(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】焼結ダイヤモンド熱拡散素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/52 20060101AFI20240411BHJP
C04B 35/645 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C04B35/52
C04B35/645
(21)【出願番号】P 2021020305
(22)【出願日】2021-02-11
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000147811
【氏名又は名称】トーメイダイヤ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500462834
【氏名又は名称】ビジョン開発株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤野 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤川 洋基
(72)【発明者】
【氏名】石塚 良彰
(72)【発明者】
【氏名】藤村 忠正
(72)【発明者】
【氏名】柿本 誠士郎
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-254529(JP,A)
【文献】特開2005-044841(JP,A)
【文献】特開2007-126329(JP,A)
【文献】特開平03-054166(JP,A)
【文献】特開2018-049868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/52
C04B 35/645
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々のダイヤモンド粒子が相互に結合したダイヤモンド集合体からなるダイヤモンド部分と粒子間に存在するより小容積の間隙とで構成され、該間隙は導通した空隙を有し、かつ隣接ダイヤモンド粒子同士がダイヤモンド-ダイヤモンド直接結合によって結合した実質的にダイヤモンドのみで構成された焼結体において、該焼結体は粒径50μmより大きなダイヤモンド粒子を焼結体全体に対する体積比において60%以上含有し、かつ全体として3.35g/cm
3
以下の嵩密度を示す焼結ダイヤモンド熱拡散素材。
【請求項2】
前記間隙が全容積の5%を超える導通した空隙を有する、請求項1に記載の熱拡散素材。
【請求項3】
前記焼結体が粒径100μmより大きなダイヤモンド粒子を全体の60%以上含有する、請求項1に記載の熱拡散素材。
【請求項4】
レーザーフラッシュ法による測定において、熱伝導率が500W/m・K以上である、請求項1に記載の熱拡散素材。
【請求項5】
前記ダイヤモンド部分が導電性の粒子を含有する、請求項1に記載の熱拡散素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼結ダイヤモンド素材、特にパワー半導体デバイスや高性能マイクロプロセッシングユニットなどのエレクトロニクス素子からの発熱の効果的な拡散を可能にする安価な熱拡散材または放熱材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料の高集積化、高出力化に伴って熱拡散材料についてもより高性能の材料が求められ、ダイヤモンド系材料への関心も高まっている。
【0003】
ダイヤモンドの熱拡散材としては、高圧・高温で合成された単結晶ダイヤモンドの切断片、緻密な多結晶質CVDダイヤモンドの薄板が商品化されている。単結晶ダイヤモンドは2200W/m・K以上の材料中最大の熱伝導率を示し、多結晶質CVDダイヤモンドでも1000W/m・Kを超える熱伝導率を持つ優れた材料であるが、共に合成には長時間を必要とすることから高価であり、用途が限られている。
【0004】
一方、研磨材として利用されているダイヤモンド粒子(パウダー)を高圧・高温で焼き固めたダイヤモンド焼結体(PCD)は、優れた硬さを有する切削工具素材や耐摩耗材料として広く利用されている。
【0005】
一般的なダイヤモンド焼結体の製造では、焼結助剤としてコバルト系金属が主として用 いられ、超高圧力下の高温状態における溶融金属の存在によって、ダイヤモンド粒子の再配列、溶解・析出機構による粒子間の結合、緻密化が進行すると理解されている。焼結に要する時間は長くても30分程度である。
【0006】
得られるダイヤモンド焼結体を構成する各ダイヤモンド粒子は、相互にダイヤモンド-ダイヤモンド結合による強固なネットワークを形成しており、優れた硬さの原因になっている。
【0007】
さらに主として20μm以下の微粒子を構成粒子に用いて多数の粒界を存在させることでクラックの伝播を防ぎ、高靭性も得られている。
【0008】
このような工具素材のダイヤモンド焼結体を構成するダイヤモンド砥粒自体の熱伝導率は1000W/m・K程度であるが、熱伝導の妨げになる粒界が多数存在することから熱拡散性は低い。また取り込まれている焼結助剤金属によって導電性を示し、絶縁質の熱拡散材料には適さない。
【0009】
ダイヤモンド焼結体中に取り込まれた焼結助剤金属を酸リーチングによって除く手法は公知である。この高温でダイヤモンドのグラファイト化を促進する金属を除く処理によって、焼結体自体の強度は若干低下するものの、耐熱強度の高い工具素材が得られている(特許文献1)。
【0010】
一方ダイヤモンドを主成分とする焼結体の熱拡散材への適用も提案されている。例えば特許文献2には、高圧・高温の焼結技術を用い、ダイヤモンド粒子を銅で固めて実質的に気孔を含まないヒートシンク用高熱伝導度焼結体とすることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭53-114589号公報
【文献】特開2004-175626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は特殊な製造方法によらず通常の方法で得られるダイヤモンド焼結体を材料として、実質的にダイヤモンドのみで構成される、熱伝導率の向上した熱拡散材を提供することを目的としている。
【0013】
本発明は、熱拡散素材の製造において、既に確立されている静的高圧・高温技術を用いて粗粒のダイヤモンド砥粒を一体化品とすることにより、熱伝導性の良好な熱拡散素材の高生産性を確保すると共に、併せて熱拡散材料の形状・特性の多様化を可能にすることを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の主旨は、顕著な結晶粒界を示す個々のダイヤモンド粒子が相互に結合したダイヤモンド集合体からなるダイヤモンド部分と、粒子間に存在するより小容積の間隙とで構成された焼結ダイヤモンド熱拡散素材にある。
【0015】
本発明のダイヤモンド熱拡散素材は、特に以下のように作製される。(1)バルクのダイヤモンド粒子に接して焼結助剤金属を配置し、(2)全体を加圧下で加熱し、焼結助剤金属を融解してダイヤモンド粒子間に浸透させ、溶解・析出による焼結機構によってダイヤモンド粒子間の接合を行い、(3)ダイヤモンド粒子間に残留した焼結助剤金属を溶解除去することによって、粒子間に導通した空隙を形成する。
上記において「バルクダイヤモンド粒子」とは、研磨・研削材用途のダイヤモンド粒子(砥粒)の製造工程において形状、粒度等の物性が整えられたダイヤモンド粒子の集合体(パウダー)をいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明の焼結ダイヤモンド熱拡散素材は、耐食性に優れるので長い熱拡散材寿命を提供する。製作のための処理時間も短くて済む。例えば高圧・高温反応における試料の加熱時間は30分以内で十分であり、昇圧・降圧時間を加えても反応サイクルは1時間を超えることはなく、単結晶ダイヤモンドの育成反応、CVD反応に比べて格段に短い時間で熱拡散素材の製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において焼結原料となるダイヤモンド粒子としては、天然品も合成品も使用可能であるが、結晶構造の乱れの少ない品種が好ましい。合成品においては結晶成長速度が比較的緩やかで、結晶格子の乱れならびに不純物の取り込みの少ないメタルボンド用と称される品種の使用が好ましい。
【0018】
さらに熱伝導の妨げになる結晶粒界を極力減らすために、焼結原料のダイヤモンドとして一般に「粗粒」とされるサイズの粒子を使用する。これによって高熱伝導率が確保され、例えば、前記ダイヤモンド部分全体積の60%以上の粒径を50μm以上又は100μm以上とすることで、熱伝導率500W/m・K以上の焼結品を安定して製作することができ、また600W/m・K以上の焼結品も容易に得ることができる。
【0019】
熱伝導率値の上限は特に規定されないが、焼結原料として市販の研磨・研削用途のバルクダイヤモンド砥粒が用いられていることから、1000W/m・K程度である。なおこれらの熱伝導率の値は、アルバック理工(株)製熱定数測定装置TC-7000を用いたレーザーフラッシュ法によって得られる数値である。
【0020】
焼結原料として平均粒径150μm以上の粗粒ダイヤモンドを主原料として用いる場合には、焼結品の強度を維持するために平均粒径50μm未満の微粒ダイヤモンドを30%程度添加した粒度配合を行うのが好ましい。
【0021】
粒子接合部のダイヤモンド-ダイヤモンド結合を強化するために、焼結品の製造に際しては焼結温度を一般的なダイヤモンド焼結体の場合よりも高めに設定し、焼結時間も長く保つ方法を用いる。このような焼結条件を用いるとダイヤモンド粒子の異常成長が生じ、工具用素材としては好ましくないが、粒界密度の減少となり熱伝導率の向上に寄与するので、熱拡散材料としては好ましい。
【0022】
焼結助剤金属には、高圧・高温反応条件下でダイヤモンド―ダイヤモンド結合の形成を促進し、反応後は酸に容易に溶解するコバルトまたはニッケルを用いる。周期表四、五、六族金属を用いると、これらは金属炭化物の形で焼結品中に不純物として残留する。金属炭化物はフッ硝酸或いは高温のアルカリである程度の除去は可能であるが、除去反応操作が煩雑になるので使用は好ましくない。
【0023】
本発明方法では、相互にダイヤモンド―ダイヤモンド結合した砥粒集合体をブロックまたは板状の形で得ることができる。これから用途に応じた所望の形状に切り出して用いるが、加工方法の選択幅を広げる見地から、焼結助剤金属を含有した状態で切り出してから酸リーチングに供するのが好ましい。
【0024】
さらにボロンドープダイヤモンド砥粒を焼結原料に用いると、砥粒自体の熱伝導率は若干低下する不利はあるものの、板材やチップへの切り出し、表面加工を放電加工で実施することができ、特に厚さ0.5mm以下の薄板を精度よく製作するのに有利である。
【0025】
ダイヤモンド粒子の間隙へ焼結助剤金属を供給する方法としては、ダイヤモンド粒子の 集合体に接してコバルト源(例えばコバルト板、または超硬合金ブロック)を配置し、溶融状態の金属をダイヤモンド粒子の間隙へ供給する溶浸法が好ましいとされている。しかしダイヤモンド粒子が細かい場合や、ダイヤモンド層が厚く、溶浸が困難な場合には、予めダイヤモンド粒子とコバルト粉との混合物を反応容器に充填する方法も用いられる。
【0026】
またダイヤモンド粒子の加圧焼結に際して、予めダイヤモンド粒子間に多量の 焼結助剤金属を介在させるか、焼結の際に隣接配置した多量の焼結助剤金属を粒子間の空間に溶浸させる方法を用いることによって、粒子間隔の広い焼結体を作製し、続く後工程において粒子間に残留する金属を溶出させて多孔質焼結体を得ることができる。
【0027】
熱拡散用素材としての焼結体においては、ダイヤモンド粒子同士が共有結合によって広い面積で接合し、さらに構造の乱れを伴う接合部の数がなるべく少ないこと、またダイヤモンド以外の不純物含有量が極力少ないことが要求される。このことから原料のダイヤモンド粒子にはメッシュサイズの粗い砥粒を用い、粒子間には溶解・析出機構による粒子間の共有結合を形成させ、同時に相互につながった空間を確保し、焼結後のリーチング処理における酸の侵入が容易な構造とする。
【0028】
この目的において原料のダイヤモンド砥粒にはメタルボンド用と称される比較的不純物含有量の少ない品種の50μmより粗いサイズ、特に100μm以上の使用が好ましく、150μm超の粗い砥粒を用いて大きな空孔を形成することが尚好ましい。
【0029】
溶浸源としてダイヤモンド層に接して配置する焼結助剤金属は、ダイヤモンド層全体へ溶浸させるのに十分な量を予め配置する必要がある。一方、混合粉末として充填する際には充填密度を上げるために、まず有機溶媒に懸濁させた形で充填し、良好な分散を確保してから溶媒を揮発除去する手法によるのがよい。
【0030】
焼結ダイヤモンド層の平坦度を保つためには、溶浸源の焼結助剤金属にニッケル板を用いる方法があり、あるいは充填ダイヤモンドの基板としてセラミックスを用いることもできる。
【0031】
セラミックス系の基板材料としてはマグネシアが好適である。マグネシアは熱伝導率が高く、2800℃という高融点に加えて塩酸に溶解することから、後工程の塩酸リーチング処理によってダイヤモンドの粒子間に残留する金属と共に除くことができ、ダイヤモンドのみで構成された、自立熱拡散薄板が得られる。
【0032】
熱拡散素材から所定の形状を切り出すのに放電加工を用いる場合には、所定の形状に切り出してから塩酸リーチング処理を行うのが望ましい。
【0033】
塩酸リーチングに代えて電解抽出も用いることができる。焼結生成物を陽極とし、鉄陰極と組み合わせて希硫酸中で実施できる。大量処理には焼結生成物をまとめてチタン製バスケットに入れて電解操作を行うのが有効である。
【0034】
本発明においては酸リーチングの結果、焼結生成物の表面には内部に通じる多数の孔(空隙)が形成される。これらの孔は他の材料との組合せで熱拡散材料として用いる場合に接合相手材料のアンカーとして機能する。また接合相手材料との熱膨張率の差に基づく歪発生の緩和効果も有する。
【0035】
前記の粒子間空隙(孔)の密度/割合は、原料調製の際にダイヤモンド粒子に混合する焼結助剤の添加量によって調整可能である。空隙の割合(空隙率)は、測定試料片の嵩密度(試料片の容積と質量とから算出)とダイヤモンドの密度3.51g/cm3との比から求められ、焼結助剤金属の溶出を容易にする見地から、少なくともダイヤモンド粒子層全容積の2%、特に5%以上形成することが望ましい。
【0036】
本発明の熱拡散素材におけるダイヤモンド粒子の結合(焼結)は、ダイヤモンドが熱力学的に安定な圧力温度領域内で行うのが好ましいが、加熱反応時間が短く、さらに反応を非酸化雰囲気内で実施することによって、HIP、ホットプレス、放電プラズマ焼結などの手法を用いた熱力学的に準安定な領域内でも実施可能である。
【0037】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
厚さ0.15mmのニッケル板で作成した外径63mm、深さ17mmのカプセルを用意し、底面から次の充填順序で反応材料を充填して、厚さ約14mmの加圧・加熱試料を製作した。
(充填順序)
(1)Co円板、厚さ1mm
(2)ボロンドープダイヤモンド砥粒(ZZDM社製#80/100(粒径約170μm))50g
(3)Co円板、厚さ1mm
(4)マグネシア円板、厚さ4mm
【0039】
このカプセルを5段重ねて高圧・高温反応装置内に充填した。各カプセルの間には厚さ0.5mmのセラミックスシートを挟んだ。焼結反応条件は6.5GPa、1680℃の加圧・加熱条件で20分間保持とした。
【0040】
反応後試料を取り出し、表面のカプセル材をショットブラストによって除去した。ダイヤモンド焼結層の厚みは約5mmであった。
【0041】
このブロックから放電ワイヤーカットで厚さ0.5mmの平板を6枚切り出し、両面をダイヤモンド砥石を用いて研磨仕上げし、次いで6N塩酸中でダイヤ モンド焼結層中に残留しているコバルトを溶出除去した。この際にブロックの端面に付着していたマグネシアも溶解除去できた。平板内に残留するコバルト量はEDX測定により、0.07質量%と見積もられた。
この操作例においてはマグネシア円板の使用によって平坦度の高い円板状の自立熱拡散板を得ることができた。
【0042】
ダイヤモンド板のサイズと質量との測定から、焼結ダイヤモンド層の嵩密度は3.15であり、空隙率は約10%と推定した。また得られた薄板の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法測定により700W/m・Kと見積もられた。
【実施例2】
【0043】
メタルボンド用砥粒(トーメイダイヤ製IMS#60/80(粒径約210μm)と#325/400(粒径約40μm))との質量比3:1の混合粉末に、全量の8質量%の粒径2μmのコバルト粉末を添加し、アセトンを用いた湿式混合の後乾燥して混合粉末を得た。この混合粉末に、0.2質量%のポリビニルアルコールを水に溶かしたものを添加し、十分に混錬して直径62mm、厚さ0.1mmのニッケル板上に1mmの厚さに成型した。
【0044】
得られたニッケル板付きの成型板5枚を厚さ2.0mmの焼結マグネシア板を挟んで、厚さ0.15mmのニッケル板で作成した外径63mm、深さ17mmのカプセルへ入れ、水素ガスを流しながら800℃に加熱してポリビニルアルコールを炭化させた。
【0045】
カプセル5段を積み重ねて反応装置内へ充填し、6.5GPa、1650℃に15分間保持の焼結反応を実施した。反応生成物を塩酸中で煮沸し、直径約62mm、厚さ約0.6mm、嵩密度3.35、空隙率約4%、熱伝導率約800W/m・Kの焼結ダイヤモンド自立板を回収した。
【実施例3】
【0046】
厚さ0.15mmのニッケル板製のカプセルの底に、ボロンドープダイヤモンド(ZZDM社製 #100/120(粒径約140μm))粉150gと2μmのコバルト粉15gとの混合粉を入れて平らに均し、次いで直径62mm、厚さ10mmの13%Co-WC超硬合金基板を嵌め込んでカプセルをかしめた。このカプセルを2段重ねて装置内へ充填し、6.0GPa、1600℃の加圧・加熱条件に供し15分間保持した。 反応後のダイヤモンド焼結ブロック層の厚みは約14.5mmであった。
【0047】
このダイヤモンド焼結ブロック層から放電ワイヤーカツトで直径62mm、厚さ0.4mmの薄板15枚を切り出すことができた。塩酸リーチング後の薄板内に含まれている不純物元素の含有量は、コバルト 0.83%、タングステン0.17%であった。熱伝導率は650W/m・Kであった。
【実施例4】
【0048】
厚さ0.15mmのニッケル板製のカプセルの底に、メタルボンド砥粒(トーメイダイヤ製IMS #100/120(粒径約140μm))粉55gと2μmのコバルト粉8gとの混合粉を入れて平らに均し、次いで直径62mm、厚さ10mmの13%Co-WC超硬合金基板を嵌め込んでカプセルをかしめた。このカプセルを4段重ねて6.0GPa、1600℃の加圧・加熱条件に供し15分間保持した。反応後のダイヤモンド焼結層の厚みは約5.5mmであった。
【0049】
得られた焼結ブロックのダイヤモンド層と超硬合金基板との境界部をワイヤーカットで切り離し、塩酸リーチングを行って厚さ5mm、嵩密度3.25g/cm3のダイヤモンド厚板を得た。
【0050】
次いでレーザーカットにより、厚さ2mm、幅5mmの短冊形の板を切り出し、最終的に5mm×5mm×2mmのチップを得た。同時に熱伝導率測定用として10mm×10mm×3mmのブロック状試料も切り出した。
これらをまとめて塩酸リーチングに供した。ブロック状試料について熱伝導率を測定し、約700W/m・Kの値を得た。
【実施例5】
【0051】
振動テーブルの上に置いた厚さ0.15mmのニッケル板製のカプセルの底に、ボロンドープダイヤモンド #60/70(粒径約240μm)の粉20gを入れて平らに均し、粒径2μmのコバルト粉5gをアセトン中に分散させて加え、アセトンを蒸発させた後厚さ5mmのマグネシア円板を置いてカプセルをかしめた。カプセルを9段重ねて反応装置内へ仕込み、6.5GPa、1650℃の加圧・加熱条件に供し、15分間保持した。
【0052】
反応後回収された試料のダイヤモンド焼結層の厚みは約2mmであり、マグネシア板か ら簡単に外すことができた。ダイヤモンド焼結層がニッケル板に貼り付いたままでワイヤー カット加工により10mm角の熱拡散素材に切り出し、チタン製バスケットへ入れて、4N希硫酸中でバスケットを陽極、鉄板を陰極とした電解操作によってダイヤモンドの粒子間に残留するコバルトを除去し、空隙率約15%、熱伝導率約750W/m・Kの熱拡散素材を得た。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の熱伝導拡散素材は、熱拡散に適用されて様々な過酷な環境で経済的かつ安全に使用でき 、長期間高い放熱性能を発揮可能である。