(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】濁りが抑制された発泡性飲料とその製造方法、発泡性飲料の濁り抑制方法、及び酸性飲料の濁り抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 2/70 20060101AFI20240411BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20240411BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20240411BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A23L2/00 K
A23L2/54
A23L2/66
A23L2/00 T
(21)【出願番号】P 2019197093
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018209936
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】根田 隆史
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-208253(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031713(WO,A1)
【文献】特開2013-135645(JP,A)
【文献】特開2017-216891(JP,A)
【文献】特公平06-089044(JP,B2)
【文献】特開2014-217282(JP,A)
【文献】特表2014-509525(JP,A)
【文献】特表2005-528906(JP,A)
【文献】特表2007-533325(JP,A)
【文献】特開2001-218567(JP,A)
【文献】国際公開第2012/135685(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/080175(WO,A1)
【文献】特表平08-504590(JP,A)
【文献】特開2006-223299(JP,A)
【文献】特開2015-167472(JP,A)
【文献】ホップの成分,BrewNote,2016年03月03日,https://brewnote.tokyo/2016/03/ホップの成分/#:~:text=樹脂成分の硬さ,プレフムロンが含まれます。,[検索日2023年8月9日]
【文献】紅茶 - カロリー/栄養成分/計算,カロリーSlism,https://calorie.slism.jp/116044/,[検索日2023年8月9日]
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2010年,58,552-556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/70
A23L 2/54
A23L 2/66
A23L 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及びアラビアガムを含有させること、及びpHを3.5~5.5に調整することを含む、発泡性飲料のタンパク質による濁りの抑制方法(但し、前記発泡性飲料にさらに水溶性大豆多糖類を含有させる方法を除く)。
【請求項2】
加熱殺菌工程を含む、請求項
1に記載のタンパク質による濁りの抑制方法。
【請求項3】
タンパク質を含む酸性飲料のための、アラビアガムを含有する、タンパク質による濁りの抑制剤(但し、さらに水溶性大豆多糖類を含有するものを除く)。
【請求項4】
前記酸性飲料のpHが、3.5~5.5である、請求項
3に記載のタンパク質による濁りの抑制剤。
【請求項5】
前記酸性飲料が、発泡性飲料である、請求項
3又は
4に記載のタンパク質による濁りの抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁りが抑制された発泡性飲料及びその製造方法に関する。また、本発明は、発泡性飲料の濁り抑制方法、及び酸性飲料の濁り抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料は食品と異なり、咀嚼動作がないため食感が嗜好性に与える影響が少なく、形態のバリエーションも多くない。そのため飲料の色、透明感、泡立ち等が与える視覚的情報が人の嗜好性に対して大きな影響を及ぼす。とりわけ発泡性飲料は、泡が上がってくる様子を楽しみながら飲むことから、飲料の透明感が、摂取する人の嗜好や満足感に大きな影響を及ぼす。
【0003】
酸性の飲料にタンパク質が含まれると、濁りが生じる。その結果、飲料の美観を大きく損ない、ひいては嗜好性を損なうことがある。
【0004】
さらに発泡性飲料においては、炭酸を溶かし込むこと等によってpHが低い傾向にある。これまで、酸性飲料の濁りを抑制する方法として、タンパク質の量を低減して透明化を行った例(特許文献1)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のアプローチは、原料由来のタンパク質の含有が不可避の飲料には適用できない。さらに、ビールやビールテイスト飲料では、タンパク質を減少させると泡立ちが減少してしまい、美観や嗜好性が低下する。さらにタンパク質を減少させることは、タンパク質自体又はタンパク質を含む素材が与えるコク等の風味を損なう原因にもなる。
【0007】
そこで、本発明は、上記とは別のアプローチでタンパク質による濁りが抑制された発泡性飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、タンパク質を含む発泡性飲料の濁り抑制方法、及び、タンパク質を含む酸性飲料の濁り抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アラビアガムが、酸性飲料においてタンパク質による濁りを抑制する効果を有することを新たに見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発泡性飲料を提供する。
項1.
タンパク質、及び濁りを抑制するために有効な量のアラビアガム、を含み、pHが3.5~5.5である、濁りが抑制された発泡性飲料。
項2.
前記タンパク質が、植物由来タンパク質である、項1に記載の発泡性飲料。
項3.
前記タンパク質が、エンドウタンパク質である、項1又は2に記載の発泡性飲料。
項4.
前記タンパク質が、発泡性飲料の全量に対して、0.001~2質量%である、項1~3のいずれか一項に記載の発泡性飲料。
項5.
前記アラビアガムが、発泡性飲料の全量に対して、0.0001~3質量%である、項1~4のいずれか一項に記載の発泡性飲料。
【0010】
また、本発明は、以下の発泡性飲料の濁り抑制方法を提供する。
項6.
タンパク質及びアラビアガムを含有させること、及びpHを3.5~5.5に調整することを含む、発泡性飲料の濁り抑制方法。
項7.
加熱殺菌工程を含む、項6に記載の濁り抑制方法。
【0011】
また、本発明は、以下の濁り抑制剤を提供する。
項8.
タンパク質を含む酸性飲料のための、アラビアガムを含有する、濁り抑制剤。
項9.
前記酸性飲料のpHが、3.5~5.5である、項8に記載の濁り抑制剤。
項10.
前記酸性飲料が、発泡性飲料である、項8又は9に記載の濁り抑制剤。
【0012】
さらに、本発明は、以下の発泡性飲料を製造する方法を提供する。
項11.
タンパク質、及び濁りを抑制するために有効な量のアラビアガム、を含有させ、
pHを3.5~5.5とすることを含む、濁りが抑制された発泡性飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タンパク質を極度に減少させなくとも酸性の飲料の濁りを抑制することができるので、視覚的にも風味にも優れた飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】試験例3の各比較例及び実施例の飲料を上面から撮影して得られた写真である。
【
図2】試験例4の各比較例及び実施例の飲料を上面から撮影して得られた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[発泡性飲料]
本発明の発泡性飲料は、タンパク質及び濁りを抑制するために有効な量のアラビアガムを含有し、酸性を示す。
【0016】
(タンパク質)
タンパク質の種類としては、特に限定されないが、例えば、エンドウタンパク質、大豆タンパク質(豆乳等)、緑豆タンパク質、大麦タンパク質、小麦タンパク質(グルテン等)、米タンパク質、野菜由来タンパク質、果実由来タンパク質等の植物由来タンパク質;乳タンパク質(牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、乳清タンパク質、カゼイン、ラクトフェリン等)、卵タンパク質(卵白、アルブミン等)、畜肉・水産物由来タンパク質、ゼラチン、コラーゲン等の動物由来タンパク質;酵母由来タンパク質等の微生物由来タンパク質;又はこれらタンパク質の分解物等が挙げられる。これらのタンパク質は、1種単独であっても、2種以上が含まれていてもよい。中でも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、植物由来タンパク質及び乳タンパク質から選択される1種以上を含むことが好ましく、エンドウタンパク質、大豆タンパク質、及び乳タンパク質からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。とりわけ、エンドウタンパク質は、食物アレルギーの原因となる特定原材料に含まれないという観点から、特に好ましい。
【0017】
本発明の発泡性飲料において、上記のタンパク質は、果実、野菜、乳、豆乳、大麦、醸造用酵母等の原料由来成分として含まれていても、飲食品用に加工されたタンパク質素材として飲料に配合されていてもよい。
【0018】
エンドウタンパク質は、エンドウ(Pisum)属のエンドウの品種から得られる植物性タンパク質である。用いられる品種としては、例えば、サティバム種(黄色エンドウ、Pisum sativum)、アエスチバム種(Pisum aestivum)等であり、好ましくはサティバム種である。エンドウタンパク質は、可溶性タンパク質のグロブリン、アルブミン、及び不溶性タンパク質、の3つの主要なクラスのタンパク質からなる。エンドウタンパク質は、特に限定されないが、例えば、泡安定化(泡持ちの向上)又は乳化安定化に用いることができる。
【0019】
本発明の発泡性飲料に、これらタンパク質が加工されたタンパク質素材として添加されている場合、タンパク質素材の用途としては、特に限定されず、例えば、泡安定化用途、栄養強化用途、乳化用途、風味・呈味付与用途等が挙げられる。
【0020】
本明細書において、タンパク質の含有量は、タンパク質含有量0.1質量%以上においてはケルダール法を用い、タンパク質含有量0.1質量%未満においてはウシ血清アルブミンを標準物質としたLowry法を用いて測定される。
【0021】
本発明において、タンパク質の総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、発泡性飲料の全量に対して、0.001~2質量%とすることが好ましく、0.002~1.6質量%とすることがより好ましく、0.003~1.3質量%とすることが更に好ましく、0.005~1質量%とすることが特に好ましい。
【0022】
(アラビアガム)
本発明で用いるアラビアガムは、マメ科植物であるアカシア属の植物(例えば、アカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal等))の樹液から得られる多糖類である。アラビアガムの分子構造は完全には明らかにされていないが、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、及びグルクロン酸を構成糖とすることが知られている。
【0023】
アラビアガムは商業的に入手することができ、係る製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガムアラビックSD」等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いるアラビアガムとして、前記アラビアガムを改質した、改質アラビアガムを用いることも可能である。改質の方法としては、例えば、90~180℃で15分~72時間加熱処理する方法や、アラビアガムから金属塩を除去又は低減する方法等が挙げられる。アラビアガムから金属塩を除去又は低減する方法としては、例えば、有機溶媒中でのイオン交換処理、電気透析膜、又はイオン交換樹脂等による脱塩処理が例示できる。これら改質アラビアガムは、例えば、特表2006-522202号公報、又は特開2005-179417号公報に記載された方法等に従って製造することができる。
【0025】
前記性質を有する改質アラビアガムは、例えば、特表2006-522202号公報に記載の方法に従って製造することができる。一例として、アカシア・セネガル種に属するアラビアガムを110℃で10時間以上、又はこれと実質的に同じ効果を得ることができる条件下で加熱することによって、前記性質を有する改質アラビアガムを製造することができる。加熱時間の条件としては、例えば72時間が挙げられる。また、前記性質を有する改質アラビアガムは商業的に入手することができ、係る製品として例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「SUPER GUM EM10」等が挙げられる。
【0026】
本発明の発泡性飲料において、アラビアガムの総含有量は、特に限定されないが、発泡性飲料の全量に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下となるように調整することができる。
本発明の効果を顕著に奏する観点からは、アラビアガムの総含有量は、発泡性飲料の全量に対して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0003質量%以上、更に好ましくは0.0006質量%以上、特に好ましくは0.001質量%以上である。
【0027】
(各成分の比)
本発明の発泡性飲料において、タンパク質の総含有量1質量部に対するアラビアガムの総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは0.00005~3000質量部、より好ましくは0.0002~1000質量部、更に好ましくは0.0005~500質量部、特に好ましくは0.001~200質量部である。
【0028】
(pH)
本発明の発泡性飲料は、酸性である。そのpHは、好ましくは3.5~5.5、より好ましくは3.6~5.3、更に好ましくは3.7~5.0、特に好ましくは3.7~4.8であり、さらに嗜好性を高める観点から、最も好ましくは3.7~4.5である。
【0029】
本明細書において、発泡性飲料のpHは、炭酸ガスを加えてから開封直後までの飲料のpHを指す。
【0030】
(発泡性飲料)
本明細書において、発泡性飲料は、20℃における炭酸ガス圧が49kPa以上である飲料を指す。
【0031】
本明細書において、発泡性飲料の炭酸ガス圧の測定は、「炭酸飲料の日本農林規格」(昭和四十九年六月二十七日 (農林省告第五百六十七号))に記載される測定方法を用いて行われる。
【0032】
本発明の発泡性飲料は、食品、医薬品及び医薬部外品を含み、経口により体内に摂取され得る液状組成物であれば、特に限定されないが、例えば、炭酸飲料、発泡性のアルコール飲料、液剤、ドリンク剤等が挙げられ、好ましくは炭酸飲料又は発泡性のアルコール飲料であり、より好ましくはノンアルコール飲料に属する炭酸飲料又は発泡性のアルコール飲料であり、更に好ましくはビールテイスト飲料である。
【0033】
本明細書において、ノンアルコール飲料とは、アルコール飲料に分類される飲料に類似する風味や外観を持つが、アルコール度数が1度未満の飲料全般を指す。このような飲料として、特に限定されないが、例えば、ノンアルコールビール、ノンアルコール酎ハイ、ノンアルコールスパークリングワイン、シャンメリー等が挙げられる。
【0034】
本明細書において、炭酸飲料は、炭酸を含有するアルコール度数1度未満の飲料であり、特に限定されないが、例えば、社団法人日本農林規格協会(JAS)で定められた炭酸飲料として、炭酸水、クラブソーダ、果汁入り炭酸飲料(フルーツソーダ等)、乳性炭酸飲料、フレーバー系炭酸飲料(コーラ、サイダー、ジンジャーエール、メロンソーダ、レモンソーダ、レモンライム、シトロン、ラムネ、コーラ、ガラナ、トニックウォーター、栄養ドリンク等)、ノンアルコール飲料に属する炭酸飲料(ノンアルコールビール、ノンアルコール酎ハイ、ノンアルコールスパークリングワイン、シャンメリー等)等を挙げることができる。
【0035】
本明細書において、アルコール飲料は、飲料中のアルコール度数が1度以上の飲料であり、例えば、酒税法上の「酒」を指すアルコール飲料が挙げられる。特に限定されないが、具体的には、清酒類(清酒、合成清酒)、焼酎、ビール、果実酒類(果実酒、梅酒等の甘味果実酒)、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)、スピリッツ類(スピリッツ)、リキュール類、発泡酒、その他の醸造酒(マッコリ等)、雑酒(粉末酒、その他の雑酒)等を挙げることができる。アルコールを含有する飲料のアルコール度数は、好ましくは、飲料中のアルコール度数が1度以上、より好ましくは1~20度、さらに好ましくは1~10度である。
【0036】
本明細書において、発泡酒とは、麦芽又は麦を原料の一部とした発泡性のあるアルコール飲料で、ビールに該当しないものを指し、具体的には、i)麦芽の使用割合が50%未満のもの、ii)ビールの製造に認められない原料を使用したもの、iii)麦芽を使用せず麦を原料の一部としたもの、のいずれかを満たすものを指す。
【0037】
アルコール飲料のうち、発泡性のアルコール飲料としては、特に限定されないが、例えば、ビール、発泡酒、第三のビール(その他の醸造酒又はリキュールに該当する、麦芽を使用しないか、スピリッツや焼酎等の他のアルコール飲料を添加した、ビールと同様の風味をもつアルコール飲料)、酎ハイ、サワー、ハイボール、スパークリングワイン、ソーダカクテル等が挙げられる。
【0038】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビールと同様の風味をもつアルコール飲料又は清涼飲料を指し、ノンアルコールビール、発泡酒、及び第三のビールを包含する。
【0039】
本明細書において、清涼飲料とは、特に限定されないが、例えばノンアルコール飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜入り混合果汁飲料、果肉飲料、コーヒー飲料、麦芽飲料、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、茶系飲料(緑茶、紅茶、ウーロン茶等)、ゼリー飲料、ココア飲料、チョコドリンク、乳性飲料、エネルギー飲料、健康飲料(薬系ドリンク、健康サポート飲料、機能性清涼飲料、スポーツドリンク、ビネガードリンク、麦芽ドリンク等)、植物性飲料(米、豆乳、アーモンドを主原料とする穀物飲料等)、甘酒、しるこ、スープ飲料、粉末スープ飲料等の、アルコール度数1度未満の飲料を指す。
【0040】
(濁り抑制)
本明細書において、「濁り」とは、溶液が透明でない状態を指し、溶液中に混じっている微小固体が底に沈んでたまる「沈殿」とは区別される。即ち、「濁り」が生じている状態では、溶液中に光を散乱する粒子が溶液中に分散・浮遊して存在するが、一定時間静置しても粒子は沈まず、凝集が進むこともない。より具体的には、12時間静置した後に、溶液の底面に沈殿が生じていないが、溶液が濁っている状態を「濁り」があるものとする。また、本明細書において「濁りの抑制」とは、溶液の濁りを減少させ、透明な状態に近づけることを指す。
【0041】
本発明の発泡性飲料は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、透明度が高いことが好ましい。本発明の発泡性飲料の透明度は、特に限定されないが、例えば波長720nmにおける吸光度によって数値化することができる。そして上記観点から好適な飲料は、波長720nmにおける吸光度が、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下、更に好ましくは0.03以下である。
【0042】
(その他成分)
本発明の発泡性飲料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、タンパク質及びアラビアガム以外の飲料に用いられ得る公知の栄養成分(アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル等);アルコール;酒類;塩類(食塩、塩化マグネシウム、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム等);呈味成分(塩味、うま味等を含む);果汁(濃縮物を含む);果肉;野菜;野菜汁(濃縮物を含む);ピューレ;エキス;甘味料(果糖ぶどう糖液糖、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、マンノース、ラクトース、ハチミツ、水飴等);糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール等);高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムK、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ソーマチン、ステビア、グリチルリチン、モネリン、アリテーム、グリチルリチン酸二ナトリウム、ラカンカ抽出物等);苦味料(イソ-α酸、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ等);酸味料(リン酸、乳酸、グルコン酸カリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸等);香料;着色料(ベニバナ黄色素、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン、果汁色素、野菜色素、合成色素等);食品添加物(食物繊維、乳化剤、pH調整剤、保存料、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール等)、増粘剤、安定化剤、糊料等);医薬品又は医薬部外品の有効成分又は添加剤、等を1種以上含有することができる。
【0043】
本発明の発泡性飲料には、本発明の効果を顕著に奏する観点から、さらにポリフェノール及び/又はカラメル色素を含有することが好ましい。
【0044】
ポリフェノールとしては、特に限定されないが、例えば、カテキン類(カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等);カテキン類重合体;フラボノール類(ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール等)及びその配糖体;フラボン類(アビゲニン、クリシン、ルテオリン等);イソフラボン類(ダイゼイン、ゲニステイン等)及びその配糖体;フラバノン類(ナリンゲニン、へスペレチン等)及びその配糖体;アントシアニジン類(シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等)及びその配糖体;カルコン類;クルクミン類;リグナン類;クマリン類;フェニルカルボン酸類等を挙げることができる。これらのポリフェノールは、1種単独であっても、2種以上が含有されていてもよい。
【0045】
ポリフェノールの由来としては、特に限定されないが、例えばホップ、チャ、ブドウ、コーヒー、リンゴ、カカオ、大豆、イチゴ、ブルーベリー、カシス、柑橘類、ショウガ、ゴマ、ウコン、シナモン、黒豆、グァバ葉等が挙げられ、中でもホップ、チャ、ブドウ、及びコーヒーからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ホップ及び/又はチャを含むことがより好ましく、ホップを含むことが更に好ましい。
【0046】
本発明の発泡性飲料において、ポリフェノールの総含有量は、特に限定されないが、発泡性飲料の全量に対して、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.001~0.5質量%、更に好ましくは0.002~0.1質量%とすることができる。ここで、ポリフェノールの総含有量とは、(+)-カテキンを標準物質としてFolin-Ciocalteu法を用いて得られる(+)-カテキン換算値である。Folin-Ciocalteu法は、「Determination of substances characteristic of green and black tea -Part 1: Content of total polyphenols in tea - Colorimetric method using Folin-Ciocalteu reagent」(ISO 14502-1:2005) の方法に基づく。
【0047】
カラメル色素としては、飲食品に用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、砂糖、ブドウ糖、又は果汁若しくは野菜汁由来の炭水化物を加水分解して得られる糖を熱処理して得られるもの、酸又はアルカリを加えて上記の糖又は炭水化物を熱処理して得られるもの等が挙げられる。
【0048】
カラメル色素は、製法によりクラスI、II、III、IVに分類される。本発明では、そのいずれを用いてもよく、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本明細書において、カラメル色素の含有量は、カラメル色素の固形分換算量(固形分含量)で表される。ここで、固形分含量とは、第8版食品添加物公定書(厚生労働省)に記載されているカラメルIVの純度試験(4)に準じて測定される値である。
【0050】
本発明の発泡性飲料において、カラメル色素の総含有量は、特に限定はされないが、発泡性飲料の全量に対して、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.0005~0.8質量%、更に好ましくは0.001~0.5質量%とすることができる。
【0051】
(容器・提供形態)
本発明の発泡性飲料の提供形態は、特に限定されないが、好ましくは容器詰め飲料として提供される。容器は、特に限定されず、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶等、発泡性飲料に用いられ得る公知の容器を用いることができる。また、家庭用又は業務用の飲料サーバーによって消費者に提供されてもよい。
【0052】
本発明の発泡性飲料は、特に限定されないが、例えば、透明又は半透明、好ましくは透明の容器に充填され得る。係る構成により、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0053】
本発明の発泡性飲料は、容器詰め飲料をグラス、ジョッキ等の開口容器に注いだ態様で消費者に提供されてもよい。係る態様においては、本発明の効果を顕著に奏する観点から、グラス、ジョッキ等の開口容器は透明であることが好ましい。
【0054】
さらに本発明の発泡性飲料は、飲用時に上記成分を上記割合で含むものであればよく、その限りにおいて市場に流通される際の形態や、それに含まれる各成分の配合割合を特に制限するものではない。従って、粉末やシロップ等の濃縮物を、飲用時に希釈(例えば、濃縮飲料、カップベンダーのような、シロップと水、アルコール類又は炭酸水を別々の溶液として飲用時に合わせるタイプのもの等)、溶解(例えば、粉末飲料等)、浸出(例えば、茶葉又はティーバッグ等)して飲用されるものも含まれる。
【0055】
[濁り抑制方法]
本発明の発泡性飲料の濁り抑制方法には、タンパク質及びアラビアガムを含有させること、及びpHを酸性に調整すること、を含む。
【0056】
本発明の発泡性飲料の製造方法において、特に限定されないが、アラビアガムとして、後述の[濁り抑制剤]の項に記載したアラビアガムを含有する濁り抑制剤を用いることが好ましい。
【0057】
本発明の濁り抑制方法の対象となる発泡性飲料のpHは、好ましくは3.5~5.5、より好ましくは3.6~5.3、更に好ましくは3.7~5.0、特に好ましくは3.7~4.8であり、さらに嗜好性を高める観点から、最も好ましくは3.7~4.5である。
【0058】
タンパク質及びアラビアガムを含有させる工程とpHを酸性に調整する工程の順序は特に限定されないが、pHを調整する工程が、タンパク質及びアラビアガムを含有させる工程の後に設けられることがより好ましい。
【0059】
タンパク質及びアラビアガムを含有させる工程において、タンパク質(果汁等の原料として含有されるものを含む)とアラビアガムは同時に含有させてもよいし、別々に含有させてもよい。
【0060】
本発明の発泡性飲料の濁り抑制方法に用いられるタンパク質、アラビアガム、及びその他の成分の種類及び量、発泡性飲料の性状、形態等の詳細は、上記の[発泡性飲料]の項に記載したとおりである。
【0061】
[濁り抑制剤]
本発明のタンパク質を含む酸性飲料のための濁り抑制剤は、アラビアガムを含有する。アラビアガムは、上記の[発泡性飲料]の項に記載したものを用いることができる。
【0062】
本発明の濁り抑制剤の形状は特に制限されない。例えば、固体形状(例えば、粉末状、顆粒状及び錠剤状等)、液体形状(例えば、溶解液、分散液等)等が挙げられる。
【0063】
本発明の濁り抑制剤におけるアラビアガム含有量は、特に限定されないが、濁り抑制剤の全量に対して、例えば、5~100質量%であり、好ましくは10~90質量%、より好ましくは15~85質量%、更に好ましくは20~80質量%である。
【0064】
本発明の濁り抑制剤のうち、固体形状のものについては、更に、賦形剤を含有することが好ましい。賦形剤としては、例えば、澱粉分解物(デキストリン、粉飴等)、糖類(単糖(グルコース、フルクトース等)、二糖(例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等)、オリゴ糖(セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等)、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール等)、還元糖化物等)、食物繊維(例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グァーガム酵素分解物等)等が挙げられる。賦形剤の含有量は、特に限定されないが、濁り抑制剤の全量に対して、例えば、0~90質量%が挙げられ、好ましくは3~80質量%、より好ましくは4~75質量%、更に好ましくは5~70質量%である。
【0065】
その他、本発明の濁り抑制剤には、分散性の向上を目的として、金属塩、乳化剤等を含有させることも可能である。金属塩の種類は特に限定されないが、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩等が挙げられ、具体的には、これらの塩化物、水酸化物、乳酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、リンゴ酸塩等が挙げられる。なお、本発明では、飲食品又は経口医薬品への使用が許可されている金属塩を用いることが好ましい。例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム等が挙げられる。好ましい金属塩は、塩化カルシウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される一種以上である。本発明の濁り抑制剤における金属塩の含有量は、特に限定されないが、濁り抑制剤の全量に対して、例えば、0.1~15質量%が挙げられ、好ましくは0.5~12質量%、より好ましくは0.8~8質量%、更に好ましくは0.8~6質量%、更により好ましくは1~5質量%である。
【0066】
同様に、乳化剤の種類も特に限定されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、キラヤ抽出物、サポニン、ポリソルベート(例、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80)等が挙げられる。本発明の濁り抑制剤における乳化剤の含有量は、特に限定されないが、濁り抑制剤の全量に対して、例えば、0.1~10質量%が挙げられる。
【0067】
本発明の濁り抑制剤には、特に限定されないが、アラビアガム、賦形剤、金属塩、及び乳化剤以外に、さらに飲料に用いられ得る公知の栄養成分、アルコール、酒類、塩類、呈味成分、果汁、果肉、野菜、野菜汁、ピューレ、エキス、甘味料、糖アルコール、高甘味度甘味料、苦味料、酸味料、香料、着色料、食品添加物(食物繊維、pH調整剤、保存料、酸化防止剤、増粘剤、安定化剤等)、医薬品又は医薬部外品の有効成分又は添加剤、等を1種以上配合することができる。これらの成分の具体例は上記の[発泡性飲料]の項で記載したとおりである。
【0068】
本発明の濁り抑制剤において、対象となる酸性飲料への濁り抑制剤の配合量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、酸性飲料の全量に対して、好ましくは0.0001~60質量%、より好ましくは0.0003~40質量%、更に好ましくは0.0006~30質量%、特に好ましくは0.001~20質量%とすることができる。
【0069】
本発明の濁り抑制剤による、対象となる酸性飲料へのアラビアガムの配合量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、酸性飲料の全量に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下となるように調整することができる。
本発明の効果を顕著に奏する観点からは、アラビアガムの配合量は、酸性飲料の全量に対して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0003質量%以上、更に好ましくは0.0006質量%以上、特に好ましくは0.001質量%以上である。
【0070】
本発明の濁り抑制剤において、対象となる酸性飲料は、タンパク質を含有する。含有するタンパク質は上記の[発泡性飲料]の項に記載されたものと同じである。酸性飲料のタンパク質の総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、酸性飲料の全量に対して、0.001~2質量%とすることが好ましく、0.002~1.6質量%とすることがより好ましく、0.003~1.3質量%とすることが更に好ましく、0.005~1質量%とすることが特に好ましい。
【0071】
本発明の濁り抑制剤において、対象となる酸性飲料中のタンパク質の総含有量1質量部に対する、配合する濁り抑制剤のアラビアガムの総含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは0.00005~3000質量部、より好ましくは0.0002~1000質量部、更に好ましくは0.0005~500質量部、特に好ましくは0.001~200質量部である。
【0072】
本発明の濁り抑制剤の対象となる酸性飲料のpHは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは3.5~5.5、より好ましくは3.6~5.3、更に好ましくは3.7~5.0、特に好ましくは3.7~4.8であり、さらに嗜好性を高める観点から、最も好ましくは3.7~4.5である。
【0073】
本発明の濁り抑制剤の対象となる酸性飲料は、食品、医薬品及び医薬部外品を含み、特に限定されないが、例えば、粉末飲料、飲料の濃縮物(シロップ等)、清涼飲料、アルコール飲料、液剤、ドリンク剤等が挙げられる。
【0074】
本発明の濁り抑制剤の対象となる酸性飲料は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは発泡性飲料であり、より好ましくは炭酸飲料又は発泡性のアルコール飲料であり、更に好ましくはノンアルコール飲料に属する炭酸飲料又は発泡性のアルコール飲料であり、特に好ましくはビールテイスト飲料である。
【0075】
さらに本発明の酸性飲料は、飲用時に上記成分を上記割合で含むものであればよく、その限りにおいて市場に流通される際の形態や、それに含まれる各成分の配合割合を特に制限するものではない。従って、粉末やシロップ等の濃縮物を、飲用時に希釈(例えば、濃縮飲料、カップベンダーのような、シロップと水、アルコール類又は炭酸水を別々の溶液として飲用時に合わせるタイプのもの等)、溶解(例えば、粉末飲料等)、浸出(例えば、茶葉又はティーバッグ等)して飲用されるものも含まれる。
【0076】
本発明の濁り抑制剤における、清涼飲料、発泡性飲料、炭酸飲料、アルコール飲料等の飲料の定義は、上記の[発泡性飲料]の項の記載と同じである。
【0077】
本発明の濁り抑制剤に用いられる対象となる酸性飲料に含まれるその他成分の種類及び量、上記以外の条件等の詳細は、上記の[発泡性飲料]の項に記載したものに準ずる。
【0078】
[発泡性飲料の製造方法]
本発明の発泡性飲料の製造方法は、タンパク質、及び濁りを抑制するために有効な量のアラビアガム、を含有させる工程と、pHを酸性とする工程を含む。
【0079】
本発明の発泡性飲料の製造において、特に限定されないが、アラビアガムとして、上記の[濁り抑制剤]の項に記載した、アラビアガムを含有する濁り抑制剤を用いることが好ましい。
【0080】
本発明の発泡性飲料の製造方法において、本発明の効果を顕著に奏し、さらに発泡性を良好とする観点から、エンドウタンパク質を含有する組成物を含有させることが好ましい。このような組成物としては、エンドウタンパク質以外に乳化剤、賦形剤等を適宜加えたものを使用することができる。エンドウタンパク質を含有する組成物としては、食品に使用可能であるものであれば特に限定されないが、例えば、上記の[発泡性飲料]の項で挙げた市販品を用いることができる。
【0081】
本発明の発泡性飲料の製造方法において、エンドウタンパク質を含有する組成物の配合量は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、エンドウタンパク質の含有量に換算して、発泡性飲料の全量に対して、好ましくは0.001~2質量%、より好ましくは0.002~1.6質量%、更に好ましくは0.003~1.3質量%、特に好ましくは0.005~1質量%である。
【0082】
pHを酸性とする工程において、pHは、好ましくは3.5~5.5、より好ましくは3.6~5.3、更に好ましくは3.7~5.0、特に好ましくは3.7~4.8であり、さらに嗜好性を高める観点から、最も好ましくは3.7~4.5に調整される。
【0083】
タンパク質及びアラビアガムを含有させる工程とpHを酸性に調整する工程の順序は特に限定されないが、pHを調整する工程がタンパク質及びアラビアガムを含有させる工程の後に設けられることがより好ましい。
【0084】
タンパク質及びアラビアガムを含有させる工程において、タンパク質(果汁等の原料として含有されるものを含む)とアラビアガムは同時に含有させてもよいし、別々に含有させてもよい。
【0085】
本発明の発泡性飲料の製造には、さらに加熱殺菌工程、ろ過工程、容器充填工程、炭酸注入(カーボネーション)工程等を含むことができる。加熱殺菌工程は、タンパク質及びアラビアガムを含有させる工程よりも後に設けられることが好ましい。加熱殺菌は、特に限定されないが、例えば、120℃で4分間加熱する、飲料の中心部の温度85℃で30分間加熱する、あるいはpH4.0未満の飲料において、飲料の中心部の温度65℃で10分間加熱する、等の条件を用いることができる。また、炭酸注入工程は、加熱殺菌工程及び容器充填工程よりも後に設けられることが好ましい。
【0086】
本発明の発泡性飲料の製造方法に用いられるタンパク質、アラビアガム、及びその他の成分の種類及び量、発泡性飲料の性状、形態等の詳細は、上記の[発泡性飲料]の項に記載したとおりである。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」を意味する。また、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製であることを示し、文中「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0088】
[試験例1.アラビアガムの濁り抑制効果の検証]
表1のように、タンパク質として、エンドウタンパク質(タンパク質含量83%以上)、乳タンパク質(タンパク質含量80%以上)、大豆タンパク質(タンパク質含量90%以上)のいずれかを水に0.05質量%加え、80℃で10分間加熱攪拌した後、20℃に調温し、それぞれの水溶液を得た。この水溶液をpH7に調整したものを参考例1-1~3とし、pH3.8に調整したものを比較例1-1~3とした。また、エンドウタンパク質、乳タンパク質、大豆タンパク質のいずれかを0.05質量%、さらにアラビアガムを0.05質量%となるよう水に加え、同様に80℃で10分間加熱攪拌した後にpH3.8に調整し、実施例1-1~3とした。これらの溶液に対して、不溶性固形分を除くために定性濾紙No.2(保持粒子径5μm、ADVANTEC社製)を用いて吸引濾過処理を行った後、吸光光度計を用いて、波長720nmにおける濁度(OD720)を測定した。濁度測定においては、予め水を用いてゼロ点調整を行った。720nmの光の吸収は、色素等の可視光の吸収による影響を受けないため、溶液の濁りを表すのに用いることができる。OD720が0.02より大きいと、目視でも濁りが観察される。
【0089】
さらに、実施例1-1~3の濁度(A)と、対応するアラビアガムが含まれない対照である比較例1-1~3の濁度(B)から、濁り抑制率(%)を以下の式により求めた。
<濁り抑制率>
濁り抑制率(%)= ((B)-(A))/(B)×100
【0090】
濁度の測定結果を表1に示す。参考例1-1~3と比較例1-1~3をそれぞれ比較すると、いずれのタンパク質も、pH7の場合に比べてpH3.8では濁度が上昇し、濁りが顕著となることがわかる。比較例1-1~3と、それぞれにアラビアガムが加えられた実施例1-1~3を比較すると、アラビアガムが存在することにより、濁度は大幅に減少し、濁りが抑制されることがわかる。
なお、溶液を調製してから測定が完了するまでの間、調製した溶液に沈殿は全く観察されなかった。
【0091】
【0092】
[試験例2.アラビアガム濃度及びpHを変化させたときの濁り抑制効果の検証]
タンパク質としてエンドウタンパク質(タンパク質含量83%以上)を0.05質量%又は0.01質量%とし、アラビアガムを含有しない場合と含有する場合のサンプル水溶液を表2の通り調製した。このサンプル水溶液は、水にエンドウタンパク質とアラビアガムを加えて80℃で10分間加熱攪拌した後、20℃で調温した後、pHを5.5~3.8に調整して得られた。さらに試験例1と同様にして、不溶性固形分を除くための吸引濾過処理を行った後、溶液の濁度(OD720)を測定した。pH5.5~3.8に調整したサンプル水溶液1、2、3、及び4を、比較例2-1、実施例2-1、比較例2-2、及び実施例2-2とする。
各pHにおける濁り抑制率を、対応するpHにおける実施例2-1又は2-2の濁度を(A)、比較例2-1又は2-2の濁度を(B)として、試験例1と同じ式により求めた。
【0093】
【0094】
比較例2-1及び実施例2-1の濁り抑制率を表3に、また比較例2-2及び実施例2-2の濁り抑制率を表4に示す。いずれの場合もアラビアガムによって濁りが顕著に抑制された。
なお、溶液を調製してから測定が完了するまでの間、調製した溶液に沈殿は全く観察されなかった。
【0095】
【0096】
【0097】
[試験例3.アラビアガムを含有する発泡性飲料の製造と濁り抑制効果の検証1]
発泡性飲料として、表5の処方に基づいて比較例3-1、3-2と、実施例3を調製した。まず表5のNo.14にNo.1~13の原材料を加え、10分間攪拌溶解した。次に耐熱容器に充填し、70℃で30分間加熱した後、5℃に調温した。次に試験例1と同様に吸引濾過で不溶性固形分を除いた。得られた溶液のうち、150gをカーボネーターに充填し、炭酸を5分間注入して発泡性飲料とした。
なお、タンパク質として、エンドウタンパク質(タンパク質含量83%以上)を用いた。
【0098】
【0099】
得られた発泡性飲料を透明なカップに高さ10cmまで注ぎ、濁りが判別できるようにカップの下に文字が印刷された紙を敷いて、カップ上面から溶液を撮影した。その結果を
図1に示す。濁りは目視により判定した。比較例3-1のように、アラビアガムを含まない場合には顕著に濁りを生じた。また、比較例3-2のように、0.01質量%のガティガムを含有する場合も、明らかな濁りが観察された。一方、実施例3のように、0.01質量%のアラビアガムを含有する場合は、目視で濁りがなく、清澄な飲料が得られた。
【0100】
なお、溶液を調製してから評価が完了するまでの間、調製した溶液に沈殿は全く観察されなかった。また、実施例3の発泡性飲料は、比較例3-1の発泡性飲料と同等の泡立ちが見られた。即ち、アラビアガムを加えても発泡性飲料の泡立ちに問題ないことがわかった。さらに、風味においても、実施例3-1の発泡性飲料は、比較例3-1の発泡性飲料と同等の風味であり、アラビアガムを加えても発泡性飲料の風味を損なうことはなかった。
【0101】
[試験例4.アラビアガムを含有する発泡性飲料の製造と濁り抑制効果の検証2]
表6の処方に基づいて発泡性飲料を調製した。まず表6のNo.13にNo.1~10の原材料を加え、10分間攪拌溶解した。直火で加熱して沸騰させた後、No.11及び12の原材料を加え、1分間加熱した。全量を補正後に、試験例1と同様に吸引濾過で不溶性固形分を除いた。得られた溶液のうち、150gをカーボネーターに充填し、炭酸を5分間注入して発泡性飲料とした。
なお、タンパク質として、エンドウタンパク質(タンパク質含量83%以上)を用いた。
【0102】
【0103】
試験例3と同じ方法で濁りを評価した。その結果を
図2に示す。濁りは目視により判定した。比較例4-1、4-2のように、タンパク質を0.5質量%又は0.01質量%含有し、アラビアガムを含まない場合には顕著に濁りを生じた。特に比較例4-1は強い濁りを生じた。一方、実施例4-1、実施例4-2のようにアラビアガムを含有する場合は、いずれも目視で濁りがなく、清澄な飲料が得られた。
【0104】
なお、溶液を調製してから評価が完了するまでの間、調製した溶液に沈殿は全く観察されなかった。また、実施例4-1及び実施例4-2の発泡性飲料は、それぞれの対照である比較例4-1及び比較例4-2の発泡性飲料と同等の泡立ちが見られた。即ち、アラビアガムを加えても発泡性飲料の泡立ちに問題ないことがわかった。さらに、風味においても、実施例4-1及び4-2の発泡性飲料は、比較例4-1及び比較例4-2の発泡性飲料と同等の風味であり、アラビアガムを加えても発泡性飲料の風味を損なうことはなかった。