(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ウェーハ加工用積層体、それを用いた薄型ウェーハの製造方法及び薄型ウェーハ個片化の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240411BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240411BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240411BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B32B27/00 101
H01L21/78 M
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020164318
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 文明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏樹
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-324370(JP,A)
【文献】特開2000-031185(JP,A)
【文献】特開2000-039709(JP,A)
【文献】特開2004-026950(JP,A)
【文献】特開2008-098453(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194917(WO,A1)
【文献】特開2014-150239(JP,A)
【文献】特開2020-038866(JP,A)
【文献】特開2016-042571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B32B 27/00
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの両面に吸着層が設けられ、該吸着層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる吸着層からなる両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハ加工用積層体において、
該回路形成されているウェーハ表面が、(A)(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位1~50重量%、(b)フェノール性水酸基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位1~50重量%、(c)他のラジカル重合性化合物に由来する構成単位5~80重量%からなるアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物により、回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている接合層を有するウェーハであって、該硬化された接合層は、アルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能であり、互いに接し合っている、仮支持体と該吸着層間および該接合層と該吸着層間の剪断力が1.0N/cm
2以上で、かつ剥離可能であることを特徴とするウェーハ加工用積層体。
【請求項2】
回路形成されているウェーハ表面に、前記感放射線性樹脂組成物をウェーハ表面の凸部が覆われるように塗工してなる接合層を形成後、
(a)該ウェーハの接合層面と表面が平滑な透明離型性基材の離型面を貼り合せ、透明離型性基材側から放射線照射により接合層を硬化させた後、該透明離型性基材を剥離し、硬化させた該接合層付きウェーハ面を、前記両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と貼り合せて積層させる工程
(b)仮支持体及び前記両面吸着層フィルムの基材フィルムが透明である場合であって、両面吸着層フ
ィルムの一方の吸着層を仮支持体に貼り合せた後、他方の吸着層面をウェーハ上に設けられた接合層面と貼り合わせた後、仮支持体側から放射線照射により該接合層を硬化させ、仮支持体と積層させる工程
(c)前記両面吸着層フィルムの基材フィルムが透明である場合であって、両面吸着層フィルムの一方の吸着層をウェーハ上に設けられた接合層面と貼り合せた後、基材フィルム側から放射線照射により該接合層を硬化させ、両面吸着層フィルムの他方の面を仮支持体と貼り合せ積層させる工程
のいずれかの積層工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ加工用積層体。
【請求項3】
請求
項2記載のウェーハ加工用積層体を用いた個片化ウェーハチップ製造方法であって、
(a)仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削する工程と、
(b)必要に応じて、前記ウェーハの回路非形成面に高温処理加工を施す工程と、
(c)前記(a)、(b)の工程後、研削加工面にダイシングテープを貼り付ける工程
(d)下記1)または2)により、接合層を有する研削済みウェーハを仮支持体から剥離する工程
1)研削済みウェーハをダイシングテープごと、仮支持体と仮支持体と接している吸着層間で剥離し、その後、前記両面吸着層フィルムを前記接合層面から剥離する工程
2)研削済みウェーハをダイシングテープごと、ウェーハの接合層面と両面吸着層フィルムの吸着層間で剥離する工程
(e)下記1)または2)により、ダイシングする工程
1)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、研削済みウェーハをダイシングし個片化する工程
2)接合層を有する研削済みウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
よりなる工程を含むことを特徴とする薄型ウェーハ個片化の製造方法。
【請求項4】
請求
項2記載のウェーハ加工用積層体を用いて、仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、下記(a)~(c)のいずれかの工程により、ウェーハ加工用積層体の仮支持体から剥離されたことを特徴とする、ダイシングテープに保持された接合層を有する研削済み薄型化したウェーハの製造方法。
(a)該研削済みウェーハの研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該研削済みウェーハをダイシングテープごと、該仮支持体と該仮支持体と接している前記吸着層間で剥離し、その後、該両面吸着層フィルムを該接合層面から剥離する工程
(b)該研削済みウェーハの研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該研削済みウェーハをダイシングテープごと、該研削済みウェーハの接合層面と該両面吸着層フィルムの吸着層間で剥離する工程
(c)該研削済みウェーハから、該仮支持体と該仮支持体と接している前記吸着層間で剥離し、その後、両面吸着層フィルムで支持されている該研削済みウェーハの研削加工面に、ダイシングテープを貼り付けた後、該接合層面と該両面吸着層フィルムの吸着層間で該両面吸着層フィルムを剥離する工程
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により作製された、ダイシングテープに保持された接合層を有する研削済みウェーハを、下記(a)または(b)の工程によりダイシングすることを特徴とする薄型ウェーハ個片化の製造方法。
(a)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、前記薄型ウェーハをダイシングし個片化する工程
(b)前記接合層を有する研削済みウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの製造時に、薄型ウェーハを効果的に得ることを可能にするウェーハ加工用積層体、それを用いた薄型ウェーハの製造方法及び薄型ウェーハ個片化の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、パッケージの薄型化や小型化によるチップ積層技術による高密度化への対応のために、半導体ウェーハの増々の薄型化が進められている。薄型化はパターン形成されたウェーハの表面(回路面)とは反対側の面を裏面研削する。従来、研削工程時には、前記ウェーハ表面とは剥離力が高く、一方、研削工程後には、光照射や熱処理等により、前記ウェーハの表面との剥離力が低減する粘着剤層を有する、いわゆるバックグラインド(以下BG)保護テープを貼付けた状態で前記ウェーハを保持し裏面研削後、ウェーハ裏面にダイシングテープと呼ばれる粘着保護テープを貼付けリングフレーム等に固定後、光照射や熱処理により、前記粘着層と前記ウェーハ間の剥離力を低減させ、BGテープを剥離して、ダイシングにより個片化チップが作製されてきた。
【0003】
しかしながら、高密度化にともない、フリップチップ実装等では、通常、半導体チップと基板の接合に、はんだ等からなるバンプを回路面に搭載した半導体チップの実装技術が用いられている。そして、最近では、バンプが予め半導体ウェーハ回路面に高密度に接合されている方法が主流になりつつある。従って、前記ウェーハ表面の表面凹凸段差は数十μm、場合により100μmを超える場合がある。このようなバンプ付ウェーハの裏面を、従来のBGテープを用いて研削すると、粘着剤層が、表面のバンプの高低差に追従して埋め込まれず、研削時、バンプが存在する部分とバンプが存在しない部分との高低差に起因する圧力差がウェーハ裏面に直接影響し、ウェーハ裏面にディンプルと呼ばれる窪みやクラックが生じ、最終的に半導体ウェーハを破損させてしまう。
【0004】
この表面凹凸段差追従性の解決法として、BGテープの粘着剤層の厚みを厚くし、さらに粘着剤の流動性を高めることにより、粘着剤層とウェーハとを密着させ、粘着剤層のクッション性によりバンプの段差による圧力差を解消するようにした対処の方法がある。しかし、粘着剤層を厚くし、かつその流動性を高くすると、バンプの根本部分に粘着剤が回り込み易くなる。このため、バンプの根本部分に付着した粘着剤が、表面保護シートの剥離操作によって、凝集破壊を起こし、粘着剤の一部が回路面に残着することがある。回路面に残着した粘着剤は溶剤洗浄等によって除去しなければ、デバイス内の異物として残留し、完成したデバイスの信頼性を損なう。
【0005】
また、粘着剤層を厚くするのではなく、表面保護テープの基材フィルムと粘着剤層との間に、バンプの高低差を吸収、緩和するためのいわゆるクッション層機能を有する中間層を設けることが種々提案されている。(例えば、特許文献1)
しかしながら、特許文献1に提案されている粘着シートをウェーハ表面に貼付して裏面研削を行うと、研削時に発生する熱によって中間層が軟化してしまい、研削精度が低下することがあった。さらに、粘着シートをロール状の巻き取り、運搬、保管等を行うと、特に夏季には高温に曝され、中間層や粘着剤層が軟化し、ロールの側部から樹脂成分が浸み出してしまうことがあった。
【0006】
また、ウェーハの更なる薄型化の要望に対しては、従来のBGテープでは対応ができず、研削工程において保護テープ付きウェーハが反ったり、又は、研削時の厚み均一性が低いことなどの問題が生じ、更なる薄型化に対応出来ないという問題が生じ、最近では、半導体基板を、シリコンやガラス等の仮支持体に、両面粘着シートを介して接合することによって、裏面研削する方法が取られている。
【0007】
例えば、特許文献2には、パターンが形成された半導体ウェーハ表面とガラス等の仮支持体表面を両面粘着シートで貼付ける工程において、前記半導体ウェーハ表面に貼付ける側の両面粘着シートの粘着層面が、薄型加工処理後に、光硬化や熱発泡等により、半導体ウェーハ表面との接着力を低下させることができる粘着層を用い、仮支持体上に半導体ウェーハを固定した状態で、半導体ウェーハの裏面に薄型加工を施し、その後ウェーハ裏面をダイシングテープに貼り付けた後、熱処理または光照射等により、半導体ウェーハ表面と粘着層界面の粘着力を低下させ、半導体ウェーハを仮支持体から剥離する方法が記載されている。しかしながら、特許文献2には、該粘着層の前記凹凸段差表面への追従性に対する対応は何ら記載されていない。また、裏面研削された薄型ウェーハを、ダイシングテープ等を用いて、該粘着層面から薄型化されたウェーハを破損することなく安定して剥離するのは難しく、大がかりな転写装置が必要となる。
【0008】
更に、パッケージの薄型化や小型化によるチップ積層技術による高密度化への対応は、より一層の高密度、大容量化、高速化、低消費電力化を実現するために、例えば3次元の半導体実装が期待されている。3次元半導体実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、更にこれをシリコン貫通電極(TSV)によって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(ウェーハ裏面)研削によって薄型化が必要であるが、研削後のウェーハ厚みは10μm~30μmと一段高い要求がされるようになってきている。
【0009】
3次元の半導体実装の場合であっても、前記フリップチップ実装と同じく、回路形成されているウェーハ表面は、通常バンプ等が形成されている場合が多いためにその表面の凹凸が大きく、表面保護層は表面凹凸段差追従性機能が要求される。又、研削時の保護テープ付きウェーハの反りや研削時の厚み均一性のためには仮支持体によるウェーハサポートシステムが要求されている。
【0010】
さらに、3次元の半導体実装の場合は、薄型化研削工程後にTSV形成工程や裏面での配線層形成工程が行われるが、この際には200℃以上の高温処理が入り、従来のBGテープに使用されている紫外線照射や熱処理により剥離力を低減させる粘着剤層では、耐熱性が不十分で剥離適性等に問題が生じている。
【0011】
一方、特許文献3には、ポリエステルフィルム等の基材フィルム両面に、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる吸着層からなる両面吸着層フィルムを用いて、ガラス等の仮支持体とウェーハ回路形成表面とを貼り合せ、裏面研削によるウェーハの薄型化及び研削後の薄型化ウェーハを仮支持体から容易に剥離させることができる旨の記載がされている。
【0012】
特許文献3に記載の両面吸着層フィルムの吸着層は、高耐熱性であり、更に、平滑なガラス仮支持体と、回路面等が形成されていない平滑なシリコンウェーハを貼り合せ、シリコンウェーハの裏面研削を行う場合、薄型ウェーハが可能で、かつ、該薄型ウェーハを該仮支持体から容易に剥離可能である。しかしながら、該吸着層の被着体との密着力は、特許文献3に記載されているように、非常に近接した相対する固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力であるところからきているために、両面吸着層フィルムの吸着層と被着体とを貼り合せたものを、貼り合せた面と平行に両面吸着層フィルムをずらす力(以下剪断力と呼ぶ)が1.0N/cm2以上であるためには、被着体の表面は高度な平滑性が要求される。
【0013】
特許文献4には、特許文献3記載のシリコーン系吸着層の数平均分子量とアスカー硬度を規定することにより、該吸着層の厚みが100μmの場合、被着体の表面粗さRaが8μm程度であっても、前記被着体との剪断力が1.0N/cm2以上である吸着層処方が記載されている。
【0014】
しかしながら、特許文献4に記載のような両面吸着層フィルムを用いても、前記フリップチップ実装等のように、通常バンプ形成され、表面凹凸段差が大きな被着体に対しては、表面凹凸段差追従性が無く、該吸着層/被着体間との良好な密着性が得られず、ウェーハ保護用のBGテープとしての機能を発揮することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2001-203255号公報
【文献】特開2002-075937号公報
【文献】特開2004-026950号公報
【文献】特開2008-162240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、第一の目的は、凹凸表面を有するウェーハの場合であっても、ウェーハ表面と仮支持体との仮接着が容易で、薄型ウェーハの裏面研削が可能であり、裏面研削後の薄型ウェーハを仮支持体から容易に剥離することができ、かつ剥離後のウェーハ表面の残渣が無い、ウェーハ加工用積層体。それを用いた個片化ウェーハチップ製造方法を提供することである。
また、第二の目的は、第一の目的に加えて、裏面研削後、高温加熱処理又は発熱を伴う処理を施す工程を有するTSV形成、ウェーハ裏面配線工程に対する工程適合性を有するウェーハ加工積層体、それを用いた薄型ウェーハの製造方法及び個片化ウェーハチップ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下、本発明の、前記課題を達成するための手段を具体的に説明する。
【0018】
請求項1に係る発明は、基材フィルムの両面に吸着層が設けられ、該吸着層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる吸着層からなる両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハ加工用積層体において、
該回路形成されているウェーハ表面が、(A)(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位1~50重量%、(b)フェノール性水酸基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位1~50重量%、(c)他のラジカル重合性化合物に由来する構成単位5~80重量%からなるアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物により、回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている接合層を有するウェーハであって、該硬化された接合層は、アルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能であり、互いに接し合っている、仮支持体と該吸着層間および該接合層と該吸着層間の剪断力が1.0N/cm2以上で、かつ剥離可能であることを特徴とするウェーハ加工用積層体である。
【0019】
請求項2に係る発明は、回路形成されているウェーハ表面に、前記感放射線性樹脂組成物をウェーハ表面の凸部が覆われるように塗工してなる接合層を形成後、
(a)該ウェーハの接合層面と表面が平滑な透明離型性基材の離型面を貼り合せ、透明離型性基材側から放射線照射により接合層を硬化させた後、該透明離型性基材を剥離し、硬化させた該接合層付きウェーハ面を、前記両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と貼り合せて積層させる工程
(b)仮支持体及び前記両面吸着層フィルムの基材フィルムが透明である場合であって、両面吸着層フィルムの一方の吸着層を仮支持体に貼り合せた後、他方の吸着層面をウェーハ上に設けられた接合層面と貼り合わせた後、仮支持体側から放射線照射により該接合層を硬化させ、仮支持体と積層させる工程(c)前記両面吸着層フィルムの基材フィルムが透明である場合であって、両面吸着層フィルムの一方の吸着層をウェーハ上に設けられた接合層面と貼り合せた後、基材フィルム側から放射線照射により該接合層を硬化させ、両面吸着層フィルムの他方の面を仮支持体と貼り合せ積層させる工程
のいずれかの積層工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ加工用積層体である。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項2記載のウェーハ加工用積層体を用いた個片化ウェーハチップ製造方法であって、
(a)仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削する工程と、
(b)必要に応じて、前記ウェーハの回路非形成面に高温処理加工を施す工程と、
(c)前記(a)、(b)の工程後、研削加工面にダイシングテープを貼り付ける工程
(d)下記1)または2)により、接合層を有する研削済みウェーハを仮支持体から剥離する工程
1)研削済みウェーハをダイシングテープごと、仮支持体と仮支持体と接している吸着層間で剥離し、その後、前記両面吸着層フィルムを前記接合層面から剥離する工程
2)研削済みウェーハをダイシングテープごと、ウェーハの接合層面と両面吸着層フィルムの吸着層間で剥離する工程
(e)下記1)または2)により、ダイシングする工程
1)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、研削済みウェーハをダイシングし個片化する工程
2)接合層を有する研削済みウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
よりなる工程を含むことを特徴とする薄型ウェーハ個片化の製造方法である。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項2記載のウェーハ加工用積層体を用いて、仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削後、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、下記(a)~(c)のいずれかの工程により、ウェーハ加工用積層体の仮支持体から剥離されたことを特徴とする、ダイシングテープに保持された接合層を有する研削済みウェーハの製造方法である。
(a)該研削済みウェーハの研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該研削済みウェーハをダイシングテープごと、該仮支持体と該仮支持体と接している前記吸着層間で剥離し、その後、該両面吸着層フィルムを該接合層面から剥離する工程
(b)該研削済みウェーハの研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該研削済みウェーハをダイシングテープごと、該研削済みウェーハの接合層面と該両面吸着層フィルムの吸着層間で剥離する工程
(c)該研削済みウェーハから、該仮支持体と該仮支持体と接している前記吸着層間で剥離し、その後、該両面吸着層フィルムで支持されている該研削済みウェーハの研削加工面に、ダイシングテープを貼り付けた後、該接合層面と該両面吸着層フィルムの吸着層間で該両面吸着層フィルムを剥離する工程
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の製造方法により作製された、ダイシングテープに保持された接合層を有する研削済みウェーハを、下記(a)または(b)の工程によりダイシングすることを特徴とする薄型ウェーハ個片化の製造方法である。
(a)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、前記薄型化ウェーハをダイシングし個片化する工程
(b)前記接合層を有する研削済みウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、薄型ウェーハ研削時にウェーハの反り等が発生することなく、30μm以下の薄型ウェーハの研削が可能であり、さらに、200℃以上の加熱処理又は発熱を伴う処理を施す工程を行った後でも薄型化された半導体ウェーハが仮支持体や両面吸着層フィルムからスムーズに剥離でき、かつ前記接合層が前記ウェーハから、残渣なく、簡単に剥離または除去可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のウェーハ加工用積層体の層構成の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のウェーハ加工用積層体は、基材フィルムの両面に吸着層が設けられている両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と電極形成された表面の段差凸部が光硬化された接合層により覆われている半導体ウェーハを貼り合せてなるウェーハ加工用積層体である。以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0026】
<両面吸着層フィルム>
本発明でいう両面吸着層フィルムとは、剪断力は高い値であるにもかかわらず(具体的には、1.0N/cm2以上の剪断力をもつもの)、両面吸着層フィルムを被着体から180°方向に剥がす時の力は(以下剥離力と呼ぶ)30mN/12.7mm未満で殆ど0に近いものを指す。従って、一般に呼ばれる粘着シートのように、被着体に対して剪断力が高いと同時に光照射や熱処理により剥離力が200mN/12.7mm以上となるような粘着シートとは異なる物性を持つものである。
【0027】
前記特許文献3には、基材フィルムの両面に吸着層が設けられた両面吸着層フィルムにおいて、該吸着層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる吸着層を有する両面吸着層フィルムが記載されている。また、前記特許文献4には、該吸着層のシリコーンの数平均分子量が25,000~100,000で、かつ該吸着層がアスカーFP硬度25以上でアスカーCSC2硬度80以下である吸着層が記載されている。
【0028】
本発明においても使用される両面吸着層フィルムは、前記特許文献3、4に記載のように以下に説明する組成物から構成される吸着層が、基材フィルムの両面に積層される。したがって、本発明に係るシリコーンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0029】
【0030】
(式中Rは下記有機基、mは整数を表す)
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種または異種の非置換または置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0031】
本発明に係るもう1つのシリコーンの形態としては、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンである。このシリコーンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0032】
また、本発明に係るシリコーンの形態としては、剥離剤として特開平10-120992に開示されている、少なくとも両末端に炭素数が4以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンも入るものである。
【0033】
ここで架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。また、架橋促進剤を加えてもよい。架橋促進剤としては、例えば、3-メチル-1-ブテン-3-オールが好ましい。
【0034】
架橋反応に用いる白金系触媒としては、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応して得たポリオルガノシロキサン系シリコーン樹脂は、シリコーンゲルのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体である剛体製基材との吸着を容易にさせる。
【0035】
本発明に使用される吸着層成分である架橋反応して得たポリオルガノシロキサン系シリコーン樹脂は、特許文献3及び特許文献4記載を準用することができる。
【0036】
本発明の係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。特に、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で好ましい。
【0037】
吸着層の厚みは、5μm~100μmが好ましい。5μm未満では、十分な剪断力が得られない場合があり、また100μmを超える場合はコスト的に無駄である。
【0038】
両面吸着層フィルムの基材フィルムは、前記ウェーハの裏面研削工程後、回路非形成面に高温処理等を伴う加工を施さない場合には種々の基材フィルムの使用が可能で、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、硬化エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどからなる1層または多層構造のフィルムを使用することができる。一方、3次元の半導体実装等のように、前記ウェーハの裏面研削工程後、回路非形成面に高温処理等を伴う加工を施す場合には、基材フィルムとして、耐熱性を有する、ポリイミド等が特に好ましい。
基材フィルムの厚みは、通常5~300μmであり、好ましくは10~200μmである。
【0039】
基材フィルムの表面に吸着層との密着性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理や、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を主成分としてなる従来公知のプライマー層塗工等を施してもよい。
特に、基材フィルムとして、ポリイミドを用いる場合は、プラズマ処理や、プライマー層として、例えば特開2014-221877号公報記載のポリチオフェン系導電性ポリマーとドーパントとの複合体を含有するプライマー層や特開2014-213545号公報記載のカーボンナノチューブとアクリルポリオールと分散剤よりなるプライマー層等を設けることが好ましい。
【0040】
両面吸着層フィルムの各吸着層の材質は、同じでもよいし異なったものでもよい。また吸着層の各々の厚みも、同じ厚みであってもよいし、異なる厚みであっても良い。
【0041】
吸着層の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等が適宜使用される。
【0042】
両面吸着層フィルムの吸着層の表面は、従来公知の表面が平滑な離型性セパレータが設けられ、被着体への貼り合せ時に該セパレータは剥離される。
【0043】
前記両面吸着層フィルムのシリコーンよりなる吸着層の被着体に対する高い剪断力は、非常に近接した相対する固体分子間におけるファンデルワールス力に起因する力であるところからきている(「摩擦の科学」裳華房発行、56~65頁や「接着の基礎理論」高分子刊行会発刊、116~120頁)。
したがって、本発明の係るシリコーンよりなる吸着層の被着体に対する前記高い剪断力は、前記両面吸着層フィルムの吸着層及び被着体面が密接に接合している場合に効果を発揮するものである。
【0044】
従って、特許文献4に記載のような、凹凸段差追従性が若干ある吸着層を用いても、フリップチップ実装や3次元の半導体実装等のように、通常、バンプを回路面に搭載した半導体ウェーハのように、回路形成されている半導体ウェーハよりなる被着体の表面が、数十μm、場合により100μmを超える凹凸段差がある被着体に対しては、該吸着層の表面凹凸段差追従性が得られないため、吸着層と回路形成面を有するウェーハ間を固定するための十分な剪断力が得られず、このままでは使用することはできない。
【0045】
本発明は、上記の問題点を鑑みたもので、後述するように、基材フィルムの両面に吸着層が設けられ、該吸着層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる吸着層からなる両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハ加工用積層体において、回路形成されたウェーハ表面に、特定の接合層を、回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように塗工法により設けた平滑な表面を有する被着体として、さらに該接合層が耐熱性を有し、かつアルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能であることにより、フリップチップ実装のみならず3次元の半導体実装のための半導体ウェーハ裏面研削用ウェーハ加工用積層体としての要件を満たすウェーハ加工用積層体を完成させたものである。
【0046】
<半導体ウェーハ及び回路形成面>
回路形成面及び回路非形成面を有するウェーハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面のウェーハである。本発明が適用できるウェーハは、通常、半導体ウェーハである。該半導体ウェーハの例としては、シリコンウェーハのみならず、Geウェーハや化合物半導体(ZnSe,GaAs,GaN,InP,InGaAlP,InGaN,SiC,SiGe等)ウェーハ等挙げられる。該ウェーハの厚さは、特に制限はないが、典型的には600~800μm、より典型的には625~775μmである。
フリップチップ実装等においては、回路形成後のウェーハ回路形成面に、通常、アンダーバンプメタル(UBM)形成をし、はんだや金や銅バンプが形成される。この際、ウェーハ回路形成面は、表面凹凸段差が数十μm、場合により100μmを超える場合がある。
【0047】
<ウェーハ加工用積層体>
上記問題点は、基材フィルムの両面に吸着層が設けられ、該吸着層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなる吸着層からなる両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面が積層されているウェーハ加工用積層体において、
該回路形成されているウェーハ表面が、(A)(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位1~50重量%、(b)フェノール性水酸基を有するラジカル重合性化合物に由来する構成単位1~50重量%、(c)他のラジカル重合性化合物に由来する構成単位5~80重量%からなるアルカリ可溶性を有する共重合体、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、および(C)放射線ラジカル重合開始剤、を含有する感放射線性樹脂組成物により、回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた後、放射線照射により硬化されている接合層を有するウェーハであって、該硬化された接合層は、アルカリ溶液よりなる剥離液によって除去可能であり、互いに接し合っている、仮支持体と該吸着層間および該接合層と該吸着層間の剪断力が1.0N/cm2以上で、かつ剥離可能であることを特徴とするウェーハ加工用積層体によって解決される。
【0048】
そして、これにより、上記問題を解決すると同時に、薄型ウェーハ研削時にウェーハの反り等が発生することなく、バンプ形成された突起部を保護し、30μm以下の薄型ウェーハの研削が可能であり、薄型化された半導体ウェーハが仮支持体や両面吸着層フィルムからスムーズに剥離でき、かつ回路形成面に残渣がないウェーハおよびウェーハ個片化製造方法が可能である。また、本発明によれば、3D実装のように、裏面研削工程後、200℃以上の加熱処理又は発熱を伴う処理を施す工程を行った後でも、薄型化された半導体ウェーハが仮支持体や両面吸着層フィルムからスムーズに剥離でき、かつ回路形成面に残渣がないウェーハの作製が可能である。
【0049】
<接合層>
本発明に使用される前記接合層用感放射線性樹脂組成物としては、(A)(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物、(b)フェノール性水酸基を有するラジカル重合性化合物、(c)他のラジカル重合性化合物に由来する構成単位を有するアルカリ可溶性共重合体(以下、「アルカリ可溶性共重合体(A)」という)を含有するものである。
【0050】
(a)カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物
本発明に用いるアルカリ可溶性共重合体(A)を構成する(a)成分である、カルボキシル基を有するラジカル重合性化合物(以下、「カルボキシル基化合物(a)」という)はアルカリ可溶性共重合体(A)のアルカリ可溶性を調節し、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-サクシノロイルエチル(メタ)アクリレート、2-マレイノロイルエチル(メタ)アクリレート、2-ヘキサヒドロフタロイルエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(市販品としては、例えば東亞合成(株)製アロニックスM-5300)、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(市販品としては、例えば同社製アロニックスM-5400)、アクリル酸ダイマー(市販品としては、例えば同社製アロニックスM-5600)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(市販品としては、例えば同社製アロニックスM-5700)などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸などを挙げることができる。これらの化合物は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用できる。これらの中ではアクリル酸、メタクリル酸、2-ヘキサヒドロフタロイルエチルメタクリレートが好ましい。アルカリ可溶性共重合体(A)中に占めるカルボキシル基化合物(a)に由来する構成単位は、1~50重量%であり、好ましくは5~40重量%、特に好ましくは10~40重量%である。
【0051】
(b)フェノール性水酸基を有するラジカル重合性化合物
本発明に用いるアルカリ可溶性共重合体(A)を構成する(b)成分である、フェノール性水酸基を有するラジカル重合性化合物(以下、「フェノール性水酸基化合物(b)」という)は、α-メチル-p-ヒドロキシスチレン、α-メチル-m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-o-ヒドロキシスチレン、2-アリルフェノール、4-アリルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メトキシフェノール、4-アリル-2-メトキシフェノール、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノールあるいは4-アリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノンからなる。これらの中で、α-メチル-p-ヒドロキシスチレンが好ましい。アルカリ可溶性共重合体(A)中に占めるフェノール性水酸基化合物(b)に由来する構成単位は、1~50重量%であり、好ましくは5~40重量%、特に好ましくは10~40重量%である。この構成単位が少なすぎると、耐熱性が低下し、逆に多すぎると、得られる共重合体の分子量が十分に上がらず、膜厚20μm以上の塗膜形成が困難になる。
【0052】
(c)他のラジカル重合性化合物
本発明に用いるアルカリ可溶性共重合体(A)を構成する(c)成分である、他のラジカル重合性化合物(以下、「他のラジカル化合物(c)」という)は、主としてアルカリ可溶性共重合体(A)の機械的特性を適度にコントロールする目的で使用する。ここで、「他の」とは、前出のラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物の意味である。このような他のラジカル重合性化合物(c)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アリールエステル類、ジカルボン酸ジエステル類、芳香族ビニル類、ニトリル基含有重合性化合物、アミド結合含有重合性化合物、脂肪酸ビニル類、塩素含有重合性化合物、共役ジオレフィン類等を挙げることができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ-ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;1,3-ブタジエン、イソプレン、1,4-ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類を用いることができる。これらの化合物は単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができ、アルカリ可溶性共重合体(A)中に占める他のラジカル重合性化合物(c)に由来する構成単位は、5~80重量%であり、好ましくは20~70重量%で、特に好ましくは30~60重量%である。
【0053】
アルカリ可溶性共重合体(A)を製造する際に用いられる重合溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類などが好ましい。
【0054】
また、ラジカル共重合における重合触媒としては、通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、1,1’-ビス-(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物および過酸化水素などを挙げることができる。過酸化物をラジカル重合開始剤に使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0055】
上記方法で得られるアルカリ可溶性共重合体(A)の重量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマト法ポリスチレン換算で通常1,000~100,000であり、好ましくは2,000~50,000、より好ましくは3,000~20,000である。
【0056】
上記アルカリ可溶性共重合体(A)は、当業者には公知の任意の重合技術により製造することができる。
【0057】
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物
本発明に用いられる(B)成分である、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(以下、「エチレン性不飽和化合物(B)」という)は、分子中にエチレン性不飽和基を少なくとも1個有する常温で液体または固体の化合物であり、一般にはエチレン性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を持つ(メタ)アクリレート化合物、もしくはビニル基を持つ化合物が好ましく用いられる。(メタ)アクリレート化合物としては単官能性化合物と多官能性化合物に分類されるが、いずれの化合物も用いることができる。このようなエチレン性不飽和化合物(B)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシルアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、tert-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、グリセロール(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどの単官能性化合物が挙げられる。
【0058】
また、多官能性化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシロキシメチルエチルエーテル、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
これらのエチレン性不飽和化合物(B)は、市販されている化合物をそのまま用いることもできる。市販されている化合物の具体例としては、アロニックスM-210、同M-240、同M-245、同M-309、同M-310、同M-400、同M-6100、同M-6200、同M-6250、同M-6300、同M-6400、同M-6500、同M-7100、同M-8030、同M-8060、同M-8100、同M-9050(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD R-551、同R-712、同TMPTA、同HDDA、同TPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同HX-220、同HX-620、同R-604、同DPCA-20、同DPCA-30、同DPCA-60、同DPCA-120(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート#260、同295、同300、同312、同335HP、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)等をあげることができる。
【0060】
これらのエチレン性不飽和化合物(B)は単独でまたは2種以上を併用してもよく、アルカリ可溶性共重合体(A)100重量部に対して好ましくは10~250重量部、より好ましくは20~200重量部、特に好ましくは25~150重量部である。10重量部未満であると、露光時の感度が低下しやすく、250重量部を越えると共重合体(A)との相溶性が悪くなり、保存安定性が低下したり、20μm以上の厚膜を形成することが困難になることがある。
【0061】
(C)放射線ラジカル重合開始剤
本発明の(C)成分である、放射線ラジカル重合開始剤(以下、「放射線ラジカル重合開始剤(C)」という)としては、例えばベンジル、ジアセチルなどのα-ジケトン類;ベンゾインなどのアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、チオキサントン-4-スルホン酸、ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;アセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、α,α-ジメトキシ-α-アセトキシベンゾフェノン、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、1-[2-メチル-4-メチルチオフェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、α,α-ジメトキシ-α-モルフォリノ-メチルチオフェニルアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンなどのアセトフェノン類;アントラキノン、1,4-ナフトキノンなどのキノン類;フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどのハロゲン化合物;[1,2’-ビスイミダゾール]-3,3',4,4’-テトラフェニル、[1,2’-ビスイミダゾール]-1,2’-ジクロロフェニル-3,3',4,4’-テトラフェニルなどのビスイミダゾール類、ジ-tert-ブチルパ-オキサイドなどの過酸化物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド類などが挙げられ、また、市販品としては、Omnirad 184、同651、同369、同1173、同TPO(以上、IGM Resins B.V. 製)、ユベクリルP36(UCB(株)製)などを挙げることができる。また、必要に応じてメルカプトベンゾチオアゾール、メルカプトベンゾオキサゾールのような水素供与性を有する化合物を上記放射線ラジカル重合開始剤(C)と併用することもできる。
【0062】
上述した種々の放射線ラジカル重合開始剤(C)の中で好ましい化合物としては、1-[2-メチル-4-メチルチオフェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン類、フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、1,2’-ビスイミダゾール類と4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンとメルカプトベンゾチアゾールとの併用、Omnirad TPO、同651などを挙げることができる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。その使用量は、アルカリ可溶性共重合体(A)100重量部に対して好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは1~30重量部、特に好ましくは2~30重量部である。この使用量が0.1重量%以下であると、酸素によるラジカルの失活の影響(感度の低下)を受けやすく、また50重量%を越えると、相溶性が悪くなったり、保存安定性が低下する傾向がある。また、これら放射線ラジカル重合開始剤(C)と放射線増感剤とを併用することも可能である。
【0063】
本発明では、上述のアルカリ可溶性共重合体(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、および放射線ラジカル重合開始剤(C)の他に、必要に応じて、溶剤、各種の添加剤などの成分を使用することができる。
【0064】
溶剤としては、各成分を均一に溶解させることができ、また各成分と反応しないものが用いられる。このような有機溶剤としては、アルカリ可溶性共重合体(A)を製造する際に用いられる重合溶剤と同様の溶剤を用いることができ、さらに、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒を添加することもできる。
【0065】
これらの溶剤の中で、溶解性、各成分との反応性および塗膜形成の容易性から、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;ジアセトンアルコールなどのケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類が好適である。上記溶剤の使用量は、用途、塗布方法などに応じて適宜決めることができる。
【0066】
本発明における感放射線性樹脂組成物には、熱重合禁止剤を添加することができる。このような熱重合禁止剤としては、ピロガロ-ル、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブル-、tert-ブチルカテコ-ル、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n-ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4' -(1-メチルエチリデン)ビス(2-メチルフェノール)、4,4' -(1-メチルエチリデン)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4' -[1-〔4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4',4" -エチリデントリス(2-メチルフェノール)、4,4',4" -エチリデントリスフェノール、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパンなどを挙げることができる。これら化合物の使用量は、アルカリ可溶性共重合体(A)100重量部に対して好ましくは5重量部以下である。
【0067】
本発明における感放射線性樹脂組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させる目的で界面活性剤を配合することもできる。界面活性剤としては、例えばBM-1000、BM-1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、DIC(株)製)、FC4330、FC4331(以上、スリーエムジャパン(株)製)、サーフロンS-112、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145(以上、AGCセイミケミカル(株)製)、などの商品名で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。これらの界面活性剤の配合量は、アルカリ可溶性共重合体(A)100重量部に対して好ましくは5重量部以下である。
【0068】
本発明における感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、基板との接着性を向上させるために、官能性シランカップリング剤等の接着助剤を使用することもできる。具体例としてはトリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0069】
また、本発明における感放射線性樹脂組成物には、アルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行なうために、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、iso-酪酸、n-吉草酸、iso-吉草酸、安息香酸、けい皮酸などのモノカルボン酸;乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシけい皮酸、3-ヒドロキシけい皮酸、4-ヒドロキシけい皮酸、シリンギン酸などのヒドロキシモノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、テレフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(無水トリメリテート)、グリセリントリス(無水トリメリテート)などの酸無水物を添加することもできる。
【0070】
さらに、本発明における感放射線性樹脂組成物には必要に応じて充填材、着色剤、粘度調整剤などを添加することもできる。充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、ベントナイト、ジルコニウムシリケート、粉末ガラス、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。着色剤としては、アルミナ白、クレー、炭酸バリウム、硫酸バリウムなどの体質顔料;亜鉛華、鉛白、黄鉛、鉛丹、群青、紺青、酸化チタン、クロム酸亜鉛、ベンガラ、カーボンブラックなどの無機顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッド6B、パーマネントレッドR、ベンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリ-ンなどの有機顔料;マゼンタ、ローダミンなどの塩基性染料;ダイレクトスカーレット、ダイレクトオレンジなどの直接染料;ローセリン、メタニルイエローなどの酸性染料が挙げられる。また、粘度調整剤としては、ベントナイト、シリカゲル、アルミニウム粉末などを挙げることができる。これら添加剤の配合量は、組成物の本質的な特性を損なわない範囲であればよく、好ましくは、得られる組成物に対して50重量%以下である。
【0071】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本発明における感放射線性樹脂組成物を調製するには、充填材および顔料を添加しない場合には、前記(A)、(B)、(C)の各成分と、必要に応じてその他の成分とを通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、充填材および顔料を添加する場合にはディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて、これらの成分を分散、混合させればよい。また必要に応じて、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いて各成分または得られる組成物をろ過してもよい。
【0072】
<塗膜の形成方法>
上述した感放射線性樹脂組成物溶液を所定の基板上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜を形成することができる。基板上への塗工方法としては、スプレー塗工、スピン塗工、フロー塗工、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサなどの公知の塗工方法が適宜選択可能である。なお、塗膜の乾燥条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗膜の厚さなどによって異なるが、通常60~160℃、好ましくは80~150℃で、5~20分間程度である。
【0073】
<仮支持体>
仮支持体としては、ガラス板、シリコンウェーハ、SUS板、アクリル板等、前記両面吸着層フィルムの吸着層面と貼り合わされる面が平滑であれば、何ら制約はないが、前述のごとく、3次元の半導体実装のように高温処理が入る場合には、シリコン半導体との熱膨張係数の観点から、シリコンウェーハやガラス板、石英ウェーハ等の基板が好ましい。また、仮支持体の表面粗さRaは1μm以下であることが好ましい。
【0074】
<ウェーハ加工用積層体の積層方法>
本発明の両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた接合層面を有する半導体ウェーハを貼り合せる方法は、下記工程(a)~(c)のいずれかの工程を含むことにより貼り合わされる。
(a)該ウェーハの接合層面と表面が平滑な透明離型性基材の離型面を貼り合せ、透明離型性基材側から放射線照射により接合層を硬化させた後、該透明離型性基材を剥離し、硬化させた該接合層付きウェーハ面を、前記両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と貼り合せて積層させる工程
(b)仮支持体及び前記両面吸着層フィルムの基材フィルムが透明である場合であって、両面吸着層フィルムの一方の吸着層を仮支持体に貼り合せた後、他方の吸着層面をウェーハ上に設けられた接合層面と貼り合わせた後、仮支持体側から放射線照射により該接合層を硬化させ、仮支持体と積層させる工程
(c)前記両面吸着層フィルムの基材フィルムが透明である場合であって、両面吸着層フィルムの一方の吸着層をウェーハ上に設けられた接合層面と貼り合せた後、基材フィルム側から放射線照射により該接合層を硬化させ、両面吸着層フィルムの他方の面を仮支持体と貼り合せ積層させる工程
例えば、耐熱性の観点から、両面吸着層フィルムの基材フィルムとして、通常の黄褐色ポリイミドフィルム等を使用する場合には、両面吸着層フィルム側から放射線照射することは、前記接合層の光硬化効率が著しく下がる。一方、透明ポリイミドフィルムも市販されているが、非常に高価である。工程(a)の方法により、接合層の光硬化効率を著しく上げることができる。さらに重要なことは、硬化前の接合層は柔らかいため、表面平滑な透明離型性基材を圧着して、該接合層を光硬化させ、該透明離型性基材を剥離した後の硬化させた該接合層界面も平滑となり、貼り合せによる両面吸着層フィルムの吸着層との剪断力を増すことに繋がる。また、工程(b)、(c)の場合も同様な効果がある。
各工程における貼り合せは、真空引き下で行うことが好ましい。また、工程(a)で使用される平滑な透明離型性基材としては、シリコーン処理やフッ素処理されたガラス板、アクリル板、188μmポリエステルフィルム等が使用可能である。
【0075】
放射線照射とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味し、光源として、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレ-ザ-などを用いることができる。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の厚さなどによって異なるが、例えば高圧水銀灯使用の場合、100~1500mJ/cm2である。
【0076】
<仮支持体と接合したウェーハの回路非形成面を研削する工程>
本発明の両面吸着層フィルムを介在させて、仮支持体と回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように、塗工法により設けられた光硬化接合層面を有する半導体ウェーハよりなる半導体加工用積層体のウェーハ裏面側を研削して、該ウェーハの厚みを薄くしていく研削加工の方式には特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、通常ウェーハと砥石(ダイヤモンド等)に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。また研削後、ストレスリリーフの観点からドライ研磨やCMP研磨してもよい。
【0077】
<3D実装の場合の裏面研削後のウェーハの回路非形成面に加工を施す工程>
3D実装の場合には、裏面研削によって薄型化されたウェーハ加工体の回路非形成面に、従来公知の方法により、TSVや電極等を形成させる工程が行われる。
【0078】
<接合層を有する研削済みウェーハを仮支持体から剥離する工程>
本工程は、薄型化したウェーハに、必要に応じて、様々な加工を施した後、ダイシングする前にウェーハ加工用積層体の仮支持体から、接合層を有する研削済みウェーハを剥離する工程で、下記の工程を含む。
すなわち、前記仮支持体と接合した前記ウェーハの回路非形成面を研削する工程、必要に応じて、前記ウェーハの回路非形成面に加工を施す工程後、下記(a)~(c)のいずれかの工程によりダイシングテープに保持された、接合層を有する研削済みウェーハを作製する工程である。
(a)該研削済みウェーハの研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該研削済みウェーハをダイシングテープごと、該仮支持体と該仮支持体と接している前記吸着層間で剥離し、その後、該両面吸着層フィルムを該接合層面から剥離する工程
(b)該研削済みウェーハの研削加工面にダイシングテープを貼り付けた後、該研削済みウェーハをダイシングテープごと、該研削済みウェーハの接合層面と該両面吸着層フィルムの吸着層間で剥離する工程
(c)該研削済みウェーハから、該仮支持体と該仮支持体と接している前記吸着層間で剥離し、その後、該両面吸着層フィルムで支持されている該研削済みウェーハの研削加工面に、ダイシングテープを貼り付けた後、該接合層面と該両面吸着層フィルムの吸着層間で該両面吸着層フィルムを剥離する工程
この剥離工程は、一般には室温で実施され、例えば、ウェーハ加工用積層体の仮支持体を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げることが好ましい。また、工程(a)による方法は、剛体よりなる仮支持体から研削済みの薄型ウェーハを剥離する際に、該両面吸着層フィルムと該ダイシングテープで、該薄型ウェーハが保護されており、薄型ウェーハ保護の観点で好ましい。
この場合、該両面吸着層フィルムの剥離は、該両面吸着層フィルムと該ダイシングテープで、該薄型ウェーハが保護されている積層体の該ダイシングテープを固定台に固定し、該両面吸着層フィルムを剥離すればよい。
【0079】
<接合層の除去及びダイシング工程>
本工程は、前記ダイシングテープ上に積層されている接合層付き薄型ウェーハの接合層の除去及びダイシングによるチップ個片化の工程で、下記(a)、(b)のいずれかの工程により作製される。
(a)アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されているウェーハ表面から除去した後に、前記薄型ウェーハをダイシングし個片化する工程
(b)前記接合層を有する研削済みウェーハをダイシングし個片化した後に、アルカリ溶液よりなる剥離液によって、前記接合層を回路形成されている個片化ウェーハ表面から除去する工程
工程(b)による方法は、個片化チップ後にアルカリ剥離液による接合層の除去という煩雑さは有るが、ダイシングによる個片化工程における半導体保護の観点からは好ましい。
【0080】
本工程で使用される、アルカリ溶液よりなる剥離液のアルカリ成分は、半導体への汚染防止の観点から、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン系やテトラ(置換)アルキルアンモニウムヒドロキシド等が好ましい。また溶液としては、水単独または、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の極性溶媒と水の混合液が好ましく、特開2003-337433号公報、特開2004-93678号公報、特開2004-117889号公報、特開平10-239865を援用することができる。また、光硬化層の剥離液として、JSR社製剥離液THB-Sシリーズ(例えば、THB-S1)等の市販品が使用可能である。
【0081】
物性値の測定方法は、下記の通りである。
<表面粗さ>
表面平均粗さ(Ra)表面最大粗さ(Ry)は、JIS-B0601-1994に基づき、表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製サーフコーダーET200A)を用いて測定した。測定器の触針の半径は、2.0μm、荷重50μN、カットオフ値は0.25mm、測定長さは1.25mm、送り速度0.05m/minである。
【0082】
<剪断力の測定方法>
互いに接し合っている、仮支持体と該吸着層間および該接合層と該吸着層間の剪断力の測定に関しては、基材フィルムの片面に吸着層を有する吸着フィルムを作製し、前記特許文献4(特開2008-162240号公報)段落0053の剪断力の測定方法を準用し、吸着フィルムサンプルを25mm幅×長さ150mmの大きさにカットし、吸着フィルムの端部25mm幅×長さ10mm長を仮支持体、または接合層の表面にJIS K 0237で規定する2Kgfのロールで、速度3m/minで1往復させて貼り付ける。ついで、吸着フィルムサンプルを300mm/minの速度で水平方向に引っ張り最大値を読み取る。
【実施例】
【0083】
以下本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。各実施例中「部」は特に断らない限り、「重量部」を示すものである。
【0084】
<評価用ウェーハの作製>
直径8インチのSiウェーハ上に、突起電極(Cu)をサイズφ80μm、高さ50μm、ピッチ200μmに設けた表面段差を有する評価用ウェーハを作製した。
【0085】
<両面吸着層フィルムの準備>
両面吸着層フィルム1:
基材フィルムとしては、25μm厚の芳香族ポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製:カプトン100EN、50~200℃の平均線膨張係数15ppm/K)にプラズマ易接着処理されているものを使用した。
該基材フィルムの両面に、下記処方(a)、(b)の吸着層塗工液を、基材フィルムの各片面に、乾燥膜厚24μmになるように設け、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて両面吸着層フィルムを作製した。両面吸着層フィルムの吸着層の表面は、表面が平滑なシリコーン離型性セパレータと貼り合わされ、被着体への貼り合せ時に該セパレータは剥離される。
(a)吸着層塗工液:
両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなる
シリコーン(無溶剤型)数平均分子量40,000 100 部
架橋剤(オルガノハイドロジェンシロキサン)数平均分子量2,000 0.5部
白金触媒(3%白金濃度の環状メチルビニルシロキサン溶液) 2 部
反応制御剤(3-メチル-1-ブテン-3-オール) 0.1部
(b)吸着層塗工液:
両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなる
シリコーン(無溶剤型)数平均分子量30,000 100 部
架橋剤(オルガノハイドロジェンシロキサン)数平均分子量2,000 0.6部
白金触媒(3%白金濃度の環状メチルビニルシロキサン溶液) 2 部
反応制御剤(3-メチル-1-ブテン-3-オール) 0.1部
吸着層の表面粗さRaは0.02μm、Ryは0.12μmであった。
両面吸着層フィルム2:
基材フィルムとして、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に、酸価12mgKOH/gのポリエステル樹脂層を厚み0.3μm設けた基材フィルムを用いた以外は、前記両面吸着層フィルム1と同じである。吸着層の表面粗さRa、Ryは,前記と同様であった。
【0086】
<評価用ウェーハ上への光硬化接合層の作製>
<接合層用塗工液の準備>
接合層用塗工液1:
α-メチル-p-ヒドロキシスチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート共重合樹脂(共重合組成比;32/21/47重量%)(重量平均分子量;10,000)50.0gを、3-エトキシプロピオン酸エチル110.0gに溶解し、光ラジカル重合開始剤として[1,2'-ビスイミダゾール]-1,2'-ジクロロフェニル-3,3',4,4'-テトラフェニル3.34g、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン3.34g、メルカプトベンゾチアゾール2.01g、重合性不飽和化合物としてアロニックスM-8060(東亞合成(株)製)66.8g、ジシクロペンタニルメタクリレート20.1g、界面活性剤としてBM-1000(BMケミー社製)0.4gおよび熱重合禁止剤として4,4'-{1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン}ビスフェノール2.7gを溶解し、均一な組成物溶液とした。この組成物溶液を、孔径30μmのカプセルフィルターで濾過して接合層用塗工液1を得た。
接合層用塗工液2:
接合層用塗工液1の共重合樹脂をα-メチル-m-ヒドロキシスチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート(共重合組成比:32/21/47重量%)、重量平均分子量;10,000の共重合樹脂とした以外は、接合層用塗工液1と同様にして、接合層用塗工液2を得た。
接合層用塗工液3:
接合層用塗工液1の共重合樹脂をα-メチル-p-ヒドロキシスチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート(共重合組成比:35/15/50重量%)、重量平均分子量;10,000の共重合樹脂とした以外は、接合層用塗工液1と同様にして、接合層用塗工液3を得た。
接合層用塗工液4:
接合層用塗工液1の共重合樹脂をα-メチル-p-ヒドロキシスチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート/ジシクロペンタニルアクリレート(共重合組成比:20/20/30/30重量%)、重量平均分子量;10,000の共重合樹脂とした以外は、接合層用塗工液1と同様にして、接合層用塗工液4を得た。
接合層用塗工液5:
接合層用塗工液1の共重合樹脂をα-メチル-p-ヒドロキシスチレン/メタクリル酸/n-ブチルアクリレート/ジシクロペンタニルアクリレート(共重合組成比:10/30/50/10重量%)、重量平均分子量;10,000の共重合樹脂とした以外は、接合層用塗工液1と同様にして、接合層用塗工液5を得た。
【0087】
<実施例1>
前記接合層用塗工液1を、スプレーコーターにより、回路形成されているウェーハ表面の凸部が覆われるように乾燥膜厚65μmになるように塗工した。その後、透明な厚み188μmのシリコーン離型層付きポリエステルフィルム(表面粗さRa、Ryは,0.05μm、0.42μm)と真空引きをしながらで貼り合せ、該透明離型層付きポリエステルフィルム側から高圧水銀灯により 、1000mj/cm2の紫外線エネルギーで該接合層を硬化させた後、該透明離型層付きポリエステルフィルムを剥離し、硬化接合層付きウェーハを作製した。
一方、前記両面吸着層フィルム1の(b)吸着層面側の離型性セパレータを剥離し、仮支持体として平滑な厚さ5mmのガラス板(表面粗さRa、Ryは,0.0032μm、0.014μm)に(b)吸着層面を貼付けた。該貼付け後、(a)吸着層面側の離型性セパレータを剥離し、該硬化されている接合層付きウェーハの接合層面と該両面吸着層フィルムが貼合されているガラス板の(a)吸着層面を真空引きしながら貼り合わせウェーハ加工用積層体を作製した。
該ウェーハ加工用積層体のウェーハ裏面をポリッシャDGP8761HC(DISCO社製)を用いて、#320と#2000の砥石によりSi研削を行った後、ストレスリリーフのためのドライポリッシングを行い、ウェーハ厚み25μmの研削・研磨をして、薄化後のウェーハ厚み25μmを得た。作業中ウェーハの反りや欠け等は認められなかった。次に、シリコンウェーハを裏面研削した後の積層体を窒素雰囲気下の200℃オーブンに2時間入れた後、更に250℃のホットプレート上で10分加熱した高温処理テスト後の、ウェーハのゆがみ、ボイド発生、ウェーハ膨れ、あるいはウェーハ破損等外観異常の有無を調べたが、異常は認められなかった。その後、ダイシングテープを貼付け、前記ウェーハをダイシングテープごと、該仮支持体と該仮支持体と接している前記(b)吸着層間で剥離し、該ダイシングテープ側を固定台に固定し、前記両面吸着層フィルムを前記接合層面から剥離した。次に、JSR社製アルカリ性剥離液THB-S1を用いて、該接合層を残渣なく除去できた。尚、作業中ウェーハの反りや欠け等は認められなかった。その後ダイシングにより個片化チップを作製した。尚、互いに接し合っている、該仮支持体と該吸着層間および該接合層と該吸着層間の剪断力は5.0N/cm2以上であった。
【0088】
<実施例2>
前記両面吸着層フィルム2の(b)吸着層面側の離型性セパレータを剥離し、実施例1の仮支持体に貼付けた。一方、実施例1と同様に、前記接合層用塗工液1が設けられているウェーハを作製し、該接合層付きウェーハの接合層面と該両面吸着層フィルムが貼合されているガラス板の(a)吸着層面を真空引きしながら貼り合わせ、その後、該仮支持体側から、高圧水銀灯により 、1000mj/cm2の紫外線エネルギーで該接合層を硬化させ、ウェーハ加工用積層体を作製した。該ウェーハ加工用積層体を実施例1と同様にウェーハ裏面研削・研磨を行った。その後、実施例1の高温処理テストを行わず、ダイシングテープを貼付け、前記ウェーハをダイシングテープごと、該仮支持体と該仮支持体と接している前記(b)吸着層間で剥離し、該ダイシングテープ側を固定台に固定し、前記両面吸着層フィルムを前記接合層面から剥離した。次に、JSR社製アルカリ性剥離液THB-S1を用いて、該接合層を残渣なく除去できた。尚、作業中ウェーハの反りや欠け等は認められなかった。その後ダイシングにより個片化チップを作製した。尚、互いに接し合っている、該仮支持体と該吸着層間および該接合層と該吸着層間の剪断力は5.0N/cm2以上であった。
【0089】
<実施例3~6>
実施例3として、実施例1の接合層用塗工液1を前記接合層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にウェーハ加工用積層体を作製した。該ウェーハ加工用積層体を実施例1と同様にウェーハ裏面研削・研磨、高温処理テスト、ダイシングテープの貼付け、両面吸着層フィルムの剥離を行った。次に、JSR社製アルカリ性剥離液THB-S1を用いて、接合層を残渣なく除去できた。各作業中において、ウェーハに反りや欠け等の異常は認められなかった。
実施例4として、実施例1の接合層用塗工液1を前記接合層用塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様にウェーハ加工用積層体を作製した。該ウェーハ加工用積層体を実施例1と同様にウェーハ裏面研削・研磨、高温処理テスト、ダイシングテープの貼付け、両面吸着層フィルムの剥離を行った。次に、JSR社製アルカリ性剥離液THB-S1を用いて、接合層を残渣なく除去できた。各作業中において、ウェーハに反りや欠け等の異常は認められなかった。
実施例5として、実施例1の接合層用塗工液1を前記接合層用塗工液4に変更した以外は、実施例1と同様にウェーハ加工用積層体を作製した。該ウェーハ加工用積層体を実施例1と同様にウェーハ裏面研削・研磨、高温処理テスト、ダイシングテープの貼付け、両面吸着層フィルムの剥離を行った。次に、JSR社製アルカリ性剥離液THB-S1を用いて、接合層を残渣なく除去できた。各作業中において、ウェーハに反りや欠け等の異常は認められなかった。
実施例6として、実施例1の接合層用塗工液1を前記接合層用塗工液5に変更した以外は、実施例1と同様にウェーハ加工用積層体を作製した。該ウェーハ加工用積層体を実施例1と同様にウェーハ裏面研削・研磨、高温処理テスト、ダイシングテープの貼付け、両面吸着層フィルムの剥離を行った。次に、JSR社製アルカリ性剥離液THB-S1を用いて、接合層を残渣なく除去できた。各作業中において、ウェーハに反りや欠け等の異常は認められなかった。
尚、実施例3~6の各ウェーハ加工用積層体において、互いに接し合っている、仮支持体と吸着層間および、接合層と吸着層間の剪断力は各々5.0N/cm2以上であった。
【符号の説明】
【0090】
1:両面吸着層フィルム
1-1:吸着層1
1-2:基材フィルム
1-3:吸着層2
2:接合層
3:半導体ウェーハ
4:回路電極
5:仮支持体
6:ウェーハ加工用積層体