(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】リーク検査方法及びリーク検査装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/40 20060101AFI20240411BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01M3/40 Z
H03H3/02 B
H03H3/02 A
(21)【出願番号】P 2020033427
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000146009
【氏名又は名称】株式会社昭和真空
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100100860
【氏名又は名称】長谷川 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】塩野 忠久
(72)【発明者】
【氏名】跡邊 好寿
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-257152(JP,A)
【文献】特開2010-223643(JP,A)
【文献】特開平11-051802(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038383(WO,A1)
【文献】特開2009-071570(JP,A)
【文献】特開平01-148932(JP,A)
【文献】特開2018-080965(JP,A)
【文献】特開2009-222693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
H03H 3/02
H03H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が封止された電子部品のリーク量を算出するリーク検査方法であって、
前記電子部品の内部圧力より低い圧力の雰囲気下に前記電子部品を第1の所定時間配置し、前記圧電素子の第1のインピーダンスの変化を取得し、前記電子部品の内部圧力より高い圧力の雰囲気下に前記電子部品を第2の所定時間配置し、前記圧電素子の第2のインピーダンスの変化を取得するインピーダンス変化取得工程と、
前記第1のインピーダンスの変化と前記第2のインピーダンスの変化から前記電子部品からリークする気体のリーク量を算出するリーク量算出工程と、を備える、
リーク検査方法。
【請求項2】
前記第1のインピーダンスの変化は、前記第1のインピーダンスの変化を勾配により示した第1の勾配であり、
前記第2のインピーダンスの変化は、前記第2のインピーダンスの変化を勾配により示した第2の勾配であり、
前記第1の勾配と前記第2の勾配から、前記電子部品のリーク量を算出する、
請求項1に記載のリーク検査方法。
【請求項3】
前記第1の所定時間の単位時間当たりの時間とインピーダンスの変化との関係性を求め、又は前記第2の所定時間の単位時間当たりの時間とインピーダンスの変化との関係性を求め、求めた前記関係性から前記電子部品のリーク量を算出する、
請求項1に記載のリーク検査方法。
【請求項4】
前記インピーダンス変化取得工程は、
前記第1のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される減圧曲線と、前記第2のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される加圧曲線とを形成して、前記減圧曲線における異なる2点のインピーダンス値(Z
x,Z
s,Z
x>Z
s)の変化に基づき、又は前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値と同一の2点におけるインピーダンス値の変化に基づきインピーダンス変化量(ΔZ)を求めるインピーダンス変化量算出工程と、
前記減圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第1の時間変化量(Δt
d)を求め、前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第2の時間変化量(Δt
u)を求める時間変化量算出工程と、
前記インピーダンス変化量(ΔZ)と前記第1の時間変化量(Δt
d)と前記第2の時間変化量(Δt
u)とから、前記減圧曲線の傾きを示す減圧圧力勾配と前記加圧曲線の傾きを示す加圧圧力勾配との比率である圧力勾配比(γ)を求める圧力勾配比算出工程と、を備え、
前記リーク量算出工程は、
前記圧力勾配比(γ)から前記電子部品の内部圧力(P
s)を求め、当該内部圧力(P
s)と経過時間から前記電子部品からリークする気体のリーク量(Q)を求める、
請求項1に記載のリーク検査方法。
【請求項5】
前記減圧曲線において、インピーダンス値は、前記2点のインピーダンス値であるZ
xからZ
sへ変化し、時間は、Z
xに対応する第1の時間からZ
sに対応する第2の時間まで変化し、
前記加圧曲線において、インピーダンス値は、前記2点のインピーダンス値であるZ
sからZ
xへ変化し、時間は、Zsに対応する第3の時間からZxに対応する第4の時間まで変化し、
前記第2の時間と前記第3の時間は、同一の時間である、
請求項4に記載のリーク検査方法。
【請求項6】
前記圧力勾配比(γ)は、
γ=(ΔZ/Δt
d)/(ΔZ/Δt
u)により算出され、
(ΔZは、前記インピーダンス変化量、Δt
dは、前記第1の時間変化量、Δt
uは、前記第2の時間変化量)
前記内部圧力(P
s)は、
P
s=(γP
h+P
l)/(γ+1)により算出され、
(P
hは、加圧時の圧力値、P
lは減圧時の圧力値)
前記リーク量(Q)は、
Q=-VΔP・P
atm/(P
s-P
l)Δt又は
Q=VΔP・P
atm/(P
h-P
s)Δtにより算出される、
(Vは、前記圧電素子の内容積、P
atmは大気圧、Δtは経過時間)
請求項4又は5に記載のリーク検査方法。
【請求項7】
圧電素子が封止された電子部品のリーク量を算出するリーク検査装置であって、
前記電子部品が配置される
第1の検査空間を減圧する減圧手段と、
前記電子部品が配置される
第2の検査空間を加圧する加圧手段と、
前記
第1と第2の検査空間内に配置された前記電子部品の前記圧電素子のインピーダンスを測定して、インピーダンスの変化を取得するインピーダンス変化取得部であって、前記減圧手段により減圧した前記
第1の検査空間内に前記電子部品を第1の所定時間配置したのち前記圧電素子のインピーダンスを測定し第1のインピーダンスの変化を取得し、前記加圧手段により加圧した前記
第2の検査空間内に前記電子部品を第2の所定時間配置したのち前記圧電素子のインピーダンスを測定し第2のインピーダンスの変化を取得するインピーダンス変化取得部と、
前記インピーダンス変化取得部により取得された前記第1のインピーダンスの変化と前記第2のインピーダンスの変化から前記電子部品からリークする気体のリーク量を求めるリーク量算出部と、を備える、
リーク検査装置。
【請求項8】
前記インピーダンス変化取得部は、
前記第1のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される減圧曲線と、前記第2のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される加圧曲線とを形成して、前記減圧曲線における異なる2点のインピーダンス値の変化に基づき、又は前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値と同一の2点におけるインピーダンス値の変化に基づきインピーダンス変化量を求めるインピーダンス変化量算出部と、
前記減圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第1の時間変化量を求め、前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第2の時間変化量を求める時間変化量算出部と、
前記インピーダンス変化量と前記第1の時間変化量と前記第2の時間変化量とから、前記減圧曲線の傾きを示す減圧圧力勾配と前記加圧曲線の傾きを示す加圧圧力勾配との比率である圧力勾配比を求める圧力勾配比算出部と、を備え、
前記リーク量算出部は、
前記圧力勾配比から前記電子部品の内部圧力を求め、当該内部圧力と経過時間から前記電子部品からリークする気体のリーク量を求める、
請求項7に記載のリーク検査装置。
【請求項9】
前記第1の検査空間と前記第2の検査空間は、同一の検査空間であり、当該検査空間は、同一の検査室内に形成され、前記減圧手段と前記加圧手段は、前記検査室に接続された、
請求項7又は8に記載のリーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を封入した電子部品のリーク量を算出してリークを検査するリーク検査方法及びリーク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子をパッケージ内に封入した小型の電子部品は、回路の性能を維持するために、パッケージ内部を真空にして、又はパッケージ内に不活性ガスを注入して、密封封止されている。そして、確実に密封封止されて漏れ(リーク)が生じていないことを、リーク検査により確認している。リーク検査には、大きなリークを検査するグロスリーク検査と、小さなリークを検査するファインリーク検査との2つの検査がある。
【0003】
グロスリーク検査は、例えば、パッケージを湯の中に沈めて内部を膨脹させ、封止が充分でない場合は、膨脹した空気が気泡となって漏れ出るのを目視で確認するバブルリーク検査や、特許文献1に記載された二つの密封された容器内に漏れの無い基準物と漏れのある被検物を入れて加圧したときに、漏れのある被検物側の圧力が低下し、基準物と被検物との間に生じる圧力差を見ることで漏れを判定するエアリーク検査等である。ファインリーク検査は、例えば、ヘリウムガスが充填された検査容器内でパッケージを加圧して微少穴があれば微少穴からパッケージ内にヘリウムガスが圧入され、次いで検査容器内を減圧してパッケージからリークするヘリウムガスを測定することで、微少穴の存在を確認する検査である。
【0004】
グロスリーク検査において、バブルリーク検査は目視で確認するので信頼性に欠け、エアリーク検査でも微小リークを検出できないという問題がある。ファインリーク検査であるヘリウムリーク検査は、リーク検出感度が高いという利点があるが、ヘリウムガスを用いて実施するので時間がかかるという問題や、リーク穴が大きい場合に検出不可であるためグロスリーク検査機との併用が必須という欠点がある。また、処理時間短縮のためには複数同時処理が必須であり、検査対象の電子部品を個別にリーク判定することが難しい。例えば、多数個同時にヘリウムリーク検査を行い、不良があった場合、これを幾つかのグループに分けて、再びグループ毎にヘリウムリーク検査を行う。リークの見つかったグループをさらにグループ分けし、ヘリウムリーク検査を行い、この再検査を繰り返すことで、リークしている電子部品を見つけ出す。再検査の間は新たにヘリウムを充填することはせずに行うため、リーク量によってはヘリウムが抜けてしまい不良品を特定しきれないことがあり、不良混入グループとして良品とともに廃棄することになる。さらに、グロスリーク検査とファインリーク検査を1台で実施するには大型の専用装置が必要となる。
【0005】
一方で、圧電素子のインピーダンスの変化を利用したリーク検査をすることがある。この検査は、圧電素子のインピーダンスが圧力により変化することを利用した検査方法である。例えば、特許文献2に開示されたように、圧電素子を検査室に配置して大気圧から減圧し、減圧により圧電素子のインピーダンスの変化がなければリークが無いと判断され、インピーダンスの変化があればリークが有ると判断される。特許文献3は、電子部品を大気圧から加圧し、インピーダンス変化量が設定値以上の場合に気密性不良と判別する。特許文献4は、気密封止室と検査室を連続して並んで設け、真空封止後の真空雰囲気におけるクリスタルインピーダンス(以下、「CI値」という。)と、加圧雰囲気の検査室におけるCI値を比較してリークを検査するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭49-59692号公報
【文献】特開平11-51802号公報
【文献】国際公開第2008/038383号
【文献】特開2012-257152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2又は特許文献3に開示されたリーク検査方法を、リーク検査として使用した場合は、リークの有無は検査できるが、リーク量は適確に測定することができない。真空封止後の圧電素子を大気解放した場合、圧電素子のパッケージ内部はリーク穴を介して徐々に圧力が上昇する。リーク量が極微小である場合、パッケージ内部圧力と外部圧力が等しくなるまでに十分長い時間を要するため、リーク検査開始時にパッケージ内部圧力と外部圧力が一致していないことが多い。真空封止後の圧電素子を大気解放した圧電素子を特許文献2又は特許文献3の手法によりリーク検査する場合は、パッケージ内部圧力の初期値が不明であり、リーク量を算出することができない。圧電素子のリーク検査を繰り返す場合も、排気又は加圧の履歴によって再測定では測定開始時の内部圧力が異なるためCI値変化量が異なり、CI値変化量からリーク量を算出できない。
【0008】
特許文献4は、真空封止後に大気解放せずCI値を測定するため、既知のパッケージ内部圧力にて測定したCI値を基準とすることができ、パッケージ内部圧力の初期値が正確に取得できるためCI値変化量からリーク量を算出することが可能である。しかし、真空封止からリーク検査までの真空保持が必要となり、真空封止装置と検査装置を真空槽で連結するため、装置が大型化するという問題がある。また、封止装置と検査装置を連結するためには圧電素子の収容トレイを共通化するか別途移載機を設ける必要があり、既存の真空封止装置に検査装置を連結することは容易ではない。さらに、装置不具合により真空中でのCI値測定ができなかった圧電素子や出荷後の不良返却品等、一度大気圧下に取り出した後のリーク量測定、再測定は特許文献2又は特許文献3と同様にリーク量の算出が困難となる。
【0009】
リークの有無のみが分かる検査方法では、リークの有る電子部品は、不良品と判断される。しかし、リークがあっても、所定の許容値のリーク量であれば、電子部品の性能に大きな影響はない。リーク量が算出できれば、リーク量の許容値が判断でき、それにより、製品の歩留まりも向上するので、リーク量を算出することは重要である。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電子部品のリークの有無のみならず、電子部品のリーク量も算出できるリーク検査方法、及び小型で既存装置への組込みが容易であり設計自由度の高いリーク検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係るリーク検査方法は、
圧電素子が封止された電子部品のリーク量を算出するリーク検査方法であって、
前記電子部品の内部圧力より低い圧力の雰囲気下に前記電子部品を第1の所定時間配置し、前記圧電素子の第1のインピーダンスの変化を取得し、前記電子部品の内部圧力より高い圧力の雰囲気下に前記電子部品を第2の所定時間配置し、前記圧電素子の第2のインピーダンスの変化を取得するインピーダンス変化取得工程と、
前記第1のインピーダンスの変化と前記第2のインピーダンスの変化から前記電子部品からリークする気体のリーク量を算出するリーク量算出工程と、を備える。
【0012】
前記第1のインピーダンスの変化は、前記第1のインピーダンスの変化を勾配により示した第1の勾配であり、
前記第2のインピーダンスの変化は、前記第2のインピーダンスの変化を勾配により示した第2の勾配であり、
前記第1の勾配と前記第2の勾配から、前記電子部品のリーク量を算出してもよい。
【0013】
前記第1の所定時間の単位時間当たりの時間とインピーダンスの変化との関係性を求め、又は前記第2の所定時間の単位時間当たりの時間とインピーダンスの変化との関係性を求め、求めた前記関係性から前記電子部品のリーク量を算出してもよい。
【0014】
前記インピーダンス変化取得工程は、
前記第1のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される減圧曲線と、前記第2のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される加圧曲線とを形成して、前記減圧曲線における異なる2点のインピーダンス値の変化に基づき、又は前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値と同一の2点におけるインピーダンス値の変化に基づきインピーダンス変化量(ΔZ)を求めるインピーダンス変化量算出工程と、
前記減圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第1の時間変化量(Δtd)を求め、前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第2の時間変化量(Δtu)を求める時間変化量算出工程と、
前記インピーダンス変化量(ΔZ)と前記第1の時間変化量(Δtd)と前記第2の時間変化量(Δtu)とから、前記減圧曲線の傾きを示す減圧圧力勾配と前記加圧曲線の傾きを示す加圧圧力勾配との比率である圧力勾配比(γ)を求める圧力勾配比算出工程と、を備え、
前記リーク量算出工程は、
前記圧力勾配比(γ)から前記電子部品の内部圧力(Ps)を求め、当該内部圧力(Ps)と経過時間から前記電子部品からリークする気体のリーク量(Q)を求めてもよい。
【0015】
前記減圧曲線において、インピーダンス値は、前記2点のインピーダンス値であるZxからZsへ変化し、時間は、Zxに対応する第1の時間からZsに対応する第2の時間まで変化し、
前記加圧曲線において、インピーダンス値は、前記2点のインピーダンス値であるZsからZxへ変化し、時間は、Zsに対応する第3の時間からZxに対応する第4の時間まで変化し、
前記第2の時間と前記第3の時間は、同一の時間であってもよい。
【0016】
前記圧力勾配比(γ)は、
γ=(ΔZ/Δtd)/(ΔZ/Δtu)により算出され、
(ΔZは、前記インピーダンス変化量、Δtdは、前記第1の時間変化量、Δtuは、前記第2の時間変化量)
前記内部圧力(Ps)は、
Ps=(γPh+Pl)/(γ+1)により算出され、
(Phは、加圧時の圧力値、Plは減圧時の圧力値)
前記リーク量(Q)は、
Q=-VΔP・Patm/(Ps-Pl)Δt又は
Q=VΔP・Patm/(Ph-Ps)Δtにより算出されてもよい。
(Vは、前記圧電素子の内容積、Patmは大気圧、Δtは経過時間)
【0017】
本発明の第2の観点に係るリーク検査装置は、
圧電素子が封止された電子部品のリーク量を算出するリーク検査装置であって、
前記電子部品が配置される第1の検査空間を減圧する減圧手段と、
前記電子部品が配置される第2の検査空間を加圧する加圧手段と、
前記第1と第2の検査空間内に配置された前記電子部品の前記圧電素子のインピーダンスを測定して、インピーダンスの変化を取得するインピーダンス変化取得部であって、前記減圧手段により減圧した前記第1の検査空間内に前記電子部品を第1の所定時間配置したのち前記圧電素子のインピーダンスを測定し第1のインピーダンスの変化を取得し、前記加圧手段により加圧した前記第2の検査空間内に前記電子部品を第2の所定時間配置したのち前記圧電素子のインピーダンスを測定し第2のインピーダンスの変化を取得するインピーダンス変化取得部と、
前記インピーダンス変化取得部により取得された前記第1のインピーダンスの変化と前記第2のインピーダンスの変化から前記電子部品からリークする気体のリーク量を求めるリーク量算出部と、を備える。
【0018】
前記インピーダンス変化取得部は、
前記第1のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される減圧曲線と、前記第2のインピーダンスの変化と時間との関係から形成される加圧曲線とを形成して、前記減圧曲線における異なる2点のインピーダンス値の変化に基づき、又は前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値と同一の2点におけるインピーダンス値の変化に基づきインピーダンス変化量を求めるインピーダンス変化量算出部と、
前記減圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第1の時間変化量を求め、前記加圧曲線における前記2点のインピーダンス値に対応する時間に基づいて第2の時間変化量を求める時間変化量算出部と、
前記インピーダンス変化量と前記第1の時間変化量と前記第2の時間変化量とから、前記減圧曲線の傾きを示す減圧圧力勾配と前記加圧曲線の傾きを示す加圧圧力勾配との比率である圧力勾配比を求める圧力勾配比算出部と、を備え、
前記リーク量算出部は、
前記圧力勾配比から前記電子部品の内部圧力を求め、当該内部圧力と経過時間から前記電子部品からリークする気体のリーク量を求めてもよい。
【0019】
前記第1の検査空間と前記第2の検査空間は、同一の検査空間であり、当該検査空間は、同一の検査室内に形成され、前記減圧手段と前記加圧手段は、前記検査室に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電子部品のリークの有無のみならず、電子部品のリーク量も算出できるリーク検査方法、及び小型で既存装置への組込みが容易であり設計自由度の高いリーク検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係るリーク量算出方法によりリーク量が算出される水晶振動子を示し、(a)は、蓋を外した水晶振動子の平面図、(b)は、(a)のA-A線で切断した断面図である。
【
図2】参考例における時間経過に伴う水晶振動子の外部の圧力変化を示す図である。
【
図3】参考例における放置時間に対応するリーク量とインピーダンス変化量の関係を示す図である。
【
図4】ヘリウムリーク検査における実リーク量とHe流量の測定値との関係を示す図である。
【
図5】水晶振動子のパッケージ内を一定期間減圧してから加圧した場合のパッケージ内の圧力変化を示す図である。
【
図6】水晶振動子のパッケージ内を一定期間加圧してから減圧した場合のパッケージ内の圧力変化を示す図である。
【
図7】本実施の形態にかかるリーク検査方法の原理を示す図である。
【
図8】水晶振動子のパッケージ内を減圧した後加圧したときの圧力変化と、時間変化と圧力変化量の比、時間変化とインピーダンス変化量の比、及び圧力勾配比と、の関係を示す図である。
【
図9】本実施の形態にかかるリーク検査方法の他の原理を示す図である。
【
図13】本実施の形態に係るリーク検査装置の使用例を示し、(a)は、本実施の形態に係るリーク検査装置を真空封止装置の後工程で使用した例を示す図であり、(b)は、比較例に係るリーク検査装置を真空封止装置の後工程で使用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るリーク検査装置及び測定方法の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であるが、これらの実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0023】
(水晶振動子の構造)
本発明の一実施の形態であるリーク検査方法及びリーク検査装置において使用される圧電素子について、水晶振動子を例として説明する。図面において上下左右方向を定めるが、これらの用語は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、本発明の実施の形態が実際に使用されるときの方向を限定するものではない。また、これらの用語によって特許請求の範囲に記載された技術的範囲が限定的に解釈させるべきでない。
【0024】
図1は、本実施の形態に係るリーク検査方法及び検査装置において使用される水晶振動子を示す図であり、(a)は水晶振動子の蓋を外した状態の上面図、(b)は(a)の水晶振動子の蓋がある状態でA-A線で切断した断面図である。
【0025】
水晶振動子1は、水晶片10と、水晶片10を収容するパッケージ20とを備える。パッケージ20は、ベース21と、ベース21の上面の開口を閉鎖する蓋22と、を備える。ベース21の上面の開口を蓋22で閉塞することで、検査空間である密閉空間が形成される。
【0026】
水晶片10の対向する両主面には、水晶片10に電圧を印加するための金属薄膜で形成された励振電極11a,11bが蒸着又はスパッタリングで成膜されている。励振電極11a,11bの一端部は、水晶片10の下面において、導電性接着剤13を介して後述するベース21の内部電極211c,211dに接続されている。導電性接着剤13として、例えばシリコン樹脂を母材とする接着剤を使用する。
【0027】
ベース21は、例えば、金属、セラミック、硝子、水晶、樹脂などの材料により形成され、
図1(b)に示すように、内部に水晶片10を挿入する空間を有し上部が開口する箱状の部材である。ベース21は、底部211と、底部211の周縁部から立設する壁部212を備える。底部211の下面には、外部の回路基板などと電気的に接続するための一対の外部電極211a,211bが取り付けられている。また、ベース21の内部の底面には、一対の内部電極211c,211dが取り付けられ、内部電極211cと励振電極11a、内部電極211dと励振電極11bが、導電性接着剤13を介して接続される。内部電極211c,211dと外部電極211a,211bは電気的に接続されており、励振電極11a,11bが内部電極211c,211dに接続されることにより、励振電極11a,11bと外部電極211a,211bはそれぞれ電気的に接続される。
【0028】
蓋22は、金属、セラミック、硝子、水晶、樹脂などの材料により形成された板状部材であり、ベース21の上部の開口を閉鎖して、密閉空間を形成する。ベース21の上面、すなわち壁部212の上面には、銀ロウ、金錫、ニッケルメッキなどの接合部材23が塗布される。接合部材23と蓋22とが加熱溶融接合されることにより、ベース21と蓋22とは接合されて、パッケージ20が気密封止される。
【0029】
水晶振動子1のパッケージ20内部は、現在の小型化された水晶振動子では真空下において密閉封止される。上述したとおり、電子部品の密閉状態が保持されているか否かを検査するために、電子部品にリークが有るか否かを検査する手法はあった。しかし、リークが有るか否かに加えて、リーク量がどのくらいかを認識することは製品の歩留まりを確保する上で重要である。
【0030】
本実施の形態で説明するリーク量算出方法の原理について、参考例と比較しつつ、説明する。本実施の形態のリーク量算出方法は、水晶振動子のインピーダンスが、水晶振動子と気体分子との摩擦により圧力とともに上昇するという特性を利用するものである。水晶振動子のインピーダンスは、分子流領域では圧力に比例して増加し、粘性流領域では、圧力の1/2乗に比例して増加する。したがって、インピーダンスの変化を測定することにより水晶振動子のパッケージ内部の圧力(以下、「内部圧力」という。)の変化がわかり、内部圧力の変化を認識することによりリークが発生していることを判断できる。
【0031】
(参考例の説明)
水晶振動子のインピーダンスの変化量からリークの有無を検査する方法として、例えば、水晶片をパッケージに真空封入したのち大気圧に取り出し、水晶のCI値を測定し、その後、パッケージを検査室に入れて減圧して再度CI値を計り、CI値の変化により、圧力変化を検知して、リークがあるか否かを判断する方法(以下「参考例1」という。)がある。また、水晶片をパッケージに真空封入したのち大気圧に取り出し、CI値を測定し、その後、パッケージを検査室に入れて加圧し再度CI値を計り、CI値の変化により、圧力変化を検知して、リークがあるか否かを判断する方法(以下「参考例2」という。)がある。この2つのリークの有無の検査方法(参考例1,参考例2)は、リークの有無は検査できても、リーク量は測定できない。
【0032】
参考例1、2がリーク量を測定できない理由を、参考例2を用いて説明する。
図2は、水晶片を入れたパッケージ内を真空にして封止した水晶振動子を、一定期間(t1)大気圧に放置した後、一定期間(Δt2)加圧してCI値を測定する場合のパッケージ外の圧力(気圧)と経過時間(t)との関係を示すグラフである。水晶振動子にリークがある場合、リーク穴の大きさは個体毎に異なるため、大気圧放置時間(t1)後の各水晶振動子内部圧力はそれぞれ異なる。各水晶振動子の測定順序に応じて大気圧放置時間(t1)が異なる場合も、各水晶振動子の加圧前の内部圧力の初期値は異なる。
【0033】
図3は、異なる放置時間に応じたリーク量(単位:Pam
2/s)とCI値の変化量(ΔZ:単位(Ω))の関係を示すグラフである。内容積Vが5E-12m
3のパッケージにおいて、2.5E+5Paの圧力で加圧した。放置時間(t1)は、10秒、60秒、180秒、600秒の4つのパターンを設定し、加圧時間(Δt2)は、120秒と同一である。放置時間(t1)が10秒及び60秒の場合、リーク量が増大するにつれてCI値も増大するが、リーク量が一定値を超えると減少に転じるピーク曲線を示し、CI値の変化量からリーク量が一意に定まらない。また、同一のリーク量であっても内部圧力初期値によりCI値の変化量(ΔZ)が異なる。CI値の変化量(ΔZ)を算出してもリーク量は測定することはできない。この状況は、参考例1も同様である。
【0034】
また、ファインリーク検査であるヘリウムリーク検査を用いても、リーク量を正確に測定することはできない。ヘリウムリーク検査は、検査対象である水晶振動子をボンビングと呼ばれる検査室内に入れて一定時間加圧する。加圧されることで、水晶振動子にリーク箇所があれば、リーク箇所から水晶振動子内部にヘリウムガスが侵入する。以下、検査室内を一定時間加圧して水晶振動子内部にヘリウムガスを侵入させる時間を、充填時間という。その後、検査室を減圧して検査室内を真空にすると、水晶振動子の内部に侵入したヘリウムガスが検査室内に放出されるので、ヘリウムディテクタにより水晶振動子から漏れでたヘリウムガスを測定することができる。
【0035】
ヘリウムリーク検査では、ヘリウムガスを水晶振動子に充填してからヘリウムディテクタで測定するまでの間、所定の放置時間があり、水晶振動子のリーク量が大きい領域では、この放置時間の間にヘリウムガスが水晶振動子から抜けるので、ヘリウムガスの流量が小さく測定されることがある。また、リーク量が小さい領域では、例えば60分くらいの充填時間では、ヘリウムガスが水晶振動子内に充分に充填されないため、ヘリウムガスの流量が小さく測定されることがある。リーク量が1/10になるとヘリウム充填量が1/10になるため、測定されるヘリウム流量は1/100となる。ヘリウムの流量は、リーク量の二乗で小さくなる。
【0036】
また、ヘリウムリーク検査において、再検査を行うと、ヘリウムガスの水晶振動子への再充填が必要となり、リーク量の少ない領域では、再充填のたびに再充填後のヘリウム圧力が高くなり、再検査のたびにヘリウムガス流量が大きく測定される。
【0037】
実リーク量とリーク量の理論値との関係を考察するために、ヘリウムガスが圧力0.5MPaで加圧されて封入された容器に水晶振動子を入れ、60分放置したのちに、ヘリウムガスのリーク量を測定した値を
図4に示す。尚、パッケージの内容積Vは1.E-10m
3である。当該測定では、充填後測定を開始するまでの時間を1分とし、測定後60分の再充填を開始するまでの時間を1分とした。
【0038】
図4に示すグラフは、リーク量の理論値、1回目の実リーク量、ヘリウムガスを再充填して測定した2回目の実リーク量、及びヘリウムガスを再充填して測定した5回目の実リーク量と、ヘリウム測定値(単位:Pa・m
3/s)との関係を示す。実リーク量は、JISに準じて、大気圧の乾燥空気における値(単位:Pa・m
3/s)を示す。リーク量の理論値とは、パッケージ内外のヘリウム圧力が等しくなるまで十分長い時間をかけてヘリウムガスの充填を行い、充填直後にパッケージ内部から漏れてくるヘリウムの量に相当する。水晶振動子のリーク部分のコンダクタンスは分子量比の平方根となるため、ヘリウムガスは空気の2.7倍のコンダクタンスがあり、5気圧のヘリウムガスをパッケージに充填した場合には、空気の13.5倍(2.7×5=13.5倍)の流量が測定される。したがって、ヘリウムのリーク量の理論値は、空気リーク量×2.7×5と表記できる。
【0039】
図4に示すグラフから分かるように、実リーク量がリーク量の理論値と重なり、精度良く測定できる実リーク量の範囲は、点線で囲んだ通り、極めて限定的な範囲のみである。このように、上述したCI値を用いたリーク検査又はヘリウムリーク検査を用いた場合には、リークの有無は判定できるが、リーク量までは正確に測定することができない。
【0040】
(本実施の形態のリーク量算出方法の原理)
本実施の形態のリーク量算出方法は、CI値(以下、インピーダンスともいう。)を用いたリーク検査法において、水晶振動子の内部圧力を推定することで、リーク量を算出できることを特徴とする。
【0041】
高真空中のCI値は、気体の圧力によらない水晶振動子固有のCI値(以下、「Z0値」という。)となり、気体の圧力によるCI値の変化量(ΔZ)との合計が、ある圧力でのCI値となる。しかし、このZ0値は、個々の水晶振動子によって異なる。一方で、高真空中又は大気圧中のCI値のように圧力が分かっていれば、CI値の変化量から圧力を換算することができるので、水晶振動子の内部圧力が分かれば、CI値の変化から圧力の変化を換算することができる。圧力の変化がわかれば、リーク量が算出できる。
【0042】
本出願人は、水晶振動子を減圧下に所定期間置いてから加圧する、又は水晶振動子を加圧下に所定期間置いてから減圧し、減圧時の圧力変化と加圧時の圧力変化の相違から内部圧力を求め、内部圧力からリーク量を導き出した。
【0043】
減圧時の圧力変化と加圧時の圧力変化との関係について、
図5、
図6を参照して説明する。
図5は、水晶振動子を一定時間減圧下に配置して水晶振動子のパッケージ内を排気(減圧)し、その後加圧した場合の水晶振動子のパッケージ内の圧力変化を示し、
図6は、水晶振動子を一定時間加圧下に配置して水晶振動子のパッケージ内を加圧し、その後減圧した場合の水晶振動子のパッケージ内の圧力変化を示す。
図5、
図6では、一定時間減圧又は加圧するときの「一定時間」を、7.5分、65分、200分の3つのパターンで計算した。
【0044】
図5、
図6に示すように、減圧時の圧力変化を示す圧力曲線(以下「減圧曲線」という。)の傾斜(勾配)と、加圧時の圧力変化を示す圧力曲線(以下「加圧曲線」という。)の傾斜(勾配)は、異なる。
図5に示すように排気時間が短くパッケージの内部圧力が高いときは、減圧曲線の傾きである圧力勾配は、加圧曲線の傾きである圧力勾配より大きい。排気時間が長くパッケージの内部圧力が低いときは、減圧曲線の圧力勾配は、加圧曲線の圧力勾配より小さい。
図6に示すように加圧時間が短くパッケージの内部圧力が低いときは、加圧曲線の傾きである圧力勾配は、減圧曲線の傾きである圧力勾配より大きい。加圧時間が長くパッケージの内部圧力が高いときは、加圧曲線の圧力勾配は、減圧曲線の圧力勾配より小さい。この特性に着目して、以下のように、水晶振動子の内部圧力を求めることができる。
【0045】
図7は、圧力P
lの減圧下の検査室に水晶振動子を所定時間(t
s1)放置し、水晶振動子のパッケージ内の圧力が圧力P
sとなった後、圧力P
hの加圧下の検査室に水晶振動子を所定時間放置したときのパッケージ内の圧力変化を示すグラフである。ここで、P
l、P
s、P
hは、P
l<P
s、P
h>P
sという関係にある。グラフの横軸は経過時間(t)を示し、縦軸は圧力(P)又はインピーダンス(Z)を示す。グラフには、所定期間減圧されて下降する減圧曲線aと、所定期間後に加圧されて上昇する加圧曲線bが示される。グラフの減圧曲線aと加圧曲線bの傾斜(勾配)を求めるために、減圧曲線aと加圧曲線bで同一の圧力値となる圧力値(P
x)と圧力値(P
s)との変化量を、減圧曲線aではΔP
dと定め、加圧曲線ではΔP
uと定める。ΔP
dとΔP
uは同一の値であり、代表値としてのΔPは、ΔP
d=ΔP
u=ΔPという関係になる。減圧曲線aにおいて、同一の圧力値(P
x)に対応する時間(t
x1)と同一の圧力値(P
s)に対応する時間(t
s1)との間の時間の変化量を、Δt
d(以下「第1の時間変化量」という。)と定め、加圧曲線bにおいて、同一の圧力値(P
x)に対応する時間(t
x2)と同一の圧力値(P
s)に対応する時間(t
s2)との間の時間の変化量を、Δt
u(以下「第2の時間変化量」という。)と定める。t
s1=t
s2となるようにし、t
s1において減圧から加圧に切り替えてもよい。
【0046】
減圧曲線aの傾きである減圧圧力勾配(ΔP/Δtd)は、以下の式1で示される。
ΔP/Δtd=-C(Ps-Pl)/V(式1)
加圧曲線bの傾きである加圧圧力勾配(ΔP/Δtu)は、以下の式2で示される。
ΔP/Δtu=C(Ph-Ps)/V(式2)
ここで、V(m3)は、水晶振動子のパッケージの内容積であり、C(m3/s)は、パッケージのリーク穴のコンダクタンスである。尚、減圧圧力勾配を第1の勾配、加圧圧力勾配を第2の勾配ともいう。
【0047】
減圧曲線aの減圧圧力勾配と加圧曲線bの加圧圧力勾配の比率(以下「圧力勾配比(γ)」という。)は、以下の式3で求められる。
γ=(ΔP/Δtd)/(ΔP/Δtu)(式3)
γ=(ΔP/Δtd)/(ΔP/Δtu)=(Ps-Pl)/(Ph-Ps)となり、水晶振動子の内部圧力(Ps)は、以下の式4で求められる。
Ps=(γPh+Pl)/(γ+1)(式4)
【0048】
ここで、Ph、Plは既知の値であり、圧力勾配比γを求めることにより内部圧力であるPsが求まり、リーク量Qが大気圧の流量として求まる。すなわち、式1、式2から、コンダクタンスCは、以下の式5及び式6で求められる。
C=-VΔP/(Ps-Pl)Δt(式5)
C=VΔP/(Ph-Ps)Δt(式6)
大気圧(Patm)での流量(Q)は、Q=CPatmなので、リーク量(Q)は、以下の式7又は式8で求められる。
Q=-VΔP・Patm/(Ps-Pl)Δt(式7)
Q=VΔP・Patm/(Ph-Ps)Δt(式8)
【0049】
圧力勾配比(γ)は、減圧時と加圧時のインピーダンスの変化の比として求めることができる。上述したとおり、水晶振動子のインピーダンスの変化は圧力変化に対応する。圧力勾配比(γ)は、式3から、γ=(ΔP/Δtd)/(ΔP/Δtu)であり、インピーダンスの変化量に置き換えると、以下の式9により求められる。
γ=(ΔZ/Δtd)/(ΔZ/Δtu)=(ΔZd/Δtd)/(ΔZu/Δtu)(式9)
ここで、ΔZdを第1のインピーダンス変化量といい、ΔZuを第2のインピーダンス変化量という。ΔZdとΔZuは、同一値であり、代表値としてΔZを用いて圧力勾配比(γ)は求められる。
【0050】
図8は、排気を途中で中断した後、加圧したときの水晶振動子のパッケージ内の圧力変化と、圧力勾配比γ=(P
s-P
l)/(P
h-P
s)、ΔP/Δtの比である(ΔP/Δt
d)/(ΔP/Δt
u)、及びΔZ/Δtの比の比である(ΔZ/Δt
d)/(ΔZ/Δt
u)との関係を示す。図に示すように、圧力勾配比γ、ΔP/Δtの比、及びΔZ/Δtの3つのグラフの曲線はほぼ一致しており、このグラフからもインピーダンス変化量(ΔZ)を算出することにより、圧力勾配比(γ)が求められることがわかる。
【0051】
したがって、水晶振動子のインピーダンスを測定することにより、式9により圧力勾配比(γ)が求められ、圧力勾配比(γ)が求められれば、式4より水晶振動子の内部圧力(Ps)が求められ、その結果、式7又は式8によりリーク量(Q)を算出することが可能になる。
【0052】
さらに、
図9に示すように、減圧-加圧-減圧・・・と複数回にわたり、処理を繰り返すと、複数の内部圧力(P
s)の値が求められることになる。複数の内部圧力(P
s)の値が求められることにより、リーク量算出の精度が向上する。複数の内部圧力(P
s)の値と時間と圧力の関係式が分かればインピーダンス変化量(ΔZ)と圧力変化量(ΔP)の関係が分からなくてもリーク量を求めることが可能である。
【0053】
また、所定圧力Pl(Pl<Ps)の雰囲気下に水晶振動子を配置して時間と内部圧力(Ps)の関係式を取得し、所定圧力Ph(Ph>Ps)の雰囲気下に水晶振動子を配置して時間と内部圧力(Ps)の関係式を取得し、複数の内部圧力(Ps)の値からリーク量(Q)を算出し、リーク量(Q)を平均化することや、条件に応じた重みづけでリーク量(Q)を算出することもできる。具体的には、減圧した後に加圧、又は加圧した後に減圧した場合の単位時間当たりのインピーダンス値を取得し、そのインピーダンス値に基づき減圧曲線と加圧曲線を取得することにより内部圧力(Ps)を求めることができる。例えば、減圧曲線及び加圧曲線のそれぞれからインピーダンス値が異なる任意の2点(Z1,Z2, Z1>Z2)を選択し、減圧曲線におけるZ1からZ2に変化するまでの時間Δtdと、加圧曲線におけるZ2からZ1に変化するまでの時間Δtuを算出し、圧力勾配比(γ)からインピーダンス値がZ2であるときの内部圧力を求める。単位時間あたりのインピーダンス値を取得しておけば、前記任意の2点を自由に設定することができるため、時間と内部圧力(Ps)との関係性がわかることにより、継続的にリーク量の算出をすることが可能となり、きめ細かい制御が可能になる。
【0054】
(リーク検査装置)
次に、リーク検査装置について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、リーク検査装置の概念図であり、実際の装置の寸法とは相違する。また、紙面での上下左右方向を、「上」「下」「左」「右」と規定するが、説明のためのものであり、本発明の実施の形態が実際に使用されるときの方向を限定するものではない。
【0055】
リーク検査装置300は、水晶振動子1を搭載するステージ301と、水晶振動子1の共振周波数及びインピーダンスを測定するためのコンタクトプローブ302と、コンタクトプローブ302を保持して、上下動するコンタクトブロック303と、水晶振動子1のインピーダンスを測定する測定部304と、ステージ301とコンタクトブロック303との間で形成される検査室400の内部空間を減圧する減圧手段305と、当該内部空間を加圧する加圧手段306と、検査室400内の圧力を計測する圧力計400aと、リーク検査装置300の全体の動作を制御する制御部307と、を備える。制御部307の構成については、後述する。
【0056】
水晶振動子1は、矩形状のトレイ14に収容され、トレイ14はステージ301上に載置される。トレイ14は、水晶振動子1を収容する複数の孔(図示せず)が形成されている。複数の孔は、トレイ14にマトリクス状に形成されている。
【0057】
ステージ301は、水晶振動子1を収容したトレイ14を、上面に載置する。ステージ301とコンタクトブロック303により形成される空間により検査室400が形成される。
【0058】
コンタクトプローブ302は、水晶振動子1の共振周波数及びインピーダンスを測定する部材であり、先端に一対のコンタクトピン302a,302bを備える。後述するコンタクトブロック303が上下動することにより、コンタクトピン302a,302bが水晶振動子1の外部電極211a,211bと接触し、電圧が印加されることにより、共振周波数及びインピーダンスが測定される。
【0059】
測定部304は、外部電極211a,211bから発信された信号を受信し、水晶振動子1のインピーダンスを測定する。測定部304は、例えば、ネットワークアナライザを使用する。測定部304は、後述する減圧手段305により減圧された検査室400内に水晶振動子1が所定時間配置されている間、及び後述する加圧手段306により検査室400が所定時間加圧されている間、水晶振動子1のインピーダンスを測定する。測定部304は、測定したインピーダンスの値を制御部307に送信する。
【0060】
コンタクトプローブ302は、図示しない昇降機構により、水晶振動子1に向かう前進方向又は離れる後退方向に移動される。本実施の形態では、コンタクトプローブ302は、図面において上下方向に移動する。コンタクトピン302a,302b又はコンタクトプローブ302には図示しないばねが内挿されている。コンタクトピン302a,302bがばねの弾性力で伸縮することにより、前進状態で、コンタクトピン302a,302bを水晶振動子1の外部電極211a,211bに加圧しながら接触させる。また、コンタクトブロック303は、後退することで、コンタクトピン302a,302bを、外部電極211a,211bから離接させる。
【0061】
コンタクトプローブ302の一対のコンタクトピン302a,302bと一対の外部電極211a,211bは、一対一で対応する。コンタクトプローブ302は、トレイ14にマトリクス状に配置された水晶振動子1の任意の一列と同一方向に配列され、一列に並べられた水晶振動子の数と同数の一対コンタクトピン302a,302bが配列される。コンタクトプローブ302は、マトリクス状に配列された水晶振動子1全てに接触するように設けてもよい。
【0062】
コンタクトブロック303の下面の周縁部には、パッキン308が取り付けられ、ステージ301との間の密閉性を強化する。コンタクトブロック303が、下降してステージ301と接触することにより、検査室400は密閉される。
【0063】
減圧手段305は、具体的には真空ポンプであり、真空ポンプの流路に設置されるゲートバルブ(図示せず)を開閉することにより、検査室400内を減圧する。
【0064】
加圧手段306は、所定の気圧の気体を検査室400内に送る装置である。本実施の形態では、例えば、圧縮された窒素ガスを加圧手段306から検査室400に導入する。本実施の形態では、加圧手段306は、所定期間、減圧手段305により減圧された検査室400内を加圧する。
【0065】
制御部307は、CPU、記憶装置等を有する。例えば、CPUが記憶装置に記憶されたプログラムを実行し、記憶装置に記憶されたデータに基づき各種の処理を行い、リーク検査装置300の全体の動作を制御する。
【0066】
制御部307は、
図11に示すように、インピーダンス変化量算出部309と、時間変化量算出部310と、圧力勾配比算出部311と、リーク量算出部312とを備える。なお、インピーダンス変化量算出部309と、時間変化量算出部310と、圧力勾配比算出部311とによりインピーダンス変化取得部を構成する。
【0067】
インピーダンス変化量算出部309は、測定部304により測定されたインピーダンスの値に基づき、インピーダンスの変化量を算出する。具体的には、インピーダンス変化量算出部309は、測定部304により測定されたインピーダンスの値に基づき、インピーダンスの変化と時間との関係から規定される減圧曲線と加圧曲線を形成する。そして、減圧曲線と加圧曲線において、インピーダンスの変化量を求める。
図7に示すように、インピーダンス変化量は、減圧曲線aと加圧曲線bにおいて、同一の2点のインピーダンス値(Z
x,Z
s)を定めて求める。減圧曲線aにおいて、任意のインピーダンス値(Z
x)と、減圧された検査室400に水晶振動子1を所定期間(t
s1)配置した時のインピーダンス値(Z
s)との間のインピーダンスの変化量を、第1のインピーダンス変化量(ΔZ
d)とする。また、加圧曲線bにおいて、検査室400に水晶振動子1を所定期間(t
s2)配置した時のインピーダンス値(Z
s)と任意のインピーダンス値(Z
x)との間のインピーダンスの変化量を、第2のインピーダンス変化量(ΔZ
u)とする。第1のインピーダンス変化量(ΔZ
d)と第2のインピーダンス変化量(ΔZ
u)は、同一値であるので、代表値をインピーダンス変化量(ΔZ)とする。
【0068】
インピーダンス変化量(ΔZ)は、理想的には、減圧曲線aと加圧曲線bにおいて、同一の2点のインピーダンス値(Zx)(Zs)を基準として求めるが、減圧曲線aと加圧曲線bにおいて、同一でない2点のインピーダンス値に基づいて定めてもよい。減圧曲線aと加圧曲線bにおいて、対応する2つのインピーダンス値が近い値であるときには、2つの値を近似させて、同一のインピーダンス値(Zx)又は(Zs)として、基準のインピーダンス値とする。また、対応する2つのインピーダンス値が遠い値であるときには、別に用意した換算式を使用して、同一のインピーダンス値(Zx)又は(Zs)を求め、基準のインピーダンス値とする。
【0069】
時間変化量算出部310は、インピーダンス変化量(ΔZ)に対応する時間の変化を算出する。時間変化量算出部310は、減圧曲線aにおいて、2点のインピーダンス値(Zx,Zs)に対応する第1の時間(tx1)と第2の時間(ts1)との間の時間の変化量を第1の時間変化量(Δtd)と定め、加圧曲線bにおいて、2点のインピーダンス値(Zx,Zs)に対応する第3の時間(t
s2)と第4の時間(t
x2)との間の時間の変化量を第2の時間変化量(Δtu)と定める。
【0070】
2点のインピーダンス値に対応する時間において、第2の時間ts1と第3の時間ts2は、同一の時間であってもよい。同一の時間をtsとすると、tx1,ts,tx2の3つの値を用いて、第1の時間変化量(Δtd)と第2の時間変化量(Δtu)を求めることができるので、処理を速めることができる。
【0071】
圧力勾配比算出部311は、インピーダンス変化量(ΔZ)と、第1の時間変化量(Δtd)と、第2の時間変化量(Δtu)から、式9により圧力勾配比(γ)を求める。
【0072】
リーク量算出部312は、圧力勾配比(γ)から水晶振動子1の内部圧力(Ps)を式4から求め、求められた内部圧力(Ps)と経過時間(Δt)から、式7又は式8により水晶振動子1からリークする気体のリーク量を求める。
【0073】
(リーク量の算出方法)
リーク検査装置300を使用して、リーク量を算出する方法を、
図12のフローチャートに参照して説明する。
【0074】
図10に示すリーク検査装置300の検査室400内に、複数の水晶振動子1が載置されたトレイ14を搬入してステージ301に搭載する。続いてコンタクトブロック303を下降させて、コンタクトブロック303の周縁部をステージ301の上面に密着させ、コンタクトブロック303とステージ301との間に密閉空間を形成する。そして、コンタクトプローブ302のコンタクトピン302a、302bを下降させて、水晶振動子1の外部電極211a、211bに接触させて、リーク量の算出を開始する。
【0075】
まず、検査室400内を減圧手段305により減圧し、第1の所定時間、水晶振動子1を検査室400内に配置する。その後、加圧手段306により検査室400内を加圧し、第2の所定時間水晶振動子1を配置する。検査室400内の圧力は圧力計400aによりモニタする。測定部304は、第1の所定時間及び第2の所定時間の間、水晶振動子1のインピーダンスを測定する(ステップS101)。
【0076】
そして、インピーダンス変化量算出部309は、測定されたインピーダンスに基づき、減圧曲線aと加圧曲線bを形成して、第1のインピーダンス変化量(ΔZd)と第2のインピーダンス変化量(ΔZu)、すなわち、インピーダンスの変化量(ΔZ)を算出する(ステップS102)(インピーダンス変化量算出工程)。
【0077】
時間変化量算出部310は、インピーダンス変化量(ΔZ)から、第1の時間変化量(Δtd)及び第2の時間変化量(Δtu)を求め(時間変化量算出工程)、圧力勾配比算出部311は、式9により圧力勾配比(γ)を求める(ステップS103)(圧力勾配比算出工程)。尚、インピーダンス変化量算出工程と、時間変化量算出工程と、圧力勾配比算出工程とにより、インピーダンス変化取得工程を構成する。
【0078】
リーク量算出部312は、圧力勾配比算出部311により求められた圧力勾配比(γ)に基づいて、式4により、水晶振動子1の内部圧力(Ps)を算出し(ステップS104)、内部圧力(Ps)に基づいて、式7又は式8により、リーク量(Q)を算出する(ステップS105)(リーク量算出工程)。
【0079】
(リーク検査装置の使用例)
次に、本実施の形態に係るリーク検査装置の使用例について、説明する。電子部品、例えば水晶振動子を製造する場合に本実施の形態に係るリーク検査装置は、例えば、水晶振動子を真空封止した後に使用する。本実施の形態に係るリーク検査装置を、真空封止工程の後に使用する場合の特徴について、比較例を示しながら説明する。
【0080】
図13に、真空封止装置の後工程にリーク検査装置を設置する場合の使用例を示す。
図13(a)は本実施の形態のリーク検査装置を真空封止装置に連結した状態を示す図であり、
図13(b)は比較例のリーク検査装置を真空封止装置に連結した状態を示す図である。図では、真空封止装置とリーク検査装置の連結した状態のみを示し、真空封止装置の前工程は示していない。
【0081】
比較例では、
図13(b)に示すように、真空封止装置500とリーク検査装置503とが、取出室501と、真空槽502を介して連結されている。真空封止装置500は、図示しない排気手段を備え、排気手段により形成された真空雰囲気の中を、複数の水晶振動子1を搭載した搬送トレイ504を搬送させながら、水晶振動子1の真空封止を実行する。真空封止装置500は、水晶振動子1を加熱及び加圧する加熱加圧装置505と、水晶振動子1を冷却する冷却装置506を備える。水晶振動子1は、ベース21と蓋22との間に接合部材23を塗布した状態で、加熱加圧装置505内で加熱加圧部材に挟みこまれて加熱加圧され、ベース21と蓋22とが接合され、(水晶振動子1の具体的構造は、
図1(a)(b)を参照。)水晶振動子1のパッケージ20が密閉封止される。その後、搬送トレイ504は冷却装置506に送られ、水晶振動子1は冷却される。
【0082】
真空槽502は、図示しない排気手段と移載部を備え、真空雰囲気の中で、真空封止装置500から取出室501を介して搬送された水晶振動子1は、搬送トレイ504から検査トレイ507に移し替えられる。シーム溶接の場合は水晶振動子1を反転する。なお、搬送トレイ504及び検査トレイ507に搭載された水晶振動子1は、移動中に搬送トレイ504及び検査トレイ507においてずれないように、ワーク押さえ508により押さえ込まれる。
【0083】
水晶振動子1が搭載された検査トレイ507は、真空槽502の移載部から、リーク検査装置503に搬入される。真空槽502は、図示しない排気手段を備え、排気手段により排気され真空雰囲気を保持している。
【0084】
リーク検査装置503は、リーク検査部503aと、リーク検査部503aを収容する収容部503bとを備える。収容部503bには、図示しない排気手段と加圧手段が取り付けられている。排気手段により収容部503b内部は真空雰囲気とされ、真空槽502から検査トレイ507に載せられた水晶振動子1は、リーク検査装置503に搬入される。加圧手段により収容部503b内が加圧されたのち、リーク検査部503aにより水晶振動子1のCI値が測定される。検査が完了した検査トレイ507はリーク検査装置503から搬出される。
【0085】
比較例においては、真空封止装置500で真空封止された水晶振動子1の内部圧力を保って、リーク検査部503bで検査する必要がある。そのため、真空槽502が必要となるとともに、真空雰囲気を保つためリーク検査装置503の容量が大きくなる。リーク検査装置503は、例えば、50リットルの容量を必要とする。また、リーク検査装置503の容量が大きいので、リーク検査装置503での排気及び加圧に時間を要しタクトタイムが延長する。
【0086】
また、真空槽502を配置する必要があるため、真空封止装置500とリーク検査装置503との連結構造が複雑化し大型化する。既存の真空封止装置500に、あとからリーク検査装置503を増設する場合、真空封止装置500には真空で連結できるような設計がされていないため、リーク検査装置503との間を真空で保持できるようにすることは容易でなく、大幅な改造を余儀なくされることもある。
【0087】
一方、本実施の形態に係るリーク検査装置300を既存の真空封止装置500に接続した場合を、
図13(a)に示す。真空封止装置500の構成は、比較例と同様であり、真空封止装置500は、加熱加圧装置505と冷却装置506を備える。加熱加圧装置505により水晶振動子1のパッケージ20を真空封止する方法も、比較例と同様であり、説明は省略する。
【0088】
気密封止された水晶振動子1を収容する搬送トレイ504は、比較例と同様に真空封止装置500から取出室501に搬入される。そして、搬送トレイ504は、取出室501から搬出され、大気圧雰囲気下で水晶振動子1は搬送トレイ504から検査トレイ507に載せ替えられる。必要な場合には、検査トレイ507は反転される。検査トレイ507は、リーク検査装置300に搬入され、リーク検査をした後、リーク検査装置300から搬出される。
【0089】
本実施の形態のリーク検査装置300は、比較例のリーク検査部503aに相当するが、真空雰囲気内に配置する必要がない。したがって、リーク検査部503aに相当するリーク検査装置300の内部のみを真空排気及び加圧すればよい。具体的には、検査トレイ507の周囲の微小空間、例えば40ミリリットルの容量の検査室内を真空排気及び加圧すればよく、排気手段及び加圧手段の小型化が可能である。リーク検査装置300の内部容量が小さいため、排気及び加圧の時間が短く、タクトタイムが短縮する。リーク検査装置300は、小型かつ低コストで、グロスリークとファインリークを一台で個別判定することができる。
【0090】
さらに、大気圧雰囲気で検査トレイ507への移載を行うため、設計自由度が高く、既存の真空封止装置500に容易に連結することができる。また、比較例のように真空槽502、収容部503bは不要であり、真空封止装置500とリーク検査装置300との連結構造をコンパクトで、簡単にすることができる。さらに、真空雰囲気下でのCI値を基準として大気圧以上に加圧してCI値を測定するため、CI値の変化量が大きく、リーク量を高精度に算出することができる。
【0091】
本実施の形態によれば、リークの有無のみならず、リーク量も算出できるので、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0092】
本実施の形態によれば、内部圧力より高い圧力下での水晶振動子1のインピーダンスの変化と、内部圧力より低い圧力下での水晶振動子1のインピーダンスの変化からリーク量を算出できるので、簡易な方法で適切にリーク量を得ることができる。
【0093】
本実施の形態によれば、水晶振動子1のインピーダンスの変化を勾配とみなし、勾配の変化からリーク量を求めることができるので、既存の測定器、例えば、ネットワークアナライザにより容易にリーク量が算出することができる。
【0094】
本実施の形態によれば、単位時間当たりの時間とインピーダンスの変化量から容易にリーク量を算出することができ、適切なリーク検査を実行することができる。
【0095】
本実施の形態によれば、検査装置を、大リークを検査するグロスリーク検査、小リークを検査するファインリーク検査の双方の検査に適用することができるので、検査装置を簡素化することができる。
【0096】
本実施の形態によれば、水晶振動子1を減圧及び加圧雰囲気下に所定時間(ts)放置することでリーク量を算出できるので、ヘリウムリーク検査のように時間をかけずに、リーク量を測定することができる。
【0097】
本実施の形態によれば、検査前の排気時間又は大気放置時間が相違する等リーク検査前の履歴が不明である場合も、リーク量を計算することができる。
【0098】
本実施の形態によれば、一つの検査室400に、減圧手段305と加圧手段306を接続したので、減圧と加圧を別々の検査室で行う必要がなく、装置がコンパクトになる。
【0099】
本実施の形態によれば、同一の検査室400で減圧と加圧を行い、連続してインピーダンスを測定するので、コンタクトピン302a,302bの位置がずれたり、コンタクトピン302a,302bのストロークが変化する等によりCI値に影響を与えることもない。
【0100】
本実施の形態では、減圧手段305と加圧手段306は、同一の検査室400に取り付けられているが、別々の検査室に取り付けてもよい。
【0101】
本実施の形態では、コンタクトブロック303が昇降して、コンタクトピン302a,302bが外部電極211a,211bに離接すると説明したが、ステージ301が昇降してもよい。
【0102】
本実施の形態では、減圧してから加圧してリーク量を算出する方法を説明したが、逆のパターンである加圧してから減圧してリーク量を算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、電子部品のリーク検査方法及びリーク検査装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 水晶振動子
10 水晶片
11a,11b 励振電極
13 導電性接着剤
14 トレイ
20 パッケージ
21 ベース
211 底部
211a,211b 外部電極
211c,211d 内部電極
212 壁部
22 蓋
23 接合部材
300 リーク検査装置
301 ステージ
302 コンタクトプローブ
302a,302b コンタクトピン
303 コンタクトブロック
304 測定部
305 減圧手段
306 加圧手段
307 制御部
308 パッキン
309 インピーダンス変化量算出部
310 時間変化量算出部
311 圧力勾配比算出部
312 リーク量算出部
400 検査室
400a 圧力計
500 真空封止装置
501 取出室
502 真空槽
503 リーク検査装置
503a リーク検査部
503b 収容部
504 搬送トレイ
505 加熱加圧装置
506 冷却装置
507 検査トレイ
508 ワーク押さえ