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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】タイヤモデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240411BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240411BHJP
   G06F 30/15 20200101ALI20240411BHJP
   G06T 11/20 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G06F30/10
B60C19/00 Z
G06F30/15
G06T11/20 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020088437
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021182349
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武市 朋之
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078946(JP,A)
【文献】特開2006-168294(JP,A)
【文献】特開2017-094504(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108287975(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
B60C 19/00
G06F 30/15
G06T 11/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤモデルの断面図をコンピュータで作成する方法であって、
モールドプロファイル作図部が、タイヤ断面の外輪郭線を表すモールドプロファイルを作図するステップと、
ビードコア作図部が、前記モールドプロファイル内にビードコアを作図するステップと、
境界ライン作図部が、タイヤのビード部における前記ビードコアの幅方向外側において前記ビードコアの半径方向内側から半径方向外側に延びる部材境界ラインであって、基準ラインの幅方向内側において当該基準ラインに沿って延びる前記部材境界ラインを作図する境界作図ステップと、を含み、
前記境界作図ステップは、前記ビードコアの底面に対して当該ビードコアの半径方向内側に所定の距離を隔てて位置する始点から、前記ビードコアの底面の外側端に対して当該ビードコアの幅方向外側に所定の距離を隔てて位置する中継点を通り、前記ビードコアの半径方向外側において前記基準ライン上に位置する外側基準点を中心とし当該外側基準点における前記部材境界ラインとの距離を半径とする距離規定円弧と接する線を、前記部材境界ラインとして作図する、タイヤモデルの作成方法。
【請求項2】
前記タイヤモデルの作成方法は、
外側ゴム層ライン作図部が、前記ビード部における外表面をなす外側ゴム層の内側ラインである外側ゴム層ラインを作図するステップと、
補強層作図部が、前記ビードコアの半径方向内側を通って幅方向内側から幅方向外側に折り返されるタイヤ部材であって前記外側ゴム層の幅方向内側にビードパッドを介して配される補強層を作図するステップと、を更に含み、
前記補強層を作図するステップは、
(A) 前記補強層の外側ラインである補強層外側ラインを前記部材境界ラインとしかつ前記外側ゴム層ラインを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、第1始点から、第1中継点を通り、第1外側基準点を中心とし前記ビードパッドの厚みを半径とする第1距離規定円弧と接する前記補強層外側ラインを作図するステップと、
(B) 前記補強層の内側ラインである補強層内側ラインを前記部材境界ラインとしかつ前記外側ゴム層ラインを前記基準ラインする前記境界作図ステップであって、第2始点から、第2中継点を通り、前記第1外側基準点を中心とし前記ビードパッドの厚みと前記補強層の厚みとの合計厚みを半径とする第2距離規定円弧と接する前記補強層内側ラインを作図するステップと、
(C) 前記補強層の半径方向外端の位置に基づいて前記補強層外側ラインと前記補強層内側ラインとの間に前記補強層の上端ラインを作図するステップと、を含む、請求項1に記載のタイヤモデルの作成方法。
【請求項3】
前記補強層が外側チェーファーと内側チェーファーを含む繊維チェーファーであり、
前記補強層の上端ラインを作図するステップは、前記補強層外側ライン上において前記外側チェーファーの半径方向外端位置に第1基準点を置くこと、前記外側チェーファーと前記内側チェーファーとの境界を示す所定長さの第1線分を作図すること、前記第1基準点と前記第1線分との間に前記外側チェーファーの上端ラインを作図すること、前記補強層内側ライン上において前記内側チェーファーの半径方向外端位置に第2基準点を置くこと、及び、前記2基準点と前記第1線分との間に前記内側チェーファーの上端ラインを作図すること、を含む請求項2に記載のタイヤモデルの作成方法。
【請求項4】
前記補強層が繊維チェーファーであり、
前記タイヤモデルの作成方法は、カーカスプライ作図部が、前記繊維チェーファーの内側に接するカーカスプライを作図するステップを更に含み、
前記カーカスプライを作図するステップは、
前記カーカスプライの内側ラインであるプライラインを前記部材境界ラインとしかつ前記補強層内側ラインを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、第3始点から、第3中継点を通り、第3外側基準点を中心とし前記カーカスプライの厚みを半径とする第3距離規定円弧と接する前記プライラインを作図するステップと、
前記プライラインと前記補強層内側ラインとの間に前記カーカスプライの上端ラインを作図すること、を含む請求項2又は3に記載のタイヤモデルの作成方法。
【請求項5】
前記タイヤモデルの作成方法は、フリッパー作図部が、前記カーカスプライの内側に接するフリッパーを作図するステップを更に含み、
前記フリッパーを作図するステップは、
前記フリッパーの内側ラインであるフリッパーラインを前記部材境界ラインとしかつ前記カーカスプライの内側ラインを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、第4始点から、第4中継点を通り、第4外側基準点を中心とし前記フリッパーの厚みを半径とする第4距離規定円弧と接する前記フリッパーラインを作図するステップと、
前記フリッパーラインと前記カーカスプライの内側ラインとの間に前記フリッパーの上端ラインを作図すること、を含む請求項4に記載のタイヤモデルの作成方法。
【請求項6】
前記外側ゴム層が、サイドウォールゴムと、前記サイドウォールゴムの半径方向内側に隣接するラバーチェーファーと含み、
前記外側ゴム層ラインを作図するステップは、前記外側ゴム層ラインを前記部材境界ラインとしかつ前記モールドプロファイルを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、前記第1始点から、前記第1中継点を通り、第5外側基準点を中心とし前記外側ゴム層の厚みを半径とする第5距離規定円弧と接する前記外側ゴム層ラインを作図する、請求項2~5のいずれか1項に記載のタイヤモデルの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモデルの作成方法に関し、より詳細にはタイヤモデルの断面図をコンピュータで作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能をコンピュータで予測するためにタイヤモデルがコンピュータ上で作成されている(特許文献1,2参照)。タイヤモデルとしては、子午線断面のみからなる二次元モデルだけでなく三次元モデルもあるが、いずれにしてもタイヤの子午線断面における断面図を作成する必要がある。
【0003】
従来、タイヤモデルの断面図を作成する場合、作成者がコンピュータ上で手入力により線引きしており、特に複数の補強層が埋設されるビード部では作成に長時間を要する等、簡便に作成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-078946号公報
【文献】特開2007-179418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、タイヤモデルのビード部における断面図を簡便に作成することを可能にするタイヤモデルの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るタイヤモデルの作成方法は、タイヤモデルの断面図をコンピュータで作成する方法であって、モールドプロファイル作図部が、タイヤ断面の外輪郭線を表すモールドプロファイルを作図するステップと、ビードコア作図部が、前記モールドプロファイル内にビードコアを作図するステップと、境界ライン作図部が、タイヤのビード部における前記ビードコアの幅方向外側において前記ビードコアの半径方向内側から半径方向外側に延びる部材境界ラインであって、基準ラインの幅方向内側において当該基準ラインに沿って延びる前記部材境界ラインを作図する境界作図ステップと、を含む。前記境界作図ステップは、前記ビードコアの底面に対して当該ビードコアの半径方向内側に所定の距離を隔てて位置する始点から、前記ビードコアの底面の外側端に対して当該ビードコアの幅方向外側に所定の距離を隔てて位置する中継点を通り、前記ビードコアの半径方向外側において前記基準ライン上に位置する外側基準点を中心とし当該外側基準点における前記部材境界ラインとの距離を半径とする距離規定円弧と接する線を、前記部材境界ラインとして作図する。
【0007】
一実施形態において、前記タイヤモデルの作成方法は、外側ゴム層ライン作図部が、前記ビード部における外表面をなす外側ゴム層の内側ラインである外側ゴム層ラインを作図するステップと、補強層作図部が、前記ビードコアの半径方向内側を通って幅方向内側から幅方向外側に折り返されるタイヤ部材であって前記外側ゴム層の幅方向内側にビードパッドを介して配される補強層を作図するステップと、を更に含んでもよい。その場合、前記補強層を作図するステップは、(A)前記補強層の外側ラインである補強層外側ラインを前記部材境界ラインとしかつ前記外側ゴム層ラインを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、第1始点から、第1中継点を通り、第1外側基準点を中心とし前記ビードパッドの厚みを半径とする第1距離規定円弧と接する前記補強層外側ラインを作図するステップと、(B)前記補強層の内側ラインである補強層内側ラインを前記部材境界ラインとしかつ前記外側ゴム層ラインを前記基準ラインする前記境界作図ステップであって、第2始点から、第2中継点を通り、前記第1外側基準点を中心とし前記ビードパッドの厚みと前記補強層の厚みとの合計厚みを半径とする第2距離規定円弧と接する前記補強層内側ラインを作図するステップと、(C)前記補強層の半径方向外端の位置に基づいて前記補強層外側ラインと前記補強層内側ラインとの間に前記補強層の上端ラインを作図するステップと、を含んでもよい。
【0008】
一実施形態において、前記補強層が外側チェーファーと内側チェーファーを含む繊維チェーファーであり、前記補強層の上端ラインを作図するステップは、前記補強層外側ライン上において前記外側チェーファーの半径方向外端位置に第1基準点を置くこと、前記外側チェーファーと前記内側チェーファーとの境界を示す所定長さの第1線分を作図すること、前記第1基準点と前記第1線分との間に前記外側チェーファーの上端ラインを作図すること、前記補強層内側ライン上において前記内側チェーファーの半径方向外端位置に第2基準点を置くこと、及び、前記2基準点と前記第1線分との間に前記内側チェーファーの上端ラインを作図すること、を含んでもよい。
【0009】
一実施形態において、前記補強層が繊維チェーファーであり、前記タイヤモデルの作成方法は、カーカスプライ作図部が、前記繊維チェーファーの内側に接するカーカスプライを作図するステップを更に含んでもよい。その場合、前記カーカスプライを作図するステップは、前記カーカスプライの内側ラインであるプライラインを前記部材境界ラインとしかつ前記補強層内側ラインを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、第3始点から、第3中継点を通り、第3外側基準点を中心とし前記カーカスプライの厚みを半径とする第3距離規定円弧と接する前記プライラインを作図するステップと、前記プライラインと前記補強層内側ラインとの間に前記カーカスプライの上端ラインを作図すること、を含んでもよい。
【0010】
一実施形態において、前記タイヤモデルの作成方法は、フリッパー作図部が、前記カーカスプライの内側に接するフリッパーを作図するステップを更に含んでもよい。その場合、前記フリッパーを作図するステップは、前記フリッパーの内側ラインであるフリッパーラインを前記部材境界ラインとしかつ前記カーカスプライの内側ラインを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、第4始点から、第4中継点を通り、第4外側基準点を中心とし前記フリッパーの厚みを半径とする第4距離規定円弧と接する前記フリッパーラインを作図するステップと、前記フリッパーラインと前記カーカスプライの内側ラインとの間に前記フリッパーの上端ラインを作図すること、を含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記外側ゴム層が、サイドウォールゴムと、前記サイドウォールゴムの半径方向内側に隣接するラバーチェーファーと含み、前記外側ゴム層ラインを作図するステップが、前記外側ゴム層ラインを前記部材境界ラインとしかつ前記モールドプロファイルを前記基準ラインとする前記境界作図ステップであって、前記第1始点から、前記第1中継点を通り、第5外側基準点を中心とし前記外側ゴム層の厚みを半径とする第5距離規定円弧と接する前記外側ゴム層ラインを作図するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、タイヤモデルのビード部における断面図を簡便に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るタイヤモデル作成装置のブロック図
図2】同実施形態に係るタイヤモデル作成方法のフローチャート
図3】境界作図ステップのフローチャート
図4】同実施形態に係るタイヤモデルの半断面図
図5】同断面図のビード部の拡大図
図6】同実施形態におけるモールドプロファイル作図後の図
図7】同実施形態におけるビードコア作図後の図
図8】同実施形態における外側ゴム層ラインの作図途中の図
図9】同実施形態における外側ゴム層ライン作図後の図
図10】同実施形態における補強層外側ライン作図後の図
図11】同実施形態における補強層内側ライン作図後の図
図12】同実施形態における補強層の上端ライン作図後の図
図13】同実施形態におけるカーカスプライの作図途中の図
図14】同実施形態におけるカーカスプライ作図後の図
図15】同実施形態におけるフリッパー作図後の図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
一実施形態に係るタイヤモデルの作成装置10は、タイヤモデルの断面図(断面レイアウトともいう。)を作成する装置であって、特にタイヤのビード部における幅方向外側部分を作図することができる装置である。該作成装置10は、図1に示すように、入力部12、モールドプロファイル作図部14、ビードコア作図部16、外側ゴム層ライン作図部18、補強層作図部20、カーカスプライ作図部22、フリッパー作図部24、及び出力部26を有し、補強層作図部20は、補強層外側ライン作図部28、補強層内側ライン作図部30、及び補強層上端ライン作図部32を有し、カーカスプライ作図部22は、プライライン作図部34及びプライ上端ライン作図部36を有し、フリッパー作図部24は、フリッパーライン作図部38及びフリッパー上端ライン作図部40を有する。
【0016】
作成装置10は、例えば、マウスとキーボードとディスプレイ等を有する汎用のコンピュータを基本ハードウェアとして用いることでも実現することが可能である。すなわち、入力部12、モールドプロファイル作図部14、ビードコア作図部16、外側ゴム層ライン作図部18、補強層作図部20(詳細には、補強層外側ライン作図部28、補強層内側ライン作図部30、及び補強層上端ライン作図部32)、カーカスプライ作図部22(詳細には、プライライン作図部34及びプライ上端ライン作図部36)、フリッパー作図部24(詳細には、フリッパーライン作図部38及びフリッパー上端ライン作図部40)、及び出力部26は、コンピュータに搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することができる。このとき、作成装置10は、上記のプログラムをコンピュータに予めインストールすることで実現してもよいし、CD-ROM等の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して上記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータに適宜インストールすることで実現してもよい。
【0017】
図2は、上記作成装置10によりタイヤモデルの断面図を作成するタイヤモデル作成方法の流れを示すフローチャートである。図3は、該作成方法に含まれる一工程としての境界作図ステップの流れを示すフローチャートである。
【0018】
図4は一例に係るタイヤモデルの子午線断面を示す半断面図であり、図5はそのビード部の拡大図である。この実施形態では、図2に示すフローチャートにより図4に示すタイヤモデルを作成する。
【0019】
ここで、本明細書において、幅方向とはタイヤ幅方向を意味し、タイヤ回転軸に平行な方向である。幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に近づく方向であり、幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から遠ざかる方向である。半径方向とはタイヤ径方向(ラジアル方向)を意味し、タイヤ回転軸に垂直な方向である。半径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に近づく方向であり、半径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から遠ざかる方向である。
【0020】
図4に示すタイヤモデル50は、トラック又はバスに用いられる重荷重用空気入りタイヤに関するものであり、左右一対のビード部52と、ビード部52から半径方向外側に延びる一対のサイドウォール部54と、左右のサイドウォール部54の半径方向外端同士を連結するように両サイドウォール部54間に設けられたトレッド部56とを備える。
【0021】
ビード部52には、ゴム被覆したビードワイヤを積層巻回した収束体よりなる環状のビードコア58と、その外周側に設けられた硬質ゴム製のビードフィラー60が埋設されている。ビードコア58は、この例では断面形状が六角形状をなすが、その他の多角形状でもよい。
【0022】
タイヤには、一対のビード部52間にまたがってトロイド状に延びる少なくとも1層(この例では2層)のカーカスプライ62,64が埋設されている。カーカスプライ62,64は、平行配列された複数本のカーカスコードをゴム被覆してなるものであり、図5に示すように、カーカスプライ62,64の両端部は、ビード部52においてビードコア58の半径方向内側を通って幅方向内側から幅方向外側に折り返されて係止されている。ここで、2層のカーカスプライのうち、一対のビード部52間に跨がる本体部において、タイヤ内面側に位置するカーカスプライ62を第1カーカスプライとし、タイヤ外面側に位置するカーカスプライ64を第2カーカスプライとする。
【0023】
トレッド部56におけるカーカスプライ62,64の外周側には、ベルトプライからなる複数枚のベルト66が設けられている。
【0024】
図5に示すように、ビード部52には、その外表面をなす外側ゴム層68として、サイドウォールゴム70と、サイドウォールゴム70の半径方向内側に隣接するラバーチェーファー72が設けられている。
【0025】
ビード部52におけるカーカスプライ62,64の周りには、有機繊維コード(この例ではナイロンコード)をゴム被覆してなる少なくとも1層(この例では2層)の繊維チェーファー74,76が埋設されている。繊維チェーファー74,76は、ビードコア58の半径方向内側を通って幅方向内側から幅方向外側に折り返されたタイヤ部材であり、外側ゴム層68の幅方向内側にゴム部材であるビードパッド78を介して配されている。ここで、2層の繊維チェーファー74,76のうち、外側ゴム層68側の繊維チェーファー74を外側チェーファーとし、カーカスプライ62側の繊維チェーファー76を内側チェーファーとする。
【0026】
ビードコア58とカーカスプライ62,64との間には、両者間の擦れを抑制するための補強層として、有機繊維コードをゴム被覆してなるフリッパー80が設けられている。フリッパー80は、ビードコア58の半径方向内側を通って幅方向内側から幅方向外側に折り返されるタイヤ部材である。
【0027】
以下、一実施形態に係るタイヤモデル50の作成方法について図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0028】
ステップS1において、入力部12がタイヤモデル50の作成を作成するために必要な情報を取得する。詳細には、作成対象とする空気入りタイヤの断面形状を含む種々のデータ(タイヤ設計情報)が挙げられ、具体的にはタイヤの外形形状や内部構造等の各寸法諸元などが入力される。これらの情報の入力は、キーボードを用いて行われてもよく、CD-ROM等の記録媒体やネットワーク等を通じて行われてもよい。
【0029】
次いで、ステップS2において、モールドプロファイル作図部14が、図6に示すようにタイヤ断面の外輪郭線を表すモールドプロファイル82を作図する。モールドプロファイル82は、空気入りタイヤの外表面の断面形状であり、タイヤを加硫成型する際の金型における成型面の断面形状に相当する。モールドプロファイル82の作図方法は、特に限定されず、入力部12から入力された寸法諸元に基づいて作成してもよく、あるいはまた、記憶部に保存されたモールドプロファイルデータから、作成対象とするタイヤのモールドプロファイルを取り込んでもよい。
【0030】
なお、タイヤモデル50の断面図の作成は、タイヤの全幅で行ってもよいが、タイヤがタイヤ赤道線を中心として左右対称の場合、半幅で作成してから全幅に展開してもよい。この例では、図6に示すように半幅で作成する場合について説明する。
【0031】
次いで、ステップS3において、ビードコア作図部16が、モールドプロファイル82内にビードコア58を作図する。ビードコア58の作図方法は、特に限定されず、例えば、記憶部に保存されたビードコアデータから、作成対象とするタイヤのビードコア形状を取り込み、これを上記寸法諸元に基づいて指定の位置及び傾きを持たせて配置させることで作図することができる。そして、ステップS4に進む。
【0032】
ステップS4において、外側ゴム層ライン作図部18が、外側ゴム層68の内側ラインである外側ゴム層ライン84(図9参照)を作図する。外側ゴム層ライン84は、外側ゴム層68と、そのタイヤ内面側に隣接する部材(詳細には、ビードフィラー60,ビードパッド78及び繊維チェーファー74など)との境界線である。外側ゴム層ライン84の作図は、図3に示す境界作図ステップにより行う。
【0033】
ここで、境界作図ステップについて説明する。境界作図ステップでは、境界ライン作図部が、ビード部52におけるビードコア58の幅方向外側においてビードコア58の半径方向内側から半径方向外側に延びる部材境界ラインであって、基準ラインの幅方向内側において当該基準ラインに沿って延びる部材境界ラインを作図する。基準ラインとは、部材境界ラインを作図する際に基準とする線である。ステップS4では、境界ライン作図部としての外側ゴム層ライン作図部18が、モールドプロファイル82を基準ラインとして、当該基準ラインの幅方向内側に隣り合う外側ゴム層ライン84を部材境界ラインとして作図する。
【0034】
境界作図ステップでは、ステップS20において、ビードコア58の底面58Aに対して当該ビードコア58の半径方向内側に所定の距離を隔てて位置する始点を置く。具体的に、ステップS4では、図8に示すように、底面58Aに対して所定の距離DA1を隔てて位置する第1始点PA1を設置する。
【0035】
ここで、ビードコア58の底面58Aとは、断面多角形状のビードコア58の半径方向内側面(断面多角形の底辺)である。一般にビードコア58はタイヤ回転軸に対して傾斜した姿勢に配置されるため、底面58Aはタイヤ回転軸に対して45度未満の角度で傾斜している。該底面58Aに対して半径方向内側に所定の距離を隔てた位置とは、底面58Aの中点58Bを通り当該底面58Aに垂直な直線PL上において中点58Bから半径方向内側に向かって所定の距離を隔てた位置である。該所定の距離とは、垂直な直線PL上において作図対象とする部材境界ラインと底面58Aとの間隔であり、ビードコア58と部材境界ラインとの間に介在する部材の厚みにより定まる。図8に示す第1始点PA1の場合、所定の距離DA1は、繊維チェーファー74,76の厚み、カーカスプライ62,64の厚み、フリッパー80の厚み、及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みである。
【0036】
ステップS21において、ビードコア58の底面58Aの外側端58Cに対して当該ビードコア58の幅方向外側に所定の距離を隔てて位置する中継点を置く。具体的に、ステップS4では、図8に示すように、外側端58Cに対して所定の距離DB1を隔てて位置する第1中継点PB1を設置する。
【0037】
ここで、底面58Aの外側端58Cとは、上記底面58Aの幅方向外側端である。該外側端58Cに対して幅方向外側に所定の距離を隔てた位置とは、外側端58Cから幅方向外側に延びる直線QL上において幅方向外側に向かって所定の距離を隔てた位置である。直線QLは、この例では、幅方向外側ほど半径方向内側になるように傾斜しており、詳細にはビードコア傾き角度(即ち、底面58Aがタイヤ回転軸に対してなす角度)と同じ大きさの角度(左右反転した角度)を持って半径方向内側かつ幅方向外側に傾斜して延びている。また、該所定の距離とは、上記直線QL上において作図対象となる部材境界線と外側端58Cとの間隔であり、ビードコア58と部材境界ラインとの間に介在する部材の厚みにより定まる。図8に示す第1中継点PB1の場合、所定の距離DB1は、繊維チェーファー74,76の厚み、カーカスプライ62,64の厚み、フリッパー80の厚み、及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みである。
【0038】
ステップS22において、ビードコア58の半径方向外側において基準ライン上に位置する外側基準点を置く。具体的に、ステップS4では、図8に示すように、モールドプロファイル82上において、ラバーチェーファー72の上端(半径方向外側端)72A(図5参照)に相当する半径方向位置に第5外側基準点PC5を設置する。詳細には、半径方向をY軸、幅方向をX軸としたXY座標において、ラバーチェーファー72の半径方向外側端に相当するy値をパラメータで設定しておき、モールドプロファイル82上で該y値を持つx値をプログラムで求めることにより、第5外側基準点PC5を設置する。
【0039】
次いで、ステップS23において、上記外側基準点を中心とし当該外側基準点における部材境界ラインとの距離(基準ラインと部材境界ラインとの間隔)を半径とする距離規定円弧を作成する。具体的に、ステップS4では、図8に示すように、第5外側基準点PC5、即ち上記の座標(x,y)を中心として、外側ゴム層68の厚みを半径とする第5距離規定円弧C5を設ける。なお、距離規定円弧は、全周にわたる円として設けてもよい。
【0040】
このようにして始点、中継点及び距離規定円弧を設置する順番は特に限定されない。これらを設置した後、ステップS24において、始点から中継点を通り距離規定円弧と接する線を部材境界ラインとして作図する。線の引き方は特に限定されないが、例えば、始点から中継点までの曲線を第1の曲率を持つ円弧とし、中継点から半径方向外側の曲線を第1の曲率よりも曲率半径が大きい第2の曲率を持つ円弧として、これら第1及び第2の曲率を予め指定しておき、当該指定された曲率で作図してもよい。第1及び第2の曲率については入力部12を介して予め取得した情報を用いることができる(以下の他の曲率についても同様)。具体的に、ステップS4では、第1始点PA1から第1中継点PB1を通り第5距離規定円弧C5と接する外側ゴム層ライン84を、上記PA1からPB1までは予め指定された第1の曲率を持つ円弧で、PB1よりも半径方向外側では予め指定された第2の曲率を持つ円弧で作図する。
【0041】
なお、ステップS4において外側ゴム層ライン84を作図した後、サイドウォールゴム70とラバーチェーファー72との境界線86を作図してもよい(図9参照)。
【0042】
このようにして外側ゴム層ライン84を作図した後、補強層作図部20が外側ゴム層68の幅方向内側にビードパッド78を介して配される補強層として繊維チェーファー74,76を作図する。
【0043】
詳細には、まず、ステップS5において、補強層外側ライン作図部28が、補強層の外側ラインである補強層外側ライン88を作図する。ここでは、外側ゴム層ライン84の幅方向内側に隣り合う繊維チェーファー74,76の外側ライン88(外側チェーファー74とビードパッド78との境界線)を作図する(図10参照)。
【0044】
補強層外側ライン88の作図は、上記の境界作図ステップにより行う。ここでは、境界ライン作図部としての補強層外側ライン作図部28が、外側ゴム層ライン84を基準ラインとして、当該基準ラインの幅方向内側に隣り合う補強層外側ライン88を部材境界ラインとして作図する。
【0045】
詳細には、上記始点として第1始点PA1を設置し、上記中継点として第1中継点PB1を設置する。そして、ビードコア58の半径方向外側において外側ゴム層ライン84上に位置する第1外側基準点PC1を設置する。第1外側基準点PC1は、外側ゴム層ライン84上において、繊維チェーファー74,76の上端74A(図5参照)に相当する半径方向位置に設置され、すなわち、繊維チェーファー74,76の半径方向外側端に相当するy値をパラメータで設定しておき、外側ゴム層ライン84上で該y値を持つx値をプログラムで求めることにより、第1外側基準点PC1が設置される。そして、第1外側基準点PC1を中心とし当該外側基準点PC1における補強層外側ライン88との距離(即ち、ビードパッド78の厚み)を半径とする第1距離規定円弧C1を作成する。
【0046】
次いで、第1始点PA1から、第1中継点PB1を通り、第1距離規定円弧C1と接する線を補強層外側ライン88として作図する。線の引き方は、外側ゴム層ライン84と同様、第1始点PA1から第1中継点PB1を通り第1距離規定円弧C1と接する補強層外側ライン88を、上記PA1からPB1までの予め指定された曲率を持つ円弧と、PB1よりも半径方向外側での予め指定された曲率を持つ円弧とで作成する。
【0047】
このようにして補強層外側ライン88を作図した後、ステップS6において、補強層内側ライン作図部30が、補強層の内側ラインである補強層内側ライン90を作図する。ここでは、繊維チェーファー74,76の内側ライン90(内側チェーファー76とカーカスプライ62との境界線)を作図する(図11参照)。
【0048】
補強層内側ライン90の作図は、上記の境界作図ステップにより行う。ここでは、境界ライン作図部としての補強層内側ライン作図部30が、外側ゴム層ライン84を基準ラインとして、部材境界ラインとしての補強層内側ライン90を作図する。
【0049】
詳細には、上記始点として第2始点PA2を設置し、上記中継点として第2中継点PB2を設置する。
【0050】
第2始点PA2は、ビードコア58の底面58Aに対して当該ビードコア58の半径方向内側に所定の距離DA2を隔てて位置する点であり、距離DA2は、上記底面58Aに垂直な直線PL上においてカーカスプライ62,64の厚み、フリッパー80の厚み、及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みである。
【0051】
第2中継点PB2は、ビードコア58の外側端58Cに対して幅方向外側に所定の距離DB2を隔てて位置する点であり、距離DB2は、上記直線QL上においてカーカスプライ62,64の厚み、フリッパー80の厚み、及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みである。
【0052】
また、ビードコア58の半径方向外側において、外側ゴム層ライン84上に位置する第1外側基準点PC1を中心とし、当該外側基準点PC1におけるビードパッドの厚みと補強層である繊維チェーファー74,76の厚みとの合計厚みを半径とする第2距離規定円弧C2を作成する。
【0053】
次いで、第2始点PA2から、第2中継点PB2を通り、第2距離規定円弧C2と接する線を補強層内側ライン90として作図する。線の引き方は、外側ゴム層ライン84と同様、第2始点PA2から第2中継点PB2を通り第2距離規定円弧C2と接する補強層内側ライン90を、上記PA2からPB2までの予め指定された曲率を持つ円弧と、PB2よりも半径方向外側での予め指定された曲率を持つ円弧とで作成する。
【0054】
このようにして補強層内側ライン90を作図した後、ステップS7において、補強層上端ライン作図部32が、繊維チェーファー74,76の半径方向外端の位置に基づいて補強層外側ライン88と補強層内側ライン90との間に繊維チェーファー74,76の上端ライン(即ち、半径方向外端ライン)92を作図する(図12参照)。
【0055】
詳細には、補強層外側ライン88上において外側チェーファー74の上端74Aに相当する半径方向外端位置に第1基準点PD1を置く。例えば、該上端74Aの高さをy値として予めパラメータで設定しておき、この情報に基づいて補強層外側ライン88上に第1基準点PD1を設置してもよい。
【0056】
次いで、外側チェーファー74と内側チェーファー76との境界を示す所定長さの第1線分92Cを作図する。第1線分92Cは、補強層外側ライン88の幅方向内側に繊維チェーファー厚みの半分に相当する距離だけオフセットした位置に、当該補強層外側ライン88に沿って設けられる。第1線分92Cの作図方法は特に限定されないが、例えば上記の境界作図ステップにより作図してもよい。第1線分92Cの長さは特に限定されず、例えば10mmのように固定した値とすることができる。
【0057】
次いで、第1基準点PD1と第1線分92Cとの間に外側チェーファー74の上端ライン92Aを作図する。該上端ライン92Aは、例えば、第1基準点PD1から第1線分92Cに対して垂線を下ろすことで作図することができる。
【0058】
また、補強層内側ライン90上において内側チェーファー76の上端76Aに相当する半径方向外端位置に第2基準点PD2を置く。例えば、該上端76Aの高さをy値として予めパラメータで設定しておき、この情報に基づいて補強層内側ライン90上に第2基準点PD2を設置してもよい。内側チェーファー76の上端76Aは、外側チェーファー74の上端74Aよりも低く、即ち半径方向内側に位置している。
【0059】
次いで、第2基準点PD2と第1線分92Cとの間に内側チェーファー76の上端ライン92Bを作図する。該上端ライン92Bは、例えば、第2基準点PD2から第1線分92Cに対して垂線を下ろすことで作図することができる。
【0060】
以上より、図12に示すように、外側チェーファー74の上端ライン92Aと内側チェーファー76の上端ライン92Bと第1線分92Cからなる、補強層上端ライン92が作図される。
【0061】
次いで、カーカスプライ作図部22が繊維チェーファー74,76の内側に接するカーカスプライ62,64、詳細にはその折り返し部を作図する。
【0062】
詳細には、まず、ステップS8において、プライライン作図部34が、第1カーカスプライ62の内側ラインである第1プライライン94を作図する(図13参照)。
【0063】
第1プライライン94の作図は、上記の境界作図ステップにより行う。ここでは、境界ライン作図部としてのプライライン作図部34が、補強層内側ライン90を基準ラインとして、当該基準ラインの幅方向内側に隣り合う第1プライライン94を部材境界ラインとして作図する。
【0064】
詳細には、上記始点として第3始点PA3を設置し、上記中継点として第3中継点PB3を設置する。第3始点PA3は、ビードコア58の底面58Aに対して当該ビードコア58の半径方向内側に所定の距離DA3を隔てて位置する点であり、距離DA3は、上記底面58Aに垂直な直線PL上において第2カーカスプライ64の厚み、フリッパー80の厚み、及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みである。第3中継点PB3は、ビードコア58の上記外側端58Cに対して当該ビードコア58の幅方向外側に所定の距離DB3を隔てて位置する点であり、距離DB3は、上記直線QL上において第2カーカスプライ64の厚み、フリッパー80の厚み、及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みである。
【0065】
また、ビードコア58の半径方向外側において補強層内側ライン90上に位置する第3外側基準点PC3を設置する。第3外側基準点PC3は、補強層内側ライン90上において、第1カーカスプライ62の上端62A(図5参照)に相当する半径方向位置に設置される。そして、第3外側基準点PC3を中心とし当該外側基準点PC3における第1カーカスプライ62の厚みを半径とする第3距離規定円弧C3を作成する。
【0066】
次いで、第3始点PA3から、第3中継点PB3を通り、第3距離規定円弧C3と接する線を第1プライライン94として作図する。線の引き方は、外側ゴム層ライン84と同様、第3始点PA3から第3中継点PB3を通り第3距離規定円弧C3と接する第1プライライン94を、上記PA3からPB3までの予め指定された曲率を持つ円弧と、PB3よりも半径方向外側での予め指定された曲率を持つ円弧とで作成する。
【0067】
次いで、ステップS9において、プライ上端ライン作図部36が、第1カーカスプライ62の半径方向外端の位置に基づいて補強層内側ライン90と第1プライライン94との間に第1カーカスプライ62の上端ライン(即ち、半径方向外端ライン)96を作図する(図13参照)。具体的には、第1プライライン94を、第1カーカスプライ62の半径方向外端に相当する位置でカットし、カットした上端94Aから補強層内側ライン90に垂線を下ろすことで上端ライン96を作図する。
【0068】
このように第1カーカスプライ62を作図した後、ステップS10において、プライライン作図部34が、第2カーカスプライ64の内側ラインである第2プライライン98を作図する(図14参照)。第2プライライン98の作図は、第1プライライン94の作図と同様、上記の境界作図ステップにより行うことができ、第1プライライン94を基準ラインとして、部材境界ラインとしての第2プライライン98を作図すればよい。その際、始点としては、ビードコア58の底面58Aに対する上記所定の距離として、フリッパー80の厚み及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みを隔てて位置する点を設置する。また、中継点としては、ビードコア58の外側端58Cに対する上記所定の距離として、フリッパー80の厚み及びフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みを足し合わせた厚みを隔てて位置する点を設置する。外側基準点については、第1プライライン94上において第2カーカスプライ64の上端64A(図5参照)に相当する半径方向位置に設置する。距離規定円弧については、該外側基準点を中心とし当該外側基準点における第2カーカスプライ64の厚みを半径として作成する。
【0069】
次いで、ステップS11において、プライ上端ライン作図部36が、第2カーカスプライ64の半径方向外端の位置に基づいて第1プライライン94と第2プライライン98との間に第2カーカスプライ64の上端ライン(即ち、半径方向外端ライン)100を作図する(図14参照)。具体的には、第2プライライン98を、第2カーカスプライ64の半径方向外端に相当する位置でカットし、カットした上端98Aから第1プライライン94に垂線を下ろすことで上端ライン100を作図する。
【0070】
このようにしてカーカスプライ62,64を作図した後、フリッパー作図部24がカーカスプライ62,64の内側に接するフリッパー80を作図する。
【0071】
詳細には、まず、ステップS12において、フリッパーライン作図部38が、フリッパー80の内側ラインであるフリッパーライン102を作図する(図15参照)。
【0072】
フリッパーライン102の作図は、上記の境界作図ステップにより行う。ここでは、境界ライン作図部としてのフリッパーライン作図部38が、第2カーカスプライ64の内側ラインである第2プライライン98を基準ラインとして、当該基準ラインの幅方向内側に隣り合うフリッパーライン102を部材境界ラインとして作図する。
【0073】
詳細には、上記始点として第4始点PA4を設置し、上記中継点として第4中継点PB4を設置する。第4始点PA4は、ビードコア58の底面58Aに対して当該ビードコア58の半径方向内側に所定の距離を隔てて位置する点であり、該所定の距離は、上記底面58Aに垂直な直線PL上におけるフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みである。第4中継点PB4は、ビードコア58の上記外側端58Cに対して幅方向外側に所定の距離を隔てて位置する点であり、該所定の距離は、上記直線QL上におけるフリッパー80とビードコア58間のゴム厚みである。
【0074】
また、ビードコア58の半径方向外側において第2プライライン98上に位置する第4外側基準点PC4を設置する。第4外側基準点PC4は、第2プライライン98上において、フリッパー80の上端80A(図5参照)に相当する半径方向位置に設置される。そして、第4外側基準点PC4を中心とし当該外側基準点PC4におけるフリッパー80の厚みを半径とする第4距離規定円弧C4を作成する。
【0075】
次いで、第4始点PA4から、第4中継点PB4を通り、第4距離規定円弧C4と接する線をフリッパーライン102として作図する。線の引き方は、外側ゴム層ライン84と同様、第4始点PA4から第4中継点PB4を通り第4距離規定円弧C4と接するフリッパーライン102を、上記PA4からPB4までの予め指定された曲率を持つ円弧と、PB4よりも半径方向外側での予め指定された曲率を持つ円弧とで作成する。
【0076】
次いで、ステップS13において、フリッパー上端ライン作図部40が、フリッパー80の半径方向外端(上端50A)の位置に基づいて第2プライライン98とフリッパーライン102との間にフリッパー80の上端ライン(即ち、半径方向外端ライン)104を作図する(図15参照)。具体的には、フリッパーライン102を、フリッパー80の半径方向外端に相当する位置でカットし、カットした上端102Aから第2プライライン98に垂線を下ろすことで上端ライン104を作図する。
【0077】
以上によりビード部52における幅方向外側部分(詳細には、直線PLよりも幅方向外側の部分)を作図することができる。ビード部52の幅方向内側部分、サイドウォール部、及びトレッド部についての断面レイアウトの作成方法は公知の方法を用いて作成すればよい。このようにしてタイヤモデルの断面レイアウトを作成した後、ステップS14において、出力部26が、得られたタイヤモデルの断面レイアウトを出力する。出力は、ディスプレイによって表示したり、プリンタによって印刷したり、ディスクやデータベースなどの記憶手段に書き込んだりすることにより行うことができる。
【0078】
以上のように本実施形態によれば、タイヤモデル50のビード部52における幅方向外側の部材境界ラインを、上記境界作図ステップを用いることにより自動的に作図することができ、幅方向外側の部材境界ラインからビードコア58に向かって順次、部材境界ラインを作図することができる。そのため、ビード部52の幅方向外側に、ビードパッド78を介して、繊維チェーファー74,76、カーカスプライ62,64及びフリッパー80といった複数の補強材を含む部分の断面レイアウトを、コンピュータにより自動的に作図することができ、タイヤモデル50を簡便に作成することができる。
【0079】
上記実施形態では、補強層としての繊維チェーファーが二層構造であり、カーカスプライが二層構造の場合について説明したが、これらに限定されるものではなく、またビード部に埋設される補強材の構成も上記実施形態には限定されず、例えばフリッパーを省略したものなど、種々の構成を持つタイヤについて適用可能である。
【0080】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10…作成装置、14…モールドプロファイル作図部、16…ビードコア作図部、18…外側ゴム層ライン作図部、20…補強層作図部、22…カーカスプライ作図部、24…フリッパー作図部、50…タイヤモデル、52…ビード部、58…ビードコア、58A…底面、58C…ビードコアの外側端、62,64カーカスプライ、68…外側ゴム層、70…サイドウォールゴム、72…ラバーチェーファー、74…繊維チェーファー(外側チェーファー)、76…繊維チェーファー(内側チェーファー)、78…ビードパッド、80…フリッパー、82…モールドプロファイルライン、84…外側ゴム層ライン、88…補強層外側ライン、90…補強層内側ライン、92…補強層上端ライン、94…第1プライライン、96…第1カーカスプライの上端ライン、98…第2プライライン、100…第2カーカスプライの上端ライン、102…フリッパーライン、104…フリッパーの上端ライン、PA1…第1始点、PA2…第2始点、PA3…第3始点、PA4…第4始点、PB1…第1中継点、PB2…第2中継点、PB3…第3中継点、PB4…第4中継点、PC1…第1外側基準点、PC3…第3外側基準点、PC4…第4外側基準点、PC5…第5外側基準点、C1…第1距離規定円弧、C2…第2距離規定円弧、C3…第3距離規定円弧、C4…第4距離規定円弧、C5…第5距離規定円弧、PD1…第1基準点、PD2…第2基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15