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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】供試体成形用型枠
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01N1/28 E
G01N1/28 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020105182
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021196321
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】598124249
【氏名又は名称】エア・ウォーター・マッハ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516285858
【氏名又は名称】株式会社和田商店
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】大浦 康記
(72)【発明者】
【氏名】織田 一浩
【審査官】野口 聖彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-026385(JP,A)
【文献】実公昭49-042677(JP,Y1)
【文献】特開2005-345169(JP,A)
【文献】特開2014-173243(JP,A)
【文献】特開2002-096314(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0042418(KR,A)
【文献】国際公開第2004/060630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G03N 33/00
E04G 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートまたはモルタルの供試体を製造するための有底円柱状の成形空間が開口を上方に向けて複数、設けられた供試体成形用型枠であって、
上下方向と直交する第1方向で側面同士が重なるエラストマー製の複数の型部材を備えた型枠本体と、
前記型枠本体を前記第1方向の両側から締め付けて前記複数の型部材が重なった状態を維持する締め付け部材と、
を有し、
前記複数の型部材において前記第1方向で互いに重なる2つの側面の各々には、前記成形空間を2分割した半円柱状のキャビティが前記上下方向および前記第1方向に対して直交する第2方向に複数、配列され
前記複数の型部材のうち、少なくとも前記型枠本体の前記第1方向の両側に位置する型部材の上面には、有底の穴が設けられていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項2】
請求項1に記載の供試体成形用型枠において、
前記成形空間の底部に配置される円形の底板を有することを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項3】
請求項1または2に記載の供試体成形用型枠において、
前記締め付け部材の一部は、前記型枠本体から互いに反対方向に突出した一対の取っ手を構成することを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項4】
請求項3に記載の供試体成形用型枠において、
前記締め付け部材は、前記第2方向の一方側で前記型枠本体を締め付ける第1部材と、前記第2方向の他方側で前記型枠本体を締め付ける第2部材と、を備え、
前記第1部材および前記第2部材は各々、前記第1方向の両側から前記型枠本体を挟む一対の板部と、前記型枠本体から前記第2方向に離間する位置で前記一対の板部を連結する連結部と、を備え、
前記第1部材および前記第2部材の各々の前記連結部よって前記一対の取っ手が構成されることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項5】
請求項4に記載の供試体成形用型枠において、
前記型枠本体の前記第1方向の両側の側面の各々に、前記一対の板部が各々、嵌る凹部が形成されていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記複数の型部材において前記第1方向で互いに重なる2つの側面のうち、一方の側面には、他方の側面に向けて突出した突条部が設けられ、前記他方の側面には、前記突条部が嵌る溝が設けられていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記複数の型部材には、前記キャビティの上端縁に沿って延在する円弧状の凸部が設けられていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記成形空間の上部開口を塞ぐ蓋を有することを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項9】
請求項8に記載の供試体成形用型枠において、
前記蓋の下面には、前記成形空間に向けて突出した複数の突起が設けられていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記型枠本体の前記第1方向の両側の側面の少なくとも一方には、前記成形空間に前記第1方向で重なる位置に凸部が設けられていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記複数の型部材は、ポリウレタン系エラストマーであることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項12】
請求項11に記載の供試体成形用型枠において、
前記ポリウレタン系エラストマーは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系、またはエステル系であって、タイプAデュロメータ硬さでA80からA97であることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記型枠本体では、2つの前記型部材が前記第1方向で重なっており、前記成形空間が1列に配列されていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【請求項14】
請求項1から12までの何れか一項に記載の供試体成形用型枠において、
前記型枠本体では、3つの前記型部材が前記第1方向で重なっており、前記成形空間が2列に配列されていることを特徴とする供試体成形用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタルの圧縮強度等の試験に用いる円柱状の供試体を作成するための供試体成形用型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルは、温度や湿度等の外部環境により強度が大きく変化する材料である。このため、コンクリートやモルタルの強度を確認するには、型枠内で円柱状の供試体を製造した後、供試体に圧縮強度等の試験を行う。かかる型枠として、合成樹脂製の略直方体形状の型枠本体に円柱状の複数の成形空間を設けた構造が提案されている(特許文献1参照)。かかる型枠によれば、金属製の型枠と比較して軽量化を図ることができるので、運搬等が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭55-64749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、型枠から供試体を取り出す際、型枠本体を砕くことになる。このため、型枠本体から供試体を取り出すのに多大な手間がかかるので、供試体を効率よく製造することができないという問題点がある。また、特許文献1には、型枠本体を逆さに向けて、供試体を円筒穴から引き出せば、型枠本体を砕く必要がないため、型枠本体を再利用できる旨が記載されている。しかしながら、円筒穴の内壁にグリスを塗布したとしても、円筒穴から円柱状の供試体を引き出すのには多大な手間がかかるため、供試体を効率よく製造することができないという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明に課題は、コンクリートやモルタルの円柱状の供試体を効率よく製造することのできる供試体成形用型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、コンクリートまたはモルタルの供試体を製造するための有底円柱状の成形空間が開口を上方に向けて複数、設けられた供試体成形用型枠であって、上下方向と直交する第1方向で側面同士が重なるエラストマー製の複数の型部材を備えた型枠本体と、前記型枠本体を前記第1方向の両側から締め付けて前記複数の型部材が重なった状態を維持する締め付け部材と、を有し、前記複数の型部材において前記第1方向で互いに重なる2つの側面の各々には、前記成形空間を2分割した半円柱状のキャビティが前記上下方向および前記第1方向に対して直交する第2方向に複数、配列され、前記複数の型部材のうち、少なくとも前記型枠本体の前記第1方向の両側に位置する型部材の上面には、有底の穴が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、型枠本体に用いた型部材を重ねると、型部材の間には、型部材の側面に形成された半円柱状のキャビティが合わさって、上方に向けて開口する有底円柱状の成形空間が複数、設けられる。従って、締め付け部材によって、型部材が重なった状態を維持しながら、成形空間にコンクリートやモルタルを流し込んだ後、養生すれば、成形空間の内部でコンクリートやモルタルを固化させ、供試体とすることができる。また、締め付け部材を外せば、型部材同士を離すことができる。型部材は、エラストマー製であるため、型部材同士を引き離す際、ある程度の変形が可能である。従って、キャビティから供試体を容易に外すことができるので、コンクリートやモルタルの供試体を効率よく製造することができる。また、型部材は、エラストマー製であるため、型枠本体の軽量化を図ることができる。従って、供試体成形用型枠を容易に運搬することができる。また、かかる態様によれば、型部材を外す際、指先等を引っ掛けて、型部材を引き離すことができる。
【0008】
本発明において、前記成形空間の底部に配置される円形の底板を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、供試体の底面には、型部材の繋ぎ目を原因とするバリ等が発生しないので、研磨等を行わなくても、圧縮強度試験に適用できる面精度の底面を備えた供試体を得ることができる。
【0009】
本発明において、前記締め付け部材の一部は、前記型枠本体から互いに反対方向に突出した一対の取っ手を構成する態様を採用することができる。かかる態様によれば、取っ手を持って、供試体成形用型枠を運搬することができるので、便利である。
【0010】
本発明において、前記締め付け部材は、前記第2方向の一方側で前記型枠本体を締め付ける第1部材と、前記第2方向の他方側で前記型枠本体を締め付ける第2部材と、を備え、前記第1部材および前記第2部材は各々、前記第1方向の両側から前記型枠本体を挟む一対の板部と、前記型枠本体から前記第2方向に離間する位置で前記一対の板部を連結する連結部と、を備え、前記第1部材および前記第2部材の各々の前記連結部よって前記一対の取っ手が構成される態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記型枠本体の前記第1方向の両側の側面の各々に、前記一対の板部が各々、嵌る凹部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、締め付け部材が型枠本体から外れにくい。
【0012】
本発明において、前記複数の型部材において前記第1方向で互いに重なる2つの側面のうち、一方の側面には、他方の側面に向けて突出した突条部が設けられ、前記他方の側面には、前記突条部が嵌る溝が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、型部材の側面同士を適正に重ねることができる。
【0013】
本発明において、前記複数の型部材には、前記キャビティの上端縁に沿って延在する円弧状の凸部が設けられている態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記成形空間の上部開口を塞ぐ蓋を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、成形空間に充填したコンクリートやモルタルを養生させる際、異物の混入等を抑制することができ、かつ、目的の高さに揃えることができる。
【0015】
本発明において、前記蓋の下面には、前記成形空間に向けて突出した複数の突起が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、成形空間に充填したコンクリートやモルタルと型枠とを密着させることができ、かつ、成形空間と蓋との芯出しが容易である。
【0016】
本発明において、前記型枠本体の前記第1方向の両側の側面の少なくとも一方には、前記成形空間に前記第1方向で重なる位置に凸部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、成形空間にコンクリートやモルタルを流し込む途中や流し込んだ後、凸部をプラスチックハンマー等で叩いて、コンクリートやモルタルに振動を伝達することにより、成形空間にコンクリートを適正に充填した状態とすることができる。
【0018】
本発明において、前記複数の型部材は、ポリウレタン系エラストマーである態様を採用することができる。本発明において、前記ポリウレタン系エラストマーは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系、またはエステル系であって、タイプAデュロメータ硬さでA80からA97であることが好ましい。
【0019】
本発明において、前記型枠本体では、2つの前記型部材が前記第1方向で重なっており、前記成形空間が1列に配列されている態様を採用することができる。
【0020】
本発明において、前記型枠本体では、3つの前記型部材が前記第1方向で重なっており、前記成形空間が2列に配列されている態様を採用してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、締め付け部材によって、型部材が重なった状態を維持しながら、成形空間にコンクリートやモルタルを流し込んだ後、養生すれば、成形空間の内部でコンクリートやモルタルを固化させ、供試体とすることができる。また、締め付け部材を外せば、型部材同士を離すことができる。型部材は、エラストマー製であるため、型部材同士を引き離す際、ある程度の変形が可能である。従って、キャビティから供試体を容易に外すことができるので、コンクリートやモルタルの供試体を効率よく製造することができる。また、型部材は、エラストマー製であるため、型枠本体の軽量化を図ることができる。従って、供試体成形用型枠。を容易に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る型枠の正面、平面、および右側面を示す説明図。
図2図1に示す型枠の背面、平面、および右側面を示す説明図。
図3図1に示す型枠の背面、底面、および左側面を示す説明図。
図4図1に示す型枠を第1型部材の側からみた分解斜視図。
図5図1に示す供試体成形用型枠を第2型部材の側からみた分解斜視図。
図6図1に示す型枠を用いて供試体を製造する方法を模式的に示す工程断面図。
図7】本発明の第2実施形態に係る型枠の正面、平面、および右側面を示す説明図。
図8図7に示す型枠の背面、平面、および右側面を示す説明図。
図9図7に示す型枠の背面、底面、および左側面を示す説明図。
図10図7に示す型枠を第1型部材の側からみた分解斜視図。
図11図7に示す型枠を第3型部材の側からみた分解斜視図。
図12】本発明を適用した供試体成形用型枠の材質と評価結果との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る「供試体成形用型枠」を「型枠」と略して説明する。
【0024】
[第1実施形態]
(全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る型枠10の正面、平面、および右側面を示す説明図である。図2は、図1に示す型枠10の背面、平面、および右側面を示す説明図である。図3は、図1に示す型枠10の背面、底面、および左側面を示す説明図である。図4は、図1に示す型枠10を第1型部材1の側からみた分解斜視図である。図5は、図1に示す型枠10を第2型部材2の側からみた分解斜視図である。
【0025】
図1図2図3図4において、本形態の型枠10は、圧縮強度試験等に用いる円柱
状のコンクリートやモルタルの供試体を製造するための供試体成形用型枠である。本形態の型枠10は、上方に向けて開口する有底円柱状の成形空間50を構成するように第1方向Xで重ねられた複数の型部材を備えた型枠本体5と、型枠本体5を第1方向Xの両側から締め付けて複数の型部材が重なった状態を維持する締め付け部材4とを有しており、型枠本体5は略直方体である。また、型枠10は、成形空間50の底部に配置される円形の底板7と、成形空間50の上部開口を塞ぐ蓋6とを有している。蓋6の下面には、成形空間50に向けて突出した複数の突起61が設けられている。
【0026】
供試体は、例えば、外径が5cmであり、高さは10cmである。また、供試体は、外径が10cmであり、高さは20cmである場合もある。また、供試体を製造した後、供試体の上端部を研磨して上面を底面と平行な面とする場合、成形空間50を試験に用いる際のサイズより深くして供試体を成形することがある。
【0027】
(型枠本体5の詳細構成)
本形態において、型枠本体5は、第1型部材1、および第2型部材2からなる2つの型部材を備えており、第1型部材1と第2型部材2との間に有底円柱状の複数の成形空間50が構成される。より具体的には、第1型部材1と第2型部材2とにおいて第1方向Xで互いに重なる2つの側面11、21の各々には、成形空間50を2分割した半円柱状の凹部からなるキャビティ15、25が上下方向および第1方向Xに対して直交する第2方向Yに複数、配列されている。従って、第1型部材1と第2型部材2とを第1方向Xで重ねた際、型枠本体5には、成形空間50が1列に構成される。本形態において、型枠10には、3つの成形空間50が設けられており、3つの供試体を同時に製造可能である。従って、1回の試験で3つの供試体が用いられる場合でも、1回の試験に必要な数の供試体を同時に製造可能である。
【0028】
キャビティ15は、成形空間50の底面の一部を構成する半円形の底部151と、底部151の円弧状の外縁から上方に延在する円弧状の内壁152とを有している。キャビティ25は、成形空間50の底面の一部を構成する半円形の底部251と、底部251の円弧状の外縁から上方に延在する円弧状の内壁252とを有している。従って、側面11、21同士が第1方向Xで重なるように第1型部材1と第2型部材2とを第1方向Xで重ねると、キャビティ15の底部151とキャビティ25の底部251とによって成形空間50の円形の底部が構成され、キャビティ15の内壁152とキャビティ25の内壁252とによって成形空間50の円周壁が構成される。
【0029】
第1型部材1の上面13には、キャビティ15の上端縁に沿って延在する円弧状の凸部156が設けられ、第2型部材2の上面23には、キャビティ25の上端縁に沿って延在する円弧状の凸部256が設けられている。従って、第1型部材1と第2型部材2とを第1方向Xで重ねると、凸部156、256は、成形空間50の開口縁に沿って延在する円環状の凸部56を構成する。
【0030】
第1型部材1および第2型部材2において、第1方向Xで互いに重なる2つの側面11、21のうち、一方の側面には、他方の側面に向けて突出した突条部が設けられ、他方の側面には、突条部が嵌る溝が設けられている。本形態では、側面21には、側面11に向けて突出した突条部26が設けられ、側面11には、突条部26が嵌る溝17が設けられている。本形態において、溝17および突条部26は、第2方向Yの4か所で上下方向に延在するように設けられ、溝17の各間、および突条部26の間にキャビティ15、25が設けられている。複数の溝17は下端部で繋がっており、複数の突条部26は下端部で繋がっている。本形態において、突条部26および溝17はいずれも断面形状が台形になっている。
【0031】
第1型部材1の上面13には、指先を差し込むことができる大きさの有底の穴131が形成され、第2型部材2の上面23には、指先を差し込むことができる大きさの有底の穴231が形成されている。なお、第1型部材1および第2型部材2の底面にも有底の穴131、231が形成されている。また、第1型部材1と第2型部材2との重なり部分等の型部材の重なり部分には、離型の際にコテの先端を差し込む切込みを設けることもある。
【0032】
型枠本体5の第1方向Xの両側の側面51、52の少なくとも一方には、成形空間50に第1方向Xで重なる位置に凸部が形成されている。本形態において、型枠本体5の側面51は、第1型部材1の側面12に相当することから、側面12には、3つの成形空間50に第1方向Xで重なる3か所に凸部121が形成されている。また、型枠本体5の側面52は、第2型部材2の側面22に相当することから、側面22には、3つの成形空間50に第1方向Xで重なる3か所に凸部221が形成されている。凸部121、221はいずれも、上下方向において中間より下方位置に設けられている。
【0033】
このように構成した型枠本体5において、第1型部材1および第2型部材2は、いずれもエラストマー製である。かかるエラストマーとしては、ニトリルブタジエン系エラストマー、シリコンエラストマー、熱硬化性のウレタン系エラストマー等を例示することができる。これらのエラストマーのうち、型枠の外観損耗度から評価した再利用性能、供試体の離型性、型部材の生産性等を考慮すると、熱硬化性のウレタン系エラストマーが好ましい。また、ウレタン系エラストマーを用いる場合の硬度は、タイプAデュロメータ硬さで表すと、例えば、再利用性能等からみてA80からA97が好ましい。特に、硬度がA85以上であれば、荷重により型枠本体5に発生する歪を低減することができ、寸法精度面も含めて好ましい。本形態では、蓋6および底板7もエラストマー製である。
【0034】
(締め付け部材4の構成)
締め付け部材4は、型枠本体5を第1方向Xの両側から締め付けて第1型部材1と第2型部材2とが重なった状態を維持するとともに、一部が型枠本体5から互いに反対方向に突出した一対の取っ手45を構成する。より具体的には、締め付け部材4は、第2方向Yの一方側で型枠本体5を締め付ける第1部材41と、第2方向Yの他方側で型枠本体5を締め付ける第2部材42とを備えており、第1部材41および第2部材42は各々、第1方向Xの両側から型枠本体5を挟む一対の板部46、47と、型枠本体5から第2方向Yに離間する位置で一対の板部46、47を連結する連結部48とを備えている。従って、連結部48は、型枠本体5から第2方向Yに沿って互いに反対方向に突出しており、一対の取っ手45を構成する。本形態において、第1部材41および第2部材42はいずれも金属製の板状部材である。
【0035】
型枠本体5の第1方向Xの両側の側面51、52には、板部46、47が配置される凹部が形成されている。本形態において、型枠本体5の側面51は、第1型部材1の側面12に相当することから、側面12には、第1部材41および第2部材42の板部46が各々、配置される凹部122が形成されている。また、型枠本体5の側面52は、第2型部材2の側面22に相当することから、側面22には、第1部材41および第2部材42の板部47が各々、配置される凹部222が形成されている。
【0036】
(供試体の製造方法等)
図6は、図1に示す型枠10を用いて供試体を製造する方法を模式的に示す工程断面図である。図1に示す型枠10を用いて供試体を製造するには、まず、図6の工程ST1において、第1型部材1と第2型部材2とを第1方向Xで重ねると、半円柱状のキャビティ15、25が合わさって、第1型部材1と第2型部材2との間には、上方に向けて開口する有底円柱状の成形空間50が複数、設けられる。その際、第1型部材1の側面11に形成された溝17には、第2型部材2の側面21に形成された突条部26が嵌るので、第1
型部材1と第2型部材2との位置合わせを精度よく行うことができる。従って、キャビティ15、25を適正に重ねることができる。なお、キャビティ15、25に対しては、グリス等の離型剤を塗布しておく。但し、本形態において、第1型部材1と第2型部材2は、エラストマー製であり、離型性に優れている。従って、グリス等の離型剤は、毎回行う必要がない等の利点がある。
【0037】
次に、型枠本体5に対して第2方向Yから締め付け部材4としての第1部材41および第2部材42を嵌めることによって、型枠本体5を締め付け、第1部材41と第2部材42とが重なった状態を維持する。次に、成形空間50の底部に底板7を配置する。
次に、工程ST2において、成形空間50にモルタルCを流し込んだ後、工程ST3において、成形空間50の上端開口を蓋6で塞ぎ、所定の時間、養生すれば、成形空間50の内部でモルタルCを固化させることができ、供試体Tとすることができる。本形態では、型枠本体5の第1方向Xの両側の側面51、52には、成形空間50に第1方向Xで重なる位置に凸部121、221がされている。このため、成形空間50にモルタルCを流し込む途中や流し込んだ後、凸部121、221をプラスチックハンマー等で叩いて、モルタルCに振動を伝達することにより、成形空間50にモルタルCを適正に充填した状態とすることができる。また、成形空間50の上端開口を蓋6で塞いだ状態で養生するので、成形空間50に充填したモルタルCへの異物の侵入等を抑制することができ、かつ、目的の高さに揃えることができる。また、蓋6の下面60には突起61が設けられているので、成形空間50の上端開口を蓋6で塞いだ際、突起61がモルタルCに潜り込む。この場合、成形直後の供試体には、突起61の跡が残るが、試験の際には、供試体の上面を研磨するので、突起61の跡は消失する。
【0038】
次に、工程ST4において、締め付け部材4を外せば、第1型部材1と第2型部材2とを離し、供試体Tを得ることができる。その際、第1型部材1の上面13、および第2型部材2の上面23には、穴131、231が形成されているため、穴131、231に指先等を差し込んで、第1型部材1と第2型部材2とを引き離すことができる。また、第1型部材1および第2型部材2は、エラストマー製であるため、ある程度の変形が可能である。また、第1型部材1と第2型部材2は、エラストマー製であり、離型性に優れている。従って、キャビティ15、25から供試体Tを容易に外すことができる。
【0039】
また、第1型部材1および第2型部材2は、エラストマー製であるため、金属製である場合と比較して、型枠本体5の軽量化を図ることができる。また、型枠10には、締め付け部材4によって、一対の取っ手45が構成されている。しかも、締め付け部材4の板部46、47は、型枠本体5の側面51、52に形成された凹部122、222に嵌っているため、締め付け部材4は、型枠本体5から外れにくい。従って、準備作業や型付け作業の際、取っ手45を持って、型枠10を容易に運搬することができる。また、工程ST2において成形空間50にコンクリートを流し込んだ後、養生を行う場所まで移動させる際、成形空間50にコンクリートが充填された型枠10を容易に運搬することができる。また、工程ST3において成形空間50でコンクリートを固化させた後、圧縮試験を行う場所まで移動させる際、成形空間50に供試体Tが収容された型枠10を容易に運搬することができる。
【0040】
また、成形空間50の底部に円形の底板7を配置したため、供試体Tの底面には、第1型部材1と第2型部材2との繋ぎ目を原因とするバリ等が発生しない。従って、底面に研磨等を行わなくても、圧縮強度試験に適用できる面精度の底面を備えた供試体Tを得ることができる。
【0041】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係る型枠10の正面、平面、および右側面を示す説明
図である。図8は、図7に示す型枠10の背面、平面、および右側面を示す説明図である。図9は、図7に示す型枠10の背面、底面、および左側面を示す説明図である。図10は、図7に示す型枠10を第1型部材1の側からみた分解斜視図である。図11は、図7に示す型枠10を第3型部材3の側からみた分解斜視図である。なお、本形態の基本的な構成は、第1実施形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0042】
図7図8図9図10において、本形態の型枠10も、第1実施形態と同様、圧縮強度試験等に用いる円柱状のコンクリートやモルタルの供試体を製造するための供試体成形用型枠である。本形態の型枠10は、上方に向けて開口する有底円柱状の成形空間50を構成するように第1方向Xで重ねられた複数の型部材を備えた型枠本体5と、型枠本体5を第1方向Xの両側から締め付けて複数の型部材が重なった状態を維持する締め付け部材4とを有しているおり、型枠本体5は略直方体である。
【0043】
本形態において、型枠本体5は、3つ以上の型部材を備えており、第1方向Xの両側が型部材で挟まれた型部材には、第1方向Xの両側の側面にキャビティが設けられている。このため、成形空間50が複数列に構成される。例えば、型枠本体5は、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3からなる3つの型部材を備えており、第1型部材1と第2型部材2との間、および第2型部材2と第3型部材3との間の各々に有底円柱状の複数の成形空間50が構成される。より具体的には、第1型部材1と第2型部材2とにおいて第1方向Xで互いに重なる2つの側面11、21の各々には、成形空間50を2分割した半円柱状の凹部からなるキャビティ15、25aが第2方向Yに複数、配列されている。また、第2型部材2と第3型部材3とにおいて第1方向Xで互いに重なる2つの側面22、31の各々には、成形空間50を2分割した半円柱状の凹部からなるキャビティ25b、35が第2方向Yに複数、配列されている。従って、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3を第1方向Xで重ねた際、型枠本体5には、成形空間50が2列に構成される。本形態において、型枠本体5には、1列あたり、3つの成形空間50が設けられており、6つの供試体を同時に製造可能である。従って、1回に3つの供試体を用いる試験を時間をずらして2回行う場合でも、試験に必要な6つの供試体を同時に製造可能である。
【0044】
本形態でも、第1実施形態と同様、キャビティ15は、成形空間50の底面の一部を構成する半円形の底部151と、底部151の円弧状の外縁から上方に延在する円弧状の内壁152とを有している。キャビティ25aは、成形空間50の底面の一部を構成する半円形の底部251aと、底部251aの円弧状の外縁から上方に延在する円弧状の内壁252aとを有している。キャビティ25bは、成形空間50の底面の一部を構成する半円形の底部251bと、底部251bの円弧状の外縁から上方に延在する円弧状の内壁252bとを有している。キャビティ35は、成形空間50の底面の一部を構成する半円形の底部351と、底部351の円弧状の外縁から上方に延在する円弧状の内壁352とを有している。従って、側面11、21同士が第1方向Xで重なるように第1型部材1と第2型部材2とを第1方向Xで重ねると、キャビティ15、25aによって成形空間50が構成される。また、側面22、31同士が第1方向Xで重なるように第2型部材2と第3型部材3とを第1方向Xで重ねると、キャビティ25b、35によって成形空間50が構成される。
【0045】
また、第1型部材1の上面13には、キャビティ15の上端縁に沿って延在する円弧状の凸部156が設けられている。第2型部材2の上面23には、キャビティ25aの上端縁に沿って延在する円弧状の凸部256aが設けられ、キャビティ25bの上端縁に沿って延在する円弧状の凸部256bが設けられている。第3型部材3の上面33には、キャビティ35の上端縁に沿って延在する円弧状の凸部356が設けられている。従って、第
1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3を第1方向Xで重ねると、成形空間50の開口縁に沿って円環状の凸部56が構成される。
【0046】
第1型部材1および第2型部材2において、第1方向Xで互いに重なる2つの側面11、21のうち、一方の側面には、他方の側面に向けて突出した突条部が設けられ、他方の側面には、突条部が嵌る溝が設けられている。また、第2型部材2および第3型部材3において、第1方向Xで互いに重なる2つの側面22、31のうち、一方の側面には、他方の側面に向けて突出した突条部が設けられ、他方の側面には、突条部が嵌る溝が設けられている。
【0047】
本形態では、側面21には、側面11に向けて突出した突条部26が設けられ、側面11には、突条部26が嵌る溝17が設けられている。また、側面31には、側面22に向けて突出した突条部36が設けられ、側面22には、突条部26が嵌る溝27が設けられている。
【0048】
第1型部材1の上面13には、指先を差し込むことができる大きさの穴131が形成され、第3型部材3の上面33には、指先を差し込むことができる大きさの有底の穴331が形成されている。なお、第1型部材1および第3型部材3の底面にも有底の穴131、331が形成されている。
【0049】
本形態において、型枠本体5の側面51は、第1型部材1の側面12に相当することから、側面12には、3つの成形空間50に第1方向Xで重なる3か所に凸部121が形成されている。また、型枠本体5の側面52は、第3型部材3の側面32に相当することから、側面32には、3つの成形空間50に第1方向Xで重なる3か所に凸部321が形成されている。凸部121、321はいずれも、上下方向において中間より下方位置に設けられている。
【0050】
このように構成した型枠本体5において、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3は、いずれもエラストマー製である。本形態において、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3は、第1実施形態と同様、熱硬化性のポリウレタン系エラストマーである。
【0051】
締め付け部材4は、型枠本体5を第1方向Xの両側から締め付けて第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3が重なった状態を維持するとともに、一部が型枠本体5から互いに反対方向に突出した一対の取っ手45を構成する。本形態において、型枠本体5の側面51は、第1型部材1の側面12に相当することから、側面12には、第1部材41および第2部材42の板部46が各々、配置される凹部122が形成されている。また、型枠本体5の側面52は、第3型部材3の側面32に相当することから、側面32には、第1部材41および第2部材42の板部47が各々、配置される凹部322が形成されている。
【0052】
このように構成した型枠10を用いて供試体を製造する際にも、成形空間50の底部には底板7が配置され、成形空間50にモルタルCを流し込む途中や流し込んだ後、凸部121、321をプラスチックハンマー等で叩いて、モルタルCに振動を伝達する。また、成形空間50にモルタルCを流し込んだ後、養生を行う際には、成形空間50の上端開口を蓋6で塞ぐ。
【0053】
また、養生を行った後、締め付け部材4を外せば、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3を離し、供試体Tを得ることができる。その際、第1型部材1の上面13、および第3型部材3の上面33には、穴131、331が形成されているため、穴13
1、331に指先等を差し込んで、第1型部材1と第3型部材3とを引き離すことができる。また、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3は、エラストマー製であるため、ある程度の変形が可能である。また、第1型部材1、第2型部材2、および第3型部材3は、エラストマー製であり、離型性に優れている。従って、キャビティ15、25から供試体Tを容易に外すことができる等、第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0054】
[エラストマー材料の評価結果]
図12は、本発明を適用した供試体成形用型枠の材質と評価結果との関係を示す説明図である。図12において、カーボンブラックとしてはSRF級を用い、加硫剤はC-8を用いた。促進剤DMは、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドであり、MOCAは、3,3′-ジクロロ-4,4′ジアミノジフェニルメタンである。
【0055】
今回の評価では、ニトリルブタジエンゴム、シリコンゴム、ウレタン樹脂PTMEG(Poly TetraMethylene Ether Glycol:ポリテトラメチレンエーテルグリコール)系、およびウレタン樹脂エステル系を原料としたエラストマーによって実施形態1、2に係る供試体成形用型枠10の型枠本体5を製作し、脱型性および耐久性を相対評価した。硬度については、タイプAデュロメータ硬さでA70からA97の試料を用いた。その結果を図12に示す。なお、図12には、評価が最も高いものに「A」を付し、次に評価が高いものに「B」を付した。従って、評価の工程は以下の通りである。
A>B>C>D
【0056】
図12に示すように、今回評価したエラストマーでは、ウレタン樹脂系(ウレタン樹脂PTMEG系、およびウレタン樹脂エステル系)であって、タイプAデュロメータ硬さでA80からA97である場合に、脱型性および耐久性のいずれにおいても高い評価結果が得られた。
【符号の説明】
【0057】
1…第1型部材、2…第2型部材、3…第3型部材、4…締め付け部材、5…型枠本体、6…蓋、7…底板、10…型枠、11、12、21、22、31、32、51、52…側面、13、23、33…上面、15、25、25a、25b、35…キャビティ、17、27…溝、26、36…突条部、41…第1部材、42…第2部材、45…取っ手、46、47…板部、48…連結部、50…成形空間、61…突起、121、156、221、256、256a、256b、321、356…凸部、122、222、322…凹部、131、231、331…穴、X…第1方向、Y…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12