、単品状態の弾性弁体においてある程度の幅寸法を有する円形や矩形などの貫通孔が設けられて、当該弾性弁体が外針ハブに対して径方向で圧縮された状態で装着されることで、幅寸法が略0とされたスリット(貫通孔)が形成されるようになっていてもよい。
【0049】
また、弾性弁体78の外周部分には軸方向内外に突出する筒状支持部84が設けられており、中央部分80と筒状支持部84とが周方向の全周に亘って延びる環状連結部86で接続されている。これにより、本実施形態では、弾性弁体78が一体成形品として形成されている。
【0050】
この環状連結部86は、弾性弁体78の中央部分80よりも厚さ寸法を小さくすることにより形成されている。本実施形態では、弾性弁体78における軸方向内面側および外面側の外周部分に、それぞれ周方向の全周に亘って延びる略環状の内側係止溝88および外側係止溝90が形成されており、これら両係止溝88,90の底部の軸方向間により環状連結部86が構成されている。すなわち、本実施形態では、弾性弁体78の中央部分80が、内側係止溝88の溝底面よりも軸方向内方に突出する内方突出部92(図4中、下側の二点鎖線よりも軸方向内方の部分)と、外側係止溝90の溝底面よりも軸方向外方に突出する外方突出部94(図4中、上側の二点鎖線よりも軸方向外方の部分)とを含んで構成されている。また、本実施形態において、内側係止溝88の内周側の壁部には、周方向の全周に亘って連続して延びる凹溝部96が形成されている。
【0051】
そして、環状連結部86の外周側に接続される筒状支持部84は、環状連結部86から軸方向外方(基端側)に突出する基端側支持部98と軸方向内方(先端側)に突出する先端側支持部100とを含んで構成されている。本実施形態では、基端側支持部98が、中央部分80の基端側端面までは至らない寸法をもって基端側に突出している一方、先端側支持部100が、中央部分80の先端側端面よりも大きく先端側まで突出している。
【0052】
以上の如き構造とされたベース部材26と内部ハウジング28と外部ハウジング30とにより外針ハブ22が構成されているとともに、上記の如き弾性弁体78が、外針ハブ22の基端側開口部102に装着されている。これにより、後述するように、外針ハブ22の基端側開口部102からシリンジ110を挿入することで、シリンジ110の先端部分が直接弾性弁体78を押し開いてスリット82が開放されるようになっている。なお、弾性弁体は外針ハブの最基端に設けられる必要はなく、雄コネクタ(シリンジ)の挿入に伴い、雄コネクタにより直接押し開かれる程度に外針ハブの基端に位置していればよい。
【0053】
ここで、外針ハブ22への弾性弁体78の装着に際しては、先ず、ベース部材26の基端における環状支持部48に対して内部ハウジング28の先端部分における内周面が重ね合わされるようにして、ベース部材26と内部ハウジング28とが嵌め合わされる。なお、必要に応じて、これらベース部材26と内部ハウジング28とは、接着や溶着などの手段により固着されてもよい。そして、この内部ハウジング28に対して弾性弁体78が重ね合わされて、内部ハウジング28の内側係止爪52が弾性弁体78の内側係止溝88に食い込むように押し入れられて係止される。なお、本実施形態では、内側係止爪52の突出先端部分のみが内側係止溝88に差し入れられるようになっており、内側係止爪52に設けられた貫通孔58が弾性弁体78により閉塞されないようになっている。
【0054】
また、本実施形態では、内側係止溝88の内周側に凹溝部96が設けられていることから、内側係止爪52の内周面(湾曲状面54)と凹溝部96の内周面とが径方向で離隔している。これにより、図1,2に示される留置針組立体10の初期状態では、内側係止爪52の内周面(湾曲状面54)が、内側係止溝88に挿し入れられている突出先端部分を除いて、弾性弁体78に覆われることがなく、外針ハブ22における弾性弁体78よりも先端側の領域である内部領域104に露呈されている。この結果、初期状態では、内側係止爪52に設けられた貫通孔58の内周側の開口部105が、外針ハブ22の内部領域104に開放されている。
【0055】
この状態において、軸方向外方から外部ハウジング30を重ね合わせて、ベース部材26と外部ハウジング30とを相互に接近する方向に移動させる。これにより、外部ハウジング30における切欠き76にベース部材26の位置決め突起42が嵌め入れられるとともに、外部ハウジング30の貫通窓74にベース部材26の係合爪38が係止せしめられる。特に、本実施形態では、外部ハウジング30の周壁部62の先端に切欠き76が設けられていることから周壁部62の先端が撓み易く、更に、係合爪38に傾斜面40が設けられていることから、当該傾斜面40の案内作用により貫通窓74に係合爪38が係止され易くなっている。この結果、本実施形態では、ベース部材26と外部ハウジング30とが係合爪38と貫通窓74との凹凸嵌合により接着や溶着されることなく固定されるようになっているが、このような係合爪による係止構造に代えて、または加えて、ベース部材26と外部ハウジング30とは接着や溶着により固着されてもよい。あるいは、ベース部材26と内部ハウジング28とが凹凸嵌合により固定されたり、内部ハウジング28と外部ハウジング30とが凹凸嵌合により固定されてもよい。したがって、外針ハブ22を構成する複数の部材は、その全ての部材が接着や溶着されずに固定される必要はなく、例えば少なくとも2つの部材が凹凸嵌合などにより固定されるようになっていてもよい。
【0056】
そして、このようなベース部材26と外部ハウジング30との固定により、弾性弁体78の外側係止溝90に対して外部ハウジング30の外側係止爪68が食い込むように押し入れられて係止される。これにより、弾性弁体78における外方突出部94が外側係止爪68の内周側に差し入れられて、本実施形態では、外針ハブ22の外側面(外部ハウジング30の基端壁部66における基端面66a)と弾性弁体78の外側面(中央部分80における基端面80a)とが滑らかな表面で繋がっている。特に、本実施形態では、両外側面66a,80aが略同一平面上に位置している。この結果、弾性弁体78における環状連結部86が、軸方向内外の係止爪52,68により軸方向の両側から挟まれて支持される。
【0057】
また、外部ハウジング30の外側保持溝70に筒状支持部84の基端側支持部98が嵌め入れられるとともに、内部ハウジング28の環状先端部56における基端側端面と筒状支持部84の先端側支持部100の先端側端面とが当接せしめられて、筒状支持部84が、外部ハウジング30の基端壁部66と内部ハウジング28の環状先端部56との軸方向間で挟まれて支持されており、好適には軸方向で圧縮される。また、筒状支持部84の先端側支持部100が、内部ハウジング28と外部ハウジング30との径方向間で挟持される。このように、内部ハウジング28と外部ハウジング30との径方向間で先端側支持部100が挟まれて支持されることで、内部ハウジング28の外周面に設けられた連通溝60の外周側開口部が先端側支持部100の内面で覆蓋されてトンネル状の通路が形成される。
【0058】
そして、このトンネル状の通路の長さ方向一方の端部は、内側係止爪52に設けられた貫通孔58を通じて外針ハブ22における弾性弁体78よりも先端側の内部領域104に連通されているとともに、長さ方向他方の端部は、内部ハウジング28における環状先端部56の先端側端面に開放されており、外部ハウジング30とベース部材26との間の空間から貫通窓74を通じて外部空間に連通されている。したがって、本実施形態では、貫通孔58およびトンネル状の通路(連通溝60)を含んで、外針ハブ22における弾性弁体78よりも先端側の内部領域104を外部に連通するエア抜き通路106が形成されている。これにより、エア抜き通路106が、内部領域104から先端側に向かって延びている。
【0059】
ここにおいて、当該エア抜き通路106上には、フィルタ108が配設されている。このフィルタ108は、気体の通過を許容し、且つ液体の通過を阻止する性質を有している。かかるフィルタ108としては、上記性質を有していれば何等限定されるものではないが、例えばポリエチレンなどの高分子材料と親水性、水溶性または水膨潤性ポリマーを含む材料とを焼結してなる焼結多孔体や、疎水性不織布、多孔質体等が好適に採用され得る。特に、フィルタ108として、高吸水性高分子(SAP)を含有する焼結体が採用される場合には、水分がフィルタ108に触れるまでの初期状態では気体を通過させるとともに、水分がフィルタ108に触れると水と反応して(水分を吸収して)膨潤することで気体の通過も阻止することから、液体シールの耐圧性が向上して、血液の漏出防止効果が安定して発揮され得る。
【0060】
本実施形態のフィルタ108は、エア抜き通路106上において、外針ハブ22の内部領域104に露呈することなく、貫通孔58における内部領域104への開口部105から離隔した位置に設けられている。特に、本実施形態では、フィルタ108が、外針ハブ22の内部に設けられており、具体的には、内部ハウジング28よりも先端側に設けられて、内部ハウジング28における先端側端面(環状先端部56の先端側端面)に開口する連通溝60(トンネル状の通路)と連続しているとともに、外部ハウジング30とベース部材26との径方向間に設けられている。これにより、フィルタ108が、連通溝60(トンネル状の通路)を通じて、外針ハブ22における内部領域104に連通されている。
【0061】
さらに、本実施形態では、フィルタ108が略筒形状とされており、ベース部材26における内挿部46に外挿装着されている。また、フィルタ108の先端側端面がベース部材26における段差面44に当接しているとともに、フィルタ108の基端部分が、外部ハウジング30の内周面と内挿部46との外周面との径方向間で圧縮されている。なお、フィルタ108の基端側端面は、内部ハウジング28の先端側端面(環状先端部56の先端側端面)と当接する必要はなく、軸方向間で隙間が設けられていてもよいし、内部ハウジング28の先端側端面と当接して、段差面44との軸方向間で圧縮されてもよい。さらに、フィルタ108の先端部分では、外部ハウジング30の内径寸法が大きくされており、フィルタ108と外部ハウジング30の内周面との間に隙間が設けられて、製造効率の向上が図られている。
【0062】
以上の如き構造とされた外針ユニット14に対して内針ユニット12が挿通されることで、本実施形態の留置針組立体10が構成されている。具体的には、弾性弁体78に内針18が挿通されて、外針20の先端から内針18の針先16が突出している。そして、内針18と外針20とを内外で重ね合わせた状態で穿刺した後、外針ユニット14から内針18を引き抜くことで、図5,6に示されるように、外針ユニット14が、患者の血管に穿刺された状態で留置されるようになっている。
【0063】
ここにおいて、単品状態の弾性弁体78において、中央部分80の外径寸法(即ち、外方突出部94の外径寸法)C(図4参照)は、外針ハブ22における外側係止爪68の内径寸法Aよりも大きくされている。これにより、弾性弁体78を外針ハブ22に組み付けた状態では、中央部分80の基端側、即ち外方突出部94が外側係止爪68により径方向で圧縮されている。これにより、弾性弁体78に内針18が挿通された状態が長期間に亘って維持されたり、弾性弁体78に内針18が挿通された状態で熱が加えられた場合にも、図6に示されるように、内針18の抜去時において、弾性弁体78のスリット82が安定して閉鎖状態とされ得る。
【0064】
また、内針18の抜去に伴い、外針20を通じて外針ハブ22の内部領域104が流入した血液で満たされる。これにより、内部領域104内のエアが、エア抜き通路106を通じて外部空間に排出されて、後述する雄コネクタ(シリンジ110)の接続時において患者の体内にエアが混入することが防止される。さらに、エア抜き通路106の内周側の開口部には、凹溝部96が隣接して設けられていることから、凹溝部96によるエアの案内効果も発揮され得る。更にまた、エア抜き通路106上にはフィルタ108が設けられていることから、血液の漏出も防止され得る。
【0065】
特に、本実施形態では、フィルタ108が、外針ハブ22の内部領域104に露呈することなく、内部領域104とトンネル状の通路(連通溝60)を介して連通されている。これにより、血液の漏出防止効果が向上され得る。すなわち、本発明に係るフィルタ108としては、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが採用されるが、当然として如何なる状態においても完全な液密性を有するものではなく、フィルタの液体不透過性能の限界は存在することから、液体がフィルタに対して過剰に大きな圧力で接する場合、フィルタの液体不透過性能の限界を超えれば液体(血液)がフィルタを通過し得る。しかしながら、本実施形態では、トンネル状の通路(連通溝60)内に流入した血液のみがフィルタ108に接触することから、フィルタ108に対する血液の接触量や接触圧力を小さく抑えることができて、血液の漏出がより確実に防止され得る。
【0066】
また、本実施形態では、エア抜き通路106が内側係止爪52に設けられた貫通孔58を含んで構成されていることから、上記の如き外針ハブ22の内部領域104のエア抜きと弾性弁体78の支持とが両立して達成され得る。
【0067】
そして、図5,6に示される、内針18が抜去されて皮膚に留置された外針ユニット14の弾性弁体78に対して、図7に示されるように、雄コネクタとしてのシリンジ110が外針ハブ22の基端側開口部102から挿入接続されることで、シリンジ110により弾性弁体78の中央部分80が先端側へ押し広げられてスリット82が開放される。これにより、外針ユニット14とシリンジ110の内部空間とが連通されて、これら外針ユニット14やシリンジ110の内部空間からなる流体流路112を通じて輸液や採血、血液透析などが実施される。ここで、弾性弁体78が外針ハブ22の基端に設けられていることから、シリンジ110が挿入されることで弾性弁体78がシリンジ110の先端により直接押し広げられるようになっており、スリット82を開放させるための部材を別途設けることなく、シリンジ110の接続に伴って弾性弁体78のスリット82が開放され得る。
【0068】
また、本実施形態では、弾性弁体78の外周部分が、硬質の部材とされた内部ハウジング28および外部ハウジング30に設けられた内側係止爪52および外側係止爪68により軸方向内外で挟まれて支持されることで、シリンジ110接続時における外針ハブ22からの弾性弁体78の脱落が効果的に防止され得る。特に、本実施形態では、弾性弁体78の外周に設けられた筒状支持部84における先端側支持部100が先端側に大きく延び出していることから、シリンジ110を弾性弁体78に対して先端側に押し込んだ際にも、内外の係止爪52,68間から筒状支持部84が抜け落ちることが一層効果的に防止され得る。また、このような先端側支持部100を巧く利用して先端側に延びるエア抜き通路106が構成されており、当該先端側支持部100により、弾性弁体78の脱落防止とエア抜き通路106の形成とが両立して達成され得る。
【0069】
なお、外針ユニット14に接続されるシリンジ110は何等限定されるものではないが、本実施形態のシリンジ110の先端部分は、先端に向かって外径寸法が次第に小さくなるテーパ面とされており、シリンジ110の先端部分における最小外径寸法D(図7参照)は、外側係止爪68の内径寸法Aよりも小さくされている。一方、シリンジ110の先端部分における最大外径寸法E(図7参照)は、外側係止爪68の内径寸法Aよりも大きくされている。これにより、外針ユニット14に対してシリンジ110が挿入された際には、外側係止爪68とシリンジ110の外周面とが当接嵌合して、シリンジ110の挿入端が規定されるようにすることも可能である。
【0070】
また、本実施形態では、シリンジ110が挿入されて弾性弁体78の中央部分80が先端側に押し広げられるように変形した際に、中央部分80の先端面が内部ハウジング28の内周面に重ね合わされるようになっている。特に、本実施形態では、内側係止爪52の内周側に凹溝部96が設けられており、シリンジ110の挿入時に、内側係止爪52の内周面(湾曲状面54)と凹溝部96の内周面とが相互に隙間なく重ね合わされるようになっている。これにより、内側係止爪52における貫通孔58の内周側の開口部が覆蓋されてエア抜き通路106が遮断されることから、エア抜き通路106内に滞留した血液が流体流路112内に混入したり、エア抜き通路106を通じてエアが流体流路112内に再混入することが防止され得る。
【0071】
ところで、例えば三方活栓の混注部には、弾性弁体を備えた医療用弁が装着される。このような医療用弁においては、輸液などの際に患者の体内にエアが混入しないように、プライミングの際に医療用弁内のエアが排出されることが好ましい。また、医療用弁に雄コネクタを接続して弾性弁体を押し開く際に、ハウジングから弾性弁体が脱落しないようにすることが好ましい。このような問題を解消することを目的として、図8には、本発明の別の実施形態としての医療用弁120が示されている。この医療用弁120は、弾性弁体78が装着されるハウジング122を備えており、当該ハウジング122が、ベース部材124と内部ハウジング28と外部ハウジング30とから構成されている。なお、本実施形態における医療用弁120は、前記実施形態の留置針組立体(10)における外針ハブ(22)と同様の構造を有するが、前記実施形態の留置針組立体(10)とは別の課題を有する別発明として把握され得る。ここで、本実施形態における医療用弁120において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態のベース部材124は、軸方向(図8中の上下方向)に延びる中央筒状部126の外周側に周壁部128が設けられて、それぞれの上端部分が環状の上底部130で連結されることにより構成されている。この中央筒状部126の軸方向寸法は周壁部128の軸方向寸法より大きくされており、周壁部128の内部において中央筒状部126が下方へ突出している。なお、周壁部128の内周面には、雌ねじ部132が形成されており、ルアーロック式のコネクタなどを接続することができるようにされている。また、上底部130からは、図8中の上方に向かってフィルタ108に内挿される内挿部46が突出しているとともに、更に当該内挿部46から環状支持部48が突出している。
【0073】
以上の如き構造とされたベース部材124に対して、前記実施形態と同様に内部ハウジング28および外部ハウジング30が組み付けられることで本実施形態のハウジング122が構成されているとともに、当該ハウジング122に対して弾性弁体78とフィルタ108が装着されることで本実施形態の医療用弁120が構成されている。すなわち、本実施形態では、略筒状とされたハウジング122の一方の開口部(外部ハウジング30における軸方向外方側の開口部)134が雄コネクタ接続用のポートとされているとともに、当該ポート(開口部134)において弾性弁体78が装着されている。
【0074】
かかる構造とされた本実施形態の医療用弁120は、例えば抗がん剤等の薬剤や生理食塩水の輸液用に用いられて、三方活栓の混注部などに装着される。そして、三方活栓における他のポートから中央筒状部126を通じて、医療用弁120におけるポート内部の領域(内部領域104)にプライミング液などを流入させることで、エア抜き通路106を通じて内部領域104内のエアが排出され得る。また、本実施形態においても、弾性弁体78の外周部分が、内外の係止爪52,68により挟まれて支持されることで、弾性弁体78が、ハウジング122に対して安定して支持される。特に、本実施形態においても、エア抜き通路106が、内側係止爪(内側爪部)52に貫通形成された貫通孔58を含んで構成されていることから、エアの排出と弾性弁体78の支持とが両立して達成され得る。
【0075】
なお、前記実施形態では、内針18の抜去後、弾性弁体78にはシリンジ110が挿入されたが、本実施形態の弾性弁体78は、例えば先端が鈍い針などが挿入される場合にも好適に用いられる。このようなシリンジや鈍針は、医療用弁120の使用前に長期間に亘って挿通状態に保たれるものでなく、医療用弁120の使用時にシリンジや鈍針等を挿通しても弾性弁体78の癖づけなどの問題は発生しない。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0077】
たとえば、前記実施形態では、弾性弁体78の成形時に内側係止溝88と外側係止溝90とが形成されていたが、成形時に形成される必要はなく、外針ハブ又はハウジングへの組付時において内側係止爪と外側係止爪が、例えば平坦面とされた弾性弁体の内外面に押し込まれることで弾性弁体が変形せしめられて、内側係止溝と外側係止溝が形成されるようになっていてもよい。このような場合にも、例えば内側係止爪における貫通孔が弾性弁体で閉塞されない構造とすることで、安定してエアを排出することが可能である。
【0078】
また、前記実施形態では、外側係止爪68により外方突出部94が径方向で圧縮されていたが、この態様に代えて、または加えて、内側係止爪により内方突出部が径方向で圧縮されてもよい。尤も、内側係止爪により内方突出部が径方向で圧縮される態様よりも外側係止爪により外方突出部が径方向で圧縮される態様の方が好ましく、これにより、弾性弁体に逆流した血液の圧力が及ぼされた際に、弾性弁体が外方に開かれることがより効果的に防止され得る。
【0079】
なお、前記実施形態のように、外方突出部が外側係止爪により径方向で圧縮される場合、内方突出部は必須なものではなく、その場合には、弾性弁体の先端側端面は、図4中の下側の二点鎖線で示される如き平坦面であってもよい。同様に、内方突出部が内側係止爪により径方向で圧縮される場合、外方突出部は必須なものではなく、その場合には、弾性弁体の基端側端面は、図4中の上側の二点鎖線で示される如き平坦面であってもよい。
【0080】
さらに、前記実施形態では、外針ハブ22の外側面(基端面66a)と弾性弁体78の外側面(基端面80a)とが略同一平面上に位置していたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、弾性弁体の外側面は、外針ハブの外側面に対して、滑らかな表面をもって軸方向外方や内方に位置していてもよいし、滑らかな表面を有することなく、軸方向外方や内方に位置していてもよい。なお、外針ハブの外側面と弾性弁体の外側面とは滑らかに連続して、且つ軸方向の凹凸差が2mm以内とされることが好適であり、より好適には、軸方向の凹凸差が1mm以内とされる。これにより、消毒布で弾性弁体の外側面を拭くなどの消毒操作が容易とされ得る。
【0081】
更にまた、本発明において、外針ハブまたは雄コネクタ接続用のポートの内部領域を外部に連通するエア抜き通路は必須なものではない。また、エア抜き通路が設けられる場合であっても、内部領域と、内部ハウジングの外周面に設けられた連通溝とを連通する貫通孔は内側係止爪(内側爪部)に設けられる必要はなく、例えば内部ハウジングの周壁を径方向に貫通して貫通孔が形成されてもよい。尤も、このような貫通孔が内側係止爪に設けられることで、雄コネクタの接続時に弾性弁体が変形して貫通孔の開口部が覆蓋され、エア抜き通路が閉塞されることから、好適である。また、内部領域と連通溝とを連通する部分が内側係止爪に設けられる場合であっても、前記実施形態の如き内側係止爪52の軸方向中間部分を径方向に貫通する貫通孔58の態様に限定されるものではなく、例えば内側係止爪の突出先端における外表面において、内周面から突出先端で折り返して外周面にかけて連続して軸方向に延びる切欠状の凹溝が設けられて、当該凹溝により内部領域と連通溝とが連通されてもよい。
【0082】
さらに、フィルタは、エア抜き通路上に設けられればよく、前記実施形態のように、ベース部材26,124の内挿部46に外挿される態様に限定されるものではない。また、フィルタは、外針ハブまたは雄コネクタ接続用のポートの内部領域に露呈しない態様に限定されるものではなく、例えば内側係止爪(内側爪部)に設けられた貫通孔中に配設されるなど、内部領域に露呈して設けられてもよい。加えて、フィルタは、留置針組立体における外針ハブや医療用弁におけるハウジングの内部に設けられる態様に限定されるものではなく、例えば外針ハブやハウジングの外周面に露呈していてもよい。尤も、外針ハブやハウジングの内部に設けられる態様の方が、外部からの接触が困難になり、血液の漏出などがより効果的に防止されることから、好ましい。
【0083】
更にまた、前記実施形態では、エア抜き通路106を構成する連通溝60が内部ハウジング28の外周面に設けられていたが、内部ハウジングの外周面に代えて、または加えて、弾性弁体における先端側支持部の内周面に設けられてもよい。なお、前記実施形態では、内部ハウジング28の外周面に一対の連通溝60,60が設けられており、これらのそれぞれにより、外針ハブ22及びハウジング122には一対のエア抜き通路106,106が形成されていたが、これら連通溝やエア抜き通路の個数は何等限定されるものではない。さらに、例えば前記実施形態のように、軸方向に直線状に延びるエア抜き通路が採用される場合、エア抜き通路の少なくとも1つは、穿刺の際に重力方向上方に位置するように形成されることが好ましい。
【0084】
また、前記実施形態では、外側係止爪68の内径寸法Aが、内側係止爪52の内径寸法Bよりも小さくされていたが、大きくされてもよい。
【0085】
さらに、前記実施形態では、留置針組立体10の外針ハブ22や医療用弁120のハウジング122が3部品により構成されていたが、例えばベース部材と内部ハウジングとが一体とされて、2部品により構成されてもよい。また、外針ハブ22やハウジング122を構成する複数の部材は、例えば超音波溶着により固定されてもよいが、凹凸嵌合などにより固定されることで、超音波溶着の場合に比べて、大径化が防止されたり、特別な部材や装置を用いることが回避され得る。
【0086】
更にまた、弾性弁体の基端面における凹溝部は必須なものではない。また、外側係止爪の内周面における傾斜面(テーパ面)は必須なものではない。さらに、内側係止爪の内周面は、湾曲状面である必要はない。なお、弾性弁体の形状は何等限定されるものではなく、例えば弾性弁体における先端側支持部の先端側端面は、中央部分における先端側端面と略等しい軸方向位置にあってもよい。かかる場合には、エア抜き通路は、例えば外部ハウジングと内部ハウジングとの間に設けられる連通路などを含んで構成される。
【0087】
また、前記第1の実施形態では、外針ハブ22が直接的に外針20を支持していたが、例えば外針を直接的に支持する部材が別途設けられて、当該外針を支持する部材とベース部材とが、例えば弾性チューブなどで連結されてもよく、外針ハブが間接的に外針を支持するようになっていてもよい。
【0088】
ところで、以下に記載の態様は、本願発明とは異なる課題を解決し得る独立した発明として認識され得る。
【0089】
すなわち、患者の血管に穿刺されて留置される針組立体において、針ハブの内部のエア抜きと弾性弁体の安定した支持とを両立して達成する針組立体が求められていた。
【0090】
かかる課題を解決するためになされた本願の別発明の第1の態様は、中空針を備える針ハブの内部に弾性弁体が装着された針組立体において、前記弾性弁体の外周部分に対して、前記針ハブに設けられた内側係止爪が係止されていると共に、該針ハブにおける該内側係止爪の形成部分に設けられた径方向の貫通孔を通じて、該針ハブにおける前記弾性弁体よりも先端側の内部領域を外部に連通するエア抜き通路が形成されており、気体の通過は許容するが液体の通過を阻止するフィルタが、該エア抜き通路を通じて該針ハブの該内部領域に連通されて配されていることを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0091】
10:留置針組立体、18:内針、22:外針ハブ、26:ベース部材、28:内部ハウジング、30:外部ハウジング、52:内側係止爪(内側爪部)、58:貫通孔、66a:基端面(外針ハブの外側面)、68:外側係止爪(外側爪部)、78:弾性弁体、80a:基端面(弾性弁体の外側面)、82:スリット、88:内側係止溝、90:外側係止溝、100:先端側支持部、104:内部領域、105:開口部、106:エア抜き通路、108:フィルタ、120:医療用弁、122:ハウジング、134:開口部(雄コネクタ接続用のポート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8