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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】複合成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/35 20060101AFI20240411BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240411BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240411BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08J9/35 CFC
B32B5/18 101
C08L101/00
C08K7/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020018925
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123667
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 敏夫
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181749(JP,A)
【文献】特開2019-085517(JP,A)
【文献】特開2017-043011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B32B 1/00-43/00
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着され、圧縮された状態で形状維持されてなる複合成形体であって、
前記熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)とを含み、
前記熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)が、エポキシ化合物とイミダゾール化合物とを含有し、前記熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)が、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物を含有し、
該複合成形体の密度が0.05~0.5g/cm3であり、
100℃で20分加熱したときの該複合成形体の体積膨張率が15~200%である、複合成形体。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)に対する、前記熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)の質量比(a/b)が0.03~2である、請求項に記載の複合成形体。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂バインダーに対して、更に強化繊維が配合されている、請求項1又は2に記載の複合成形体。
【請求項4】
前記複合成形体中の前記熱硬化性樹脂バインダーの含有量が、15~70質量%である、請求項1~のいずれか1つに記載の複合成形体。
【請求項5】
前記発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステル系樹脂である、請求項1~のいずれか1つに記載の複合成形体。
【請求項6】
100℃で20分加熱したときの前記複合成形体の体積膨張率のうち、一軸方向の膨張率が全膨張率の50%以上である、請求項1~のいずれか1つに記載の複合成形体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載の複合成形体とシート材とが積層され、前記熱硬化性樹脂バインダーが硬化してなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形体、その製造方法、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軽量化のための材料や断熱材、緩衝材、防音材等として発泡樹脂が広く用いられている。また、その強度等の機械的特性を向上させるため、様々な検討がなされている。
たとえば、特許文献1には、軽量で高い曲げ強度を発現することを目的として、複数の樹脂発泡小片間に熱硬化性樹脂原料を含侵し硬化させることによる、特定の物性を有する複合成形体が開示されている。
特許文献2には、熱可塑性樹脂発泡体とバインダー樹脂と強化繊維とを含む、優れた機械物性を示す繊維強化発泡体が開示されている。
【0003】
更に、サンドイッチパネル等、他の材料との積層体とすることによって、発泡樹脂の特性を活かしつつ強度等の物性を向上させる試みもなされている。
たとえば、特許文献3には、機械的強度、衝撃吸収性、軽量性に優れた複合体の効率的な製造方法として、合成樹脂が含侵された強化繊維を含む形成材を加熱し、その上に発泡粒子を載置し、金型に沿って仮賦形する繊維強化複合体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-017190号公報
【文献】特開2017-061600号公報
【文献】特開2015-047757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の発泡樹脂積層体では、芯材となる発泡樹脂と表面材等となるシート材等を接着する際に、押圧して接着させる必要があることから、芯材の寸法が金型寸法からわずかにずれていたり、シート材が変形しやすい場合には、発泡樹脂とシート材との積層面に均一に押圧力を加えることが難しく、一部が剥がれやすくなったり、金型通りの積層体が得られにくいという問題があった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、シート材等の他素材との接着性に優れる複合成形体、その製造方法、及び前記複合成形体とシート材とからなる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に記載の<1>~<9>を提供する。
<1> 熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着されている複合成形体であって、該複合成形体の密度が0.05~0.5g/cm3であり、100℃で20分加熱したときの該複合成形体の体積膨張率が15~200%である、複合成形体。
<2> 前記熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)とを含む、前記<1>に記載の複合成形体。
<3> 前記熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)が、エポキシ化合物とイミダゾール化合物とを含有し、前記熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)が、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物を含有する、前記<2>に記載の複合成形体。
<4> 前記熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)に対する、前記熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)の質量比(a/b)が0.03~2である、前記<2>又は<3>に記載の複合成形体。
<5> 前記熱硬化性樹脂バインダーに対して、更に強化繊維が配合されている、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<6> 前記複合成形体中の前記熱硬化性樹脂バインダーの含有量が、15~70質量%である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<7> 前記発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステル系樹脂である、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<8> 100℃で20分加熱したときの前記複合成形体の体積膨張率のうち、一軸方向の膨張率が全膨張率の50%以上である、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<9> 前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の複合成形体とシート材とが積層され、前記熱硬化性樹脂バインダーが硬化してなる積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合成形体は、熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着された、特定の密度の複合成形体であり、特定の体積膨張率であることにより、加熱したときに特定の膨張力で複合成形体を膨張させることが可能となる。このような特性を有する複合成形体は、積層体を得る際に、金型の形状に関わらず均一に膨張し、シート材に対して均等な押圧力で接着することができるため、得られる積層体は接着性に優れるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[複合成形体]
本発明の複合成形体は、熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着された複合成形体であって、該複合成形体の密度が0.05~0.5g/cm3であり、100℃で20分加熱したときの該複合成形体の体積膨張率が15~200%である。本発明の複合成形体としては、例えば、プレス成形体が挙げられる。
【0009】
<複合成形体の組成及び特性>
本発明の複合成形体は、熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着された複合成形体であり、100℃で20分加熱したときの体積膨張率が15~200%である一方で、非加熱時には密度が0.05~0.5g/cm3を維持するという特徴を有するものである。
本発明における好適な複合成形体は、後述する方法等により、複合成形体が圧縮された状態で形状維持されており、加熱時には圧縮状態が開放されることによって特定の膨張力を発揮できるものである。
【0010】
本発明の複合成形体の密度は、0.05~0.5g/cm3であり、0.05~0.3g/cm3が好ましく、0.06~0.2g/cm3がより好ましく、0.07~0.1g/cm3が更に好ましい。密度は標準状態において、外形寸法又は水没法で求められる。なお、上記複合成形体の密度は、複合成形体が圧縮状態にあるときの密度である。
複合成形体の密度が前記の範囲内であることで、特定の圧縮状態となるので膨張力を有し、かつ軽量性を有しつつ、完全硬化後には強度に優れる複合成形体となる。
【0011】
本発明の複合成形体の100℃で20分加熱したときの体積膨張率は、15~200%であり、18~150%が好ましく、20~100%がより好ましく、50~80%が更に好ましい。体積膨張率は、加熱前の体積を基準とした加熱後に増加した体積の割合である。本発明の複合成形体は、圧縮した状態で形状が維持されており、加熱時には圧縮状態が開放されて特定の膨張力を発揮するため、上記の膨張率を有するものとなる。
複合成形体の膨張率が前記の範囲内であることで、シート材との積層体を得る際に金型に設置しやすく、膨張させたときにシート材と密着しやすく、接着性に優れる積層体を得ることができる。更に積層体を得る際に、プレス機等の複雑な成形機を必要とせず、目的の形状の金型に充填し、加熱するのみでシート材と複合成形体とを積層させ、前記熱硬化性樹脂バインダーを硬化させ、シート材と複合成形体とを接着させて、容易に積層体を得ることができる。
なお、前記膨張率の調整は、複合成形体を形成する際の圧縮率に依存するため、複合成形体を形成する際の圧縮率を調整して、前記複合成形体の膨張率を前記範囲に調整することが好ましい。
前記体積膨張率は、具体的には、加熱前の複合成形体の体積と加熱後の複合成形体の体積とを、外形寸法又は水没法などにより測定し、加熱後の複合成形体の体積を加熱前の複合成形体の体積で除して百分率で表記し、100を減じた値である。
【0012】
また、本発明の複合成形体の100℃で20分加熱したときの、特定の一軸方向の膨張率が、他の方向の膨張率より大きいことが好ましい。
具体的には、前記特定の一軸方向の膨張率が、10~150%が好ましく、12~100%がより好ましく、15~80%が更に好ましく、30~60%がより更に好ましい。
ここでいう一軸方向の膨張率とは、加熱後の複合成形体の特定の一軸方向の全長を加熱前の複合成形体の同一の一軸方向の全長で除して百分率で表記し、100を減じた値である。なお、複合成形体の一軸方向の全長は、当該方向におけるもっとも長い部分の長さをいい、本明細書中において、膨張率を求める際の加熱後の全長は、加熱前の全長を測定した部分と同一の部分についての加熱後の長さをいう。
特定の一軸方向は、成形体が板状、あるいは直方体、略直方体、立方体、略立方体である場合、最も面積の大きい面に垂直な方向(Z軸方向。厚み方向)であることが好ましい。
前記のように特定の一軸方向の膨張率が大きいことで、特に片面あるいは両面にシート材を有するサンドイッチパネル様の積層体を効率的に得ることができる。
一軸方向の膨張率を制御するには、圧縮方向を前記一軸方向と平行である方向に制御することによって調整することが好ましい。
【0013】
また、一軸方向の膨張率が全膨張率の50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。一軸方向の膨張率が全膨張率の50%以上であるとは、上記一軸方向の膨張率を前記複合成形体の体積膨張率で除した値の百分率が50%以上であることをいう。
【0014】
本発明の複合成形体は、板状成形体であることが、効率よく積層体を得ることができる観点から好ましい。板状成形体は、表面に凹凸を有しているものであってもよい。前記板状成形体における、100℃で20分加熱したときの厚み方向の膨張率は、10~150%であることが好ましく、20~100%であることが更に好ましい。
ここでいう厚み方向の膨張率とは、加熱後の複合成形体の厚み方向の全長を加熱前の複合成形体の厚み方向の全長で除して百分率で表記し、100を減じた値である。
【0015】
本発明の複合成形体の空隙率は、40体積%以下であることが好ましく、0.1~40体積%であることがより好ましく、1~30体積%であることが更に好ましい。複合成形体の空隙率が上記範囲内であれば、膨張率に優れ、前記の膨張率を達成できる複合成形体を形成することができる。
【0016】
<熱硬化性樹脂バインダー>
本発明の複合成形体は、前記の熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着されており、該熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)とを含むことが好ましい。
本発明における好適な複合成形体は、後述する方法等により、複合成形体が圧縮された状態で形状維持されており、加熱時には圧縮状態が開放されることによって特定の膨張力を発揮できるものであるが、熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)とを含むことによって、次のように本発明の効果を高めることができるものと考えられる。
すなわち、非加熱時には、熱硬化性樹脂バインダーが硬化状態の熱硬化性樹脂(b)と未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)とを含むと共に、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)の流動性が低下することによって、膨張力を複合成形体内に封じ込めて圧縮状態の形状を維持することができ、一方で、熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)を含有することによって、100℃程度の高温に加熱した際には流動性を発現し、複合成形体は高い膨張率で膨張することが可能となると考えられる。
【0017】
複合成形体中の前記熱硬化性樹脂バインダーの含有量は、10~70質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、15~50質量%であることが更に好ましく、15~30質量%であることがより更に好ましい。
熱硬化性樹脂バインダーの含有量が前記の範囲であると、低温状態においては圧縮状態の形状を保持しつつ、高温状態では膨張力を発揮することができ、圧縮状態の維持と膨張率とのバランスに優れる。
【0018】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂バインダーを構成する熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂との接着性に優れる観点から、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂のうちの1種、又は2種以上の組合せが好ましく、エポキシ系樹脂であることが更に好ましい。
【0019】
(熱硬化性樹脂バインダーの組成及び特性)
本発明の複合成形体を構成する熱硬化性樹脂バインダーは、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)とを含むことが好ましい。
熱硬化性樹脂が未硬化状態であるとは、標準状態において、熱硬化性樹脂の硬化が進んでいない状態のみならず、硬化が進み始めているが、完全に硬化していない状態(半硬化状態)も含む。
このような、熱硬化性樹脂バインダーが実質的に未硬化の状態であり、かつ常温において固体状ないし半固体状を示す形態は、一般に「Bステージ」と呼ばれる形態である。
前記熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)を含むことによって、非加熱時には流動性が低下した状態となって特定の圧縮状態を保持することが可能となる。一方で加熱時には流動性が発揮され、高い膨張力を有するものとなる。
【0020】
熱硬化性樹脂が硬化状態であるか未硬化状態であるかの確認は、JIS K7122-1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して行い、熱硬化性樹脂の硬化発熱ピークが観測される場合には、未硬化状態であると判断することができる。熱硬化性樹脂の硬化発熱ピークは110~180℃で観測されることが好ましく、120℃~170℃で観測されることがより好ましい。また、硬化発熱ピークの熱量は3J/g以上であることが好ましく、5J/g以上であることがさらに好ましい。
【0021】
一方、熱硬化性樹脂バインダーが硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことで、複合成形体の形成過程において、発泡粒子間の空隙や発泡粒子を、圧縮された状態で効率的に形状保持させることができる。
【0022】
このような未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)とを含む熱硬化性樹脂バインダーを得る方法としては、たとえば、反応性の異なる複数の熱硬化性樹脂を存在させて反応性の高い成分のみを硬化させる方法、熱硬化性樹脂の硬化反応を制御して一部のみ硬化させる方法、反応性の異なる複数の硬化剤を存在させる方法などが挙げられるが、反応性の異なる複数の硬化剤を存在させる方法を用いることが、均質なバインダーを得る観点から好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)に対する熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)の質量比(a/b)は、0.03~2が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.1~0.7が更に好ましく、0.2~0.5がより更に好ましい。具体的な測定方法としては、複合成形体の原料(発泡粒子混合物)、複合成形体、複合成形体を加熱して完全に硬化したものの3種類の試料について、前記熱硬化性樹脂が硬化状態であるか未硬化状態であるかの確認方法を実施して、硬化発熱ピークの熱量の比率によって算出することができ、また、検量線法などにより前記膨張率から逆算して算出することもできる。
【0024】
例えば、熱硬化性樹脂バインダーに硬化剤を用いる場合、硬化剤の添加量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは25質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。また、硬化剤の添加量によって、硬化状態の熱硬化性樹脂の量を調整することができる。
また、反応性の異なる複数の硬化剤を用いて、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)と硬化状態の熱硬化性樹脂(b)の量を調整する場合、反応性の高い硬化剤と、反応性の低い硬化剤との質量比(高反応性硬化剤/低反応性硬化剤)は、0.03~2が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.1~0.7が更に好ましく、0.2~0.5がより更に好ましい。
なお、反応性の高い硬化剤とは、例えば、硬化温度が80℃以下の硬化剤が挙げられ、より好ましくは、70℃以下の硬化剤である。
【0025】
本発明の複合成形体に好適に用いられる熱硬化性樹脂バインダーを構成する熱硬化性樹脂は、前記の通り、エポキシ樹脂であり、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合には、熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)が、エポキシ化合物とイミダゾール化合物とを含有し、前記熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)が、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物を含有することが好ましい。
以下に、好適な熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂バインダーについて説明する。
【0026】
(熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b))
本発明において、熱硬化性樹脂バインダーは、硬化状態の熱硬化性樹脂(b)として、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物を含有することが好ましい。エポキシ化合物とアミン化合物の反応物は、エポキシ化合物とアミン化合物を原料として用い、複合成形体の圧縮成形時に、エポキシ化合物とアミン化合物が反応する条件で成形することで、圧縮状態の形状維持が可能となる。
このように、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂バインダーにおいて、アミン化合物は前述の反応性の高い硬化剤として機能する。
硬化状態の熱硬化性樹脂(b)を構成するエポキシ化合物とアミン化合物は、比較的低温で反応が進行するため、圧縮状態の維持をより効果的に行うことが可能となる。
【0027】
前記熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態の熱硬化性樹脂(b)を構成するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ系樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ系樹脂;脂環式エポキシ系樹脂;グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂;グリシジル化アミン型エポキシ系樹脂;ハロゲン化エポキシ系樹脂;或いは、グリシジル化ポリエステル、グリシジル化ポリウレタン、グリシジル化アクリル等のエポキシ基含有モノマーもしくはオリゴマーの付加重合体等が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0028】
一方、アミン化合物としては、ポリアミン化合物、芳香族環を有する脂肪族アミン、芳香族アミンを用いることができる。
ポリアミン化合物としては、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミンが挙げられる。
鎖状脂肪族ポリアミンとしてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、AMINE248などが例示される。環状脂肪族ポリアミンとしては、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、1,3-ビズ(アミノメチル)シクロヘキサンなどが例示される。
芳香族環を有する脂肪族アミンとしては、キシリレンジアミン誘導体などが例示される。芳香族アミンとしては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンなどが例示される。
これらのアミン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
また、これらの中でも、比較的低温で硬化反応を行う観点からは、ポリアミン化合物が好ましく、脂環式ポリアミン化合物がより好ましい。
【0029】
(熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a))
本発明において、熱硬化性樹脂バインダーは、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)として、エポキシ化合物とイミダゾール化合物を含有することが好ましい。前記のように熱硬化性樹脂バインダーに未硬化状態のエポキシ化合物とイミダゾール化合物とを含む場合、これらは圧縮成形により成形された複合成形体中で、流動性が低下した未硬化状態で存在し得る。
そして、シート材との積層体を得る際の加熱工程においては、膨張が終了するまで流動性を保ち、その後のシート材との接着工程によって完全に硬化して積層体を得ることが可能となる。上記観点から、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)が、圧縮成形工程の温度以下では流動性が低下した状態で存在することが好ましく、且つシート材の積層工程における加熱時には未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)の流動性が低下した状態から流動状態を経て、シート材の接着後には完全に硬化される状態となることが好ましい。
【0030】
前記熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)を構成するエポキシ化合物としては、硬化状態の熱硬化性樹脂(b)を構成するエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。
一方、イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2-フェニルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-トリメチレンベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加塩等が挙げられる。
【0031】
すなわち、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、複合成形体の熱硬化性樹脂バインダーには、硬化状態の熱硬化性樹脂(b)として、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物が、そして、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)として、エポキシ化合物とイミダゾール化合物との混合物が存在することが好ましい。
前記熱硬化性樹脂バインダー中の前記エポキシ化合物とイミダゾール化合物との合計質量に対する、前記熱硬化性樹脂バインダー中のエポキシ化合物とアミン化合物との合計質量の配合比は、0.03~2が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.1~0.7が更に好ましく、0.2~0.5がより更に好ましい。
熱硬化性樹脂バインダーの原料中のアミン化合物とイミダゾール化合物との質量比(アミン化合物/イミダゾール化合物)は、0.03~2が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.1~0.7が更に好ましく、0.2~0.5がより更に好ましい。
【0032】
(無機充填剤等)
熱硬化性樹脂中に強化繊維に加えて無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤としては、ガラス粉体や、一般的に無機フィラーと呼ばれるものでシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、ほう砂、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム及びこれらの2以上の併用が例示される。これらの中でも、シリカ、酸化マグネシウムが好ましい。
【0033】
これらの無機充填材は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、好ましくは5~150質量部、より好ましくは10~100質量部混合される。これらの無機充填材は、硬化前の熱硬化性樹脂液体原料に充分に分散させておくことが好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂バインダーは、本発明の目的を阻害しない範囲において、増量剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難然剤、防カビ剤、可塑剤、カップリング剤、電気伝導性フィラー、磁性体フィラー、熱伝導性フィラー、帯電防止剤、弾性微粒子等の改質剤を必要に応じて含有してもよい。特に難燃性を得るためには難燃剤を含有することが好ましい。
【0035】
<強化繊維>
本発明の複合成形体は、強化繊維が含まれることが好ましく、熱硬化性樹脂バインダーに対して、更に強化繊維が配合されていることがより好ましい。すなわち、本発明の複合成形体には、強化繊維が含まれ、該強化繊維は前記熱硬化性樹脂バインダー中に存在することが好ましい。
強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、セラミックス繊維、スチール繊維、ステンレス(SUS)繊維、アルミニウム繊維、ホウ素繊維及びこれらの2以上の併用が挙げられる。これらの中でも高強度性、汎用性、経済性等の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ビニロン繊維が好ましく、ガラス繊維、炭素繊維がより好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂バインダー中の熱硬化性樹脂と、強化繊維との質量比(熱硬化性樹脂/強化繊維)は、5/95~95/5が好ましい。上記質量比は、熱硬化性樹脂の強度と複合成形体の膨張率のバランスを取る観点から、30/70~85/25が好ましく、50/50~75/25がより好ましい。
【0037】
強化繊維の平均長さ(L)は、0.05mm以上1mm以下が好ましい。上記範囲内であれば、繊維の絡み合いが生じやすく耐衝撃性能が向上し、繊維の均一分散がより容易となる。
【0038】
強化繊維における繊維長(L)と繊維直径(D)の比(L/D)は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、そして、その上限は100以下が好ましい。上記範囲内であれば、機械的特性の向上効果が高くなり、特に耐衝撃性に優れた複合成形体を形成することができる。
なお、強化繊維の繊維長(L)と繊維直径(D)は、電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。なお、平均値として母数を500以上として繊維長(L)と繊維直径(D)を算出する。
【0039】
また、強化繊維を含む場合には、強化繊維と熱硬化性樹脂との濡れ性を向上させるために、複合成形体には分散剤が含まれることが好ましく、前記熱硬化性樹脂バインダー中に存在することが好ましい。分散剤としては、高分子量コポリマーのアルキルアンモニウム塩を好適に用いることができる。分散剤は、熱硬化性樹脂バインダー中に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.1~5質量部含有されることが好ましく、0.2~3質量部含有されることがより好ましい。
【0040】
<熱可塑性樹脂発泡粒子>
本発明の複合成形体における熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0041】
ポリエステル系樹脂としては、通常、ジカルボン酸と二価アルコールとを縮重合させてなる線状ポリエステルを採用することができる。ポリエステル系樹脂としては、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられ、脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0042】
芳香族ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルである。芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0043】
脂肪族ポリエステル系樹脂は、その主鎖に脂肪族エステルを主成分として含むものである。その脂肪族エステルの主鎖中の含有割合は、少なくとも60モル%、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%の割合である。脂肪族ポリエステル系樹脂には、ヒドロキシ酸重縮合物、ラクトンの開環重合物及び多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合体等が包含される。ヒドロキシ酸重縮合物としてはポリ乳酸、ヒドロキシ酪酸の重縮合物等が挙げられる。ラクトンの開環重合物としてはポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン等が挙げられる。多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合体としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性樹脂の硬化時の発熱による発泡粒子の減容を防止する観点からは、ポリ乳酸系樹脂が好ましい。
【0044】
ポリ乳酸系樹脂は、結晶性を有することが好ましい。結晶性を有することにより、複合成形体の製造時に、発泡粒子が減容したり、発泡粒子が熱収縮を起こして熱硬化性樹脂との界面に隙間を生じたり、複合成形体及び積層体にヒケが生じたりしてしまうことを防止、抑制することができる。
【0045】
結晶化度の高いポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得る方法は、特に限定されないが、例えば、発泡工程において加熱処理を行い、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進させて発泡粒子を得る方法、発泡粒子を65℃以上の雰囲気下で熱処理する方法が挙げられる。なお、発泡粒子を熱処理する温度は66~80℃が好ましく、67~75℃が更に好ましい。また、熱処理時間は8時間以上が好ましい。
【0046】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン成分を50質量%以上含有する樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度及び融解温度の少なくともいずれかは、複合成形体及び積層体の耐熱性の観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは120℃以上であり、そして、熱可塑性発泡粒子の生産性の観点から、好ましくは400℃以下であり、より好ましくは200℃以下であり、更に好ましくは180℃以下である。
【0048】
熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、熱可塑性樹脂発泡粒子を脱泡せずに、JIS K7121-1987により熱流束示差走査熱量測定にて得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求める。なお、ガラス転移温度を求めるための試験片はJIS K7121-1987の「3.試験片の状態調節(3)」に記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠して試験片をDSC装置の容器に入れ、200℃まで10℃/分にて昇温して加熱溶解させ、直ちに0℃まで10℃/分にて冷却する状態調整を行ったものを試験片とする。
【0049】
熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂の融解温度の測定は、熱可塑性樹脂発泡粒子を脱泡せずに、JIS K7121-1987に準拠し、熱流束示差走査熱量測定により測定される値である。具体的には、JIS K7121-1987の「3.試験片の状態調節(2)」の条件(但し、冷却速度10℃/分)により試験片を状態調整した試験片を使用して、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得、得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。但し、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0050】
熱可塑性樹脂発泡粒子としては、樹脂粒子から発泡粒子を得たものの他、発泡ストランド、発泡成形体及び押出発泡体の粉砕物等が挙げられる。さらに、該発泡粒子としては、発泡粒子内に貫通孔からなる空隙を有する、特開平08-108441号公報等に記載の、筒状形状の発泡粒子を使用することもできる。なお、筒状形状の発泡粒子を用いた場合には、熱硬化性樹脂は、少なくとも発泡粒子の外面側に付着する。
なお、樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。かかる樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に略対応した形状、上記の円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等に対応した発泡粒子となる。
【0051】
発泡粒子の粒径は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。上記範囲内であれば、複合成形体の強度の向上に好適である。なお、発泡粒子の粒子径は、少なくとも100個以上の発泡粒子の最大外形寸法として測定される値の平均値である。
【0052】
さらに、本発明に用いられる発泡粒子としては、発泡層のみからなる単層の発泡粒子だけではなく、多層構造の発泡粒子を用いることができる。なお、多層構造の発泡粒子とは、具体的には、発泡した芯層と、該芯層を被覆する被覆層とからなる発泡粒子が例示できる。また、被覆層は発泡状態であっても非発泡状態であってもよい。
【0053】
前記多層構造の発泡粒子としては、例えば、結晶構造を有するポリ乳酸樹脂を芯層に用いることが好ましく、結晶化しない或いはほとんど結晶化しないポリ乳酸樹脂(以下、併せて低結晶性ポリ乳酸系樹脂という)を被覆層に用いることが好ましい。低結晶性ポリ乳酸系樹脂は、熱硬化性樹脂に溶解又は膨潤しやすい特性を有することから、被覆層のポリ乳酸系樹脂が低結晶性であると、熱硬化性樹脂液体原料との親和性が高くなる。一方、結晶構造を有するポリ乳酸系樹脂は、熱硬化性樹脂液体原料に対して溶解や膨潤され難いことから、芯層のポリ乳酸樹脂が結晶構造を有していると、発泡粒子の形状が維持され易くなる。上記のようなポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、例えば、特開2012-025869号公報に記載の方法により調製することができる。
【0054】
本発明の複合成形体に用いられる発泡粒子の嵩密度は、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは20kg/m3以上、更に好ましくは30kg/m3以上であり、そして、好ましくは250kg/m3以下、より好ましくは200kg/m3以下、更に好ましくは150kg/m3以下である。上記範囲内であれば、軽量化効果が高い上に、圧縮工程によって、良好な膨張力を有する複合成形体を得ることができる。
なお、発泡粒子の嵩密度は、次のようにして求めることができる。メスシリンダー等の容器内に自由落下によって発泡粒子を充填した後、容器を振動させ、その体積が恒量に達したときの目盛りを読んで発泡粒子の嵩体積を求める。容器内に充填された発泡粒子の全重量を該嵩体積で割算することにより発泡粒子の嵩密度を求める。
【0055】
発泡粒子の1個当りの重量(粒子重量)は、発泡粒子の独立気泡率を高く維持する観点から、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは0.5mg以上であり、さらに好ましくは0.8mg以上である。そして、好ましくは20mg以下、より好ましくは5mg以下である。
なお、粒子重量は、100個の粒子を無作為に選び、選んだ100個の粒子をまとめて重量を測定し、測定した重量を100で割り算した値を算出し、平均粒子重量とする。
【0056】
本発明の複合成形体に用いられる好適な発泡粒子の具体例としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂発泡体である株式会社ジェイエスピー製の商品名「LACTIF(登録商標)」が挙げられ、なかでも嵩密度が15~200g/Lである発泡粒子等が好ましく例示される。また、特公昭53-1313号公報、国際公開第2012/086305号、特開2012-025869号公報等を参照して、得られた発泡粒子を用いることもできる。
【0057】
[複合成形体の製造方法]
本発明の複合成形体は、熱可塑性樹脂発泡粒子に熱硬化性樹脂バインダーの原料となる未硬化の熱硬化性樹脂を含有する発泡粒子混合物を金型に入れ、少なくとも一軸方向に圧縮した後、加熱して未硬化の熱硬化性樹脂の一部を硬化させて、複合成形体を成形する工程を有することが好ましい。
そして、発泡粒子混合物が低温で圧縮加熱成形されることで、熱硬化性樹脂バインダーにおける硬化状態の熱硬化性樹脂により、圧縮状態が保存され易くなる。さらに、圧縮成形後に冷却されると流動性が低下して、圧縮状態が保存された複合成形体が形成される。熱硬化性樹脂バインダーの原料となる未硬化の熱硬化性樹脂は加熱され軟化するが、再加熱成形までは再加熱膨張することはなく安定した形状を保持する成型品として保管できる。最初の圧縮加熱成型では発泡粒子混合物は加熱圧縮され形状が保持された初期成型品である本発明の複合成形体が得られる。
本発明の複合成形体を用いた再加熱温度でのシート材を積層し、成形操作を行うことにより、熱硬化性樹脂バインダーの原料となる未硬化状態の熱硬化性樹脂が再加熱されることで軟化し、抑え込まれていた発泡粒子の復元が解放され膨張する。このようにして、後述の積層体を得ることができる。
【0058】
本発明の複合成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂発泡粒子と、エポキシ化合物、アミン化合物及びイミダゾール化合物を熱硬化性樹脂バインダーとを含有する発泡粒子混合物を金型に入れ、圧縮、加熱して成形する工程1を有することが好ましい。
以下に本発明の製造方法の好適な態様について説明する。
【0059】
(発泡粒子混合物)
発泡粒子混合物は、熱可塑性樹脂発泡粒子と、熱硬化性樹脂バインダーとしてエポキシ化合物、アミン化合物及びイミダゾール化合物とを含有する。
【0060】
発泡粒子混合物は、エポキシ化合物、アミン化合物及びイミダゾール化合物をとを撹拌等により混合し、エポキシ樹脂原料混合液を調製する。
次いで、発泡粒子とエポキシ樹脂原料混合液とを混合または塗布し、発泡粒子表面にエポキシ樹脂原料混合液を被覆(コーティング)して被覆物を形成し、発泡粒子に熱硬化性樹脂バインダーが被覆された被覆物が形成される。なお、発泡粒子とエポキシ樹脂原料混合液との混合は、混合運動で発泡粒子の切断や破壊等を伴わないように、プロシェアミキサーやヘンシェルミキサー等のバッチ型ミキサー、又はモーノポンプやスクリューポンプ等の連続型ミキサーを用いて混合することが好ましい。なお、原料混合液に予め強化繊維が含有されていてもよい。
【0061】
複合成形体が強化繊維を含む場合、次に発泡粒子に熱硬化性樹脂バインダーが被覆された被覆物と強化繊維とを混合してもよい。前記被覆物において、発泡粒子表面に被覆された熱硬化性樹脂バインダーは未硬化状態であり、該被覆物と強化繊維とを混合することで、発泡粒子表面に被覆されたエポキシ樹脂原料混合液に強化繊維が付着する。そして、熱可塑性樹脂発泡粒子の表面に、更に強化繊維が含まれ、該強化繊維が熱硬化性樹脂バインダー中に存在させることができる。エポキシ樹脂原料混合液で被覆した発泡粒子被覆物に、強化繊維を後工程で付着させることによって、発泡粒子被覆物の最表面に強化繊維を偏在させることで、得られる発泡粒子混合物の流動性を向上させることができる。
以上のようにして、粒子状で表面に未硬化状態のエポキシ樹脂で被覆された発泡粒子混合物が得られる。
【0062】
粒子状の発泡粒子混合物の平均粒径は、金型に充填して複合成形体の形状を自由に設定する観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
発泡粒子混合物の嵩密度は、好ましくは30kg/m3以上、より好ましくは40kg/m3以上、更に好ましくは45kg/m3以上であり、そして、好ましくは500kg/m3以下、より好ましくは300kg/m3以下、更に好ましくは100kg/m3以下である。上記範囲内であれば、発泡粒子混合物は、軽量性に優れると共に強度にも優れる。発泡粒子混合物の嵩密度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0063】
(工程1)
工程1は、前記発泡粒子混合物を金型に入れ、圧縮、加熱して成形する工程である。
具体的には、開放し密閉しうる金型内に、前記発泡粒子混合物を充填したのちに、型閉めし、加圧して圧縮するとともに熱硬化性樹脂のエポキシ化合物とアミン化合物とが硬化する程度に加熱を行うことで、発泡粒子混合物同士を接着させ、圧縮状態で固定化させて成形する。
なお、工程1で成形後の熱硬化性樹脂においては、一部の熱硬化性樹脂が、少なくとも、標準状態において、未硬化状態であっても流動性が低下した状態(半硬化したような状態)であることが好ましい。
【0064】
本工程に用いる金型は、所望の形状であればよいが、少なくとも一軸方向に圧縮できることが好ましく、一軸方向のみに圧縮できることがより好ましい。
たとえば、板状の成形体を得るための金型であれば、最も広い面に垂直な方向(Z軸方向、厚み方向)に圧縮できることが好ましい。
圧縮比は、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.7以上が更に好ましく、2.0以上がより更に好ましい。また、5.0以下が好ましい。
圧縮率が前記の範囲であれば、膨張率が高くなり、接着性に優れる複合成形体が得られる。
なお、圧縮比は、複合成形体の体積に対する、発泡粒子を充填した状態における体積の比として求められる。
【0065】
加圧して圧縮した状態で加熱することで、熱硬化性樹脂のエポキシ化合物とアミン化合物が硬化する。
本工程における加熱は、70℃以下で行うことが好ましい。加熱温度としては、65℃以下がより好ましく、62℃以下が更に好ましく、60℃以下がより更に好ましい。また、室温以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、55℃以上が更に好ましい。
加熱温度を前記の範囲にすることで、熱硬化性樹脂バインダーが、複合成形体として十分な膨張力を有する程度に硬化し、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことができる。
具体的には、加熱温度を前記の範囲にすることで、エポキシ化合物と、低温でも硬化するアミン化合物とが反応して一部硬化状態を形成し、残部のエポキシ化合物は未硬化状態で存在するものとなる。
反応後、冷却し、除圧後、金型から取り出すことによって、未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)の流動性が低下して、特定の圧縮状態を保持できるようになり、複合成形体を得ることができる。
【0066】
[積層体及びその製造方法]
本発明の積層体は、前記の複合成形体とシート材が接着されてなる。
すなわち、本発明の積層体は、熱可塑性樹脂発泡粒子が熱硬化性樹脂バインダーを介して接着された複合成形体であって、該複合成形体の密度が0.05~0.5g/cm3であり、100℃で20分加熱したときの膨張率が10~100%であり、該熱硬化性樹脂バインダーが未硬化状態の熱硬化性樹脂を含む複合成形体とシート材が接着され、最終的に硬化状態となる。
【0067】
本発明の積層体に用いられるシート材は、表面材として一般的に使用される樹脂シートが好ましい。
シート材の厚さは、0.5~5mmが好ましく、0.7~4mmがより好ましく、0.8~3mmが更に好ましい。
また、シート材は、熱可塑性樹脂からなるものが好ましく、アクリル樹脂、PET樹脂、PVC樹脂、PP樹脂、PE樹脂、ABS樹脂及びPS樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つからなることがより好ましく、ABS樹脂が更に好ましい。また、シート材を構成する樹脂は、水への濡れ性の観点からは、官能基を有する樹脂であることが好ましい。
シート材と複合成形体の接着面には、接着剤からなる接着層を有していてもよいが、接着層を有さないことが好ましく、シート材と複合形成体が、熱硬化性樹脂を介して直接接着されていることがより好ましい。
本発明の複合成形体を用いることで、接着剤等を用いることなく、シート材との接着面が均一で接着性に優れ、さらに接着剤等を用いないことで得られる積層体の平滑性にも優れる積層体が得られる。
【0068】
本発明の積層体は、前記の複合成形体とシート材とを積層し、前記熱硬化性樹脂バインダーを硬化し、接着させて製造することができる。
積層体の製造方法は、前記の複合成形体とシート材を金型に入れ、加熱、接着して積層する工程2を有することが好ましい。
工程2において、加熱することで、まず熱硬化性樹脂バインダーを構成する未硬化状態の熱硬化性樹脂(a)に流動性を与え、複合成形体の圧縮状態が開放されることで複合成形体が膨張する。これによって、金型の凹凸に合わせて複合成形体を膨張させることができ、シート材と均一に密着させることができる。更に加熱することで、熱硬化性樹脂バインダーを硬化させる。これによって、得られた積層体は、金型の型内形状に沿った目的とする形状のものが得られる。また、該積層体は、優れた表面形状にあわせた平滑性、外観を備えたものとなる。
熱硬化性樹脂バインダーにエポキシ樹脂を用いた場合、複合成形体を製造する際の工程1では反応しなかったイミダゾール系化合物が本工程2で反応することによって、熱硬化性樹脂バインダーが硬化状態となった積層体を得ることができる。
工程2における加熱温度は、75℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。上限は、150℃が好ましく、120℃以下がより好ましい。また、複合成形体表面の加熱速度は、5~500℃/minであることが好ましい。
【0069】
工程2において、加熱は2段階で行ってもよく、平滑性の点から、2段階で行うことが好ましい。
すなわち、1段階目の加熱では、熱硬化性樹脂バインダーに流動性を与え、複合成形体の圧縮状態を解放して膨張し、2段階目の加熱で、熱硬化性樹脂バインダーを硬化させる。このように2段階で行うことによって、複合成形体が膨張する時間を十分に取ることができるため、得られた積層体は、より表面が平滑なものとなる。
加熱を2段階で行う場合の1段階目の加熱温度は、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましい。上限は、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
2段階目の加熱温度は、75℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。上限は、150℃が好ましく、120℃以下がより好ましい。
これらの温度は、使用する熱硬化性樹脂と硬化剤によって適宜選択することができる。
【0070】
本発明の積層体は、表面の平滑性に優れ、発泡樹脂とシート材の接着性にも優れるため、自動車内装材や、建築部材などの構造材料用途に有用に用いられる。
【実施例
【0071】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0072】
[測定・評価]
(発泡粒子混合物の嵩密度)
発泡粒子混合物の嵩密度の測定は、一昼夜風乾させた発泡粒子混合物に対して行った。風乾後、発泡粒子混合物を1Lメスシリンダー内の1Lの標線位置まで充填して計量し、嵩体積1Lの発泡粒子混合物の質量WP(単位:g)を小数点第1位まで秤量した。そして、単位換算を行うことにより、嵩密度(単位:kg/m3)を求めた。
【0073】
(発泡粒子混合物熱硬化性樹脂バインダーの硬化状態)
発泡粒子混合物の熱硬化性樹脂バインダーの未硬化状態の確認方法は、JIS K7122-1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、1~4mgの発泡粒子混合物を0℃から200℃まで、10℃/分で昇温してDSC曲線を得た。ここで熱硬化性樹脂バインダーに由来する硬化発熱ピークが確認できたものは未硬化状態と判断した。
【0074】
(膨張性試験)
実施例及び比較例で得られた複合成形体を、100℃、20分間加熱した後の体積を測定し、加熱前の体積で除して、百分率で示し、100を減じて、体積膨張率(%)とした。
なお、複合成形体が直方体形状である場合には、Z軸方向は厚み方向(最も面積の大きい面に垂直な方向。高さ方向。複合成形体の厚さ:約20mm)であり、X軸方向は厚み方向に対して垂直であり、1つの面の長さ方向(幅方向。複合成形体の厚さ:約100mm)であり、Y軸方向はZ軸及びX軸と直交する方向であり、1つの面の長さ方向(奥行方向。複合成形体の厚さ:約100mm)であるとした。
実施例及び比較例で得られた複合成形体を、100℃、20分間加熱した後の各軸方向の厚さを測定し、加熱前の厚さで除して、百分率で示し、100を減じて、各軸方向の膨張率(%)とした。
【0075】
(シート接着性)
実施例及び比較例で得られた積層体から、縦50mm、横50mmの片面にABS樹脂シートを含む直方体形状の発泡粒子成形体試験片(縦50mm、横50mm、厚さ20mm)の上下面(ABS樹脂シート)を接着剤にて剥離強度測定用冶具に固定し、テンシロン万能試験機を用いて、2mm/分の引張速度で、引張試験を行った。剥離した際に材料破壊率が大きいものほど、シート接着性に優れる。
評価基準は以下のとおりである。
◎;剥離した際の材料破壊率が60%以上である
○;剥離した際の材料破壊率が40%以上であり、60%未満である
×;剥離した際の材料破壊率が40%未満である
【0076】
(平滑性)
実施例及び比較例で得られた積層体の表面の最大高さ粗さ(Rz)を測定した。
最大高さ粗さ(Rz)は、10ヵ所において、JIS B0601:2013に準拠した粗さ曲線要素の最大高さ粗さRz(μm)を測定した。測定装置は、株式会社小坂研究所製サーフコーダのSE1700αを用いた。最大高さ粗さが小さいものほど平滑性に優れる。
評価基準は以下のとおりである。
○:最大高さ粗さ(Rz)が、50μm未満である
×:最大高さ粗さ(Rz)が、50μm以上である
【0077】
[発泡粒子混合物の製造]
製造例1
内容積が200mLのポリプロピレン製ビーカーに、それぞれ表1に示す量で、エポキシ化合物(DIC株式会社製、商品名「Epicron850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、アミン化合物(1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アミン系硬化剤、三菱ガス化学株式会社製、商品名「1,3-BAC」)及びイミダゾール化合物(2-エチル-4-メチルイミダゾール、イミダゾール系硬化剤、四国化成株式会社製、商品名「2E4MZ」)を計量し、撹拌して樹脂混合液を調製した。
次いで、最大内容積が約20Lのポリエチレン製袋に、表1に示す量のポリ乳酸系樹脂発泡粒子(発泡倍率30倍、株式会社JSP製、商品名「LACTIF」)を投入し、前記樹脂混合液を投入し、発泡粒子の表面が樹脂混合液で均一に塗布されるように混合し、粒子状の発泡粒子混合物1を得た。
得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表1に示す。また、熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0078】
製造例2
イミダゾール化合物を使用せず、エポキシ化合物及びアミン化合物の量をそれぞれ表1に示す量に変更した以外は、製造例1と同様にして、粒子状の発泡粒子混合物2を得た。得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表1に示す。また、熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0079】
製造例3
エポキシ化合物、アミン化合物及びイミダゾール化合物の量をそれぞれ表1に示す量に変更し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡倍率30倍の「LACTIF」から、発泡倍率35倍の「LACTIF」に変更した以外は、製造例1と同様にして、粒子状の発泡粒子混合物3を得た。得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表1に示す。また、熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0080】
製造例4
イミダゾール化合物を使用せず、エポキシ化合物及びアミン化合物の量をそれぞれ表1に示す量に変更した以外は、製造例3と同様にして、粒子状の発泡粒子混合物4を得た。得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表1に示す。また、熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0081】
【表1】
【0082】
製造例5~8
エポキシ化合物、アミン化合物及びイミダゾール化合物の量をそれぞれ表2に示す量に変更した以外は、製造例3と同様にして、粒子状の発泡粒子混合物5~8を得た。各製造例で得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表2に示す。また、各製造例の熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0083】
製造例9~13
エポキシ化合物の種類を、「Epicron850」(商品名。DIC株式会社製)から、「jER604」(商品名。三菱ケミカル株式会社製)に変更し、エポキシ化合物、アミン化合物及びイミダゾール化合物の量をそれぞれ表2に示す量に変更した以外は、製造例3と同様にして、粒子状の発泡粒子混合物9~13を得た。各製造例で得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表2に示す。各製造例の熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0084】
製造例14
内容積が200mLのポリプロピレン製ビーカーに、それぞれ表2に示す量で、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER604」)、アミン系硬化剤(1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、三菱ガス化学株式会社製、商品名「1,3-BAC」)、イミダゾール系硬化剤(2-エチル-4-メチルイミダゾール、四国化成株式会社製、商品名「2E4MZ」)及び分散剤(BYK社製、商品名「BYK-9076」)を計量し、撹拌して樹脂混合液を調製した。
次いで、最大内容積が約20Lのポリエチレン製袋に、表2に示す量のポリ乳酸系樹脂発泡粒子(発泡倍率35倍、株式会社JSP製、商品名「LACTIF」)を投入し、樹脂混合液を投入し、発泡粒子の表面が樹脂混合液で均一に塗布されるように混合した。
次いで、表2に示す量の炭素繊維(Zoltek社製、商品名「RMF150」)を2回に分割して、ポリエチレン製袋に投入して混合した。得られた粒子状物を、目開き2mmの金属製のメッシュ(東京スクリーン株式会社製)を用いて、粒子に付着しなかった炭素繊維を除去した。
以上の操作により、粒子状の発泡粒子混合物14を得た。
得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表2に示す。また、熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0085】
製造例15
エポキシ化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、分散剤及び炭素繊維の量をそれぞれ表2に示す量に変更し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡倍率35倍から、発泡倍率30倍の「LACTIF」に変更した以外は、製造例14と同様にして、粒子状の発泡粒子混合物15を得た。得られた発泡粒子混合物の嵩密度は表2に示す。また、熱硬化性樹脂バインダーはDSC測定により未硬化状態の熱硬化性樹脂を含むことが確認された。
【0086】
【表2】
【0087】
[複合成形体の製造]
実施例1
製造例1で得られた発泡粒子混合物1を、表3に示す成形温度に調整した金型内に充填し、その温度で10分間圧縮成形し、室温まで冷却し除圧した後に金型から取り出し、100mm×100mm×20mmの複合成形体を得た。なお、金型は密閉することができるものであり、成形時に、厚み方向(板厚方向、最も広い面に対して垂直方向)に表3に示す圧縮率で圧縮した。圧縮率は複合成形体の体積に対する、発泡粒子を充填した状態における体積の比として算出した。
実施例1で得られた複合成形体の膨張性を評価した。結果を表3に示す。
【0088】
実施例2~16及び比較例1~3
製造例1~15で得られた発泡粒子混合物1~15を、それぞれ実施例1と同様にして、表3及び表4に示す成形温度に調整した金型内に充填し、その温度で10分間圧縮成形し、室温まで冷却し除圧した後に金型から取り出し、100mm×100mm×20mmの複合成形体を得た。なお、金型は密閉することができるものであり、成形時に、厚み方向(板厚方向、最も広い面に対して垂直方向)に表3及び表4に示す圧縮率で圧縮した。圧縮率は複合成形体の体積に対する、発泡粒子を充填した状態における体積の比として算出した。
各実施例及び比較例で得られた複合成形体の膨張性を評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0089】
[積層体の製造]
実施例17~32及び比較例4~6
上記各実施例及び比較例で得られた複合成形体を、その複合成形体の片面にABS樹脂シートを載せて100mm×100mm×20mmの金型内に入れ、型締めした後、表3,4に示す再加熱温度まで加熱し、10分間その温度を維持し、その後放冷することで室温まで冷却し、金型から取り出し、積層体を得た。
得られた積層体について、シート接着性と平滑性を評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
表3及び4から明らかなように、実施例の複合成形体を用いて製造した積層体は、シート材との接着性に優れることがわかる。また、平滑性にも優れることがわかる。
なお、実施例2及び3は、実施例1に対して、複合成形体を形成する際の圧縮率が異なるため、再加熱時の膨張率が異なるものと考えられる。
実施例5~8は、実施例4に対して、アミン化合物の添加量を変更した例であり、膨張率が異なる複合成形体が得られた。
実施例9~13は、実施例4~8に対して、熱硬化性樹脂バインダーとして、他のエポキシ化合物を使用した例である。
実施例9~13は、アミン化合物の添加量を変更した例であり、膨張率が異なる複合成形体が得られた。実施例14~16は、強化繊維として炭素繊維を添加した例である。