(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】エアゾール容器用装着体およびこのエアゾール容器用装着体を備えたエアゾール式製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/40 20060101AFI20240411BHJP
B65D 83/16 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B65D83/40
B65D83/16 100
(21)【出願番号】P 2020077866
(22)【出願日】2020-04-25
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】川島 直人
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105710(JP,A)
【文献】米国特許第05722568(US,A)
【文献】特開2004-075124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/40
B65D 83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のマウンティングカップのクリンチ部に当接する回動可能な可動係合部を有し、前記マウンティングカップに係合固定されるエアゾール容器用装着体であって、
前記可動係合部は、
連動する、前記クリンチ部に上側端部が当接する上側可動片、前記クリンチ部に続く環状底部に下側端部が当接する下側可動片とからなり、
前記エアゾール容器用装着体の他の部分と薄肉部で回動可能に接続され、
前記可動係合部,前記薄肉部およびその他の前記可動係合部に接続する部分は、
外力で変位可能な弾性を有する材質で一体に形成され、
前記可動係合部の回動中心は、
前記上側端部と前記下側端部との間で前記クリンチ部の対向側部分に設定されている、
ことを特徴とするエアゾール容器用装着体。
【請求項2】
前記可動係合部は、
前記上側可動片と前記下側可動片とがくの字状縦断面で一体に形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器用装着体。
【請求項3】
前記クリンチ部に当接する固定係合部を併せ備えた、
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアゾール容器用装着体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のエアゾール容器用装着体を備え、かつ、エアゾール容器の容器本体に噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器のマウンティングカップのクリンチ部に係合固定される噴射操作部材や保護キャップなどのエアゾール容器用装着体に関する。
【0002】
特に、エアゾール缶本体の開口部のビード部に内側からクリンチされて固定されるタイプのマウンティングカップに対し、そのクリンチ部に可動係合部を当接させて係合固定する係合するエアゾール容器用装着体に関する。
【0003】
本明細書では、エアゾール容器のステムの突出方向を「上」、その反対方向を「下」、エアゾール容器用装着体に対し可動係合部または固定係合部のある方向を「前」その反対方向で可動係合部のある方向を「後」、上方から見て前後方向に直交する方向をそれぞれ「左」・「右」と記す。例えば
図4において、左下方向が「エアゾール容器用装着体の前側」、右下方向が「エアゾール容器用装着体の左側」になる。
また、マウンティングカップ中央に設けられた弁機構を内包し中央孔部よりステムが突出する上向きの中央隆起部を「台座部」、エアゾール容器のビード部を収容するマウンティングカップ外周の環状逆U字縦断面部を「スカート部」と記す。
【背景技術】
【0004】
従来、マウンティングカップの台座部とスカート部の間の内側環状凹みに対し、噴射操作部材や保護キャップなど上方より係合して固定するエアゾール容器用装着体が用いられている(特許文献1参照)。
【0005】
このエアゾール容器用装着体は、スカート部外周に係合する一般的な装着体に対し、スカート部内周に係合するコンパクトな設計にすることができるため、成形樹脂使用量の低減による製造コストの低減化、リサイクル処理コストの低減化、運送コストの低減化などの特徴を有している。
【0006】
しかしながら、マウンティングカップ取り付けの相手となるエアゾール缶本体の開口部のビード部は規格化され寸法が固定されているため、これにクリンチ(広げカシメ加工)されて固定されるマウンティングカップの内側環状凹みは、マウンティングカップの仕様(厚み,材質など)やこれとビード部との間に挟まれるガスケットの仕様(厚み,材質など)とクリンチの条件などに応じて様々であり、共通の寸法にならない。
【0007】
これらの仕様は、製品化の際に要求される内容物・噴射剤・用途・外観などの選択よって決定されるため、マウンティングカップの内側環状凹みに係合する噴射操作部材やキャップなどは、専用の設計となって汎用性がなかった。
【0008】
また一方で、エアゾール容器用装着体(ガス抜き具100)に設けた可動片部(支持脚部13)をマウンティングカップのクリンチ部に当接させて、内側巻締め部153の内径やマウンテンカップ152の深さが多少異なっていても当該クリンチ部に取り付け可能なガス抜き具100が開示されている(特許文献2の
図1~
図8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開昭55-9239号公報
【文献】特開2008-105710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2のような可動片部を用いたエアゾール容器用装着体であっても適用範囲が狭く、
図5で示すように(a)と(b)の各マウンティングカップ2に合わせたエアゾール容器用装着体30は(c)~(e)の各マウンティングカップ2では可動片部31が長くて引っ掛からず、逆に
図6で示すように(c)~(e)の各マウンティングカップ2に合わせたエアゾール容器用装着体40は(a)と(b)の各マウンティングカップ2では可動片部41が短くてがたつきが生じ固定状態にならない。なお、
図5と
図6の(a)~(e)で対応する各マウンティングカップ2は同じ寸法である。
【0011】
これは、クリンチ部やその下方に続く環状底部が設定する膨出空間がマウンティングカップ2の底面形状・板厚などの仕様によって様々な寸法をとるためである。
【0012】
そこで、クリンチ部の縦断面が袋状の膨出形態となっていることに着眼し、可動係合部の抜け防止当接部と深さ調整当接部を相補的に連動して回動変位するようにし、かつ、その回動中心をクリンチ部縦断面の膨出空間に設定したエアゾール容器用装着体を試験・検証したところ、抜け防止当接部と深さ調整当接部の両方が同時にマウンティングカップへ当接するように可動係合部が回動して、同一のエアゾール容器用装着体を多くの仕様のマウンティングカップにがたつきなく係合固定できることがわかった。
【0013】
本発明は、このような構成によって、
(11)各種のマウンティングカップへのがたつきのない係合固定の確実化を図り、
(12)エアゾール容器用装着体の共通化による製造コスト・管理コストの低減化を図る、
ことなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器のマウンティングカップ(例えば後述のマウンティングカップ2)のクリンチ部(例えば後述のクリンチ部2d)に当接する回動可能な可動係合部(例えば後述の可動係合部12,22)を有し、前記マウンティングカップに係合固定されるエアゾール容器用装着体(例えば後述のステムキャップ10,20)であって、
前記可動係合部は、
連動する、前記クリンチ部に上側端部(例えば後述の上側端部12d)が当接する上側可動片(例えば後述の上側可動片12a,22a)と、前記クリンチ部に続く環状底部(例えば後述の環状底部2e)に下側端部(例えば後述の下側端部12e)が当接する下側可動片(例えば後述の下側可動片12b,22b)とからなり、前記エアゾール容器用装着体の他の部分(例えば後述のキャップ本体11)と薄肉部(例えば後述の回動中心13)で回動可能に接続され、
前記可動係合部,前記薄肉部およびその他の前記可動係合部に接続する部分(例えば後述の縦リブ14)は、
外力で変位可能な弾性を有する材質で一体に形成され、
前記可動係合部の回動中心(例えば後述の回動中心12c)は、
前記上側端部と前記下側端部との間で前記クリンチ部の対向側部分に設定されている、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記可動係合部は、
前記上側可動片と前記下側可動片とがくの字状縦断面で一体に形成されたものである、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記クリンチ部に当接する固定係合部(例えば後述の固定係合部27)を併せ備えた、
構成態様のものを用いる。
【0015】
このような構成からなるエアゾール容器用装着体およびこのエアゾール容器用装着体を備えたエアゾール式製品を発明の対象としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上の構成をとることにより、
(21)各種のマウンティングカップへのがたつきのない係合固定の確実化を図り、
(22)エアゾール容器用装着体の共通化による製造コスト・管理コストの低減化を図る、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】エアゾール容器用装着体のマウンティングカップへの係合前を示す説明図である。
【
図2】
図1のエアゾール容器用装着体の斜視状態を示す説明図である。
【
図3】
図1のエアゾール容器用装着体を各種のマウンティングカップに取り付けた状態を示す説明図である。
【
図4】固定係合部と可動係合部とを併せ備えたエアゾール容器用装着体の斜視状態を示す説明図である。
【
図5】従来の回動片部を用いたエアゾール容器用装着体を各種のマウンティングカップに取り付けた状態を示す説明図である。
【
図6】従来の
図5より長い回動片部を用いたエアゾール容器用装着体を各種のマウンティングカップに取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図4を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
なお、以下のアルファベット付き参照符号の構成要素(例えば上側可動片12a)は原則として、当該参照符号の数字部分の構成要素(例えば可動係合部12)の一部であることを示している。
【0020】
図1~
図3は、可動係合部を二箇所備えたエアゾール容器用装着体(ステムキャップ10)を示している。
【0021】
ここで、
図1,
図3,
図5および
図6において、
1は内容物および噴射用ガスを収容したエアゾール式製品の周知の容器本体,
1aは容器本体1の上部開口部の周囲に設けられたトーラス形状のビード部,
2は容器本体1の上部開口部に取り付けられるマウンティングカップ,
2aはマウンティングカップ2の外周部に、縦断面が下向きU字形で環状に設けられ、ビード部1aと後述のシールガスケット3を下側の溝に保持するスカート部,
2bはマウンティングカップ2の中央部に上向きに突出する台座部,
2cはスカート部2aと台座部2bとの間に設定される環状凹部,
2dは環状凹部2cの外周側であって、容器本体1にマウンティングカップ2を固定するために外側に押し広げられたクリンチ部,
2eは環状凹部2cの底面部分となる環状底部,
3はビード部1aとスカート部2aとに挟持されてシール作用を呈するシールガスケット,
4は台座部2bの内部に設定され、弁機構のための後述のステム5の下部やステムガスケット・スプリングなどが格納されるハウジング,
5は台座部2bの中央孔部より上方に突出した態様で設けられ、付勢に抗して押下げることによって上端の孔部から内容物を放出するステム,
D1はスカート部2aの内径,
L1はスカート部2aの最上部を基準としたときの環状凹部2cの最大深さ,
D2はクリンチ部2dの最大直径,
L2はスカート部2aの最上部を基準としたときのクリンチ中心位置の深さ,
をそれぞれ示している。
【0022】
また、
図1~
図3において、
10はマウンティングカップ2の環状凹部2cに係合してステム5を保護するステムキャップ(エアゾール容器用装着体),
11は下側に開口する鞘状のキャップ本体,
12はキャップ本体11の前後下端部に設けられ、縦断面が「く」の字で上方から見て全体が円弧状の一対の可動係合部,
12aは初期状態の縦断面が傾斜態様で形成された可動係合部12の上側可動片,
12bは初期状態の縦断面が垂下態様で形成された可動係合部12の下側可動片,
12cは後述の薄肉部13と後述の縦リブ14によって周方向に設定される可動係合部12の回動中心,
12dはマウンティングカップ2のクリンチ部2dに当接する上側可動片12aの上側端部,
12eはマウンティングカップ2の環状底部2eに当接する下側可動片12bの下側端部,
13はキャップ本体11の下方開口部の下端部と可動係合部12の中央部とを回動可能に接続する水平方向の薄肉部,
14はキャップ本体11の側面と薄肉部13の上側に連続して設けられ、可動係合部12の上下変位を抑える縦リブ,
15は着脱時に力を加える場所の目印や滑り止めとなる凸部群,
16はキャップ本体11の左右下端部に設けられ、環状凹部2cの外周部(=スカート部2aの内周部)に当接して水平方向の位置を設定する十字リブ,
をそれぞれ示している。
【0023】
ここで、容器本体1,ハウジング4およびステム5は例えば金属製,プラスチック製のものであり、マウンティングカップ2は例えば金属製のものである。
【0024】
また、シールガスケット3はゴム製またはエラストマー製のものであり、ステムキャップ10はプラスチック製や、木製、紙製のほか、プラスチックと他の物質との複合材料製
のものである。
【0025】
図示のエアゾール容器用装着体(ステムキャップ10)の基本的特徴は、
(31)相補的に連動する、マウンティングカップ2のクリンチ部2dに上側端部12dが当接する上側可動片12aと、クリンチ部2dに続く環状底部2eに下側端部12eが当接する下側可動片12bと、からなる可動係合部12を備え、
(32)可動係合部12の回動中心12cを、上側端部12dと下側端部12eとの間でクリンチ部2dの対向側部分に設定した、
ことなどである。
【0026】
すなわち、可動係合部12の抜け防止を担う上側端部12dと深さ調整を担う下側端部12eを相補的に連動して回動変位するようにし、かつ、その回動中心12cをクリンチ部縦断面の膨出空間に対応付けるように構成した。
【0027】
このようなエアゾール容器用装着体(ステムキャップ10)を試験・検証したところ、
図3に示すように、同一のエアゾール容器用装着体を多くの仕様のマウンティングカップに係合固定できることがわかった。
【0028】
図1は、ステムキャップ10のマウンティングカップ2への係合前を示している。
【0029】
マウンティングカップ2の環状凹部2cにステムキャップ10を上方から挿入すると、可動係合部12が回動してスカート部2aの内径側に倣いながらクリンチ部2dに係合する。
【0030】
このとき、上側端部12dと下側端部12eの両方が同時にマウンティングカップ2へ当接するように可動係合部12が回動するので、ステムキャップ10はマウンティングカップ2にがたつきなく係合固定される。
【0031】
図3は、各種仕様のマウンティングカップ2に係合固定したときのステムキャップ10を示している。
【0032】
図3(a)は,エアゾール容器側の仕様として、環状底部2eが略平面状でブリキ製のマウンティングカップ2と、リング状に打ち抜いたゴム製のシールガスケット3を用いている。
図5(a),
図6(a)と同じ仕様である。各部の寸法は、D1=24.65mm,L1=8.0mm,D2=27.2mm,L2=5.1mmである。
【0033】
図3(b)は,エアゾール容器側の仕様として、環状底部2eが略平面状でアルミニウム製のマウンティングカップ2と、リング状に打ち抜いたゴム製のシールガスケット3を用いている。
図5(b),
図6(b)も同じ仕様である。各部の寸法は、D1=24.36mm,L1=8.48mm,D2=27.1mm,L2=5.1mmである。
【0034】
図1および
図3(c)は,エアゾール容器側の仕様として、環状底部2eが球面状に盛り上がったブリキ製のマウンティングカップ2と、リング状に打ち抜いたゴム製のシールガスケット3を用いている。
図5(c),
図6(c)も同じ仕様である。各部の寸法は、D1=24.68mm,L1=7.86mm,D2=27.2mm,L2=5.1mmである。
【0035】
図3(d)は,エアゾール容器側の仕様として、環状底部2eが中心に向かって球面状に盛り上がったブリキ製のマウンティングカップ2と、フランジ付き管状に成形したエラストマー製のシールガスケット3を用いている。
図5(d),
図6(d)も同じ仕様である。各部の寸法は、D1=24.25mm,L1=7.69mm,D2=27.1mm,L2=4.6mmである。
【0036】
図3(e)は,エアゾール容器側の仕様として、環状底部2eが球面状に盛り上がったアルミニウム製のマウンティングカップ2と、リング状に打ち抜いたゴム製のシールガスケット3を用いている。
図5(e),
図6(e)も同じ仕様である。各部の寸法は、D1=24.38mm,L1=7.71mm,D2=27.1mm,L2=5.1mmである。
【0037】
図3(a)~
図3(e)に示されるように、これらすべての仕様のマウンティングカップ2に対しステムキャップ10が確実に係合固定されている。
【0038】
可動係合部12は、プラスチックなど弾性を有する材質で構成されているため上側可動片12aと下側可動片12bとが外力で変位して、多くの仕様のマウンティングカップ2に対し係合固定をすることができる。
【0039】
また、上側可動片12aと下側可動片12bとは「く」の字状縦断面で一体に形成されているため、上側端部12dと下側端部12eとの間を伸縮する方向の外力が加わった場合にも、上側可動片12aと下側可動片12bとが突っ張ったり引っ張ったりすることなく成す角が変位して、多くの仕様のマウンティングカップ2に対し係合固定をすることができる。
【0040】
また、可動係合部12の両端部は内側に撓ることができるので、ステムキャップ10の環状凹部2cへの挿入・係合を阻害することはない。
【0041】
図4は、固定係合部と可動係合部とを併せ備えたエアゾール容器用装着体(ステムキャップ20)を示している。
【0042】
ここで、
図4において、
20はマウンティングカップ2の環状凹部2cに係合してステム5を保護するステムキャップ(エアゾール容器用装着体),
21は下側に開口する鞘状のキャップ本体,
22はキャップ本体21の前後下端部に設けられ、縦断面が「く」の字で上方から見て全体が円弧状の一対の可動係合部,
22aは初期状態の縦断面が傾斜態様で形成された可動係合部22の上側可動片,
22bは初期状態の縦断面が垂下態様で形成された可動係合部22の下側可動片,
23はキャップ本体21の下方開口部の下端部と可動係合部22の中央部とを回動可能に接続する水平方向の薄肉部,
24はキャップ本体21の側面と薄肉部23の上側に連続して設けられ、可動係合部22の上下変位を抑える縦リブ,
25は着脱時に力を加える場所の目印や滑り止めとなる凸部群,
26はキャップ本体21の左右下端部に設けられ、環状凹部2cの外周部(=スカート部2aの内周部)に当接して水平方向の位置を設定する十字リブ,
27は可動係合部12に対向する位置に水平方向に突出した態様で設けられマウンティングカップ2のクリンチ部2dに当接する固定係合部,
をそれぞれ示している。
【0043】
また、ステムキャップ20はステムキャップ10と同様に、プラスチック製や、木製、紙製のほか、プラスチックと他の物質との複合材料製のものである。
【0044】
図4のステムキャップ20は、
図1~
図3のステムキャップ10と比べて、可動係合部22および凸部群25をそれぞれ二箇所から一箇所に変更し、減らした可動係合部22の代わりに固定係合部27を設けている。
【0045】
固定係合部27には調整作用がなく、可動係合部22と固定係合部27とがクリンチ部2dに非対称に当接するため、ステムキャップ20とマウンティングカップ2やステム5との中心軸を一致させることが困難になるが、ステム5と嵌合する必要のないステムキャップ20のような用途では金型の設計や射出条件の設定が容易となるメリットがある。
【0046】
本発明のエアゾール容器用装着体が図示の実施形態に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、
(41)キャップ本体11,21に代えて、噴射操作部材を用いる、
(42)可動係合部12,22,固定係合部27,十字リブ16,26などをキャップ本体11,21と別部品とする、
(43)上側可動片12a,22aの初期状態の縦断面を水平方向に形成した可動係合部12,22を用いる、
(44)下側可動片12b,22bの初期状態の縦断面を垂直方向以外に形成した可動係合部12,22を用いる、
(45)可動係合部12,22の回動を一体成形の薄肉部13,22などに代えて、相対回動するヒンジを用いて行う、
ようにしてもよい。
【0047】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0048】
容器本体に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0049】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0050】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0051】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0052】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0053】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0054】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤、リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0055】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0056】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0057】
(
図1,
図3,
図5,
図6)
1:容器本体
1a:ビード部
2:マウンティングカップ
2a:スカート部
2b:台座部
2c:環状凹部
2d:クリンチ部
2e:環状底部
3:シールガスケット
4:ハウジング
5:ステム
D1:スカート部2aの内径
L1:環状凹部2cの最大深さ
D2:クリンチ部2dの最大直径
L2:クリンチ中心位置の深さ
【0058】
(
図1~
図3)
10:ステムキャップ(エアゾール容器用装着体)
11:キャップ本体
12:可動係合部
12a:上側可動片
12b:下側可動片
12c:回動中心
12d:上側端部
12e:下側端部
13:薄肉部
14:縦リブ
15:凸部群
16:十字リブ
【0059】
(
図4)
20:ステムキャップ(エアゾール容器用装着体)
21:キャップ本体
22:可動係合部
22a:上側可動片
22b:下側可動片
23:薄肉部
24:縦リブ
25:凸部群
26:十字リブ
27:固定係合部
【0060】
(
図5,
図6:比較例)
30:エアゾール容器用装着体
31:長い可動片部
40:エアゾール容器用装着体
41:短い可動片部