IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両のバッテリ制御システム 図1
  • 特許-車両のバッテリ制御システム 図2
  • 特許-車両のバッテリ制御システム 図3
  • 特許-車両のバッテリ制御システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】車両のバッテリ制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240411BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240411BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240411BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240411BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240411BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20240411BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
B60L50/60
B60L58/18
B60L58/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022047459
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023141241
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃太
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032975(JP,A)
【文献】特開2009-011138(JP,A)
【文献】特開2008-148408(JP,A)
【文献】特開2012-252907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 50/60
B60L 58/18
B60L 58/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリパックを備えるバッテリモジュールが搭載され、前記複数のバッテリパックが負荷に対して並列に接続される車両のバッテリ制御システムであって、
前記バッテリモジュールと前記負荷との間に介在し、前記複数のバッテリパックの各々と前記負荷とを個別に接続及び切断可能なバッテリ断接部と、
前記複数のバッテリパックの各々の温度が所定の最低閾値温度以上であるか否かを個々に判定する温度判定部と、
記複数のバッテリパックのうち少なくとも1つの温度が前記最低閾値温度以上であると前記温度判定部が判定した場合は、第1所定数のバッテリパックを前記負荷に接続するように前記バッテリ断接部を制御し、前記複数のバッテリパックの全ての温度が前記最低閾値温度未満であると前記温度判定部が判定した場合は、前記第1所定数よりも少ない第2所定数のバッテリパックを前記負荷に接続するように前記バッテリ断接部を制御するバッテリ断接制御部と、を備え
前記バッテリ断接制御部は、前記第2所定数のバッテリパックを前記負荷に接続する場合、温度の高いバッテリパックを優先して接続する
ことを特徴とする車両のバッテリ制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ制御システムであって、
前記第2所定数は、前記車両の走行のために必要なバッテリパックの最小数以上である
ことを特徴とする車両のバッテリ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のバッテリ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリモジュールを構成する第1バッテリパック及び第2バッテリパックと、駆動用モータと、を備える電気自動車が開示されている。第1バッテリパックと第2バッテリパックとは互いに並列に接続され、第1バッテリパック及び第2バッテリパックと駆動用モータとの間には、第1コンタクタ及び第2コンタクタが介在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-167864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリパックには使用に好適な動作温度範囲が存在し、動作温度範囲よりも低い温度での使用はバッテリ能力の低下や短命化を招くため、動作温度範囲よりも低い温度での長時間の使用は好ましくない。しかし、車両が低温下で長時間停車され、バッテリパックの温度が動作温度範囲よりも大きく低下すると、車両の始動後において、バッテリパックが動作温度範囲に達するまでに時間を要するおそれがある。
【0005】
そこで本開示は、負荷に対して並列に接続される複数のバッテリパックを備えた車両において、負荷への電力供給開始後に、電力を供給している低温のバッテリパックを効率良く昇温させることが可能なバッテリ制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様は、複数のバッテリパックを備えるバッテリモジュールが搭載され、複数のバッテリパックが負荷に対して並列に接続される車両のバッテリ制御システムであって、バッテリ断接部と、温度判定部と、バッテリ断接制御部とを備える。
【0007】
バッテリ断接部は、バッテリモジュールと負荷との間に介在し、複数のバッテリパックの各々と負荷とを個別に接続及び切断可能に構成される。温度判定部は、バッテリパックの温度が所定の最低閾値温度以上であるか否かを判定する。バッテリ断接制御部は、複数のバッテリパックの全ての温度が最低閾値温度以上であると温度判定部が判定した場合は、第1所定数のバッテリパックを負荷に接続するようにバッテリ断接部を制御し、複数のバッテリパックの全ての温度が最低閾値温度未満であると温度判定部が判定した場合は、第1所定数よりも少ない第2所定数のバッテリパックを負荷に接続するようにバッテリ断接部を制御する。バッテリ断接制御部は、第2所定数のバッテリパックを負荷に接続する場合、温度の高いバッテリパックを優先して接続する。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様のバッテリ制御システムであって、第2所定数は、車両の走行のために必要なバッテリパックの最小数以上である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のバッテリ制御システムによれば、負荷に対して並列に接続される複数のバッテリパックを備えた車両において、負荷への電力供給開始後に、電力を供給している低温のバッテリパックを効率良く昇温させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリモジュールを搭載した車両を模式的に示す側面図である。
図2図1の実施形態のバッテリ制御システムを示すブロック図である。
図3】電流制御処理を示すフローチャートである。
図4】バッテリパックの断接制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態のバッテリ制御システムは、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に設けられる。
【0013】
図1に示すように、車両には複数(本実施形態では3つ)のバッテリパック2が搭載される。複数のバッテリパック2は、バッテリモジュール1を構成する。なお、図1ではトラックにバッテリモジュール1を搭載した例を図示しているが、車両はトラックに限定されない。
【0014】
バッテリ制御システムは、図2に示すように、バッテリモジュール1と、バッテリ断接部3と、負荷4と、バッテリ制御装置10と、を備える。
【0015】
複数のバッテリパック2は、負荷4に対して並列に接続される。各バッテリパック2には、バッテリパック2の温度を検出する温度センサ5が設けられる。負荷4は、車両を推進させる駆動用モータ(図示省略)を含む。駆動用モータは、バッテリモジュール1から供給される電力によって駆動する。
【0016】
バッテリ断接部3は、バッテリパック2と同数のコンタクタ6によって構成され、バッテリモジュール1と負荷4との間に介在する。コンタクタ6のオン/オフによって、複数のバッテリパック2の各々と負荷4とが個別に接続及び切断される。本実施形態では、全てのバッテリパック2が負荷4に接続された状態(全てのコンタクタ6がオン状態)を、バッテリ断接部3の標準接続パターン(通常状態)として説明する。
【0017】
バッテリ制御装置10は、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力回路等を備える。バッテリ制御装置10は、予め記憶された制御プログラムを実行することにより、温度取得部11、電圧取得部12、上限電流算出部13、電流制御部14、温度判定部15、及びバッテリ断接制御部16として機能する。
【0018】
温度取得部11は、各バッテリパック2の温度を温度センサ5から逐次取得する。電圧取得部12は、各バッテリパック2の端子間の電圧(バッテリパック2の電圧値)を電圧センサ(図示省略)から逐次取得する。
【0019】
バッテリ制御装置10には、バッテリパック2の温度と電圧値と上限電流値との対応関係を示す上限電流値情報(例えばマップ等)が記憶されている。上限電流値とは、バッテリパック2の保護等のために有効な上限の電流値であり、電圧値が一定の場合、温度が上昇するほど上限電流値は減少する。バッテリパック2には使用に好適な動作温度範囲が存在し、動作温度範囲よりも温度が上昇すると、上限電流値は顕著に減少する。上限電流値情報は、シミュレーション等によって予め求められ、バッテリ制御装置10に記憶される。
【0020】
上限電流算出部13は、温度取得部11が取得したバッテリパック2の温度と、電圧取得部12が取得したバッテリパック2の電圧値と、上限電流値情報とを用いて、各バッテリパック2の上限電流値を個別に算出する。
【0021】
電流制御部14は、バッテリパック2の電流値を上限電流値以下に制御する。バッテリパック2は並列に接続されているため、バッテリモジュール1を流通する総電流値は、各バッテリパック2に均等に配分され、各バッテリパック2の電流値は等しい。電流制御部14は、並列に接続されたバッテリパック2の各上限電流値のうち最小の上限電流値以下の電流が各バッテリパック2を流通するように、総電流値を制御する。
【0022】
バッテリ制御装置10には、バッテリパック2の最低閾値温度が記憶されている。最低閾値温度とは、バッテリパック2の動作温度範囲の下限よりも低く、バッテリパック2からの電力供給を開始した後、自己の内部抵抗によってバッテリパック2が昇温して動作温度範囲の下限に達するまでに長時間を要する可能性が高いバッテリパック2の温度である。最低閾値温度は、シミュレーション等によって予め求められ、バッテリ制御装置10に記憶される。
【0023】
温度判定部15は、温度取得部11が取得したバッテリパック2の全ての温度と最低閾値温度とを比較し、各温度が最低閾値温度以上であるか否かを判定する。係る判定は、バッテリモジュール1から負荷4への電力供給開始時に限って行ってもよく、常時(例えば、温度取得部11が温度を取得する毎に都度)行ってもよい。
【0024】
バッテリ断接制御部16は、バッテリモジュール1から負荷4への電力供給開始時において、複数のバッテリパック2の全て(3つ)の温度が最低閾値温度以上であると温度判定部15が判定した場合、及び複数のバッテリパック2の一部(1つ又は2つ)の温度が最低閾値温度未満であると温度判定部15が判定した場合は、第1所定数のバッテリパック2を負荷4に接続するようにバッテリ断接部3を制御する。すなわち、最低閾値温度以上のバッテリパック2が1つ以上の場合は、第1所定数のバッテリパック2を接続する。
【0025】
一方、バッテリ断接制御部16は、複数のバッテリパック2の全ての温度が最低閾値温度未満であると温度判定部15が判定した場合は、第1所定数よりも少ない第2所定数(第1所定数>第2所定数)のバッテリパック2を負荷4に接続するようにバッテリ断接部3を制御する。バッテリ断接制御部16は、第2所定数のバッテリパック2を接続する場合、温度の高いバッテリパック2を優先して接続する。
【0026】
第2所定数には、車両の走行のために必要なバッテリパック2の最小数以上の数が設定される。第2所定数は、固定値であってもよく、車両の状態(例えば積載量など)に応じて都度算出して設定する変動値であってもよい。本実施形態では、第1所定数として通常接続パターンでの接続数である「3」が設定される。また、車両の走行のために必要なバッテリパック2の最小数は2つであり、第2所定数(固定値)として「2」が設定される。
【0028】
次に、バッテリ制御装置10が実行する電流制御処理及びバッテリパック2の断接制御処理について、図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。バッテリ制御装置10は、バッテリモジュール1から負荷4へ電力が供給されている間、電流制御処理を繰り返して実行する。また、バッテリ制御装置10は、バッテリモジュール1から負荷4への電力供給開始時(例えば車両の電源オン時)に、バッテリパック2の断接制御処理を実行する。なお、バッテリ制御装置10は、全てのバッテリパック2の電圧値を取得するため、断接制御処理の前に全てのバッテリパック2を負荷4に接続する(断接部3を標準接続パターンに設定する)。
【0029】
電流制御処理では、図3に示すように、3つのバッテリパック2の温度と電圧値とをそれぞれ取得し(ステップS1)、取得したバッテリパック2の温度及び電圧値と上限電流値情報とを用いて、各バッテリパック2の上限電流値を個別に算出する(ステップS2)。
【0030】
3つのバッテリパック2の各上限電流値を算出すると、その中で最小の上限電流値以下の電流が各バッテリパック2を流通するように、バッテリモジュール1の総電流値を制御する。
【0031】
断接制御処理では、図4に示すように、3つのバッテリパック2の温度を取得し(ステップS11)、取得したバッテリパック2の温度が最低閾値温度以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0032】
3つバッテリパック2のうち少なくとも1つの温度が最低閾値温度以上であると判定した場合、3つのバッテリパック2を負荷4に接続するようにバッテリ断接部3を制御する。一方、3つのバッテリパック2の全ての温度が最低閾値温度未満であると温度判定部15が判定した場合、温度の高い2つのバッテリパック2を負荷4に接続するようにバッテリ断接部3を制御する。
【0033】
本実施形態では、バッテリモジュール1から負荷4への電力供給開始時において、全てのバッテリパック2の温度が最低閾値温度未満である場合には、通常状態で接続される第1所定数(3つ)よりも少ない第2所定数(2つ)のバッテリパック2が負荷4に接続される。すなわち、バッテリパック2の接続数が3つから2つに減少する。バッテリパック2の接続数が3つの場合と2つの場合とを比較すると、2つの場合の方が3つの場合よりも各バッテリパック2を流通する電流が増大し、自己の内部抵抗による各バッテリパック2の昇温速度が速くなる。これにより、例えば、車両が低温下で長時間停車され、全てのバッテリパック2の温度が最低閾値温度未満に低下した場合、負荷4への電力供給開始後に、電力を供給している低温のバッテリパック2を効率良く昇温させることができ、係るバッテリパック2の温度が動作温度範囲に達するまでの時間を短縮することができる。
【0034】
第2所定数が車両の走行のために必要なバッテリパック2の最小数以上であるので、バッテリパック2の接続数を減らした場合であっても、車両の最低限の走行を確保することができる。
【0035】
また、バッテリパック2の一部を負荷に接続する場合、高温のバッテリパック2を優先して接続するので、低温のバッテリパック2を接続する場合よりも動作温度範囲に達するまでの時間を短縮することができる。
【0036】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0037】
例えば、上記実施形態では、3つのバッテリパック2がバッテリモジュール1を構成し、通常状態で3つ(全て)のバッテリパック2を負荷4に対して並列に接続する例を説明したが、バッテリモジュール1を構成するバッテリパック2の数は上記に限定されず、複数であればよい。また、通常状態で一部のバッテリパック2を負荷4に対して接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、負荷に対して並列に接続される複数のバッテリパックを備える車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1:バッテリモジュール
2:バッテリパック
3:バッテリ断接部
4:負荷
5:温度センサ
6:コンタクタ
10:バッテリ制御装置
11:温度取得部
12:電圧取得部
13:上限電流算出部
14:電流制御部
15:温度判定部
16:バッテリ断接制御部
図1
図2
図3
図4