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特許7470565フィルム用スチレン-メタクリル酸系共重合体樹脂組成物、フィルム、及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】フィルム用スチレン-メタクリル酸系共重合体樹脂組成物、フィルム、及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20240411BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20240411BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20240411BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240411BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L33/02
C08L25/10
B32B27/30 B
C08J5/18 CEQ
C08J5/18 CET
C08J5/18 CEY
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020070775
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167373
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英次
(72)【発明者】
【氏名】宮島 悠平
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156880(JP,A)
【文献】特開2012-031344(JP,A)
【文献】特開2014-101403(JP,A)
【文献】特開2017-133040(JP,A)
【文献】特開2007-284601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B32B
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン-メタクリル酸系共重合体及びスチレン-ブタジエン共重合体を含むフィルム用樹脂組成物であって、
前記フィルム用樹脂組成物は、メタクリル酸単量体単位を2.0~8.0質量%、及び、共役ジエン単量体単位を1.0~6.0質量%、を含み、
前記スチレン-ブタジエン共重合体は、ブタジエン比率が55質量%以上であり、
ビカット軟化温度が104℃~109℃であり、
重量平均分子量が22万~35万である、
フィルム用樹脂組成物(但し、メタクリル酸メチルとブタジエンとスチレンを含むMBS樹脂を0.5~7.0質量%含むもの、及び1~15質量%含むものを除く)
【請求項2】
厚みが15~60μmであり、少なくとも1軸方向に延伸されている、請求項1に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層フィルム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のフィルムが少なくとも片面に積層された発泡シート。
【請求項5】
請求項4に記載の発泡シートの成形品である食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と強度に優れるスチレン-メタクリル酸系共重合体組成物、その樹脂組成物からなるフィルム及び成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン-メタクリル酸系共重合体は、一般のポリスチレンに比較して、耐熱性に優れることから、食品容器等の包装材料、住宅の断熱材用途の発泡ボード、光拡散板等の原料として使用されている。包装材料の分野では、スチレン-メタクリル酸系共重合体を押出成形した発泡シートは、耐熱性と断熱性に優れるため、電子レンジ等で加熱に供する食品包装容器に成形され使用されている。また、スチレン-メタクリル酸系共重合体を押出成形して二軸延伸されたシートは、耐熱性と強度に優れるため、電子レンジ等で加熱に供する食品包装容器の蓋材に成形され使用されている。
【0003】
一方、スチレン-メタクリル酸系共重合体は、一般のポリスチレンに比べて、脆いという欠点を有しており、例えば、スチレン-メタクリル酸系共重合体の脆さを改良するため、MBS樹脂やスチレン-ブタジエン共重合体SBSなどのエラストマー成分を配合することが提案されている。
しかしながら、MBS樹脂やスチレン-ブタジエン共重合体などのエラストマー成分のみによる改良でもフィルムに成形加工する際の脆性改良には、多くの添加量が必要となり、スチレン-メタクリル酸系共重合体が本来有する耐熱性が低下する問題があるため、スチレン-メタクリル酸共重合体の改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-163949号公報
【文献】特開平2-58548号公報
【文献】特開平3-269040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、スチレン-メタクリル酸系共重合体が有する耐熱性を損ねることなく、脆さが改良されたフィルム用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(1)~(5)に示すところである。
(1)スチレン-メタクリル酸系共重合体及び共役ジエン系重合体を含むフィルム用樹脂組成物であって、前記フィルム用樹脂組成物は、メタクリル酸単量体単位を2.0~8.0質量%、及び、共役ジエン単量体単位を1.0~6.0質量%、を含み、ビカット軟化温度が104℃~110℃であり、重量平均分子量が22万~35万である、フィルム用樹脂組成物。
(2)厚みが15~60μmであり、少なくとも1軸方向に延伸されている、(1)に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
(3)(1)に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層フィルム。
(4)(2)又は(3)に記載のフィルムが少なくとも片面に積層された発泡シート。
(5)(4)に記載の発泡シートの成形品である食品容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスチレン-メタクリル酸系共重合体組成物は、欠点である脆さが改良されていることから、フィルム成形加工時における破断を防止することができ、耐熱性といった本来の特徴も維持している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、フィルム用樹脂組成物であって、スチレン-メタクリル酸系共重合体及び共役ジエン系重合体を含む。
【0009】
スチレン-メタクリル酸系共重合体は、スチレン系単量体とメタクリル酸単量体とに由来する単位構造を有する共重合体である。スチレン-メタクリル酸系共重合体は、スチレン系単量体とメタクリル酸単量体を共重合して得ることができる。スチレン系単量体とは、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の単独又は混合物であり、好ましくはスチレンである。
【0010】
スチレン-メタクリル酸系共重合体には、その他の単位構造を少量有していても良い。その他の単位構造は5%以下が好ましい。その他の単位構造としては、スチレン系単量体及びメタクリル酸単量体と共重合可能なビニル系単量体に由来する単位構造がある。共重合可能なビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0011】
スチレン-メタクリル酸系共重合体の重合方法としては、ポリスチレン等で工業化されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等公知の重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0012】
スチレン-メタクリル酸系共重合体の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤として、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾネート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)、エチル-3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0013】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0014】
樹脂組成物中のメタクリル酸単量体単位含有量は、2.0~8.0質量%であり、好ましくは2.5~7.8質量%であり、更に好ましくは3.0~7.5質量%である。メタクリル酸単量体単位含有量が2.0質量%未満では耐熱性が不十分となる。また、メタクリル酸単量体単位含有量が8.0質量%を超えると、生産性を考慮した場合、粘度を下げることによる脆性低下を引き起こす。また、共重合体の製造工程で共重合体中に大量にゲルが生成することがある。樹脂組成物中のメタクリル酸単量体単位の含有量は、具体的には例えば、2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
メタクリル酸単量体単位含有量は、重合で作製するスチレン-メタクリル酸系共重合体の原料中のメタクリル酸単量体濃度や、ポリスチレンに対しスチレン-メタクリル酸系共重合体の混合によっても調整することができる。重合工程で複数の反応器を使用する場合は、各反応器にメタクリル酸系単量体を分割添加してもよい。
【0016】
スチレン-メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸単量体単位含有量の測定は室温で実施した。スチレン-メタクリル酸系共重合体0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム0.1mol/Lエタノール溶液にて中和滴定を行い、終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、メタクリル酸系単量体の質量基準の含有量を算出した。なお、中和滴定は電位差自動滴定装置として京都電子工業株式会社製AT-510を使用して測定を行った。
【0017】
樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は22万~35万であり、好ましくは22万~33万、更に好ましくは、23万~30万である。Mwが22万未満になると、十分に脆さを改善できない可能性がある。また、Mwが35万を超えると、成形加工時の粘度が著しく上昇し、成形加工性が低下して、生産性が悪化する。樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、具体的には例えば、22、23、24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、スチレン-メタクリル酸系共重合体における重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等、ポリスチレン混合、その他の共重合体の混合によって制御することができる。
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
また樹脂組成物からスチレン-メタクリル酸系共重合体の分子量を測定する際は、組成物中の溶媒に不溶なゴム成分等(SBS、MBS)を遠心分離によって除去した後、測定することができる。
【0019】
共役ジエン系重合体は、ブタジエン重合体又はスチレン-ブタジエン共重合体等である。スチレン-ブタジエン共重合体は、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、耐衝撃ポリスチレン、及びそれらの水素添加物等である。スチレン-ブタジエン共重合体のブタジエン比率は、好ましくは55質量%以上である。ブタジエン比率が55質量%未満では、期待される脆さの改良効果が発現するスチレン-ブタジエン共重合体の含有量が多くなり、耐熱性や剛性が低下する場合がある。
共重合体を構成する共役ジエンの比率は、四酸化オスミウムを触媒としてジターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解した後、分解物にメタノールを添加して析出させた成分をポリスチレン成分として重量を測定することで算出した。
【0020】
樹脂組成物中の共役ジエン単量体単位の含有量は1.0~6.0質量%であり、好ましくは1.2~3.0%である。共役ジエンの含有量が1.0質量%未満では、脆さの改良が不十分であり、6.0質量%を超えると、透明性が低下する。また、耐熱性や剛性も低下する。樹脂組成物中の共役ジエン単量体単位の含有量は、具体的には例えば、1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
共役ジエン系重合体の添加方法としては、成形加工時にスチレン-メタクリル酸系共重合体とブレンドする方法が挙げられる。また、スチレン-メタクリル酸系共重合体と共役ジエン系重合体を単軸若しくは二軸押出機で溶融ブレンド方法が挙げられる。その他、スチレン-メタクリル酸系共重合体の重合工程、脱揮工程、造粒工程で共役ジエン系重合体を添加混合する方法が挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0022】
樹脂組成物のビカット軟化温度は、104℃~110℃であり、好ましくは105~109℃であり、更に好ましくは106~108℃である。このような範囲とすることで、耐熱性及び成形性が優れる。樹脂組成物のビカット軟化温度は、具体的には例えば、104,105,106,107,108,109,110℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
樹脂組成物は、必要に応じて、ステアリン酸、高級脂肪酸金属塩、エチレンビスステアリルアミド等の滑剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤、充填材、難燃剤、高分子量加工助剤(改質剤)等の添加剤が含まれていても良い。
【0024】
高分子量加工助剤(改質剤)は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であり乳化重合法など、公知の方法にて製造される。入手可能な加工助剤としては、三菱ケミカル社製 メタブレンPシリーズ、株式会社カネカ製 PAシリーズ などが挙げられる。
【0025】
添加剤の添加方法としては、成形加工時にブレンドする方法のほか、スチレン-メタクリル酸系共重合体製造時の添加、スチレン-ブタジエン共重合体製造時の添加、また、スチレン-メタクリル酸系共重合体とスチレン-ブタジエン共重合体を単軸若しくは二軸押出機で溶融ブレンド方法が挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0026】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物並びにフィルムには、当該樹脂組成物からなるフィルムの端材のほか、発泡シート又は非発泡シートを二次成形した際に発生するスケルトンと呼ばれる打抜き屑やそのリサイクルペレット、ポリスチレン樹脂、スチレン-メタクリル酸系共重合体、耐衝撃ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂や、それを主体としたリサイクルペレットを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
2.成形品
本発明の一実施形態に係る成形品は、上記樹脂組成物を含むフィルムであり、好ましくは上記樹脂組成物を主体として含むフィルムである。一実施形態においては成形品は、上記樹脂組成物からなるフィルムである。
【0028】
本発明の一実施形態に係るフィルムは、上記樹脂組成物を用い公知のTダイ法、チューブラー法などで押し出したシート又はフィルムを一軸あるいは多軸に延伸することによって得ることができる。一軸延伸の例としては、押し出されたシート又はフィルムをテンターで押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたシート又はフィルムを押し出し方法と同方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状シート又はフィルムを円周方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状シート又はフィルムを押し出し方向と同方向に延伸する方法が挙げられる。二軸延伸の例としては、押し出されたシートをロールで押し出し方向に延伸した後、テンターで押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたシートをテンターで同時に2軸延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを押し出し方向及び円周方向に同時又は別々に延伸する方法等が挙げられる。
少なくとも一軸に延伸されたフィルムであることを確認するには、130℃~150℃に加熱されたオーブン中に試験片を5分程度放置すると収縮方向に寸法変化することから判別できる。延伸はフィルム押出における冷却、引取り過程で押出方向に掛けることも含まれる。
【0029】
本発明の上記樹脂組成物を含む又は上記樹脂組成物からなるフィルムの厚さは15μmから60μmが好ましく、より好ましくは17μmから45μmである。15μmより薄いと成形加工時しにくくなる。60μmを超えると軽量化の観点で望ましくない。
【0030】
本発明の一実施形態に係る成形品は、多層フィルムであってもよい。多層フィルムは、上記樹脂組成物を含む層又は上記樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する。
複層フィルムの作製方法は公知の方法である共押出、押出コーティング、接着剤を介したドライラミネーションが挙げられる。
【0031】
本発明の組成物からなるフィルムは、加飾性を付与する目的で公知の方法によって少なくとも片面に印刷を施すことが出来る。
【0032】
本発明の一実施形態に係る成形品は、上記フィルムが少なくとも片面に積層された発泡シートであってもよい。上記フィルムは、公知の押出発泡シート製造方法で作製されたシートに対し、熱ロールを用いてラミネーションすることが出来る。ラミネーションする場合にはリサイクルを考慮するとスチレン系の発泡シートがより好ましい。
【0033】
また、上記樹脂組成物を発泡シート用の樹脂組成物として適用してもよい。別の主要成分に対して本発明の樹脂組成物からなるフィルムを端材として混合してもよく、主体成分として使用してもよい。
【0034】
本発明の一実施形態に係る成形品は、発泡シートの成形品である食品容器であってもよい。上記樹脂組成物により得られるフィルムを積層した発泡シートは、真空成形や圧空成形、マッチドモールド成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、リッジ成形、プラグアンドリッジ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等、公知の熱成形方法を用いて、トレー、弁当容器、丼容器、カップ、蓋付箱型等の各種形状や大きさの容器に加工することができる。
【実施例
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(スチレン-メタクリル酸系共重合体PS-1~PS-5の合成)
下記第1~第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
【0037】
第1反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第3反応器:容積16Lのスタティックミキサー付プラグフロー反応器
【0038】
各反応器の条件は以下の通りとした。
【0039】
第1反応器:[反応温度] 124℃
第2反応器:[反応温度] 133℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120~125℃の温度勾配がつくように調整
【0040】
原料液としては、以下のものを用いた。
【0041】
スチレン76.1重量部、メタクリル酸2.7重量部、エチルベンゼン14重量部、重合開始剤として1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂株式会社製パーヘキサCを、第1反応器の入口よりモノマーに対し250ppmの添加濃度となるように原料溶液に添加混合した。
【0042】
原料液を12kg/hrの供給速度で124℃に設定した第1反応器に連続的に供給し重合した後、次いで133℃に設定した第2反応器に連続的に装入し重合した。更に120~125℃の温度勾配がつくように調整した第3反応器にて重合を進行させた。
この重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出して冷却した後切断してペレット化した。なお、1段目の予熱器の温度は220℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は600mmHgとし、2段目の予熱器の温度は230℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は7.0mmHgとした。
得られたスチレン-メタクリル酸共重合体PS-1は重量平均分子量26万、メタクリル酸含量は3.9質量%であった。
同様の手法で、モノマー流量は同一としてスチレン、メタクリル酸、エチルベンゼンの混合比率、開始剤濃度、反応器温度、真空脱揮槽温度条件を変更してPS-2~PS-5を作製した。
【0043】
(実施例1~5、比較例1~6)
表1に示すスチレン-メタクリル酸系共重合体PS-1~PS-5を用い、共役ジエン系重合体としてスチレンブタジエンブロック共重合体のSBS-1(旭化成製 タフプレン125)、改質剤A(三菱化学株式会社製 メタブレンP531A)を表2に示した配合で添加し、二軸押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SX)を用いて、フィード量20kg/h、スクリュー回転数250rpm、シリンダー温度180~220℃設定で溶融押出ブレンドして、ペレット化した。
【0044】
得られたペレットを射出成形して、各種特性の評価を行った結果を表2に示す。
なお、ビカット軟化温度の測定は JIS K 7206に準拠し、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで求めた。
【0045】
フィルム作製は以下の方法で行った。
リップ幅100mm、リップ開度0.5mmのスクリュー径20mmのTダイ型押出機にて温度設定230℃、スクリュー回転数30rpmで40μmのフィルムを作製した。
【0046】
フィルムの脆性評価は以下の方法で行った。
タテ10mm×ヨコ40mmに切削したフィルムを、長手方向に2つ折りにした際にフィルムが破断するか評価した。破断しないフィルムは〇、2つ折りにした際に破断したフィルムは×とした。
【0047】
成形性の評価は以下の方法で行った。
フィルム成形において、巻き取り時の破れが観察されなかった例を〇、巻き取り時に破れが頻繁にあった例を×とした。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性と脆性のバランスに優れており、食品包装容器等に用いられるラミネーション用フィルムに好適である。