(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】米飯処理装置
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20240411BHJP
【FI】
A23L7/10 E
(21)【出願番号】P 2020012000
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-12-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 鈴茂器工株式会社東京工場(埼玉県比企郡川島町戸守荒神495-1)での展示会にて公開(令和1年10月24日)
(73)【特許権者】
【識別番号】591094262
【氏名又は名称】鈴茂器工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓一
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-333626(JP,A)
【文献】特開2016-039785(JP,A)
【文献】特開2019-037163(JP,A)
【文献】特開2018-186749(JP,A)
【文献】特開2018-161100(JP,A)
【文献】特開平04-091775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された米飯を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段を駆動する搬送駆動手段と、
前記搬送手段における米飯の搬送方向下流端に設けられ、前記搬送手段に搬送される米飯を解す解し手段と、
前記解し手段を駆動する解し駆動手段と、
前記解し手段の駆動時における前記解し駆動手段の負荷トルクを計測する計測手段と、
前記計測手段による計測値が規定値以下の場合には第1の速度に、前記規定値を超えた場合には前記第1の速度よりも遅い第2の速度に、前記搬送駆動手段の速度を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする米飯処理装置。
【請求項2】
前記解し手段へ送り込まれる米飯の高さを規制する規制手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1記載の米飯処理装置。
【請求項3】
前記解し手段は、前記搬送手段における米飯の搬送方向と交差する方向に配置された回転軸、および当該回転軸の回りに形成されて米飯を解す複数の解し片を備え、前記搬送手段との対向部位が米飯の搬送方向と順方向に回転する解しローラであり、
前記規制手段は、前記搬送手段における米飯の搬送方向と交差する方向に配置された回転軸、および当該回転軸の回りに形成されて米飯を取り崩す複数の崩し片を備え、前記解しローラと同方向に回転する規制ローラである、
ことを特徴とする請求項2記載の米飯処理装置。
【請求項4】
前記解しローラと前記規制ローラとは、
前記規制ローラの崩し片の下限位置が前記解しローラの回転中心よりも上で、且つ前記解しローラの解し片と前記規制ローラの崩し片とが水平方向でオーバラップする位置関係に配置されている、
ことを特徴とする請求項3記載の米飯処理装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、無端状のベルトが周回するベルトコンベアである、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の米飯処理装置。
【請求項6】
前記ベルトコンベアは、搬送面が搬送方向下流側に向かって下方に傾斜して設置されている、
ことを特徴とする請求項5記載の米飯処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯処理装置に関し、特に搬送手段に搬送される米飯の解しに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホッパに投入された米飯を解す米飯処理装置においては、ベルトコンベア(搬送手段)で搬送されている米飯を解しローラ(解し手段)で解しており、解された米飯を後段に設置された計量部などに送っている。
【0003】
なお、米飯を解す技術として、例えば特許文献1(特開2003-299448号公報)には、米飯を解す解し爪が略垂直となって解し力を作用させる接触面と、米飯からの逃げが可能な傾斜面とによって装置を構成することにより、確実に米飯を解すことができる米飯供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、米飯の入ったコンテナをリフタで持ち上げて上下反転してホッパに投入した場合、ホッパ内の米飯は大きな一つのブロックになっている。そのため、ベルトコンベアで搬送しながら解しローラで解すだけで、米飯を満遍なく解すことができる。
【0006】
しかしながら、人手で米飯を投入する場合には、米飯が複数の不規則な大きさのブロック状になってしまうため、ホッパ内における米飯の堆積密度は局所的に大きくバラついてしまうことになる。
【0007】
そして、堆積密度が高い部分の米飯が解しローラに取り込まれたときには、解しローラの解し能力を超える供給過多となって米飯を満遍なく解すことができず、塊となって後工程に運ばれてしまうことがある。また、米飯が解しローラに押し付けられ、場合によっては解しローラが過負荷で止まってしまうことがある。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、投入された米飯を確実に解すことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の米飯処理装置は、投入された米飯を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を駆動する搬送駆動手段と、前記搬送手段における米飯の搬送方向下流端に設けられ、前記搬送手段に搬送される米飯を解す解し手段と、前記解し手段を駆動する解し駆動手段と、前記解し手段の駆動時における前記解し駆動手段の負荷トルクを計測する計測手段と、前記計測手段による計測値が規定値以下の場合には第1の速度に、前記規定値を超えた場合には前記第1の速度よりも遅い第2の速度に、前記搬送駆動手段の速度を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明の米飯処理装置は、上記請求項1記載の発明において、前記解し手段へ送り込まれる米飯の高さを規制する規制手段をさらに有する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明の米飯処理装置は、上記請求項2記載の発明において、前記解し手段は、前記搬送手段における米飯の搬送方向と交差する方向に配置された回転軸、および当該回転軸の回りに形成されて米飯を解す複数の解し片を備え、前記搬送手段との対向部位が米飯の搬送方向と順方向に回転する解しローラであり、前記規制手段は、前記搬送手段における米飯の搬送方向と交差する方向に配置された回転軸、および当該回転軸の回りに形成されて米飯を取り崩す複数の崩し片を備え、前記解しローラと同方向に回転する規制ローラである、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の本発明の米飯処理装置は、上記請求項3記載の発明において、前記解しローラと前記規制ローラとは、前記規制ローラの崩し片の下限位置が前記解しローラの回転中心よりも上で、且つ前記解しローラの解し片と前記規制ローラの崩し片とが水平方向でオーバラップする位置関係に配置されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明の米飯処理装置は、上記請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記搬送手段は、無端状のベルトが周回するベルトコンベアである、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明の米飯処理装置は、上記請求項5に記載の発明において、前記ベルトコンベアは、搬送面が搬送方向下流側に向かって下方に傾斜して設置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、計測手段により解し駆動手段の負荷トルクを計測しておき、その計測値が規定値を超えたときには解し手段が過負荷状態になっているとして搬送駆動手段の速度を遅くするようにしている。これにより、解し手段に対する単位時間あたりの米飯の送り込み量が減少することで過負荷状態が解消されるので、投入された米飯を確実に解すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態である米飯処理装置を一部破断して示す斜視図である。
【
図3】
図1の米飯処理装置に設置された解しローラを示す斜視図である。
【
図4】
図1の米飯処理装置に設置された規制ローラを示す斜視図である。
【
図5】
図1の米飯処理装置の解しローラと規制ローラとの位置関係を示す説明図である。
【
図6】比較例としての米飯処理装置の解しローラと規制ローラとの位置関係を示す説明図である。
【
図7】
図1の米飯処理装置の第1の処理部の機能ブロック図である。
【
図8】
図1の米飯処理装置に米飯が投入された状態を示す説明図である。
【
図9】
図1の米飯処理装置に投入された米飯がベルトコンベアで搬送されて解しローラへ送られた状態を示す説明図である。
【
図10】本実施の形態の米飯処理装置における第1の処理部の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態である米飯処理装置を一部破断して示す斜視図、
図2は
図1の側面図、
図3は
図1の米飯処理装置に設置された解しローラを示す斜視図、
図4は
図1の米飯処理装置に設置された規制ローラを示す斜視図、
図5は
図1の米飯処理装置の解しローラと規制ローラとの位置関係を示す説明図、
図6は比較例としての米飯処理装置の解しローラと規制ローラとの位置関係を示す説明図、
図7は
図1の米飯処理装置の第1の処理部の機能ブロック図である。
【0021】
本実施の形態の米飯処理装置Mは、投入された米飯R(
図8、
図9)を解す第1の処理部M1と、第1の処理部M1の下方に位置して当該第1の処理部M1で解された米飯Rを計量して予め設定された大きさ、形状および重さになるように計量分割する第2の処理部M2とで構成されている。また、第1の処理部M1の側方には、作業者が所望する装置の動作設定を行うとともに、設定された動作内容や現在の動作状況が表示される操作・表示部M3が設けられている。
【0022】
図1および
図2に示すように、第1の処理部M1は、米飯Rが投入されるホッパ10と、当該ホッパ10の底面を形成するとともに投入された米飯Rを搬送するベルトコンベア(搬送手段)11と、ベルトコンベア11に搬送される米飯Rを解す解しローラ(解し手段)12と、解しローラ12へ送り込まれる米飯Rの高さを規制する規制ローラ(規制手段)13とを備えている。
【0023】
本実施の形態において、ホッパ10には人手で米飯Rが投入される。但し、米飯Rをコンテナに入れ、リフタにより持ち上げて自動的に投入するようになっていてもよい。
【0024】
ベルトコンベア11は、無端状のベルト11aと、この無端状のベルト11aが掛け渡された駆動ローラ11bおよび従動ローラ(図示せず)とで構成されている。また、駆動ローラ11bを駆動するコンベア駆動モータ(搬送駆動手段)20(
図7)が設けられている。そして、コンベア駆動モータ20で駆動ローラ11bが回転することによりベルト11aが周回し、これによってベルト11aの搬送面11cに載った米飯Rが搬送される(
図8、
図9参照)。
【0025】
解しローラ12は、ベルトコンベア11における米飯Rの搬送方向下流端において、ベルトコンベア11と所定の間隔を開けて設置されている。
【0026】
図3に示すように、この解しローラ12は、ベルトコンベア11における米飯Rの搬送方向と交差する方向(本実施の形態では、直交する方向)となるように配置された円柱状の回転軸12aと、当該回転軸12aの回りに形成された突起である複数の解し片12bとで構成されている。また、解しローラ12を駆動するローラ駆動モータ(解し駆動手段)21(
図7)が設けられている。そして、当該ローラ駆動モータ21によって、解しローラ12は、ベルトコンベア11との対向部位が米飯Rの搬送方向と順方向となる方向に回転する。そして、回転軸12aの回りの複数の解し片12bが搬送中の米飯Rの中に連続的に入り込んでは抜け出る動作を繰り返して米飯Rを解す。
【0027】
前述のように、解しローラ12はベルトコンベア11における米飯Rの搬送方向下流端に設けられている。したがって、解しローラ12は、ベルトコンベア11に搬送された米飯Rを解しながら第2の処理部M2へ落下させる、
【0028】
ここで、
図1および
図2に示すように、ベルトコンベア11は、搬送面11cが搬送方向下流側に向かって下方に傾斜(例えば、4~6°傾斜)して設置されている。搬送する米飯量が少なくなって後方に位置する米飯Rがなくなると、回転する解しローラ12の解し片12bによって米飯Rが押し返されるようになる。このとき、本実施の形態のように、ベルトコンベア11の搬送面11cを傾斜させておくと米飯Rに斜め下方に向かう力が発生するので、米飯Rが解し片12bで押し返されることなく解しローラ12とベルトコンベア11との間に引き込まれることになるからである。
【0029】
さて、規制ローラ13は、解しローラ12よりも米飯Rの搬送方向上流側に配置されており、ベルトコンベア11に搬送されるブロック状の米飯Rの上部を取り崩して解しローラ12へ送り込まれる米飯Rの高さを規制する。
【0030】
図4に示すように、この規制ローラ13は、ベルトコンベア11における米飯Rの搬送方向と交差する方向(本実施の形態では、直交する方向)となるように配置された棒状の回転軸13aと、当該回転軸13aの回りに形成された複数の崩し片13bとで構成されている。図示するように、解し片12bは、長細い接頭円錐をやや膨らみが残る程度に両側から押し潰した形状を呈している。また、本実施の形態において、規制ローラ13は解しローラ12とギア結合(図示せず)されている。したがって、解しローラ12と同様に、規制ローラ13はローラ駆動モータ21で駆動され、且つ、解しローラ12と同方向に回転する。そして、回転軸13aの回りの複数の崩し片13bが解しローラ12に向かうブロック状の米飯Rの上部に連続的に入り込んで取り崩す(
図9参照)。
【0031】
なお、解し片12bや崩し片12bの形状は特に限定されるものではないが、解したり取り崩したりするときに過度に米飯Rを引っ張らないように、相互の間隔が適度に空いているのがよい。
【0032】
図5に示すように、解しローラ12と規制ローラ13とは、互いの回転軌跡が交錯しない程度に近接配置されている。さらに、解しローラ12と規制ローラ13とは、規制ローラ13の崩し片13bの下限位置P1が解しローラ12の回転中心P2よりも上で、且つ解しローラ12の解し片12bと規制ローラ13の崩し片13bとが水平方向でオーバラップP3した位置関係に配置されている。このような配置により、解しローラ12に向かうブロック状の米飯Rの上部が適度に取り崩されて高さが低くなり、大量の米飯Rが一度に解しローラ12に送られることがなくなる。これにより、解しローラ12が過負荷状態になることが未然に防止され、解しローラ12で米飯Rを確実に解すことが可能になっている。
【0033】
但し、規制ローラ13が、搬送される米飯Rの上部を取り崩して解しローラ12へ送り込まれる米飯Rの高さを規制することができる限り、解しローラ12と規制ローラ13との配置はこれに限定されるものではない。
【0034】
なお、
図6に示すように、解しローラ12と規制ローラ13との間隔が空きすぎていると、これらのローラ12,13の間を米飯Rが通過して規制ローラ13による米飯Rの取り崩し効果が減殺されてしまうので好ましくない。
【0035】
図7に示すように、米飯処理装置Mには、解しローラ12の駆動時におけるローラ駆動モータ21の負荷トルク(つまり、解しローラ12が米飯Rを解す動作を実行することでローラ駆動モータ21に負荷されるトルク)を計測するための負荷トルク計測部(計測手段)22が設けられている。また、負荷トルク計測部22での計測値に基づいてコンベア駆動モータ20の回転を制御する制御部(制御手段)23が設けられている。そして、制御部23では、負荷トルク計測部22での計測値が予め設定された規定値(例えば1Nm)以下の場合にはコンベア駆動モータ20の回転数を1,950rpm(第1の速度)に、規定値を超えた場合にはコンベア駆動モータ20の回転数を300rpm(第2の速度)に、制御する。
【0036】
なお、前述した規定値の数値は一例であり、これに限定されるものではない。また、コンベア駆動モータ20の回転数は、計測値が規定値を超えたときの第2の速度が規定値以下のときの第1の速度よりも遅ければよく、同様に、前述した数値に限定されるものではない。
【0037】
ここで、本実施の形態においては、解しローラ12と規制ローラ13とはギア結合されており、共通のローラ駆動モータ21で駆動されているが、両者はそれぞれ個別のモータで駆動されるようになっていてもよい。この場合には、負荷トルク計測部22は解しローラ12を駆動するモータの負荷トルクを計測する。
【0038】
図1および
図2において、第2の処理部M2は、前述したように、第1の処理部M1で解された米飯Rを計量して予め設定された大きさ、形状および重さのシャリ玉になるように計量分割する機能部である。この第2の処理部M2は、筐体24内に格納された計量分割部(図示せず)と、その下方のターンテーブル(図示せず)を備えた成形部25とで構成されている。
【0039】
計量分割部には、左右一対のローラが上下方向に複数段(例えば3段)に配置され、その下方に分割用のカッタが設けられている。一対のローラは、上段から下段に向かうに従って小径で、かつその間隔が狭くなっている。これにより、第1の処理部M1の解しローラ12で解されて計量分割部に送り込まれた米飯Rは、米粒の密度が一定に保たれたまま一対のローラにより圧縮されて下方に送られ、予め設定された大きさ、形状および重さとなるタイミングでカッタにより分割され、ターンテーブルにおいて一定の間隔を開けて周方向に形成された成形孔に投入される。
【0040】
ターンテーブルは周方向に間欠回転するようになっており、成形孔に投入された米飯Rを上下から圧縮して所定形状のシャリ玉に成形する成形型、成形されたシャリ玉を成形孔から上方に押し出す押出型などを備えている。
【0041】
次に、以上の構成を備えた本実施の形態の米飯処理装置における第1の処理部M1の動作について、
図8~
図10を用いて説明する。
【0042】
ここで、
図8は
図1の米飯処理装置に米飯が投入された状態を示す説明図、
図9は
図1の米飯処理装置に投入された米飯がベルトコンベアで搬送されて解しローラへ送られた状態を示す説明図、
図10は本実施の形態の米飯処理装置における第1の処理部の処理動作を示すフローチャートである。
【0043】
電源スイッチ(図示せず)を押して電源を投入し、ホッパ10に米飯Rを投入する。投入時点での米飯Rの状態を
図8に示す。図示するように、米飯Rはブロック状になってベルトコンベア11の上に載っている。なお、図示する場合には、炊飯容器に入った米飯Rを、炊飯容器を反転させるようにして一度にホッパ10に投入したために、米飯Rが1つの大きな塊となっている。一方、炊飯容器から人手を介して数度に分けて投入した場合には、不規則な複数のブロック状になることが多い。
【0044】
ホッパ10に米飯Rを投入したならば、次に、操作・表示部M3を操作して、第2の処理部M2で製造するシャリ玉の個数や重さなどを設定し、スタートボタン(図示せず)を押下する。これにより、第1の処理部M1ではベルトコンベア11、解しローラ12、規制ローラ13などが作動を開始して、米飯Rの搬送・解し処理を行う。また、第2の処理部M2では、ターンテーブル、成形型、押出型などが作動を開始して、米飯Rを所定の大きさ、形状および重さのシャリ玉にする。
【0045】
第1の処理部M1の動作が開始すると、
図10において、コンベア駆動モータ20およびローラ駆動モータ21が回転を開始する(ステップS1)。これにより、無端状のベルト11aが周回して米飯Rを解しローラ12へと搬送する。また、解しローラ12が回転して、ベルトコンベア11に搬送された米飯Rを解しながら落下させる。さらに、規制ローラ13が回転して、ベルトコンベア11により解しローラ12へ送り込まれる米飯Rの上部を取り崩して高さを規制し、大量の米飯Rが一度に解しローラ12に送られることがないようにしている。このときの状態を
図9に示す。
【0046】
さて、ステップS1においてローラ駆動モータ21が回転して解しローラ12が米飯Rを解し始めたならば、負荷トルク計測部22によりローラ駆動モータ21の負荷トルクを計測する(ステップS2)。
【0047】
そして、制御部23においてローラ駆動モータ21の負荷トルクの計測値が規定値以下か否かが判断され(ステップS3)、規定値以下と判断された場合には、コンベア駆動モータ20を1,950rpm(第1の速度)で0.1秒運転する(ステップS4)。その後、ステップS2に戻り、負荷トルク計測部22によりローラ駆動モータ21の負荷トルクを計測する。
【0048】
一方、ステップS3において、ローラ駆動モータ21の負荷トルクの計測値が規定値を超えていると判断された場合には、コンベア駆動モータ20の回転数を300rpm(つまり、第1の速度よりも遅い第2の速度)にして0.1秒運転する(ステップS5)。その後、ステップS2に戻り、負荷トルク計測部22によりローラ駆動モータ21の負荷トルクを計測する。
【0049】
ステップS4あるいはステップS5からステップS2に戻ってローラ駆動モータ21の負荷トルクを計測したならば、ステップS3の判断を行い、以下ステップS4またはステップS5に移行した後にステップS2に戻る工程を、設定したシャリ玉の個数が生産されるまで、あるいはホッパ10内の米飯Rがなくなるまで繰り返す。
【0050】
なお、コンベア駆動モータ20の運転時間(ここでは、0.1秒)は一例であり、任意の長さに設定することができる。
【0051】
このように、ローラ駆動モータ21の負荷トルクの計測値に基づいてコンベア駆動モータ20の回転数を制御しているのは、次のような理由による。
【0052】
すなわち、ベルトコンベア11に搬送される米飯Rを解しローラ12が順調に解しているときには、解しローラ12を駆動するローラ駆動モータ21の負荷トルクは、想定される所定の値、つまり規定値以下となっている。
【0053】
一方、米飯密度が高くなった部位が解しローラ12に送り込まれた場合には、米飯Rを解そうとする解しローラ12が過負荷状態になる。解しローラ12が過負荷状態になったときでも、ベルトコンベア11による米飯Rの搬送速度を過負荷状態でないときと同じにすると、解しローラ12で米飯Rが局所的に解されず、塊となって後工程に運ばれてしまったり、解しローラ12が過負荷のために止まることがある。そして、解しローラ12が過負荷状態になったときには、当該解しローラ12を駆動するローラ駆動モータ21の負荷トルクが増大して規定値を超えてしまう傾向が発生する。
【0054】
そこで、負荷トルク計測部22によりローラ駆動モータ21の負荷トルクを計測しておいて、その計測値が規定値を超えたときには解しローラ12が過負荷状態になっているとしてコンベア駆動モータ20の回転数を下げ、ベルトコンベア11の速度を遅くしている。これにより、解しローラ12に対する単位時間あたりの米飯Rの送り込み量が減少するので、解しローラ12の過負荷状態が解消されて米飯Rを確実に解すことが可能になる。
【0055】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0056】
たとえば、本実施の形態では、規制ローラ13により解しローラ12に向かうブロック状の米飯Rの上部を取り崩して高さを低くすることで大量の米飯Rが一度に解しローラ12に送られることを防止し、解しローラ12が過負荷状態にならないようにしているが、当該規制ローラ13は設けられていなくてもよい。すなわち、投入されるブロック状の米飯Rの高さが比較的低い場合などでは、ローラ駆動モータ21の負荷トルクの計測値に基づいてコンベア駆動モータ20の回転数を制御し、解しローラ12の過負荷状態を解消するだけで、米飯Rを確実に解すことができるからである。但し、規制ローラ13が設けられていれば、米飯Rを解す確実性がより向上するので望ましい。
【0057】
また、本実施の形態では、解し手段として解しローラ12が用いられ、規制手段として規制ローラ13が用いられているが、解し手段としては米飯Rを解す機能を有していればよく、規制手段としては米飯Rの高さを規制する機能を有していればよく、ローラ状ではなくてもよい。同様に、本実施の形態では、搬送手段としてベルトコンベア11が用いられているが、搬送手段としては米飯Rを搬送する機能を有していればよく、ベルト式ではなくてもよい。
【0058】
また、本実施の形態において、解しローラ12はベルトコンベア11における米飯Rの搬送方向下流端に設置されているが、ベルトコンベア11の途中位置であってもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態では、コンベア駆動モータ20の第2の速度は1つの速度(ここでは、300rpm)だけであるが、計測される負荷トルクの数値に応じて(つまり、解しローラ12の過負荷状態の程度に応じて)複数の速度を設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上の説明では、本発明の米飯処理により解された米飯の後工程としてシャリ玉の製造工程が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば、容器への投入工程や容器投入に先立った計量工程など、様々な工程を導入することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 ホッパ
11 ベルトコンベア(搬送手段)
11a ベルト
11b 駆動ローラ
11c 搬送面
12 解しローラ(解し手段)
12a 回転軸
12b 解し片
13 規制ローラ(規制手段)
13a 回転軸
13b 崩し片
20 コンベア駆動モータ(搬送駆動手段)
21 ローラ駆動モータ(解し駆動手段)
22 負荷トルク計測部(計測手段)
23 制御部(制御手段)
24 筐体
25 成形部
M 米飯処理装置
M1 第1の処理部
M2 第2の処理部
M3 操作・表示部
R 米飯