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  • 特許-偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/34 20060101AFI20240411BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20240411BHJP
   F04C 18/34 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F04C2/34
F04C15/00 A
F04C18/34
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020024694
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2020139500
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】1901934
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520056534
【氏名又は名称】ムーベックス
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベスニエ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ アレクシ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05983738(US,A)
【文献】特開2013-002326(JP,A)
【文献】特開平06-159278(JP,A)
【文献】特開平01-262393(JP,A)
【文献】特開平08-121369(JP,A)
【文献】米国特許第03274799(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/34
F04C 15/00
F04C 18/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)であって、
チューブ(2)、駆動軸(5)及びピストン(6)を有し、
前記チューブ(2)は、伝達領域(3)に固定された第1の端部(21)と、送出領域(4)に固定されかつシリンダ(24)で終端する第2の端部(22)と、を有し、
前記チューブ(2)は吸入開口部(23)を有し、前記送出領域は送出開口部(41)を有し、
前記駆動軸(5)は、前記伝達領域(3)と前記チューブとの間に亘って延び、前記シリンダ(24)を介して配置される端部(53)を有し、
前記ピストン(6)は、前記送出領域(4)に配置され、かつ摺動可能に前記駆動軸(5)の前記端部(53)に取り付けられ、
前記ピストン(6)は、前記ポンプが乾燥状態にあるときに、前記チューブ(2)と前記送出領域(4)との間の流体の移動を防ぐように、弾性手段(7)により前記シリンダ(24)に対して押圧され、
前記弾性手段は、前記ポンプが負荷下で作動しているときに前記シリンダに対して前記ピストンを押圧するように設計され、
前記弾性手段は、前記駆動軸(5)の前記端部に取り付けられた少なくとも1つのばね(54)を含み、前記ばね(54)の戻り力の方向(D)は、前記ポンプ(1)が乾燥状態にあるときに、前記ピストン(6)と前記シリンダ(24)との間における2つの接触点を通る直線(A)に対して0°でない角度を形成する、ことを特徴とする偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項2】
前記角度は、1°~30°である、ことを特徴とする請求項1に記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項3】
前記弾性手段は、前記駆動軸(5)の第1の部分(70)を有し、前記駆動軸(5)の回転中の弾性変形を可能にするように、前記第1の部分(70)の断面は、隣接する部分の断面より小さい、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項4】
前記第1の部分(70)は可撓性のストリップを形成する、ことを特徴とする請求項3に記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項5】
前記第1の部分(70)の断面は矩形である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項6】
前記ピストン(6)は、前記ポンプ(1)が作動してるときに、前記シリンダ(24)内で軌道運動を行う、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項7】
前記シリンダ(24)は、異なる直径を有する2つの環状壁部によって区切られ、前記ピストン(6)の直径は、前記2つの環状壁部の直径の間にある、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項8】
前記シリンダ(24)は、前記吸入開口部(23)と前記送出領域(4)とを隔てる壁部を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【請求項9】
前記ピストン(6)のスカート部は前記壁部に沿って中断されている、ことを特徴とする請求項8に記載の偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関し、特に偏心ピストンを有する容積移送式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
偏心ピストンを有する容積移送式ポンプは、一般にシリンダを備え、シリンダは、吸気開口部を備え、端部を送出領域と共有する。この端部には、駆動軸の端部に対して摺動するようにピストンが取り付けられている。ピストンは、ばねなどの押圧手段によりシリンダに押し付けられ、流体の通流を防げる。ポンプが負荷下で作動しているときに、ピストンに加わる圧力により駆動軸が撓むことがある。この圧力により、ピストンがシリンダから離間して漏洩が生じ、これによりポンプ効率が低下する。
【0003】
偏心ピストンを有する容積移送式ポンプの一例が、国際公開第97/36107号パンフレットに開示されている。シリンダは、直径の異なる2つの円形壁部によって区切られており、このシリンダ内で円環状のピストンが軌道運動を行う。ピストンの直径は、2つの円形壁部の直径の間に位置している。シリンダは、吸入チャンバと吐出チャンバとを隔てる壁部を有する。ピストンのスカート部は、仕切り部とも呼ばれる前記壁部に沿って中断されている。ピストンの中心は円運動を行う。一方、ピストン自体は回転しない。つまり、ピストンのx軸及びy軸は、最初の位置に対して平行状態を永続的に維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の先行技術文献の問題に対処するものであり、特に、負荷下での運転中にピストンとポンプのシリンダとの間の漏洩を排除又は低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、偏心ピストンを有する容積移送式ポンプに関する。当該ポンプは、チューブ、駆動軸及びピストンを有する。チューブは、伝達領域に固定された第1の端部と、送出領域に固定されかつシリンダにおいて終端する第2の端部と、を有する。チューブは吸入開口部を有し、送出領域は送出開口部を有する。駆動軸は、伝達領域とチューブとの間に亘って延び、シリンダを介して配置される一端部を有する。ピストンは、送出領域に配置され、かつ摺動可能に駆動軸の前記端部に取り付けられる。ピストンは、ポンプが乾燥状態にあるときに、チューブと送出領域との間の流体の移動を防ぐように、弾性手段によりシリンダに対して押圧される。弾性手段は、ポンプが負荷下で作動しているときにシリンダに対してピストンを押圧するように設計される。弾性手段は、ピストンの端部に取り付けられた少なくとも1つの半径方向ばねを含み、ばねの戻り力の方向は、ポンプが乾燥状態にあるときに、ピストンとシリンダとの間における2つの接触点を通る直線に対して0°でない角度を形成する。
【0006】
半径方向ばねの角度のオフセットにより、ポンプが負荷下にあるときに、戻り力の方向がピストンとシリンダとの間の接触点を接続する直線と実質的に平行となる。
【0007】
本発明の実施例では、前記角度は、1°~30°である。
【0008】
弾性手段は、駆動軸の第1の部分を有し、駆動軸の回転中の弾性変形を可能にするように、第1の部分の断面は、隣接する部分の断面より小さい。
【0009】
駆動軸の第1の部分の弾性変形により、ピストンが所定の押圧力でポンプのシリンダを押圧し続けることができる。
【0010】
本発明の実施例では、第1の部分は可撓性ストリップを形成する。
【0011】
本発明の実施例では、第1の部分の断面は矩形である。
【0012】
さらに有利な特徴によれば、ピストンは、ポンプが作動してるときに、シリンダ内で軌道運動を行う。シリンダは、異なる直径を有する2つの環状壁部によって区切られ、ピストンの直径は、2つの環状壁部の直径の間に位置している。シリンダは、吸入開口部と送出領域とを隔てる壁部を有する。ピストンのスカート部は、壁部に沿って中断されている。
【0013】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面に示した、本発明の非限定的な実施例についての以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る偏心容積移送式ポンプの縦断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るポンプの駆動軸を示す概略図である。
図3図3は、本発明の第2の実施例を示す概略図である。
図4図4は、本発明の第2の実施例に係る偏心容積移送式ポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る偏心ピストンを有する容積移送式ポンプ1の縦断面図である。
【0016】
ポンプ1は、第1の端部21、第2の端部22及び吸入開口部23を有するチューブ2を備える。
【0017】
チューブ2の第1の端部21は、伝達領域3に固定されている。伝達領域3は、ポンプ1の伝達手段を有する。第2の端部22は、送出領域4に固定されている。第2の端部22にはシリンダ24が含まれる。送出領域4は、送出開口部41を有する。
【0018】
駆動軸5は、伝達領域3からチューブ2内に延びている。駆動軸5の一端部53は、シリンダ24を介して設置されている。
【0019】
例示的な本実施例では、図1から分かるように、駆動軸5を囲むチューブ2内にスリーブ8が配置されている。スリーブ8は、金属製のベローズ81,82を備える。例えば、ベローズ81,82は、鋼鉄から形成されている。スリーブ8は、第1の締結手段83によりチューブ2の第1の端部21に密封状態で固定され、第2の締結手段84により駆動軸5の端部53に密封状態で固定されている。このようなスリーブは当業者に周知である。例えば、上記のようなスリーブは国際公開第97/36107号パンフレットに詳細に記載されている。
【0020】
スリーブの第2の締結手段84は、同様にピストンに固定され、したがって、ピストンと同時に駆動軸5の端部53に沿って摺動する。
【0021】
ピストン6は、送出領域4内に配置され、駆動軸5の端部53に摺動するように取り付けられている。弾性手段7,70は、ピストンがシリンダ24に対して押圧されて、チューブ2と送出領域4との間における流体の移動を防止するように、ピストンに設けられている。このようなポンプの動作は、当業者に周知である。
【0022】
弾性手段は、例えば、駆動軸の第1の部分70を有する。第1の部分70の断面は、隣接する部分の断面よりも小さい。つまり、第1の部分は、他の部分よりも薄い。この薄肉部分により、ポンプ1の運転時に駆動軸5の弾性変形が可能となる。第1の部分70の方向は、第1の部分70により付与される曲げ力によってピストン6がシリンダ24に押し付けられるように選択される。
【0023】
図2に示す実施例によれば、第1の部分70は、例えば長方形の断面を有する可撓性のストリップの形態をなしている。弾性変形はストリップの最も薄い部分で生じ、方向Fに戻り力(復元力)が生じる。ピストンに付与される圧力に関する力が最も厚い部分によって確実に吸収される。
【0024】
シリンダ24は、ポンプ1の吸入領域と送出領域とを隔てる隔壁(図示せず)を備える。この位置において、ピストンのディスクは、隔壁を通すための開口部を有する。ポンピングサイクルにおけるこの不連続性により、ピストンを再整列させる力が一時的に付与される。
【0025】
可撓性ストリップなど、駆動軸5における薄肉の第1の部分70を用いることによって、より迅速に再整列する反応の早いピストンが得られる。さらに、薄肉の第1の部分70により、駆動軸の端部53に取り付けられる半径方向のばねを排除することができる。これらのばねは、公知の方法によりピストン6をシリンダに対して押圧する。ばね力は、軸受ブッシュによって吸収される。ピストンに固定された摺動リングと軸受ブッシュとの間には摩擦が生じる。ピストンの再整列の間、軸受ブッシュに対するリングの摩擦はピストンの再整列運動を減速させ、これはポンプ1の効率に悪影響を及ぼす。
【0026】
他の変形例によれば、弾性手段は、駆動軸5の端部に取り付けられた少なくとも1つの半径方向ばね54を含む。半径方向ばねは、ポンプが乾燥状態で作動しているとき及びポンプが負荷下で作動しているときに、ピストン6をシリンダ24に押し付けるように配置される。つまり、駆動軸5の端部上の半径方向ばねの向きは、ピストン6に付与され駆動軸5を撓ませる傾向がある圧力を補償するように選択される。
【0027】
図3は、ポンプが乾燥状態で作動しているときの、駆動軸5の端部における半径方向ばねの向きを概略的に示している。本発明によれば、半径方向ばねは、ピストン6とシリンダ24との間の接触点P1,P2を通る直線Aに対してオフセットした角度を有して取り付けられる。この角度のオフセットにより、半径方向ばねの戻り力の方向Dは、直線Aに対してゼロではない角度になるが、この角度は、乾燥状態の作動時に、直線Aに平行な戻り力の成分が、図3に示すように、ピストン6をシリンダに押し付けた状態を保つのに十分であるように決定される。
【0028】
ポンプ1が負荷下で作動しているとき、ピストン6に加えられる圧力は軸を撓ませ、したがってピストン6とシリンダとの間の接触点P1,P2を移動させる傾向がある。これにより、直線Aの方向が変化する。本発明によれば、角度のオフセットは、ポンプ1が負荷下で作動しているときに、半径方向ばねの戻り力の方向が、ピストン6とシリンダ24との間の接触点を結ぶ新たな直線と一致するように選択される。したがって、負荷下で作動しているとき、戻り力の成分は、ピストン6及びシリンダ24との接触点と整列したときに最大になる。
【0029】
一実施例によれば、ポンプが乾燥状態で作動しているときの、接触点P1,P2を接続する直線Aと、半径方向ばねの戻り力の方向Dとの間の角度は、1°~30°である。
【0030】
本発明によれば、2つの実施例を組み合わせてもよい。したがって、薄肉の第1の部分70を備える駆動軸5は、直線Aに対して角度的にオフセットするように駆動軸5の端部に取り付けられた1つ以上の半径方向ばねを備えてもよい。
【0031】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される本発明の異なる実施例に対して、当業者に明らかな様々な修正及び/又は改良を行うことができることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4