(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】貼付剤及び折畳み貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20240101AFI20240411BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240411BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20240411BHJP
【FI】
A61F13/02 355
A61F13/02 380
C09J7/38
C09J7/40
(21)【出願番号】P 2021182724
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2021-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501371997
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(74)【代理人】
【識別番号】100093034
【氏名又は名称】後藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】島田 篤
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】▲高▼橋 杏子
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-33389(JP,A)
【文献】特表2019-530507(JP,A)
【文献】特開2008-259716(JP,A)
【文献】実開昭60-32917(JP,U)
【文献】特開2007-119927(JP,A)
【文献】特開2020-484(JP,A)
【文献】特開2004-81558(JP,A)
【文献】特許第5571232(JP,B2)
【文献】特開2012-24124(JP,A)
【文献】実開昭63-30960(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する伸縮性の構造体からなる支持体と、その支持体の表面に積層された粘着性を有する薬剤からなる効能組成物と、当該効能組成物の外表面に剥離可能に付着され、前記効能組成物を保
護可能な機械的強度を有するプラスチック製フィルムからなるシート状の剥離保護部材と、を備え
た単体の貼付剤において、
前記剥離保護部材が、複数の分割剥離片からなるものであって、
前記複数の分割剥離片は、溝状をなして延在する折曲隙間部を境界として隣り合う状態に分離して配置され、
前記折曲隙間部は、当該折曲隙間部が延在する方向と直交する方向の溝幅Wが、前記貼付剤の厚さT以上(W≧T)であり、
前記剥離保護部材が、前記折曲隙間部を谷折りの折り目として折り畳まれることで前記隣り合う分割剥離片同士が互いに直接的に接触して平坦状な重合状態になさ
れることを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記溝状をなす折曲隙間部の側壁面が、当該折曲隙間部が延在する方向と直交する幅方向に対向する前記分割剥離片の端面により構成され、
前記折曲隙間部の側壁面が、前記分割剥離片の厚さ方向に対して傾斜して延在する逃げ面をなすものであって、
前記逃げ面は、前記支持体の表面から前記分割剥離片の外表面に向かう方向において、前記幅方向に対向する他方の逃げ面との間における距離を増大させる方向に延在していることを特徴とする請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
前記分割剥離片は、断続的に延在する切れ目部を有し、その切れ目部と前記折曲隙間部とで、使用時に貼付剤を仮止めする領域に付着される事前剥離部が形成されたものであって、
前記切れ目部が延在する途中位置に、前記事前剥離部を連続した状態に維持する連結部を備え、
前記事前剥離部が、溝状をなして延在する折曲隙間部を境界として隣り合う状態に分離して配置されていることを特徴とする請求項1記載の貼付剤。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれかに記載の折曲隙間部を谷折りの折り目として前記単体の貼付剤が折り畳まれることで平坦状な重合状態になされたものであって、
前記一対の分割剥離片の表面同士が、互いに直接的に接触して平坦状な状態に重合され、その平坦状に重合された分割剥離片の外方を、前記効能組成物及び前記支持体が覆う状態になされていることを特徴とする折畳み貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体に積層された効能組成物にシート状の剥離保護部材が剥離可能に付着された貼付剤および折畳み貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野、工業分野、装飾・化粧分野などにおいて、種々の形態をなすテープ剤やパップ剤等からなる局所用型又は全身作用型の貼付剤が広く使用されている。例えば、医療分野では、下記の特許文献1等のように、打撲や打ち身、肩こり等の治療用として、湿布用シート、プラスター剤シート、熱さましシートなどのような一定サイズのシート状の貼付剤が、皮膚や粘膜等に貼り付けて使用されている。
【0003】
このような貼付剤は、通常、包装材や容器の内部に封入された状態で販売等の取り扱いがなされるが、そのときの包装材や容器には、大気中の酸素や水分による貼付性能の劣化や、効能組成物の揮散を防止する機能等が必要となる。そのため、例えば、下記の特許文献2及び3等のように、包装材や容器の内部表面に樹脂材等からなる保護層を塗膜したものがしばしば用いられており、しかも貼付剤の取出口には、通常、ファスナー(ジッパー)等の開閉用の留め具が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-75601号公報
【文献】特開2021-109320号公報
【文献】特開2021-011287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように内部に樹脂材等の保護層が塗膜されたり、開閉用留め具を備えた包装材や容器は、当然のことながら、保護層や開閉用留め具を有しない簡易な構成の包装材や容器に比して高価なものにならざるを得ないが、それに加えて、近年では、効能性や使用性等の理由から、より大型化された貼付剤の需要が増大している。そして、そのような大型化された貼付剤に対しては、より大型で高価な包装材や容器が使用されることから、製品が更に高価なものになってしまうという問題を生じている。
【0006】
そこで、本発明は、より小型の包装材で収容することができるようにした貼付剤及び折畳み貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1にかかる発明では、柔軟性を有する伸縮性の構造体からなる支持体と、その支持体の表面に積層された粘着性を有する薬剤からなる効能組成物と、当該効能組成物の外表面に剥離可能に付着され、前記効能組成物を保護な可能な機械的強度を有するプラスチック製フィルムからなるシート状の剥離保護部材とを備え、包装材に収容される単体の貼付剤において、前記剥離保護部材が、複数の分割剥離片からなるものであって、前記複数の分割剥離片は、溝状をなして延在する折曲隙間部を境界として隣り合う状態に分離して配置され、前記折曲隙間部は、当該折曲隙間部が延在する方向と直交する方向の溝幅Wが、前記貼付剤の厚さT以上(W≧T)であり、前記剥離保護部材が、前記折曲隙間部を谷折りの折り目として折り畳まれることで前記隣り合う分割剥離片同士が互いに直接的に接触して平坦状な重合状態になされた前記単体の貼付剤が、前記包装材に収容可能に構成されている。
【0008】
このような構成を備えた貼付剤によれば、単体の貼付剤におけるプラスチック製フィルムからなる剥離保護部材を構成している複数の分割剥離片が、折曲隙間部を介して互いに独立して容易に移動可能になっていることから、プラスチック製フィルムからなる剥離保護部材が備えている比較的強い弾性にかかわらず、可撓性を有する伸縮性の構造体からなる支持体及び薬剤からなる効能組成物とともに貼付剤の全体が、折曲隙間部を谷折りの折り目として容易に、かつ薬剤である効能組成物を外方に露出させない谷折りの状態で平坦状に折り畳まれる。
特に、このような構成を備えた貼付剤によれば、折曲隙間部を境界にして隣り合う分割剥離片同士が、十分に離れた状態に配置されることから、折曲隙間部を谷折りの折り目として剥離保護部材が折り畳まれる際に、折曲隙間部を境界にして隣り合う分割剥離片同士が互いに接触又は干渉することがなくなり、剥離保護部材の折り畳み操作が一層円滑に行われるとともに、折り畳まれた後における折畳み貼付剤が、良好な平坦状に重合された状態になされることから、外方に膨らんだような形状等になることもない。
そして、その折り畳み操作により平坦状な重合状態になされて形成された単体の折畳み貼付剤は、折り畳まれる前における平面投影面積が、重ね合わされている領域の面積分だけ縮小して小型化され、その小型化された単体の貼付剤を収容するための高価な包装材が、同様に小型化されることによって、単体の貼付剤が包装材に収容された後における製品の低廉化が図られる。
【0009】
このとき、請求項2に係る発明のように、平坦状な重合状態に折り畳まれることにより縮小される前記単体の貼付剤の平面投影面積分だけ小型化された前記包装材に、前記単体の貼付剤が収容される構成とすることが望ましい。
【0010】
このような構成を備えた貼付剤によれば、包装材が小型化されている分だけ単体の貼付剤が包装材に収容された製品の低廉化が図られる。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明のように、前記溝状をなす折曲隙間部の側壁面が、当該折曲隙間部が延在する方向と直交する幅方向に対向する前記分割剥離片の端面により構成され、前記折曲隙間部の側壁面が、前記分割剥離片の厚さ方向に対して傾斜して延在する逃げ面をなすものであって、前記逃げ面は、前記支持体の表面から前記分割剥離片の外表面に向かう方向において、前記幅方向に対向する他方の逃げ面との間における距離を増大させる方向に延在していることが望ましい。
【0016】
このような構成を備えた貼付剤においては、折曲隙間部を折り目として剥離保護部材が折り畳まれる際に、折曲隙間部の側壁面を構成している分割剥離片の端縁同士が最初に近付くことから、それら両端縁同士の接触や干渉が問題となるが、当該請求項5にかかる発明では、折曲隙間部の側壁面が傾斜して延在する逃げ面をなしており、分割剥離片に設けられている逃げ面同士の間に、より十分な間隔が維持されている。従って、例えば、折曲隙間部の溝幅を狭くして効能組成物の保護や流出を防止しようとした場合にあっても、分割剥離片同士の接触や干渉が防止されることとなり、剥離保護部材の折り畳み操作が円滑に行われるとともに、折り畳まれた後における折畳み貼付剤が、外方に膨らむことなく良好な重合状態になされる。
【0017】
さらにまた、請求項4に係る発明のように、前記分割剥離片は、断続的に延在する切れ目部を有し、その切れ目部と前記折曲隙間部とで、使用時に貼付剤を仮止めする領域に付着される事前剥離部が形成されたものであって、前記切れ目部が延在する途中位置に、前記事前剥離部を連続した状態に維持する連結部を備え、前記事前剥離部が、溝状をなして延在する折曲隙間部を境界として隣り合う状態に分離して配置されていることが可能である。
【0018】
このような構成を備えた貼付剤によれば、剥離保護部材を構成している複数の分割剥離片が、使用時の仮止め機能を有する事前剥離部を有する場合においても、その事前剥離部は、連結部を介して仮保持状態になされていることから、事前剥離部に対して折曲隙間部を設けることが可能となり、事前剥離部を脱落させることなく貼付剤の折り畳み操作が良好に行われる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、請求項5にかかる発明では、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の折曲隙間部を谷折りの折り目として前記単体の貼付剤が折り畳まれることで平坦状な重合状態になされたものであって、前記一対の分割剥離片の表面同士が、互いに直接的に接触して平坦状な状態に重合され、その平坦状に重合された分割剥離片の外方を、前記効能組成物及び前記支持体が覆う状態になされた構成が採用されている。
【0020】
このような構成を備えた折畳み貼付剤においても、単体の貼付剤における剥離保護部材を構成している複数の分割剥離片が、折曲隙間部を介して分離した移動可能な状態になされており、可撓性を有する伸縮性の構造体からなる支持体や薬剤からなる効能組成物を含む剥離保護部材の全体が、折曲隙間部を折り目として容易に、かつ薬剤である効能組成物を外方に露出させない谷折りの状態に折り畳まれて平坦状な重合状態になされていることから、その折り畳まれて平坦状な重合状態になされた単体の貼付剤は、折り畳まれる前における平面投影面積が、重ね合わされた面積分だけ縮小して小型化されており、そのように小型化された単体の貼付剤を収容するための包装材も、同様に小型化することが可能となって、単体の貼付剤が包装材に収容された後における製品の低廉化が図られる。
さらに、請求項6にかかる発明では、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の単体の貼付剤、又は請求項5に記載の単体の折畳み貼付剤が、前記包装材に収容された構成が採用されている。
このような構成を備えた単体の貼付剤又は単体の折畳み貼付剤によれば、平坦状な重合状態に折り畳まれた単体の貼付剤を収容した包装材が、貼付剤を折り畳んだ分だけ小型化されることによって、単体の貼付剤が包装材に収容された製品の低廉化が図られる。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明にかかる、包装材に収容される単体の貼付剤及び単体の折畳み貼付剤は、伸縮性の構造体からなる支持体上の薬剤からなる効能組成物に剥離可能に付着されたプラスチック製フィルムからなるシート状の剥離保護部材を、溝状に延在する折曲隙間部を境界として隣り合う複数の分割剥離片から構成し、それら複数の分割剥離片を、折曲隙間部を介して独立して移動可能となるように分離した状態に配置することで、剥離保護部材の比較的強い弾性にかかわらず、折曲隙間部を谷折りの折り目として、伸縮性の構造体からなる支持体を含む貼付剤の全体を容易に、かつ薬剤からなる効能組成物を外方に露出させない谷折りの状態で平坦状に折り畳んで包装材に収容可能とし、平坦状な重合状態に折り畳んだ貼付剤の平面投影面積を、重合領域の面積分だけ縮小させて小型化することによって、その小型化した単体の貼付剤を収容するための包装材を、同様に小型化可能とすることで、単体の貼付剤が包装された後における製品の低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる貼付剤を、包装するために折り畳んで重合状態とすることで形成した折畳み貼付剤を表した外観斜視説明図である。
【
図2】
図1に表した折畳み貼付剤の平面説明図である。
【
図3】
図1及び
図2に表した折畳み貼付剤を、平面状に展開した状態を表した平面説明図である。
【
図4】
図3中のIV-IV線に沿った部分断面説明図である。
【
図5】
図3に示された展開状態の貼付剤を折り畳んでいく途中過程を表した
図4相当の部分断面説明図である。
【
図6】
図5に示された折り畳み途中の貼付剤の折り畳み操作を完了した重合状態を表した
図4相当の部分断面説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態にかかる貼付剤の
図4相当の部分断面説明図である。
【
図8】
図7に示された貼付剤を折り畳んでいく途中過程を表した
図5相当の部分断面説明図である。
【
図9】
図8に示された折り畳み途中の貼付剤の折り畳み操作を完了した重合状態を表した
図6相当の部分断面説明図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態にかかる貼付剤の平面展開状態を表した平面説明図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態にかかる貼付剤の平面展開状態を表した平面説明図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態にかかる貼付剤の平面展開状態を表した平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態にかかる貼付剤及び折畳み貼付剤を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1及び
図2に示された第1実施形態にかかる折畳み貼付剤1は、
図3に示されている平面略長方形状の貼付剤10を、当該貼付剤10の長手方向(
図3の左右方向)における中央位置で折り畳んで形成したものであり、平面状に展開された貼付剤10の長手方向の片側半分同士が、同形の外郭形状をなすように二重に重ね合わせられていることによって、平面視における投影面積が約半分の大きさになされたものである。
【0025】
このときの貼付剤10及び折畳み貼付剤1は、複数部材の積層体から構成されており、特に
図4に示されているように、柔軟性を有する可撓性基材としての支持体11の一方の表面(
図4の上表面)に、粘着性を有する薬剤からなる効能組成物12が積層されているとともに、その効能組成物12の外表面上に、シート状の剥離保護部材(剥離シート)13が剥離可能に付着されている。
【0026】
上述した支持体11は、フィルム状の樹脂材、不織布、編布、綿布、和紙、それらのラミネート体等の材質から形成されるが、微細凹凸表面を有する多孔性材料から構成される材料を採用した場合にあっては、効能組成物12の一部が支持体11の微細凹凸表面の凹凸の内部に入り込む状態で付着し、これにより柔軟状態の効能組成物12が支持体11から剥がれることなく接合される。また、当該支持体11として、効能組成物12が支持体11に浸透して効能組成物12が良好に保持されるもの、例えば、各種の合成繊維及び天然繊維を用いた不織布又は織布等の繊維集合体、紙等の繊維集合体が好適に用いられる。さらに、当該支持体11としては、伸縮性を有する構造体が望ましく、例えば含水ゲル状の効能組成物を支持体11に積層した貼付剤10を皮膚等に貼って使用する場合には、貼付剤10を伸縮自在に貼付することが可能となり、貼付した後においても人体の動きに対応して貼付剤10が自在に伸縮し、支持体11と効能組成物12との境界を分離させることなく、また貼付剤10が人体から剥がれることなく安定した使用が可能となる。
【0027】
また、効能組成物12は、皮膚に効能を有する鎮痛消炎剤などの薬剤、或いは冠血管拡張剤などの皮膚を通して吸収される薬剤を、保形剤や粘着剤等の基材に含有させたものであり、必要に応じて保湿剤等も使用されている。
【0028】
さらに、最外層をなす剥離保護部材(剥離シート)13は、粘着性を有する効能組成物12の表面を外方から覆うことによって効能組成物12の表面を保護するものであり、使用時には、効能組成物12の表面から剥離されて除去されるようになっている。この剥離保護部材13としては、例えば、ポリプロピレン製フィルム、ポリエチレン製フィルム、ポリエステル製フィルム、その他のプラスチック製フィルムや、紙製のフィルム等のように、保存時に効能組成物12の表面を保護可能にする機械的強度を有し、かつ使用時に効能組成物12の表面から容易に剥離可能となる材質が用いられる。
【0029】
ここで、上述した剥離保護部材13は、貼付剤10の長手方向(
図3の左右方向)に並設された複数の分割剥離片13aから構成されており、本実施形態においては、2体の分割剥離片13a,13aが、長手方向(
図3の左右方向)の略中央位置に配置された折曲隙間部13bを境界として、互いに近接して隣り合う状態に分離して配置されている。
【0030】
上述した折曲隙間部13bは、2体の分割剥離片13a,13a同士が対向して形成される細長溝状の空間部分から形成されており、貼付剤10の短手方向(
図3の上下方向)における全長にわたって直線状をなすように延在している。特に
図4に示されているように、前記折曲隙間部13bの断面は、略矩形状になされており、前述した効能組成物12を底壁面とした凹溝状になされている。
【0031】
この凹溝形状をなす折曲隙間部13bにおける側壁面は、上述した2体の分割剥離片13a,13aの端面13c,13cにより形成されており、これら2体の分割剥離片13a,13aの端面13c,13c同士が、貼付剤10の長手方向(
図3の左右方向)に適宜の距離だけ離間して対向配置されていることによって折曲隙間部13bの両側壁面が構成されている。本実施形態における折曲隙間部13bの側壁面を形成している分割剥離片13aの端面13cは、当該折曲隙間部13bの底壁面を構成している効能組成物12の表面(
図4の上表面)から略垂直に立ち上がる立壁面になされている。
【0032】
このような構成を備えた折曲隙間部13bは、当該折曲隙間部13bが延在する方向である貼付剤10の短手方向(
図3の上下方向)と直交する方向、すなわち貼付剤10の長手方向(
図3の左右方向)に溝幅Wを有しているが、その折曲隙間部13bの溝幅Wは、貼付剤10が有している厚さT以上、すなわち貼付剤10の厚さTに対して略等しいかやや大きい(W≧T)寸法に設定されている。特に、本実施形態においては、当該折曲隙間部13の溝幅Wが、前述した支持体11の腰の強さ、すなわち支持体11の剛性に反比例した大きさを備えている。
【0033】
ここで、剥離保護部材13の分割剥離片13a,13aは、後述する
図5及び
図6のように、折曲隙間部13bを折り目として長手方向(
図3の左右方向)に半折りする状態で折り畳まれていくが、その折り畳み時に、剥離保護部材13の外方を覆うようになる効能組成物12及び支持体11は、折り目となる部分において断面略円弧状をなすようにして引き伸ばされようとする。そのため、上述したような溝幅Wを有する折曲隙間部13bを、折り曲げ時の引き伸ばし代として設けておけば、その折曲隙間部13bを境界として隣り合う分割剥離片13a,13a同士の間部分に存在する効能組成物12及び支持体11が、折り畳み時に引き伸ばされようとする長さ以上の距離にわたって延在することとなって、効能組成物12及び支持体11が折り曲げ時に必要とされる長さに余裕ができることから、折り曲げに伴う引き伸し作用が低減されて無用な応力が生じなくなる。
【0034】
より具体的には、剥離保護部材13の分割剥離片13aの厚さをt(
図6参照)としたとき、折り畳み時に効能組成物12及び支持体11が引き伸ばされようとする長さは、剥離保護部材13の分割剥離片13a,13aが折り畳まれて重合状態となったときの厚さ2t(
図6参照)となるから、上述した折曲隙間部13の溝幅Wとしては、最低でも、剥離保護部材13の重合厚さ2t(
図6参照)以上、すなわち剥離保護部材13の厚さtの2倍(2t)と略同じか大きい寸法にしておくことが必要となる(W≧2t)。
【0035】
一方、後述するように、折曲隙間部13bを折り目として剥離保護部材13が折り曲げられていく際には、分割剥離片13a,13aの端面13c,13c同士の接触又は干渉が回避されることが必要となる。この点を、実際に貼付剤10を折り畳んで確かめてみると、支持体11が通常の剛性を有する場合にあっては、上述した寸法関係(W≧T)となるように設定して引き伸ばし代に余裕を持たせておくことが、分割剥離片13a,13aの端面13c,13c同士の接触又は干渉を回避する上で好ましいことが分かった。
【0036】
なお、上述した折曲隙間部13bを実際に形成するにあっては、当該折曲隙間部13bの溝幅Wを任意に調整可能とすることが望ましいが、例えば、スリッター加工による切断によって折曲隙間部13bを形成する場合にあっては、当該スリッター加工に使用する一対の刃物同士の間隔を適宜に変更可能にしておくことで、折曲隙間部13bの溝幅Wを任意かつ容易に調整することができる。
【0037】
ここで、前述したように各剥離保護部材(剥離シート)13は、使用時に効能組成物12の表面から剥離されて除去されるが、そのときの剥離保護部材13の引き剥がし操作では、例えば、上述した折曲隙間部13bの端面13cに対して使用者が自身の爪を引掛ける等により、折曲隙間部13bの端面13cから順に剥離保護部材13を引き剥がしていく。そのため、本実施形態では、最初に引き剥がされる折曲隙間部13bの近傍位置に、その折曲隙間部13bに沿って短手方向(
図3の上下方向)に延在する折り曲げ線13dが形成されている。この折り曲げ線13dは、一組の切れ目と繋ぎ部分とが、多数組にわたって交互に連続する、いわゆるミシン目等により構成されている。
【0038】
すなわち、上述したように折曲隙間部13bの端面13cを切っ掛けとして最初に引き剥がされた剥離保護部材13は、ある程度の量にわたって部分的に引き剥がされた状態から、折り曲げ線(ミシン目)13dを谷折りの折り目として折り曲げられ、その折り曲げ線13dから折曲隙間部13bに至る帯状をなす部分が、外方に開放された状態に維持されるように塑性変形される構成になされている。そして、その剥離保護部材13における帯状の開放部分に露出された効能組成物12が、皮膚や粘膜等に仮止めとして貼り付けれられ、その仮保持状態から、剥離保護部材13の全体が引き剥がされながら貼り付け動作が安定的に行われるようになっている。
【0039】
このような構成を備えた本実施形態にかかる貼付剤10は、当該貼付剤10の長手方向(
図3の左右方向)の略中央位置に溝状に延在する折曲隙間部13bを折り目として、例えば
図5に示されているように、貼付剤10の片側半分(
図5の右方部分)を適宜の手段により持ち上げることで、当該貼付剤10の折り畳み操作が開始される。このときの持ち上げ操作は、細長溝状の空間部分からなる折曲隙間部13bを折り目としており、かつ支持体11及び効能組成物12が可撓性を有する材質からなることから、極めて小さな操作力で折り曲げが行われる。
【0040】
そして、その貼付剤10の貼付剤10の片側半分(
図5の右方部分)が、垂直に立ち上げられた状態を過ぎて折り曲げられた時点から、当該貼付剤10の片側半分は、自身の重量によって他方の片側半分(
図5の左方部分)の上に倒れ込むようにして重なり合わされ、
図6に示されているような折り畳み重合状態になされる。
【0041】
このような本実施形態における貼付剤10は、剥離保護部材13を構成している複数(2体)の分割剥離片13a,13aが、折曲隙間部13bを介して独立して移動可能となるように分離した状態になされていることから、剥離保護部材13が備えている比較的強い弾性にかかわらず、当該剥離保護部材13は容易に折り畳み可能となっている。一方、支持体11及び効能組成物12は、通常、可撓性を有する柔軟性材料から形成されていることから、これら支持体11及び効能組成物12を含む貼付剤10の全体も、折曲隙間部13を折り目として容易に折り畳まれる。
【0042】
そして、貼付剤10の全体が、折曲隙間部13を折り目として、例えば
図6のように分割剥離片13a,13a同士が接触する状態に折り畳まれることで折畳み貼付剤1が形成される。この折畳み貼付剤1においては、折り畳まれる前における貼付剤10の平面投影面積が、重ね合わされている領域の面積である約半分の大きさに縮小して小型化されており、その約半分の大きさに小型化された折畳み貼付剤1を収容するための包装材や容器が、同様に小型化されることによって、包装された後における製品の低廉化が図られるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態における貼付剤10の折り畳み操作は、剥離保護部材13を構成している分割剥離片13a,13a同士が直接的に接触する方向、すなわち剥離保護部材13を谷折りする内方向に行われており、折り畳み操作によって重ね合わされた一対の分割剥離片13a,13aの外方を効能組成物12が覆うとともに、更にその効能組成物12の外方を支持体11が覆う状態になされている。その結果、折畳み貼付剤1においては、支持体11が最外表面を形成する構成になされている。
【0044】
一方、上述したような折り畳み操作とは反対に、支持体11の表面同士が接触し合う方向、すなわち剥離保護部材13を山折りする内方向に折り畳みを行うことにより、剥離保護部材13を構成している分割剥離片13a,13aが、折畳み貼付剤1の外表面を構成する状態とした場合には、折曲隙間部13bの開口部分を通して効能組成物12の一部が外方に露出することから、その露出部分を外方から覆う部材を配置することが必要となる。
【0045】
ここで、本実施形態における折曲隙間部13bは、当該折曲隙間部13bを構成している溝形状の溝幅Wが、貼付剤10の厚さ寸法Tと略等しいかやや大きくなされている(W≧T)ことから、折曲隙間部13bを境界にして隣り合う一対の分割剥離片13a,13a同士が、十分に離れた状態に配置されている。従って、折曲隙間部13bを折り目として剥離保護部材13が折り畳まれていく際に、折り目部分における効能組成物12及び支持体11に引き伸ばしを生じることがなく、しかも折曲隙間部13bを境界にして隣り合う分割剥離片13a,13a同士が互いに接触又は干渉することもないから、剥離保護部材13の折り畳み操作が円滑に行われる。また、折り畳まれた後における折畳み貼付剤1は、良好な平坦状に重合された状態になされることから、外方に膨らんだような形状等になされることもない。
【0046】
このように、剥離保護部材13の折曲隙間部13bを折り目として剥離保護部材13が折り畳まれるにあたって、支持体11の剛性が小さく柔軟性を有する場合には、貼付剤10の折り畳み操作が行われる際に、柔軟性を有する支持体11の折り目部分が比較的小さい曲率で折り曲げられることから、隣り合う分割剥離片13a,13a同士が近接する傾向となり、それら隣り合う分割剥離片13a,13a同士が接触又は干渉し易くなる。しかしながら本実施形態では、折曲隙間部13bの溝幅Wが、支持体11の剛性に反比例して大きく設定されていることから、隣り合う分割剥離片13a,13a同士が十分に離れた状態に配置されることとなり、分割剥離片13a,13a同士の接触又は干渉が防止され、剥離保護部材13の折り畳みが円滑に行われるとともに、折り畳まれた後の折畳み貼付剤1が、外方に膨らむことなく良好な重合状態になされる。
【0047】
次に、
図7に示されている本発明の第2の実施形態にかかる貼付剤20の剥離保護部材23においては、当該貼付剤20の長手方向(
図7の左右方向)に並設された一対の分割剥離片23a,23aが、溝状の折曲隙間部23bを介して隣り合う状態に配置されており、それらの分割剥離片23a,23aにおける対向する両端面23c,23cが、折曲隙間部23bの側壁面をそれぞれ構成している。
【0048】
この折曲隙間部23bの両側壁面、すなわち分割剥離片23a,23aにおける対向する両端面23c,23cは、当該分割剥離片23aの厚さ方向(
図7の上下方向)に対して傾斜する方向に延在する「逃げ面」をなしている。より具体的には、前記折曲隙間部23bの横断面形状は、当該折曲隙間部23bの溝幅が、支持体21の表面から分割剥離片23cの外表面に向かう外方向(
図7の上方向)に向かって連続的に広げられた「逆台形状」になされており、上述した「逃げ面」をなしている各分割剥離片23aの端面23cは、溝幅方向(
図7の左右方向)に対向する他方の「逃げ面」、すなわち隣り合う他方の分割剥離片23aの端面23cとの間の距離を、外方に向かう方向(
図7の上方向)に沿って連続的に増大させる状態に延在している。
【0049】
従って、本実施形態における折曲隙間部23bは、効能組成物22を露出させている
図7下方の開口の溝幅W1が、より狭められた寸法になされているとともに、折曲隙間部23bの
図7上方、すなわち外方に向かう開口は、より広げられた溝幅W2になされている。このような開口形状を構成する「逃げ面」は、折曲隙間部23bを折り目として剥離保護部材23が折り畳まれていく際に、分割剥離片23a,23a同士の接触・干渉をより効果的に回避するために設けられている。
【0050】
すなわち、
図8に示されているように、剥離保護部材23を含む貼付剤20の全体が、折曲隙間部23bを谷折りの折り目として内方に折り畳まれていくと、折曲隙間部23の側壁面を構成している分割剥離片23a,23aの両端面23c,23cにおける図示上方の端縁同士が最初に近付いていき、それら両端縁同士の接触・干渉が問題となる。このような状況に対応して本実施形態では、上述したように折曲隙間部23bの側壁面を形成している分割剥離片23a,23aの端面23c,23cが、傾斜して延在する「逃げ面」になされており、分割剥離片23a,23aに設けられている「逃げ面」同士の間に、より十分な間隔が維持されている。その結果、分割剥離片23a,23a同士の接触や干渉が防止され、剥離保護部材23の折り畳みが円滑に行われるとともに、
図9に示されているように、折り畳まれた後の折畳み貼付剤20は、外方に膨らむことなく良好な重合状態になされる。
【0051】
特に、折曲隙間部23bにおける
図7下方の開口における溝幅W1を狭くすることで、効能組成物22の保護や流出を防止する構成を採用した場合であっても、折曲隙間部23bの
図7上方の外方に向かう開口が広げられた溝幅W2を有することから、分割剥離片23a,23aの端面23c,23c同士の間隔が十分に確保され、当該分割剥離片23a,23a同士の接触や干渉が回避されることとなり、剥離保護部材23の折り畳み操作が円滑に行われる。
【0052】
一方、
図10、
図11及び
図12に示されている第3、第4及び第5の実施形態にかかる貼付剤における剥離保護部材33、43及び53の各々は、一対の分割剥離片(33a,33a)、(43a,43a)及び(53a,53a)をそれぞれ有しており、それら一対の分割剥離片(33a,33a)、(43a,43a)及び(53a,53a)が、貼付剤の長手方向(図示左右方向)の略中央位置に配置された折曲隙間部33b、43b及び53bを境界として、長手方向(図示左右方向)に隣り合う状態に分離して配置されている。
【0053】
また、各剥離保護部材33、43及び53を構成している各分割剥離片33a、43a及び53aは、貼付剤の短手方向(図示上下方向)に沿って断続的に直線状及び湾曲線状をなして延在する切れ目部33d、43d及び53dをそれぞれ有しており、それらの各切れ目部33d、43d及び53dと、折曲隙間部33b、43b及び53bとを境界線として、貼付剤の短手方向(図示上下方向)に沿って短冊状に延在する事前剥離部33e、43e及び53eがそれぞれ形成されている。
【0054】
上述した事前剥離部33e、43e及び53eは、周知のように、貼付剤を使用するにあたって最初に部分的に剥がされて皮膚に仮止めとして貼られものであり、貼付剤全体を仮止め状態とすることによって使用を容易化する機能を有する。本実施形態における事前剥離部33e、43e及び53eを形成している切れ目部33d、43d及び53dは、当該切れ目部33d、43d及び53dが延在する途中位置に、複数の連続部33f、43f及び53fをそれぞれ備えている。
【0055】
これらの連続部33f、43f及び53fは、上述した事前剥離部33e、43e及び53eを、剥離保護部材33、43及び53から脱落しないように繋いだ状態とするものであるが、当然のことながら、貼付剤の使用時に事前剥離部33e33e、43e及び53eを剥ぎ取る操作に支障を与えない程度の繋ぎ力を備えるように、例えば繋ぎの長さが適宜なものとなるように調整されている。
【0056】
そして、このような構成を備えた一対の事前剥離部33e,33e、43e,43e及び53e,53eの各々は、上述した折曲隙間部33b、43b及び53bを境界として貼付剤の長手方向(図示左右方向)に隣り合う状態に分離して配置されている。このときの各折曲隙間部33b、43b及び53bは、前述した実施形態における折曲隙間部13b,23bと同様の構成を備えたものであるので、詳細な説明は省略することとする。
【0057】
このように、第3、第4及び第5の実施形態においては、剥離保護部材33、43及び53を構成している分割剥離片33a、43a及び53aが、使用時に仮止めされる事前剥離部33e、43e及び53eを有しており、それらの事前剥離部33e、43e及び53eが、連続部33f、43f及び53fを介して適宜の繋ぎ力で仮保持状態になされている。従って、事前剥離部33e、43e及び53eに、溝状に延在する切断部としての折曲隙間部33b、43b及び53bを設けても、事前剥離部33e、43e及び53eは脱落することなく仮保持状態に維持されることから、前述した各実施形態と同様に、貼付剤の折り畳み操作が、折曲隙間部33b、43b及び53bを介して良好に行われる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本実施形態は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0059】
例えば、上述した各実施形態では、剥離保護部材を構成している一対の分割剥離片が、折り畳まれた状態において完全に重なり合う構成になされているが、互いに位置をずらした状態で折り畳まれる構成とすることも可能である。
【0060】
また、上述した各実施形態における剥離保護部材は、当該剥離保護部材を二分割した一対の分割剥離片から構成されているが、3体以上の複数の分割剥離片からなるように分割した構成とすることも可能である。
【0061】
さらに、上述した各実施形態においては、効能組成物として薬剤が採用されているが、ラベル用、化粧・装飾用、マスキング用、工業用等のその他の用途に使用される貼付剤においては、各々の用途に有用に機能する効能組成物が採用されることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように本発明は、多種多様な貼付剤に対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 折畳み貼付剤
10,20 貼付剤
11,21 支持体
12,22 効能組成物
13,23 剥離保護部材
13a,23a 分割剥離片
13b,23b 折曲隙間部
13c,23c 端面
13d 折り目線(ミシン目)
W 折曲隙間部の溝幅
T 貼付剤の厚さ寸法
30,40,50 貼付剤
33,43,53 剥離保護部材
33a,43a,53a 分割剥離片
33b,43b,53b 折曲隙間部
33c,43c,53c 端面
33d,43d,53d 切れ目部
33e,43e,53e 事前剥離部
33f,43f,53f 連続部