IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三谷バルブの特許一覧

特許7470374容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品
<>
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図1
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図2
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図3
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図4
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図5
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図6
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図7
  • 特許-容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】容器本体内容物の放出操作ロック構造およびこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/22 20060101AFI20240411BHJP
   B65D 83/16 20060101ALI20240411BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B65D83/22 220
B65D83/16
B05B9/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020043801
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021091469
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019217160
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】川島 直人
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132457(JP,A)
【文献】特開平11-278566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0138176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/22
B65D 83/16
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の内容物の放出操作部に対する内容物放出操作とは独立した別の起立操作により、内容物放出操作阻止のロックモードまたは内容物放出操作可のロック解除モードが選択的に設定される内容物放出操作ロック構造において、
前記放出操作部は、
前記起立操作の対象となる被起立部分と、
前記被起立部分に連続するアーム状基部と、
前記内容物放出操作により内容物が通過するステム側の中間通路部に結合する放出通路部と、を備え、
前記被起立部分は、
前記ロックモードのとき、その一部が容器本体側部分に当接して起立状態に保持され、
前記容器本体側部分は、
前記容器本体に取り付けられたマウンティングカップの一部である、
ことを特徴とする内容物放出操作ロック構造。
【請求項2】
前記被起立部分は、
前記起立操作の際に少なくとも前記中間通路部を回避するための前後方向の端側開口部を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出操作ロック構造。
【請求項3】
前記放出操作部は、
前記起立状態の全体形状がスライド金型の使用なしの状態で金型成形された単一部材である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内容物放出操作ロック構造。
【請求項4】
容器本体の内容物の放出操作部に対する内容物放出操作とは独立した別の起立操作により、内容物放出操作阻止のロックモードまたは内容物放出操作可のロック解除モードが選択的に設定される内容物放出操作ロック構造において、
前記放出操作部は、
前記起立操作の対象となる被起立部分と、
前記被起立部分に連続するアーム状基部と、
前記内容物放出操作により内容物が通過するステム側の中間通路部に結合する放出通路部と、を備え、
前記被起立部分は、
前記ロックモードのとき、その一部が容器本体側部分に当接して起立状態に保持され、
前記容器本体側部分は、
前記容器本体に取り付けられたマウンティングカップに対する嵌合部の一部に外向き態様で形成された延出部である、
ことを特徴とする内容物放出操作ロック構造。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の内容物放出操作ロック構造を備え、かつ、前記容器本体に噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内容物の放出操作ロック構造に関する。
特に内容物放出およびロック(内容物放出阻止)用の操作部に対する、通常の内容物放出操作とは別の起立操作により、内容物の放出操作阻止のロックモードおよび放出操作可のロック解除・静止モードを選択的に設定できる放出操作ロック構造に関する。
【0002】
ここでは容器本体内容物の放出操作部に対するいわば汎用的な回動,押下げなどの内容物放出操作(下動操作)とは異なる起立操作により、内容物放出操作阻止のロックモードを設定している。起立操作にともない放出操作部は起立状態に設定・保持される。
【0003】
この起立状態の放出操作部を倒して元の状態に戻すことによりロックモードは解除され、内容物放出操作が可能な静止モードに復帰する。
【0004】
そしてロック解除・静止モードの放出操作部の下動操作などにより、エアゾール式製品は周知の内容物放出状態の作動モードに移行する。
【0005】
また、放出操作部の起立状態における全体形状を、その起立態様で、スライドコア・割り溝構造なしの金型により成形している(図5参照)。
【0006】
本明細書では、放出操作部の操作面側を「後」、それとはステム回りの180度反対側を「前」と記し、この前後方向と直交する方向を「横」と記す。
図3の左側,図5の下側および図6の左斜め下がり側などが「前」で、図3の右側,図5の上側および図6の右斜め上がり側などが「後」、図5の左右方向が「横」となる。また、ロック解除・静止モードを必要に応じて「ロック解除モード」と略記する。
【背景技術】
【0007】
本件出願人は、内容物放出操作部(押下げボタン)を前後方向へスライドさせることにより、内容物放出操作が阻止されるロックモードと、これが許容されるロック解除・静止モードとを選択する内容物放出操作ロック構造を提案済みである(特許文献1参照)。
【0008】
ロックモードでは、押下げボタンをその保護部のワンタッチキャップ(カバー体)に係合保持することにより、利用者の内容物放出操作を阻止している。
【0009】
そしてロックモードの押下げボタンを後方へスライドさせるといった簡単な操作により、ロックモードが解除されて、内容物放出操作可能なロック解除・静止モードへと移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-48132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように提案済みの内容物放出操作ロック構造は、放出操作部の押下げボタンを、そのカバー体に対して単に前後方向にスライドさせることにより、ロックモードとロック解除・静止モードとが選択的に設定される、という利便性を備えたものである。
【0012】
本発明は、操作対象の操作片部などの放出操作部を、このようにスライドさせるのではなくその起立状態に保持し、また起立状態から元の位置態様に戻すことにより、ロックモードおよびロック解除・静止モードを選択するといった新たな着想に基づいている。
【0013】
なお、操作片部は放出操作部の構成要素(被起立部分)であって、操作片部の起立状態とは放出操作部としての起立状態ともいえる。
【0014】
この操作片部への起立操作に基づく内容物放出操作ロック構造は、ロックモードのとき、放出操作部が起立状態に設定されているので、利用者にとって内容物放出操作の「可/不可」を簡単・瞬時に判断できる。
【0015】
この起立状態の操作片部(被起立部分)は、マウンティングカップ上面の環凹状部(図4参照)やマウンティングカップとの嵌合部材の上面凹状部(図7参照)に当接保持される。
【0016】
すなわち操作片部は、それが起立状態のロックモードのとき、例えば上述のマウンティングカップ上面の環凹状部や、マウンティングカップへの嵌合部(例えば後述のC字状嵌合部)の上面凹状部などの、容器本体側部分に保持される。
【0017】
金型による放出操作部全体の成形に際してその起立状態の全体形状をスライド金型の使用なしの態様で作成している。
【0018】
本発明は、このような構成にともない、
(11)内容物放出操作阻止のロックモードを設定するに際しての技術の豊富化を図り、
(12)放出操作部(操作片部)の起立設定・倒伏復帰というロックモード,静止モードそれぞれでの明確な外観形状の違いによる、内容物放出操作の「可/不可」の認識のしやすさといった利用者使用上の利便化を図り、
(13)放出操作部の金型成形に際しての簡単化・コストダウン化を図る、
ことなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)容器本体(例えば後述の容器本体1)の内容物の放出操作部(例えば後述の放出操作部5)に対する内容物放出操作とは独立した別の起立操作により、内容物放出操作阻止のロックモードまたは内容物放出操作可のロック解除モードが選択的に設定される内容物放出操作ロック構造において、
前記放出操作部は、
前記起立操作の対象となる被起立部分(例えば後述の操作片部8)と、
前記被起立部分に連続するアーム状基部(例えば後述のアーム状基部7)と、
前記内容物放出操作により内容物が通過するステム側の中間通路部(例えば後述の中間通路部4a)に結合する放出通路部(例えば後述の放出通路部7a)と、を備え、
前記被起立部分は、
前記ロックモードのとき、その一部が容器本体側部分(例えば後述のマウンティングカップ2)に当接して起立状態に保持され、
前記容器本体側部分は、
前記容器本体に取り付けられたマウンティングカップの一部である、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記被起立部分は、
前記起立操作の際に少なくとも前記中間通路部を回避するための前後方向の端側開口部(例えば後述の前端側開口部8a)を備えている、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記放出操作部は、
前記起立状態の全体形状がスライド金型の使用なしの状態で金型成形された単一部材である、
構成態様のものを用いる。
(4)容器本体(例えば後述の容器本体1)の内容物の放出操作部(例えば後述の放出操作部5)に対する内容物放出操作とは独立した別の起立操作により、内容物放出操作阻止のロックモードまたは内容物放出操作可のロック解除モードが選択的に設定される内容物放出操作ロック構造において、
前記放出操作部は、
前記起立操作の対象となる被起立部分(例えば後述の操作片部18)と、
前記被起立部分に連続するアーム状基部(例えば後述のアーム状基部17)と、
前記内容物放出操作により内容物が通過するステム側の中間通路部(例えば後述の中間通路部4a)に結合する放出通路部(例えば後述の放出通路部17a)と、を備え、
前記被起立部分は、
前記ロックモードのとき、その一部が容器本体側部分(例えば後述の上面凹状部16c)に当接して起立状態に保持され、
前記容器本体側部分は、
前記マウンティングカップに対する嵌合部の一部に外向き態様で形成された延出部である、
構成態様のものを用いる。
【0020】
このような構成からなる容器本体内容物の放出操作ロック構造、ならびにこの放出操作ロック構造を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上の構成をとることにより、
(21)内容物放出操作阻止に関する技術の豊富化を図り、
(22)内容物放出操作の「可/不可」を認識する上での利便化を図り、
(23)放出操作部の金型成形に際しての簡単化・コストダウン化を図る、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】マウンティングカップ(アンダーカット)と環状嵌合するタイプで、内容物放出操作が可能なロック解除・静止モード(その1)における放出操作部(放出操作ロック構造)全体などの斜視状態を示す説明図である。
図2図1の放出操作部(環状嵌合部6+アーム状基部7+操作片部8)の構成要素であって、内容物放出操作およびロック操作の対象となる操作片部の斜視状態を示す説明図である。
図3図1のロック解除・静止モード(その1)における放出操作部の断面状態を示す説明図である。
図4図1の操作片部がその起立状態に設定された内容物放出操作阻止のロックモード(その1)の斜視状態を示す説明図である。
図5図4の操作片部起立状態の平面視を示す、すなわち内容物放出操作部の金型成形に際して操作片部の起立状態の全体形状をスライド金型の使用なしに作成しえることを示す説明図である。
図6】マウンティングカップ(アンダーカット)とC字状嵌合するタイプで、内容物放出操作が可能なロック解除・静止モード(その2)における放出操作部(放出操作ロック構造)全体などの斜視状態を示す説明図である。
図7図6の操作片部がその起立状態に設定された内容物放出操作阻止のロックモード(その2)の斜視状態を示す説明図である。
図8図7の放出操作部(C字状嵌合部10+アーム状基部11+操作片部12)の斜視状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1乃至図8を用いて本発明の実施形態を説明する。
図示の実施形態は、
(31)図1図5の、
放出操作部をマウンティングカップのアンダーカットに環状嵌合させ、起立状態の操作片部をマウンティングカップ上面の環凹状部で保持し、これによりロックモードを設定する環状嵌合・環凹状部保持タイプの内容物放出操作ロック構造と、
(32)図6図8の、
放出操作部をマウンティングカップのアンダーカットにC字状嵌合させ、起立状態の操作片部を、マウンティングカップ上面の環凹状部ではなくこのC字状部分から外方へ延伸した外側上面凹状部(周方向上面凹状部)で保持し、これによりロックモードを設定するC字状嵌合・外側延伸上面保持タイプの内容物放出操作ロック構造と、
に大別される。
【0024】
なお、以下のアルファベット付き参照符号の構成要素(例えば放出通路部7a)は原則として、当該参照符号の数字部分の構成要素(例えばアーム状基部7)の一部であることを示している。
【0025】
図1図5の上記(31)タイプおよび図6図8の上記(32)タイプの各放出操作ロック構造に共通する参照記号は「1,1a,2,2a,3,4,4a,A,B,C」である。
【0026】
この図1図8の共通参照記号において、
1は後述の圧縮ガスおよび放出内容物が収容されたエアゾールタイプの容器本体,
1aは容器本体1の上側環状部分であって、下側から内向き上り傾斜態様に形成された環状肩部,
2は環状肩部1aの上端側の環状部にクリンチ加工で取り付けられた(容器本体側部分としての)周知のマウンティングカップ,
2aはマウンティングカップ2の上面凹状部分からなり後述の脚部分8bの前端・下端と当接して操作片部8をロックモードの起立状態に安定的に保持しえる環凹状部,
3は容器本体1の環状肩部1aとマウンティングカップ2との連結周回部分に形成される環凹状のアンダーカット,
4は周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用により上方に付勢されて、内容物放出操作にともない周知のステムガスケット(図示省略)との間の開閉動作に基づくバルブ作用を呈し、この開状態のとき容器本体1の内容物が通過して放出されるステム,
4aはステム4のいわば下流端部分を形成して後述の内容物の放出通路部7aと連通する中間通路部,
Aは例えば図1図3図6のロック解除・静止モードから図4図7図8のロックモードへ移行する際の操作片部8,18の回動操作方向,
Bは例えば図4図7図8のロックモードを解除して図1図3図6のロック解除・静止モードへ移行する際の操作片部8,18の回動操作方向,
Cは例えば図1図3図6の静止モードを内容物放出態様の作動モードへ設定する際の操作片部8,18の回動(押下げ)操作方向,
をそれぞれ示している。
【0027】
図1図5でのいわば専用参照記号(5~8)において、
5はその全体が一体成形され、アンダーカット3に嵌合状態で取り付けられて、通常の内容物放出操作およびロック設定・解除操作それぞれの対象となる放出操作部(環状嵌合部6+アーム状基部7+操作片部8)
6は放出操作部5の構成要素であってアンダーカット3へ取り付けられる環状嵌合部,
7は環状嵌合部6の上端側からその径方向(前後方向)に上り傾斜態様で延びてその自由端側が上下方向に変位しえるアーム状基部,
7aはステム4の中間通路部4aの出口部分に係合状態で接続された放出通路部,
7bはアーム状基部7の左右(横)両端に形成された一対の壁状態様の垂下部分,
7cはアーム状基部7の後上端側に後述の操作片部8と一体に設定されて、この操作片部の回動中心として作用する横方向のヒンジ部分,
8はヒンジ部分7cを介してアーム状基部7と回動連結する前後方向形状の(被起立部分としての)操作片部,
8aは操作片部8の前端側に形成されてその起立操作の際にステム4およびその回り部分を回避するための前後方向・U字状の(端側開口部としての)前端側開口部,
8bは前端側開口部8aの左右横側に形成された一対の脚部分,
8cは脚部分8bそれぞれのロック解除の静止・作動モードにおける上面側であって、静止モードの垂下部分7bの下面部分に当接して保持される前後方向の横平面部分,
8dは横平面部分8cそれぞれの自後側にその前側部分よりも少し内側変位態様で形成されて静止モードの垂下部分7bに当接保持される上下方向の縦平面部分,
をそれぞれ示している。
【0028】
ここで、容器本体1およびステム4は例えば金属製,プラスチック製のものである。マウンティングカップ2は例えば金属製のものである。
【0029】
また、放出操作部5(環状嵌合部6+アーム状基部7+操作片部8)は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製の一体成形物である。
【0030】
図1図5の内容物放出操作ロック構造(放出操作部5)、すなわちアンダーカット3への環状嵌合および起立状態(ロックモード)におけるマウンティングカップ2の環凹状部2aへの保持タイプの基本的特徴は、
(41)図1図3のロック解除・静止モードのとき、横平面部分8cが垂下部分7bの下端側に当接し、また縦平面部分8dが垂下部分7bの後端側外面に当接した状態で、アーム状基部7および操作片部8がいわば一体化し、
(42)この一体化状態で操作片部8をC方向に押下げると(図1,3参照)、アーム状基部7もその後側が同下方向に回動してステム4を下動させ、これによりその弁作用部が開状態に設定される、すなわち内容物放出の作動モード(上方噴射)に移行し、
(43)同じくこの一体化状態で操作片部8を(42)とは逆にA方向へ押上げると、操作片部8は、ヒンジ部分7cを中心に同方向へ回動・起立して脚部分8bがマウンティングカップ2の環凹状部2aに保持された放出操作阻止のロックモードに移行する(図4参照)、
ことなどである。
【0031】
すなわち、図1および図3の静止モードの操作片部8をC方向に押下げる操作で内容物放出状態の作動モードを設定し、この押下げ操作とはまったく異なる態様の操作片部8のA方向への起立操作で内容物放出阻止のロックモードを設定する。
【0032】
静止モードの操作片部8をC方向に押下げる操作は、概略、アーム状基部7,ステム4および操作片部8の後端側操作面についてのテコ作動にもなっている。
【0033】
図1および図3の静止モードの操作片部8は、その横平面部分8cがアーム状基部7の垂下部分7bの下面部分に当接し、その縦平面部分8dが同じく垂下部分7bの後端側外面に当接している。
【0034】
この静止モードの当接状態での操作片部8に対するC方向への押し下げ操作にともない、操作片部8およびこれとヒンジ結合したアーム状基部7(の自由端側)が一体化して同方向に回動する。
【0035】
このアーム状基部7のC方向への回動により放出通路部7aと係合済みのステム4も下動して作動モードへと移行する。
【0036】
ここで作動モードの設定操作を止める、すなわち操作片部8のC方向押下げ操作を止めるとステム4が上述のように周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用により初期位置に復帰し、これにともない操作片部8およびアーム状基部7もそれぞれの初期状態へ移行する。
【0037】
図4のロックモードを解除するには、利用者が起立状態の操作片部8の後端側を把持してB方向に回動すればよい。この回動操作により操作片部8は図1および図3のロック解除・静止モードに戻る。
【0038】
図5は操作片部8を起立させた状態の平面視であり、放出操作部5の金型成形に際し、その操作片部起立状態の全体形状をスライド金型の使用なしに作成しえることを示している。
【0039】
図6図8の内容物放出操作ロック構造は、前方噴射タイプのものであり、上述したようにアンダーカット3に対する嵌合部としてC字状部を設け、その外周面の一部に起立状態の操作片部の下端側を保持するための水平態様の延出部を形成している。
【0040】
この図6図8において、
15はその全体が一体成形され、アンダーカット3に嵌合状態で取り付けられて、通常の内容物放出操作およびロック設定・解除操作それぞれの対象となる放出操作部(C字状嵌合部16+アーム状基部17+操作片部18),
16は放出操作部15の構成要素であってマウンティングカップ2の外周下端側のアンダーカット3へ取り付けられるC字状嵌合部,
16aはC字状嵌合部16の開口部分の両端側を設定して、この嵌合部が横方または上方からアンダーカット3に取り付けられる際に一時的な外広がりの変形案内作用を呈する一対の平面視「ハ」の字状の開口側端部,
16bはC字状嵌合部16の外面の一部に外方(径方向)への水平態様で連続形成されて後述の操作片部18が起立した状態のロックモードを設定するための延出部,
16cは延出部16bの上面周方向に形成されてロックモード(起立状態)における後述の操作片部18の脚部分18bの下端側を保持する上面凹状部(容器本体側部分),
17はC字状嵌合部16の上端側からその径方向(図6の略右斜め上方向)に上り傾斜態様で延びてその自由端側が上下方向に変位しえるアーム状基部,
17aはステム4の中間通路部4aの出口部分に係合状態で接続された放出通路部,
17bはアーム状基部17の左右(横)両端に形成された一対の壁状態様の垂下部分,
17cはアーム状基部17の後端側に後述の操作片部18と一体に設定されて、この操作片部の回動中心として作用する横方向のヒンジ部分,
18はヒンジ部分17cを介してアーム状基部17と回動連結する前後方向形状の(操作片部8と略同一形状からなる被起立部分としての)操作片部,
18aは操作片部18の前端側に形成された前後方向・U字状の(端側開口部としての)前端側開口部,
18bは前端側開口部18aの左右横側に形成された一対の脚部分,
18cは脚部分18bそれぞれの静止・作動モードにおける上面側であって静止モードの垂下部分17bの下面に当接し、操作片部18の押し下げ操作にともない下方へ連動してステム4を下動させて内容物放出状態の作動モードを設定する前後方向の横平面部分,
18dは横平面部分18cそれぞれの自後側にその前側部分よりも少し内側変位態様で形成されて静止モードの垂下部分17bの自由端側(ヒンジ部分側)左右側面を挟むに当接保持される上下方向の縦平面部分,
をそれぞれ示している。
【0041】
ここで、放出操作部15(C字状嵌合部16+アーム状基部17+操作片部18)は、放出操作部5と同じく例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製の一体成形物である。
【0042】
図1図5の放出操作部5との主たる技術的相違点は、
(51)アーム状基部17は、その自由端部分がマウンティングカップ2の外側まで延びる長さからなり、
(52)操作片部18の起立状態(内容物放出操作を阻止するロックモード)を、マウンティングカップ上面の環凹状部2aではなく、C字状嵌合部16の水平延出部16bに形成した上面凹状部16cで保持する、
ことなどである。
【0043】
ロック解除・静止モード,作動モードおよびロックモードなどを選択的に設定する際の操作片部18の操作態様、またそれにともなうアーム状基部17およびステム4の連動態様も、図1図5の放出操作部5のそれと同様である。
【0044】
本発明の放出操作ロック構造が図示の実施形態に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、
(61)上方向に開口している放出通路部7aの出口を前方向に開口させる、
(62)前方向に開口している放出通路部17aの出口を上方向に開口させる、
(63)放出操作部5の環状嵌合部6をC字状嵌合部に置き換える、
(64)放出操作部15のC字状嵌合部16を環状嵌合部に置き換える、
ようにしてもよい。
【0045】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0046】
容器本体に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0047】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0048】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0049】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0050】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0051】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0052】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤、リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0053】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0054】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0055】
図1図8
1:エアゾールタイプの容器本体
1a:環状肩部
2:マウンティングカップ
2a:環凹状部
3:アンダーカット
4:ステム
4a:中間通路部
A:ロック解除・静止モードからロックモードへの回動操作方向
B:ロックモードからロック解除・静止モードへの回動操作方向
C:静止モードから内容物放出の作動モードへの回動(押下げ)操作方向
【0056】
図1図5
5:放出操作部(環状嵌合部6+アーム状基部7+操作片部8)
6:環状嵌合部
7:アーム状基部
7a:放出通路部
7b:垂下部分
7c:ヒンジ部分
8:操作片部
8a:前端側開口部
8b:一対の脚部分
8c:前後方向の横平面部分(静止モード)
8d:上下方向の縦平面部分(静止モード)
【0057】
図6図8
15:放出操作部(C字状嵌合部16+アーム状基部17+操作片部18)
16:C字状嵌合部
16a:開口側端部
16b:延出部(容器本体側部分)
16c:上面凹状部
17:アーム状基部
17a:放出通路部
17b:垂下部分
17c:ヒンジ部分
18:操作片部
18a:前端側開口部
18b:一対の脚部分
18c:前後方向の横平面部分
18d:上下方向の縦平面部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8