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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】削孔システムおよび削孔方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/24 20060101AFI20240411BHJP
   E21B 6/00 20060101ALI20240411BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20240411BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
E21B19/24
E21B6/00 ESW
E04G21/12 105Z
E04G23/02 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021040354
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139811
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】西山 宏一
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】山田 純一
(72)【発明者】
【氏名】塩見 正嗣
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-278037(JP,A)
【文献】特開平08-336826(JP,A)
【文献】特開2019-007161(JP,A)
【文献】特開2017-061839(JP,A)
【文献】特開昭59-187996(JP,A)
【文献】特開平10-096627(JP,A)
【文献】特開昭59-015186(JP,A)
【文献】特開2004-060282(JP,A)
【文献】特開2008-126532(JP,A)
【文献】特開2008-089638(JP,A)
【文献】実開昭60-113811(JP,U)
【文献】特開2021-126885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 21/12
E21B 1/00-49/10
B28D 1/00- 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の構造物に削孔する縦方向に沿った複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件を設定する削孔条件シートが入力される入力部と、
前記入力部で入力された前記削孔条件シートを格納する削孔条件シート記憶部と、
昇降可能となった削孔機を備え、前記構造物に複数の孔を削孔する削孔装置と、
前記削孔機による削孔位置を検出する削孔位置検出部、および前記削孔機による前記削孔深さを検出する削孔深さ検出部を備えた削孔状態検出部と、
前記削孔条件シート記憶部の前記削孔条件シートを読み込んで、当該削孔条件シートに基づいて前記削孔装置により順次削孔する制御を行うとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さの孔を開けることができないと削孔状態検出部により検出された孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける制御を行う制御部と、
前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶部とを有し、
前記入力部には、前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、
ことを特徴とする削孔システム。
【請求項2】
前記入力部には、前記削孔位置を上下方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、
ことを特徴とする請求項1記載の削孔システム。
【請求項3】
前記入力部には、前記削孔位置を上下方向にずらすことなく削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力され、
前記削孔装置を横方向に移動させて前記削孔位置を横方向にずらして、前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔について削孔し得るようにした、
ことを特徴とする請求項1記載の削孔システム。
【請求項4】
前記削孔条件シートにおける前記削孔深さは、前記削孔機による低打撃圧での削孔深さと、その後の高打撃圧での削孔深さとで構成される、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項5】
前記削孔状態検出部は、削孔が停滞したとき、または所定時間内に前記削孔深さが設定値に達していないときに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した孔を開けることができないと判断する、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項6】
前記削孔条件シート記憶部に格納された複数の前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果とを削孔した孔ごとに対比して出力する出力部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項7】
前記出力部では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件に不適合の孔との判定結果を併せて出力する、
ことを特徴とする請求項6記載の削孔システム。
【請求項8】
前記削孔条件シートは、選択可能に複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項9】
前記削孔装置は、
前記削孔機を昇降可能に支持する昇降手段と、
前記昇降手段の下部に設けられ、当該昇降手段を支持する支持フレームと、
前記支持フレームを跨ぐように設けられるとともに、走行用のローラが取り付けられた走行フレームと、
上端が前記走行フレームに固定されるとともに下端が前記支持フレームに固定されて設けられ、収縮して前記ローラを、伸長して前記支持フレームをそれぞれ選択的に接地させる伸縮ジャッキとを備え、
当該削孔装置を横方向に移動させながら縦方向に複数の孔を削孔し得るようにした、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の削孔システム。
【請求項10】
削孔機が昇降可能となった削孔装置を用いてコンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に削孔する削孔方法であって、
構造物に削孔する縦方向に沿った複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件シートを入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された前記削孔条件シートを読み込む削孔条件シート読込工程と、
前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートに基づいて前記削孔装置により順次削孔するとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さを開けることができない孔については削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける削孔工程と、
前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶工程とを有し、
前記入力工程では、前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、
ことを特徴とする削孔方法。
【請求項11】
前記入力工程では、前記削孔位置を上下方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、
ことを特徴とする請求項10記載の削孔方法。
【請求項12】
前記入力工程では、前記削孔位置を上下方向にずらすことなく削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力し、
前記削孔装置を横方向に移動させて前記削孔位置を横方向にずらして、前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔について削孔する、
ことを特徴とする請求項10記載の削孔システム。
【請求項13】
前記削孔工程では、削孔が停滞したとき、または所定時間内に削孔深さが設定値に達していないときに、削孔を中止する、
ことを特徴とする請求項10~12の何れか一項に記載の削孔方法。
【請求項14】
前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果とを削孔した孔ごとに対比して出力する出力工程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項10~13の何れか一項に記載の削孔方法。
【請求項15】
前記出力工程では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件シートに不適合の孔との判定結果を併せて出力する、
ことを特徴とする請求項14記載の削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の構造物に削孔する削孔システムおよび削孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上、地中、半地下などで地盤に接するコンクリート製の構造物や、鉄道や道路等に近接する地上に構築されたコンクリート製の構造物では、耐震補強を目的として、構造物の片側面から削孔し、その孔内に定着材を充填した後、後施工せん断補強鉄筋(以下、「せん断補強鉄筋」という。)を挿入して構造物と一体化させることで当該構造体のせん断耐力を向上させる工法が行われる。
【0003】
また、コンクリート製の躯体で構成された道路、橋梁、ダム、堤防などの既設の構造物では、耐力の維持や補強を目的として、躯体の側面や上下面に対し、所定間隔で削孔してあと施工アンカーを埋め込み、当該あと施工アンカーと連結するように配筋を行ってさらにコンクリートを打設する増し打ち工法が行われている。
【0004】
そして、削孔作業において、現場の作業者は、重量物である削孔装置のハンドルおよびサイドハンドルを両手でしっかりと保持した上で、構造物の削孔位置にビットを押し当てて当てて掘り進める。
【0005】
なお、構造物に対するせん断補強工法については、例えば特許文献1(特開2016-037787号公報)が知られている。また、構造物に対するコンクリートの増し打ち工法については、例えば特許文献2(特開2018-131848号公報)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-037787号公報
【文献】特開2018-131848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、構造物を耐震補強するためには、せん断補強鉄筋を埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。同様に、増し打ち工法でも、あと施工アンカーを埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。すると、前述した従来の削孔装置を用いた作業は重労働となり、結果として作業効率が悪化することになる。
【0008】
そして、コンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に削孔することができれば、作業者は削孔作業から解放されて他の作業を行うことができるので、作業効率が向上して工期の短縮化を図ることができる。
【0009】
しかしながら、コンクリート製の構造物の内部には鉄筋や埋設物(配管など)が配置されているために、これらが自動的に削孔する上での障害になる。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、コンクリート製の構造物に削孔条件に沿った複数の孔を自動的に開けることのできる削孔システムおよび削孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の削孔システムは、コンクリート製の構造物に削孔する縦方向に沿った複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件を設定する削孔条件シートが入力される入力部と、前記入力部で入力された前記削孔条件シートを格納する削孔条件シート記憶部と、昇降可能となった削孔機を備え、前記構造物に複数の孔を削孔する削孔装置と、前記削孔機による削孔位置を検出する削孔位置検出部、および前記削孔機による前記削孔深さを検出する削孔深さ検出部を備えた削孔状態検出部と、前記削孔条件シート記憶部の前記削孔条件シートを読み込んで、当該削孔条件シートに基づいて前記削孔装置により順次削孔する制御を行うとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さの孔を開けることができないと削孔状態検出部により検出された孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける制御を行う制御部と、前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶部とを有し、前記入力部には、前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1に記載の発明において、前記入力部には、前記削孔位置を上下方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1に記載の発明において、前記入力部には、前記削孔位置を上下方向にずらすことなく削孔するように更新した前記削孔条件シートが入力され、前記削孔装置を横方向に移動させて前記削孔位置を横方向にずらして、前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔について削孔し得るようにした、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シートにおける前記削孔深さは、前記削孔機による低打撃圧での削孔深さと、その後の高打撃圧での削孔深さとで構成される、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記削孔状態検出部は、削孔が停滞したとき、または所定時間内に前記削孔深さが設定値に達していないときに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した孔を開けることができないと判断する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~5の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シート記憶部に格納された複数の前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶部に格納された前記削孔結果とを削孔した孔ごとに対比して出力する出力部をさらに有する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項6記載の発明において、前記出力部では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件に不適合の孔との判定結果を併せて出力する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~7の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シートは、選択可能に複数設けられている、ことを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の本発明の削孔システムは、上記請求項1~8の何れか一項に記載の発明において、前記削孔装置は、前記削孔機を昇降可能に支持する昇降手段と、前記昇降手段の下部に設けられ、当該昇降手段を支持する支持フレームと、前記支持フレームを跨ぐように設けられるとともに、走行用のローラが取り付けられた走行フレームと、上端が前記走行フレームに固定されるとともに下端が前記支持フレームに固定されて設けられ、収縮して前記ローラを、伸長して前記支持フレームをそれぞれ選択的に接地させる伸縮ジャッキとを備え、当該削孔装置を横方向に移動させながら縦方向に複数の孔を削孔し得るようにした、ことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するため、請求項10に記載の本発明の削孔方法は、削孔機が昇降可能となった削孔装置を用いてコンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に削孔する削孔方法であって、構造物に削孔する縦方向に沿った複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件シートを入力する入力工程と、前記入力工程で入力された前記削孔条件シートを読み込む削孔条件シート読込工程と、前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートに基づいて前記削孔装置により順次削孔するとともに、前記削孔機が前記削孔条件に適合した深さを開けることができない孔については削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける削孔工程と、前記削孔装置による削孔結果を格納する削孔結果記憶工程とを有し、前記入力工程では、前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果において前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項11に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項10記載の発明において、前記入力工程では、前記削孔位置を上下方向にずらして削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力する、ことを特徴とする。
【0022】
請求項12に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項10記載の発明において、前記入力工程では、前記削孔位置を上下方向にずらすことなく削孔するように更新した前記削孔条件シートを入力し、前記削孔装置を横方向に移動させて前記削孔位置を横方向にずらして、前記削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔について削孔する、ことを特徴とする。
【0023】
請求項13に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項10~12の何れか一項に記載の発明において、前記削孔工程では、削孔が停滞したとき、または所定時間内に削孔深さが設定値に達していないときに、削孔を中止する、ことを特徴とする。
【0024】
請求項14に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項10~13の何れか一項に記載の発明において、前記削孔条件シート読込工程で読み込まれた前記削孔条件シートと前記削孔結果記憶工程で格納された前記削孔結果とを削孔した孔ごとに対比して出力する出力工程をさらに有する、ことを特徴とする。
【0025】
請求項13に記載の本発明の削孔方法は、上記請求項14記載の発明において、前記出力工程では、前記削孔条件に適合した孔と前記削孔条件シートに不適合の孔との判定結果を併せて出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、コンクリート製の構造物を削孔する際の複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件が設定された削孔条件シートを読み込み、その削孔条件シートに基づいて削孔装置により順次削孔するようにし、削孔機が削孔条件に適合した深さの孔を開けることができなかった孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開けている。そして、削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して、削孔位置をずらして削孔するように更新した削孔条件シートに基づいて削孔している。
【0027】
したがって、削孔機が削孔条件に適合した深さの孔を開けることができなかった孔については削孔位置をずらして削孔が行われるので、削孔条件に沿った深さの孔を自動的に構造物に削孔することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施の形態に係る削孔システムで削孔された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る削孔装置の側面図である。
図3図2の背面図である。
図4図2の平面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る削孔装置においてエアジャッキが収縮した状態を示しており、(a)は側面図、(b)は背面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る削孔装置においてエアジャッキが伸張した状態を示しており、(a)は側面図、(b)は背面図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る削孔システムを示すブロック図である。
図8】コンクリート製の構造物の壁に対する削孔位置の一例を示す説明図である。
図9図8の削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シート1の一例を示す説明図である。
図10図8とは異なる削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シートの一例を示す説明図である。
図11図8の削孔条件シート1に基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図である。
図12】更新された削孔条件シート1の一例を示す説明図である。
図13】更新された削孔条件シート1の他の一例を示す説明図である。
図14図12の削孔条件シート1に基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図である。
図15】本発明の一実施の形態に係る削孔システムで削孔された孔と構造物内に配された鉄筋とを示す説明図である。
図16】本発明の一実施の形態に係る削孔システムを用いてコンクリート製の構造物に自動的に削孔するプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
本実施の形態の削孔システムSYSの構成要素である削孔装置Aは、例えば図1に示すような地盤Gに接する既設のコンクリート製の構造物Sや、鉄道や道路等の建造物に近接する地上に構築された既設のコンクリート製の構造物(道路、橋梁、ダム、堤防など)などに対して、補強工事の一工程として片側面からアンカー孔(あと施工アンカーを埋め込むための孔)などの孔Hを開けるために用いられる。開けた孔Hの内部に定着材Mを充填した後、せん断補強鉄筋Rを挿入して構造物Sと一体化させることで、構造物Sのせん断耐力を向上させる。なお、せん断補強鉄筋Rとしては、例えば、一般的に使用される鉄筋R1の片側をネジ切り、斜め切断加工し、先端部に六角ナット(定着体)R2を装着したものなどが適用される。
【0031】
図2図4に示す本実施の形態の削孔装置Aは、構造物Sを削孔するためのハンマドリル(削孔機)1を昇降可能に支持するリフタ(昇降手段)10を備えている。このリフタ10は、リフタフレーム11と、リフタフレーム11に搭載されて上下方向に長くなった柱状の本体部12と、昇降用モータ13により駆動されて本体部12の側面に沿って昇降するテーブル14とを備えており、前述したハンマドリル1はテーブル14上に設置されている。
【0032】
本体部12内には、上下方向に配置されてテーブル14を貫通し、当該テーブル14の昇降をガイドする2本のスライドガイド15が設けられている。また、同じく上下方向に配置されて昇降用モータ13により回転し、テーブル14と螺合したボールねじ16が設けられている。したがって、リフタフレーム11に設置された昇降用モータ13の駆動でボールねじ16が回転すると、テーブル14がスライドガイド15に案内されて上昇あるいは下降し、昇降用モータ13が停止すると、そのときの高さ位置で停止する。
【0033】
リフタ10のテーブル14に設置されたハンマドリル1はドリル駆動用モータ1b(図7)に駆動されており、打撃および回転の一方あるいは併用が可能で、さらに強弱の調整も可能になっている。但し、強弱の調整は不能であってもよい。また、このハンマドリル1はテーブル14上において直線的に往復動可能に設置された直動部材2に取り付けられており、当該直動部材2によって進退移動可能になっている。
【0034】
ここで、図4に示すように、直動部材2は、相互に平行に配置された2本のガイドレール2aと、ハンマドリル1を搭載してガイドレール2aをスライド移動する板状のスライダ2bと、スライダ2bに推進力(往復移動するための推進力)を付与する推力付与部材としてのボールねじ2cおよびドリル進退用モータ2dとを備えている。ボールねじ2cはスライダ2bに螺合しており、ドリル進退用モータ2dはボールねじ2cを回転駆動する。そして、ボールねじ2cの回転運動がスライダ2bで直線運動に変換されてガイドレール2aに沿ってスライドし、これによりスライダ2b上のハンマドリル1が進退移動する。
【0035】
そして、ドリル駆動用モータ1bでハンマドリル1の駆動を開始し、ドリル進退用モータ2dを回転させて削孔対象であるコンクリート製の構造物Sに接近する方向にスライダ2bを移動させて当該ハンマドリル1を前進させると、ハンマドリル1のビット1aの先端が構造物Sの削孔位置に押し当てられて削孔が実行される。また、削孔が終わり、ドリル進退用モータ2dを反転させて構造物Sから離間する方向にスライダ2bを移動させてハンマドリル1を後退移動させると、当該ハンマドリル1のビット1aが孔から抜き取られて待機位置に戻る。なお、本実施の形態において、ハンマドリル1による削孔深さは200mm程度である。
【0036】
さて、このような構成を備えたリフタ10の下部には、当該リフタ10を支持する支持フレーム20が設けられている。この支持フレーム20は、平面視で矩形枠状の形状を呈しており、内側において互いに平行に掛け渡された2本のロッド21に前述のリフタフレーム11がボルト止めされている。また、矩形の支持フレーム20における長辺の部分には、その全長に渡って中間ロッド22が溶接によって固定されている。
【0037】
支持フレーム20を跨ぐようにして、走行フレーム30が設けられている。この走行フレーム30は、中間ロッド22の直上(つまり、支持フレーム20の長辺部分の直上)に配置された2本の長尺ロッド30aと、長尺ロッド30aの両端において当該長尺ロッド30aと直交した2本の短尺ロッド30bとで構成されている。短尺ロッド30bは長尺ロッド30aの裏面に固定されており、その両端は2本並んだ長尺ロッド30aの外側へ突出している。そして、各短尺ロッド30bの両端の合計4カ所には、走行用のローラ31が取り付けられている。
【0038】
図示するように、本実施の形態において、ローラ31は、ハンマドリル1の移動方向と直交する方向に走行可能に取り付けられている。したがって、ハンマドリル1を削孔対象の構造物Sに向けた状態では、削孔装置Aはローラ31によって構造物Sの壁面と略平行に移動可能になる。
【0039】
支持フレーム20と走行フレーム30との間の4カ所には、コンプレッサCP(図7)で伸縮駆動されるエアジャッキ(伸縮ジャッキ)40が設けられている。このエアジャッキ40は、上端が走行フレーム30に固定され、下端が支持フレーム20に固定されている。したがって、エアジャッキ40の作動により支持フレーム20と走行フレーム30との間隔が変化するようになっている。具体的には、エアジャッキ40が収縮すると、図5に示すように、支持フレーム20と走行フレーム30との間隔が狭まり、走行フレーム30に設けられたローラ31が接地する。逆に、エアジャッキ40が伸長すると、図6に示すように、支持フレーム20と走行フレーム30との間隔が広がり、支持フレーム20が接地する。
【0040】
なお、本実施の形態では、伸縮ジャッキの一例として、圧縮空気を利用したコンプレッサCPで伸縮するエアジャッキが用いられているが、油圧で伸縮する油圧ジャッキなどを用いてもよい。
【0041】
以上の構成を有する削孔装置Aを用いてコンクリート製の構造物Sに孔を開ける場合、エアジャッキ40を収縮させてローラ31が接地した状態にしておき(図5参照)、削孔装置Aを構造物Sに対して所定位置に移動させる。そして、エアジャッキ40を伸張させて支持フレーム20を接地させ、削孔装置Aをその位置に固定する(図6参照)。
【0042】
次に、ハンマドリル1が目的とする削孔位置となるように、リフタ10で高さを調整する。具体的には、昇降用モータ13によりテーブル14を昇降させてハンマドリル1の高さを調整する。
【0043】
そして、ハンマドリル1の電源を入れ、ハンマドリル1を前進移動させてビット1aの先端を構造物Sの削孔位置に押し当てて削孔する。すなわち、直動部材2であるドリル進退用モータ2dによりスライダ2bを移動させてハンマドリル1のビット1aの先端を削孔位置に押し当てて削孔を行う。
【0044】
削孔が終わったならば、構造物Sから離間する方向にスライダ2bを移動させてハンマドリル1を後退移動させ、待機位置に戻す。そして、リフタ10でハンマドリル1を昇降させながらハンマドリル1を次の削孔位置に移動させて同様に削孔を行い、以下同様にして上下方向に順次削孔を行う。
【0045】
このようにして上下1列の削孔を行ったならば、エアジャッキ40を収縮させてローラ31を接地させて削孔装置Aを構造物Sに沿って横方向に次の列まで移動させ、目的位置に調整できたならばエアジャッキ40を伸張させて支持フレーム20を接地させ、削孔装置Aを固定して前述と同様の要領で削孔を行う。そして、このような動作を繰り返して削孔を行っていく。
【0046】
このように、本実施の形態の削孔装置Aによれば、ローラ31で削孔装置Aを移動させて所望の位置に固定し、リフタ10で高さを調整するだけでコンクリート製の構造物Sをハンマドリル1で削孔することができるので、作業者の負担を軽減しつつ構造物Sを削孔することが可能になる。
【0047】
また、エアジャッキ40を伸縮させることで削孔装置Aを移動させたり固定したりすることができるので、高価なアウトリガーを別途に設ける必要がなく、装置構成が簡素になるとともにコストアップを抑制することができる。
【0048】
図7は、以上の構成を有する削孔装置Aを備えた削孔システムSYSのブロック図である。なお、図7において、破線で結ばれたブロック同士は、両者が間接的な関係にあることを示している。
【0049】
図7に示すように、削孔システムSYSは、上述した削孔装置Aと、構造物Sに対する種々の削孔条件を設定する削孔条件シートSh(図9図10)の入力(設定)および削孔結果の出力を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの入出力部PCと、削孔システムSYS全体の動作制御を実行する制御部Cと、削孔装置Aの削孔状態を検出する削孔状態検出部SSと、作業者が手動操作を行うペンダントスイッチなどの手動操作部MUとで構成されている。また、入出力部PCには、削孔条件シートShが格納された削孔条件シート記憶部PCm1および削孔結果が格納された削孔結果記憶部PCm2を備えている。
【0050】
削孔条件記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShとは、構造物Sの壁に対する削孔条件を設定したシートであり、削孔条件は、構造物Sの厚さ(コンクリート厚)や構造物Sに配された鉄筋の位置、削孔領域の広さなどを考慮して作業者が数値を入力する。但し、AI(Artificial Intelligence:人工知能)など用いて、数値が自動的に入力されるようにしてもよい。後述するように、制御部Cでは、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShを読み込んで削孔を行う。
【0051】
また、削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果とは、構造物Sに開けた孔の削孔結果である。後述するように、制御部Cでは、削孔状態検出部SSから送信された検出情報に基づいて削孔結果を取得して削孔結果記憶部PCm2に格納する。なお、入出力部PCでは、削孔結果が削孔条件とともに出力され、本実施の形態では、当該出力を履歴ファイルFと称している。
【0052】
なお、入出力部PCでは、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShや削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果は、作業者が必要とするときに確認することができるようになっている。
【0053】
また、本実施の形態の削孔システムSYSでは、削孔条件シートShを入力(設定)する入力部と削孔結果である履歴ファイルFを出力する出力部とが一体になった入出力部PCとなっているが、入力部と出力部とは相互に別体になっていてもよい。なお、削孔条件シートShには、キーボード、マウス、タッチパネルなどの様々な入力媒体により数値等が入力される。また、履歴ファイルFは、液晶ディスプレイやプリントアウトされた紙媒体などの様々な出力媒体に出力される。
【0054】
ここで、削孔条件シートShおよび履歴ファイルFについて、図8図14を用いて説明する。図8は構造物Sの壁に対する削孔位置の一例を示す説明図、図9および図10図8の削孔位置に削孔する削孔条件を設定した削孔条件シートSh1,2の一例を示す説明図、図11図9の削孔条件シートSh1に基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図、図12は更新された削孔条件シートSh1の一例を示す説明図、図13は更新された削孔条件シートSh1の他の一例を示す説明図、図14図12の削孔条件シートSh1に基づいて削孔されたときの履歴ファイルの一例を示す説明図である。
【0055】
図8において、丸印が孔を示しており、孔の上に付された数字が削孔順序を兼ねた管理番号となっている。また、(1)~(6)は説明の便宜上付した列番号である。
【0056】
削孔順序は、孔の上の数字が示すように、左上の孔(本実施の形態では、左上隅部から下方に100mm、横方向に50mmの位置にある孔)を1番目とし、そこから縦方向に順次行い、その次の列を同様に縦方向に順次行うようにする。なお、本実施の形態では、上から下に向かって削孔するようになっているが、逆に下から上に向かって削孔するようになっていてもよい。また、図示する場合には、一例として、横500mm、縦850mmの構造物Sに対して削孔する、
【0057】
ここで、(1)~(6)列は、何れも上端から100mmの位置およびそこから下方向に150mm、350mm、500mm、650mmの位置の合計5箇所に削孔されるようになっており、全体として格子状に合計30個の孔(本実施の形態では、例えば深さ200mmの孔)を開けるようになっている。したがって、(1)~(6)列の削孔開始位置は構造物Sの上端から100mmの位置にある各列の最上部の孔であり、そこから順次下方に向かって削孔していく。また、列間隔は、(1)列と(2)列との間が75mm、(2)列と(3)列との間が75mm、(3)列と(4)列との間が100mm、(4)列と(5)列との間が75mm、(5)列と(6)列との間が75mmとなっている。前述のように、本実施の形態の削孔装置Aは、上下方向に1列の削孔を行うものである。したがって、ある列の削孔が終了したならば、作業者が削孔装置Aを列間隔分だけ横方向に移動させて次の列の削孔を行う。
【0058】
図9に示す削孔条件シートSh1(Sh)は図8の削孔に対応したもので、縦方向1列に沿った複数の(ここでは、5個の)孔についての削孔条件を設定したシートである。図示するように、本実施の形態において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件は、孔番号、昇降設定値(縦方向への設定値)、低速深さ設定値(ハンマドリル1による削孔開始から低速回転による削孔深さの設定値)、削孔深さ設定値(ハンマドリル1による最終的な削孔深さの設定値)、削孔無(削孔深さの孔が開けられなかったときに入れるチェックマーク欄)である。
【0059】
前述のように、図8において孔の上に付された数字は管理番号(削孔順序)を示しており、図9の削孔条件シートSh1における削孔番号との対応関係では、図8での(1)列の1番,2番,3番,4番,5番の孔、(2)列の6番,7番,8番,9番,10番の孔、(3)列の11番,12番,13番,14番,15番の孔、(4)列の16番,17番,18番,19番,20番の孔、(5)列の21番,22番,23番,24番,25番の孔、(6)列の26番,27番,28番,29番,30番の孔が、図9の削孔条件シートSh1における削孔番号1,2,3,4,5にそれぞれ対応する。
【0060】
なお、図10に示すように、削孔条件シートSh2(Sh)として、削孔条件シートSh1とは異なる位置や個数の(ここでは、6個の)孔についての削孔条件を設定したシートを設けてもよい。なお、後述するように、削孔条件シートShを複数設けておけば、これらを選択的に用いて削孔を行うことができる。
【0061】
なお、削孔条件は上述した条件に限定されるものではなく、上述した条件の一部がなかったり、上述した条件以外の条件(例えば、削孔速度、削孔速度未満の場合において削孔進行中であることを判断するための所定時間など)が設定されていてもよい。さらに、削孔される孔の数や位置などの数値については、削孔する構造物Sに応じて自由に設定することができるのは言うまでもない。また、削孔位置は、隣接する孔の間隔で設定されていてもよい。
【0062】
本実施の形態の削孔条件シートSh1に基づいて削孔した削孔結果の一例としての履歴ファイル(1)Fを図11に示す。
【0063】
図示するように、履歴ファイル(1)Fには、削孔の開始時間、削孔時間、孔番号、シート番号(削孔条件シートShの番号)、昇降設定値、昇降完了値、壁(構造物S)までの距離計測値、低速深さ設定値、低速での削孔値、削孔深さ設定値、削孔量全長および判定が表示される。「判定」とは、設定した削孔深さの孔を開けることができたか否かの判定であり、開けることができた場合(OK)には「1」、開けることができていない場合(NG)には「2」と表示される。図示する場合には、孔番号3が「2」と表示されている。なお、履歴ファイルFの表示項目はこれらに限定されるものではなく、これらの項目の一部がなかったり、上述した項目以外の項目が表示されるようになっていてもよい。また、本実施の形態では、「2」と判定された孔が一目で確認できるようにするために網掛け表示している。このように、作業者による判定確認の便宜のため、網掛けや色分けなどによって「1」と「2」とが識別できるようになっているのが望ましい。
【0064】
なお、後述するように、履歴ファイル(1)Fは削孔条件シートSh1により縦1列の削孔が終了する度に出力されるので、図8に示すどの列についての履歴ファイルFかを確認することにより、図9に示す削孔条件シートSh1の孔番号と図8に示す孔の管理番号(削孔順序)との対応関係が分かるようになっている。
【0065】
さて、図11に示すように、履歴ファイル(1)Fの判定欄に「2」つまり設定した削孔深さを開けることができなかった孔があった場合、削孔条件シートSh1が更新され、再削孔が行われる。すなわち、図12の更新された削孔条件シートShr1に示すように、孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるとともに、後述するように、ハンマドリル1が削孔途中で鉄筋等に干渉したことが原因で「2」との判定になったと考えられることから、昇降設定値を10mmプラスする。これにより、孔番号3の孔は、当初設定した位置よりも10mm下に削孔されるように再設定される。なお、孔をずらす方向とずらす量とは本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、当初設定した位置よりも5mm上に削孔されるように再設定してもよい。また、削孔位置をずらす位置や数値についても、AI(Artificial Intelligence:人工知能)など用いて自動的に行われるようにしてもよい。
【0066】
なお、前述のように、本実施の形態の削孔装置Aでは縦方向の削孔位置を変更する場合には、当該削孔装置Aを構造物Sに沿って横方向に移動させている。そこで、図11に示すように履歴ファイル(1)Fの判定欄が「2」となった孔を再削孔する場合、図13の更新された削孔条件シートShr1に示すように、孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるだけで昇降設定値は変更せず、削孔装置Aを横方向に例えば10mm移動させるようにしてもよい。
【0067】
更新された図12に示す削孔条件シートShr1を削孔条件記憶部PCm1に格納すると、これを制御部Cが読み込んで、「削孔無」欄にチェックマークが入れられた孔番号3についてのみ再削孔が行われる。このときの履歴ファイル(2)Fの一例を図14に示す。図示するように、当該履歴ファイル(2)Fの「判定」欄は全て「1」となって、全ての孔について、設定した削孔深さに開けることができている。これで、所定の縦方向1列に沿った削孔が終了となる。なお、再削孔しても履歴ファイル(2)Fの「判定」欄が「2」となって設定した削孔深さを開けることができなかった孔があった場合には、履歴ファイルFの「判定」欄が全て「1」になるまで、判定「2」に該当する削孔条件シートShの更新と削孔とを繰り返す。
【0068】
さて、前述のように、制御部Cは、入出力部PCで入力(設定)されて削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShを読み込んで削孔装置Aを駆動して縦方向に削孔する制御を行う。また、削孔状態検出部SSからの検出情報に基づいて削孔結果を取得し、これを入出力部PCに送信する制御を行う。
【0069】
ここで、図7に戻って、制御部Cにより、ハンマドリル1の設置されたテーブル14を昇降させる昇降用モータ13、ハンマドリル1を駆動するドリル駆動用モータ1b、およびハンマドリル1を進退移動させるドリル進退用モータ2dが制御されるようになっている。したがって、削孔装置Aを所定の位置に設置したならば、制御部Cにより削孔条件シートShの設定に沿って削孔が自動的に実行される。また、手動操作部MUにより、昇降用モータ13、ドリル進退用モータ2d、ドリル駆動用モータ1b、およびエアジャッキ40を伸縮駆動するコンプレッサCPが操作可能になっている。したがって、作業者が手動操作部MUを操作することにより、制御部Cによる削孔とは別に、作業者が所望する箇所を削孔することができ、さらに、コンプレッサCPでエアジャッキ40を伸縮させて、削孔装置Aの移動および固定ができる。
【0070】
さて、削孔装置Aの削孔状態を検出する削孔状態検出部SSは、ハンマドリル1の昇降位置を検出する昇降位置検出部(削孔位置検出部)SSaと、ハンマドリル1の前進長に基づいた構造物Sとの距離検出部SSbおよび削孔深さ検出部SScと、エアジャッキ40を伸縮させるエアジャッキ40のストローク検出部SSdとからなる。なお、本実施の形態において、距離検出部SSbおよび削孔深さ検出部SScは、ハンマドリル1の搭載されたガイドレール2aの進退位置を検出する位置センサである。
【0071】
前述のように、削孔状態検出部SSで検出された削孔装置Aの削孔状態は制御部Cに送信される。そして、制御部Cでは、削孔状態検出部SSから送信された様々な検出情報から削孔装置Aによる構造物Sに対しての削孔結果を取得(算出)し、これを入出力部PCに送信し、削孔結果記憶部PCm2に格納する。
【0072】
ここで、本実施の形態の制御部Cでは、構造物Sの削孔中において設定された削孔深さの孔をハンマドリル1が開けることができないと判断した場合には、当該削孔を中止して次の削孔順序の孔を開ける制御を行っている。
【0073】
すなわち、図15に示すように、コンクリート製の構造物Sの内部には鉄筋Bや配管などの埋設物(以下、「鉄筋等」という。)が配されていることから、ハンマドリル1(詳しくは、ハンマドリル1の先端のビット1a)が削孔途中で鉄筋等に干渉した場合、それ以上削孔することはできない。なお、図15では、水平方向に配された鉄筋Bを示しており、そのために断面が円形になっている。
【0074】
そこで、制御部Cにおいて、削孔状態検出部SSから送信された検出情報からハンマドリル1のストローク(前進長)が所定寸法(削孔条件シートShに設定した「削孔深さ設定値」)に達しないときには、ハンマドリル1が鉄筋等に干渉したために削孔条件シートShに設定した削孔深さの孔Hを開けることができないと判断して削孔を中止し、ハンマドリル1を構造物Sから引き抜いて縦方向に移動させ、次の削孔順序の孔Hを開ける。このようにして削孔された複数の孔の削孔結果(削孔条件シートShに設定した深さを開けることができた孔と削孔条件シートShに設定した深さを開けることができなかった孔の結果)は削孔結果記憶部PCm2に格納される。
【0075】
そして、削孔が終了した後、作業者が入出力部PCを操作して、削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果(つまり、直近の削孔結果)に基づいて、削孔条件シートShに設定した深さを開けることができなかった孔に限定して、削孔位置をずらして削孔するように削孔条件シートShを更新して削孔条件シート記憶部PCm1に格納する。
【0076】
したがって、次回では、削孔条件シート記憶部PCm1に格納されている更新された削孔条件シートShを読み込み、前回の削孔において削孔条件シートShに設定した深さを開けることができなかった孔に対してのみ、削孔が行われることになる。
【0077】
ここで、本実施の形態では、ハンマドリル1のストロークに基づいて設定の削孔深さの孔を開けることができているか否かを判断しているが、これ以外を判断材料にしてもよい。たとえば、ハンマドリル1に取り付けられたビット1aの押付圧(フィード圧)を検出する検出部を設けておき、当該検出部に検出される押付圧に基づいて設定の削孔深さの孔を開けることができているか否かを判断することなどが考えられる。すなわち、検出された押付圧が所定圧以上になったときには、ハンマドリル1が鉄筋等に干渉したために設定された削孔深さの孔を開けることができないと判断する。
【0078】
次に、以上の構成を有する削孔システムSYSを用いて、コンクリート製の構造物Sに孔H(ここでは、せん断補強鉄筋Rを挿入するための孔H)を自動的に開ける場合のプロセスについて、図16のフローチャートを用いて説明する。ここでは、図9に示す削孔条件シートSh1の設定条件の下、先ず(1)列の削孔を行い、削孔装置Aを次の列に移動させながら(6)列まで削孔するものとする。なお、ハンマドリル1の削孔速度、削孔が進行しているか停滞しているかを判断するための時間(所定時間)などがデフォルト値として設定されているものとする。
【0079】
先ず、エアジャッキ40を収縮させてローラ31を接地しておき、削孔装置Aを構造物Sに対して所定位置に移動させたならばエアジャッキ40を伸張させて支持フレーム20を接地させ、削孔装置Aをその削孔位置に設置する(ステップSt01)。
【0080】
次に、作業者により、削孔条件シートSh1に削孔条件を入力する(ステップSt02)。本実施の形態では、入力画面からに表示された必要な数値の設定を行う。なお、複数の削孔条件シートShを用いる場合には、例えば入力画面に表示されたシート番号のボタンをクリックして該当番号の削孔条件シートShを読み出して必要な数値の設定を行う。そして、設定を行ったならば、削孔条件シートSh1を削孔条件シート記憶部PCm1に格納する(ステップSt03)。本実施の形態では、入力画面に表示された「書込」ボタンをクリックして格納する。なお、これらステップSt02およびステップSt03は、ステップSt01の削孔装置Aの設置の前にあるいは並行して行ってもよい。
【0081】
次に、制御部Cによって、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートSh1(つまり、構造物Sに削孔する複数の孔の位置(昇降設定値)や削孔深さなどの削孔条件)を読み込む(ステップSt04)。
【0082】
次に、ハンマドリル1を削孔装置Aの上端に移動させる(ステップSt05)。すなわち、作業者が手動操作部MUを操作し、昇降用モータ13でテーブル14を上昇させてハンマドリル1を上端に移動させる。なお、本実施の形態では、ハンマドリル1を上端に移動させているが、任意の位置に移動させてもよい。これは、ここでの移動は、次のステップSt06での距離(ハンマドリル1と構造物Sとの距離)計測のための移動であるから、上端である必要はないからである。
【0083】
続いて、ハンマドリル1と削孔対象となる構造物Sとの距離を計測する(ステップSt06)。すなわち、作業者が手動操作部MUを操作し、ビット1aの回転を停止したままでハンマドリル1を前進させ、一定時間前進がない場合(つまり、ハンマドリル1の前進が止まった場合)、ハンマドリル1(より詳しくは、ハンマドリル1に取り付けられたビット1aの先端)が構造物Sに当接したと判断する。そして、その前進位置でのハンマドリル1の伸張量を距離検出部SSbで検出して、ハンマドリル1と構造物Sとの距離とする。なお、本実施の形態では、ガイドレール2aの進退位置を検出する位置センサで距離計測を行っているが、計測方法はこれに限定されるものではなく、レーザ距離計などの距離計測器を用いて計測したり、作業員が手作業で計測するようにしてもよい。
【0084】
さて、次のステップSt07からは、削孔条件シートSh1を読み込んだ制御部Cによって自動的に実行される。
【0085】
すなわち、ハンマドリル1と構造物Sとの距離計測を行ったならば、ハンマドリル1を削孔開始位置へと移動させる(ステップSt07)。すなわち、昇降用モータ13でテーブル14を昇降移動させて、削孔条件シートSh1に設定された削孔開始位置(つまり、図8における孔番号1の位置)にハンマドリル1を移動させる。なお、ここでは、削孔開始位置(本実施の形態では構造物Sの上端から100mmの位置に対応した位置)が削孔条件シートSh1の昇降設定値0(mm)となっている。
【0086】
次に、ハンマドリル1の駆動を開始する(ステップSt08)。このとき、ハンマドリル1に対しては、相対的に低速回転、低圧打撃の駆動力が加えられる。なお、強弱の調整ができないハンマドリル1の場合には、このステップSt08では単に駆動開始となるとともに、後述するステップSt10およびステップSt11は省略される。
【0087】
次に、ハンマドリル1を前進させて削孔を開始する(ステップSt09)。すなわち、ドリル進退用モータ2dでボールねじ2cを回転させ、スライダ2bをスライドさせてハンマドリル1を前進移動させ、ハンマドリル1先端のビット1aを構造物Sの削孔位置に押し当てて削孔を開始する。
【0088】
削孔を開始したならば、削孔深さ検出部SScによって孔の深さを逐次検出しておき、検出された削孔深さが所定値(ここでは、削孔条件シートShに設定された5mm)に達したかどうかを判断する(ステップSt10)。このステップSt10は、ビット1aが構造物S内に所定深さ入り込むことでハンマドリル1の駆動が安定したかどうかを判断するためのものである。
【0089】
そして、ステップSt10において削孔深さが所定値に達したならば、ハンマドリル1の駆動が安定したと考えられるので、次に、ハンマドリル1を高速回転・高圧打撃で駆動して削孔を行う(ステップSt11)。
【0090】
そして、削孔深さ検出部SScによって検出される孔の深さの推移から、削孔速度が設定値以上であるかを判断する(ステップSt12)。
【0091】
ステップSt12において削孔速度が設定値以上であると判断された場合、削孔が順調に行われていることになるので、削孔深さが削孔条件シートShに設定された設定値に達したと判断されるまで削孔を継続する(ステップSt13)。そして、ステップSt13において、削孔深さが設定値に達したと判断された場合には、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および削孔成功とした判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt14)。なお、ステップSt13および後述のステップSt17で削孔深さが設定値に達したと判断された時点で、ハンマドリル1の前進は停止される。
【0092】
一方、ステップSt12において、削孔速度が設定値以上ではないと判断された場合には、何らかの原因(例えば、構造物Sの硬度など)で削孔速度は設定値未満であるが、設定の削孔深さに向かっての削孔途中との可能性が考えられることから、削孔時間を計測し(ステップSt15)、所定時間内に削孔深さが変化したか否かを判断する(ステップSt16)。
【0093】
そして、ステップSt16において、所定時間内に削孔深さが変化していないと判断された場合には、ハンマドリル1の先端に取り付けられたビット1aが構造物S内の鉄筋等に当たったために削孔が停滞していることになり、削孔を中止して、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および「削孔失敗」とする判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt14)。
【0094】
また、ステップSt16において、所定時間内に削孔深さが変化していると判断された場合には、削孔深さが設定値に達したかが判断され(ステップSt17)、削孔深さが設定値に達したと判断された場合には、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および「削孔成功」との判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt14)。一方、ステップSt17において、削孔深さが設定値に達していないと判断された場合には、削孔を中止して、削孔結果(実際の削孔位置や削孔深さなどの削孔実行値、および「削孔失敗」との判定結果)を削孔結果記憶部PCm2に格納する(ステップSt14)。
【0095】
さて、このようにしてステップSt14において削孔結果を削孔結果記憶部PCm2に格納したならば、ハンマドリル1が後退(ハンマドリル1先端のビット1aが構造物Sから引き抜かれる程度まで後退)して駆動を停止する(ステップSt18)。
【0096】
次に、今回の削孔が最終削孔か否か(ここでは、(1)列の5番目の孔か否か)を判断し(ステップSt19)、最終削孔でない場合には、昇降用モータ13を駆動させて、削孔条件シートSh1に設定された次の削孔位置へとハンマドリル1を移動し(ステップSt20)、前述したステップSt08に移行する。そして、以降のステップを順次実行する。
【0097】
一方、ステップSt19において最終削孔である判断された場合には、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShと、前述のステップSt14において削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果とが対比された一覧表である履歴ファイルFを出力する(ステップSt21)。
【0098】
次に、出力された履歴ファイルFから、削孔条件に不適合の孔(「削孔失敗」と判定された孔)があるか否かを判断する(ステップSt22)。なお、本実施の形態では、このように、制御部Cにより、削孔条件シート記憶部PCm1に格納された削孔条件シートShと削孔結果記憶部PCm2に格納された削孔結果とから、履歴ファイルFに判定として表示されるようになっているが、「判定」の項目がない場合には作業者が判断する。
【0099】
さて、ステップSt22において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件に不適合の孔があると判断された場合には、削孔結果に基づいて削孔条件シートSh1を更新する(ステップSt23)。本実施の形態では、前述のように、孔番号3が削孔失敗となって削孔条件に不適合の孔となっている。削孔条件に適合した孔を開けることができなかった原因としては、ハンマドリル1の先端に取り付けられたビット1aが構造物S内の鉄筋等に当たったためであることが想定されるため、削孔条件シートShの更新に当たっては、設計図面等から鉄筋等の位置を考慮して削孔位置を所定量だけずらす。ここでは、図12に示すように、孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるとともに、昇降設定値を10mmプラスして360mmとする。但し、鉄筋等の位置によっては、前述のように、孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるだけで昇降設定値は変更せず、削孔装置Aを横方向に移動し、孔位置をずらして再削孔するようにしてもよい(図13参照)。なお、この削孔条件シートSh1の更新も、本実施の形態では、作業者が行っているが、前述のように、自動的に行われるようにしてもよい。
【0100】
ステップSt23において削孔条件シートSh1を更新したならば、その更新された削孔条件シートShr1を削孔条件シート記憶部PCm1に格納する(ステップSt24)。その後、制御部Cによって、削孔条件シート記憶部PCm1の更新された削孔条件シートShr1を読み込む(ステップSt25)。そして、孔位置(再削孔する孔の位置)を横にずらすか(つまり、ステップSt23の削孔条件シートSh1の更新において、図13に示すように、孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるだけで昇降設定値は変更せず、孔位置をずらして再削孔するようにしているか)が判断される(ステップSt26)。ここでは、図12に示すように孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるとともに、昇降設定値を360mmとするように削孔条件シートSh1を更新しているので、ステップSt26では孔位置を横にずらさないと判断されて前述したステップSt07に移行する。そして、ステップSt22において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件に不適合の孔(設定した深さに削孔されなかった孔)がないと判断されるまでステップSt07以降のステップを順次実行する。
【0101】
なお、ステップSt23において、図13に示すように孔番号3の「削孔無」欄にチェックマークを入れるだけの更新を行っている場合には、ステップSt26においては孔位置を横にずらすと判断されることから、削孔装置Aを所定量だけ横方向に移動し(ステップSt27)、その後、前述したステップSt07に移行する。
【0102】
一方、ステップSt22において、削孔条件シートSh1に設定された削孔条件に不適合の孔(設定した深さに削孔されなかった孔)がないと判断された場合には、削孔が完了(つまり、構造物Sに対して予定した全ての削孔を行ったか)が判断される(ステップSt28)。ここでは、(1)列の削孔が終了しただけなので、削孔が完了していないと判断され、削孔装置Aを次の列(この場合には、(2)列)に移動する(ステップSt29)。
【0103】
続いて、別の削孔条件シートShに変更するかが判断される(ステップSt30)。本実施の形態の場合には、削孔条件シートShを変更しないので、ステップSt30では変更しないと判断されて前述したステップSt04に移行する。そして、ステップSt28において、削孔が完了した(つまり、構造物Sに対して(1)~(6)列全ての削孔を行った)と判断されるまで以降のステップを順次実行する。
【0104】
なお、ステップSt30において、別の削孔条件シートShに変更する(例えば図9に示す削孔条件シートSh1から図10に示す削孔条件シートSh2に変更する)と判断された場合には、変更した削孔条件シートSh2を読み込んで(ステップSt31)、前述したステップSt04に移行する。そして、ステップSt28において、削孔が完了した(つまり、構造物Sに対して(1)~(6)列全ての削孔を行った)と判断されるまで以降のステップを順次実行する。
【0105】
このように、本実施の形態では、コンクリート製の構造物Sを削孔する際の複数の孔についての削孔順序と削孔位置と削孔深さとを含む削孔条件が設定された削孔条件シートShを読み込み、その削孔条件シートShに基づいて削孔装置Aにより順次削孔するようにし、ハンマドリル1が削孔条件に適合した深さの孔を開けることができなかった孔については、削孔を中止して次の削孔順序の孔を開けている。そして、削孔条件に適合した深さを開けることができなかった孔がある場合には、当該孔に限定して、削孔位置をずらして削孔するように更新した削孔条件シートShに基づいて再削孔している。
【0106】
したがって、ハンマドリル1が削孔条件に適合した深さの孔を開けることができなかった孔については削孔位置をずらして削孔が行われるので、削孔条件に沿った深さの孔を自動的に構造物Sに削孔することが可能になる。
【0107】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0108】
たとえば、本実施の形態においては、削孔機としてハンマドリル1が用いられているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば円筒状ノコ歯ビットが先端に取り付けられたロッドを回転させて削孔するコアドリルなど、コンクリート製の構造物Sを削孔可能な様々な削孔機を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上の説明では、本発明の削孔システムを、コンクリート製の既設の構造物にせん断補強鉄筋を挿入するための孔開けに用いられた場合が示されているが、これに限定されるものではなく、コンクリート製の構造物の孔開けに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 ハンマドリル(削孔機)
1a ビット
1b ドリル駆動用モータ
2 直動部材
2a ガイドレール
2b スライダ
2d ドリル進退用モータ
10 リフタ(昇降手段)
11 リフタフレーム
12 本体部
13 昇降用モータ
14 テーブル
15 スライドガイド
20 支持フレーム
21 ロッド
22 中間ロッド
30 走行フレーム
30a 長尺ロッド
30b 短尺ロッド
31 ローラ
40 エアジャッキ
A 削孔装置
B 鉄筋
C 制御部
CP コンプレッサ
F 履歴ファイル、履歴ファイル(1)、履歴ファイル(2)
H 孔
MU 手動操作部
PC 入出力部
PCm1 削孔条件シート記憶部
PCm2 削孔結果記憶部
R せん断補強鉄筋
Sh,Sh1,2 削孔条件シート
Shr1 更新された削孔条件シート
S 構造物
SS 削孔状態検出部
SSa 昇降位置検出部(削孔位置検出部)
SSb 構造物との距離検出部
SSc 削孔深さ検出部
SSd エアジャッキのストローク検出部
SYS 削孔システム
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