(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】RFIDタグ、及びアンテナ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240411BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20240411BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20240411BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 144
G06K19/077 280
H01Q13/10
H01Q9/16
H01Q1/50
(21)【出願番号】P 2020026431
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】エリナ ビスタ
(72)【発明者】
【氏名】井川 太郎
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041443(JP,A)
【文献】特開2010-081290(JP,A)
【文献】特開2013-037653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01Q 13/10
H01Q 9/16
H01Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、
アンテナが形成される第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた絶縁層と、
前記アンテナに接続されるICチップと、
を備え、
前記アンテナは、
第1のスロットと、
前記第1のスロットと対向する第2のスロットと、
前記第1のスロットの中央部と前記第2のスロットの中央部とを連結する連結スロットと、
前記第1のスロットの一方の端部に連結され、前記第1のスロットより幅が広く、前記第1のスロットと直交する方向に延伸する第1の調整スロットと、
前記第1のスロットの他方の端部に連結され、前記第1のスロットより幅が広く、前記第1のスロットと直交する方向に延伸する第2の調整スロットと、
前記第2のスロットの一方の端部に連結され、前記第2のスロットより幅が広く、前記第2のスロットと直交する方向に延伸する第3の調整スロットと、
前記第2のスロットの他方の端部に連結され、前記第2のスロットより幅が広く、前記第2のスロットと直交する方向に延伸する第4の調整スロットと、
を有
し、
前記アンテナに、
前記第1の調整スロットを介して前記第1のスロットに連結され、前記第1のスロットと平行に、かつ前記第1のスロットから離れる方向に延伸する第1の拡張スロットと、
前記第2の調整スロットを介して前記第1のスロットに連結され、前記第1のスロットと平行に、かつ前記第1のスロットから離れる方向に延伸する第2の拡張スロットと、
を付加し、
前記第1の拡張スロット、及び前記第2の拡張スロットの形状により、前記ICチップと前記アンテナとの間のインピーダンスマッチング、又は前記アンテナの共振周波数を調整可能な、RFIDタグ。
【請求項2】
前記アンテナに、
前記第3の調整スロットを介して前記第2のスロットに連結され、前記第2のスロットと平行に、かつ前記第2のスロットから離れる方向に延伸する第3の拡張スロットと、
前記第4の調整スロットを介して前記第2のスロットに連結され、前記第2のスロットと平行に、かつ前記第2のスロットから離れる方向に延伸する第4の拡張スロットと、
を
さらに付加し、
前記第1の拡張スロット、前記第2の拡張スロット、前記第3の拡張スロット、及び前記第4の拡張スロットの形状により、前記ICチップと前記アンテナとの間のインピーダンスマッチング、又は前記アンテナの共振周波数を調整可能な、請求項
1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記連結スロットは、前記第2の導電層において、前記第1のスロットと前記第2のスロットとの間に形成される導電部を2つに分割し、
前記ICチップは、分割した2つの導電部の間に電気的に接続される、請求項1
又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記第2の導電層の外形は矩形であり、
前記第1のスロット及び前記第2のスロットは、前記矩形の一辺と平行な方向に延伸する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記第1の調整スロット及び前記第2の調整スロットは、前記第2のスロットから離れる方向に延伸し、
前記第3の調整スロット及び前記第4の調整スロットは、前記第1のスロットから離れる方向に延伸する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記第1の調整スロット、前記第2の調整スロット、前記第3の調整スロット、及び前記第4の調整スロットの形状により、前記ICチップと前記アンテナとの間のインピーダンスマッチング、又は前記アンテナの共振周波数を調整
可能な、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記アンテナは、前記第1の導電層を介して被着体に被着される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のRFIDタグに用いられるアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、及びアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
物流管理や商品管理のため、被着体に貼付されるRFIDタグが普及している。RFIDタグは、ICチップとICチップに電気的に接続されるアンテナとを備える。RFIDタグは、無線タグ、ICタグ、RF-IDタグ、RFタグ等と呼ばれることもある。
【0003】
一般的なRFIDタグは、例えば、金属等の被着体に貼付すると、通信距離が短くなる場合があり、このような問題に対応するため、金属製の被着体に対応したRFIDタグ(以下、金属対応RFIDタグと呼ぶ)が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/129542号
【文献】特表2019-533860号公報
【文献】特開2016-170576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1~3に示すような従来の金属対応RFIDタグは、立体的な構造を有するアンテナを含むため、製造や取り扱いに困難を伴っていた。
【0006】
本発明の一実施形態は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、平面的な構造を有するアンテナを含み、製造や取り扱いが容易な金属対応RFIDタグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一実施形態に係るRFIDタグは、第1の導電層と、アンテナが形成される第2の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた絶縁層と、前記アンテナに接続されるICチップと、を備え、前記アンテナは、第1のスロットと、前記第1のスロットと対向する第2のスロットと、前記第1のスロットの中央部と前記第2のスロットの中央部とを連結する連結スロットと、前記第1のスロットの一方の端部に連結され、前記第1のスロットより幅が広く、前記第1のスロットと直交する方向に延伸する第1の調整スロットと、前記第1のスロットの他方の端部に連結され、前記第1のスロットより幅が広く、前記第1のスロットと直交する方向に延伸する第2の調整スロットと、前記第2のスロットの一方の端部に連結され、前記第2のスロットより幅が広く、前記第2のスロットと直交する方向に延伸する第3の調整スロットと、前記第2のスロットの他方の端部に連結され、前記第2のスロットより幅が広く、前記第2のスロットと直交する方向に延伸する第4の調整スロットと、を有し、前記アンテナに、前記第1の調整スロットを介して前記第1のスロットに連結され、前記第1のスロットと平行に、かつ前記第1のスロットから離れる方向に延伸する第1の拡張スロットと、前記第2の調整スロットを介して前記第1のスロットに連結され、前記第1のスロットと平行に、かつ前記第1のスロットから離れる方向に延伸する第2の拡張スロットと、を付加し、前記第1の拡張スロット、及び前記第2の拡張スロットの形状により、前記ICチップと前記アンテナとの間のインピーダンスマッチング、又は前記アンテナの共振周波数を調整可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、平面的な構造を有するアンテナを含み、製造や取り扱いが容易な金属対応RFIDタグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るRFIDタグの層構成の例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るアンテナの形状の例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係るアンテナにおける中央部の形状の一例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係るアンテナのスロットの構成について説明するための図である。
【
図5】一実施形態に係るRFIDタグの具体的な構成の一例を示す図である。
【
図6】一実施形態に係るRFIDタグの通信特性の例を示す図である。
【
図7】第1の変形例に係るアンテナの構成例、及び通信特性の例を示す図である。
【
図8】第2の変形例に係るアンテナの構成例を示す図である。
【
図9】第2の変形例に係るRFIDタグの通信特性の例を示す図である。
【
図10】第3の変形例に係るアンテナの構成例、及び通信特性の例を示す図である。
【
図11】第4の変形例に係るアンテナの構成例、及び通信特性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す説明では、各図において共通する部分について、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、理解を容易にするため、各図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。なお、各形態において、平行、直交、直角、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を含む。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を含む。
図1以降において、X軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスX軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスX軸方向とする。Y軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスY軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスY軸方向とする。Z軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスZ軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスZ軸方向とする。
【0011】
図1は、一実施形態に係るRFIDタグの層構成の例を示す図である。RFID(Radio Frequency Identification)タグ100は、例えば、グランドプレーンとなる第1の導電層101、アンテナを形成する第2の導電層102、第1の導電層101と第2の導電層102との間に設けられた絶縁層103、及びアンテナに接続されるICチップ104等を備える。
【0012】
第1の導電層101、及び第2の導電層102は、導電性の高い導電体(例えば、銅、アルミニウム等の金属)によって形成される。なお、第1の導電層101と第2の導電層102とは、同じ導電体によって形成されるものであっても良いし、異なる導電体によって形成されるものであっても良い。絶縁層103は、導電性の低い絶縁体(例えば、合成樹脂、ゴム等、好ましくは、ウレタンフォーム、アクリルフォーム等の発泡プラスチック)によって、形成される。なお、絶縁層103の厚さは任意に定めることができる。例えば、RFIDタグ100の使用周波数を920MHzとした場合、絶縁層103の厚さは、100μm~500μm、好ましくは、200μm~400μmとすることができる。また、第1の導電層101、及び第2の導電層102の厚さは、絶縁層103の厚さより十分に薄いものとする。例えば、第1の導電層101、第2の導電層102の厚さは、それぞれ、5μm~40μm、好ましくは、7μm~35μmとすることができる。
【0013】
ICチップ104は、RFIDシステム用の集積回路であり、第2の導電層102に形成されるアンテナに接続される。ICチップ104は、RFIDシステムのタグリーダから、所定の無線周波数(例えば、860MHz~960MHz)で送信される電波をアンテナで受信し、受信した電波により電力を生成して起動する。また、ICチップ104は、生成した電力で、ICチップ104に予め記録された識別情報を含む電波を、タグリーダに送信する。
【0014】
また、RFIDタグ100には、
図1に示すように、例えば、合成樹脂等で形成され、第1の導電層101を形成又は保持するための第1の樹脂層105や、例えば、合成樹脂等で形成され、第2の導電層102を形成又は保持するための第2の樹脂層107等が含まれ得る。
【0015】
好ましくは、第1の樹脂層105は、第1の導電層101と接する面の反対面が接着面になっており、剥離紙106を剥がすことにより、RFIDタグ100を被着体に被着することができる。また、好ましくは、RFIDタグ100には、印刷や書込が可能な上紙108を備えている。
【0016】
ICチップ104は内部容量を有し、アンテナが有するインダクタンス成分と、ICチップ104の内部容量とにより、インピーダンスを整合することにより、タグリーダと通信するための十分な通信距離(例えば、1m~7m程度)を確保することができる。
【0017】
(アンテナの構成)
続いて、
図2~4を用いて、第2の導電層102に形成されるアンテナの構成について説明する。
【0018】
図2は、第2の導電層102に形成されるアンテナの形状の例を示す図である。この図は、
図1に示した第2の導電層102を、マイナスZ軸方向から見た状態を示している。好適な一例として、アンテナ200は、例えば、横幅W(W=85~105mm程度)、奥行きD(D=35~45mm程度)の矩形の外形を有する第2の導電層102によって形成される。好ましくは、
図1で説明したRFIDタグ100の他の層も、第2の導電層102に対応する矩形の外形を有している。ただし、これに限られず、RFIDタグ100の各層は、矩形以外の外形であっても良い。
【0019】
アンテナ200は、第2の導電層102に設けられた第1のスロット201と、第1のスロットと対向する第2のスロット202と、アンテナ200の中央部203において第1のスロット201と第2のスロット202とを連結する連結スロットとを有する。なお、中央部203、及び連結スロットについては、
図3を用いて後述する。
【0020】
好ましくは、第1のスロット201、及び第2のスロット202は、矩形の一辺(例えば、長辺)と平行な方向(X軸方向)に延伸するように形成される。
【0021】
なお、本実施形態では、第2の導電層102の範囲内において、導電体が形成されていない部分を「スロット」と呼ぶものとする。なお、第2の導電層102、及びスロットは、例えば、銅、アルミ等の金属箔のプレス加工、エッチング加工、めっき加工、又は金属ペーストのシルクスクリーン印刷等によって形成される。なお、
図1、2等において、第2の導電層102にハッチングがかかっているが、これは、第2の導電層が金属であることを示すハッチングであり、模様を示すものではない。
【0022】
図3は、一実施形態に係るアンテナにおける中央部の形状の一例を示す図である。この図は、
図2に示したアンテナ200の中央部203の拡大図である。
図3において、第1のスロット201と第2のスロット202との間の導電体によって形成される導電部は、連結スロット303によって、第1の導電部301Aと第2の導電部301Bとの2つの導電部に分割されている。つまり、連結スロット303は、第1のスロット201の中央部と、第2のスロット202の中央部との間を連結している。
【0023】
また、好適な一例として、第1の導電部301A、及び第2の導電部301Bには、ICチップ104を電気的に接続するための取付けパターン302A、302Bが、それぞれ形成されている。なお、
図3に示す取付けパターン302A、302Bの形状は、ICチップ104の取付け性を考慮して決定されたものであり、他の形状であっても良い。
【0024】
さらに、中央部203には、ICチップ104の位置決め用のパターン304が形成されていても良い。位置決め用のパターン304は、第2の導電層102において他の導電体部分には接続されておらず、例えば、第2の樹脂層107等によって保持される。なお、位置決め用のパターン304は、ICチップ104の取付け性を考慮して設けられたものであり、他の形状であっても良いし、他の数であっても良い。なお、位置決め用のパターン304は、製造用の構成要素であり、アンテナ200の構成要素には含まれないので、以後、説明を省略する。
【0025】
図4は、一実施形態に係るスロットの構成について説明するための図である。
図4において、第1のスロット201と第2のスロット202とは、同じ幅W0となるように形成されている。
【0026】
第1のスロット201の一方の端部401Aには、第1のスロット201より幅W1が広く、第1のスロット201と直交する方向(プラスY軸方向)に延伸する第1の調整スロット403Aが連結されている。また、第1のスロット201の他方の端部401Bには、第1のスロット201より幅W1が広く、第1のスロット201と直交する方向(プラスY軸方向)に延伸する第2の調整スロット403Bが連結されている。なお、
図4において、端部401A、401B等を破線で示しているが、これは各スロットの境界を説明するための仮想線であり、実際には存在しない。
図4の他の破線についても同様である。
【0027】
同様に、第2のスロット202の一方の端部402Aには、第2のスロット202より幅W1が広く、第2のスロット202と直交する方向(マイナスY軸方向)に延伸する第3の調整スロット403Cが連結されている。また、第2のスロット202の他方の端部402Bには、第2のスロット202より幅W1が広く、第2のスロット202と直交する方向(マイナスY軸方向)に延伸する第4の調整スロット403Dが連結されている。なお、以下の説明において、第1の調整スロット403A、第2の調整スロット403B、第3の調整スロット403C、及び第4の調整スロット403Dのうち、任意の調整スロットを示す場合、「調整スロット403」を用いる。
【0028】
図4の例では、各調整スロット403の幅W1が等しくなるように形成されている。ただし、これに限られず、各調整スロット403の幅は、調整スロット403によって異なっていても良い。なお、調整スロット403は、例えば、アンテナ200とICチップ104との間のインピーダンスマッチングの調整、アンテナ200の共振周波数の調整等に用いることができる。
【0029】
好ましくは、アンテナ200は、第1の拡張スロット404A、第2の拡張スロット404B、第3の拡張スロット404C、及び第4の拡張スロット404Dを、さらに備える。
【0030】
第1の拡張スロット404Aは、第1の調整スロット403Aを介して第1のスロット201に連結され、第1のスロット201と平行に、かつ第1のスロット201から離れる方向(マイナスX軸方向)に延伸するように形成されている。
図4の例では、第1の拡張スロット404Aは、第1の調整スロット403Aの第1のスロット201と対向する位置に連結されている。
【0031】
第2の拡張スロット404Bは、第2の調整スロット403Bを介して第1のスロット201に連結され、第1のスロット201と平行に、かつ第1のスロット201から離れる方向(プラスX軸方向)に延伸するように形成されている。
図4の例では、第2の拡張スロット404Bは、第2の調整スロット403Bの第1のスロット201と対向する位置に連結されている。
【0032】
第3の拡張スロット404Cは、第3の調整スロット403Cを介して第2のスロット202に連結され、第2のスロット202と平行に、かつ第2のスロット202から離れる方向(マイナスX軸方向)に延伸するように形成されている。
図4の例では、第3の拡張スロット404Cは、第3の調整スロット403Cの第2のスロット202と対向する位置に連結されている。
【0033】
第4の拡張スロット404Dは、第4の調整スロット403Dを介して第2のスロット202に連結され、第2のスロット202と平行に、かつ第2のスロット202から離れる方向(プラスX軸方向)に延伸するように形成されている。
図4の例では、第4の拡張スロット404Dは、第4の調整スロット403Dの第2のスロット202と対向する位置に連結されている。なお、以下の説明において、第1の拡張スロット404A、第2の拡張スロット404B、第3の拡張スロット404C、及び第4の拡張スロット404Dのうち、任意の拡張スロットを示す場合、「拡張スロット404」を用いる。
【0034】
図4の例では、各拡張スロット404の幅W2が等しくなるように形成されている。ただし、これに限られず、各拡張スロット404の幅は、例えば、拡張スロット404によって異なっていても良い。なお、拡張スロット404は、例えば、アンテナ200とICチップ104との間のインピーダンスマッチングの調整、アンテナ200の共振周波数の調整等に用いられる。
【0035】
なお、W0、W1、W2、及び後述するW3の寸法は任意に定めることができる。例えば、RFIDタグ100の使用周波数を920MHzとした場合、W0は、1.00mm~3.00mm、好ましくは、1.50mm~2.5mmとすることができる。W1は、4.00mm~10.00mm、好ましくは、5.00mm~8.00mmとすることができる。W2は、0.8mm~2.00mm、好ましくは1.0mm~1.5mmとすることができる。W3は、0.5mm~1.5mm、好ましくは、0.7mm~1.3mmとすることができる。
【0036】
[RFIDタグの具体的な構成の例]
続いて、本実施形態に係るRFIDタグ100のより具体的な構成の例について説明する。
【0037】
図5は、一実施形態に係るRFIDタグの具体的な構成の一例を示す図である。この図は、発明者らが作成し、良好な結果が得られたRFIDタグ100の具体的な構成の一例を示している。
【0038】
図5(A)は、作成したRFIDタグ100の層構成を示している。RFIDタグ100は、グランドプレーンとなる第1の導電層101、アンテナ200を形成する第2の導電層102、及び第1の導電層101と第2の導電層102との間に設けられた絶縁層103を備える。また、第1の導電層101は、第1の樹脂層105を介して、被着体500に被着される。
【0039】
第1の導電層101、及び第2の導電層102は、アルミニウム(厚さ:10μm)を導電体として使用した。ただし、導電体は、例えば、銅等のアルミニウム以外の金属等を用いても良い。
【0040】
絶縁層103には、アクリルフォーム(厚さ:300μm)を絶縁体として使用した。ただし、絶縁体は、例えば、ウレタンフォーム等のアクリルフォーム以外の絶縁体を用いても良い。
【0041】
図5(B)は、作成したRFIDタグ100の第2の導電層102に形成したアンテナ200の形状を示している。アンテナ200は、横幅W=95.00mm、奥行きD=40.00mmの矩形の導電体である第2の導電層102に、
図3、4で説明した、第1のスロット、第2のスロット202、連結スロット303、調整スロット403、拡張スロット404等を形成した。
【0042】
なお、第1のスロット201及び第2のスロットの202の長さL0、調整スロットの長さL1、及び拡張スロット404の長さL2は、任意に定めることができる。例えば、RFIDタグ100の使用周波数を920MHzとした場合、L0は、9.00mm~13.00mm、好ましくは、10.00mm~12.00mmとすることができる。L1は、2.50mm~5.00mm、好ましくは、3.00mm~4.00mmとすることができる。L2は、10.00mm~15.00mm、好ましくは11.50mm~13.50mmとすることができる。
【0043】
なお、第2の導電層102の中央には、
図3に示すような中央部203を形成し、取付けパターン302A、302Bの間にICチップ104を電気的に接続した。また、第1のスロット201、及び第2のスロットを、矩形の長辺(一辺)と平行な方向(X軸方向)に延伸するように形成した。なお、第1のスロット201、及び第2のスロット202の幅W0は1.90mm、第1の導電部301A、及び第2の導電部301Bの幅W3は1.00mmとした。また、第1のスロット201、及び第2のスロットの長さL0を、10.80mmとした。
【0044】
また、
図5(B)に示すように、第2の導電層102のY軸方向の中心線501に対して線対称となり、かつX軸方向の中心線502に対して線対称となるように、第1~4の調整スロット403、及び第1~4の拡張スロット404を形成した。なお、調整スロット403の幅W1は6.50mmとし、長さL1は3.6mmとした。また、拡張スロット404の幅W2は1.30mmとし、長さL2は12.50mmとした。なお、各部の寸法は、実際に試作を行い、中心周波数と通信距離のバランスとが最も良くなるように決定した。
【0045】
[RFIDタグの通信特性]
図6は、一実施形態に係るRFIDタグの通信特性の例を示す図である。
図6(A)は、
図5で説明したRFIDタグ100において、被着体500を金属板(ステンレス板)とした場合における、周波数と通信距離との関係を、市販のRFIDタグ・ラベル性能検査装置で測定した測定結果の例を示している。
【0046】
図6(A)において、横軸は周波数(MHz)、縦軸は通信距離(m)を表している。なお、以下の説明において、RFIDタグ100の通信距離が最長となった周波数を中心周波数fcと呼ぶものとする。
【0047】
図6(A)に示すように、作成したRFIDタグ100は、RFIDシステムで用いられる920MHz付近に中心周波数fcがあり、中心周波数fcにおいて、3m以上の通信距離が得られた。このように、作成したRFIDタグ100は、金属板に被着したときに、良好な通信特性が得られることを確認した。
【0048】
なお、RFIDタグ100の中心周波数fcは、例えば、拡張スロット404の長さL2を変更することにより、中心周波数fcを、所定の周波数に調整することができる。例えば、拡張スロット404の長さL2をより長くすることにより、中心周波数fcを、より低い周波数に変更することができる。また、拡張スロット404の長さL2をより短くすることにより、中心周波数fcを、より高い周波数に変更することができる。
【0049】
図6(B)は、
図5(A)において、被着体500を紙とした場合における、周波数と通信距離との関係を、RFIDタグ・ラベル性能検査装置で測定した測定結果の例を示している。作成したRFIDタグ100は、被着体500を紙とした場合でも、中心周波数fcの変化が少なく、RFIDシステムで用いられる920MHz付近の周波数において、2m程度の通信距離を確保できることを確認した。
【0050】
このように、本実施形態に係るRFIDタグ100は、第2の導電層102に形成されるアンテナ200が、グランドプレーンとなる第1の導電層101を介して、被着体500に被着されるので、被着体500の材質の影響を受け難いという特長がある。
【0051】
以上、本発明の一実施形態によれば、平面的な構造を有するアンテナ200を含み、製造や取り扱いが容易な金属対応RFIDタグ(RFIDタグ100)を提供することができる。
【0052】
例えば、本実施形態に係るRFIDタグ100のアンテナ200は、
図1~5で説明したように、平面的な構造を有している。従って、例えば、金属箔のプレス加工、エッチング加工、めっき加工、又は金属ペーストのシルクスクリーン印刷等により、立体的な構造を有する従来の金属対応RFIDタグより容易に製造することができる。
【0053】
また、例えば、
図5(A)に示すような層構成のRFIDタグ100は、500~600μm程度の厚みで製造することができるので、ラベルプリンタによる印字や、エンコード等が可能になる。
【0054】
さらに、例えば、特許文献3に示されるような金属対応RFIFタグでは、アンテナ部が金属被着体から飛び出る構造であるため、RFIDタグが脱落や、破損するリスクがある。一方、本実施形態に係るRFIDタグ100は、平面的な構造を有しているので、RFIDタグ100が脱落、破損するリスクが低くなり、取り扱いが容易になる。
【0055】
[変形例について]
図5に示したRFIDタグ100、及びアンテナ200は、様々な変形や応用が可能である。ここでは、
図5(A)に示した層構成を有し、
図5(B)に示したアンテナ200の一部の構成を変更した第1~4の変形例について説明する。
【0056】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例に係るアンテナの構成例、及び通信特性の例を示す図である。
図7(A)は、第1の変形例に係るRFIDタグ100の第2の導電層102に形成されるアンテナ200の構成例を示している。
【0057】
図7(A)に示すように、第1の変形例に係るアンテナ200は、
図5(B)で説明した一実施形態に係るアンテナ200の構成に対して、拡張スロット404の位置が変更されている。例えば、
図7(A)において、第1の拡張スロット404Aは、第1の調整スロット403Aとの連結位置がプラスY方向に移動されており、第2の拡張スロット404Bは、第2の調整スロット403Bとの連結位置がプラスY方向に移動されている。また、第3の拡張スロット404Cは、第3の調整スロット403Cとの連結位置がマイナスY方向に移動されており、第4の拡張スロット404Dは、第4の調整スロット403Dとの連結位置がプラスY方向に移動されている。
【0058】
図7(B)は、
図7(A)に示すような第1の変形例に係るアンテナ200が、第2の導電層102に形成されたRFIDタグ100において、被着体500を金属板とした場合における、周波数と通信距離との関係を示す測定結果の例を示している。
【0059】
図7(B)の例では、
図6(A)に示した、一実施形態に係るRFIDタグ100の測定結果と比較して、中心周波数fcが、920MHz付近から、880MHz付近まで下がっていることが判る。
【0060】
この結果より、例えば、
図7(A)に示すように、拡張スロット404と調整スロット403との連結位置を、Y軸の方向に移動することにより、ある程度、中心周波数fcを調整可能であると推測される。
【0061】
また、例えば、中心周波数fcをより低い方向に調整したいが、アンテナ200のX軸方向の長さを伸ばしたくないような場合には、
図7(A)に示すような第1の変形例に係るアンテナ200を採用することが考えられる。
【0062】
なお、第1の変形例に係るアンテナ200は、拡張スロット404の長さL2を短くし、中心周波数fcを920MHz付近に調整することにより、RFIDタグ100用のアンテナとして良好な特性が得られると考えられる。
【0063】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例に係るアンテナの構成例を示す図である。この図は、第2の変形例に係るRFIDタグ100の第2の導電層102に形成されるアンテナ200の構成例を示している。
【0064】
図8に示すように、第2の変形例に係るアンテナ200は、
図5(B)で説明した一実施形態に係るアンテナ200の構成に含まれる拡張スロット404が省略された構成を有している。このような第2の変形例に係るアンテナ200では、拡張スロット404の長さL2に代えて、調整スロット403の長さL1を変更することにより、中心周波数fcを変更することができる。
【0065】
図9(A)は、
図8に示すような第2の変形例に係るアンテナ200において、調整スロット403の長さL1を3.6mmとしたRFIDタグ100を、金属板に被着した場合における、周波数と通信距離との関係を示す測定結果の例を示している。
【0066】
図9(A)の例では、
図6(A)に示した、一実施形態に係るRFIDタグ100の測定結果と比較して、中心周波数fcが、920MHz付近から、1090MHz付近まで高くなっていることが判る。これにより、拡張スロット404は、
図8に示すような第2の変形例に係るアンテナ200において、中心周波数fcを低くする効果があると言える。
【0067】
図9(B)は、
図8に示すような第2の変形例に係るアンテナ200において、調整スロット403の長さL1を4.6mmとしたRFIDタグ100を、金属板に被着した場合における、周波数と通信距離との関係を示す測定結果の例を示している。
【0068】
図9(B)の例では、
図9(A)に示した、測定結果と比較して、中心周波数fcが、1900MHz付近から1020MHz付近まで下がっていることが判る。これにより、拡張スロット404の長さL1をより長くすることにより、中心周波数fcを、より低い周波数に調整することができると考えられる。
【0069】
図9(C)は、
図8に示すような第2の変形例に係るアンテナ200において、調整スロット403の長さL1を5.1mmとしたRFIDタグ100を、金属板に被着した場合における、周波数と通信距離との関係を示す測定結果の例を示している。
【0070】
図9(C)の例では、
図9(B)に示した、測定結果と比較して、中心周波数fcが、1020MHz付近から940MHz付近まで下がっていることが判る。従って、調整スロット403の長さL1をもう少し長く形成することにより、中心周波数fcを、RFIDシステムで用いられる920MHz付近まで合わせ込むことができる可能性がある。
【0071】
一方、通信距離に関しては、
図9(C)の例では、940MHz付近における通信距離が2.5m程度となっており、調整スロット403の長さL1をもう少し長くして、中心周波数fcを920MHzにした場合、さらに通信距離が短くなる可能性がある。しかし、例えば、通信距離が2m程度で十分な用途では、
図8に示すような、第2の変形例に係るアンテナ200を採用することも可能である。
【0072】
なお、ここでは、
図8に示すような第2の実施形態に係るアンテナ200において、調整スロット403の長さL1だけを変更したが、調整スロット403の幅W1を変更することでも、中心周波数fcを変更することができる。
【0073】
(第3の変形例)
図10は、第3の変形例に係るアンテナの構成例を示す図である。
図10(A)は、第3の変形例に係るRFIDタグ100の第2の導電層102に形成されるアンテナ200の構成例を示している。
【0074】
図10(A)に示すように、第3の変形例に係るアンテナ200は、
図5(B)で説明した一実施形態に係るアンテナ200の構成に含まれる拡張スロット404のうち、第3の拡張スロット404C、及び第4の拡張スロット404Dが省略された構成を有している。なお、第3の変型例に係るアンテナ200は、第1の拡張スロット404A、第2の拡張スロット404Bを省略して、第3の拡張スロット404C、第4の拡張スロット404Dを設ける構成であっても良い。このように、アンテナ200は、拡張スロット404の一部を省略しても良い。
【0075】
図10(B)は、
図10(A)に示すような第3の変形例に係るアンテナ200が、第2の導電層102に形成されたRFIDタグ100において、被着体500を金属板とした場合における、周波数と通信距離との関係を示す測定結果の例を示している。
【0076】
図10(B)の例では、
図6(A)に示した、一実施形態に係るRFIDタグ100の測定結果と比較して、中心周波数fcが、920MHz付近から、970MHz付近まで高くなっていることが判る。この場合、例えば、第1の拡張スロット404A、及び第2の拡張スロット404Bの長さL2をより長くすることにより、中心周波数fcを、RFIDシステムで用いられる920MHz付近まで合わせ込むことができる可能性がある。
【0077】
ただし、
図10に示すように、第3の変形例に係るアンテナ200は、拡張スロット404の構成が非対称なので、例えば、XY平面において、アンテナ200の指向特性も非対称になっている可能性がある。ただし、用途によっては、アンテナ200の指向特性が非対称で良い、或いは非対称である方が良い場合があるので、そのような場合に、
図10に示すような、第3の変形例に係るアンテナ200を採用できる可能性がある。
【0078】
(第4の変形例)
図11は、第4の変形例に係るアンテナの構成例を示す図である。
図11(A)は、第4の変形例に係るRFIDタグ100の第2の導電層102に形成されるアンテナ200の構成例を示している。
【0079】
図11(A)に示すように、第4の変形例に係るアンテナ200は、
図5(B)で説明した一実施形態に係るアンテナ200における第1の拡張スロット404A、及び第2の拡張スロット404Bの長さL2を、15.00mmに伸ばした構成を有している。なお、第4の変型例に係るアンテナ200は、第3の拡張スロット404C、及び第4の拡張スロット404Dの長さL2を、15.00mm伸ばした構成を有していても良い。このように、アンテナ200において、各拡張スロット404の長さL2は、必ずしも同一でなくても良い。
【0080】
図11(B)は、
図11(A)に示すような第4の変形例に係るアンテナ200が、第2の導電層102に形成されたRFIDタグ100において、被着体500を金属板とした場合における、周波数と通信距離との関係を示す測定結果の例を示している。
【0081】
図11(B)の例では、
図6(A)に示した、一実施形態に係るRFIDタグ100の測定結果と比較して、中心周波数fcが、920MHz付近から、990MHz付近まで高くなっていることが判る。
【0082】
図5(B)に示した一実施形態に係るアンテナ200の説明において、拡張スロット404の長さL2をより長くすることにより、中心周波数fcをより低く調整できると説明した。しかし、第4の変形例に係るアンテナ200では、逆に周波数がより高い方に中心周波数fcが移動した。このように、拡張スロット404の長さL2の一部が異なる場合、予想外の測定結果が得られる場合がある。従って、例えば、拡張スロット404の長さL2を4本同時に変更しても良好な結果が得られない場合、4つの拡張スロット404のうち、一部の拡張スロット404の長さL2を変えることにより、状況を打開できる可能性がある。
【0083】
以上の各実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
100 RFIDタグ
101 第1の導電層
102 第2の導電層
103 絶縁層
104 ICチップ
201 第1のスロット
202 第2のスロット
301A 第1の導電部
301B 第2の導電部
303 連結スロット
403A 第1の調整スロット
403B 第2の調整スロット
403C 第3の調整スロット
403D 第4の調整スロット
404A 第1の拡張スロット
404B 第2の拡張スロット
404C 第3の拡張スロット
404D 第4の拡張スロット