(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】検体塗布装置及び塗布棒の位置設定方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240411BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20240411BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C12M1/26
G01N1/04 G
G01N1/28 V
(21)【出願番号】P 2019119577
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591058127
【氏名又は名称】メディカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】町田 哲男
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-049025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0299354(US,A1)
【文献】“反り・うねり・平衡度測定”, [online], 2016.11.4公開, オプテックス・エフエー株式会社, [2023.4.28検索], インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20161104045123/https://www.optex-fa.jp/tech_guide/dsp_solution/process02.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布面に検体を塗布する検体塗布装置であって、
長尺形状をなし、先端部を前記被塗布面に接触させて、該先端部に付着或いは供給された検体を前記被塗布面に塗布する塗布棒と、
前記塗布棒の先端部が前記被塗布面の表面に接するように、前記被塗布面に対する前記塗布棒の相対位置を変化させ、前記塗布棒の先端部が前記被塗布面に接した状態で、前記検体を前記被塗布面に塗布する制御を行う制御部と、
前記塗布棒の撓み量を検出する撓み検出センサと、を有し、
前記制御部は、前記検体を前記被塗布面に塗布する際において、
前記塗布棒が前記被塗布面に接していないときの前記塗布棒の位置と、前記塗布棒が前記被塗布面に接しているときの前記塗布棒の位置に基づいて、前記塗布棒の撓み量を算出し、前記撓み量が一定となるように、前記被塗布面に対する前記塗布棒の相対位置を制御すること
を特徴とする検体塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記塗布棒を前記被塗布面の法線方向に対して所定角度だけ傾斜させて前記被塗布面に接触させること
を特徴とする請求項1に記載の検体塗布装置。
【請求項3】
前記撓み検出センサは、前記塗布棒の、長手方向の中央近傍において前記撓み量を検出すること
を特徴とする請求項1または2に記載の検体塗布装置。
【請求項4】
前記撓みセンサは、前記塗布棒までの距離を測定するレーザセンサであり、該レーザセンサは、前記塗布棒の方向と前記被塗布面の法線方向を含む平面上の、所定の方向からレーザ光を照射して前記塗布棒の撓み量を検出すること
を特徴とする
請求項2に記載の検体塗布装置。
【請求項5】
塗布棒の先端に付着或いは供給された検体を、被塗布面に接触させて、前記被塗布面に前記検体を塗布する検体塗布装置に設けられ
た制御部によって制御され、前記被塗布面と、前記塗布棒との相対的な位置を設定する位置設定方法であって、
前記塗布棒が前記被塗布面に接していないときの、前記塗布棒の位置を基準位置として検出するステップと、
前記塗布棒が前記被塗布面に接しているときの、前記塗布棒の位置を検出位置として検出するステップと、
前記基準位置と前記検出位置との差分から前記塗布棒の撓み量を検出するステップと、
前記撓み量が一定となるように、前記被塗布面に対する前記塗布棒の相対位置を制御するステップと、
を備えたことを特徴とする塗布棒の位置設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布棒を用いて被塗布面に検体を塗布する検体塗布装置及び塗布棒の位置設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腸内細菌を検査するための検便検査では、採便棒(塗布棒)に便(検体)を付着させ、更に、塗布棒に付着した検体をシャーレに入れた寒天培地(被塗布面)の表面に付着させて培養し検査を行う。検体を寒天培地に塗布する際に検体塗布装置が用いられる。このような検体塗布装置の従来例として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示された検体塗布装置では、塗布棒の先端部を被塗布面に接触させて、被塗布面に対して均一となるように検体を塗布することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、寒天培地の量にばらつきがあり、これに起因して塗布棒が被塗布面に接するときに加えられる力が安定しないことがある。このような場合には寒天培地に対して検体を均一に塗布することができない。このため、高精度な検体検査ができないという問題がある。更には、採便棒が寒天培地に接するときの力が強すぎて寒天培地を損傷することや、採便棒が寒天培地の被塗布面に接触せず検体が塗布されないという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、塗布棒が被塗布面に接するときに加わる応力をほぼ均一にして被塗布面に検体を塗布することが可能な検体塗布装置、及び塗布棒の位置設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る検体塗布装置は、被塗布面に検体を塗布する検体塗布装置であって、長尺形状をなし、先端部を前記被塗布面に接触させて、該先端部に付着或いは供給された検体を前記被塗布面に塗布する塗布棒と、前記塗布棒の先端部が前記被塗布面の表面に接するように、前記被塗布面に対する前記塗布棒の相対位置を変化させ、前記塗布棒の先端部が前記被塗布面に接した状態で、前記検体を前記被塗布面に塗布する制御を行う制御部と、前記塗布棒の撓み量を検出する撓み検出センサと、を有し、前記制御部は、前記検体を前記被塗布面に塗布する際において、前記塗布棒が前記被塗布面に接していないときの前記塗布棒の位置と、前記塗布棒が前記被塗布面に接しているときの前記塗布棒の位置に基づいて、前記塗布棒の撓み量を算出し、前記撓み検出センサで検出される前記塗布棒の撓み量が一定となるように、前記被塗布面に対する前記塗布棒の相対位置を制御することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る塗布棒の位置設定方法は、塗布棒の先端に付着或いは供給された検体を、被塗布面に接触させて、前記被塗布面に前記検体を塗布する検体塗布装置に設けられた制御部によって制御され、前記被塗布面と、前記塗布棒と、の相対的な位置を設定する位置設定方法であって、前記塗布棒が前記被塗布面に接していないときの、前記塗布棒の位置を基準位置として検出するステップと、前記塗布棒が前記被塗布面に接しているときの、前記塗布棒の位置を検出位置として検出するステップと、前記基準位置と前記検出位置との差分から前記塗布棒の撓み量を検出するステップと、前記撓み量が一定となるように、前記被塗布面に対する前記塗布棒の相対位置を制御するステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗布棒が被塗布面に接するときに加わる応力をほぼ均一にして被塗布面に検体を塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る検体塗布装置を収納する筐体の外観図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態に係る検体塗布装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施形態に係る検体塗布装置の構成を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、シャーレに充填されている寒天培地に採便棒を接触させる様子を示す説明図である。
【
図4】
図4は、寒天培地に検体を塗布する経路を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る検体塗布装置の、電気的な構成を示すブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、採便棒が寒天培地に接していないときの撓み量を測定する様子を示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、採便棒が寒天培地に接しているときの撓み量を測定する様子を示す説明図である。
【
図7A】
図7Aは、シャーレの蓋にアーム機構の蓋吸着ポンプを固定した様子を示す説明図である。
【
図7B】
図7Bは、シャーレの蓋をアーム機構で取り外す様子を示す説明図である。
【
図7C】
図7Cは、シャーレの蓋をアーム機構で旋回させ、側方に移動する様子を示す説明図である。
【
図7D】
図7Dは、採便棒を傾斜させる様子を示す説明図である。
【
図7E】
図7Eは、傾斜させた採便棒を寒天培地の表面に接触させて検体を塗布する様子を示す説明図である。
【
図7F】
図7Fは、検体の塗布が終了したときの様子を示す説明図である。
【
図7G】
図7Gは、検体の塗布が終了した後に、採便棒を上昇させた様子を示す説明図である。
【
図7H】
図7Hは、検体の塗布が終了した後に、シャーレに蓋を取り付けた様子を示す説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る検体塗布装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[本実施形態の構成の説明]
図1は、本発明の一実施形態に係る検体塗布装置の外観図である。また、
図2A、
図2Bは、採便棒11、該採便棒11を固定する採便棒蓋12、及びシャーレ13を模式的に示す説明図であり、
図2Aは正面図、
図2Bは側面図である。
【0011】
本実施形態では、検体塗布装置の一例として便検査で採取された採便棒11(先端に便が付着した採便棒)を、シャーレ13に充填された寒天培地(後述する
図3の符号41)に塗布する装置を例に挙げて説明する。即ち、採便棒11は塗布棒の一例であり、寒天培地は被塗布面の一例であり、便は検体の一例である。
【0012】
採便棒11は、例えば樹脂などの可撓性を有する材質で形成されている。樹脂とは、プラスチック、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、エポキシ樹脂などを含む概念である。また、採便棒11の材質は樹脂に限定されず、可撓性を有する他の材質とすることも可能である。採便棒蓋12は、図示省略の装着ヘッドに固定されている。
【0013】
なお、以下では便宜上、
図2Aの紙面に直交する方向をY方向、シャーレ13を塗布位置P1に送り出す方向(左右方向)をX方向、上下方向をZ方向と定義する。従って、
図2Bにおいて左右方向はY方向、紙面に直交する方向はX方向である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る検体塗布装置は、筐体100内に収納されている。筐体100内には、寒天培地が充填されたシャーレ13を移動させるシャーレ送り機構(図示省略)が設けられている。該シャーレ送り機構により順次送られるシャーレ13に充填された寒天培地に、採便棒11の先端を接触させてシャーレ13に対して採便棒11を往復動作させて、採便棒11の先端に付着している検体を寒天培地に均一に塗布する。
【0015】
図3は、シャーレ13内に充填されている寒天培地41の表面に採便棒11を接触させる様子を示す説明図である。
図3に示すように、シャーレ13に充填された寒天培地41(被塗布面)の法線方向に対して所定角度だけ傾斜した採便棒11を、寒天培地41の表面に接触させる。そして、シャーレ13に対して採便棒11を相対的に移動させ、相対位置を変化させることにより、寒天培地41の表面に沿って検体q1を塗布する。例えば、
図4に示すように寒天培地41の表面のジグザグの経路Q1に沿って検体q1を塗布する。本実施形態では、検体q1を塗布する際に、採便棒11の撓み量が一定となるように制御することにより、寒天培地に対して検体q1が均一に塗布されるように制御する。なお、経路Q1は一例であって、X、Y方向の移動に組み合わせにより、様々な塗布経路を設定することが可能である。
【0016】
また、寒天培地41の法線方向に対して、採便棒11の長手方向が所定角度だけ傾斜するように配置することにより、寒天培地41に対して無理な応力を加えることなく検体を塗布することを可能とする。具体的に、後述する採便棒傾きモータ24にて採便棒蓋12を固定する装着ヘッドの傾斜角度を変動させることにより、採便棒11を傾斜させることができる。
【0017】
図2A、
図2Bに示すように、シャーレ13の上面には着脱可能な蓋13aが覆設されている。シャーレ13は、
図2Aに示す矢印x1の方向から送られ、塗布位置P1にて停止して検体の塗布が行われる。
【0018】
また、
図2B、
図5に示すように、本実施形態に係る検体塗布装置101は、シャーレ13を上下方向(Z方向)に移動させるシャーレ上下モータ21と、シャーレ13を左右方向(X方向)に移動させるシャーレ左右モータ22と、シャーレ13を回転させるシャーレ回転モータ23を備えている。
【0019】
更に、本実施形態に係る検体塗布装置101は、シャーレ13の蓋13aを着脱するアーム機構42(
図2B、
図7A参照)と、該アーム機構42に設置され、蓋13aを吸着する蓋吸着ポンプ26と、採便棒11を前後方向(Y方向)に移動させる採便棒前後モータ25と、採便棒11を寒天培地41の法線方向に対してY-Z平面内で傾斜させる採便棒傾きモータ24を備えている。更に、採便棒11を上下方向へ移動させる採便棒上下モータ28を備えている。
【0020】
更に、本実施形態に係る検体塗布装置101は、採便棒11の撓み量を検出するレーザセンサ27(撓み検出センサ)を備えている。
図6A、
図6Bは、レーザセンサ27により採便棒11の撓み量を検出する様子を模式的に示す説明図である。
図6A、
図6Bに示すように、レーザセンサ27は、Y-Z平面上の所定の方向から採便棒11の略中央部(採便棒11全体の長さのほぼ中央となる位置)に向けてレーザを照射し、更に、反射したレーザを受光して採便棒11の撓み量を検出する。具体的に
図6Aに示すように、採便棒11の先端が寒天培地41に接していないとき(基準位置のとき)の、レーザセンサ27から採便棒11までの距離L1と、採便棒11の先端が寒天培地41に接したとき(検出位置のとき)の、レーザセンサ27から採便棒11までの距離L2を測定し、これらの差分(L2-L1)を撓み量として検出する。なお、
図6Bは理解を促進するため採便棒11の撓み量を誇張して記載している。
【0021】
また、本実施形態では、撓み検出センサとしてレーザセンサ27を用いる例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば超音波センサなどのレーザセンサ以外のセンサを用いることも可能である。また、本実施形態では、採便棒11の撓み量を高精度に検出するために、Y-Z平面方向に向けてレーザを照射する例を示しているが、採便棒11の撓みを検出できれば、Y-Z平面方向でなくてもよい。また、本実施形態では採便棒11の中央部にレーザを照射する例について示すが、撓みによる位置ずれが生じている位置であれば、中央部でなくてもよい。
【0022】
図5に示すように、上述したシャーレ上下モータ21、シャーレ左右モータ22、シャーレ回転モータ23、採便棒傾きモータ24、採便棒前後モータ25、蓋吸着ポンプ26、レーザセンサ27、採便棒上下モータ28、及びアーム機構42は、それぞれ制御部31に接続されている。
【0023】
制御部31は、例えば中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。具体的に、制御部31は、予め設定された採便棒11の塗布プログラムに従って上述した各モータ21~25、28、シャーレ送り機構(図示省略)、アーム機構42、蓋吸着ポンプ26などを制御して、シャーレ13に充填された寒天培地41の表面に検体を塗布する操作を実行する。また、レーザセンサ27で検出される採便棒11の撓み量に基づいて、採便棒11と寒天培地41との距離が適切な距離となるように各モータ21~25、28を制御する。
【0024】
本実施形態に係る検体塗布装置101は、シャーレ13を
図2Aに示す塗布位置P1に移動させた状態で蓋13aを取り外し、シャーレ13、及び採便棒11を相対的に移動させることにより、採便棒11の先端をシャーレ13に充填されている寒天培地の表面に塗布する。
【0025】
具体的に、
図4に示したように、シャーレ13をX方向に往復移動させ、且つ採便棒11をY方向に移動させることにより、シャーレ13と採便棒11との相対位置を変化させ、寒天培地41の表面にジグザグに設定した経路Q1に沿って検体を塗布することができる。なお、本発明は
図4に示した経路Q1に限定されるものではなく、例えば、寒天培地41の表面に対して螺旋状に検体を塗布するようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、寒天培地41に検体を塗布する際の採便棒11の撓み量を一定に調整することにより、採便棒11が寒天培地41に加える応力をほぼ一定に制御し、寒天培地41に対して検体を均一に塗布する。なお、「撓み量」とは、可撓性を有する採便棒11が弓なりに湾曲した際の、湾曲部の基準値(例えば、採便棒11が直線のときの位置)に対する変位量を指す。本実施形態では、前述したように、
図6Aに示した距離L1と
図6Bに示した距離L2との差分を撓み量としている。
【0027】
[本実施形態の作用の説明]
次に、上述のように構成された本実施形態に係る検体塗布装置101の、検体を塗布する手順について、
図7A~
図7H、
図8を参照して説明する。
図7A~
図7Hは、シャーレ13と採便棒11との位置関係の変化を示す説明図である。
図8は、本実施形態に係る検体塗布装置101の処理手順を示すフローチャートである。
【0028】
初めに、
図7Aに示すように載置台32に載置されたシャーレ13が塗布位置P1に送られると、
図2B、
図5に示した制御部31は、シャーレ上下モータ21により載置台32を上昇させる(
図8のステップS11)。なお、例えばシャーレ13に仕切り板が設けられ仕切り板により区画される2つの領域にそれぞれ寒天培地が充填されている場合には、この仕切り板が所望の位置となるように、シャーレ回転モータ23を作動させてシャーレ13を回転させる。
【0029】
その後、
図7Bに示すように、制御部31は、アーム機構42、及び蓋吸着ポンプ26を作動させて蓋13aを吸着し(ステップS12)、更に、載置台32を下降させる(ステップS13)。これにより、シャーレ13より蓋13aが取り外される。
次いで、
図7Cに示すように、制御部31は、アーム機構42を作動して旋回し、蓋13aをシャーレ13の側方に移動させる(ステップS14)。
【0030】
その後、
図7Dに示すように、制御部31は、採便棒前後モータ25(
図2B、
図5参照)を作動させて検体が付着した採便棒11を一定の角度だけ傾斜させる(ステップS15)。この際、採便棒11を前後方向、即ち、Y-Z平面に沿って傾斜させる。
【0031】
そして、制御部31は、レーザセンサ27を作動させて採便棒11の撓み量を測定する(ステップS16)。具体的に、前述した
図6Aに示したように、レーザセンサ27より採便棒11に向けてレーザを照射し、その反射光を受光して採便棒11の撓み量を測定する。この際、レーザの照射位置は
図6Aに示したように、採便棒11のほぼ中央部とするのが望ましい。その理由は、棒状の物体が湾曲して撓みが生じる際には棒状の物体の中央部が最も変位量が大きくなるからである。
図7Dの状態では、採便棒11は寒天培地41の表面に接していないので、採便棒11はほぼ直線の状態である。換言すれば採便棒11の撓み量はほぼゼロである。
【0032】
その後、
図7Eに示すように、制御部31は、採便棒上下モータ28を作動させて採便棒11を下降させ、採便棒11の先端を寒天培地41の表面に接触させる(ステップS17)。
【0033】
制御部31は、再度レーザセンサ27を作動させて採便棒11の撓み量を測定する(ステップS18)。この際、採便棒11は先端が寒天培地41の表面に接触していることにより撓みが生じる。具体的に、前述したように採便棒11は樹脂などの可撓性を有する材質で形成されているので、
図6Bに示したように、採便棒11の先端が寒天培地41の表面に接することにより、撓みが生じる。採便棒11に撓みが生じることにより、レーザセンサ27から採便棒11までの距離が変化する。従って、この距離の変化を測定することにより、採便棒11の撓み量を検出することができる。
【0034】
具体的に、
図6Aに示したように採便棒11が寒天培地41に接していないときの、レーザセンサ27にて検出される距離L1と、
図6Bに示したように採便棒11が寒天培地41に接しているときの、レーザセンサ27にて検出される距離L2の差分(L2-L1)を撓み量として測定する。また、レーザセンサ27は、採便棒11を傾斜する方向、即ち、Y-Z平面の方向からレーザを照射して撓み量を検出するので、高精度な検出が可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、
図6A、
図6Bに示したように、採便棒11が寒天培地41に接していないとき、及び接しているときの距離の変化を撓み量として検出する例について説明するが、採便棒11が寒天培地41に接していないときの距離L1が既知の数値であれば、距離L1を測定しなくてもよい。
【0036】
制御部31は、採便棒11の撓み量が一定値(例えば、0.1mm)、あるいはゼロとなるように(即ち、撓み量が一定となるように)、載置台32の高さを制御する(ステップS19)。具体的に、シャーレ上下モータ21の作動を制御して、シャーレ13の高さ(Z方向の位置)を制御し、撓み量が一定値、あるいはゼロになるように制御する。なお、撓み量の制御はシャーレ13の高さを制御する以外にも、採便棒上下モータ28を作動させて採便棒11の高さを制御しても良い。即ち、シャーレ13と採便棒11の相対的な位置を調整して、撓み量が一定値、或いはゼロとなるように制御する。
【0037】
撓み量が一定値となった場合には(ステップS20でYES)、制御部31は、シャーレ13を左右方向(X方向)に往復移動させ、且つ、採便棒11を前後方向(Y方向)に移動させることにより、
図4に示したようにジグザグの経路Q1に沿って検体を寒天培地41の表面に塗布する(ステップS21)。
【0038】
図7Fに示すように、採便棒11の先端がY方向の端部に達して検体の塗布が終了すると(ステップS22でYES)、
図7Gに示すように、制御部31は採便棒上下モータ28を作動させて採便棒11を上昇させる。更に、
図7Hに示すように、制御部31はアーム機構42を作動させて、シャーレ13の上面に蓋13aを載置する。その後、次の処理に移行する。
こうして、シャーレ13内の寒天培地41に対して均一に検体を塗布することができるのである。
【0039】
[本実施形態の効果の説明]
このようにして、本実施形態に係る検体塗布装置101では、採便棒11が寒天培地41の表面に接しているときの、採便棒11の撓み量をレーザセンサ27により検出する。そして、採便棒11の撓み量が一定値、或いはゼロとなるように、採便棒11とシャーレ13の相対的な位置を制御する。従って、採便棒11が寒天培地41の表面に接するときの応力を一定にすることが可能となる。このため、寒天培地41に対して検体を均一に塗布することができる。更に、採便棒11により寒天培地41を損傷することや、採便棒11の先端が寒天培地41の被塗布面に接触せず検体が塗布されないという問題の発生を回避することができる。
【0040】
即ち、従来においては、採便棒11を寒天培地41の表面に接触させて検体を塗布する際には、採便棒11と寒天培地41との位置関係を高精度に調整することが難しく、採便棒11が寒天培地41に接する際の応力が小さい場合には検体が寒天培地41に均一に塗布されないことがあった。その一方で、応力が大きい場合には、採便棒11により寒天培地41を損傷するという問題が生じていた。本実施形態ではこのような問題を解決することができる。
【0041】
更に、本実施形態では、採便棒11(塗布棒)が寒天培地41(被塗布面)の法線方向に対して、所定角度だけ傾斜した方向に向くようにして、検体を寒天培地41に塗布するので、寒天培地41に無理な応力が作用することを回避し、均一且つ安定的に検体を塗布することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、採便棒11が寒天培地41に接していないときの、採便棒11の位置と、採便棒11が寒天培地41に接しているときの採便棒11の位置に基づいて、採便棒11の撓み量を算出するので、採便棒11の撓み量を高精度に検出することができ、より一層均一に検体を寒天培地41に塗布することが可能となる。
【0043】
更に、レーザセンサ27は、採便棒11の長手方向の中央近傍、即ち、最も撓み量が大きい部位において撓み量を検出するので、撓み量の検出精度を向上させることができる。
【0044】
また、採便棒11の撓みを検出する撓み検出センサとして、レーザセンサ27を採用し、該レーザセンサ27は、採便棒11の方向と寒天培地41の法線方向を含む平面(
図2BのY-Z平面)の、所定の方向からレーザ光を照射して採便棒11の撓み量を検出するので、より高精度に撓み量を検出することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では、被塗布面として寒天培地41を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検体塗布用のガラス板などを用いてもよい。また、塗布棒として採便棒11を例に挙げて説明したが、中空で可撓性を有するピペット状の塗布棒を用いてもよい。
【0046】
即ち、被塗布面として平面形状を有する材質であればよく、また、塗布棒は先端部に付着、或いは供給された検体を塗布、或いは分注可能で長尺形状で可撓性を有する材質であればよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0048】
11 採便棒(塗布棒)
12 採便棒蓋
13 シャーレ
13a 蓋
21 シャーレ上下モータ
22 シャーレ左右モータ
23 シャーレ回転モータ
24 採便棒傾斜モータ
25 採便棒前後モータ
26 蓋吸着ポンプ
27 レーザセンサ(撓み検出センサ)
28 採便棒上下モータ
31 制御部
32 載置台
41 寒天培地(被塗布面)
42 アーム機構
100 筐体
101 検体塗布装置
P1 塗布位置
q1 検体
Q1 経路