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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/28 20100101AFI20240411BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20240411BHJP
   H01L 33/38 20100101ALI20240411BHJP
   H01L 33/14 20100101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L33/28
H01L31/06 300
H01L33/38
H01L33/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020005113
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021114490
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519214260
【氏名又は名称】株式会社S-Nanotech Co-Creation
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】藤田 恭久
(72)【発明者】
【氏名】北原 邦紀
(72)【発明者】
【氏名】リン ジェイ
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-244387(JP,A)
【文献】国際公開第2002/103813(WO,A1)
【文献】特開2013-214663(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125719(WO,A1)
【文献】特開2008-251876(JP,A)
【文献】特開2013-168406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01L 31/04 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、共に酸化亜鉛(ZnO)を含む第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型と逆の第2導電型の第2半導体層とが上下方向で接してpn接合が形成された構成を具備する光電変換素子であって、
前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの一方は、前記一方に対応した導電型のZnO微粒子を主とした粉体中に前記一方に対応した導電型と逆の導電型のZnO微粒子が混合された粉体を構成する平均粒径が50nm~500nmの範囲とされた微粒子が結合されて構成され、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間には、前記pn接合が形成される領域に対応した開口が形成された絶縁層を具備し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方と接続される電極が、平面視において前記開口と重複しないように形成されたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
平面視において、前記電極は、前記開口の周囲を囲む環状の形状を具備することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
基板上に、共に酸化亜鉛(ZnO)を含む第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型と逆の第2導電型の第2半導体層とが上下方向で接してpn接合が形成された構成を具備する光電変換素子であって、
前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの一方は、前記一方に対応した導電型のZnO微粒子を主とした粉体中に前記一方に対応した導電型と逆の導電型のZnO微粒子が混合された粉体を構成する平均粒径が50nm~500nmの範囲とされた微粒子が結合されて構成され、厚さが5μm~10μm以下の範囲とされた層であり、
前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方に電極が接続されたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方に対応した導電型はp型であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記基板上に、n型の前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記電極を順次具備することを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方と前記電極との間に、前記一方と同一の導電型であり、当該導電型のZnO微粒子と絶縁性のバインダーとが混合されて構成された電荷輸送層を具備することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記pn接合が順方向となるように前記第1半導体層、前記第2半導体層に電圧が印加された場合に、少なくとも前記第1半導体層、前記第2半導体層のいずれかが発光することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記基板は金属で構成され、前記基板がある側と反対側から光が取り出されることを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛(ZnO)が材料として用いられ、光を電気に変換する、あるいは電気を光に変換する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を電気エネルギーに変換する太陽電池の種類として、単結晶シリコン太陽電池、シリコン薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機太陽電池等が知られている。こうした太陽電池においては、光電変換効率が高いことと、低コストで製造することができること、が共に要求されている。
【0003】
ここで、低コストで製造することができることとは、大面積のものを低コストで製造できることを意味する。単結晶シリコン太陽電池や量子ドット型太陽電池においては高い光電変換効率が得られるものの、この点の実現が極めて困難である。シリコン薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機太陽電池等は、この点においては有利であるが、高い光電変換効率を得ることが原理的に困難である。このように、太陽電池における一般的な傾向として、エネルギー変換効率が高いことと低コストで製造できることはトレードオフの関係にある。
【0004】
酸化亜鉛(ZnO)も、このような太陽電池の材料として知られている。ZnOは安価でありかつ人体に対する毒性が少ないという利点を有している。ただし、太陽電池を得るためにはpn接合を形成することが要求されるのに対して、ZnOの導電型制御はシリコン等と比べると非常に困難であり、一般的には、n型の形成は容易であるが、p型を形成することは非常に困難である。これに対して、特許文献1、2には、p型のZnO微粒子をガス中蒸発法によって安価かつ容易に製造できることが記載され、特許文献3には、この微粒子を用いて形成されたp型層を用いてpn接合(pnダイオード)を形成し、高効率の太陽電池が得られることが記載されている。また、ZnOは励起子発光をすることも知られており、これを用いて発光素子を得ることもできる。特許文献4には、上記と同様のp型のZnO微粒子を用いて形成されたp型層を用いた高効率の発光素子が記載されている。
【0005】
これらのp型層は、特許文献3に記載されるように、例えば上記の微粒子の分散液をn型層の上に塗布し、300℃程度の温度で焼成した焼結体として得ることができる。これによって、極めて安価に太陽電池や発光素子を得ることができる。また、大面積化への対応も容易であるため、これを用いて大面積の太陽電池、ディスプレイ、照明装置等を得ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-60145号公報
【文献】特開2016-60678号公報
【文献】特開2013-175507号公報
【文献】特開2008-244387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにZnOが用いられる太陽電池、発光素子の基本要素となるのはpnダイオードである。これが良好に機能するためには、pnダイオードの電流―電圧特性が良好である、すなわち、本来のpnダイオードの順方向特性、逆方向特性に基づく電流のみが流れ、これ以外の電流成分であるリーク電流が流れないことが要求される。これに対して、上記のようにp型のZnO微粒子の焼結体であるp型層が用いられたpnダイオードにおいては、このリーク電流が大きくなる場合があった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の光電変換素子は、基板上に、共に酸化亜鉛(ZnO)を含む第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型と逆の第2導電型の第2半導体層とが上下方向で接してpn接合が形成された構成を具備する光電変換素子であって、前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの一方は、前記一方に対応した導電型のZnO微粒子を主とした粉体中に前記一方に対応した導電型と逆の導電型のZnO微粒子が混合された粉体を構成する平均粒径が50nm~500nmの範囲とされた微粒子が結合されて構成され、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間には、前記pn接合が形成される領域に対応した開口が形成された絶縁層を具備し、前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方と接続される電極が、平面視において前記開口と重複しないように形成されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子、平面視において、前記電極は、前記開口の周囲を囲む環状の形状を具備することを特徴とする。
本発明の光電変換素子は、基板上に、共に酸化亜鉛(ZnO)を含む第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型と逆の第2導電型の第2半導体層とが上下方向で接してpn接合が形成された構成を具備する光電変換素子であって、前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの一方は、前記一方に対応した導電型のZnO微粒子を主とした粉体中に前記一方に対応した導電型と逆の導電型のZnO微粒子が混合された粉体を構成する平均粒径が50nm~500nmの範囲とされた微粒子が結合されて構成され、厚さが5μm~10μm以下の範囲とされた層であり、前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方に電極が接続されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子において、前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方に対応した導電型はp型であることを特徴とする。
本発明の光電変換素子は、前記基板上に、n型の前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記電極を順次具備することを特徴とする。
本発明の光電変換素子は、前記第1半導体層、前記第2半導体層のうちの前記一方と前記電極との間に、前記一方と同一の導電型であり、当該導電型のZnO微粒子と絶縁性のバインダーとが混合されて構成された電荷輸送層を具備することを特徴とする。
本発明の光電変換素子は、前記pn接合が順方向となるように前記第1半導体層、前記第2半導体層に電圧が印加された場合に、少なくとも前記第1半導体層、前記第2半導体層のいずれかが発光することを特徴とする。
本発明の光電変換素子において、前記基板は金属で構成され、前記基板がある側と反対側から光が取り出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成されているので、ZnO微粒子の焼結体である半導体層が用いられた光電変換素子において、リーク電流を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】比較例あるいは第1の実施の形態となる発光素子の断面図である。
図2】従来の発光素子の電流―電圧特性の一例である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の断面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の変形例の断面図である。
図5】本発明の第1の実施例となる発光素子の電流―電圧特性である。
図6】本発明の第2の実施例となる発光素子の電流―電圧特性である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る光電変換素子においては、特許文献3、4に記載の素子と同様に、p型のZnO微粒子がp型層を構成するために用いられる。このZnO微粒子は例えば特許文献1、2に記載のガス中蒸発法で容易に製造される。
【0013】
また、本発明で用いられるp型のZnO微粒子は、平均粒径が50nm以上500nm以下のZnOである。このZnO微粒子の平均粒径は、JISZ8828に記載の方法で測定される。このZnO微粒子の平均粒径が50nm未満であると結晶表面が欠陥として働き、500nmを超えると多結晶体になり粒子の内部に欠陥を含むようになるため、太陽電池、発光素子のどちらにおいても特性劣化の原因となるためである。好ましくは、このZnO微粒子の平均粒径は100nm~500nmである。
【0014】
また、本発明で用いられるp型のZnO微粒子は、窒素ドープされたZnO微粒子が好ましく、その場合は窒素濃度が1016cm-3以上1020cm-3以下である。窒素濃度を上記範囲とするのは、窒素濃度が1016cm-3未満であると、ホールの輸送が不十分となり、また、1020cm-3を超えると、欠陥を生成し発光特性が悪化するからである。こうした特性を具備するp型のZnO微粒子は、特許文献1、あるいは特許文献2に記載の製造方法によって製造することができる。
【0015】
図1は、このようなp型層を具備する従来の発光素子9の構造を示す断面図である。ここでは、透明なガラス基板91上において、n型層(第1半導体層)92、p型層(第2半導体層)93が順次形成されている。n型層92におけるp型層93が形成されずに露出した部分にはn側電極94が、p型層93の表面の一部にはp側電極(電極)95がそれぞれ形成される。電源Bによって順方向の電圧(p側電極95に正側、n側電極94が負側となるような電圧)が印加された場合に、pn接合に順方向電流が流れてn型層92、p型層93が発光し、この発光はガラス基板91を介して下側に取り出される。上側ではp側電極95によって一部が遮られるものの、上側からこの発光を取り出すことも可能である。ここで、p型層93は、前記のようなp型のZnO微粒子(p型ZnO微粒子931)の焼結体で構成される。
【0016】
この発光素子9の電流―電圧特性において、電源Bの極性が図1と逆転されて逆方向の電圧(p側電極95に負側、n側電極94が正側となるような電圧)が印加された場合には、一般的には、n型層92とp型層93で構成されるpnダイオードが逆方向となるため、無視できる程度の僅かな電流しか流れない。しかしながら、この電流が無視できない程度に大きくなる場合があった。図2は、図1の発光素子9におけるこのような特性を測定した例であり、実線が電流―電圧特性であり、プロットが実測された発光強度(光検出器の出力電流)の電圧依存性である。ここで、発光強度は、バックグラウンド成分の存在のために、5E-9(5×10-9)のレベルが実質的な発光強度零に対応する。逆方向(電圧負側)においては、発光強度が零となっており、流れる電流はpn接合の逆方向電流となる。この逆方向電流は順方向(電圧正側)と比べて本来は無視できる程度となるが、この逆方向電流の絶対値は、リーク電流の存在によって無視できない程度の大きさとなっている。
【0017】
この原因を調べたところ、発明者は、図1に示されるように、本来はp型ZnO微粒子931のみで構成されるp型層93において、n型のZnO微粒子(n型ZnO微粒子932)が微量に混在していることが原因であることを知見した。これは、前記のようなガス中蒸発法においてp型ZnO微粒子931が製造される際に、n型ZnO微粒子932も同時に微量形成され、これらが混在した粉末がp型層93を形成するために用いられたことに起因する。このため、図1に示されるように、n型層92とp側電極95の間において、n型ZnO微粒子932を介在する電流経路がp型層93中に形成され、これがリーク電流の経路となる。
【0018】
このようなリーク電流の経路を長くした場合には、この経路の途中にp型ZnO微粒子931が介在する確率が高くなり、これによりリーク電流の経路が遮断される。このため、n型層92からp側電極95に至るp型層93内の電流経路を長く設定することが、このようなリーク電流の低減には有効である。以下に、このようにリーク電流の経路が長くなるような構造を具備する発光素子について説明する。この構造は、光を電気信号に変換する太陽電池、電流を光(発光)に変換する発光素子のどちらにおいても有効である。すなわち、この構造は、ZnO微粒子を用いて構成された半導体層が用いられたpn接合を具備する光電変換素子全般において有効である。以下では、この光電変換素子の例となる発光素子について説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1において、リーク電流の経路長は、p型層93の膜厚とほぼ等しい。このため、第1の実施の形態に係る発光素子においては、このようにリーク電流の経路を長く設定するために、第1の実施の形態に係る発光素子では、図1におけるp型層(第2半導体層)93が厚く設定される。このためには、p型層93を、p型ZnO微粒子931の平均粒径(50nm~500nm)よりも十分に厚くすることが有効である。一般的に薄膜層が厚くなればその厚さ方向の抵抗は膜厚に比例して大きくなるが、この場合には、前記のようにn型ZnO微粒子932を介した電流経路をp型ZnO微粒子931によって遮断することができるため、通常知られる薄膜の抵抗の単純な厚さ依存性よりも顕著に抵抗を増大させ、これによってリーク電流を低減することができる。この場合、p型ZnO微粒子931、n型ZnO微粒子932の平均粒径が前記の通りである場合、p型層93の厚さは5μm以上とすることが好ましい。ただし、これに伴い順方向抵抗も大きくなるため、この厚さは10μm以下とすることが好ましい。すなわち、p型層93を形成するにあたりp型ZnO微粒子931にn型ZnO微粒子932が微量混在する場合には、p型層93の厚さを5μm~10μmの範囲とすることが好ましい。
【0020】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る光電変換素子においては、前記のリーク電流の経路をp型層の実際の厚さよりも長く設定することによって、リーク電流を減少させている。図3は、この発光素子1の構成を図1に対応させて示す図である。
【0021】
ここでは、金属(アルミニウム)で形成された基板11上に、透明電極として機能するn型のGZO(GaドープのZnO)層(透明電極)12、n型のZnO層(n型層:第1半導体層)13が順次形成される。GZO層12、n型層13は、特許文献3に記載のように、基板11上にマグネトロンスパッタリング法等によって順次形成することができる。ここで、図1の構成とは異なり、非透明の基板11が用いられるため、発光は下側からは取り出されず、上側に取り出される。この際、基板11の表面を鏡面処理することによって、下側に向かう発光を基板11により反射させて上側に取り出すことができる。
【0022】
また、この上にp型ZnO微粒子931を主成分として構成されたp型のZnO層(p型層:第2半導体層)14が形成される。p型層14の形成方法も特許文献3、4に記載のp型層と同様に、p型ZnO微粒子の分散液を塗布後に焼成することによって、得ることができる。この際、塗布、印刷の手法によれば、p型層14のパターニングも容易に行うことができるため、図中左側においてのみn型層13を露出させることもできる。
【0023】
図中左側におけるn型層13が露出した箇所にはn側電極15が形成されている。また、図3においてp型層14の上側には複数の箇所にp側電極(電極)16が形成されている。図3においては最も左側のp側電極16のみが電源Bに接続されているが、実際には各p側電極16は紙面垂直方向に延伸し、その端部側で全て接続されているために、全てのp側電極16は一体化されている。n側電極15、p型電極16は、例えばそれぞれ金(Au)で構成される。この発光素子1においては、pn接合に順バイアスが印加された場合に発光する発光層として主に機能するのは、n型層13とp型層14となる。
【0024】
また、p型層14とp側電極16との間には、(「酸化亜鉛ナノ粒子塗布型発光ダイオードにおけるホール輸送層の効果」、藤田恭久、Islam Mohammad Shafiqul、Lin Jie、吉田俊幸、第78回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集(2017年)、8a-PA4-3)に記載されたような、ホール輸送層(電荷輸送層)17が形成される。ホール輸送層17は、発光には直接寄与しないが、これによって発光層となるp型層14とp側電極16とを離間させ、p側電極16の存在による消光の影響を低減している。ホール輸送層17は、p型層14と同様のp型であり、かつp型層14よりも高抵抗の層である。このため、ホール輸送層17も、p型層14と同様にp型ZnO微粒子931を用いて形成することができ、ホール輸送層17も前記のp型層14と同様に塗布・印刷によって形成することができる。ただし、p型層14とは異なり、p型ZnO微粒子931の密度は低く設定され、隣接するp型ZnO微粒子931間を結合する絶縁性のバインダー171が用いられる。バインダー171の成分は、例えば、シルセスキオキサン、シリコーン、アルミナ、エポキシ樹脂などであり、特にZnO粒子の発光に対して透明であり,絶縁性であることが好ましい。これによってp型層14と比べてホール輸送層17は抵抗率が高くなる。ただし、ホール輸送層17はp型層14よりも薄く形成され、膜厚方向では十分な電気伝導を示す。なお、p型層14、ホール輸送層17の厚さは1~4μmとされる。このため、図3においては、便宜上p型層14においては厚さ方向でZnO微粒子(p型ZnO微粒子931、n型ZnO微粒子932)が最大で5段積層され、ホール輸送層17においては厚さ方向で1段のみ存在するように記載されているが、実際には、前記の通りZnO微粒子の平均粒径は100nm~500nmの範囲であるため、ZnO微粒子はどちらにおいても厚さ方向でより多く積層されている場合が多い。
【0025】
ここで、n型層13とp型層14の間には、薄い絶縁層18が形成されている。また、図3において、絶縁層18においては、平面視においてp側電極16と重複せずp側電極16から離間した領域Aにおいて、開口が形成されている。このため、n型層13とp型層14が直接接するのは領域Aにおいてのみに制限され、平面視においてpn接合が形成されるのは領域Aのみとなる。絶縁層18は、この上にp型層14を形成することが可能な材料で構成され、例えばSiO等を用いることができる。その後、局所的なウェットエッチング等によって領域Aにおける開口を形成することができ、この上に前記のようにp型層14を形成することによって、この発光素子1を得ることができる。
【0026】
この場合には、順バイアス時においては、平面視において、pn接合が形成される領域A及びその近傍におけるp型層14、n型層13に電流が流れ、発光する。pn接合に電流が流れる箇所は領域Aに制限されるため、特にこの部分の電流密度を高くすることができ、この発光強度を高めることができる。平面視において領域Aとp側電極16とが重複しないようにすれば、この光がp側電極16によって遮ることが抑制される。また、絶縁層18の開口(領域A)を平面視において多数設ければ、p型層14、n型層13を面内の広い範囲にわたり発光させることができる。
【0027】
一方、p型層14においては、平面視における領域Aからこれに隣接したp側電極16にわたる領域にかけて電流が流れる。上記の構成においては、p側電極16と領域Aを離間させることによって、p型層14中における電流経路をその膜厚と比べて実質的に長くすることができる。このため、p型層14にn型ZnO微粒子932が含まれる場合でも、これによるリーク電流の経路の途中にp型ZnO微粒子931を介在させてこの電流経路を遮断することができ、リーク電流を低減することができる。
【0028】
なお、ホール輸送層17もp型ZnO微粒子931を用いて構成されるために、同様にn型ZnO微粒子932の混入があるが、ホール輸送層17においてはバインダー171が用いられるため、n型ZnO微粒子932の混入による影響はp型層14と比べて無視できる。
【0029】
ただし、図3の構造においては、平面視におけるp側電極16の面積が制限されるため、そのp型層14との間の接触面積が小さくなる。このため、p型層14とp側電極16の間の接触抵抗を小さくすることが困難であり、発光時の電流が制限される場合がある。このため、上記のようにp型層14中における電流経路を長くしつつ、p型層14とp側電極16の間の接触面積を大きくすることが特に好ましい。図4は、このような構成を具備する、変形例となる発光素子2の構成を示す図である。
【0030】
図4における下側には図3に対応した断面図が、上側にはp側電極(電極)36と絶縁層18に形成された円形の開口18Aの平面図が示されている。ここで用いられるp側電極36は、平面視において絶縁層18に形成された開口18Aを囲む環状に形成されている。こうした構成によって、平面視においてp側電極36と開口18Aとを重複させないことによってp型層14中の電流経路を長くすることができる。一方、p側電極36を、このように開口18Aの周囲を囲む環状とすることにより、p側電極36とp型層14(ホール輸送層17)との間の接触面積を大きくすることができ、発光時の電流を大きくとることができる。また、この場合には、発光はp側電極36の中央部の開口から上側に取り出すことができる。
【0031】
第1の実施例として、実際に図1の構造の発光素子9をp型層93の膜厚を5μmとして製造し、その電流―電圧特性を測定した結果を図5に示す。ここでは、電極の面積が図2の場合と異なるために、縦軸(電流)の絶対値は異なるが、順方向の電流と比べて逆方向の電流(リーク電流)が無視できる程度になっていることが確認できる。また、第2の実施例として、図3の構造の発光素子を製造して同様の特性を調べた結果を図6に示す。この場合においても、順方向の電流と比べて逆方向の電流(リーク電流)が無視できる程度になっていることが確認できる。
【0032】
また、ホール輸送層17の厚さは、p型層14の厚さに応じて適宜設定される。ただし、図3、4の構造においては、前記の「酸化亜鉛ナノ粒子塗布型発光ダイオードにおけるホール輸送層の効果」(2017年)とは異なり、実質的にホールを輸送するために機能するのはp側電極16、36の直下の部分のみであり、開口の上部においてはホールを輸送するための機能を実質的には有さない。
【0033】
ただし、上記のようにp型層14が微粒子の焼結体として構成される場合、特に微粒子の粒径が大きな場合には、バインダーが用いられないp型層14の表面は平坦とならず凹凸が形成される場合が多い。こうした場合において、p側電極16、36を形成する際に、これを構成する金属がp型層14の表面の凹部に入り込むとやはりリーク電流等の原因となる。バインダー171はこのような凹凸を平坦化することができるため、上記のようにホール輸送層としての作用は小さくとも、薄いホール輸送層をp型層上に形成することが好ましい。
【0034】
なお、上記の実施の形態では、p型層がp型ZnO微粒子931を主体として形成され、これに微量のn型ZnO微粒子932が混入しているものとした。しかしながら、仮にn型層がn型ZnO微粒子を主体として形成され、これに微量のp型ZnO微粒子が混入している場合でも、n型層側で、上記と同様の構成をとることによって、同様にリーク電流を低減することができる。この場合、上記のホール輸送層(電荷輸送層)に対応して電子輸送層を設けることもできる。
【0035】
この際、上記のように開口が形成された絶縁層の上に、p型ZnO微粒子又はn型ZnO微粒子を主体として構成されたp型層、n型層を容易に形成することができる。すなわち、上記の光電変換素子を容易に製造することができる。
【0036】
また、上記の例では、光電変換素子が発光素子である場合について記載されたが、光を電気信号に変換するためにZnOのpn接合が用いられる受光素子においても、逆バイアス時におけるリーク電流の低減は重要である。このため、上記の構造は、こうした受光素子においても有効である。
【符号の説明】
【0037】
1、2、9 発光素子(光電変換素子)
11 基板
12 GZO層(透明電極)
13、92 n型層(第1半導体層)
14、93 p型層(第2半導体層)
15、94 n側電極
16、36、95 p側電極(電極)
17 ホール輸送層(電荷輸送層)
18 絶縁層
18A 開口
91 ガラス基板
171 バインダー
931 p型ZnO微粒子
932 n型ZnO微粒子
B 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6