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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】温度調整ロール装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 27/00 20060101AFI20240411BHJP
   B41F 23/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B65H27/00 Z
B41F23/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089264
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183528
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】門 英昭
(72)【発明者】
【氏名】宮村 勲
(72)【発明者】
【氏名】石渡 和孝
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279493(JP,A)
【文献】実開昭60-177950(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 27/00
B41F 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液状熱媒体が流通する流通路を有し、連続搬送されるウェブに回転状態で接する温度調整ロールと、上記流通路に上記液状熱媒体を循環させる熱媒体循環手段とを備えた温度調整ロール装置であって、
上記温度調整ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備え、
上記流通路は、上記回転軸心に沿って上記外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、上記回転軸心上に延びるとともに上記主通路に連通して当該主通路に上記液状熱媒体を導入する導入通路と、上記回転軸心上に延びるとともに上記主通路よりも断面積が狭く設定され、且つ、上記主通路に連通して当該上記主通路の上記液状熱媒体を排出する排出通路と、一端が上記ロール本体部における上記主通路の下流側で、且つ、上記外周面部に接近する位置の上記主通路に連通する一方、他端が上記排出通路における上記主通路と連通している部分よりも下流側の部分に連通するエア除去通路とを備え
上記液状熱媒体が上記主通路から上記排出通路に流れ込む際、上記排出通路における液状熱媒体と上記主通路における液状熱媒体の速度差によって表れるベンチュリ効果により上記エア除去通路が負圧になることで、上記主通路の上部に溜まるエアが上記エア除去通路から排出されることを特徴とする温度調整ロール装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度調整ロール装置において、
上記エア除去通路は、上記回転軸心周りに等間隔に複数設けられていることを特徴とする温度調整ロール装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度調整ロール装置において、
上記エア除去通路は、上記ロール本体部の端面部に形成されるか、或いは、上記ロール本体部の端面部及び上記ロール本体部に一体に設けられた中心線が上記回転軸心に一致する軸部の内部に連続して形成されていることを特徴とする温度調整ロール装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の温度調整ロール装置において、
上記エア除去通路は、一端から他端まで直線状をなしていることを特徴とする温度調整ロール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ウェブの連続搬送を回転動作により案内するガイドロール等の内部に液状熱媒体を循環させてロール外周面の温度を調整する温度調整ロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、印刷装置や塗工装置等に設けられたガイドロール等の回転体には、内部に液状熱媒体を循環させて外周面の温度を調整することにより連続搬送されるウェブを加温又は冷却する、所謂、温度調整ロールと呼ばれるものが一般的に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている温度調整ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部と、該ロール本体部の各端面部にそれぞれ一体に設けられ、軸中心線が上記回転軸心に一致する一対の軸部とを備え、ロール本体部の内部には、液状熱媒体を流通させることが可能な中空部が形成されている。一方の軸部中央には、細長い円筒状をなす注水管が回転軸心上に取り付けられ、該注水管の一端側は、ロール本体部の中空部において回転軸心上を延びる形状になっている。また、ロール本体部の一方の端面部には、当該ロール本体部の外側と中空部とを連通させる排水孔が設けられている。そして、熱媒体循環ユニットを用いて注水管から液状熱媒体を注水してロール本体部の中空部に液状熱媒体を溜めるとともに当該液状熱媒体を排水孔から排水させることにより、温度調整ロールの外周面の温度を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-27138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の如き温度調整ロールは、ウェブの搬送速度が40m/min以下であるような低速回転時において内部に液状熱媒体を循環させる際、ロール本体部の中空部上部に行き場の無くなったエアが溜まってエア溜まりができてしまう。そうすると、ロール本体部の軸心方向及び周方向において温度分布にバラつきが発生してしまい、例えば、ウェブ表面に転写した塗工液を温度調整ロールで冷却させる際にムラができたり、或いは、案内するウェブ表面に塗工した接着剤の反応にバラつきが発生してしまうおそれがある。
【0006】
また、ロール本体部の上部にエアが溜まると、ロール外周面を所望する温度にするまでの時間が長くなり、ウェブを効率良く加温したり、或いは、冷却することができないという問題もある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロール外周面をバラつき無く、しかも、効率良く冷却又は加温可能な温度調整ロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、温度調整ロールの内部に主通路と当該主通路よりも断面積の狭い排出通路とを設けるとともに、主通路のロール外周面側と排出通路とを繋ぐエア除去通路を設けるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、内部に液状熱媒体が流通する流通路を有し、連続搬送されるウェブに回転状態で接する温度調整ロールと、上記流通路に上記液状熱媒体を循環させる熱媒体循環手段とを備えた温度調整ロール装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、上記温度調整ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備え、上記流通路は、上記回転軸心に沿って上記外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、上記回転軸心上に延びるとともに上記主通路に連通して当該主通路に上記液状熱媒体を導入する導入通路と、上記回転軸心上に延びるとともに上記主通路よりも断面積が狭く設定され、且つ、上記主通路に連通して当該上記主通路の上記液状熱媒体を排出する排出通路と、一端が上記ロール本体部における上記主通路の下流側で、且つ、上記外周面部に接近する位置の上記主通路に連通する一方、他端が上記排出通路における上記主通路と連通している部分よりも下流側の部分に連通するエア除去通路とを備え、上記液状熱媒体が上記主通路から上記排出通路に流れ込む際、上記排出通路における液状熱媒体と上記主通路における液状熱媒体の速度差によって表れるベンチュリ効果により上記エア除去通路が負圧になることで、上記主通路の上部に溜まるエアが上記エア除去通路から排出されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記エア除去通路は、上記回転軸心周りに等間隔に複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記エア除去通路は、上記ロール本体部の端面部に形成されるか、或いは、上記ロール本体部の端面部及び上記ロール本体部に一体に設けられた中心線が上記回転軸心に一致する軸部の内部に連続して形成されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記エア除去通路は、一端から他端まで直線状をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、温度調整ロール内部において液状熱媒体が主通路から排出通路に流れ込むと、主通路よりも排出通路の断面積が狭いので、排出通路における液状熱媒体の流速が主通路における液状熱媒体の流速よりも速くなる。すると、排出通路における液状熱媒体と主通路における液状熱媒体の流速差によってベンチュリ効果が表れてエア除去通路が負圧になり、主通路の上部に溜まるエアがエア除去通路から排出されて主通路の液面が上昇するので、当該主通路が液状熱媒体で満たされるようになる。したがって、循環する液状熱媒体がロール本体部における外周面部の裏面全域に常時接するようになり、ロール本体部における外周面部がバラつきなく冷却又は加温されるようになるので、温度調整ロールに接するウェブに温度分布のバラつきを発生させないようにすることができる。また、ロール本体部の上部にエアが溜まらなくなるので、ロール外周面を所望する温度にするまでの時間が短くなり、ウェブを効率良く加温したり、或いは、冷却することができる。
【0015】
第2の発明では、温度調整ロールの回転動作時において各エア除去通路が温度調整ロール上部のエア溜まりを短い間隔で通過していくようになるので、温度調整ロールの1回転当たりの主通路の上部に溜まるエアの排出時間が増えるようになり、効率良く主通路に液状熱媒体を隙間無く満たすことができる。
【0016】
第3の発明では、ロール本体部の外側にエア除去通路を有する構造を取り付ける場合に比べて温度調整ロールの外形が小さくなる。したがって、温度調整ロール全体をコンパクトにすることができ、温度調整ロール周りのスペースを有効利用することができる。
【0017】
第4の発明では、エア除去通路をエア及び液状熱媒体が通過する際の圧力損失が小さくなるので、主通路に溜まるエア及び液状熱媒体がエア除去通路をスムーズに流れるようになり、効率良く温度調整ロール内部に液状熱媒体を循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る温度調整ロール装置の概略断面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図1のIII部拡大図である。
図4】本発明の実施形態2における図3相当図である。
図5】本発明の実施形態3における図1相当図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
図7図5のVII-VII線における断面図である。
図8】本発明の実施形態4における図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0020】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1の温度調整ロール装置1示す。該温度調整ロール装置1は、連続搬送されるウェブW1に接して当該ウェブW1の温度を調整するためのものであり、例えば、印刷装置や塗工装置等に組み込まれてコーティングロールやガイドロールとして使用されるものである。
【0021】
温度調整ロール装置1は、内部に液状熱媒体H1が流通する流通路10を有し、回転軸心C1周りに回転可能な温度調整ロール2と、流通路10に液状熱媒体H1を循環させる熱媒体循環ユニット3(熱媒体循環手段)とを備えている。尚、本発明の実施形態1で連続搬送されるウェブW1は、例えば、厚みが薄くて柔らかい長尺状のプラスチックフィルムからなるものである。
【0022】
温度調整ロール2は、金属材により形成され、ロール中心線が回転軸心C1に一致するとともに外周面部4aが円筒状に延びるロール本体部4と、該ロール本体部4の各端面部4bにそれぞれ一体に設けられ、軸中心線が回転軸心C1に一致する一対の軸部5と、各軸部5と熱媒体循環ユニット3とを接続する一対の回転継手6とを備え、各軸部5は、ベアリングB1を介して支持フレーム7に回転可能に軸支されている。
【0023】
流通路10は、ロール本体部4の内部に形成された主通路10aと、一方の軸部5の回転軸心C1上を直線状に延びるとともに主通路10aに連通する導入通路10bと、他方の軸部5の回転軸心C1上を直線状に延びるとともに主通路10aに連通する排出通路10cとを備えている。
【0024】
主通路10aは、断面円形状をなすとともに外周面部4aの全域に対応するように回転軸心C1に沿って延びる形状をなしている。
【0025】
導入通路10bは、断面円形状をなすとともに主通路10aよりも断面積が狭く設定され、熱媒体循環ユニット3から吐出される液状熱媒体H1を主通路10aに導入するようになっている。
【0026】
また、排出通路10cは、断面円形状をなすとともに主通路10aよりも断面積が狭く設定され、主通路10aの液状熱媒体H1を熱媒体循環ユニット3へと排出するようになっている。
【0027】
つまり、熱媒体循環ユニット3は、温度調整ロール2の一端側から他端側に液状熱媒体H1を循環させていて、当該液状熱媒体H1は、温度調整ロール2の内部を導入通路10b、主通路10a及び排出通路10cの順に通過するようになっている。
【0028】
ロール本体部4における他方の端面部4bの内部には、正面視でL字状に延びるエア除去通路10dが形成されている。
【0029】
該エア除去通路10dは、図2乃至図4に示すように、一端がロール本体部4における主通路10aの下流側で、且つ、外周面部4aに接近する位置の主通路10aに連通する一方、他端が排出通路10cの上流側に連通していて、回転軸心C1周りに等間隔に12か所形成されている。
【0030】
次に、本発明の実施形態1に係る温度調整ロール装置1を作動させたときの温度調整ロール2内部における液状熱媒体H1の流れについて詳述する。
【0031】
まず初めに、温度調整ロール装置1における熱媒体循環ユニット3を作動させる。すると、液状熱媒体H1が温度調整ロール2における導入通路10b、主通路10a及び排出通路10cを順に流れる。
【0032】
次いで、温度調整ロール2を回転軸心C1周りの一方側(図2の矢印R1)に回転させるとともに、連続搬送されるウェブW1に接触させる。このとき、温度調整ロール2の内部において液状熱媒体H1が導入通路10b、主通路10a及び排出通路10cの順に流れているが、液状熱媒体H1が主通路10aから排出通路10cに流れ込む際、主通路10aよりも排出通路10cの断面積が狭いので、排出通路10cの流速Y1が主通路10aにおける液状熱媒体H1の流速Z1よりも速くなる。すると、排出通路10cにおける液状熱媒体H1と主通路10aにおける液状熱媒体H1の流速差によってベンチュリ効果が表れてエア除去通路10dが負圧になり、図3の矢印X1に示すように、主通路10aの上部に溜まるエアがエア除去通路10dから排出されて主通路10aの液面が上昇するので、当該主通路10aが液状熱媒体H1で満たされるようになる。したがって、循環する液状熱媒体H1がロール本体部4における外周面部4aの裏面全域に常時接するようになり、ロール本体部4における外周面部4aがバラつきなく冷却又は加温されるようになるので、温度調整ロール2に接するウェブW1に温度分布のバラつきを発生させないようにすることができる。
【0033】
また、ロール本体部4の上部にエアが溜まらなくなるので、外周面部4aを所望する温度にするまでの時間が短くなり、ウェブW1を効率良く加温したり、或いは、冷却することができる。
【0034】
また、エア除去通路10dが回転軸心C1周りに等間隔に12か所形成されているので、温度調整ロール2の回転動作時において各エア除去通路10dが温度調整ロール2の上部のエア溜まりを短い間隔で通過していくようになる。したがって、温度調整ロール2の1回転当たりの主通路10aの上部に溜まるエアの排出時間が増えるようになり、効率良く主通路10aに液状熱媒体H1を隙間無く満たすことができる。
【0035】
また、各エア除去通路10dは、ロール本体部4における端面部4bの内部に形成されているので、ロール本体部4の外側にエア除去通路10dを有する構造を取り付ける場合に比べて温度調整ロール2の外形が小さくなる。したがって、温度調整ロール2全体をコンパクトにすることができ、温度調整ロール2周りのスペースを有効利用することができる。
【0036】
《発明の実施形態2》
図4は、本発明の実施形態2に係る温度調整ロール装置1の温度調整ロール2を示す。この実施形態2では、温度調整ロール2の一部構造が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0037】
実施形態2の流通路10におけるエア除去通路10dは、ロール本体部4における他方の端面部4bと他方の軸部5とに跨って主通路10aから排出通路10cの下流側にまで直線状に延びている。したがって、実施形態1の如くエア除去通路10dに直角に曲がる部分がある場合等に比べてエア除去通路10dをエア及び液状熱媒体H1が通過する際の圧力損失が小さくなるので、主通路10aに溜まるエア及び液状熱媒体H1がエア除去通路10dをスムーズに流れるようになり、効率良く温度調整ロール2内部に液状熱媒体H1を循環させることができる。
【0038】
尚、本発明の実施形態1,2では、エア除去通路10dを回転軸心周りに12か所形成しているが、これに限らず、1か所にだけ形成してもよいし、12か所以上形成してもよい。
【0039】
また、本発明の実施形態1,2では、エア除去通路10dが正面視でL字形状や直線形状をなしているが、これに限らず、湾曲する形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0040】
《発明の実施形態3》
図5乃至図7は、本発明の実施形態3に係る温度調整ロール装置1を示す。この実施形態3では、温度調整ロール2の一部構造が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0041】
実施形態3の温度調整ロール2は、所謂二重管構造である。ロール本体部4の内部に形成された主通路10aは、一方の端面部4bの内部において回転軸心C1周りに等間隔に形成され、回転軸心C1方向に見て放射状に延びる4つの第1通路10eと、中心が回転軸心C1に一致する断面環状をなすとともに、外周面部4aの全域に対応するように回転軸心C1に沿って延びる第2通路10fと、他方の端面部4bの内部において回転軸心C1周りに等間隔に形成され、回転軸心C1方向に見て放射状に延びる4つの第3通路10gとを有している。
【0042】
各第1通路10eは、導入通路10bと第2通路10fとを連通させる一方、各第3通路10gは、第2通路10fと排出通路10cとを連通させていて、当該排出通路10cは、第2通路10fよりも断面が狭く設定されている。
【0043】
一方の軸部5の周りには、図6に示すように、回転軸心C1方向に見て略放射状に延びる4つの上流側配管8が回転軸心C1周りに等間隔に配設されている。
【0044】
各上流側配管8は、本体部分がゴム材からなるチューブで構成され、一端がロール本体部4における主通路10aの上流側で、且つ、外周面部4aに接近する位置の主通路10aに連通する一方、他端が導入通路10bの下流側に連通していて、主通路10a上部に溜まるエアを導入通路10bに導くとともに循環する液状熱媒体H1に混合させる役割を担っている。
【0045】
他方の軸部5の周りには、図7に示すように、回転軸心C1方向に見て略放射状に延びる4つの下流側配管9(エア除去通路)が回転軸心C1周りに等間隔に配設されている。
【0046】
各下流側配管9は、本体部分がゴム材からなるチューブで構成され、一端がロール本体部4における主通路10aの下流側で、且つ、外周面部4aに接近する位置の主通路10aに連通する一方、他端が排出通路10cの上流側に連通している。
【0047】
尚、本発明の実施形態3に係る温度調整ロール2において主通路10a上部に溜まるエアが排出される動きは、排出される経路がエア除去通路10dから下流側配管9に変わる以外は実施形態1と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0048】
以上より、本発明の実施形態3によると、主通路10a上部に溜まるエアを除去するための各下流側配管9がロール本体部4や軸部5の外側に配設されているので、エア除去通路10dがロール本体部4の端面部4b内部に形成された実施形態1の如き構造に比べて、加工コストが低くなり、コストを抑えた温度調整ロール装置1にすることができる。
【0049】
尚、本発明の実施形態3では、上流側配管8及び下流側配管9の本体部分がゴム材からなるチューブで構成されているが、それに限らず、上流側配管8及び下流側配管9は金属パイプや樹脂パイプで形成されていてもよい。
【0050】
《発明の実施形態4》
図8は、本発明の実施形態4に係る温度調整ロール装置1を示す。この実施形態4では、温度調整ロール2の一部構造が実施形態3と異なるだけでその他は実施形態3と同じであるため、以下、実施形態3と異なる部分のみを説明する。
【0051】
実施形態4の一方の軸部5の内部には、導入通路10bが設けられておらず、各上流側配管8も設けられていない。
【0052】
一方、実施形態4の他方の軸部5における排出通路10cの内側には、導入通路10hを内部に有する直線状に延びる円筒状の導入管11が回転軸心C1上に設けられている。
【0053】
すなわち、実施形態4の排出通路10cは、中心が回転軸心C1に一致する断面環状をなしていて、その一端は、各第3通路10gに連通している。
【0054】
導入管11の一端側は、ロール本体部4の内側の回転軸心C1上を延びて一方の端面部4bに繋がっていて、導入通路10hの一端は、各第1通路10eに連通している。
【0055】
実施形態4では、回転継手6が1つだけ熱媒体循環ユニット3に繋がっている。すなわち、回転継手6は、所謂複式内管回転式と呼ばれるものであり、導入通路10hの他端と排出通路10cの他端との両方に繋がっている。
【0056】
そして、本発明の実施形態4に係る温度調整ロール装置1を作動させると、液状熱媒体H1は、回転継手6を介して他方の軸部5内部の導入通路10hを通過した後、第1通路10e、第2通路10f及び第3通路10gと順に通過して回転継手6を介して排出されるようになっている。
【0057】
尚、本発明の実施形態4に係る温度調整ロール2において主通路10a上部に溜まるエアが下流側配管9を介して排出される動きは、実施形態3と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0058】
以上より、本発明の実施形態4によると、温度調整ロール2の内部構造が、温度調整ロール2の同じ端部において液状熱媒体H1の導入と排出とを行うような構造であっても、実施形態3の温度調整ロール装置1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
尚、本発明の実施形態1~4に係る温度調整ロール装置1は、様々な装置に適用することが可能であり、塗工装置のコーティングロールやガイドロールに適用可能であるだけでなく、例えば、ウェブW1を送り出すフィードロールや、ラミネート装置で用いられるラミネートロール等にも適用することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態1~4では、温度調整ロール2が金属材で形成されているが、その他の材質で形成されていてもよい。
【0061】
また、本発明の実施形態1~4の温度調整ロール装置1は、プラスチックフィルムからなるウェブW1を案内しているが、その他の材質のウェブW1の案内にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えば、ウェブの連続搬送を回転動作により案内するガイドロール等の内部に液状熱媒体を循環させてロール外周面の温度を調整する温度調整ロール装置に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 温度調整ロール装置
2 温度調整ロール
3 熱媒体循環ユニット(熱媒体循環手段)
4 ロール本体部
4a 外周面部
4b 端面部
5 軸部
9 下流側配管(エア除去通路)
10 流通路
10a 主通路
10b 導入通路
10c 排出通路
10d エア除去通路
10h 導入通路
H1 液状熱媒体
W1 ウェブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8