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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ろ過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/48 20060101AFI20240411BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240411BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B01D29/48 A
C02F1/44 G
C02F1/44 H
B01D61/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020073165
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169063
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】516045078
【氏名又は名称】城山産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】山田 富藏
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217821(JP,A)
【文献】特開2014-076428(JP,A)
【文献】特開2020-044467(JP,A)
【文献】特開昭63-077509(JP,A)
【文献】特開2020-006281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04;35/08-37/08、
B01D 53/22;61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 9/00-9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセットボンベ発電機と、
前記カセットボンベ発電機が発する電力を用いて駆動するバネ式フィルター装置と、
前記バネ式フィルター装置の前段に設けられる集毛装置と、
を備えるろ過装置であって、
前記バネ式フィルター装置は、
バネ式フィルターと、
前記バネ式フィルターを支持する支持部材と、
前記バネ式フィルターと前記支持部材を収容する内部空間を備える筐体と、
前記筐体の前記内部空間に処理対象となる原液を送出するためのポンプと、を有するものであり、
前記ポンプは、前記カセットボンベ発電機により駆動し、
前記筐体の前記内部空間は、前記支持部材によって下部空間及び上部空間に区分けされ、
前記下部空間には原液用管が接続され、
前記上部空間にはろ液用管が接続されており、
前記原液用管と前記ろ液用管は、ろ過助剤タンクを介して循環経路を形成するよう接続されており、
前記原液用管には、前記ろ過助剤を排出する廃液用分岐管が接続されており、
さらに、前記原液用管の先端は可撓性のある材料で構成されているろ過装置。
【請求項2】
前記バネ式フィルター装置の後段に逆浸透膜装置を備える請求項1記載のろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関し、より具体的には災害時等の非常時に簡便に用いることができるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震や台風などにより電気・ガス・水道等のライフラインが停止してしまう等の状況が多発する傾向があり、そのための対策として、各家庭単位、又は、町内会等の自治会単位で、家庭用の非常用発電機等の購入及び保管を行っているところが多くなっている。
【0003】
一般的な家庭用非常用発電機等の例としては、例えばガソリンによる発電機、予め電力を蓄えておく蓄電池を用いた発電機等がある。
【0004】
また一方で、非常時においては、飲料水等の生活用水の確保が非常に重要である。災害時において水を確保することは非常に重要である。一般に、非常時用の生活用水確保のための技術としては、例えばフィルターを用いて泥水等から生活用水を得ようとするろ過装置に関する技術がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガソリンによる発電機は、ガソリンを長期間使用せずに保管していると劣化してしまうため、ガソリンの品質を高く保つために十分な注意をもって保管する必要がある。そして、発電機の使用が終わったら発電機内に残ったガソリンを発電機から抜かなければならないといった使用上の注意が必要となる。もし、ガソリンを発電機内に残したまま長期間放置してしまうと、ガソリンの劣化に起因して発電機が故障し、修理に出さなければならない程の不都合を生じることがある。すなわち、ガソリンの保管に非常に大きな手間がかかり、これを怠ってしまった場合、災害時等の非常時に動かなくなってしまうといった状況が十分に考えられる。
【0006】
一方、予め電力を蓄えておく蓄電池では、現在の技術力では緊急時に必要な電力を十分に蓄えておくのが容易ではなく、蓄えた蓄電池を使い切った場合使えなくなってしまい、災害時等の電力のない状況で電力を蓄積することは極めて困難である。また、蓄電池は使用しなくとも電力の減少が生じているため、定期的に電力を蓄えておかなければならないといった課題がある。一方で、現在、太陽電池による電力蓄積という技術も開発されているが、天候不良の場合に蓄電することは困難であり、電力供給・電力蓄積の安定性において課題がある。
【0007】
ところで、上記を背景に、カセットボンベを用いた発電機が現状提案されてきている。カセットボンベは、内部に可燃性のガスが封入されており、一般にはカセットコンロ等の調理器具の燃料として用いられるものであるが、この内部に封入されたガスを発電機の内燃機関等において燃焼させることでエネルギーを得ることができるというものである。カセットボンベはガソリン等に比べて長期に保存が可能であり、上記蓄電池に比べて蓄積対象が減少してしまうといった恐れが格段に少ない。
【0008】
一方、上記フィルターを用いるろ過装置では、フィルターを使用しているため、一定量の水を処理した場合、フィルターの交換が必須となる。そのため、フィルターの備蓄が尽きてしまえばもはや使用することができなくなるといった課題がある。特に、フィルターでは汚れを吸着することが重要であるため、ろ過する水の量に比べてフィルターの消費量が非常に激しいといった課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より簡便に長期安定保管が可能で、より消耗品を少なくできる、非常用のろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を行ったところ、カセットボンベを用いる発電機と、バネ式フィルター装置とを組み合わせることで、簡便な構成で小型化可能で、より簡便に長期安定保管が可能で、より消耗品を少なくできる、非常用のろ過装置を提供できることに着目し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一観点に係るろ過装置は、カセットボンベ発電機と、このカセットボンベ発電機が発する電力を用いて駆動するバネ式フィルター装置と、を備えるものである。
【0012】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、バネ式フィルター装置の後段に逆浸透膜装置を備えることが好ましい。
【0013】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、バネ式フィルター装置が、バネ式フィルターと、バネ式フィルターを支持する支持部材と、バネ式フィルターと支持部材を収容する内部空間を備える筐体と、筐体の内部空間に処理対象となる原液を送出するためのポンプと、を有することが好ましい。
【0014】
さらに、この場合において、筐体の内部空間は、支持部材によって下部空間及び上部空間に区分けされ、下部空間には原液用管が接続され、上部空間にはろ液用管が接続されている構成となっていることが好ましい。
【0015】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、バネ式フィルター装置の前段に、集毛装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によって、より簡便に長期安定保管が可能で、より消耗品を少なくできる、非常用のろ過装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るろ過装置の構成の概略を示す図である。
図2】実施形態に係るバネ状フィルター装置の断面の概略を示す図である。
図3】実施形態に係るバネ状フィルターの概略を示す図である。
図4】実施形態に係るバネ状フィルターの部分断面図である。
図5】実施形態に係るバネ状フィルターの周囲にろ過助剤が付着した場合の部分拡大図である。
図6】実施形態に係るバネ状フィルター装置の配管の概略について示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0019】
(ろ過装置)
図1は、本実施形態に係るろ過装置(以下「本装置」という。)1の構成の概略を示す図である。本図で示すように、本装置1は、カセットボンベ発電機2と、カセットボンベ発電機2が発する電力を用いて駆動するバネ式フィルター装置3と、を備えるものである。バネ式フィルター装置3の前段には集毛装置5が配置され、更にその前段には処理対象となる水源Sがある。この処理の流れについては後述するが、水源Sから配管T1を介して集毛装置5にて粗い塵等を除去した後、細かな不純物をバネ式フィルター装置3により取り除く。なお、本装置1によって浄化された水は配管T2を介して水を収容する容器Cに収容される。
【0020】
また、本ろ過装置1では、上記バネ式フィルター装置3の後段に、逆浸透膜装置4を備えている。逆浸透膜装置4を用いることで、細かな不純物を取り除いた後のさらに細かな不純物を除去することが可能となる。
【0021】
まず、本装置1において、カセットボンベ発電機2とは、カセットボンベを燃料として駆動し、電力を供給することができる発電機をいう。
【0022】
本装置1において用いるカセットボンベは、可燃性のガス(以下単に「ガス」ともいう。)を封入した完全密閉可能な缶状のボンベをいう。カセットボンベは缶状であり、ガスを一度封入すれば極めて長期にわたり保存が可能である。カセットボンベは、先端部分にステムと呼ばれる部分を備えており、このステムを押し当てることで内部に収容したガスを外部(本装置1では発電機2内の内燃機関)に放出することができる。カセットボンベは、カセットコンロの燃料として一般に広く販売されるものであるため、入手は極めて容易であり、多量に保管、保存が可能であるとともに、内部ガスの漏出が少ない。より具体的には、蓄電池とは異なり電力の減少が極めて少なく、ガソリンとは異なり劣化のおそれが格段に少ない。
【0023】
また、本装置1において用いるカセットボンベ発電機2とは、上記カセットボンベを挿入し、カセットボンベ内に蓄積されたガスを燃料として発電することができる装置である。具体的には、カセットボンベをカセットボンベ発電機2に設けられるソケットに設置し、ステムを押し当てることでカセットボンベ発電機2内の内燃機関にガスを燃料として供給する。具体的には、ボンベ発電機2内の内燃機関にガスを導入し、ガスに着火させ燃焼する。すると内燃機関に設けられたピストンが着火及び排気に応じて往復振動することになる。そして、この往復振動を回転運動に変えてモーター等の発電機を駆動し電気を発生させることができる。カセットボンベ発電機2は、バネ式フィルター装置3のポンプを駆動させることができる程度の電力を発生させることができるものであれば限定されず、市販されているカセットボンベ発電機を用いてもよい。なお、ポンプを駆動する電圧が低い場合等は、昇圧装置や、発電機を複数直列に接続して電圧を高める等の調整が必要である。これらの記載から明らかなように、カセットボンベ発電機2は、バネ式フィルター装置3のポンプに接続され、電力を供給する構成となっている。本装置1では、上記の通りカセットボンベ発電機2を用いることで、燃料を長期に安定的に保管が可能であり、ガソリン等のように劣化のおそれが無く、また装置内にガソリン等が残ることによる故障などを避けるために完全に使用する必要やメンテナンスの必要が格段に少なくなる。また、蓄電池のように電力がなくなってしまった後の電力補充に時間を要することもなく、非常に簡便に使用することができる。災害時においてこのメンテナンスフレンドリー及び燃料の入手困難性については非常に重要である。なお、この発電機2の動力は、水源Sから水をくみ上げるためのポンプや逆浸透膜装置4に水を供給するためのポンプの動力としても用いることができる。
【0024】
また、本装置1において、バネ式フィルター装置3は、上記の通り、カセットボンベ発電機が発する電力を用いて駆動するものであって、ろ過装置の主要な機能を有する部分である。
【0025】
ここで、本実施形態におけるバネ式フィルター装置3の内部構造について、図2にその概略の断面図を示す。本図で示すように、バネ式フィルター装置3は、少なくともバネ式フィルター31、及び、これを支持する支持部材32と、このバネ式フィルター31、支持部材32を収容する筐体33と、を有して構成される。後述の記載から明らかであるが、バネ式フィルター31の外側には不純物が残ることになり、内側には不純物が除去された液体(ろ液)が通過することになる。すなわち外側の空間と内部の空間が原液側とろ液側とで分かれることになる。
【0026】
また、本実施形態のバネ式フィルター装置3では、上記のとおり、バネ式フィルター31及び支持部材32を収納する筐体33を有している。また、支持部材32によって筐体33内の内部空間34は上側の空間と下側の空間の二つに区切られており、支持部材32は仕切板としての機能を有している。より具体的には、支持部材32には複数の孔が形成されており、この孔にバネ式フィルター31が挿入及び設置されることで、筐体33内の内部空間34を、バネ式フィルターの下部空間341(以下単に「下部空間」という。)と、バネ式フィルターの上部空間342(以下単に「上部空間」という。)に分けることが可能となる。また、バネ式フィルター装置3では、後述するように、ろ過時において、バネ式フィルター31の周囲にろ過助剤35が付されることになる。図3に、本実施形態に係るバネ式フィルター31の概略を、図4にその一部断面を、図5に、ろ過時におけるバネ式フィルター31の周囲の一部断面拡大図を示す。ろ過時において、ろ過助剤35がバネ式フィルター31の周囲に配置されることで、フィルター層として機能することになる。具体的には、支持部材32によってフィルターの下部空間341と上部空間342が区分けされ、処理対象となる原液が下部空間341側からフィルター層を通って上部空間342側に移動する際、不溶解不純物がフィルター層によって通ることができずフィルター層において残留し、処理対象原液から除去されることになる。
【0027】
ここで改めてバネ式フィルター装置3のバネ式フィルター31について説明する。本装置1におけるバネ式フィルター31は、文字通りバネ状のフィルターである。上記図で示すように、バネ式フィルター31は、線材311が環状に巻き回されかつ所定の間隙をもって重なり合うことによりバネ形状となっているフィルターである。また、限定されるわけではないが、バネ式フィルター装置3におけるバネ式フィルター31の線材311には、隣接する線材部分と上記所定の間隔を確保するための突起312が付されており、これによってバネ式フィルターの平均間隙長、より具体的には線材間の距離を安定的に確保することができる。
【0028】
また、バネ式フィルター装置3におけるバネ式フィルターの平均間隙長(線材間の間隔の平均)は、適宜な設定が可能ではあり限定されるわけではないが、5μm以上200μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10μm以上150μm以下の範囲である。この範囲とすることで、ろ過において液体中の除去対象となる不溶解不純物を効率的に除去することができる。
【0029】
また、バネ式フィルター装置3におけるバネ式フィルター31の材料は、形状を維持しバネ式フィルター装置3が所望の効果を達成することができる限りにおいて限定されず、例えば銅、鉄、チタン、ニッケル等の単体金属やステンレス等の合金などの金属材料、また、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を例示することができる。
【0030】
また、バネ式フィルター装置3におけるバネ式フィルター31は、一本の線材311を環状の螺旋を描くよう巻き回すことで容易に実現することができるが、例えば上記のような突起が付された環状の線材や樹脂材を複数積層させた環状積層体とすることで、同様の構造を実現することも可能である。この場合においても、バネ式フィルター装置3ではバネ式フィルターに含まれるものとする。すなわち、バネ式フィルター装置3において、バネ式フィルター31には巻回体だけでなく環状の線材を積層した積層体のいずれの構造も包含される。
【0031】
また、本実施形態においてバネ式フィルター31は,上記の図で示すように、線材311の中心に芯材313を備え、この芯材313の両端近傍に一対の抑えるための金具を設ける構成としてもよい。このようにすることで、線材をより安定的に保持することができる。特に、金具の一方は支持部材32に接続する一方この支持部材32との間隙を少なくするため、ねじ溝が形成された構造となっていることも好ましい。このようにすることで支持部材32にもこれに勘合するねじ溝を形成し、これらをはめ合わせることで支持部材32とバネ式フィルター31とを安定的に固定するとともに下部空間341と上部空間342の間の隙間を少なくすることが可能となる。
【0032】
また、バネ式フィルター装置3において、上記の記載からも明らかであるが、バネ式フィルター31は一本であってもよいが、複数本備えていることが好ましい。具体的には支持部材32に多数の孔が形成され、この複数の孔にそれぞれバネ式フィルター31が挿入及び固定されていることが好ましい。このようにすることでろ過効率を向上させることが可能となる。
【0033】
また、本装置1において、筐体33内の内部空間34のうち、筐体33内のバネ式フィルター31の下部空間341及び上部空間342は、それぞれ原液用管36、ろ液用管37を備えている。これにより、下部空間341には処理対象となる不純物が混入した原液を供給することが可能となり、上部空間342からは不純物がろ過されたろ液をろ液用管から排出させることが可能となる。
【0034】
後述の記載からも明らかであるが、本装置1におけるバネ式フィルター装置3では、ろ過助剤がバネ式フィルター31の周囲に積層し、十分にろ過が可能な状態になるまで、ろ過助剤を含んだ水を装置内で循環させることができるよう、原液用管36及びろ液用管37を接続して循環経路を形成しておくことが好ましい。なお、この循環経路においては、経路の開閉を制御するための弁や、循環させるための動力としてのポンプを備えていることが好ましい。なお、バネ式フィルター装置3の管の接続の概略について、図6にその概略を示しておく。
【0035】
本図で示すように、バネ式フィルター装置3においては、配管は、大きく分けて原液用管36と、ろ液用管37に分かれている。原液用管36は、バネ式フィルター装置3の前段側においても受けられ、バネ式フィルター装置3の下側空間341に原液を供給するために用いられる配管である。この原液用管36は途中にポンプ361、弁362を設けて構成されており、このポンプにより原液をバネ式フィルター装置3内に供給することが可能であり、弁362によりこの管によって形成される経路の開閉を制御することが可能となる。なおポンプ361は、上記カセットボンベ発電機2に接続されており、原液をバネ式フィルター装置3に送り出すことができる。なお、この原液用管36にはさらに、廃液用分岐管363が接続されており、使用が終了したろ過助剤を排出させることができるようになっている。またこの廃液用分岐管363には弁364が接続されており、この経路を開閉することができるようになっている。
【0036】
また、本図で示すように、ろ液用管37は、バネ式フィルター装置3によってろ過されたろ液を外部に送り出すために用いられる管である。ろ液用管37には弁371が配置されており、この経路の開閉を制御することができる。また、このろ液用管37には、上記の通り、循環経路を形成するための循環管372が分岐して接続されており、弁373を介してろ過助剤タンク374、ポンプ375、弁376を備えて原液用管36に接続される。これにより、原液用管36とろ液用管37を循環させることができる。この記載から明らかなように、ろ過助剤タンク374には水とともにろ過助剤35が分散されており、この循環経路にろ過助剤35が分散された水を循環させることで徐々にバネ式フィルター31の周囲にろ過助剤35が積層し、フィルターとなる。
【0037】
また、本装置1において、原液用管36及びろ液用管37は、限定されるわけではないが、吸引等を行いその負圧に耐えることができるようにする観点から、一部において金属や樹脂等の硬質な素材で構成されていることが好ましい一方で、他の一部において可撓性のある部分を備えた管であることも好ましい。実際に災害時等においては、処理対象となる原液を収容する容器やその場所が様々であり、その容器形状や場所に応じて適宜管を移動させることができれば非常に有効であり、また、硬質な素材で被覆されていれば、外部から衝撃が加えられたとしても管を保護することができる。また、海水を原水として利用する場合、海水をくみ出すことなく海中に原液用管36の先端(又は、これに接続される集毛装置5を介して上記配管T1)を浸すことで容易に水の入手が可能となる。一方で、可撓性を備えている場合においても、金属などを織り込むことで強度と可撓性を備えているものであることが好ましい。このようにすることで、吸引による圧力が加えられた場合でもつぶされにくくなる。また構成に関し、具体的には、上記の循環部分については位置を変える必要性が低いため樹脂や金属の硬質な素材で形成する一方、これより先端(入口側又は排出側)の部分は可撓性のある材質で構成されていることが好ましい。吸引の負荷に耐えられる一方可撓性を備える管としては、例えば金属フレキシブルホース等を用いることが好ましいがこれに限定されない。
【0038】
また、吸入側の原液用管36の吸入口近傍には、網目状のフィルターが付されていることも好ましい。これにより、集毛装置5を透過してしまった石や枝、落ち葉等の大きな不純物を予め除去することが可能となる。
【0039】
また、吸入側の原液用管36の吸入口近傍又はその前段に、集毛装置(ヘアーキャッチャー)5を設けることが好ましい。集毛装置5を設けることで、上記フィルターと同様、石や枝、落ち葉等の大きな不純物を予め除去することが可能となる。集毛装置5の構造としては、一般に市販される集毛装置(ヘアーキャッチャー)を使用することができる。
【0040】
また、本装置1では、上記の通りポンプ361を備えている。ポンプ361は、流体を一方向に送出する、具体的には処理対象となる原液を送出するために用いられる装置であり、本装置1では、外部から下部空間341に、下部空間341から上部空間342に、上部空間342から外部に向かう空気又は液体の流れを形成することができるものである。
【0041】
また、本装置1において、ポンプ361は、上記の通り、カセットボンベ発電機2に接続されており、カセットボンベ発電機2が発生させた電力の供給を受け駆動する。ポンプ361の配置は、下部空間の入口側でもよく、上部空間の排出口側であってもよい。下部空間の入口側に配置する場合は下部空間に流体を供給する方向の流れとし、上部空間の排出口側に配置する場合は、上部空間から流体を吸引する方向の流れとする。
【0042】
本装置1において用いるポンプの構成としては、上記の機能を有するものである限りにおいて限定されず、装置内の空間で羽根を回転させて流体を送出する非容積型のポンプであってもよく、また、複数の歯車等をかみ合わせてこれらを回転させることで流体を送出する容積型のポンプであってもよく、更には、ピストンの往復振動を用いて流体を送出する往復振動型のポンプであってもよい。
【0043】
また、バネ式フィルター装置3におけるバネ式フィルター31の周囲には、上記の通り、ろ過時において、バネ式フィルター用のろ過助剤35が配置される。より具体的に説明すると、ろ過助剤35は、ろ過時においてバネ式フィルター31が下部空間341側から上部空間342側に液体を圧送する力によってバネ式フィルター31の周囲に層状に積層される。これにより、ろ過助剤35は不溶解物除去のためのフィルター層として機能することができるのである。
【0044】
また、本方法において、ろ過助剤35の形態としては、限定されるわけではないが粉末状であることが好ましい。粉末状のろ過助剤とすることで、液体に分散させやすくなるとともに、上記バネ式フィルター31の周囲に積層するいわゆるプリコート効果により安定的に配置できるようになる。なおここでろ過助剤の粉末の大きさとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、平均粒径5μm以上500μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは平均粒径10μm以上100μm以下の範囲である。
【0045】
また、ろ過助剤35の構成としては、上記の機能を発揮することができる限りにおいて限定されず、例えば珪藻土、活性炭、ゼオライト等の無機物であってもよく、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等及びこれらの誘導体を含むポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテトラフルオロエチレン等及びこれらの誘導体を含むハロゲン化ポリオレフィン、エチレン・ビニルアルコール等及びこれらの誘導体を含むハロゲン化オレフィン共重合体、セルロース等及びセルロース骨格を有するセルロース誘導体等で例示される有機体物であってもよい。
【0046】
なお、本装置1において、ろ過助剤は、ろ過助剤を収容するろ過助剤容器を備えていることが好ましい。ろ過助剤は消耗品ともいえるが、洗浄すれば再利用可能であり、また、消耗品としての使用量はそう多くはなく、従来技術としてのフィルターよりも非常に少量で済むといった利点がある。ろ過助剤を実際に使用する方法及びその形態については後述の記載から明らかとなる。
【0047】
また、本装置1では、ろ過装置3の後段に、逆浸透膜装置4を備える。逆浸透膜装置4は逆浸透膜を備え、この逆浸透膜の作用により、ろ液中に存在する不純物を除去することができるものである。すなわち、前段のろ過装置により物理的なろ過を行う一方、後段の逆浸透膜装置4により水中に存在する微小な不純物又は溶解した不純物をろ過することが可能となる。特に海水を原水として用いた場合、この海水に存在しろ過装置3によっても取り切れなかった有機物やイオンなどを除去することが可能となる。ここで「逆浸透膜」とは、RO(Reverse Osmosis)膜とも呼ばれ、数ナノメートル程度の孔が多数形成されており、この孔により有機物等を捕捉することで流体の浄化を行う。具体的には、不純物が混入したろ液側に圧力をかけることで、逆浸透膜を挟んだ反対側に水だけが透過させることが可能であり、この水を生活用水等に利用することができるようになる。なお、この逆浸透膜装置については、飲料水等人が口にする場合は必須のものとなるが、トイレや汚れを落とす程度の衛生上必ずしも不要なイオン等の混入が問題ないものである場合は省略可能である。
【0048】
また、逆浸透膜装置4には、上記ろ過装置3と同様、逆浸透膜装置4内に流体を高圧で搬出するためのポンプを備えられていることが好ましい。ポンプの種類等については上記ろ過装置におけるポンプと同様である。
【0049】
以上、本装置1によると、より簡便に長期安定保管が可能で、より消耗品を少なくできる、非常用のろ過装置を提供することが可能となる。
【0050】
(ろ過方法)
ここで、ろ過の方法(以下「本方法」という。)の詳細について順を追って説明する。まず、本方法では、準備として水源Sから原液をくみ上げる場合について説明する。なお、本方法では説明を容易にする観点から水源Sを用いる例としているが、原液を収容した容器からくみ上げるものとしてもよい。なお、水源Sとしては、例えば池や川、海等を例示することができるがこれに限定されない。
【0051】
まず、本方法では、バネ式フィルター31の周囲にろ過助剤35を配置する。具体的には、ろ過助剤タンク374に比較的きれいな水を満たし、その中にろ過助剤35を分散させてプリコート液を作る。そして、ポンプ375を駆動し、ろ過助剤タンク374から下部空間341にプリコート液を導入し、上部空間342から排出される水を再びろ過助剤タンク374に返す。この操作を繰り返すことで、徐々にバネ状フィルター31の周囲にろ過助剤が蓄積されフィルター層として形成される。
【0052】
次に、十分プリコートがなされた後、水源Sから配管T1を介してポンプを用いて原液をくみ上げ、集毛装置5により落ち葉や毛髪等を除去しつつ、バネ式フィルター装置3の下部空間341に組み上げた原液を供給し、ろ過を行う。このろ過を行った水は、ろ液用管37から排出される。このろ液用管37から排出されるろ液は、不純物が除去され、生活用水として用いることができる程度に不純物が除去されたものとなっている。
【0053】
この結果、原液中に存在する微小な不純物はろ過助剤の間隙に捕捉され、バネ状フィルター31の内部空間(上部空間)342に移動することができない。この結果、原液がバネ状フィルター31によってろ過されることになる。
【0054】
なお、十分ろ過が終わった場合、ポンプの駆動を停止することで終了させることができる。ろ過の完了は、原液が無くなった状態としてもよく、また、筐体内の流体の圧力が所定の圧力以上となった状態としてもよい。圧力が所定の圧力以上となるということはこのろ過助剤同士の間隙が捕捉した不純物によって埋まり始めてしまっているためであるため、ろ過を一次終了させ、再度不純物が除去されたろ過助剤によるプリコートを行うことが好ましい。なお、この場合において、次回の処理において行うプリコートのために、少しろ過液を残しておくことが好ましい。
【0055】
また、本方法を終了させた場合、バネ式フィルター31の周囲にはろ過助剤が付着して残っている場合がある。そのため、ポンプの流れを逆にしてバネ式フィルター31の周囲に付着したろ過助剤を除去する工程を行うことが好ましい。具体的には、弁364を開放し、廃液用分岐管363から排出することができる。このようにすることで、バネ状フィルター31を清潔に保つことができる。なお、この除去されたろ過助剤は下部空間341の下に堆積することになるため、筐体の下部を開放可能としておくことでろ過助剤の堆積による作業効率低下を防止することができる。
【0056】
また、本方法では、上記ろ過装置によりろ過されたろ液に対して、更にこの後段に設けられた逆浸透膜装置によるろ過を行う。具体的には、ポンプ等を用いてろ液を逆浸透膜装置内に送出し、逆浸透膜を透過した浄水を取り出す。なお、浄水以外の排出されたろ液に関しては排水として捨てることも可能であるが、上記の通り、飲み水以外の用途であって、衛生をあまり重要視しない用途の生活用水であればそのまま用いることもできる。
【0057】
以上、本装置によると、上記バネ式フィルター31とその周囲に配置されるろ過助剤35との組み合わせによって、所定の大きさ以上の不溶解物を除去することが可能となる。また、逆浸透膜装置を用いることで、所定の大きさ以下の不溶解物、例えば有機物や、イオン等を除去して飲料にも適する水を得ることが可能となる。本装置では特に海水を浄水に代えることが可能となるため、非常に有効なものとなる。
【0058】
また、本装置1では、カセットボンベを用いる発電機を用いているため、ガソリン等と異なり装置内に残ったとしても劣化及び故障のおそれが少なくなる。また、電池などと異なり大量かつ安定に保存が可能であり、漏出のおそれも少ない。さらに、バネ式フィルター装置を用いているため、一般のフィルター装置に比べてフィルター交換の手間が極めて少ない。仮に必要となるとしてもろ過助剤であり、通常のフィルターと異なり非常に少量でろ過を行うことができるだけでなく、フィルター交換の手間が非常に少ない。すなわち、より簡便に長期安定保管が可能で、より消耗品を少なくできる、非常用のろ過装置を提供することが可能となるのである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ろ過装置として産業場の利用可能性がある。特に、災害時において簡便なシステムであり、長期保存を行っても劣化してしまう心配が少なくメンテナンスが非常に簡便なものとなる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6