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特許7470405フィルタ用リテーナ、その製造方法、及びリーフディスクフィルタエレメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】フィルタ用リテーナ、その製造方法、及びリーフディスクフィルタエレメント
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/39 20060101AFI20240411BHJP
   B29C 48/694 20190101ALI20240411BHJP
【FI】
B01D29/34 501C
B29C48/694
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020111444
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010740
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】高野 敏明
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-279517(JP,A)
【文献】特開2014-140793(JP,A)
【文献】特開2008-200607(JP,A)
【文献】実公昭47-032221(JP,Y1)
【文献】特開平10-337415(JP,A)
【文献】特開平08-033805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05;35/10-37/04
B29C 48/694
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視が所定の曲線形状を備えた複数本の第1曲線流路形成部材を同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した第1金属板材と、
平面視で前記第1曲線流路形成部材と交差する方向へ延び、且つ所定の曲線形状を備えた複数本の第2曲線流路形成部材を同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した第2金属板材と、から成り、
前記第1曲線流路形成部材と前記第2曲線流路形成部材とが交差部を形成するように前記第1金属板材の一面に対して前記第2金属板材の一面を重ねた状態で、前記各第1曲線流路形成部材と前記各第2曲線形成部材との交差部を固定した構成を備えたフィルタ用リテーナであって、
前記第1金属板材を構成する前記各第1曲線流路形成部材と、前記第2金属板材を構成する前記各第2曲線流路形成部材が平面視で線対称形状を構成することを特徴とするフィルタ用リテーナ。
【請求項2】
平面視で一方向へ直線状に延びる第1直線流路形成部材を複数本同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した第1金属板材と、
平面視で前記一方向と交差する他方向へ直線状に延びる第2直線流路形成部材を複数本同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した第2金属板材と、から成り、
前記第1直線流路形成部材と前記第2直線流路形成部材とが交差部を形成するように前記第1金属板材の一面に対して前記第2金属板材の一面を重ねた状態で、前記各第1直線流路形成部材と前記各第2直線流路形成部材との交差部を固定した構成を備えたフィルタ用リテーナであって、
前記第1金属板材を構成する前記各第1直線流路形成部材と、前記第2金属板材を構成する前記各第2直線流路形成部材が平面視で線対称形状を構成することを特徴とするフィルタ用リテーナ。
【請求項3】
前記平面視が所定の曲線形状を備えた前記各曲線流路形成部材は、渦巻き形状を形成するように並行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ用リテーナ。
【請求項4】
前記各曲線流路形成部材の表面、及び裏面、又は、前記各直線流路形成部材の表面、及び裏面は、平坦面であることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のフィルタ用リテーナ。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載のフィルタ用リテーナの製造方法であって、
二枚の平板状の金属素材を用意する工程と、
前記各金属素材に対して夫々所定形状のスリットを複数本並行に貫通形成することにより前記各金属素材の面積内に夫々前記第1金属板材、及び第2金属板材を形成する工程と、
一方の前記金属板材の一面に対して、他方の金属板材の一面が所定の位置関係で位置合わせされるように一方の前記金属素材を他方の前記金属素材に重ねて仮固定する工程と、
前記両金属板材を構成する各流路形成部材の交差部を一体化する工程と、
前記各金属板材の内周縁、及び外周縁に位置する各金属素材の余剰部分を切断して除去する工程と、
を備えたことを特徴とするフィルタ用リテーナの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載のフィルタ用リテーナの製造方法であって、
二枚のドーナツ形状、且つ平板状の金属素材を用意する工程と、
前記各金属素材に対して夫々所定形状のスリットを複数本並行に貫通形成すると共に、各スリットの長手方向両端部を開放しないことにより前記各金属素材の面積内に夫々前記第1金属板材、及び第2金属板材を形成する工程と、
一方の前記金属板材の一面に対して、他方の金属板材の一面が所定の位置関係で位置合わせされるように一方の前記金属素材を他方の前記金属素材に重ねて仮固定する工程と、
前記両金属板材を構成する各流路形成部材の交差部を一体化する工程と、
前記各金属板材の内周縁、及び外周縁に位置する各金属素材の余剰部分を切断して除去する工程と、
を備えたことを特徴とするフィルタ用リテーナの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載のフィルタ用リテーナを、鋳造方法、3Dプリンタにより製造する方法、切削加工により製造する方法、或いは粉末冶金により製造する方法の何れか一つの方法により製造することを特徴とするフィルタ用リテーナの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか一項に記載のフィルタ用リテーナと、該フィルタ用リテーナの中心開口部に固定されたハブと、前記フィルタ用リテーナの上下の各外面に夫々配置された多孔支持板と、前記各多孔支持板の外側面に夫々配置された濾材と、を備えたことを特徴とするリーフディスクフィルタエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ用リテーナ、その製造方法、及びリーフディスクフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に使用される光学フィルムは溶融押出法によって製造される。
溶融押出法では、押出機によって溶融状態にされたポリマー等の熱可塑性樹脂を濾過装置に供給して不純物を除去した上で口金からフィルム状に押し出し成形する。
押出機から押し出される溶融樹脂中には、充分に溶融されていない異物、焼けて固化した焼け異物、その他の異物が残留、混入することがあるため濾過により不純物を除去する必要があり、そのような濾過装置としてリーフディスクフィルタ装置が知られている。
特許文献1のリーフディスクフィルタ装置は、ポリマー濾過用や粘性流体濾過用のフィルタとしてドーナツ板形状のフィルタエレメントを備えている。このフィルタエレメントは、濾材を支持するための金網等からなるドーナツ板形状のリテーナと、リテーナの両面に多孔支持板(例えば、パンチングメタル)を介して配置された金属繊維の焼結体等からなる円盤状濾材と、を備えている。このフィルタエレメントが、中央のハブリングを利用して外周面にポリマー導入孔を有するポリマー排出管(センターポール)の周囲に積み重ねられてリーフディスクフィルタ装置を形成する。
【0003】
フィルタエレメントはハウジング内に密閉され、ハウジング内に比較的高い圧力で溶融樹脂が供給される。積層されたフィルタエレメント間に流入されてきた溶融樹脂が濾材を通過して濾過された後、多孔支持板を通してリテーナ部に至り、リテーナを構成する金網の空隙内を内径方向に流れて積層フィルタエレメントの中央部等に集められ、そこから濾過流体がポリマー排出管を経由して所定の行き先に送られる。
【0004】
リーフディスクフィルタエレメント内の圧力損失が高い場合には、内部を通過する溶融樹脂の流速の不均一化と、それに起因した滞留を招くため、圧力損失の低減は製品の品質を左右する重要な要素である。
リーフディスクフィルタエレメントの圧力損失を招く要因としての通過抵抗としては、濾材の濾過抵抗の他に、濾材を通った溶融樹脂が多孔支持板を通ってリテーナ内を内径方向へ流れてハブリングに至るまでの抵抗が大きいものとなる。特に、金網からなるリテーナの場合には、流路が非直線状の複雑、且つ狭隘なルートになり、個々の流路の抵抗にもバラツキが多いので、リテーナ内の圧損の低減に限界があり、且つリテーナ内での滞留が生じ易くなっている。
【0005】
特許文献2には、金網以外の構成を備えたリーフディスクフィルタ装置用のリテーナとして、化学的エッチングにより形成された貫通穴が周方向に多数配列された一対のエッチング処理円板が、対応する各貫通穴の位置を一致させた状態で互いに接合されており、一対のエッチング処理円板間に径方向へ延びる内部通路が形成されている構成が開示されている。
しかし、リテーナを二枚のエッチング処理円板により構成しているため部品点数の増大と厚み増大という問題が生じる。また、二枚のエッチング処理円板間に形成される内部通路の厚み寸法が狭くなり通過抵抗を増大させる原因となる。また、貫通穴間に位置するハーフエッチングによる環状領域も通過抵抗の増大、滞留時間の不均一化による品質の低下をもたらしている。
【0006】
特許文献3には、円板状平板部材に、切れ目または長穴の環状列を、円板状平板部材の径方向に同心状に複数列配設し、各切れ目または長穴間部分を円板状平板部材の周方向に位置をずらして上下方向に交互に曲げ加工することにより、板面に対し実質的に90度捻じって上下方向に突出した立片部を成形したフィルタ用支持板(リテーナ)が開示されている。しかし、最外周に位置する立片部を円板状平板部材の外周縁にまで延在させることができないため、濾材の最外周部を通過して進入してきた溶融樹脂が円板状平板部材の最外周縁(板面部)に滞留し易くなる。また、立片部間に平板部材の板状部分が残っているため、この部分が溶融樹脂の流動に対する抵抗となっている。
【0007】
特許文献4にも一枚の金属板からなるリテーナとしての支持兼排水板上に径方向へ延びる溝が形成された構成が開示されているが、これらの溝は支持兼排水板の最外周縁の手前で終端しているため、この溝が存在しない部分に濾材を通過してきた溶融樹脂が溜まってしまうという問題がある。また、溝が形成されていない板状部が溶融樹脂の流動に対する抵抗となっている。
このような不具合は、光学フィルムや光学シートに限らず、また用途、形状と関係なく、樹脂成形品を製造する際に発生する問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-185666公報
【文献】特開2009-279517公報
【文献】特開平10-337415号公報
【文献】特公平6-98250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、低圧力損失、高強度、高耐圧という効果を発揮できるフィルタ用リテーナ、その製造方法、及びリーフディスクフィルタエレメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のフィルタ用リテーナは、平面視が所定の曲線形状、又は直線形状を備えた複数本の流路形成部材を同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した第1金属板材と、第1金属板材と同等の構成を備えた第2金属板材と、から成り、前記第1金属板材の一面に対して前記第2金属板材の一面を重ねた状態で各金属板材を構成する各流路形成部材同士の交差部を固定した構成を備えたフィルタ用リテーナであって、前記第1金属板材を構成する前記各流路形成部材と、前記第2金属板材を構成する前記各流路形成部材が平面視で線対称形状を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低圧力損失、高強度、高耐圧という効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係るフィルタ用リテーナの全体構成を示す平面図、及び正面図である。
図2】(a)及び(b)は第1実施形態に係るフィルタ用リテーナの全体構成を示す斜視図(写真)、及び要部拡大平面図(写真)である。
図3】フィルタ用リテーナに形成される主な流路を示す説明図である。
図4】金属板材10Aを形成した金属素材80Aの平面図である。
図5】金属板材10Bを形成した金属素材80Bの裏面図である。
図6】金属板材10Aに金属板材10Bを重ね合わせた状態で金属素材80Aと金属素材80Bを仮固定した状態を示す平面図である。
図7図6の状態にあるリテーナの不要箇所を切除する手順を示す平面図である。
図8】(a)及び(b)は第2実施形態に係るフィルタ用リテーナの構成を示す平面図、及び正面図である。
図9】(a)及び(b)は第2実施形態に係るフィルタ用リテーナの構成を示す斜視図(写真)、及び要部平面図(写真)である。
図10】リテーナ内に形成される主要な流路を示す説明図である。
図11】金属板材40Aを形成した金属素材85Aの平面図である。
図12】金属板材40Bを形成した金属素材85Bの平面図である。
図13】金属板材40Aに金属板材40Bを重ね合わせた状態で金属素材85Aと金属素材85Bを仮固定した状態を示す平面図である。
図14図13の状態にあるリテーナの不要箇所を切除する手順を示す平面図である。
図15】(a)及び(b)は本発明のリテーナ1、30を使用したリーフディスクフィルタエレメントの正面縦断面図、及びその一部拡大図である。
図16】(a)及び(b)は本発明の渦巻き型のリテーナ1の変形例を使用したリーフディスクフィルタエレメントの正面縦断面図、及びその一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
[第1実施形態]
<基本構成>
図1(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係るフィルタ用リテーナの全体構成を示す平面図、及び正面図であり、図2(a)及び(b)は同フィルタ用リテーナの全体構成を示す斜視図(写真)、及び要部拡大平面図(写真)であり、図3はフィルタ用リテーナに形成される主たる流路を示す説明図である。
本例に係るフィルタ用リテーナ(以下、リテーナと称する)1は、図15図16に示したリーフディスクフィルタエレメント100において二枚の濾材108間に配置されて濾材を支持する手段として利用される。リテーナ1は、例えば厚さ1.5~2mmのステンレス(SUS304)板に曲線状のスリット(隙間)20A、20Bを渦巻き状に多数並行、且つ等間隔に形成した第1金属板材10A、及び第2金属板材10Bを、二枚重ねて焼結一体化した構成を備えている。
【0014】
各金属板材10A、10Bは、例えばステンレス製のドーナツ形状の平板に対してレーザー加工によりスリット20A、20Bを形成することにより製造することができる。また、リテーナ1は、平面視がインボリュート曲線形状を備えた複数本の流路形成部材、本実施形態では棒材(又は線材)15A、15Bをスリット20A、20Bを介して等間隔に離間配置した構成を備えた二枚の金属板材10A、10Bの一面同士を重ねて棒材15A、15B同士の交差部を焼結(固定)することにより一体化したものである。各棒材15A、15Bがインボリュート曲線形状であることにより、各棒材間に夫々形成されるスリット20A、20Bもインボリュート曲線形状(渦巻き形状)をなしている。
棒材15Aは第1曲線流路形成部材であり、棒材15Bは第2曲線流路形成部材である。
棒材(流路形成部材、骨格部材)15A、15Bは、互いに交差することによりリテーナ1の骨格を構成している。棒材(流路形成部材)15A、15Bは、その縦断面形状の如何を問わず、平面視が細幅帯状の細長い部材を指称し、平面形状を曲線状に構成したものを広く包含する。棒材間に形成される渦巻き形状のスリット20A、20Bは、後述する流路F1、F2を形成する細長い隙間である。本実施形態では、棒材15Aは内径側から外径側へ向けて時計回り方向へ湾曲した湾曲格子であり、棒材15Bは内径側から外径側へ向けて反時計回り方向へ湾曲した湾曲格子である。
【0015】
各棒材15A、15Bの平面視形状がインボリュート曲線形状であることにより、各棒材間に夫々形成されるスリット20A、20Bの幅を全長に渡って均一化することが可能になる。なお、インボリュート曲線形状のパターンを種々調整、変形することにより個々のスリットの長手方向(内外径方向)位置における幅を異ならせることも可能である。例えば、スリットの内径側の幅をテーパー状に外径側よりも広くしたり(漸増)、或いは狭くする(漸減)調整も可能である。これにより溶融樹脂に対するスリット内の流動抵抗を低減させることができる。
【0016】
リテーナ1は、平面視が所定の曲線形状、本例ではインボリュート曲線形状である複数本の流路形成部材としての棒材(又は線材)15Aをスリット20Aを介して均一間隔で、且つ全体形状としてドーナツ板形状を形成するように同一平面上に配列した第1金属板材10Aと、平面視がインボリュート曲線形状である複数本の棒材(又は線材)15Bをスリット20Bを介して均一間隔で、且つ全体としてドーナツ板形状を形成するように同一平面上に配列した第2金属板材10Bとから成り、両金属板材を積層一体化したものである。第1金属板材10Aと第2金属板材10Bとは同一形状であるため格別の手法で製造する必要はなく、量産に適している。渦巻き状の各スリット20A、20Bは、旋回するにつれ中心から遠ざかる平面曲線である。
【0017】
第1金属板10Aに対して第2金属板10Bを重ねるに際しては、図1(b)に示すように第1金属板材10Aの裏面10A”に対して第2金属板材10Bの裏面10B”を対向させた状態で重ねている(接合している)。言い換えれば、リテーナ1は、第1金属板材10Aの表面10A’と第2金属板材10Bの表面10B’を夫々外側に向けた状態で固定されている。このため、第1金属板材10Aを構成する各棒材15Aと、第2金属板材10Bを構成する各棒材15Bとは、平面視で線対称形状の曲線状の格子(網目)を構成している。
【0018】
平板状の金属素材に対してレーザー加工によりスリット20A、20Bを形成することにより各金属板材10A、10Bを製造する手法としては種々考えられる。その一例は、予めドーナツ板形状に加工した金属素材を用いたレーザー加工である。この場合、円板の中心部に同心円状の中心開口部COを有した形状(ドーナツ形状)の金属素材の内周縁部(内径部)、及び外周縁部(外径部)までスリットを貫通(開放)させないで、内周縁部、及び外周縁部の手前で各スリットを終端させる。つまり、各棒材15Aの内径側端部同士、及び外径側端部同士、各棒材15Bの内径側端部同士、及び外径側端部同士が連結した状態を維持してばらけないようにする。内周縁及び外周縁が連結されたこれらの金属素材を二枚重ねて各棒材の交差部を焼結して固定した後に内周縁部、及び外周縁部の連結した棒材端部を切除して非連結状態とすることよりスリットが内径部(中心開口部CO)及び外径部で貫通(開放)した構成とする。二枚の金属素材を構成する各棒材15A、15Bが各交差部で焼結されているため保形性を確保することができ、棒材端部を切除してもばらけることがなくなる。また、リーフディスクフィルタエレメント内に組み込まれたときにリテーナ1に加わる荷重を各棒材により受けることができ、その荷重を受圧部としての棒材間の交差部Cにより受けることができるため強度、保形性を維持することができる。なお、隣接する交差部C間の間隔は、図1(a)などから明らかなようにリテーナの中心部からの距離により一定でなく、バラツキが発生することもあるが、このことが各スリット内に形成される流路内の流動抵抗に影響を与える等の不具合はない。
【0019】
なお、ドーナツ形状に加工していない金属平板に対してレーザー加工によりスリット、及び棒材を形成することも可能であり、この製造方法については後述する。
本例では第1金属板材10Aを構成する各棒材15Aは同一形状であり、全長に渡って同一断面形状(四角形)の棒材であるが、これは一例に過ぎず、長手方向の異なった部位の断面形状が変化するようにしてもよい。このことは、第2金属板材10Bを構成する各棒材15Bについても同様のことがいえる。
【0020】
各金属板材10A、10Bを構成する各スリット20A、20Bのサイズ、形状(間隔)は完全に同一である必要はなく、μm、mm単位の誤差、変形は許容できる。また、上述のように長手方向(内外径方向)に沿ってスリットの幅が漸減、或いは漸増するように構成してもよい。
【0021】
濾材108はステンレスを不織布状、或いはフェルト状に構成しているので、強度、及び硬度が低い。また、リテーナは、その表面が凹凸形状になるので、シート状の濾材を所定の形態を保ちつつ保持するために、リテーナと濾材との間に平板に所定のピッチで穿孔した多孔支持板(パンチングプレート等)106が介在される。
【0022】
リテーナ1には、濾材を安定的に支持する強度と、圧力により潰れず、変形しない強度が求められるだけでなく、その内部に濾材を通過した溶融樹脂を圧力損失を少なく内径方向へ移動させる低抵抗の流路を形成する必要がある。
【0023】
本実施形態に係るリテーナにあっては、一方の金属板材10Aを構成する各棒材15Aが夫々外周縁部から内周縁部に向かう等間隔のスリット20Aから成る湾曲した第1流路F1を形成する。他方の金属板材10Bを構成する各棒材15Bは夫々外周縁部から内周縁部に向かう等間隔のスリット20Bから成る湾曲した第2流路F2を形成する。第1流路F1と第2流路F2とは交差して平面視で線対称形状をなしていると共に、各スリット(各流路F1、F2)の交差流路部C’において厚さ方向へ連通している。このため、図3に示すように各金属板材10A、10B内における主たる流路F1、F2に加えて、交差流路部C’を介して流路F1、F2間を連通させる他の主たる流路F3、F4が形成される。つまり、渦巻き型の流路F1、F2に沿った上下変動の少ない流れと、流路F1、F2間を縫うようなジグザグ状の流路F3、F4が複合的に形成される。流路F3、F4は外径部から内径部へ向かう最短のルートを示しており、溶融樹脂は交差流路部C’で上下方向へジグザグに方向転換(蛇行)しながら中心開口部COに向かってスムーズに流動することができる。交差流路部C’における流路の断面積は、流路F1、F2の断面積に比して狭くならないため、この部位での流動抵抗が著しく増大して流速が低下する訳ではない。
【0024】
各流路F1、F2、F3、F4は夫々リテーナ1の全周面(全周方向)に渡って連続して形成されるが、各流路の周方向位置の違いに関係なく、個々の流路F1、F2、F3、F4内における流速、流量は一定である。例えば、個々の流路F1内における流速、流量は、各流路F1の周方向位置の違いによってばらつくものではなく一定である。つまり、各流路F1、F2内における各流速、流量が各流路F3、F4内における各流速、流量と異なっているとしても、全ての流路F1、F2内における流速、流量は夫々一定である。他の流路F3、F4内における流速、流量についても周方向位置の違いに関係なく各流路F3、F4内における流速、流量は一定である。
一方、従来の金網リテーナ(メッシュリテーナ)にあっては、溶融樹脂の流速、流量が流路の周方向位置によって不均一であり、大きくばらついているため、溶融樹脂の滞留が発生して製品の品質の維持が難しかった。
なお、図3に示した主たる流路F1~F4は説明を簡略化するための一例であり、実際には各流路が複合的に組み合わされた複雑な溶融樹脂の流れが形成される。
【0025】
次に、各スリット20A、20Bの幅D1、D2の設計における広狭の値は、適用するリーフディスクフィルタ装置における溶融樹脂の圧力に応じて決定される。一方、各スリット20A、20Bの幅D1、D2が広すぎる場合には、各棒材15A、及び各棒材15Bにより多孔支持板106を支持した際に、棒材間に位置する多孔支持板部分が溶融樹脂からの圧力によりスリット内に落ち込んで湾曲変形を起こし易くなる。各多孔支持板部分が湾曲変形すると、多孔支持板に支持された濾材108がそれに追従して湾曲変形し、適正な濾過性能を維持するために必要な姿勢を維持することが困難となり、濾過性能を低下させる原因となる。
【0026】
また、各スリット20A、20Bの各幅D1、D2が狭すぎる場合には、多孔支持板を経由してリテーナ内に進入してきた溶融樹脂のリテーナ内における流動に対する抵抗を増大させる不具合をもたらす。
つまり、隣接する棒材15A間の間隔D1と、隣接する棒材15B間の間隔D2が適正であることにより、濾過流体としての溶融樹脂に対する抵抗と多孔支持板の姿勢維持性能の両者を適正に両立させることが可能となる。本発明の構成によれば、各金属板材10A、10Bを構成する各スリット20A、20Bの各幅D1、D2(即ち、棒材間の間隔D1、D2)を高い寸法精度で構成し、且つ規則的に配置することができるので、各幅D1、D2を一定に維持することが可能となる。
【0027】
金属板材10A、10Bは、平板状の原材料をレーザー加工することにより製造が可能であるため、寸法精度の確保が可能であり、しかもステンレス等の強度の高い金属から構成することにより高圧力下においても潰れて変形することがないように棒材の強度(太さ、形状)を設定することが可能である。このため、各スリット20A、20Bの各幅D1、D2を最適に維持し、溶融樹脂の通過抵抗を低い値で一定に維持することができる。また、各金属板材は同一形状であるため、量産に適している。
なお、金属板を原材料としてレーザー加工により製造する方法は一例であり、鋳造、プレス加工、3次元プリンタ等による製造もそれぞれ可能である。
本実施形態のリテーナ1をリーフディスクフィルタエレメントに適用することにより、表面側の金属板材10Aに形成される第1流路F1の他に、第1流路と線対称となるように位置ズレした状態で第2流路F2が裏面側の金属板材10Bに形成される。
【0028】
第1流路F1は図1図2においては、外径側から内径側に向けて反時計回り方向へ湾曲した曲線状(渦巻き状)の流路であり、第2流路F2は、外径側から内径側に向けて時計回り方向へ湾曲した曲線状(渦巻き状)の流路である。
各流路F1、F2は、2枚の金属板材10A、10Bの境界面の上方、及び下方に沿って夫々均一幅、均一高さで湾曲して形成される。つまり、個々の流路F1、F2は同じ高さ位置にある。そして、各流路F1、F2内には障害物が存在せず、上下、左右にジグザグなルートが存在しないため、溶融樹脂の通過時の抵抗を低下させて圧力損失を低減させることができる。そのため、溶融樹脂の流速の不均一化と、それに起因した滞留を防止して製品の品質を維持することが可能となる。
【0029】
つまり、各流路F1、F2は、夫々上下方向変位が少なく全長に渡って均一幅である緩やかな曲線的なルート(流路)、或いは緩やかなテーパー形状であるため、溶融樹脂の通過抵抗を大幅に低減できる。
各流路F1、F2の内部には障害物がほとんど存在せず、均一幅で経路が確定したルートが形成されることが明らかである。つまり、本発明によれば経路にバラツキのない内径部へ向かう各流路F1、F2を形成することにより、溶融樹脂の流路の方向性を改善することができ、各流路F1、F2により溶融樹脂を内径部へ効率よく流動させ、内径部に位置する排出管へ流動させることができる。
【0030】
これを詳述すれば、第1、及び第2流路F1、F2は図1図2から明らかなようにドーナツ板形状のリテーナ1の最外周縁から最内周縁まで曲線的に貫通した障害物の少ない流路を形成している。このため、濾材を経て第1、及び第2流路F1、F2内に流入してきた溶融樹脂を効率よく内径部に位置する排出管へ流動させることができる。特に、リテーナ1の最外周縁部に流入してきてそこに滞留し易い溶融樹脂をも安定して内径部へ流動させることができる。この点は、リテーナの外周縁部における滞留が問題となる引用文献3、4との顕著な差異となる。
【0031】
また、各スリットの交差流路部C’を介して上下位置関係にある各流路F1、F2間が連通しているため、流路間の溶融樹脂の相互流動による混合も可能である。つまり、各流路F1、F2の他に図3に示したジグザグな流路F3、F4が形成されるため、上下に位置する濾材を通過してきた各溶融樹脂が交差流路部C’を介して混合でき、各濾材による濾過能力のバラツキに起因した溶融樹脂の品質のバラツキをリテーナ内において解消することができる。
【0032】
なお、図3中では流路F1、F2の他に、ジグザグな流路F3、F4として半径方向へ延びる最短距離のルートのみを示したが、これ以外にも外径方向から内径方向へ向かう多様な角度(半径方向以外)のジグザグな流路を形成することができる。
【0033】
リーフディスクフィルタエレメントにあっては、濾材間(リテーナ部分)における径方向、その他内径部へ向かう溶融樹脂の流れを確保する必要があるが、金網からなるリテーナにあっては流れる方向が内径部へ向かう方向以外に、上下左右方向にも大きくばらつきやすい。これに対して本実施形態にあっては流れる方向を内径部へ向かう方向に集中させることができる。
特に、溶融ポリマーのような高粘度流体を濾過する場合には、濾材部における圧力損失が大きくなり、濾材前後の差圧も大きくなることから、溶融樹脂の通路に配置されるリテーナには低圧力損失であること、高耐圧であること、曲げ強度が高いこと等の性能が要求されるが、シンプルな形状を有したリテーナ1にあっては各流路F1、F2中に溶融樹脂の障害物となる部位がほとんど存在しないため、これらの要請(低圧力損失、高耐圧、高曲げ強度)を充分に満たすことができる。ジグザグな流路F3、F4に関しても、交差流路部C’における流動抵抗は無視できる程度に小さいため、流路F1、F2を経由した半径方向への最短ルートでの流路を形成することが可能となる。
【0034】
金網等からなるリテーナの場合にはリテーナ自体には濾材の保持強度を期待できないため、主として多孔支持板に濾材の保持強度の大半を依存することとなる。これに対して、本発明のリテーナ1は機械的強度が高いために、各スリット20A、20Bの各幅D1、D2さえ適正値に維持すればリテーナによる濾材の保持強度を高めて多孔支持板に対する依存度を低減することができる。その結果、多孔支持板を薄型化したり、省略することも可能となる。このため、リーフディスクフィルタ装置(リーフディスクフィルタエレメント)全体の薄型化を実現でき、フィルタエレメントの組み込み枚数を増大させて濾過面積を増大させることができる。
【0035】
本例に係る各棒材(線材)は断面形状が四角形であるため、各金属板材10A、10Bが濾材と対向する棒材の面は平坦面となっている。このため、多孔支持板を平坦面にて安定して支持することができる。
【0036】
なお、本実施形態に係るリテーナでは、各棒材15A、15Bをインボリュート曲線形状に構成したが、これは一例に過ぎず、各棒材は円弧状、その他の渦巻き状の曲線(湾曲)形状であればよい。従って、渦巻き状の曲線形状には、対数螺旋形状、代数螺旋形状も広く含まれる。
【0037】
<第1実施形態に係るリテーナの製造方法>
図4乃至図7は第1実施形態に係るリテーナ1を製造する手順を示す説明図である。図4は金属板材10Aを形成した金属素材80Aの平面図、図5は金属板材10Bを形成した金属素材80Bの裏面図、図6は金属板材10Aに金属板材10Bを重ね合わせた状態で金属素材80Aと金属素材80Bを仮固定(位置決め)した状態を示す平面図、図7図6の状態にあるリテーナの不要箇所を切除する手順を示す平面図である。
【0038】
図4、及び図5に夫々示す金属板材10A、10B(金属素材80A、80B)は同一形状であり、面方向と裏面方向から視た点に違いがあるに過ぎない。各金属板材10A、10Bは金属平板から成る金属素材をレーザーにより加工する他に、鋳造、粉末冶金、或いは3Dプリンタ等により製造することができる。
第1の工程では、二枚の平板状の金属素材80A、80Bを用意する。即ち、レーザー加工により金属板材10A、10Bを製造する場合にはステンレス製の平板から成る金属素材80A、80Bを夫々用いる。金属素材80A、80Bは同一構造の金属板材10A、10Bを備えている。
【0039】
第2の工程では、各金属素材80A、80Bに対して夫々所定形状のスリット20A、20Bを複数本並行に貫通形成することにより各金属素材の面積内に夫々第1金属板材10A、及び第2金属板材10Bを形成する。即ち、金属素材80A、80Bに対して夫々図示のような規則正しい形状を有した複数本のスリット20A、20Bを夫々渦巻き形状を描くように貫通形成することにより各金属素材80A、80Bの面積内に各金属板材10A、10Bを形成する。互いに並行な各スリット20Aの間には流路形成部材としての棒材(又は線材)15Aが位置しており、また各スリット20Bの間には流路形成部材としての棒材(又は線材)15Bが位置している。図4図5の加工段階では、各棒材15A、15Bの内径側端部は各金属素材80A、80Bの中心部と未分離であり、各棒材15A、15Bの外径側端部は各金属素材80A、80Bの外周部と未分離である。
【0040】
第3の工程では、一方の金属板材10Aの裏面(一面)に対して、他方の金属板材10Bの裏面が所定の位置関係で位置合わせされるように一方の金属素材を他方の金属素材に重ねて仮固定(位置決め)する。即ち、同じ形状を有した金属板材10Aの裏面10A”に対して、金属板材10Bの裏面10B”が図6のように位置合わせされるように金属素材80Aを金属素材80B上に重ねて仮固定する(図1(b)参照)。この仮固定に際しては図示しない専用の位置決め治具を用いて各金属素材80A、80Bの適所(四隅)に設けた位置決め穴81A、81Bを利用して行う。
【0041】
第4の工程では、両金属板材10A、10Bを構成する各棒材、又は線材の交差部Cを一体化、固定(焼結)する。即ち、図6の段階で両金属板材10A、10Bを構成する各棒材の各交差部Cを図示しない焼結手段を用いて焼結することにより両金属板材を部分的に固定する。
【0042】
第5の工程では、各金属板材の内周縁、及び外周縁に位置する各金属素材の余剰部分を切断して除去する。即ち、図7に示すように両金属板材10A、10Bの内周縁、及び外周縁の余剰部分を二点鎖線で示した切断線CLに沿って切断して除去することにより、図1に示した如き完成品としてのドーナツ板形状のリテーナ1を得る。
なお、図示説明した二枚の金属素材を用いてリテーナ1を製造する方法は一例に過ぎない。例えば、鋳型に溶融金属を注入してリテーナ1を成形する鋳造方法、金属粉末を金型を用いて成型して焼結する粉末冶金により製造する方法、インクジェット印刷技術等を用いた3Dプリンタにより製造する方法、一つの金属素材を工作機械により削ったり穿孔する切削加工により製造する方法、等々によっても本実施形態に係るリテーナ1は製造が可能である。
鋳造方法、及び粉末冶金では、予め製造したリテーナ1を用いて鋳型を製造し、この鋳型を用いて量産することが可能となり、生産性を高めることができる。
切削加工による製造方法では、二枚の金属素材80A、80Bの合計厚みに相当する一枚の厚肉の金属素材を用いてエンドミルによりリテーナ1を製造することが可能である。即ち、まず厚肉の金属素材の一面側から一方の金属素材80Aに相当する肉厚部分(1/2の厚み部分)に対してエンドミルを用いてスリット20Aに相当する湾曲した溝(非貫通のスリット)を並行に複数本形成する。次いで、厚肉の金属素材の他面側から他方の金属素材80Bに相当する肉厚部分(1/2の厚み部分)に対してエンドミルによりスリット20Bに相当する湾曲溝を並行に複数本形成する。両スリット20A、20Bに相当する各溝を形成した時点で各溝が交差する位置に交差流路部C’が形成されることとなる。これによりリテーナ1を完成することができる。二枚の金属素材を用いた製造方法において必要とされる焼結工程を省略することができる。
切削加工において用いる厚肉の金属素材としては中心開口部を備えたドーナツ板形状のものを使用してもよいし、図4乃至図7の製造方法において用いたような単なる板材を用いても良い。
つまり、本実施形態に係るリテーナは、二枚の金属素材(金属板材)を用いる以外にも種々の製造方法を使用した製造が可能である。
なお、このことは後述する第2実施形態に係るリテーナ30の製造方法についても当てはまる。
【0043】
[第2実施形態]
<基本構造>
図8(a)及び(b)は第2実施形態に係るフィルタ用リテーナの構成を示す平面図、及び正面図であり、図9(a)及び(b)は同フィルタ用リテーナの構成を示す斜視図(写真)、及び要部平面図(写真)であり、図10はリテーナ内に形成される主要な流路を示す説明図である。
フィルタ用リテーナ(以下、リテーナと称する)30は、図15に示したリーフディスクフィルタエレメント100において二枚の濾材108間に配置されて濾材を支持する手段として利用される。リテーナ30は、例えば厚さ1.5~2mmのステンレス(SUS304)板に一方向に直線状に延びるスリット45Aを多数並行、且つ等間隔に形成した第1金属板材40Aと、同様のステンレス板に前記一方向と直交(交差)する他方向へ直線状に延びるスリット45Bを多数並行、且つ等間隔に形成した第2金属板材40Bと、を備え、両金属板材を二枚重ねて焼結一体化した構成を備えている。
【0044】
各金属板材40A、40Bは、例えばステンレス製の任意の形状の金属平板、例えば予めドーナツ形状に加工した金属平板に対してレーザー加工によりスリット45A、45Bを形成することにより製造することができる。具体的には、リテーナ30は、直線形状の複数本の流路形成部材としての棒材(又は線材)50A、50Bを夫々スリット45A、45Bを介して等間隔に離間配置した構成を備えた二枚の金属板材40A、40Bの一面同士を重ねてから、格子状に交差した棒材50A、50Bの交差部Cを焼結することにより一体化したものである。
横方向へ直線状に延びる棒材(第1直線流路形成部材)50Aは縦格子であり、縦方向へ直線状に延びる棒材(第2直線流路形成部材)50Bは横格子である。
本例では棒材群50Aと棒材群50Bを90度の角度で交差させているが、これは一例に過ぎず、一棒材群50Aに対して棒材群50Bを90度以外の角度で斜めに交差させるようにしてもよい。
【0045】
金属素材に対してレーザー加工によりスリット45A、45B、及び棒材(又は線材)50A、50Bを形成することにより各金属板材40A、40Bを製造する手法としては種々考えられる。その一例は、第1実施形態でも説明したように中心開口部COを備えたドーナツ板形状に予め加工した金属素材を用いたレーザー加工である。この場合、金属素材の内周縁部(内径部)、及び外周縁部(外径部)までスリットを貫通(開放)させないで、内周縁部、及び外周縁部の手前で各スリットを終端させる。このことにより金属板材40A、40Bが作業中にばらけることを防止できる。
即ち、予めドーナツ板形状に加工した金属素材を用いて各金属板材40A、40Bを製造する場合には、第1実施形態と同様に、各棒材50Aの内径側端部同士、及び外径側端部同士、各棒材50Bの内径側端部同士、及び外径側端部同士が連結した状態を維持して各棒材同士がばらけないようにする。内周縁及び外周縁が連結されたこれらの金属素材を二枚重ねて棒材の交差部Cを焼結した後に内周縁部、及び外周縁部の連結した棒材端部を切除して非連結状態とすることより各スリット45A、45Bの長手方向両端部がそれぞれ内径部や外径部に貫通(開放)した構成とする。二枚の金属素材を構成する棒材50A、50Bが各交差部Cで焼結されているため保形性を確保することができ、棒材端部を切除してもばらけることがなくなる。
【0046】
また、リーフディスクフィルタエレメント内に組み込まれたときにリテーナ30に加わる荷重を各棒材により受けることができ、その荷重を受圧部としての棒材間の交差部Cにより受けることができるため強度、保形性を維持することができる。なお、全ての交差部C間の間隔を一定にすることができるため、各スリット内、スリット間に夫々形成される流路内の流動抵抗を安定化させることが可能となる。
【0047】
各金属板材40A、40Bのスリット45A、45Bのサイズ、形状は、完全に同一である必要はなく、μm、mm単位の誤差、変形は許容できる。
また、個々のスリット45A、45Bは必ずしも全長に渡って等間隔である必要はなく、長手方向一端から他端に向かう程に幅が漸増、或いは漸減するように構成してもよい。
【0048】
リテーナ30には、濾材を安定的に支持する強度、圧力により潰れず変形しない強度が求められるだけでなく、その内部に濾材を通過した溶融樹脂を圧力損失を少なく内径方向へ移動させる低抵抗の流路を形成する必要がある。
本実施形態に係るリテーナ30にあっては、一方の金属板材40Aを構成する各棒材50Aは、夫々図8図9図10の横方向へ延びる等間隔のスリット45Aから成る直線状の流路F5を形成する。他方の金属板材40Bを構成する各棒材50Bは、夫々縦方向へ延びる等間隔のスリット45Bから成る直線状の流路F6を形成する。
上方に位置する流路F5と下方に位置する流路F6とは、平面視で格子状に交差していると共に、各スリットの交差流路部C’で連通している。
多数の流路F5のうち内端縁が中央開口部COで開口しているものはリテーナ30の半径方向に沿った最短の流路となる。各流路F6のうち内端縁が中央開口部COで開口しているものはリテーナの半径方向に沿った最短の流路となる。
流路F5と流路F6のうち内端縁が中央開口部COで開口していていない流路にあっては、交差流路部C’を経由して他方の流路に経路を変更しつつ中央開口部COへ向けて溶融樹脂を流動させることができる。
【0049】
次に、流路F7は隣り合う流路F5間を各交差流路部C’を経由して縫うように連通させるジグザグに屈曲したルートを形成しており、流路F8は隣り合う流路F6間を各交差流路部C’を経由して縫うように連通させるジグザグに屈曲したルートを形成している。流路F9は、半径方向に直線状に配列された複数の交差流路部C’間を結ぶジグザグのルートを形成している。
交差流路部C’における流路の断面積は、流路F5、F6の断面積に比して狭くならないため、この部位での流動抵抗が増大して流速が著しく低下する訳ではない。
なお、図10に示した流路F5~F9は主たる流路であり、これ以外にも種々の角度、方向を備えた流路が形成される。
【0050】
第1実施形態と同様に、各スリット45A、45Bの幅D3、D4が適正であることにより、濾過流体としての溶融樹脂に対する抵抗と多孔支持板の姿勢維持性能の両者を適正に両立させることが可能となる。本実施形態の構成によれば、各金属板材40A、40Bを構成する各スリット45A、45Bの各幅D3、D4(即ち、棒材間の間隔)を高い寸法精度で構成し、且つ規則的に配置することができるので、各幅D3、D4を一定に維持することが可能となる。
【0051】
金属板材40A、40Bはレーザー加工による製造が可能であるため、寸法精度の確保が可能であり、しかもステンレス等の強度の高い金属から構成されるため、高圧力下においても潰れて変形することがないように棒材の強度(太さ、形状)を設定することが可能である。このため、各スリット45A、45Bの各幅D3、D4を最適に維持し、溶融樹脂の通過抵抗を低い値で一定に維持することができる。
【0052】
本実施形態のリテーナ30をリーフディスクフィルタエレメントのリテーナに適用することにより、表面側の金属板材40Aに形成される流路F5の他に、流路F5と交差する流路F6が裏面側の金属板材40Bに形成される。
【0053】
各流路F5、F6は、2枚の金属板材40A、40Bの境界面(接合面)の上方、及び下方に沿って夫々均一幅、均一高さで離隔して形成される。そして、各流路F5、F6内には障害物が存在せず、上下、左右にジグザグなルートが存在しないため、溶融樹脂の通過時の抵抗を低下させて圧力損失を低減させることができる。そのため、溶融樹脂の流速の不均一化と、それに起因した滞留を防止して製品の品質を維持することが可能となる。
また、各スリットの交差流路部C’を介して上下位置関係にある各流路F5、F6間が連通しているため、他にも多様なルートの流路F7、F8、F9が形成されるため、各流路F5、F6間の溶融樹脂の相互流動による混合も可能である。つまり、上下に位置する濾材を通過してきた各溶融樹脂が交差部を介して混合できるため、各濾材による濾過能力のバラツキに起因した溶融樹脂の品質のバラツキを解消することができる。
【0054】
特に、各流路F5、F6は、上下方向変位が少なく全長に渡って均一幅である緩やかな直線的なルート(流路)であるため、溶融樹脂の通過抵抗を大幅に低減できる。
各流路F5、F6の内部には障害物がほとんど存在せず、均一幅で経路が確定した直線的なルートが形成されることが明らかである。つまり、本発明によれば経路にバラツキのない内径部へ向かう各流路群F5、F6を形成することにより、溶融樹脂の流路の方向性を改善することができ、各流路群F5、F6により溶融樹脂を内径部へ効率よく流動させ、内径部に位置する排出管へ流動させることができる。
更に、主たる流路F5、F6以外の流路F7、F8、F9にあっても、主たる流路F5、F6を交互に縫うようにして半径方向への短いルートを形成しているため、溶融樹脂を内径部へ効率よく流動させ、内径部に位置する排出管へ流動させることができる。
上記以外の作用、効果は第1実施形態と共通するため重複した説明は省略する。
【0055】
<第2実施形態に係るリテーナの製造方法>
図11乃至図14は第2実施形態に係るリテーナ30を製造する手順を示す説明図である。図11は金属板材40Aを形成した金属素材85Aの平面図、図12は金属板材40Bを形成した金属素材85Bの平面図、図13は金属板材40Aに金属板材40Bを重ね合わせた状態で金属素材85Aと金属素材85Bを仮固定した状態を示す平面図、図14図13の状態にあるリテーナの不要箇所を切除する手順を示す平面図である。
【0056】
図11、及び図12に夫々示す金属板材40A、40Bは同一形状であり、スリットが延びる方向が互いに90度交差するように配置した点に違いがあるに過ぎない。各金属板材40A、40Bは金属平板をレーザーにより加工する他に、鋳造、或いは3Dプリンタ等により製造することができる。
【0057】
レーザー加工により金属板材40A、40Bを製造する場合にはステンレス製の平板から成る金属素材85A、85Bを夫々用いる(金属素材85A、85Bを用意する工程)。金属素材85A、85Bに対して夫々図示のような同一形状の複数本の直線状のスリット45A、45Bを並行に貫通形成することにより各金属素材85A、85Bの所定位置に各金属板材40A、40Bを形成する(第1、及び第2金属板材を形成する工程)。各スリット45Aの間には流路形成部材としての棒材(又は線材)50Aが位置しており、各スリット45Bの間には棒材(又は線材)50Bが位置している。図11図12の段階では、各棒材50A、50Bの長手方向両端部は各金属素材85A、85Bの外周縁部との接続を維持しているためばらけることがない。
次いで、同じ形状を有した金属板材40Aの一面に対して、金属板材40Bの一面が図13のように位置合わせされるように金属素材85Aを金属素材85B上に重ねて仮固定する(金属素材同士を仮固定する工程)。この仮固定に際しては図示しない専用の位置決め治具を用いる。
【0058】
この段階で両金属板材40A、40Bを構成する各棒材同士の各交差部Cを図示しない焼結手段を用いて焼結することにより両金属板材を固定一体化する(交差部Cを一体化、固定(焼結)する工程)。
次いで、図14に示すように二点鎖線で示す切断線CLに沿って両金属板材40A、40Bの内周縁、及び外周縁の余剰部分を切断して除去することにより、図9に示した如き完成品としてのドーナツ板形状のリテーナ30を得る(各金属素材の余剰部分を切断して除去する工程)。
なお、第1実施形態に係るリテーナ30の製造方法と同様に、第2実施形態に係るリテーナ30の製造方法についても、図示説明した二枚の金属素材を用いてリテーナ1を製造する方法は一例に過ぎない。即ち、例えば、鋳造方法、3Dプリンタにより製造する方法、切削加工により製造する方法、粉末冶金により製造する方法等々によっても本実施形態に係るリテーナ1は製造が可能である。つまり、本実施形態に係るリテーナ30は、二枚の金属素材(金属板材)を用いる以外にも種々の製造方法を使用した製造が可能である。
【0059】
[リーフディスクフィルタエレメントへの適用例]
次に、図15(a)及び(b)は本発明のリテーナ1、30を使用したリーフディスクフィルタエレメントの正面縦断面図、及びその一部拡大図である。
リーフディスクフィルタエレメント100は、ドーナツ板形状の金属板材10A、10B(40A、40B)から成るリテーナ1、30と、リテーナの中心部(中心開口部CO)に固定されたソリッドな金属材料から成るハブ104と、リテーナ1、30の上下の各外面に夫々配置され、内径部をハブ104に熔接固定されるドーナツ板形状のパンチングプレート(多孔支持板)106と、各パンチングプレートの外側面に配置されたドーナツ板形状の濾材108と、ハブ外周の上下両面に配置されハブとの間で濾材108の内径側外面を挟んだ状態でハブに熔接固定される環状体としてのリング110と、上側の濾材108の外面に配置されて、中心部付近からスポーク状に放射状に延びる複数の棒状体から成るスペーサ112と、を概略備えている。パンチングプレート106と濾材108と各スペーサ112の外径側端部は熔接により固定されている。
【0060】
濾材108、パンチングプレート106を順次通過してきた溶融樹脂はリテーナ1、30の外面からその内部に進入し、リテーナ1の各流路F1乃至F4等々、リテーナ30の各流路F5乃至F9等々を経て中心部に集められ、ハブ104に設けた穴を経由して中心部の図示しない排出管へ送られる。
【0061】
また、リテーナ1、30の外周縁とスペーサ112の外周縁内壁との間には空所Sが形成されており、この空所Sの外側に位置する濾材部分から空所内に進入してきた溶融樹脂はリテーナ1、30の各流路を経てリテーナ内を内径側へ移動し、ハブ104に設けた穴を経由して中心部の図示しない排出管へ送られる。各流路の外径側端部は空所Sに対して開放(連通)しているため、このように濾材を通過した溶融樹脂は外周部にも滞留することなくリテーナを経て内径側へ流動することができる。
また、二枚の濾材108により夫々濾過されてリテーナ1、30内に流入してきた溶融樹脂の品質が均一であることが重要であるが、本発明のリテーナを構成する各金属板材10A、10B(40A、40B)では、各流路内において各濾材を通過してきた溶融樹脂が合流してから混ざり合って均一化することができる。
【0062】
次に、図16(a)及び(b)は本発明の渦巻き型のリテーナ1の変形例を使用したリーフディスクフィルタエレメント100の正面縦断面図、及びその一部拡大図である。なお、図15と同一部分には同一符号を付して重複した説明は省略する。
渦巻き型のリテーナ1の場合、中心開口部COの形状をハブ104を兼ねる形状として一体的に製作することが可能である。つまり、リテーナの中心開口部COの内周縁の一部を更に内径方向に延在させることにより図15のハブ104に相当する部分に流路形成部材15A、15Bから成るハブ104’を形成する。これによりハブ104の全部、又は一部の機能をリテーナの内径部に兼用させることが可能となる。この場合には、ハブ104’を含めた構造を備えたリテーナ1を一連の製造手順により一括して製造することができる。この際、ハブ104’を構成する流路形成部材15A、15Bの圧縮強度をハブとしての機能を発揮するのに充分な程度(圧縮変形しない程度)に設定することが容易である。従来の金網からなるメッシュ型のリテーナにあっては中心開口部の形状をハブを兼ねるように構成することは可能であるが、この場合のハブとなる部位は金網製であるため圧縮強度が低く、圧縮変形が生じて実用に耐えないものとなる。
【0063】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係るフィルタ用リテーナ1、30は、平面視が所定の曲線形状、又は直線形状を備えた複数本の流路形成部材(棒材、又は線材)を同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した第1金属板材10A、40Aと、第1金属板材10A、40Aと同等の構成を備えた第2金属板材10B、40Bと、から成り、第1金属板材の一面に対して第2金属板材の一面を重ねた状態で各金属板材を構成する各流路形成部材同士の交差部を固定した構成を備え、第1金属板材を構成する各流路形成部材15A、50Aと、第2金属板材を構成する各流路形成部材15B、50Bとが平面視で線対称形状を構成することを特徴とする。
各金属板材は、平面視が所定の曲線形状、又は直線形状を備えた流路形成部材を同一平面上に所定の間隔で並行に、且つ全体形状がドーナツ板形状になるように配列した構成を備えているため、二枚の金属板材の接合面を境界面とした両側に主要な流路F1乃至F9が夫々形成される。各流路F1、F2、F5、F6内には障害物が存在せず、且つ各流路F1、F2、F5、F6は各金属板材の外周縁部と内部(中心開口部CO)とを直接的に連通させているため、溶融樹脂の中心部への流動性を高めることができる。リテーナ1を構成する各流路F1、F2に跨がる流路F3、F4、及びリテーナ30を構成する各流路F5、F6に跨がる流路F7、F8、F9は、リテーナの厚み方向への細かいジグザグ部を有するものの直線に近い短距離にてリテーナ中心部へ溶融樹脂をスムーズに導くことができる。
このため、低圧力損失、高強度、高耐圧という効果を発揮することができる。
【0064】
リテーナ1では、流路形成部材15A、15Bを渦巻き状の曲線(湾曲線)とし、且つ各流路形成部材15A同士、及び各流路形成部材15B同士を並行に配置することにより、流路形成部材15A間、及び流路形成部材15B間に夫々形成されるスリット(流路)20A、20Bを同様の渦巻き形状とすることができる。実施形態に示した個々の流路形成部材は平面視が細幅帯状で、均一幅であるが、これは一例に過ぎない。
【0065】
リテーナ30を構成する各流路形成部材50A、50Bを夫々直線状、且つ並行に配置し、更に各流路形成部材50A、50B同士を格子状に配置することにより、流路形成部材50A間、及び流路形成部材15B間に夫々形成される各スリット(流路)45A、45Bを同様の直線形状とすることができる。流路形成部材は平面視が細幅帯状で、均一幅であることが好ましい。
流路形成部材(骨格部材)の概念には、湾曲した、又は直線状の棒材(線材)の他に、細長い帯状の板材も含まれる。
【0066】
フィルタ用リテーナをリーフディスクフィルタのリテーナ(ドーナツ板形状)として使用することにより、リーフディスクフィルタ式濾過装置において濾材により濾過された溶融樹脂の排出方向となる径方向(半径方向、その他径方向中心部へ向かう方向)へ安定した流量で効率的に流動させることが可能となる。
【0067】
また、リーフディスクフィルタエレメントの二枚の濾材により夫々濾過されてリテーナ内に流入してきた溶融樹脂は、2つの金属板材を構成する各流路から流入してから合流するため、各流路内において混ざり合って均一化することができる。
【0068】
また、各棒材間の間隔(各流路の幅)D1、D2、D3、D4が過大であると、濾材を通過する溶融樹脂からの圧力が掛かった時に濾材とリテーナとの間に位置する多孔支持板(パンチングプレート)が湾曲変形して濾材の変形をもたらす。一方、間隔が過小であると空隙率が低下して通過抵抗が増大する。この兼ね合いが難しいが、本発明によれば間隔D1、D2、D3、D4が最適値となるように流路形成部材間の間隔を調整することにより微調整が可能となる。間隔D1、D2、D3、D4の値の設定如何によっては、多孔支持板を設けずに濾材をリテーナにより直接受けることにより、リーフディスクフィルタエレメントを薄型化することも可能となる。
金属板材をステンレス等の充分な強度を備えた金属材料により構成することにより、濾過時の圧力による変形を抑えることが可能となり、強度、経時的な耐久性、保形性を高めることができる。
ドーナツ板形状とは、円板の中心部に同心円状に貫通した中心開口部COを有した形状を指称する。
【0069】
第2の本発明に係るフィルタ用リテーナ1では、平面視が所定の曲線形状を備えた流路形成部材(棒材、又は線材)15A、15Bは、渦巻き形状を形成するように並行に配置されていることを特徴とする。
ドーナツ状のリテーナの中心(中心開口部CO)に向かう渦巻き型の流路F1、F2に沿った流れと、流路間を縫うようなジグザグ状の流路F3、F4が複合的に形成される。各流路はリテーナの周方向に沿った全周面に形成され、個々の流路F1、F2、F3、F4に関しては、周方向位置の違いに関係なく流速、流量が同じになる。
【0070】
第3の本発明に係るフィルタ用リテーナ1、30は、流路形成部材(棒材、又は線材)の表面、及び裏面は、平坦面であることを特徴とする。
各金属板材10A、10Bを構成する各流路形成部材15A、15B、50A、50Bが濾材と対向する面(表面、及び裏面)を平坦面とすることにより、多孔支持板を平坦面にて安定して支持することができる。
【0071】
第4の本発明に係るフィルタ用リテーナの製造方法は、二枚の平板状の金属素材80A、80B、85A、85Bを用意する工程と、各金属素材に対して夫々所定形状のスリット20A、20B、45A、45Bを複数本並行に貫通形成することにより各金属素材の面積(板面)内に夫々第1金属板材、及び第2金属板材を形成する工程と、一方の金属板材の裏面(一面)に対して、他方の金属板材の裏面が所定の位置関係で位置合わせされるように一方の金属素材を他方の金属素材に重ねて仮固定する工程と、両金属板材を構成する各流路形成部材の交差部Cを一体化、固定(焼結等)する工程と、各金属板材の内周縁、及び外周縁に位置する各金属素材の余剰部分を切断して除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
二枚の金属板材は同一形状を有しているため金属素材に対する加工に要する手数を低減できる。加工済みの二枚の金属素材を位置合わせしてから流路形成部材の交差部を焼結し、その後金属素材の余剰部分を切除することにより完成するため、トータルの製造手数を大幅に低減できる。
【0072】
第5の本発明に係るフィルタ用リテーナの製造方法は、二枚のドーナツ形状、且つ平板状の金属素材を用意する工程と、各金属素材に対して夫々所定形状のスリットを複数本並行に貫通形成すると共に、各スリットの長手方向両端部を開放しないことにより各金属素材の面積(板面)内に夫々第1金属板材、及び第2金属板材を形成する工程と、一方の金属板材の一面に対して、他方の金属板材の一面が所定の位置関係で位置合わせされるように一方の金属素材を他方の金属素材に重ねて仮固定する工程と、両金属板材を構成する流路形成部材の交差部を一体化する工程と、各金属板材の内周縁、及び外周縁に位置する各金属素材の余剰部分を切断して除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0073】
第5の本発明と第4の本発明に係る製造方法との相違点は、予め用意する金属素材の形状がドーナツ形状である点にあり、金属素材を予めドーナツ形状に加工しておく必要がある。
【0074】
第6の本発明に係るフィルタ用リテーナの製造方法は、前記何れかのフィルタ用リテーナ1、30を、鋳造方法、粉末冶金により製造する方法、3Dプリンタにより製造する方法、或いは切削加工により製造する方法の何れか一つの方法により製造することを特徴とする。
つまり、二枚の金属素材を用いてリテーナ1を製造する以外にも上記の各製造方法を用いた製造方法を採ることができる。これにより焼結工程を省略する等、生産性の向上を図ることができる。
【0075】
第7の本発明に係るリーフディスクフィルタエレメントは、フィルタ用リテーナ1、30と、該フィルタ用リテーナの中心開口部に固定されたハブ104と、フィルタ用リテーナの上下の各外面に夫々配置された多孔支持板106と、各多孔支持板の外側面に夫々配置された濾材108と、を備えたことを特徴とする。
フィルタ用リテーナ1、30をリーフディスクフィルタエレメントに適用することにより低圧力損失、高強度、高耐圧という効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…フィルタ用リテーナ、10A…第1金属板材、10B…第2金属板材、15A、15B…流路形成部材(棒材、又は線材)、20A、20B…スリット、F1~F9…流路、30…フィルタ用リテーナ、40A…第1金属板材、40B…第2金属板材、45A、45B…スリット、50A、50B…流路形成部材(棒材、又は線材)、80A、80B…金属素材、85A、85B…金属素材、100…リーフディスクフィルタエレメント、104…ハブ、106…パンチングプレート(多孔支持板)、108…濾材、110…リング、112…スペーサ。
図1
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