IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社内外の特許一覧

<>
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図1
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図2
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図3
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図4
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図5
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図6
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図7
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図8
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図9
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図10
  • 特許-キャスタ装置および移動体 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】キャスタ装置および移動体
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20240411BHJP
   B60B 33/06 20060101ALI20240411BHJP
   A47B 13/02 20060101ALI20240411BHJP
   A47B 91/06 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B60B33/00 T
B60B33/06 A
A47B13/02
A47B91/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020097974
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187417
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】391041822
【氏名又は名称】株式会社内外
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】南浦 陽一
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-093503(JP,U)
【文献】特開平11-011320(JP,A)
【文献】特開2003-325234(JP,A)
【文献】実開平05-010006(JP,U)
【文献】特開平09-202172(JP,A)
【文献】特開2003-245308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
B60B 33/06
A47B 13/02
A47B 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられるキャスタ装置であって、
フレーム部材と、
前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持された車輪と、
前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持され、前記床面に接地した状態で当該床面に対して前記移動体を移動不能に支持する脚部と、
切替スイッチと、
モータを含み、前記切替スイッチが受ける操作に応じて、前記モータの駆動力により前記脚部と前記車輪とを相対的に上下方向に移動させて、前記脚部のみが床面に接地する第1接地状態と前記車輪のみが床面に接地する第2接地状態との間で、床面に対する前記脚部及び前記車輪の接地状態を切り替える切替機構部と、を含み、
前記切替機構部は、第1接地状態から第2接地状態への切替えの際には、前記車輪を床面に接地させてから前記脚部を上方へ移動させ、第2接地状態から第1接地状態への切替えの際には、前記脚部を床面に接地させてから前記車輪を上方へ移動させ、さらに、
前記切替機構部は、前記フレーム部材に対して上下方向に移動自在に支持されて前記車輪を保持する車輪ホルダと、前記脚部に対応する第1カム部及び前記車輪に対応する第2カム部と、前記脚部に設けられて前記第1カム部に接触する第1カムフォロア部及び前記車輪ホルダに設けられて前記第2カム部に接触する第2カムフォロア部とを含み、かつ、前記駆動力により前記第1カム部及び第2カム部を変位させることにより、当該変位に伴い前記脚部及び前記車輪を上下方向に移動させる、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項2】
請求項に記載のキャスタ装置において、
前記切替機構部は、前記第1カム部と前記第2カム部とが連動するように構成されている、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項3】
請求項に記載のキャスタ装置において、
前記切替機構部は、前記第1カム部及び第2カム部を備えかつ前記モータの駆動力により床面に沿った方向にスライドするカム部材を含み、
前記第1カム部及び前記第2カム部は、前記カム部材のスライドに伴い前記脚部及び前記車輪を上下方向に移動させる形状を有する、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載のキャスタ装置において、
前記脚部と前記車輪とは互いに隣接する位置に配置されている、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載のキャスタ装置において、
複数の前記脚部と複数の前記車輪とを含み、
前記切替機構部は、前記複数の脚部及び前記複数の車輪のうち一方側を他方側に対して一体的に上下方向に移動させる、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載のキャスタ装置において、
前記脚部は、高さ調整が可能なアジャスタ機能を備えている、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載のキャスタ装置において、
前記切替機構部は、前記脚部と前記車輪とを相対的に上下方向に移動させるための駆動力として人力駆動力を入力することが可能な入力部を備えている、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項8】
移動体に備えられるキャスタ装置であって、
フレーム部材と、
前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持された車輪と、
前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持され、前記床面に接地した状態で当該床面に対して前記移動体を移動不能に支持する脚部と、
人力駆動力の入力部を含み、当該入力部に入力される人力駆動力により、前記脚部と前記車輪とを相対的に上下方向に移動させて、前記脚部のみが床面に接地する第1接地状態と前記車輪のみが床面に接地する第2接地状態との間で、床面に対する前記脚部及び前記車輪の接地状態を切り替える切替機構部と、を含み、
前記切替機構部は、第1接地状態から第2接地状態への切替えの際には、前記車輪を床面に接地させてから前記脚部を上方へ移動させ、第2接地状態から第1接地状態への切替えの際には、前記脚部を床面に接地させてから前記車輪を上方へ移動させ、さらに、
前記切替機構部は、前記フレーム部材に対して上下方向に移動自在に支持されて前記車輪を保持する車輪ホルダと、前記脚部に対応する第1カム部及び前記車輪に対応する第2カム部と、前記脚部に設けられて前記第1カム部に接触する第1カムフォロア部及び前記車輪ホルダに設けられて前記第2カム部に接触する第2カムフォロア部とを含み、かつ、前記人力駆動力により前記第1カム部及び第2カム部を変位させることにより、当該変位に伴い前記脚部及び前記車輪を上下方向に移動させる、ことを特徴とするキャスタ装置。
【請求項9】
キャスタ装置を備えた移動体であって、
前記キャスタ装置として、請求項1乃至の何れか一項に記載のキャスタ装置を備えていることを特徴とする移動体。
【請求項10】
請求項に記載の移動体であって、
当該移動体は、テーブル板を有するテーブル本体部と、このテーブル本体部の下面に各々備えられた複数のテーブル脚とを備えたテーブルであり、
前記テーブル脚に、前記車輪、前記脚部及び前記切替機構部が備えられている、ことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタ装置、及びこのキャスタ装置を備えた移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャビネットなどの移動体に組み込まれるキャスタ装置が知られている。本願の出願人も、例えば特許文献1に開示されるような、制動状態と制動解除状態とに切替可能なキャスタ装置を開発し、提案している。
【0003】
このキャスタ装置は、制動状態と制動解除状態とに切替え可能な複数の車輪と、ペダル式の操作部と、当該操作部に入力される操作力を各車輪に伝達する機構部とを備えている。この構成により、前記操作部に対する足下操作で、複数の車輪の制動状態と制動解除状態との切替えを一括して行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3173158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上記キャスタ装置は、車輪自体に制動状態と制動解除状態とを切替えるための機構を組み込む必要があるため、車輪の構造自体が複雑であり、ここに改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車輪自体に特殊な切替構造を設けることなく、キャスタ装置の制動状態と制動解除状態との切替えを比較的簡単な構成で行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願の発明者は、車輪と、移動体を床面に対して移動不能に支持するための脚部とを備え、切替スイッチの操作により、モータ駆動で車輪を脚部に対して上下方向に移動させるキャスタ装置を考えている。このような構成によれば、車輪自体の構造をさほど複雑化することなく、キャスタ装置を制動状態と制動解除状態とに切替えることが可能となる。
【0008】
ところが、この構成の場合には、車輪の上下動に伴い移動体全体が上下方向に変位する。そのため、例えば移動体がキャビネットやテーブルの場合には、制動状態と制動解除状態との切替えの際に、収容物や載置物が転倒する場合があり煩雑である。そこで、本願の発明者は、このような課題を解決するために、さらに鋭意検討を重ね、以下のようなキャスタ装置を発明するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一局面に係るキャスタ装置は、移動体に備えられるキャスタ装置であって、フレーム部材と、前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持された車輪と、前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持され、前記床面に接地した状態で当該床面に対して前記移動体を移動不能に支持する脚部と、切替スイッチと、モータを含み、前記切替スイッチが受ける操作に応じて、前記モータの駆動力により前記脚部と前記車輪とを相対的に上下方向に移動させて、前記脚部のみが床面に接地する第1接地状態と前記車輪のみが床面に接地する第2接地状態との間で、床面に対する前記脚部及び前記車輪の接地状態を切り替える切替機構部と、を含み、前記切替機構部は、第1接地状態から第2接地状態への切替えの際には、前記車輪を床面に接地させてから前記脚部を上方へ移動させ、第2接地状態から第1接地状態への切替えの際には、前記脚部を床面に接地させてから前記車輪を上方へ移動させ、さらに、前記切替機構部は、前記フレーム部材に対して上下方向に移動自在に支持されて前記車輪を保持する車輪ホルダと、前記脚部に対応する第1カム部及び前記車輪に対応する第2カム部と、前記脚部に設けられて前記第1カム部に接触する第1カムフォロア部及び前記車輪ホルダに設けられて前記第2カム部に接触する第2カムフォロア部とを含み、かつ、前記駆動力により前記第1カム部及び第2カム部を変位させることにより、当該変位に伴い前記脚部及び前記車輪を上下方向に移動させるものである。
【0010】
このキャスタ装置では、切替スイッチを操作すると、モータの駆動によって、第1接地状態、すなわち脚部のみが床面に接地することにより移動体の移動が不能となる状態と、第2接地状態、すなわち車輪のみが床面に接地することにより移動体の移動が可能となる状態とが切り替わる。つまり、キャスタ装置が制動状態と制動解除状態とに切り替わる。そして、第1接地状態から第2接地状態への切替えの際には、前記車輪が床面に接地してから前記脚部が上方へ移動し、第2接地状態から第1接地状態への切替えの際には、前記脚部が床面に接地してから前記車輪が上方へ移動する。
【0011】
このような構成によれば、車輪自体に特殊な切替構造を設けることなく、キャスタ装置の制動状態と制動解除状態との切替えを比較的簡単な構成で行うことができる。しかも、移動体の高さを変動させることなく、キャスタ装置を制動状態と制動解除状態とに切り替えることが可能となる。
また、いわゆるカム機構を用いた比較的簡単な切替機構部の構成で、上述したような脚部及び車輪の接地状態の切替え動作を実現することが可能となる。
【0012】
なお、本発明において「接地」とは、脚部や車輪が床面に当接する意味であり、また、「移動不能」とは、脚部が床面に平面接触するなどして移動体を移動させることが大凡困難となる状態を意味する。
【0015】
この場合、前記切替機構部は、前記第1カム部と前記第2カム部とが連動するように構成されているのが好適である。
【0016】
この構成によれば、脚部の接地状態と車輪の接地状態との切替えをタイミング的にずれなく行わせることが可能となる。そのため、キャスタ装置における制動状態と制動解除状態との切り替えを、より確実にかつ安定的に行わせることが可能となる。
【0017】
この場合、より具体的に、前記切替機構部は、前記第1カム部及び第2カム部を備えかつ前記モータの駆動により床面に沿った方向にスライドするカム部材を含み、前記第1カム部及び前記第2カム部は、前記カム部材のスライドに伴い前記脚部及び前記車輪を上下方向に移動させる形状を有する。
【0018】
この構成によれば、カム部材の水平方向のスライドに伴い、上述したような脚部及び車輪の接地状態の切替えを実現することが可能となる。そのため、切替機構部の上下方向の占有スペースを抑えながら制動状態と制動解除状態との切り替えを行うことが可能となる。
【0019】
上記キャスタ装置において、前記脚部と前記車輪とは互いに隣接する位置に配置されているのが好適である。
【0020】
この構成によれば、接地状態の切替えに伴い脚部と車輪の接地位置が大きく異なることが避けられるため、接地状態の切替えの前後を通じて安定的に移動体を床面に対して支持することが可能となる。
【0021】
なお、上記キャスタ装置は、複数の前記脚部と複数の前記車輪とを含み、前記切替機構部は、前記複数の脚部及び前記複数の車輪のうち一方側を他方側に対して一体的に上下方向に移動させるのが好適である。
【0022】
この構成によれば、複数の脚部又は複数の車輪で安定的に移動体を支持しながら、移動体のバランスを保った状態で安定的に第1接地状態と第2接地状態との間の切替えを行うことが可能となる。
【0023】
また、上記キャスタ装置において、前記脚部は、高さ調整が可能なアジャスタ機能を備えているのが好適である。
【0024】
この構成によれば、脚部の接地面の高さを床面の起伏などに応じた高さに微調整することが可能となる。そのため、第1接地状態において、より安定的に移動体を床面に対して支持することが可能となる。
【0025】
また、前記切替機構部は、前記脚部と前記車輪とを相対的に上下方向に移動させるための駆動力として人力駆動力を入力することが可能な入力部を備えているのが好適である。
【0026】
この構成によれば、停電時など、電力供給を付けることができない環境下においても、人力で第1接地状態と第2接地状態との間の切替えを行うことが可能となる。
【0027】
一方、本発明の一局面に係る他のキャスタ装置は、移動体に備えられるキャスタ装置であって、フレーム部材と、前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持された車輪と、前記フレーム部材に対して上下方向に変位可能に支持され、前記床面に接地した状態で当該床面に対して前記移動体を移動不能に支持する脚部と、人力駆動力の入力部を含み、当該入力部に入力される人力駆動力により、前記脚部と前記車輪とを相対的に上下方向に移動させて、前記脚部のみが床面に接地する第1接地状態と前記車輪のみが床面に接地する第2接地状態との間で、床面に対する前記脚部及び前記車輪の接地状態を切り替える切替機構部と、を含み、前記切替機構部は、第1接地状態から第2接地状態への切替えの際には、前記車輪を床面に接地させてから前記脚部を上方へ移動させ、第2接地状態から第1接地状態への切替えの際には、前記脚部を床面に接地させてから前記車輪を上方へ移動させ、さらに、前記切替機構部は、前記フレーム部材に対して上下方向に移動自在に支持されて前記車輪を保持する車輪ホルダと、前記脚部に対応する第1カム部及び前記車輪に対応する第2カム部と、前記脚部に設けられて前記第1カム部に接触する第1カムフォロア部及び前記車輪ホルダに設けられて前記第2カム部に接触する第2カムフォロア部とを含み、かつ、前記人力駆動力により前記第1カム部及び第2カム部を変位させることにより、当該変位に伴い前記脚部及び前記車輪を上下方向に移動させるものである。
【0028】
このキャスタ装置の場合も、モータ駆動か人力駆動かの違いはあるものの、先に説明したキャスタ装置と同様に、車輪自体に特殊な切替構造を設けることなく、また、移動体の高さを変動させることなく、制動状態と制動解除状態とを切り替えることが可能となる。
【0029】
一方、本発明の一局面に係る移動体は、キャスタ装置を備えた移動体であって、前記キャスタ装置として、上述した何れかのキャスタ装置を備えているものである。
【0030】
より具体的に、当該移動体は、テーブル板を有するテーブル本体部と、このテーブル本体部の下面に各々備えられた複数のテーブル脚とを備えたテーブルであり、前記テーブル脚に、前記車輪、前記脚部及び前記切替機構部が備えられているものである。
【0031】
これらの移動体(テーブル)によれば、上述した何れかのキャスタ装置が備えられているので、車輪自体に特殊な切替構造を設けることなく、また、移動体の高さを変動させることなく、制動状態と制動解除状態とを切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るキャスタ装置よれば、車輪自体に特殊な切替構造を設けることなく、また、移動体の高さを変動させることなく、制動状態と制動解除状態との切替えを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係る移動体(本発明のキャスタ装置を備えた移動体)である昇降テーブルの斜視図である。
図2】テーブル脚の構造を示す昇降テーブルの要部斜視図である。
図3】キャスタ部を示す斜視図(上壁部は省略)である。
図4】キャスタ部を示す斜視図(図3の部分破断図)である。
図5】(a)は、第1接地状態におけるキャスタ部の要部断面図であり、(b)は、第2接地状態におけるキャスタ部の要部断面図である。
図6】接地状態の切替え動作を説明するためのキャスタ部の側面図(一部断面図)であり、(a)は第1接地状態を、(b)は中間の接地状態を、(c)は第2接地状態を各々示している。
図7】変形例に係るキャスタ部を示す斜視図(図3に対応する図)である。
図8】第2実施形態に係る昇降テーブルのキャスタ部の要部斜視図である。
図9】接地状態の切替え動作を説明するためのキャスタ部の要部側面図であり、(a)は第1接地状態を、(b)は中間の接地状態を、(c)は第2接地状態を各々示している。
図10】変形例に係るキャスタ部の要部斜視図である。
図11】変形例に係るキャスタ部の要部斜視図(図3に対応する図)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る移動体(本発明のキャスタ装置を備えた移動体)である昇降テーブル1の斜視図である。昇降テーブル1は、テーブル本体部2とテーブル脚3とを備え、以下に説明する通り、テーブル本体部2の高さを変更することが可能に構成されたテーブルである。
【0036】
テーブル本体部2は、平面視長方形のテーブル板10と、テーブル板10の下面に組付けられたテーブルフレーム12とを含む。テーブルフレーム12は、金属製の箱形フレームであり、テーブル板10の短手方向の中央部に、当該テーブル板10の長手方向に亘って設けられている。なお、以下の各部の説明においては、図1中に示すように、テーブル板10の短手方向と平行な方向を「前後方向」、テーブル板10の長手方向と平行な方向を「幅方向」と称する。
【0037】
前記テーブル脚3は、テーブル本体部2の下面、詳しくはテーブルフレーム12の下面の幅方向(長手方向)両端部分に固定されている。各テーブル脚3は、上下方向に延びる脚本体部4と、その下端部から床面Fに沿って前後方向に延びるキャスタ部5とを備えている。
【0038】
図2は、テーブル脚3の構造を示す昇降テーブル1の要部斜視図である。テーブル脚3の脚本体部4は、伸縮可能な構造を有している。詳しくは、脚本体部4は、第1~第3の断面矩形の3つの筒体20a~20cが伸縮自在に連結されたテレスコピック型筒体で構成されている。筒体20a~20cは、上から下に順にサイズが小さくなっている。最上位の第1筒体20aは、テーブルフレーム12の下面に固定されており、最下位の第3筒体20cは、キャスタ部5の上面に固定されている。
【0039】
昇降テーブル1には、各脚本体部4を駆動するための以下のような伸縮機構22が脚本体部4毎に設けられている。
【0040】
伸縮機構22は、脚本体部4の内部を上下方向に延びる駆動軸25と、この駆動軸25が挿入される上下一対のガイド部材26,27と、駆動軸25を回転駆動するモータ24とを備えている。上側のガイド部材26は第1筒体20aに、下側のガイド部材27は第3筒体20cに各々固定されている。また、モータ24は、テーブルフレーム12内の長手方向の端部に配置されている。
【0041】
駆動軸25は、中央部分よりも下側の領域のみがねじ軸となっている。駆動軸25は、ねじ軸より上側の部分が上側のガイド部材26を介して第1筒体20aに回転自在に支持されており、ねじ軸の部分は、ナット部材からなる下側のガイド部材27に螺合挿入されている。また、駆動軸25の上端部にはウォームホイール28が固定されており、前記モータ24の出力軸に連結されたウォーム24aが当該ウォームホイール28に噛合している。
【0042】
この構成により、モータ24によって駆動軸25が回転駆動されると、第1筒体20aに固定された上側のガイド部材26に対して、第3筒体20cに固定された下側のガイド部材27が上下方向に移動する。この結果、脚本体部4が伸縮し、テーブル本体部2が上下方向に移動する。
【0043】
図3及び図4は、キャスタ部5を示す斜視図であり、図4は、図3の一部を部分的に破断して図示している。
【0044】
図2図4に示すように、キャスタ部5は、前後方向に延びるキャスタフレーム30(本発明の「フレーム部材」に相当する)と、このキャスタフレーム30の両端に各々備えられた前後一対の脚部36と、これら脚部36の内側(前後方向における内側)に備えられた前後一対のキャスタ34と、床面Fに対する脚部36及びキャスタ34の接地状態を切り替える切替機構部70とを備えている。
【0045】
キャスタフレーム30は、断面矩形の中空構造を有した金属製のフレームであって高い剛性を有した構造部材である。テーブル脚3の前記脚本体部4(第3筒状体20c)は、キャスタフレーム30の上面の前後方向(長手方向)中央部に、ボルトナット等により固定されている。なお、図3及び図4では、キャスタ部5の内部構成を示すために、便宜上、キャスタフレーム30の上壁部及び側壁部の一部を省略している。
【0046】
図5は、キャスタ部5の要部断面図を示しており、(a)は後述する第1接地状態S1で、(b)は後述する第2接地状態S2で各々キャスタ部5の要部を示している。
【0047】
前記脚部36は、床面Fに接地することにより昇降テーブル1を移動不能に支持するものである。脚部36は、キャスタフレーム30の下面に上下動(昇降)可能に設けられている。具体的には、脚部36は、概略円柱状を成し、その中心に上方に延びる軸部36aを備えている。一方、キャスタフレーム30の下面には、筒状のサポート部材54が設けられており、このサポート部材54に、脚部36の軸部36aがスライド自在に挿入、支持されている。この構成により、脚部36は、キャスタフレーム30に対して上下動可能となっている。
【0048】
なお、脚部36の下面、すなわち接地面は、樹脂又はゴム材料などの滑り止め機能を有する材料で形成されており、後記第1接地状態S1では、当該接地面を介して脚部36が床面Fに接地する。これにより、昇降テーブル1が床面Fに対して移動不能となる。
【0049】
キャスタ34は、昇降テーブル1を床面Fに対して移動可能に支持するためのものであり、脚部36に隣接する位置に配置されている。
【0050】
キャスタ34は、図3図5に示すように、一対の車輪40と、車輪ホルダ42と、サポート部材44とを備えて構成されている。具体的には、一対の車輪40は、車輪ホルダ42に回転自在に支持されている。車輪ホルダ42のうち、車輪40の回転軸から偏心した位置には、上方に延びる軸部42aが設けられている。一方、キャスタフレーム30の下面に、筒状の前記サポート部材44が設けられ、このサポート部材44に、車輪ホルダ42の前記軸部42aがスライド自在かつ回転自在に挿入、支持されている。この構成により、車輪40は、キャスタフレーム30に対して上下動可能で、かつ、車輪ホルダ42と共に軸部42aを中心とする垂直軸回りに旋回可能となっている。
【0051】
切替機構部70は、床面Fに対する脚部36と車輪40との接地状態を切り替えるものである。具体的には、切替機構部70は、図5(a)及び図6(a)に示すように、キャスタ部5の前後一対の脚部36のみが床面Fに接地する状態(第1接地状態S1という)と、図5(b)及び図6(c)に示すように、前後一対のキャスタ34の車輪40のみが床面Fに接地する状態(第2接地状態S2という)との間で、床面Fに対する脚部36と車輪40との接地状態を切り替える。なお、図6は、切替機構部70による接地状態の切替え動作を説明するためのキャスタ部5の側面図(一部断面図)である。
【0052】
切替機構部70は、図3図5に示すように、前後一対のカム部材60と、これらカム部材60を前後方向に移動させるためのモータ72及び駆動軸74等とを含む。
【0053】
カム部材60は、その移動に伴い、脚部36及び車輪40を上下方向に変位させるものであり、キャスタフレーム30の内部に、その前後方向(長手方向)にスライド可能に配置されている。カム部材60は、金属製の部材であり、前後方向に延びる平面視長方形の天井部61aと、その幅方向両端から各々下方に延びる一対の側壁部61bとを備えた断面逆U型の形状を有している。
【0054】
各側壁部61bには、各々、前後方向に延びる車輪用カム溝62(本発明の「第2カム部」に相当する)と、前後方向に延びる脚部用カム溝64(本発明の「第1カム部」に相当する)とが形成されている。これらのカム溝62、64を介して、脚部36及び車輪40がカム部材60に連結されている。
【0055】
詳しくは、車輪ホルダ42の前記軸部42aの先端部は、前記サポート部材44を通じてキャスタフレーム30の内部に挿入され、カム部材60の両側壁部61bの間に介在している。同様に、脚部36の前記軸部36aの先端部も、前記サポート部材54を通じてキャスタフレーム30の内部に挿入され、カム部材60の両側壁部61bの間に介在している。そして、車輪ホルダ42の軸部42aの先端部に、幅方向に延びるガイド軸46(本発明の「第2カムフォロア部」に相当する)が設けられ、このガイド軸46の両端が各側壁部61bの車輪用カム溝62に各々挿入されている。同様に、脚部36の軸部36aの先端部に、幅方向に延びるガイド軸52(本発明の「第1カムフォロア部」に相当する)が設けられ、このガイド軸52の両端が各側壁部61bの車輪用カム溝62に各々挿入されている。この構成により、カム部材60が前後方向に移動すると、車輪用カム溝62に沿ってガイド軸46が案内されて、車輪ホルダ42と共に車輪40が上下方向に移動する。同様に、脚部用カム溝64に沿ってガイド軸52が案内されて、脚部36が上下方向に移動する。
【0056】
図3図5に示すように、車輪用カム溝62は、キャスタ部5(キャスタフレーム30)の中央側から外側(末端側)に向かって床面Fに沿って真っ直ぐに延びる水平溝部63aとその末端から先上がりに延びる傾斜溝部63bとを含む。逆に、脚部用カム溝64は、前記中央側から外側に向かって先下がりに延びる傾斜溝部65aとその末端から床面Fに沿って真っ直ぐに延びる水平溝部65bとを含む。このように車輪用カム溝62と脚部用カム溝64とが概略逆位相に形成されることで、カム部材60の前後方向の移動に伴い、脚部36と車輪40とが上下方向の互いに異なる向きに相対的に移動し、第1接地状態S1と第2接地状態S2とが切り替わる。
【0057】
この場合、第1接地状態S1(図5(a)、図6(a))から第2接地状態S2(図5(b)、図6(c))への切替えの際には、脚部36の位置を維持したままで車輪40がまず床面Fに接地し、その後、脚部36が上方へ移動し(図6(b))、第2接地状態S2(図5(b)、図6(c))から第1接地状態S1(図5(a)、図6(a))への切替えの際には、車輪40の位置を維持したままで脚部36がまず床面Fに接地し、その後、車輪40が上方へ移動するように(図6(b))、車輪用カム溝62及び脚部用カム溝64の各溝部63a、63b、65a、65bの溝長等が設定されている。
【0058】
なお、キャスタ部5の前端側のカム部材60と後端側のカム部材60とは、図3及び図4に示すように、互いに前後対称に構成されている。
【0059】
モータ72及び駆動軸74は、キャスタフレーム30の内部に配置されている。駆動軸74は、その長手方向中央部分の位置で、支持ブラケット71を介してキャスタフレーム30の内底面に回転自在に支持されている。駆動軸74の前後両端部分には、互いに逆向きのねじ部75が形成されている。これらねじ部75は、各カム部材60の対向面部に設けられたナット部66に各々螺合挿入されている。
【0060】
モータ72は、駆動軸74と共に前記支持ブラケット71に支持されている。モータ72の出力軸にはギア73が固定されており、このギア73は駆動軸74に固定されたギア76に噛合している。
【0061】
この構成により、モータ72によって駆動軸74が回転駆動されると、各カム部材60が前後方向の互いに異なる方向にスライドする。具体的には、第1接地状態S1から第2接地状態S2への切替えの際には、図6中に実線矢印で示すように、各カム部材60が互いに離れる方向(キャスタ部5の中央側から外側(末端側)に向う方向)にスライドし、第2接地状態S2から第1接地状態S1への切替えの際には、図6中に破線矢印で示すように、各カム部材60が互いに接近する方向(キャスタ部5の外側(末端側)から中央側に向う方向)にスライドする。その結果、キャスタ部5の各脚部36と各キャスタ34の車輪40とが同期して上下方向に移動する。
【0062】
図1に示すように、テーブル本体部2のテーブルフレーム12内には、テーブル本体部2の上下動(各脚本体部4の伸縮)を制御するテーブルコントローラ80と、各キャスタ部5の接地状態の切替え(脚部36及び車輪40の上下動)を制御するキャスタコントローラ82とが配置されている。
【0063】
テーブルコントローラ80には、各脚本体部4の前記モータ24と、テーブル本体部2の高さを変更するための高さ調整スイッチ6とが接続されている。高さ調整スイッチ6が操作されると、テーブル本体部2がその操作に応じた高さとなるように、テーブルコントローラ80が各モータ24の駆動を制御する。
【0064】
一方、キャスタコントローラ82には、各キャスタ部5の前記モータ72と、キャスタ部5の接地状態の切替え、すなわち第1接地状態S1と第2接地状態S2とを切り替えるための切替スイッチ7とが接続されている。切替スイッチ7が操作されると、第1接地状態S1及び第2接地状態S2のうち選択された接地状態となるように、キャスタコントローラ82が各モータ72の駆動を制御する。
【0065】
高さ調整スイッチ6及び切替スイッチ7は、図1に示すように、テーブル板10の下面であってその縁部に沿って隣接配置されている。なお、図1中の符号86は、アダプタであり、コンセント88を通じて外部電源から供給されるAC電力をDC電力に変換してコントローラ80、82等に供給する。また、符号84は、停電時等の予備電源となるバッテリである。これらバッテリ84及びアダプタ86も、前記テーブルフレーム12内に配置されている。
【0066】
[作用効果]
以上説明した昇降テーブル1によれば、テーブル板10に備えられた切替スイッチ7を操作すると、キャスタ部5が第1接地状態S1、すなわち脚部36のみが床面Fに接地することにより昇降テーブル1の移動が不能となる状態と、第2接地状態S2、すなわちキャスタ34の車輪40のみが床面Fに接地することにより昇降テーブル1の移動が可能となる状態とに切り替わる。つまり、キャスタ部5が制動状態と制動解除状態とに切り替わる。
【0067】
このように、車輪40を車輪ホルダ42と共に上下動させるとともに脚部36を上下動させる上記昇降テーブル1の構成によれば、車輪40自体に特殊な切替構造を設けることなく、昇降テーブル1(キャスタ部5)の制動状態と制動解除状態との切替えを比較的簡単な構成で行うことが可能となる。
【0068】
しかも、第1接地状態S1(図6(a))から第2接地状態S2(部6(c))への切替えの際には、車輪40がまず床面Fに接地してから(部6(b))脚部36が上方へ移動する。逆に、第2接地状態S2(図6(c))から第1接地状態S1(部6(a))への切替えの際には、脚部36がまず床面Fに接地してから(部6(b))車輪40が上方へ移動する。つまり、制動状態(第1接地状態S1)と制動解除(第2接地状態S2)との切替の際に、テーブル本体部2の高さが変動することがない。
【0069】
従って、この昇降テーブル1によれば、テーブル板10に載置した物品(載置物)、例えば飲料を入れたグラス等が転倒するといった不都合を伴うことなく、制動状態と制動解除状態との切替えを行うことが可能となる。
【0070】
また、キャスタ部5の上記切替機構部70は、モータ72の駆動によりカム部材60を床面Fに沿った方向にスライドさせることで、脚部36及び車輪40を上下方向に移動させる構成である。そのため、切替機構部70の上下方向の占有スペース、ひいてはキャスタ部5の上下方向の占有スペースを抑えながら制動状態と制動解除状態との切り替えを行うことができるという利点もある。
【0071】
なお、昇降テーブル1には、上記の通り、予備電源となるバッテリ84が備えられているが、例えば、電力供給を受けることができない環境下で昇降テーブル1の制動状態と制動解除状態との切替えを可能とすべく、図7に示すような切替機構部70の構成を採用してもよい。
【0072】
図7に示す構成では、駆動軸74にさらにギア(かさ歯車)78が固定され、このギア78に噛合するギア(かさ歯車)104を一端に備えた予備駆動軸102がキャスタフレーム30の内側に備えられている。予備駆動軸102は、ブロック部材31を介してキャスタフレーム30に回転自在に支持されている。予備駆動軸102の一端(反ギア78側の一端)は、キャスタフレーム30に形成された開口部から外部に臨んでおり、その端面には、ハンドル部材8を連結可能な連結用凹部102aが形成されている。ハンドル部材8は、一端部に把持部8aを、他端部に前記連結用凹部102aに嵌入可能な軸状の連結部8bを備えたクランク型の形状を有しており、連結用凹部102aに連結部8bを嵌入することで予備駆動軸102に着脱可能に連結される構成となっている。
【0073】
つまり、ハンドル部材8を予備駆動軸102に連結し、このハンドル部材8を回転操作することにより、予備駆動軸102及びギア78、104を介して駆動軸74を人力で回転駆動するのである。このような構成によれば、電力供給が受けられない環境下や、バッテリ84の電力が無くなった場合でも、第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えを手動で行うことが可能となる。
【0074】
この際、作業者が一人の場合には、テーブル脚3毎に切替作業を行う必要があるが、上述した通り、第1接地状態S1から第2接地状態S2への切替えの際には、車輪40がまず床面Fに接地してから脚部36が上方へ移動し、逆に、第2接地状態S2から第1接地状態S1への切替えの際には、脚部36がまず床面Fに接地してから車輪40が上方へ移動するので、一方側のテーブル脚3の切替作業中に昇降テーブル1が傾くようなことがない。従って、昇降テーブル1の制動状態と制動解除状態との切替えを一人で難なく行うことができる。
【0075】
なお、図7の例では、ハンドル部材8は予備駆動軸102に対して着脱可能に設けられているが、ハンドル部材8は、例えば予備駆動軸102に常時連結された状態でキャスタ部5に備えられるものであってもよい。当例では、この予備駆動軸102、又は当該予備駆動軸102に連結されたハンドル部材8が本発明の「入力部」に相当する。
【0076】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係るキャスタ部5の要部斜視図である。第2実施形態に係るキャスタ部5の基本的な構成は第1実施形態と共通するが、切替機構部70の具体的な構成が以下に説明する通り第1実施形態と相違している。
【0077】
第2実施形態の切替機構部70は、前記カム部材60及び前記ガイド軸46、52等の代わりに、車輪用板カム92及び脚部用板カム94を備えている。これら板カム92、94は駆動軸74に直接固定されている。また、車輪ホルダ42の軸部42aにコイルスプリング48が、脚部36の軸部36aにコイルスプリング38が各々装着されており、これらコイルスプリング38、48の弾発力により、車輪ホルダ42及び脚部36が上向きに付勢されている。これにより、車輪ホルダ42の軸部42aの上端部(カムフォロア部421)が車輪用板カム92に、脚部36の軸部36aの上端部(カムフォロア部361)が脚部用板カム94に押し当てられている。なお、当例では、カムフォロア部361が本発明の「第1カムフォロア部」に相当し、カムフォロア部421が本発明の「第2カムフォロア部」に相当する。
【0078】
車輪用板カム92及び脚部用板カム94は、何れも概略扇形の形状(輪郭)を有しており、脚部36と車輪40とが上下方向の互いに異なる向きに相対的に移動するように、逆位相の位置関係で駆動軸74に固定されている。
【0079】
なお、図8では、車輪ホルダ42の軸部42a及び脚部36の軸部36aは何れもキャスタフレーム30に直接上下動可能に保持されているが、第1実施形態と同様に、前記サポート部材44、54を介してキャスタフレーム30に保持されていてもよい。
【0080】
図9は、接地状態の切替え動作を説明するためのキャスタ部5の要部側面図である。同図では、便宜上、各板カム92、94の向きと各軸部36a、42aの上端部(カムフォロア部)の向きを図8とは変えて図示している。
【0081】
上記切替機構部70では、図9(a)に示すように、脚部36のみが床面Fに接地した第1接地状態S1で切替スイッチ7が操作されると、モータ72の駆動により駆動軸74と一体に各板カム92、94が所定方向(実線矢印方向)に回転する。各板カム92、94が回転すると、当該回転に伴い車輪ホルダ42が車輪用板カム92により押し下げられ、図9(b)に示すように車輪40が床面Fに接地する。この間、床面Fに対する脚部36の接地状態は維持されている。そして、さらに各板カム92、94が回転すると、脚部36が上方に移動し、図9(c)に示すように、車輪40のみが床面Fに接地した第2接地状態S2に切り替わる。なお、第2接地状態S2から第1接地状態S1への切替えの際には、モータ72が反転駆動されることにより駆動軸74が前記所定方向とは逆方向(破線矢印方向)に回転する。これにより上記とは逆の動作に従って、キャスタ部5の接地状態が第2接地状態S2から第1接地状態S1に切り替わる。
【0082】
このような第2実施形態のキャスタ部5の構成によっても、切替スイッチ7の切替え操作により、キャスタ部5を第1接地状態S1(制動状態)と第2接地状態S2(制動解除状態)との間で容易に切り替えることが可能となる。なお、図示を省略するが、第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えを手動で行うことを可能とする構成(図7参照)は、第2実施形態にも適用可能である。
【0083】
[変形例]
以上説明した昇降テーブル1は、本発明に係る「移動体」の好ましい実施形態の例示であって、昇降テーブル1の具体的な構成や、この昇降テーブル1に組み込まれた「キャスタ装置」の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも可能である。
【0084】
(1)キャスタ部5の各脚部36について、さらに高さ調整が可能なアジャスタ機能を持たせるようにしてもよい。例えば、脚部36を、ねじ軸を備えた接地部と、当該接地部のねじ軸が螺合挿入される本体部分とで構成し、接地部を回転させて本体部分からの突出量を調整できるようにしてもよい。この構成によれば、床面Fに起伏がある場合などには、起伏に応じて脚部36の接地部の高さを微調整することが可能となる。そのため、第1接地状態S1において、より安定的に昇降テーブル1を床面Fに対して支持することが可能となる。
【0085】
(2)切替機構部70の具体的な構成は、上記各実施形態に限定されるものではなく、第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えを上述した各実施形態のように行うことができれば適宜変更が可能である。例えば、図8に示した切替機構部70の変形例として、図10に示すような構成を採用することも可能である。図10の例では、車輪用板カム92及び脚部用板カム94は、キャスタフレーム30の側壁部などに回転自在に支持されており、車輪用板カム92と脚部用板カム94とはリンク96で連結されている。そして、モータ72により車輪用板カム92が回転駆動されることにより脚部用板カム94がこれに連動し、その結果、図8の例と同様にして第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えが行われる。なお、図10では、モータ72から車輪用板カム92へ回転を伝動する機構を図示していないが、当該伝動機構としては、モータ72の回転をギア(かさ歯車)及び軸を用いて伝動する機構や、ギア及びベルト(チェーン)を用いて伝動する機構を採用することが可能である。
【0086】
(3)実施形態では、切替機構部70は、モータ72の駆動により第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えを行う。しかし、切替機構部70は、手動(人力駆動力)で第1接地状態S1と第2接地状態S2とを切替える構成であってもよい。具体的には、図7に示した切替機構部70(キャスタ部5)の構成において、モータ72及びギア73、76を省略した構成を採用してもよい(図11参照)。この場合には、当然、切替スイッチ7やキャスタコントローラ82も省略される。
【0087】
なお、手動(人力駆動力)で第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えを行うような切替機構部70の構成は、図11に示すようにハンドル部材8の回転操作により人力駆動力を入力するものには限定されない。例えば、ペダルの踏み込み操作により第1接地状態S1と第2接地状態S2との切替えを行う構成や、テーブル本体部2に設けたレバーのスイング操作(揺動操作)により上記切替えを行う構成であってもよい。
【0088】
(4)実施形態では、本発明をテーブルに適用した例について説明したが、本発明はテーブル以外の「移動体」にも適用可能である。例えば、キャビネット、収納ラック、ワゴン等のその他の移動体にも適用可能であり、その用途は、家庭用、オフィス用、医療用等を問わない。
【符号の説明】
【0089】
1 昇降テーブル1
2 テーブル本体部
3 脚部
4 脚本体部
5 キャスタ部(キャスタ本体部)
7 切替スイッチ
10 テーブル板10
30 キャスタフレーム(フレーム部材)
34 キャスタ
36 脚部
40 車輪
42 車輪ホルダ
46 ガイド軸(第2カムフォロア部)
52 ガイド軸(第1カムフォロア部)
60 カム部材
62 車輪用カム溝(第2カム部)
64 脚部用カム溝(第1カム部)
70 切替機構部
72 モータ
82 キャスタコントローラ
F 床面
S1 第1接地状態
S2 第2接地状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11