(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】電池製造用搬送治具
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2020028814
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩▲埼▼ 圭輔
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-242944(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110391379(CN,A)
【文献】特開平09-231994(JP,A)
【文献】特開2002-141102(JP,A)
【文献】特開2013-105626(JP,A)
【文献】特開2004-296272(JP,A)
【文献】特開2016-200201(JP,A)
【文献】特開2005-103670(JP,A)
【文献】特開2005-034945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/10-77
H01G 13/00
B25J 15/00-12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒体のバッテリケースを保持する凹状の保持部を有する筐体と、
前記バッテリケースの側面を対向する方向からクランプする第1クランプ機構と、
前記第1クランプ機構のクランプ方向とは直交する方向から前記バッテリケースの側面をクランプする第2クランプ機構と、
前記保持部内に少なくとも一部が配置されてスライド移動する
単体の操作体と、
前記操作体のスライド方向の動作を前記第1クランプ機構および前記第2クランプ機構のそれぞれのクランプ方向の動作に変換する変換機構と、を備えることを特徴とする電池製造用搬送治具。
【請求項2】
前記変換機構は、前記第1クランプ機構に設けられた第1転動ローラ部材と、
前記第2クランプ機構に設けられた第2転動ローラ部材と、
前記操作体のうち、前記第1クランプ機構側の側面に設けられて、前記操作体のスライド方向と直交する方向へ傾斜して、前記第1転動ローラ部材に当接する第1傾斜面部と、
前記操作体のうち、前記第2クランプ機構側の側面に設けられて、前記操作体のスライド方向と直交する方向へ傾斜して、前記第2転動ローラ部材に当接する第2傾斜面部と、を有する直動カムローラ機構であることを特徴とする請求項1に記載の電池製造用搬送治具。
【請求項3】
前記第1クランプ機構は、クランプ方向における前記操作体の両側に一対設けられた左,右側クランプ部材を含み、
前記左,右側クランプ部材は、前記操作体のスライド方向にそれぞれ並設される一対の直動軸と、
前記一対の直動軸の間を連結して、前記第1転動ローラ部材を軸支する連結部材と、を有し、
前記直動軸をガイドして、前記左,右側クランプ部材をクランプ方向へ移動させるガイド部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電池製造用搬送治具。
【請求項4】
前記連結部材には、前記バッテリケースの側面に対して前記左,右側クランプ部材をクランプ方向へ付勢するバネ部材を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電池製造用搬送治具。
【請求項5】
前記操作体は、直方体形状に形成されていて、前記第1傾斜面部が設けられている第1側面と、前記第2傾斜面部が設けられている第2側面とを直交させていることを特徴とする請求項2~4のうち何れか一項に記載の電池製造用搬送治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池製造用搬送治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池製造用搬送治具としては、電池を製造する際、電池を構成する有底角筒形のバッテリケースを保持するものが知られている。搬送治具は、筐体内に設けられた凹状の保持部内にバッテリケースを直立状態で仮固定する。
そして、搬送路内を搬送させ、電池要素となる部品が組付けられまたは電解液等がバッテリケースの内部に注入される(例えば、特許文献1参照)。
注入後、バッテリケースに金属製の電極が突出された蓋体が被せられて溶接等によりバッテリケースが密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池製造用搬送治具では、組付けまたは密封の際、仮固定されるバッテリケースの位置決め精度を向上させるために、バッテリケースを保持する押圧機構が設けられている。押圧機構の押圧方向は、例えば前,後方向、または左,右方向から押圧する押圧機構が望ましい。
しかしながら、複数の方向から押圧する押圧機構では、押圧力を伝達する機構が複雑となる。また、複数のアクチュエータを用いることも考えられるが、部品点数が増大するとともにクランプのタイミングを一致させることは困難であった。
【0005】
また、バッテリケースの寸法のバラツキによる位置精度の低下を補うため、反発力の大きなバネ等を用いて所望の把持力を発揮させようとすると搬送治具の筐体の強度を向上させなければならない。
このため、搬送治具が大型化して、搬送路内における必要スペースが増大して作業性を低下させる虞があり、さらなる改善が求められている。
そこで、本発明は、簡易な構成で位置決め精度を向上させることができる電池製造用搬送治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電池製造用搬送治具は、有底筒体のバッテリケースを保持する凹状の保持部を有する筐体と、バッテリケースの側面を対向する方向からクランプする第1クランプ機構と、第1クランプ機構のクランプ方向とは直交する方向からバッテリケースの側面をクランプする第2クランプ機構と、保持部内に少なくとも一部が配置されてスライド移動する単体の操作体と、操作体のスライド方向の動作を第1クランプ機構および第2クランプ機構のそれぞれのクランプ方向の動作に変換する変換機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成でバッテリケースを仮固定して位置決め精度を向上させることができる電池製造用搬送治具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の電池製造用搬送治具で、全体の構成を説明する模式的な正面図である。
【
図2】実施形態の電池製造用搬送治具で、
図1中II-II線に沿った位置での模式的な縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の電池製造用搬送治具で、操作体のスライド移動により第1クランプ機構がアンクランプ状態となった状態を説明する模式的な正面図である。
【
図4】実施形態の電池製造用搬送治具で、操作体のスライド移動により、第2クランプ機構がアンクランプ状態となった状態を説明する
図1中II-II線に沿った位置に相当する位置での模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態]
図1は、本発明の基本的な実施形態の電池組立体2の搬送治具1の構成を示すものである。
なお、本実施形態では、バッテリケース3aのうち、バッテリケース3aの長手方向に沿う方向と、短辺側の第1側面3f,3fを対向する方向でクランプする第1クランプ方向Wとは同じである。このため、
図1中左,右方向で示される電池組立体2の長手方向を第1クランプ機構10の第1クランプ方向Wとして説明する。
また、
図2に示すように、バッテリケース3aの短辺に沿う方向とバッテリケース3aの長辺側の第2側面3g,3gを対向する方向でクランプする第2クランプ方向
Dとは同じである。このため、
図2中前,後方向で示される電池組立体2の短手方向を第2クランプ機構20の第2クランプ方向
Dとして説明する。したがって、第1クランプ方向Wと第2クランプ方向Dとは互いに直交するように構成されている。
【0011】
本実施形態の電池組立体2は、バッテリケース3aと、電極端子3b,3cが突設された金属製の蓋体3dと、バッテリケース3aの内部に収容される電池要素となる部品等を有している。このうち、バッテリケース3aは、第1クランプ方向Wに長手方向を有する横長で有底角筒体形状を呈している。
【0012】
バッテリケース3aの上面部は、略長方形状に形成されていて、バッテリ開口部が開口形成されている。電池製造時、バッテリ開口部を介して電池要素としての部品が組付けられて、バッテリ開口部に蓋体3dが被せられて周縁がレーザ溶接等によって溶接されて密封される。蓋体3dには、一対の電極端子3b,3cが上方に向けて突設されている。
【0013】
また、本実施形態の電池組立体2の搬送治具1は、ボックス状の筐体6の上面部に治具開口が開口形成されている。治具開口は、バッテリケース3aを上方から挿入して、電池組立体2を製造する際に下部を仮固定できるように、上面視略長方形形状に形成されている。
また、筐体6の内部には、治具開口を介して内部空間を外部空間と連通させる凹状の保持部5が形成されている。保持部5は、治具開口から挿入されたバッテリケース3aの下部を保持して、上部のバッテリ開口部を上向きとする直立状態で保持する。
【0014】
[第1クランプ機構]
図1に示すように、保持部5には、操作体30によってクランプおよびアンクランプ操作される第1クランプ機構10および、第1クランプ機構10と連動する第2クランプ機構20が設けられている。
このうち、第1クランプ機構10は、第1クランプ部材としての左,右側クランプ部材11,12を設けている。左,右側クランプ部材11,12は、バッテリケース3aの外側面のうち、第1側面3f,3fの上下方向中間位置を第1クランプ方向Wに沿って左,右方向からクランプする。
左,右側クランプ部材11,12は、操作体30の左,右両側にそれぞれ配置される左,右スライドベース13,14と、当接面部15,16とを有している。
左,右スライドベース13,14は、それぞれ保持部5内で上下方向に長手方向を沿わせる直方体形状を呈するように形成されている。左,右スライドベース13,14の上端には、第1クランプ方向Wで対向するように側面視略L字型の当接面部15,16が突設されている。
【0015】
また、各左,右側クランプ部材11,12には、一対の直動軸18,18と連結部材19,19とが設けられている。このうち、直動軸18,18は、左,右スライドベース13,14の内側対向面から第1クランプ方向Wにそれぞれの軸方向を沿わせて並設されている。
【0016】
本実施形態の直動軸18,18は、操作体30のスライド方向Vに所定の間隔をおいて平行に並設されている。
そして、筐体6の保持部5の内側面には、各直動軸18を摺動可能にガイドするガイド部17,17がそれぞれ設けられている。ガイド部17は、第1クランプ方向Wに連通方向を沿わせるとともに、上下方向に所定の間隔をおいて挿通孔が形成されている。
そして、これらの挿通孔には、直動軸18,18が挿入されて、左,右側クランプ部材11,12が傾くことなく、第1クランプ方向Wに沿って近接および離反させてスライドガイドする。
【0017】
また、直動軸18,18の両先端部18a,18a間には、棒状の連結部材19,19が接続されている。そして、連結部材19,19と筐体6の保持部5側内側面との間には、バネ部材50,50が設けられている。
本実施形態では、バネ部材50の一端が筐体6に固定された受け部材51に当接されている。また、バネ部材50の他端は、各連結部材19,19の側面19a,19aに当接されている。
【0018】
そして、第1クランプ機構10の左,右側クランプ部材11,12は、バネ部材50,50によって互いに近接する方向に向けて付勢されている。
このため、操作力が第1クランプ機構10に加わらない状態では、バネ部材50,50の付勢力により左,右側クランプ部材11,12の当接面部15,16は、バッテリケース3aの第1側面3f,3fを両側から押圧してクランプ状態となる。
【0019】
また、第1クランプ機構10に操作力を加えて、左,右側クランプ部材11,12を第1クランプ方向Wに沿って拡開させると、バネ部材50,50の付勢力に抗して左,右側クランプ部材11,12間が離間する。そして、当接面部15,16は、バッテリケース3aの第1側面3f,3fから離れてアンクランプ状態となる。
【0020】
本実施形態の第1クランプ機構10は、ガイド部17,17の挿通孔が平行に形成されている。このため、直動軸18,18は、円滑にガイド部17,17内でスライドガイドされて左,右側クランプ部材11,12が傾くことがない。したがって、第1クランプ方向Wに沿って左,右側クランプ部材11,12をクランプ状態またはアンクランプ状態として、当接面部15,16をバッテリケース3aの第1側面3f,3fの所望の位置に当接させることができる。
また、左,右側クランプ部材11,12はクランプまたはアンクランプ動作中傾くことがない。このため、摺動部分に不必要な摩耗が生じる虞が少なく、金属粉や樹脂粉の発生が抑制されて、耐久性も良好である。
【0021】
[第2クランプ機構]
また、本実施形態の搬送治具1には、第1クランプ機構10を動作させる操作体30によって同時に操作される第2クランプ機構20が設けられている。第2クランプ機構20は、第1クランプ方向Wとは、直交する第2クランプ方向D(
図2参照)で、バッテリケース3aの第2側面3g,3gをクランプするクランプ状態または開放するアンクランプ状態とすることができる。
第2クランプ機構20は、第2クランプ方向Dに近接離反する第2クランプ部材21と、筐体6に固定されるベース部材22とを有している。これらの第2クランプ部材21およびベース部材22は、第2クランプ方向Dで保持部5に保持されたバッテリケース3aの前,後側にそれぞれ設けられている。
【0022】
このうち、第2クランプ部材21は、保持部5内に少なくとも一部が配置されて第2クランプ方向Dにスライド移動する前後スライドベース23と、前後スライドベース23の上端部からベース部材22方向に突設される当接面部24とを有して、側面視略コ字状に形成されている。
また、ベース部材22は、上端部の内側にバッテリケース3aをクランプする当接面部25を突設している。当接面部24,25は、第2クランプ方向Dに沿ってバッテリケース3aの前後両側から第2側面3g,3gにそれぞれ当接してクランプもしくはアンクランプするように構成されている。
【0023】
さらに、前後スライドベース23と筐体6の内側面と間には、上,下一対のバネ部材60,60が設けられている。バネ部材60は、筐体6の内側面に設けられた受け部材61に一端を当接させるとともに、前後スライドベース23の側面の上下方向で第2転動ローラ部材34に対応する位置に他端を当接させている。
これにより、バネ部材60は、前後スライドベース23を第2クランプ方向Dに沿ってベース部材22方向に付勢している。このため、操作力が第2クランプ機構20に加わらない状態では、バネ部材60の付勢力により、前後スライドベース23は、第2クランプ方向Dに沿って押圧されて、バッテリケース3aの前後両側から第2側面3g,3gを当接面部24,25がクランプするように構成されている。
【0024】
[変換機構]
さらに、本実施形態の搬送治具1には、操作体30を第1クランプ機構10および第2クランプ機構20と連動させる変換機構40が備えられている。変換機構40は、スライド方向Vの動作を第1クランプ機構10の第1クランプ方向Wの動作および第2クランプ機構20の第2クランプ方向Dの動作に変換する。
このうち、操作体30は、保持部5内に少なくとも一端部31aが配設されて下方の他端部31bを筐体6の下方に突出させている。そして、操作体30は、上下のスライド方向Vに沿ってスライド移動するように構成されている。
そして、変換機構40は、操作体30のスライド方向Vの動きを各左,右側クランプ部材11,12における第1,第2クランプ方向W1,W2(
図3参照)への動き、および第2クランプ部材21の第2クランプ方向D(
図4参照)への動きに変換する。
【0025】
すなわち、本実施形態の変換機構40は、カムローラ機構として構成されていて、
図1に示すように第1クランプ機構10の連結部材19,19にそれぞれ回転自在に軸支された第1転動ローラ部材32,32を有している。
また、変換機構40は、これらの第1転動ローラ部材32,32と当接して、押圧する第1傾斜面部33,33を有している。
第1傾斜面部33,33は、操作体30のスライド方向Vと直交する方向へ離間するように傾斜して、第1クランプ機構10の各左,右スライドベース13,14側の第1側面30a,30bにそれぞれ左右対称に形成されている。
各第1傾斜面部33は、操作体30のスライド方向V方向に沿った上方への移動につれて拡開する方向に傾斜して形成されている。そして、第1傾斜面部33,33は、第1転動ローラ部材32,32を転動可能に当接させている。
【0026】
また、
図2に示すように変換機構40は、第2クランプ機構20の第2クランプ部材21に設けられた第2転動ローラ部材34と、操作体30のうち、第2クランプ機構20側の第2側面30
cに形成される第2傾斜面部35とを有している。
第2傾斜面部35は、操作体30のスライド方向Vと直交する方向へ離間するように傾斜して形成されている。また、第2転動ローラ部材34は、保持部5内にて第2クランプ部材21の下端部に軸支されている。
そして、第2傾斜面部35は、第2転動ローラ部材34を転動可能に当接させている。
【0027】
本実施形態の操作体30は、直方体形状に形成されていて、第1側面30a,30b同士は反対側で、スライド方向Vの中心軸を挟んで対称に位置する。また、これらの第1側面30a,30bと第2側面30cとは、面外方向を直交させるように設けられている。
さらに、第1傾斜面部33,33は、操作体30の長手方向(スライド方向V)で同じ上下方向位置に形成されている。また、第2傾斜面部35は、第1傾斜面部33,33よりも操作体30の長手方向で下方向位置に形成されている。
【0028】
そして、本実施形態では、
図3に示すように、第1傾斜面部33,33が第1転動ローラ部材32,32を当接させて、第1クランプ方向Wに第1クランプ機構10の拡開を開始させる操作体30の上下方向位置では、
図4に示すように、第2傾斜面部35が第2転動ローラ部材34を当接させて第2クランプ部材21を第2クランプ方向Dへの拡開を開始させる位置となる各カムローラ機構のタイミングが得られるように、第1傾斜面部33,33および第2傾斜面部35のスライド方向Vの位置が設定されている。
【0029】
次に、実施形態の電池組立体2の搬送治具1の作用効果について説明する。
実施形態の搬送治具1では、簡易な構成でバッテリケース3aを仮固定して搬送治具1に対する位置決め精度を向上させることができる。
詳しくは、
図1および
図2に示すようなクランプ状態から操作体30をスライド方向Vに沿って上方に移動させると、バネ部材50,60の付勢力に抗して第1クランプ機構10の左,右側クランプ部材11,12は拡開するとともに、第2クランプ機構20の第2クランプ部材21は、第2クランプ方向Dに沿って後方に開放される。
このため、
図3および
図4に示すように、搬送治具1は、アンクランプ状態となる。
また、操作体30をスライド方向Vに沿って下方に移動させると、バネ部材50,60の付勢力によって第1クランプ機構10の左,右側クランプ部材11,12は閉じるとともに、第2クランプ機構20の第2クランプ部材21は、第2クランプ方向Dに沿って前方に移動して
図1および
図2に示すように、バッテリケース3aを第1側面3f,3fおよび第2側面3g,3gからクランプする。
【0030】
このように、変換機構40は、操作体30のスライド方向Vの動きを第1クランプ機構10の左,右側クランプ部材11,12を拡開させる第1クランプ方向Wの動きに変換する。また、同時に操作体30のスライド方向Vの動きを第2クランプ機構20の第2クランプ部材21を第2クランプ方向Dに沿わせて後方に開放する動きに変換する。
このため、操作体30の他端部31bをスライド方向Vに沿って上方に移動させるだけで、アンクランプ状態とすることができ、搬送治具1の治具開口を介して、保持部5内のバッテリケース3aを上方から挿入もしくは、取出すことができる。
【0031】
また、
図3および
図4に示すように、保持部5内にバッテリケース3aが挿入された状態で、
図1および
図2に示すように、操作体30をスライド方向Vに沿って下方に移動させる。
第1クランプ機構10の左,右側クランプ部材11,12は、バネ部材50,50によって付勢されている。
このため、操作体30の下方への退避に伴い、左,右側クランプ部材11,12は、第1クランプ方向Wに沿って近接方向に移動する。そして、当接面部15,16がバッテリケース3aの第1側面3f,3fに両側から当接して挟持する。
この際、本実施形態では、バネ部材50,50により当接面部15,16がバッテリケース3aの第1側面3f,3fに押圧される。このため、バッテリケース3aは、第1クランプ方向Wで確実に位置決め固定される。
【0032】
さらに本実施形態の第1クランプ機構10では、筐体6の保持部5の内側面に一対のガイド部17,17がそれぞれ設けられている。ガイド部17は、第1クランプ方向Wに連通方向を沿わせるとともに、上下方向に所定の間隔をおいて平行となるように挿通孔が形成されている。
そして、これらの一対のガイド部17,17内に、左,右スライドベース13,14の対向面から第1クランプ方向Wに軸方向を沿わせて並設されている直動軸18,18が摺動可能にガイドされている。
【0033】
また、これらの直動軸18,18の両先端部18a,18a間は、連結部材19によって連結されている。そして、連結部材19に変換機構40の押圧点となる第1転動ローラ部材32が軸支されている。
このため、操作体30から第1傾斜面部33を介して転動ローラ部材32に伝達されるアンクランプに用いられる作用力は、一対の直動軸18,18の間にバランスよく加えられて、左,右スライドベース13,14の平行を維持したまま、クランプおよびアンクランプ動作を行うことができる。
【0034】
本実施形態では、各第1傾斜面部33,33に第1転動ローラ部材32,32が転動するように当接されている。また、第2傾斜面部35に第2転動ローラ部材34が転動するように当接されている。このため、クランプおよびアンクランプ動作を行う際に摺接する部分がない。したがって、摺動抵抗よりも比較的小さな回転抵抗を有する第1,第2転動ローラ部材32,34によって円滑に操作が可能である。
さらに、左,右スライドベース13,14が平行を維持している。このため、クランプ状態でのバッテリケース3aの位置精度をさらに向上させることが出来る。よって、本実施形態の搬送治具1では、搬送路内を搬送させ、電池要素となる部品を組付ける際の作業精度が向上する。
【0035】
また、
図2に示すように操作体30をスライド方向Vに沿って下方に移動させると、第2クランプ機構20の第2クランプ部材21が第2クランプ方向Dに沿って前方に移動してバッテリケース3aの第2側面3gに当接する。
このため、搬送治具1の治具開口を介して、バッテリケース3aを保持部5内へ上方から挿入もしくは、保持部5内から取出すことができる。
そして、バネ部材60によりバッテリケース3aの第2側面3gに当接した当接面部24は、ベース部材22の当接面部25へバッテリケース3aを付勢する。このため、バッテリケース3aは、第2クランプ方向Dでも確実に位置決め固定される。
【0036】
このように、本実施形態の搬送治具1では、操作体30の下方への移動でバッテリケース3aが第1クランプ機構10および第2クランプ機構20によって直交する二方向からクランプされる。また、操作体30を上方へ移動させると、第1クランプ機構10および第2クランプ機構20が同時に開放されて、バッテリケース3aを介装もしくは抜出することができる。したがって、操作性が良好である。
【0037】
また、バッテリケース3aの第1,第2側面3f,3gは、4方向から第1クランプ機構10および第2クランプ機構20によってクランプされる。このため、大きな反発力のバネ部材を用いなくてもバッテリケース3aを十分に安定させて仮固定することができる。
しかも、第2クランプ機構20のベース部材22は、筐体6に固定されている。このため、位置決めの基準位置を容易に設定でき、さらに位置決め精度を向上させることができる電池組立体2の搬送治具1が提供される。
【0038】
さらに、
図1に示す第1傾斜面部33が設けられている第1側面30aまたは30bと、
図2に示す第2傾斜面部35が設けられている第2側面30cとが直交して直方体形状の操作体30に設けられている。
このため、設置スペースの都合で第1転動ローラ部材32,32と、第2転動ローラ部材34とをスライド方向Vで上下に異なる位置に配置しても、各第1傾斜面部33および第2傾斜面部35のそれぞれ当接するタイミングを揃えて、同時にクランプおよびアンクランプさせることができる。
したがって、この点においても別途アクチュエータや伝達機構を設ける必要がないため、簡易な構成でバッテリケース3aを仮固定して位置決め精度を向上させることができる。
【0039】
また、筐体6内の構成を簡易なものとすることができる。このため、筐体6の外形寸法が増大することなく、搬送治具1を小型化して搬送路内における必要スペースが増大しない。
すなわち、変換機構40は、異なる方向からクランプする第1クランプ機構10および第2クランプ機構20に対して、単体の操作体30をスライド方向Vに動かして同時に操作できる。
しかも、筐体6の底面側から突出した操作体30の他端部31bをスライド方向Vに沿って移動させることにより、複数の方向からバッテリケース3aをクランプまたはアンクランプさせることができる。このため、筐体6の外部に設けたアクチュエータ等を用いて操作可能で、スペース効率および操作性が良好である。
【0040】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0041】
本実施形態の電池組立体2の搬送治具1では、変換機構として、直動カムローラ機構を用いたものを示して説明してきたが特にこれに限らず、たとえば、第1転動ローラ部材に代えて斜面を第1傾斜面部33に摺接させる構成であってもよく、操作体のスライド方向の動作を第1クランプ機構10および第2クランプ機構20のそれぞれの第1,第2クランプ方向W,Dの動作に変換する変換機構であればどのような伝達要素の組合わせであってもよい。すなわち、変換機構の形状、数量および材質が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送治具
2 電池組立体
3a バッテリケース
6 筐体
10 第1クランプ機構
11 左側クランプ部材(第1クランプ部材)
12 右側クランプ部材(第1クランプ部材)
20 第2クランプ機構
22 ベース部材(第2クランプ部材)
23 移動クランプ部材(第2クランプ部材)
30 操作体
40 変換機構