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特許7470323形状測定装置および金属板の曲げ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】形状測定装置および金属板の曲げ加工方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20240411BHJP
   B21D 11/20 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
G01B5/20 M
B21D11/20 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020061670
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162370
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520112553
【氏名又は名称】鈴木造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸志郎
(72)【発明者】
【氏名】藤村 泰規
(72)【発明者】
【氏名】池浦 良淳
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-96406(JP,U)
【文献】特開平8-290218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
B21D 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を載置する定盤と、金属板の形状を測定する複数の測定手段を備える測定装置であって、
前記測定装置は、加熱および冷却により前記金属板を曲げる工程に用いられ、
前記測定手段は、前記金属板の下面と前記定盤の上面の間の垂直方向の距離を測定するための測定部を有しており、
前記測定部は、前記金属板を曲げる工程において、前記金属板の曲げに追従して昇降する昇降部を有し、
前記昇降部の上端に存する測定子は、前記金属板の下面に対して所定の圧力を印加しながら接触しており、
前記定盤は、前記測定部が突出できるよう空隙部を有しており、
前記測定装置は、前記金属板を曲げる工程中の前記金属板の曲げに追従して前記測定子を前記金属板の下面に接触させていくことで、前記金属板の下面と前記定盤の上面の間の垂直方向の距離を即時に測定することを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記金属板を載置する定盤と結合された、地面または床の上に設置するための下架台または、地面または床面に対して傾斜した傾斜架台に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記昇降部を前記金属板の曲げに追従して昇降させるために張力を発生する張力発生部、前記張力発生部からの張力を伝達する張力伝達部、張力伝達部から伝達された張力を前記金属板の下面に対して上方へ印加される圧力へと変換する圧力変換部、前記垂直方向の距離を変位として伝達する変位伝達部、および伝達された前記変位を値として計測する計測部を備え、
前記圧力は、前記張力発生部から前記張力伝達部を介して伝達された張力が前記圧力変換部で変換されることにより発生し、
前記計測部は、前記変位の値を表示する表示部を備えるとともに、前記形状測定装置の側方に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記金属板の曲げに追従して即時に測定された、前記金属板の下面と前記定盤の上面の間の垂直方向の距離、および該距離とサーバに蓄えられた設計値との差、を表示することを特徴とする請求項3記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記測定手段が4つ以上備えられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記形状測定装置は、前記金属板を曲げる工程において該形状測定装置を複数台隣接させて用いられることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の形状測定装置を利用した金属板の曲げ加工方法であって、
作業者が加熱および冷却により前記金属板を曲げる工程を有し、
前記金属板を曲げる工程は、前記測定手段により前記金属板の曲げに追従して即時に測定された、前記金属板の下面と前記定盤の上面の間の垂直方向の距離に基づき、前記作業者が前記金属板の曲げを行う工程であることを特徴とする金属板の曲げ加工方法。
【請求項8】
前記金属板を曲げる工程は、前記測定手段により前記金属板の曲げに追従して即時に測定された、前記金属板の下面と前記定盤の上面の間の垂直方向の距離と、サーバに蓄えられた設計値との差に基づき、前記作業者が前記金属板の曲げを行う工程であることを特徴とする請求項7記載の金属板の曲げ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造船などにおける撓鉄加工などの金属板の曲げ加工に使用される形状測定装置および金属板の曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、橋梁などの建造には、種々の材質、種々の形状の部材が用いられ、特に、耐久性や強度の要求される箇所には、金属製の柱や板などが多用される。金属板の形状は、平板形状のほか、屈曲形状、曲面形状などさまざまな形状がある。平板形状や屈曲形状の金属板はプレス機などの機械を用いることで比較的容易に製造できるが、高い精度の曲面形状が要求される金属板では、人間が曲げ加工により製造することが多い。
【0003】
金属製の船体の建造では、平板形状の金属板を設計図面上の船体の各部の形状に合うように曲げ加工された曲面外板が使用される。曲面外板が繋ぎ合わされて完成する船体の曲面形状の精度は、船舶の航行速度や、燃費にも影響するため、曲面外板の曲面の精度は重要である。
【0004】
曲面形状の金属板を製造するために、古くから線状加熱による曲げ加工が行われている。本加工法は「撓鉄」、「撓鉄加工」と呼ばれ、わが国で広く行われている。撓鉄加工では、金属板に対して、ガスバーナーなどの線状加熱装置による加熱と、放水器から放水される冷却水による冷却を行う。本作業は、金属板の加熱・冷却と、木型と対比して行う目視での曲面形状の確認を、所望の曲面形状になるまで繰り返す作業である。金属板は線状加熱装置と放水器により局所的に加熱・冷却され、当該部分は膨張・収縮する。加熱と冷却それぞれの強度や放水量とともに、位置、範囲、時間などを調整することで、直接的に加熱・冷却が行われた側とその裏面側で膨張・収縮の量に差異が生じる。その表面と裏面側での膨張・収縮量の差異を利用することで、金属板は塑性変形し、複雑な曲面形状を形成することができる。
【0005】
撓鉄加工は、加熱・冷却されることによる金属板の挙動が、撓鉄加工時の温度や湿度などの周辺環境の影響を受けるため、マニュアル化が容易ではなく、作業者の経験や勘に依存する部分がある。また、曲面形状の確認を、目視で木型と対比しながら作業を進めるため、過去の製造時の工程に関する情報の蓄積が、客観的な形でなされにくい。特に、曲げ程度(曲面形状)の視認による把握は容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-166802号公報
【文献】特開平6-226360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、撓鉄加工は長年の経験を有する作業者である熟練工の技能により行われてきた。しかし、熟練工の数は減りつつあり、少子高齢化の影響などによる後継者不足と、技能伝承が課題となっている。そのため、撓鉄技能を伝承できるように、撓鉄技能の体系化や、マニュアル化などの取り組みが行われており、これまで暗黙知であった技能の、言語化、数値化が試みられている。
【0008】
これまでは、熟練工による金属板曲面の形状判断や、線状加熱と冷却での曲面形状形成の過程の技能は、作業員個人の経験として、俗人的な暗黙知の形で蓄積されてきた。その各工程について数値化することができれば、技能伝承の問題の解決に寄与する。さらに、データの蓄積と解析により、撓鉄加工の全自動化も可能となれば、後継者不足の解決だけでなく、生産効率の向上にも繋がる。
【0009】
数値化する対象の一つとして、金属板の曲げ工程における曲面形状の数値化が挙げられる。金属板の形状を測定する方法としては、電磁力を利用した方法や(特許文献1参照)、カメラによる画像解析方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
特許文献1に記載の電磁力を利用した方法は、励磁電流の測定により表面形状を求める方法である。本方法は、加熱や冷却により金属板の温度が変動する場合には、抵抗値も変動し、安定した値が得られないため、撓鉄加工中の金属板の形状測定には不適である。
【0011】
また、特許文献2に記載のカメラを用いた画像解析方法では、事前に金属板上へのマーキングが必要であるため、撓鉄加工前の金属板にマーキングを付する工程が増え、プロセス負担となりうる。さらに、線状加熱と放水による冷却を繰り返す過程でマーキングが消えたり、薄くなったりすることで、画像解析が困難となったり、測定精度が低くなる場合がある。また、本手法は、一連の撓鉄加工の工程が完了する毎に形状測定するため、撓鉄加工中の即時(リアルタイム)での形状測定ができず、時間を要する可能性がある。
【0012】
加えて、撓鉄加工が行われる環境は、線状加熱装置による熱や、放水器による水の影響があり、また半屋外での作業の場合は、雨や、風、砂などの侵入も考えられる。そのため、カメラや、レーザセンサなどの高価な精密機器を用いた形状測定装置は、装置故障のおそれがあるため、使用環境が制限される可能性がある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、撓鉄加工などにおける曲げ加工中の金属板について、その曲面形状の把握を即時かつ簡易に、精度よく行うことができ、使用環境も制限されにくい形状測定装置、および、これを利用した金属板の曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の形状測定装置は、金属板を支持する定盤と、金属板の形状を測定する複数の測定手段を備える測定装置であって、上記測定装置は、加熱および冷却により上記金属板を曲げる工程に用いられ、上記測定手段は、上記金属板の下面と上記定盤の上面の間の垂直方向の距離を測定するための測定部を有しており、上記測定部は、上記金属板を曲げる工程において、上記金属板の形状変化に追従して昇降する昇降部を有し、上記昇降部の上端に存する測定子は、上記金属板の下面に対して所定の圧力を印加しながら接触していることを特徴とする。
【0015】
ここで、「金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離」のことを、以後「金属板の高さ」ともいう。また、複数の測定手段による金属板の形状の測定は、各測定手段が有する、所定の間隔で二次元的に配置された各測定部において得られる金属板の高さに基づいて行われる。
【0016】
上記測定部は、上記金属板を支持する定盤と結合された下架台または傾斜架台に取り付けられることを特徴とする。
【0017】
上記測定手段は、上記昇降部を上記金属板の形状変化に追従して昇降させるために張力を発生する張力発生部、上記張力発生部からの張力を伝達する張力伝達部、張力伝達部から伝達された張力を上記金属板の下面に対して上方へ印加される圧力へと変換する圧力変換部、上記垂直方向の距離を変位として伝達する変位伝達部、および伝達された上記変位を値として計測する計測部を備え、上記圧力は、上記張力発生部から上記張力伝達部を介して伝達された張力が上記圧力変換部で変換されることにより発生し、上記計測部は、上記変位の値を表示する表示部を備えるとともに、上記形状測定装置の側方に設けられていることを特徴とする。
【0018】
上記表示部は、上記金属板の曲げに追従して即時に測定された、上記金属板の下面と上記定盤の上面の間の垂直方向の距離、および該距離とサーバに蓄えられた設計値との差、を表示することを特徴とする。
【0019】
ここで、上記「金属板の曲げに追従して即時に測定された、金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離」のことを、以後「即時に測定された距離」ともいう。
【0020】
上記測定手段が4つ以上備えられていることを特徴とする。
【0021】
上記形状測定装置は、上記金属板を曲げる工程において該装置を複数台隣接させて用いられることを特徴とする。
【0022】
本発明の金属板の曲げ加工方法は、本発明の形状測定装置を利用した金属板の曲げ加工方法であって、作業者が加熱および冷却により上記金属板を曲げる工程を有し、上記金属板を曲げる工程は、上記測定手段により上記金属板の曲げに追従して即時に測定された、上記金属板の下面と上記定盤の上面の間の垂直方向の距離に基づき、上記作業者が上記金属板の曲げを行う工程であることを特徴とする。
【0023】
上記金属板を曲げる工程は、上記測定手段により上記金属板の曲げに追従して即時に測定された、上記金属板の下面と上記定盤の上面の間の垂直方向の距離と、サーバに蓄えられた上記設計値との差に基づき、上記作業者が上記金属板の曲げを行う工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の形状測定装置は、金属板を支持する定盤と、金属板の形状を測定する複数の測定手段を備える測定装置であって、測定装置は、加熱および冷却により金属板を曲げる工程に用いられ、測定手段は、金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離を測定するための測定部を有しており、測定部は、金属板を曲げる工程において、金属板の形状変化に追従して昇降する昇降部を有し、昇降部の上端に存する測定子は、金属板の下面に対して所定の圧力を印加しながら接触しているので、金属板を曲げる加工中の金属板の曲面形状を、金属板の温度によらず、金属板の曲げに追従して即時かつ簡易に、精度よく可視化や数値化することができる。これにより、熟練工の経験と勘に頼っていた撓鉄加工などの金属板の曲げ加工が、通常の作業者が把握可能な情報として明らかになるので、技能伝承や後継者不足の解決だけでなく、生産効率の向上に寄与する。また、機械的な構造であるため、本装置の設置場所は使用環境の制限を受けにくく、造船時の撓鉄加工などでの使用環境や、屋内・屋外、その他広く汎用的に利用することができる。
【0025】
測定手段は、昇降部を金属板の形状変化に追従して昇降させるために張力を発生する張力発生部、張力発生部からの張力を伝達する張力伝達部、張力伝達部から伝達された張力を金属板の下面に対して上方へ印加される圧力へと変換する圧力変換部、垂直方向の距離を変位として伝達する変位伝達部、および伝達された変位を値として計測する計測部を備え、圧力は、張力発生部から張力伝達部を介して伝達された張力が圧力変換部で変換されることにより発生し、計測部は、変位の値を表示する表示部を備えるとともに、形状測定装置の側方に設けられ、表示部は、金属板の曲げに追従して即時に測定された、金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離、および該距離とサーバに蓄えられた設計値との差、を表示するので、定盤上で金属板の曲げ加工を行う作業者が、定盤上の金属板の各測定部における高さおよび設計値との差を視認できる。それにより、金属板の曲面形状のリアルタイムでの把握が容易であるため、作業者の作業性に優れる。
【0026】
測定手段が4つ以上備えられているので、金属板の曲面形状を、より高い精度で測定することができる。
【0027】
形状測定装置は、金属板を曲げる工程において該装置を複数台隣接させて用いられるので、大型の金属板を曲げ加工する際の作業効率が向上する。
【0028】
本発明の金属板の曲げ加工方法は、加熱および冷却により金属板を曲げる工程において、上記形状測定装置の測定手段により、金属板の曲げに追従して即時に測定された、金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離、および該距離とサーバに蓄えられた設計値との差に基づき、作業者が金属板の曲げを行うので、熟練工の経験と勘に頼っていた金属板の曲げ加工を通常の作業者でも高い精度ですることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】測定対象である金属板の一例を示す図である。
図2】本発明の形状測定装置を斜め上方から見た斜視図である。
図3】下架台、および測定手段の斜視図である。
図4】下架台、および昇降部が上昇した測定手段の斜視図である。
図5】昇降部が上昇した測定手段の拡大図である。
図6】計測部の内部構造の側面図である。
図7】昇降部が下降した測定手段の拡大図である。
図8】金属板の形状測定時の形状測定装置の斜視図である。
図9】大型の金属板を撓鉄加工する場合の形状測定装置を示す図である。
図10】傾斜した定盤を備える形状測定装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の形状測定装置による測定対象である金属板の一例を、図1に基づいて説明する。図1は、測定対象である金属板の一例を示す図である。図1に示すように、金属板1は全体的に曲がっているが、曲率は一定ではなく、場所ごとに異なる曲率を有している。金属板の材質は、特に限定されず、強度の観点からは鋼板が好ましい。曲げ加工が行われる前の金属板の形状は、平板形状であり、平面視した場合の形状は多角形、円形、または直線と曲線から構成される形状であってもよい。金属板は、撓鉄加工などに先立ちプレス機などにより粗曲げしてもよい。平板状態での金属板の大きさは特に限定されず、例えば四角形の場合、一辺の長さが0.5m~20mであり、好ましくは1m~5mである。また、金属板の厚みは特に限定されず、例えば5mm~100mmであり、好ましくは10mm~40mmである。
【0031】
次に、図2を用いて本発明の形状測定装置について説明する。この形状測定装置は、金属板を支持する定盤と、金属板の形状を測定する複数の測定手段を備える。図2は、本発明の一実施例に係る形状測定装置を斜め上方から見た斜視図である。図2に示すように、形状測定装置2は、地面または床の上に設置するための下架台3と、測定対象である金属板を載置する定盤4と、定盤4を支持する上架台5と、下架台3と上架台5の間に存する脚部6と、金属板の形状を測定するための測定手段7と、から構成される。
【0032】
下架台3は、定盤4の上面の傾きを調整できるように、高さを調整するための高さ調整機構8を有している。下架台3の下には、定盤4を大きく傾斜させるために、所定の角度で傾斜した架台である傾斜架台をさらに設けてもよいし、もしくは下架台の替わりに傾斜架台を設けてもよい。それにより、後述する複数の形状測定装置を隣接させて大型の金属板の形状測定ができる構成とした場合に、曲げ加工された金属板の曲率が大きくてもその形状を測定することができる。また、定盤4は、上架台5の上部に位置し、上架台5自体の上部フレームまたは上架台5に載置された別部材で構成され、測定部が突出できるよう空隙部を有している。
【0033】
次に、図3を用いて測定手段7を構成する各部位のうち測定部9および計測部10について説明する。図3は、図2における形状測定装置から定盤、上架台、および脚部を取り外し、下架台3と測定手段7のみとした状態を斜め上方から見た斜視図である。
【0034】
測定部9は、下架台3の上に12本備えられている。測定部9の数と配置は、金属板の曲面形状を把握することができる数と配置であれば特に限定されない。例えば、上方から平面視して長方形の形状測定装置の場合、短辺方向の本数は2~10本の範囲であり、好ましくは3本~6本の範囲である。また、その場合長辺方向の本数は3~15本の範囲であり、好ましくは4本~8本の範囲である。なお、各測定部は、所定の間隔で二次元的に配置されていることが好ましい。
【0035】
測定部9は、定盤上の金属板が曲げ加工により形状変化する際に追従して昇降する部位である昇降部9aを有している。また、計測部10は、測定部9で得られ、機械的方法により伝達された金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離を表示する部位である。計測部10は、測定部9と一対一で対応するため、測定部9と同数の12個設けられている。
【0036】
計測部10は、形状測定装置の側方に備えられ、定盤上での撓鉄加工時に上方から変位の値を確認できる。計測部の設けられる位置は、定盤上から視認可能であれば、自由な位置に設置することができる。撓鉄加工時の視認性および作効率の観点から、計測部は特に形状測定装置の側方に設けられることが好ましく、形状測定装置の側方かつ同一の側に設けられることがさらに好ましい。これにより、作業時の金属板の形状を正確かつ即時に把握できるため、作業効率に優れる。
【0037】
測定手段7はその他にも、後述する張力発生部、張力伝達部、圧力変換部、変位伝達部などを有している。これらが機械的に連関して機能することで、測定手段7で得られた変位の情報を計測部で視認できる。
【0038】
次に、図4図6を用いて測定手段7を構成する各部の関係を説明する。図4は、下架台3の上に設けられた一つの測定手段7について、昇降部9aが上昇した状態での測定手段を斜め上方から見た斜視図である。図4に示すように、該測定手段7は、上述した測定部9と計測部10のほかに、昇降部9aを金属板の形状変化に追従して昇降させるために張力を発生する張力発生部11、張力発生部11からの張力を伝達する張力伝達部12、張力伝達部12から伝達された張力を金属板の下面に対して上方へ印加される圧力へと変換する圧力変換部13、および、上記垂直方向の距離を変位として伝達する変位伝達部14を備える。昇降部9aの上端に存する測定子15は、圧力変換部13からの力を受けて、金属板の下面に対して所定の圧力を印加しながら接触する。金属板の下面から測定を行うため、作業者は作業上の制限を受けることなく、金属板の上面に対して撓鉄加工を行うことができる。
【0039】
図5は、図4における測定手段7が備える各部についての拡大図である。
測定部9は、金属板の形状変化に追従して昇降する昇降部9aと、下架台3の上に固定され、昇降部9aの基礎部分である基部9bとから構成される。昇降部9aは、基部9bがその長軸方向に有するレールに沿って昇降する。
【0040】
張力発生部11は、引き伸ばされた状態で張力伝達部12と変位伝達部14に連結された引張りばねである。そのため、張力発生部11は、収縮力である所定の張力を張力伝達部12に及ぼしている。また、張力伝達部12は、所定の長さのワイヤであり、昇降部9aの下端と張力発生部11に連結している。
【0041】
圧力変換部13は、測定部9の基部9bの上部に設けられた滑車13aと、基部9bの下部に設けられた滑車13bから構成される。張力発生部11の測定部側の端部に連結する張力伝達部12は、まず基部9bの下部に存する滑車13bを介し、次にその上部の滑車13aを介して、昇降部9aの下端に連結している。ここで、滑車13aを介さずに張力伝達部12と昇降部9aの下端が連結している場合、張力発生部11による収縮による引力は、昇降部9aを引き下げる力として作用するため、9aの昇降機能は発現されない。よって、滑車13aを介して昇降部9aの下端に張力伝達部12を連結させることで、張力発生部11の張力を金属板の下面に対する上方向の圧力へと変換できる。
【0042】
変位伝達部14は、張力伝達部12と同様に所定の長さのワイヤである。変位伝達部14の一方の端部は計測部10に、他方の端部は張力発生部11と張力伝達部12の接続する部分に繋がっている。これにより、昇降部9aが昇降した場合の変位は、張力伝達部12および変位伝達部14を介して、計測部10に伝達される。
【0043】
図6は、計測部10の内部構造の側面図である。図6に示すように、計測部10では、変位伝達部14は動滑車16に係合し、動滑車16で折り返してその端部は計測部10の筐体内側に固定されている。計測部10の筐体外側の上面には目盛り17が付されており、動滑車16には目盛り17を指す目印18が設けられている。ここで、目盛り17および目印18を合わせて表示部という。また、動滑車16は引張りばね19により所定の張力で牽引されている。張力発生部11と引張りばね19それぞれの力の及ぼし合いにより、動滑車16は、昇降部9aの昇降に連動して動くことができる。
【0044】
各計測部の表示部は、各測定部9における昇降部9aの昇降距離、すなわち各測定部における即時に測定された距離を示す。ここで、金属板の曲げに追従して即時に測定された金属板の高さを、「即時に測定された距離」という。目盛り17を指して即時に測定された距離を表示する目印18は、上述の通り、動滑車16に付されている。よって、動滑車16(目印18)の移動距離は、昇降部9aの昇降距離の1/2となることから、目盛り17に即時に測定された距離として表記する値は、現実の長さの2倍の値である。表示部は、液晶表示画面などのデジタル式の表示部であってもよい。その場合、上述した動滑車などの機械的な動作から検出した値を、即時に測定された距離として表示することができる。また、表示部には、その他にも、サーバに蓄えられた設計値、測定部9における即時に測定された距離と上記設計値との差、金属板の材料データなどを表示してもよい。
【0045】
測定手段を構成する各部分の大きさや、長さ、位置関係について、再度図5に基づいて説明する。測定手段7を構成する各部分の大きさ、長さ、および配置は、昇降部9aが曲げ加工後の金属板の高さよりも大きく昇降できれば、自由に選択できる。ここで、昇降部9aの昇降可能な距離は、本装置において測定可能な金属板の高さを意味する。
【0046】
本発明の形状測定装置は、張力発生部11の伸縮による張力の発生と、張力伝達部12および変位伝達部14からなる2つのワイヤの、測定部9と計測部10の間での移動を利用している。昇降部9aの昇降可能な距離は、形状測定装置の高さの影響を受ける。そのため、種々の形状の金属板の高さを測定できるよう、昇降部9aの昇降可能な距離は、形状測定装置の脚部の長さに対して、0.3~1.5倍の範囲であることが好ましい。そのためには、張力伝達部12の長さは、滑車13aと滑車13bの間の長さ(以後、「圧力変換部の滑車間の長さL」という)の少なくとも2倍以上であることが好ましい。張力伝達部12の長さが、圧力変換部の滑車間の長さLの2倍よりも小さい場合、昇降部9aの昇降可能な距離は、圧力変換部の滑車間の長さLよりも小さくなり、測定可能な金属板の高さが制限されるおそれがある。
【0047】
測定部9と計測部10は、所定の距離で離間されることが好ましい。測定部9と計測部10の間の距離(以後、「測定部と計測部の距離D」という)が小さく、それぞれが近接している場合、張力発生部11や、張力伝達部12、変位伝達部14を適切に配置する必要がある。棒状、線状の形態であり、一定の長さを有するそれらを配置することは、装置構造の複雑性が増し、装置の修理や改造に、多くの手間がかかるおそれがある。また、装置構造を単純にするために張力発生部11や、張力伝達部12、変位伝達部14の長さを短くすると、昇降部9aの昇降可能な距離が小さくなり、測定可能な金属板の高さが小さくなるおそれがある。上記理由から、測定部9と計測部10の距離Dを所定の間隔で離間することは、測定可能な金属板の高さを高くすることに繋がるため、曲がりの大きい金属板も測定対象となり、本装置の汎用性向上に寄与する。さらに、測定部9と計測部10を離間することで、撓鉄加工時の熱の影響、水濡れなどから計測部10を保護することができる。
ここで、測定部と計測部の距離Dは、装置を上方から見た場合の各部の間の最短距離を意味する。
【0048】
測定部9と計測部10の距離D、および変位伝達部14の長さはともに、少なくとも、張力発生部11の長さと、圧力変換部の滑車間の長さLの和の長さよりも長いことが好ましい。それよりも短い場合、昇降部9aの昇降可能な距離が長さLよりも小さくなり、測定可能な金属板の高さが制限されるおそれがあるためである。
ここで、張力発生部11の長さとは、昇降部9aが最も上昇した状態における張力発生部11の長さを意味する。すなわち、測定手段7の一部として形状測定装置に設置された場合に最も短くなっている状態の張力発生部の長さである。
【0049】
次に、図2図5、および図7を用いて、測定手段7により撓鉄加工の際の金属板の形状を測定する機構を説明する。図7は、昇降部9aが下降した際の測定手段各部を斜め上方から見た斜視図であり、撓鉄加工を行う前の状態である。撓鉄加工前の平板形状の金属板を定盤上に載置する前に、測定子15の頂点が定盤の上面の高さと同じになるよう昇降部9aを下降させる。その際は、張力発生部11の測定部9の側の端部を測定部9の近傍まで牽引し、測定部9の基部9bが備えるフック20で該端部を係止することにより、昇降部9aの下降状態を維持する。
【0050】
上記の場合、張力発生部11は最も伸長した状態であり、張力伝達部12は、その半分以上が滑車13aおよび滑車13bを介して測定部9に沿って存している。金属板を定盤上に載置すると、昇降部9aは、測定子15を通じて金属板から荷重を受ける。それにより、フック20を外しても下降状態は維持されるため、続く撓鉄加工時に昇降部9aが自由に昇降できるよう、フック20を上記張力発生部11の端部から外す。この際、金属板の下面には、接触する測定子15から上方向へ所定の圧力が印加されている。
【0051】
計測部10においては、変位伝達部14は測定部9の側に引き出された状態であり、動滑車16も測定部9の側に存する。この際、動滑車16が備える目印が指す目盛りの値は0である。
【0052】
撓鉄加工を行う前には、金属板を固定するための固定部21(図2参照)で金属板を定盤との間に挟み、固定レバー22(図2参照)により金属板を締結して固定する。撓鉄加工時も金属板の基準となる場所は高さが変化しないようにすることで、測定により得られる値の変化が分かりやすくなり、作業性が向上する。固定部は、板状の部材で、一枚であってもよいし、複数枚であってもよい。また、金属板を固定する位置は、金属板の外縁の一か所でもよいし、複数個所でもよい。
【0053】
図5は、昇降部9aが上昇した際の測定手段各部を斜め上方から見た斜視図であり、撓鉄加工中もしくは加工後の状態である。金属板の上面側が撓鉄加工されて加工面側が凹型になるように金属板が曲がると、金属板の下面から測定子15に与えられていた下方向の力が弱まる。その場合、図5に示すように、張力発生部11が収縮することで張力伝達部12が圧力変換部13から引き出される。昇降部9aの下端には滑車13aの方向である上方への張力が働き、昇降部9aが上昇する。昇降部9aが上昇した変位と同じ長さだけ張力伝達部12は張力発生部11の側へ引き寄せられ、それとに連動して変位伝達部14も計測部10の内部へ同じ長さだけ移動する。そして、図6に示すように、計測部10において、動滑車16は、昇降部9aの昇降距離の1/2の長さだけ引張りばね19の側に移動する。動滑車16が備える目印18が指す目盛り17の値が、昇降部9aの実際の昇降距離と一致するように、目盛り17には現実の長さの2倍の値を表示してもよい。
【0054】
図8は、撓鉄加工により曲がった金属板1が載置された形状測定装置2の斜視図である。図8においては、固定部21により端部の一箇所を固定された金属板1は、固定部21から最も離れた場所が最も高く位置している。当該箇所直下の測定部が備える昇降部9aは、金属板1の動きに追従して移動し、常に金属板1の下面に接する。形状測定装置2の側方に設けられている複数の計測部10は、各測定部における金属板の高さを表示する。それにより、定盤4の上で撓鉄加工を行う作業者は撓鉄加工を行いながら即時に、金属板1の加工状態を数値として把握することができる。それにより、金属板のみを目視することによる主観的認識のみに頼ることなく、正確な形状把握を行うことができる。
【0055】
形状測定装置の形状および大きさは特に限定されない。例えば、定盤の上面に対して平面視して四角形の場合、一辺の長さが1m~25mであり、好ましくは1m~5mである。また、装置の高さも特に限定されず、例えば、定盤の上面が床面に対して平行な場合、その高さは50~300cmであり、好ましくは100~200cmである。50cmよりも小さい場合、曲率の大きい金属板を製造する際に、測定可能な高さの制限を受けるおそれがある。また、高さが300cmよりも大きい場合、形状測定装置の床からの高さが大きくなるため、作業者の自由な移動が制限されるおそれがあり、作業性が低下するおそれがある。
【0056】
張力発生部は、引き伸ばすことにより収縮力を発生する、所定のばね定数を有する引張りばねである。ばね本体の材質としては、例えば、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス鋼線などが使用できる。特にステンレス鋼線は防錆性や耐熱性に優れるため好ましく、SUS304-WPBや、SUS304が好適に用いられる。張力発生部は、表面処理が施されていてもよく、また、ばねの両端部に存するフック部分は別部材で構成されていてもよい。
【0057】
張力伝達部および変位伝達部は、一定以上の強度を有するワイヤである。ワイヤの材質としては、例えば、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス鋼線のほか、天然繊維や、合成繊維も使用できる。上記張力伝達部および変位伝達部は、ワイヤ表面がビニールなどで被覆されていてもよい。
【0058】
圧力変換部は、2個の滑車から構成される。その材質としては、例えば、スチール、アルミ、ステンレス、ポリアセタール、導電性MCナイロンなどを使用できる。また表面処理としては、例えば、四三酸化鉄皮膜、無電解ニッケルメッキ、白アルマイトなどを施すことができる。
【0059】
測定子は、いわゆる握り玉と呼ばれる球形状の部材である。その材質としては、例えば、ステンレス、アルミニウム合金、フェノール樹脂、メラミン樹脂などを使用できる。また表面処理としては、例えば、バフ研磨、白アルマイト、黒アルマイトなどを施すことができる。測定子の形状、および材質は上記に限られず、撓鉄加工時の加工部位近辺の高温により測定子自体が変形したり、測定部へ熱を伝導して故障することが無ければ、自由に選択することができる。
【0060】
形状測定装置は一台を単独で使用してもよいし、複数台を隣接して使用してもよい。大型の金属板の撓鉄加工を行う場合には、複数台を隣接して使用することが好ましい。
【0061】
図9に、大型の金属板を撓鉄加工する場合の形状測定装置の配置の一例を示す。図9は、8台の形状測定装置2を縦に2台、横に4台隣接した場合の斜め上方からの斜視図である。隣接する複数の形状測定装置2の数と各配列は、金属板の形状や大きさに応じて自由に配列することができ、一列に配置してもよいし、縦横に2次元的に配列してもよい、もしくは円形や不定形に配列してもよい。形状測定装置の間の隣接距離は特に制限されない。装置間の隣接距離は0~100cmの範囲内であることが好ましい。隣接する形状測定装置との距離が100cmよりも離れている場合、それぞれの測定間の間隔が離れ過ぎることで、測定の精度が低下するおそれがある。
【0062】
複数台の形状測定装置2を隣接させて使用する場合、計測部10は、少なくとも各装置の側方に位置するように配置することで、定盤上から視認することができる。計測部10は、作業者が視認できる範囲であれば、いずれの位置に設けてもよい。作業者の作業性を高める観点からは、複数の形状測定装置からなる一体の装置としたみた場合に、計測部10はその一体の装置の側方に設けることが好ましく、かつ、そのすべてを同側に設けることがより好ましい。
【0063】
一台の形状測定装置の上で、その定盤の面積よりも大きい金属板の撓鉄加工を行おうとすると、場合によっては、金属板の固定場所を変えたり、位置をずらしたりする必要がある。それに対して、上記のように複数の形状測定装置を隣接することで、一度形状測定装置上に固定すれば、最初の固定位置のまま金属板の位置を変えることなく撓鉄加工ができるため、作業効率を大幅に向上することができる。
【0064】
形状測定装置2は、下架台に替えて、床面に対して傾斜した架台を有する傾斜架台としてもよい。図10には、一例として、傾斜架台23を備えた形状測定装置2が隣接して配置された構成の側面図を示す。傾斜架台23を用いることで、定盤4が床面に対して所定の角度で傾斜している。2台の形状測定装置が隣接しあう側面である隣接面側の定盤の高さは、反対の非隣接面側の定盤の高さよりも低い。それにより、側面から見た装置全体の形状がV字型となるため、金属板の曲がりが大きい場合でも、測定部における昇降部が金属板の曲がりに追従しやすいため、種々の曲面形状へ撓鉄加工できる。また、傾斜架台23を有する2台の形状測定装置2は、それぞれの計測部10が一体の装置の外側を向き、かつ、傾斜の上部側(隣接面の反対側)に位置するように配置されている。これにより、計測部10の視認性が向上し、作業者の作業性がさらに高まる。
【0065】
本発明の金属板の曲げ加工方法は、本発明の形状測定装置を利用した金属板の曲げ加工方法である。この方法では、作業者が加熱および冷却により金属板を曲げる撓鉄加工工程を有する。この撓鉄加工工程は、例えば、金属板に対してガスバーナーなどの線状加熱装置による加熱と、放水器から放水される冷却水による冷却を行い、金属板の局所的な膨張・収縮を利用し、金属板を塑性変形させて曲げる工程である。この撓鉄加工工程において、上述の形状測定装置の測定手段により金属板の曲げに追従して即時に測定された、金属板の下面と定盤の上面の間の垂直方向の距離に基づき、作業者は、目標の曲面形状に沿うように、上記加熱や冷却により金属板の曲げを行う。これにより、熟練工の経験と勘に頼っていた撓鉄加工を通常の作業者でも高い精度で実行可能にすることができる。また、金属板の材料や厚みにより、加熱した金属板の曲がりが一定ではないこと、さらに、一度曲げた金属板を修正することは、材料の変質による曲がり具合の変化、余分な工程が増加するなど不必要な労力が増加するため、即時に測定された距離に基づき加工を行う必要が有る。
【0066】
本発明は、上述の実施形態に限られず、以下に示す金属板の曲げ加工システムとすることもできる。具体的には、金属板の曲げ加工システムは、上記形状測定装置と、制御部における制御プログラムからの指令に基づいて線状加熱装置による加熱、および放水器による冷却を機械が行う自動撓鉄加工装置と、から構成される。形状測定装置が備える複数の計測部は、それぞれの対応する各測定部における変位情報をデジタルデータとして取得する変位センサである。変位センサから取得された変位情報は、前記金属板の曲げ加工を制御する制御部へ伝送され、集積される。変位情報の制御部への伝送は、有線によって行われてもよいし、無線によって行われてもよい。また、制御部は、変位情報が金属板が目標の曲面形状となった場合の変位の値である設計値になるまで、変位情報の取得と、自動撓鉄加工装置への撓鉄加工の指令を繰り返す。
【0067】
上述の制御プログラムは、取得された各測定部の変位情報を基に金属板の形状へと変換し、目標の曲面形状とするために必要な撓鉄加工の条件を出力する。具体的には、加熱と冷却のそれぞれを行う位置、範囲、時間、繰り返し数などの条件を出力し、自動撓鉄加工装置はその出力された指令に基づき金属板への加工を行う。
【0068】
このような金属板の曲げ加工システムは、人間による判断や、操作が無くても、計測部から得られた変位情報だけでなく、過去に行った撓鉄加工に関する情報を制御プログラムが処理することで、自動的に稼働することができる。これにより、撓鉄加工の自動化が可能となり、連続稼働が可能となることで生産効率の改善とともに、製造コストも大幅に低減できる。さらには、技能伝承、後継者不測などの問題解決にも寄与する。
【0069】
本発明の形状測定装置および金属板の曲げ加工方法は、上述した撓鉄加工に限られず、金属板を曲げる工程であれば、幅広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の形状測定装置および金属板の曲げ加工方法は、撓鉄加工などの金属板の曲げ加工における、加工中の金属板について、その曲面形状の把握を即時かつ簡易に、精度よく行うことができ、使用環境も制限されにくいので、船舶、橋梁などの建造に使用される金属板を曲げる工程に利用でき、特に金属板が大型となる造船時の金属板の撓鉄加工に好適である。
【符号の説明】
【0071】
1 金属板
2 形状測定装置
3 下架台
4 定盤
5 上架台
6 脚部
7 測定手段
8 高さ調整機構
9 測定部
10 計測部
11 張力発生部
12 張力伝達部
13 圧力変換部
14 変位伝達部
15 測定子
16 動滑車
17 目盛り
18 目印
19 引張りばね
20 フック
21 固定部
22 固定レバー
23 傾斜架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10