(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】液体供給容器
(51)【国際特許分類】
A47G 19/14 20060101AFI20240411BHJP
B65D 81/18 20060101ALI20240411BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A47G19/14 C
B65D81/18 E
B65D81/38 E
(21)【出願番号】P 2020080645
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000112233
【氏名又は名称】ピーコック魔法瓶工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼子 浩
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-194356(JP,A)
【文献】実開昭62-117914(JP,U)
【文献】実開昭57-095877(JP,U)
【文献】実開平01-033937(JP,U)
【文献】実開昭58-092590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/14
B65D 81/18
B65D 81/38
A47J 41/00 - 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の液体供給容器本体と、該液体供給容器本体から外側上方へ延びる注湯ノズルとを備えた液体供給容器であって、
上記液体供給容器本体は、液体が貯留される内容器と、該内容器との間に空間を隔てて該内容器を覆うように配された外容器とで二重構造に構成され、
上記液体供給容器本体における上記二重構造を成す部位に、上記液体供給容器本体に貯留された液体を外側へ導出する導出部が設けられ、
上記注湯ノズルの基部は、上記液体供給容器本体の上記導出部に接続され、
上記内容器と上記外容器との、上記導出部に対応する各部位には、導出開口が形成され、
上記内容器と上記外容器との夫々の上記導出開口の縁部に、これらの間に跨る筒状部材が固着され、
上記内容器と上記外容器との夫々の上記導出開口は、上記筒状部材を介して互いに連通し、
上記注湯ノズルの基部は、上記筒状部材に嵌合され、
上記注湯ノズルの基部には、上記筒状部材の軸方向における、上記内容器の内側に有する
基端部に、該内容器の内側から当接可能に該基部に対して径外側へ突出する加締め部と、
上記外容器の外側に有する端部に、該外容器の外側から当接可能に該基部に対して径外側へ突出する段部とを備え、
上記加締め部は、上記筒状部材への嵌合部分から上記内容器の内側へ突出する上記注湯ノズルの上記基端部が、上記基部に対して径外側へ折り返すように拡径して上記段部と共に上記筒状部材をその軸方向において加締める構成とした
液体供給容器。
【請求項2】
上記内容器の上記導出開口の端部に、上記筒状部材の外面に面状に突き合わさるフランジ部が形成され、
上記フランジ部は、上記内容器の上記導出開口の端部の厚みよりも上記筒状部材の軸方向に沿って長く形成された
請求項1に記載の液体供給容器。
【請求項3】
上記導出部は、上記液体供給容器本体の側壁に設けられ、
上記筒状部材の上記内容器から上記外容器への突出長さが、上記内容器と上記外容器との間に有する上記空間の幅の2倍より小さく設定された
請求項1又は2に記載の液体供給容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有底筒状の容器本体と、該容器本体から外側上方へ延びる注湯ノズルとを備え、例えばドリップ容器として用いるに好適な液体供給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドドリップ方式によりコーヒーを抽出する場合、湯を、コーヒー豆を挽いた粉末に少量ずつゆっくりと注ぐことができるため、特許文献1に示すようなドリップポットが従来からよく用いられている。
【0003】
しかし、従来のドリップポットは、容器側面からの放熱性が高く保温性が低いものであった。このため、コーヒーを適切な温度で抽出することが困難である場合や、ドリップポットの使用者が、ドリップポットに貯留した湯が冷めないように過度に気を配ることが必要な場合もあり、改善の余地があった。
【0004】
詳述すると、コーヒーを抽出する際には、酸味と苦み、香りをバランスよく抽出できる抽出温度帯として摂氏92度~96度が推奨されている。但し、豆の種類、焙煎の具合、酸味や苦みといった嗜好の違い等によって、例えば、摂氏82度~83度という、より低温な抽出温度帯で抽出されることもある。
【0005】
そのような場合、沸騰した湯を液体供給容器(ドリップポット)に貯留し、さらに冷水を少しずつ加えながら適切な抽出温度に調整することが行われている。しかしながら折角温度調節しても、その後、コーヒーの抽出を開始するまでの間、別の作業等が入るなどして所定時間が経過した場合は、液体供給容器に貯留した湯の温度が低下するため、再度沸騰した湯を追加する等して温度調整を行う必要があり、煩わしかった。
【0006】
さらにまた、コーヒーの抽出方式にもよるが、例えば、ハンドドリップ方式によりコーヒーを本格的に抽出する場合、一般にコーヒー豆を挽いた粉末に湯を注ぎ初めてから20秒程度かけて行う蒸らしを経て、3、4回程度に分けて行う本注入が終了するまでトータルで3分程度かけて行われる。
【0007】
このため、液体供給容器に貯留した湯の温度が抽出開始時に適温であっても、徐々に冷めてくるため、適温を維持した状態でコーヒーを抽出できているとは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、貯留した湯を適温に維持することができる保温効果の高い液体供給容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、有底筒状の液体供給容器本体と、該液体供給容器本体から外側上方へ延びる注湯ノズルとを備えた液体供給容器であって、上記液体供給容器本体は、液体が貯留される内容器と、該内容器との間に空間を隔てて該内容器を覆うように配された外容器とで二重構造に構成され、上記液体供給容器本体における上記二重構造を成す部位に、上記液体供給容器本体に貯留された液体を外側へ導出する導出部が設けられ、上記注湯ノズルの基部は、上記液体供給容器本体の上記導出部に接続され、上記内容器と上記外容器との、上記導出部に対応する各部位には、導出開口が形成され、上記内容器と上記外容器との夫々の上記導出開口の縁部に、これらの間に跨る筒状部材が固着され、上記内容器と上記外容器との夫々の上記導出開口は、上記筒状部材を介して互いに連通し、上記注湯ノズルの基部は、上記筒状部材に嵌合され、上記注湯ノズルの基部には、上記筒状部材の軸方向における、上記内容器の内側に有する基端部に、該内容器の内側から当接可能に該基部に対して径外側へ突出する加締め部と、上記外容器の外側に有する端部に、該外容器の外側から当接可能に該基部に対して径外側へ突出する段部とを備え、上記加締め部は、上記筒状部材への嵌合部分から上記内容器の内側へ突出する上記注湯ノズルの上記基端部が、上記基部に対して径外側へ折り返すように拡径して上記段部と共に上記筒状部材をその軸方向において加締める構成としたものである。
【0011】
上記構成によれば、上記液体供給容器本体が二重構造に構成されているため、すなわち、内容器と外容器の間に有する空間を例えば、保温性を有する空気層等として形成することができるため、液体供給容器の保温効果を高めることができる。
【0012】
ここで、内容器と外容器の間に有する空間には、断熱材を備えてもよい。また、本発明は、空間を密閉し、さらに真空状態とすることで、該空間の断熱効果を高めて液体供給容器の保温効果をさらに高めた構成を採用してもよい。
【0013】
また上述したように、上記注湯ノズルの基部を上筒状部材に嵌合することで、液体供給容器本体から外側上方へ延びる注湯ノズルの基部をしっかりと筒状部材によって保持することができる。
従って、上記注湯ノズルの基部を液体供給容器本体にしっかりと取り付けることができる。
【0014】
さらに、上記注湯ノズルの基部を上筒状部材に嵌合することで、注湯ノズルの基部の、液体供給容器本体への取り付け部分の構造をコンパクト化することができる。
【0015】
さらにまた上記構成によれば、内容器と外容器との夫々の上記開口の縁部に、これらの間に跨るように筒状部材を固着することで、内容器と外容器との間に有する上記空間を上記導出部において封止することができる。
【0016】
従って、内容器と外容器との間に有する上記空間を、密閉して真空状態とした場合、上記液体供給容器本体における上記二重構造を成す部位に、導出部が設けられた構成においても、上記空間を真空状態に保つことができる。
【0017】
また上述した加締め部と段部とで、これらの間の筒状部材を挟持するように保持することができる。
【0018】
これにより、注湯ノズルの基部を液体供給容器本体にしっかりと取付けることができる。
【0019】
さらに上述したように、加締め部によって、上記筒状部材を上記内容器の内側から加締めることができる。これにより、加締め部と段部とで、これらの間の筒状部材を、加締め部の加締め力を利用して挟持するように保持することができる。従って、注湯ノズルの基部を液体供給容器本体により一層しっかりと取付けることができる。
【0020】
この発明の態様として、上記内容器の上記導出開口の端部に、上記筒状部材の外面に面状に突き合わさるフランジ部が形成され、上記フランジ部は、上記内容器の上記導出開口の端部の厚みよりも上記筒状部材の軸方向に沿って長く形成されたものである。
【0021】
この発明の態様として、上記導出部は、上記液体供給容器本体の側壁に設けられ、上記筒状部材の上記内容器から上記外容器への突出長さが、上記内容器と上記外容器との間に有する上記空間の幅の2倍より小さく設定されたものである。
【0022】
上記構成によれば、二重構造の液体供給容器本体の側壁に注湯ノズルが取り付けられた液体供給容器を確実に構成できる。
【0023】
詳述すると、二重構造の液体供給容器本体の側壁に注湯ノズルが取り付けられた液体供給容器の製造時に、導出口周縁から径方向外側へ突出する筒状部材を備えた内容器を、外容器の内部に挿入する際に、筒状部材が外容器の内面に干渉することなく挿入することができ、結果として、二重構造の液体供給容器本体の側壁に注湯ノズルが取り付けられた構造の液体供給容器を確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、貯留した湯(液体)を適温に維持することができる保温効果の高い液体供給容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図5】本実施形態のドリップ容器の製造工程の説明図であって、外容器胴部へ内容器を挿入する様子を示す説明図(a)、注湯ノズルの基端部を加締める様子を示す説明図(b)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
なお、図中の矢印Uは上方向、矢印Dは下方向を示すものとする。
【0027】
図1~
図3に示すように、本実施形態のドリップ容器1は、ドリップ容器本体2と蓋3と取手4と注湯ノズル5とを備えている。
【0028】
図3に示すように、ドリップ容器本体2は、液体が内部空間11sに貯留される内容器11と、内容器11よりも一回り大きく形成され、且つドリップ容器本体2の外殻を成す外容器21とを備えており、内容器11は外容器21に覆われるように内外各側に設けられた二重構造で構成されている。内容器11と外容器21とは共にステンレス等の金属製であり、胴部11a,21aと底面部11b,21bとを有して上方が開口した有底筒状に形成されている。胴部11a,21aは、ドリップ容器本体2の側面に相当し、該胴部11a,21aの上部には、ドリップ容器本体2の開口部1Aの縁部に相当する口部11aa,21aaが設けられている。
【0029】
なお、
図3、
図5(a)に示すように、外容器21は、胴部21aに相当する胴部材21Aと、底面部21bに相当する底面部材21Bとで別部材により構成されており、互いの対向縁部21Aa,21Ba、すなわち胴部材21Aの下端周縁21Aaと底面部材21Bの外周縁21Baとは溶接により一体に接合されている(
図5参照)。
【0030】
図3に示すように、内容器11と外容器21とは、互いの口部11aa,21aaにおいて溶接等により接合され一体化されている。内容器11と外容器21との間には、胴部11a,21a、底面部11b,21b共に密封状態の空間Sが確保されている。この空間Sは、真空状態とした断熱層を成している。
これにより、ドリップ容器本体2は、略全体が真空二重構造で構成されている。
【0031】
なお
図3に示すように、外容器21の底面部21bの所定箇所、当例では、底面視中央部に、空間Sと、外容器21の外側とを連通する排気口6が設けられており、この排気口6は低温で溶融する封止部材(図示省略)によって封止されている。
【0032】
ドリップ容器本体2の胴部11a,21aの下部11ad,21adは、内容器11、外容器21共に寸胴状、すなわち、上下方向と略平行に延びる略円筒状に形成されている。胴部11a,21aの下部11ad,21adの上端よりも上側部位は、内容器11、外容器21共に上方ほど徐々に縮径する略円錐台形状に形成されている。胴部11a,21aの口部11aa,21aaは、胴部11a,21aの下部11ad,21adよりも口径が小さくなるように形成され、外容器21の口部21aaは、上方ほど徐々に縮径する略円錐台形状に形成されるとともに、内容器11の口部11aaについては寸胴状、すなわち、上下方向と略平行に延びる略円筒状に形成されている。
【0033】
蓋3は、ドリップ容器本体2の上部に、上方へ向けて開口形成された開口部1Aを閉塞可能な大きさを有しており、蓋本体部31と、該蓋本体部31の下面外周縁から下方に突出し、開口部1Aを蓋3で閉めたとき(すなわち、蓋3閉時に)、開口部1Aを介して内容器11の口部11aaに嵌め込まれる嵌込み部32とで一体形成されている。
【0034】
嵌込み部32の外周面には、ドリップ容器本体2の径外側へ付勢するように上方へ向けて突出する突片状の弾性当接片33が周方向に複数配設されている。これにより、蓋3閉時に弾性当接片33が内容器11の口部11aaの内周面に弾接することで蓋3が不用意に抜け難くしている。
【0035】
蓋3の平面視中央部には、温度計34が取外し可能に設置されている。
【0036】
温度計34は、直線状の棒状感温部35と、該棒状感温部35の上端に備えた平面視円形状の温度表示部36とからなり、棒状感温部35に内蔵した感温素子(図示せず)によって計測した温度を温度表示部36に表示するものである。
【0037】
蓋本体部31の上面における平面視中央部には
図1~
図3に示すように、使用者が蓋3を摘まんで把持することが可能な摘み部37が設けられている。摘み部37は、温度計34の温度表示部36を支持可能な支持台を兼ねている。
【0038】
さらに
図3に示すように、摘み部37および、蓋3の摘み部37の直下部位には、温度表示部36を摘み部37に装着した状態で、棒状感温部35を挿脱可能に貫通する貫通孔38a,38bが上下方向に夫々設けられている。
【0039】
温度計34は、温度表示部36が摘み部37に上方を向くように装着された状態おいて、棒状感温部35が、摘み部37および蓋3の各貫通孔38a,38bに挿通されるとともにドリップ容器本体2の下方まで延びた状態となり、ドリップ容器本体2に貯留された湯の温度を計測する。
【0040】
図1~
図3に示すように、取手4(ハンドル)は、外容器21の胴部11a,21aの上部の周方向の一部に溶接等により片持ち状に取り付けられ、該取付箇所から外容器21に対して径外側へ略水平に延出する部位の先端からさらに下方かつ径外側へと延出している。
なお、取手4は、その基部を除いて略全体が、耐熱性、難燃性に優れ、かつ熱伝導性が低い樹脂部材41より形成されている。
【0041】
また同図に示すように、ドリップ容器本体2における上記二重構造を成す部位、すなわち、胴部11a,21aの下部11ad,21adの周方向における、取手4の取付箇所に対してドリップ容器本体2の平面視中心位置を隔てて反対側の部位には、ドリップ容器本体2に貯留された液体を外側へ導出する導出部60が設けられている。
【0042】
注湯ノズル5の基部51は、ドリップ容器本体2の導出部60に接続されている。
【0043】
図4に示すように、内容器11における、ドリップ容器本体2の導出部60に対応する部位には、導出開口12が、外容器21における、ドリップ容器本体2の導出部60に対応する部位には、導出開口22が、夫々形成されている。これら内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22は、ドリップ容器本体2の周方向および上下方向において互いに一致する箇所に形成され、何れも正面視正円形状で開口形成されている。
【0044】
なお、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁周辺領域13,14は、さらにその外側周辺に対して段部13a,14aを介してドリップ容器本体2の径内側へずらした位置となるように設けられている(
図4参照)。すなわち、内容器11の導出開口12の周縁周辺領域13と、外容器21の導出開口22の周縁周辺領域14とは共に、ドリップ容器本体2の外側から視て凹状に形成されている。
【0045】
内容器11および外容器21のうち少なくとも一方の導出開口12,22の周縁は、導出開口12,22の軸方向(開口方向)の一方へ向けて突出するようにフランジ状(ボス状)に形成されたフランジ部12a,22aが形成されている。
【0046】
当例においては、フランジ部12a,22aは、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に形成され、共に、ドリップ容器本体2の外側へ突出するように同一方向に曲げ加工されている。但し、内容器11の導出開口12の周縁に形成したフランジ部12aは、外容器21の導出開口22の周縁に形成したフランジ部22aと比してドリップ容器本体2の外側へより長く突出形成されている。すなわち当例においては、内容器11の導出開口12の周縁に形成したフランジ部12aは、筒状部材61の外周面に周方向全体が面状に接触している。
【0047】
図3、
図4に示すように、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁には、これらの間に跨る筒状部材61が固着されている。筒状部材61は、ステンレス等の金属製であり、内容器11と外容器21との、正円形状に開口形成された各導出開口12,22に挿通可能に、該導出開口12,22の内径に対して若干小さな外径を有して円筒状に形成されている。
【0048】
これにより、筒状部材61は、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22に挿入した状態において、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に形成されたフランジ部12a,22aが、筒状部材61に対して径外側から突き合わさる、或いは径外側近傍に位置する状態となる。
【0049】
この状態で内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に形成されたフランジ部12a,22aは、筒状部材61の外周面に対して、該筒状部材61の全周に亘って溶接等により隙間なく固着されている(
図4中に示した溶接箇所w1,w2参照)。
【0050】
これにより、筒状部材61は、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に、これらの間に跨るように固着され、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22は、筒状部材61を介して互いに連通した状態となる。
【0051】
さらに上述したように、筒状部材61は、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に固着されることで、筒状部材61と各導出開口12,22の周縁との間が封止される。これにより、ドリップ容器本体2の導出部60において、内容器11と外容器21との間に有する空間Sを密閉状態に維持することができる。
【0052】
図4に示すように、筒状部材61は、上述したように、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に、これらの間に跨るように固着された状態において、該筒状部材61の軸方向の内端61b(内容器11の内部空間11sに面する側の内端61b)が内容器11の周縁周辺領域13と略面一となる。この状態で筒状部材61の軸方向の外端61a(外容器21よりも外側に面する側の端61a)は、外容器21の周縁周辺領域14よりもドリップ容器本体2の径外側へ突出する。筒状部材61は、このように内容器11の導出開口12の周縁から外容器21の側へ突出形成されている。
【0053】
具体的に、筒状部材61は、内容器11の周縁周辺領域13よりもドリップ容器本体2の外側へ(すなわち外容器21に向けて)内容器11の導出開口12の周縁から突出するが、内容器11と外容器21との間に有する空間Sの幅(隙間)Sw(
図5(a)参照)の2倍より小さい突出長さL(同図参照)になるように形成されている。
【0054】
さらに筒状部材61は、注湯ノズル5、内容器11および外容器21の各板厚よりも厚く形成されている(
図4参照)。
【0055】
注湯ノズル5は、その延在方向の全長に亘って略同じ太さの筒状に形成され、先端に注湯口61fが形成されている。注湯ノズル5の基部51は、筒状部材61の内径に対して嵌合態様となる外径を有する、換言すると、筒状部材61の内面にぴたりと当接する外面を有する円筒状に形成されている。そして注湯ノズル5の基部51は、筒状部材61の軸方向に貫通する貫通孔61h(
図4参照)に嵌合状態で挿入され、これにより筒状部材61によって保持される。
【0056】
図3、
図4に示すように、注湯ノズル5は、ドリップ容器本体2の胴部11a,21aの下部11ad,21adに設けた導出部60から外側上方へ延びるが、
図1~
図4に示すように、該注湯ノズル5の基部51については、導出部60から水平かつ直線状に外側へ延びている。すなわち、注湯ノズル5の基部51は、上下方向と平行に延びる胴部11a,21aの下部11ad,21adに接続されているため、該胴部11a,21aの下部11ad,21adに対して直交する方向に接続されている。
【0057】
図4に示すように、注湯ノズル5の基端部51aには、基部51に対して径外側へ突出する第1の突出片としての加締め部52が形成されている。
【0058】
注湯ノズル5の基端部51aは、上述したように、注湯ノズル5の基部51を筒状部材61に嵌合(挿入)した状態において、該嵌合部分からの内容器11の内部空間11sへ突出する突出し部分に相当する。
【0059】
加締め部52は、注湯ノズル5の基端部51aの全周に亘って径外側へ突出するように鍔状に形成されており、当例においては筒状部材61との間に、環状のパッキン62が介装されている。すなわち、加締め部52は、パッキン62を介して筒状部材61の軸方向の内端61bに当接する。このパッキン62により、加締め部52(すなわち注湯ノズル5の側)と筒状部材61(すなわちドリップ容器本体2の側)との間の止水性を高めている。
【0060】
さらに、加締め部52は、注湯ノズル5の基部51を筒状部材61に嵌合した状態において、該基部51の筒状の基端部51aの周方向全体を、基部51の径外側へ折り返すように曲げ加工(すなわち、フランジ加工或いは拡径加工)されたものである。
【0061】
このとき、加締め部52は、筒状部材61の軸方向の内端61bにパッキン62を介して当接するのみならず、該内端61bの側へ押圧するように曲げ加工(塑性変形)されている。
【0062】
また、注湯ノズル5の基部51の軸方向の途中部には、基部51に対して径外側へ突出する第2の突出片としての段部53が鍔状(換言すると全周に亘ってリブ状)に形成されている。
【0063】
段部53は、注湯ノズル5の基部51の軸方向における、基端部51aに位置する加締め部52から筒状部材61の軸方向長さよりドリップ容器本体2の外側へ若干離間した箇所に形成されており、筒状部材61の軸方向の外端61aに当接する。
【0064】
これにより、加締め部52は上述したように、筒状部材61の軸方向の内端61bの側へパッキン62を介して押圧するが、その押圧力を、段部53によってドリップ容器本体2の外側から受け止めることができる。これにより、加締め部52には、上記押圧力を、段部53と共に筒状部材61およびパッキン62を加締める加締め力として作用させることができる。すなわち、筒状部材61は、注湯ノズル5の基部51における、加締め部52と段部53とによって挟み込むように保持される。
【0065】
当例において段部53は、注湯ノズル5の基部51の軸方向における、該段部53に対応する部位を、径外側へ拡径するとともに軸方向に圧縮するように突出形成されている。
すなわち、段部53と加締め部52とは共に、注湯ノズル5の基部51の一部として単一の部材で形成されている。
【0066】
段部53は、ドリップ容器本体2の外側から視認されるが、このように段部53を注湯ノズル5の基部51の一部として一体に形成することで、該基部51に対して溶接等で後付けした場合と異なり、溶接跡を無くして見栄えを確保できるとともに、部品点数を削減することができる。
【0067】
続いて上述した本実施形態のドリップ容器1の製造方法について説明する。
但し、ドリップ容器1の製造前においては、
図5(a)に示すように、外容器21は、胴部材21Aと底面部材21Bとが分離した状態であり、胴部材21Aは下方が開口されているものとする。また注湯ノズル5は、ドリップ容器本体2の導出部60に未だ取り付けられていないものとする。但し、導出部60において外容器21と内容器11とには、共に導出開口12,22および段部53が、注湯ノズル5の基部51には段部53が、夫々設けられているものとする。さらに筒状部材61は、その軸方向の内端61bが内容器11の導出開口12の周縁に挿入された状態で溶接されている。但し、筒状部材61の軸方向の外端61aが外容器21の導出開口22の周縁に溶接されていないものとする。
【0068】
まず
図5(a)に示すように、作業者は、不図示の治具等を用いて外容器21の胴部材21Aの下方開口から該胴部材21Aの内部空間21sへ内容器11を挿入する(
図5(a)中の白抜き矢印参照)。
【0069】
このとき、筒状部材61は、上述したように、その軸方向の内端61bが内容器11の導出開口12の周縁に溶接されているため、内容器11における胴部11a(側面)の下部に設けた導出開口12の周縁から外容器21の外側(内部空間11sと反対側)へ突出した形態となる(
図5(a)参照)。
【0070】
このため、内容器11を外容器21の胴部材21Aに挿入する際に、該胴部材21Aの下方開口の下端周縁21Aaや内壁に、内容器11の胴部11aから外側へ突出する筒状部材61が干渉しないように挿入する必要がある。
【0071】
これに対して本実施形態においては、筒状部材61の、内容器11から外容器21への突出長さLを、内容器11と外容器21の胴部材21Aとの間に有する空間Sの幅Swの2倍より小さく設定したものである。さらに、内容器11は、ドリップ容器本体2を二重構造としたとき、少なくとも周方向の全体に亘って外容器21の胴部材21Aとの間に空間Sが確保される。
【0072】
このため
図5(a)に示すように、作業者は、外容器21の胴部材21Aの内部空間21sに、内容器11を挿入する際に、筒状部材61が胴部材21Aに干渉しないように、内容器11を、外容器21の胴部材21Aとの間に有する空間Sよりも若干小さな幅相当分(例えばDw)だけ胴部材21Aの内面における、平面視で導出部60の側と相反する側へ幅寄せする等した状態で該胴部材21Aの内部空間21sに下方開口から挿入する(
図5(a)中の白抜き矢印参照)。
【0073】
すなわち、筒状部材61の、内容器11から外容器21への突出長さLは、内容器11を外容器21の胴部材21Aに対して幅寄せした状態で挿入しても、筒状部材61が胴部材21Aに干渉しない突出長さを満たすように、胴部材21Aと内容器11との間に存在する空間Sに相当するクリアランスを考慮して上記空間Sの幅Swの2倍より小さく設定したものである。
【0074】
続いて、作業者は、外容器21の胴部材21Aの内部空間21sに内容器11を挿入した状態において、内容器11の導出開口12と外容器21の導出開口22とを、内容器11と外容器21とにおける周方向および上下方向において一致させる。
【0075】
そして、作業者は、筒状部材61の軸方向の外端61aを外容器21の導出開口22に挿入し(
図5(a)中の黒塗矢印参照)、その状態で該導出開口22の周縁に外容器21の外側から溶接する(
図5(a)中の仮想線で示した内容器11参照)。
【0076】
これにより、筒状部材61を内容器11と外容器21との夫々の導出開口22の周縁を跨ぐようにこれらに固着することができるとともに、筒状部材61によって導出部60において空間Sを封止することができる。
【0077】
次に作業者は、外容器21の底面に形成された排気口6に不図示のポンプに備えた配管を接続し、該排気口6から内容器11と外容器21との間の空間Sを排気することで該空間Sを排気層として形成する。その後、作業者は、この排気口6を上述したように、封止部材(図示省略)によって封止し、さらに、外容器21の外面に対して磨き加工を施すとともに外容器21に対して取手4を取付ける。
【0078】
最後に作業者は、注湯ノズル5の基部51をドリップ容器本体2の導出部60に取り付ける。
具体的には
図5(b)に示すように、作業者は、注湯ノズル5の基部51を、段部53が筒状部材61の軸方向の外端61aに当接するまで筒状部材61に対して嵌合状態で挿入する(
図5(b)中の白抜き矢印参照)。
【0079】
このとき、注湯ノズル5の基部51は、筒状部材61よりも内容器11の内部空間11sへの突出した状態となる(
図5(b)中の仮想線で示した基部51参照)。そして
図5(b)に示すように、この突出部分に相当する筒状の基端部51aの径外側において筒状部材61の軸方向の内端61bと対向するように環状のパッキン62を配しておく。
【0080】
その状態から注湯ノズル5の基部51の、筒状部材61への嵌合部分よりも、内容器11の内部空間11sへの突出し部分に相当する筒状の基端部51aの周方向全体を、上述したように、径外側へ折り返すように曲げ加工(すなわち、フランジ加工或いはラッパ状に拡口加工)する(
図4中の太矢印参照)。
【0081】
これにより、注湯ノズル5の基部51の筒状の基端部51aに、鍔状の加締め部52を形成することができ、パッキン62を筒状部材61の側へ密着させる方向の加締め力を付与することができる。すなわち、加締め部52の加締め力を利用して、段部53と加締め部52とで筒状部材61およびパッキン62を挟み込むように保持することができ、結果として、注湯ノズル5の基部51をドリップ容器本体2の導出部60に強固に取付けることができる。
【0082】
上述した本実施形態のドリップ容器1は、
図1~
図4に示すように、有底筒状のドリップ容器本体2と、該ドリップ容器本体2から外側上方へ延びる注湯ノズル5とを備えたドリップ容器1であって、ドリップ容器本体2は
図3に示すように、液体が貯留される内容器11と、該内容器11との間に真空状態の空間Sを隔てて該内容器11を覆うように配された外容器21とで真空二重構造(二重構造)に構成され、
図3、
図4に示すように、ドリップ容器本体2における上記真空二重構造を成す部位、すなわち胴部11a,21aの下部11ad,21adに、ドリップ容器本体2に貯留された湯(液体)を外側へ導出する導出部60が設けられ、注湯ノズル5の基部51は、ドリップ容器本体2の導出部60に接続されたものである。
【0083】
上記構成によれば、ドリップ容器本体2は、その側面部(11a,21a)および底面部(11b,21b)の略全体が、真空二重構造に構成されているため、ドリップ容器1の保温効果を高めることができる。
【0084】
この発明の態様として
図4に示すように、内容器11と外容器21との、導出部60に対応する各部位には、導出開口12,22が形成され、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に、これらの間に跨る筒状部材61が固着され、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22は、筒状部材61を介して互いに連通し、注湯ノズル5の基部51は、筒状部材61に嵌合されたものである。
【0085】
上記構成によれば、注湯ノズル5の基部51を筒状部材61に嵌合することで、ドリップ容器本体2から外側上方へ延びる注湯ノズル5の基部51をしっかりと筒状部材61によって保持することができる。
従って、注湯ノズル5の基部51をドリップ容器本体2にしっかりと取り付けることができる。
【0086】
さらに、注湯ノズル5の基部51を筒状部材61に嵌合することで、注湯ノズル5の基部51の、ドリップ容器本体2への取り付け部分の構造をコンパクト化することができる。
【0087】
さらにまた上記構成によれば、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁に、これらの間に跨るように筒状部材61を固着することで、内容器11と外容器21との間に有する空間Sを導出部60において封止することができる。
【0088】
従って、ドリップ容器本体2における上記真空二重構造を成す部位に、導出部60が設けられた構成においても、内容器11と外容器21との間に有する空間Sを密閉状態(真空状態)に保つことができる。
【0089】
この発明の態様として
図5(a)に示すように、導出部60は、ドリップ容器本体2の側壁としての胴部11a,21aの下部11ad,21adに設けられ、筒状部材61の内容器11から外容器21への突出長さLが、内容器11と外容器21との間に有する空間Sの幅Swの2倍より小さく設定されたものである。
【0090】
上記構成によれば、真空二重構造のドリップ容器本体2の側壁に注湯ノズル5が取り付けられたドリップ容器1を確実に製造することができる。
【0091】
詳しくは
図5(a)に示すように、上記構成によれば、真空二重構造のドリップ容器本体2の側壁に注湯ノズル5が取り付けられたドリップ容器1の製造時に、導出開口12の周縁から径外側へ突出する筒状部材61を備えた内容器11を、外容器21における胴部材21Aの内部空間21sに挿入する際に、筒状部材61が胴部材21Aの内面に干渉することなく挿入することができ、結果として、真空二重構造のドリップ容器本体2の側壁に注湯ノズル5が取り付けられた構造のドリップ容器1を確実に得ることができる。
【0092】
この発明の態様として
図4に示すように、注湯ノズル5の基部51には、筒状部材61の軸方向における、内容器11の内部空間11sの側から当接可能に該基部51に対して径外側へ突出する第1の突出片としての加締め部52と、外容器21の外側から当接する第2の突出片としての段部53とを備えたものである。
【0093】
上記構成によれば、加締め部52と段部53とで、これらの間に有する筒状部材61およびパッキン62を挟持するように保持することができる。
これにより、注湯ノズル5の基部51をドリップ容器本体2にしっかりと取付けることができる。
【0094】
この発明の態様として
図4に示すように、注湯ノズル5の基部51の筒状の基端部51aは、筒状部材61への嵌合部分から内容器11の内部空間11sの側へ突出しており、上記第1の突出片は、注湯ノズル5の筒状の基端部51aが、基部51に対して径外側へ折り返すように拡径された加締め部52として形成されたものである。
【0095】
上記構成によれば、加締め部52と段部53とで、これらの間に有する筒状部材61およびパッキン62を、加締め部52の加締め力を利用して挟持するように保持することができる。
【0096】
これにより、注湯ノズル5の基部51をドリップ容器本体2により一層しっかりと取付けることができる。
【0097】
その他にも本実施形態のドリップ容器1は
図4に示すように、内容器11および外容器21のうち少なくとも一方の導出開口12,22の端部にフランジ部12a,22aが形成されたものである。
【0098】
上記構成によれば、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の周縁は、筒状部材61の外周面に、該筒状部材61の径外側から突き合わされる突合せ端部となるが、このような端部をフランジ状に形成することで、筒状部材61の外周面に対して、面状或いは周縁の強度を高めて当接させることができる。
【0099】
従って、内容器11と外容器21との夫々の導出開口12,22の端部に対して筒状部材61をより強固に固着することができる。
【0100】
さらに本実施形態のドリップ容器1は、筒状部材61の板厚は、内容器11、外容器21および注湯ノズル5の基部51の各板厚よりも厚く形成されたものである。
【0101】
これにより、注湯ノズル5の基部51を内容器11および外容器21との間で介在する筒状部材61の強度を高めることで、注湯ノズル5の基部51のドリップ容器本体2との接合部の強度を高めることができる。
【0102】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【0103】
例えば、
従来のドリップ容器は、例えば
図6に示す
参考例に示すような構成を採用してもよい。
図6は
参考例に係るドリップ容器1’の
図3に対応する縦断面図である。以下の説明において、上述した実施形態と同一の形態については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図6に示すように、
参考例に係るドリップ容器1’は、ドリップ容器本体2の下部に、外容器21’の底面部21b’を覆うように、耐熱性、難燃性に優れた樹脂製の嵩上部材(台座部材)63が一体に装着されている。注湯ノズル5’の基部51’は、ドリップ容器本体2の胴部11a’,21a’(側面)に接続されずに、嵩上部材63の側面に接続されている。
【0105】
具体的に、内部空間11sに貯留した湯を外部に導出する導出部60’は、ドリップ容器本体2の胴部11a’,21a’(側面)に設けられておらず、底面部11b’,21b’に設けられている。
【0106】
なお、ドリップ容器本体2’の底面部11b’,21b’の導出部60’においても内容器11’と外容器21’の導出開口12’,22’の周縁には、これらの間に跨るように筒状部材61’が固着され、該導出部60’における空間S’の封止状態が確保されている。
【0107】
嵩上部材63の側面にも、導出部(導出開口)65が開口形成されている。さらに、嵩上部材63の内部、すなわち嵩上部材63と外容器21’の底面部21b’との間の空間63sには、連結ノズル64が配されている。そして、ドリップ容器本体2’の外容器21’の底面部21b’の導出部60’と嵩上部材63の側面の導出部65とは、連結ノズル64を介して互いに連結されている。一方、嵩上部材63の側面に設けた導出部65および上述した連結ノズル64には、注湯ノズル5’の基部51’が接続されている。
【0108】
上記構成によれば、ドリップ容器本体2’の下部に樹脂製の嵩上部材63を備えることで、ドリップ容器1’をコンロの五徳等に設置して直火により加熱することが不適切であることを使用者に直感的に認識させることができる。
【0109】
さらに上記構成によれば、注湯ノズル5’を、ドリップ容器本体2’の側壁から延出させずに、ドリップ容器本体2’の底面から嵩上部材63を介して該嵩上部材63の側面から延出させる構成とすることができる。
【0110】
これにより、筒状部材61’は、内容器11’の底面部11b’に固着されることになるため、胴部11a’の側面から径外側へ突出しないように構成することができる。よって、ドリップ容器1’を製造時に、上述したように(
図5(a)参照)、内容器11’を外容器21’に備えた胴部材21A’の内部空間21sに、下方開口から挿入する際に、筒状部材61’が胴部材21A’の内面に干渉するおそれがなく、容易に挿入することができる。従って、真空二重構造のドリップ容器1’を容易に製造することができるとともに、空間S’の真空度をより高め易い構成とすることができる。
【0111】
また図示省略するが、他の実施形態として、加締め部52と筒状部材61との間に介装したパッキン62(
図4参照)は、必須ではなく備えずに構成してもよい。加締め部52と筒状部材61との間にパッキン62を備えない構成を採用することで、加締め部52の、内容器11の内部空間11sへの突出し量を、パッキン62の厚み相当分だけ低減することができる。
【0112】
従って、加締め部52によって筒状部材61を段部53の側へしっかりと加締めつつ、内容器11の内部空間11sに貯留された湯が、注湯ノズル5から排出されずに該内部空間11sに残留し難い構成とすることができる。
【0113】
また図示省略するが、本発明のドリップ容器は、注湯ノズル5,5’の外側に断熱材を備えてもよい。
これにより、ドリップ容器本体2,2’の注湯ノズル5,5’の内部空間11sに湯を貯留した状態において、注湯ノズル5,5’の内部空間11sに貯留される湯の保温性を確保することができる。
【0114】
さらにこの構成において、注湯ノズル5,5’の外側に備えた断熱材は、注湯ノズル5,5’に対して着脱可能な構成を採用してもよい。注湯ノズル5,5’に対して断熱材を取付け、又は取り外すことで、注湯ノズル5,5’の内部空間11sに貯留される湯の温度調節を行うことが可能となる。
【0115】
また本発明の液体供給容器は、上述したようにドリップ容器1,1’として用いることに限定せず、その保温効果を活かして卓上ポットとして利用するなど貯留した液体をノズルから供給するための容器として用いることができる。また言うまでもなく、本発明の液体供給容器は、コーヒー以外の他の飲料を貯留してもよい。
【0116】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、「上記外容器の外側に有する端部」は、「注湯ノズル5の基部51の軸方向の途中部」に対応するものとする。
【符号の説明】
【0117】
1…ドリップ容器(液体供給容器)
2…ドリップ容器本体(液体供給容器本体)
5…注湯ノズル
11…内容器
11ad,21ad…胴部の下部(容器本体の側壁或いは容器本体における上記二重構造を成す部位)
12…内容器の導出開口
12a…フランジ部
21…外容器
22…外容器の導出開口
51…注湯ノズルの基部
51a…基端部
52…加締め部
53…段部
60…導出部
61…筒状部材
L…筒状部材の内容器から外容器への突出長さ
Sw…内容器と外容器との間に有する空間の幅
S…内容器と外容器との間に有する空間