(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240411BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/14
(21)【出願番号】P 2020115443
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太郎
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124663(JP,A)
【文献】特開2011-204124(JP,A)
【文献】特開2008-070998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の物体の位置を含む環境情報を取得
する取得部と接続されたコントローラを制御し、前記環境情報に基づいて、前記自車両が走行予定である走行経路を設定し、設定した走行経路に沿った前記自車両の走行を支援する走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記物体の移動を示す第1軌道を、前記環境情報に基づいて、第1所定周期ごとに予測し、
前記物体の移動を示す第2軌道を、前記環境情報に基づいて、第1所定周期よりも長い第2所定周期ごとに予測し、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入するか否かを判定し、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入すると判定された場合には、前記第1軌道に基づいて前記走行経路を設定し、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入しないと判定された場合には、前記第2軌道に基づいて前記走行経路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載された走行支援方法であって、
前記第1軌道は、前記環境情報に基づいて予測された、前記物体の将来の移動を示す軌道であり、
前記第2軌道は、前記環境情報と共に、複数の前記物体の間の相互干渉に基づいて予測された、前記物体の将来の移動を示す軌道であること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項3】
請求項1に記載された走行支援方法であって、
前記第1軌道は、前記環境情報と共に、第1個数からなる複数の前記物体の間の相互干渉に基づいて予測された、前記物体の将来の移動を示す軌道であり、
前記第2軌道は、前記環境情報と共に、前記第1個数よりも大きい第2個数からなる複数の前記物体の間の相互干渉に基づいて予測された、前記物体の将来の移動を示す軌道であること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記走行経路と前記第1軌道が時空間的に交わる第1領域が存在する場合に、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入すると判定し、
前記第1領域を回避するように前記走行経路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記第2軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入するか否かを判定し、
前記第2軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入すると判定された場合には、前記第2軌道に基づいて前記走行経路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項6】
請求項
5に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記走行経路と前記第2軌道が時空間的に交わる第2領域が存在する場合に、
前記第2軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入すると判定し、
前記第2領域を回避するように前記走行経路を設定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記物体の情報と前記自車両の走行する道路の情報に基づいて、前記第2軌道を予測すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項8】
請求項
7に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記物体の情報、前記道路の情報、前記第1軌道に基づいて、前記物体ごとに複数の軌道候補を算出し、
前記物体ごとに算出された複数の前記軌道候補の中から選択された一の軌道候補を、前記物体の前記第2軌道とすること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項9】
請求項
7に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記環境情報に基づいて、前記物体がとりうる挙動の確率値を算出し、
前記確率値に基づいて、前記物体ごとに複数の軌道候補を算出し、
前記物体ごとに算出された複数の前記軌道候補の中から選択された一の軌道候補を、前記物体の前記第2軌道とすること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項10】
請求項
8又は9に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記軌道候補ごとに尤度を算出し、
前記物体ごとに算出された複数の前記軌道候補の中で、最も前記尤度が高い軌道候補を、前記物体の前記第2軌道とすること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記物体の情報、過去の前記物体の情報に基づいて、前記第1軌道を予測すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項12】
請求項
11に記載された走行支援方法であって、
前記物体の情報は、前記物体の位置、姿勢、速度の情報を含むこと
を特徴とする走行支援方法。
【請求項13】
請求項
1~12のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記第1所定周期は、統計的データに基づいて設定されること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項14】
自車両の周囲の物体の位置を含む環境情報を取得する取得部と、コントローラとを備え、前記環境情報に基づいて、前記自車両が走行予定である走行経路を設定し、設定した走行経路に沿った前記自車両の走行を支援する走行支援装置であって、
前記コントローラは、
前記物体の移動を示す第1軌道を、前記環境情報に基づいて、第1所定周期ごとに予測し、
前記物体の移動を示す第2軌道を、前記環境情報に基づいて、第1所定周期よりも長い第2所定周期ごとに予測し、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入するか否かを判定し、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入すると判定された場合には、前記第1軌道に基づいて前記走行経路を設定し、
前記第1軌道に沿って移動する前記物体が前記走行経路に進入しないと判定された場合には、前記第2軌道に基づいて前記走行経路を設定すること
を特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両と隣接車両の走行軌跡を予測し、それぞれの軌跡が交差するか否かで合流を判定することにより、白線を認識しなくても、車線の合流を判定することが可能な車線合流判定装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予測した他車両の走行軌跡に基づいて自車両の運転支援制御を行う場合、他車両の急な割り込みなどの急な環境変化に対応するためには、できるだけ短い予測周期で予測した他車両の走行軌跡に基づいて自車両の運転支援制御を行うことが望ましい。一方で、円滑な自車両の運転支援制御を実現するためには、他車両の長期的な走行軌跡を予測し、長期的な走行軌跡に基づいて自車両の運転支援制御を行うことが望ましい。特許文献1に記載の技術によれば、急な環境変化に対応しつつ円滑な自車両の運転支援制御を実現することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、急な環境変化に対応しつつ円滑な自車両の運転支援制御を実現できる走行支援方法及び走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決するために、本発明の一態様に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車両の周囲の物体の位置を含む環境情報に基づいて、第1所定周期ごとに物体の移動を示す第1軌道を予測し、第1所定周期よりも長い第2所定周期ごとに物体の移動を示す第2軌道を予測し、第1軌道に沿った物体の移動が自車両の走行に影響すると判定された場合には、第1軌道に基づいて走行経路を設定し、一方、第1軌道に沿った物体の移動が自車両の走行に影響しないと判定された場合には、第2軌道に基づいて走行経路を設定し、設定した走行経路に沿った自車両の走行を支援する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、急な環境変化に対応しつつ円滑な自車両の運転支援制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る走行支援装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0010】
[走行支援装置の構成]
図1は、本実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る走行支援装置は、自車両の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部70(撮像部71、車載センサ73、地図情報取得部75)と、コントローラ100とを備え、コントローラ100は、有線あるいは無線の通信路によって、撮像部71、車載センサ73、地図情報取得部75、車両制御装置400と接続されている。
【0011】
なお、撮像部71、車載センサ73、車両制御装置400は、自車両に搭載されるが、地図情報取得部75、コントローラ100は、自車両に搭載されるものであってもよいし、車両の外部に設置されるものであってもよい。
【0012】
撮像部71は、自車両の周囲の画像を撮像する。例えば、撮像部71はCCD、CMOS等の固体撮像素子を備えたデジタルカメラであり、自車両の周囲を撮像して周辺領域のデジタル画像を取得する。撮像部71は、焦点距離、レンズの画角、カメラの垂直方向及び水平方向の角度などが設定されることにより、自車両の周囲の所定の範囲を撮像する。
【0013】
なお、撮像部71によって撮像された撮像画像はコントローラ100に出力され、所定の期間の間、図示しない記憶部に記憶される。例えば、撮像部71は所定の時間間隔で撮像画像を取得しており、所定の時間間隔で取得した撮像画像が、過去画像として記憶部に記憶される。過去画像は、当該過去画像の撮像時点から所定の期間を経過した後に削除されるものであってもよい。
【0014】
車載センサ73は、自車両に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、自車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出センサなどからなる。車載センサ73は、複数の異なる種類の物体検出センサを備えるものであってもよい。
【0015】
車載センサ73は、自車両の周囲の環境を検出する。例えば、車載センサ73は、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び停車車両を含む静止物体を検出し、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートなどを検出するものであってもよい。車載センサ73は、検出結果として、例えば自車両の上方の空中から眺めた天頂図(平面図ともいう)における、2次元の物体の挙動を出力するものであってもよい。また、車載センサ73は、自車両の周囲に存在する標識(道路標識や路面表示された標識)やガイドレール等を検出するものであってもよい。その他にも、車載センサ73は、自車両が備える車輪の回転速度や回転速度差を検出して、自車両が走行している車線の路面の滑りやすさを検出するものであってもよい。
【0016】
また、車載センサ73は、自車両の周囲の環境の他にも、自車両の状態を検出する。例えば、車載センサ73は、自車両の移動速度(前後方向、左右方向の移動速度、旋回速度)や、自車両が備える車輪の転舵角、転舵角の変化速度を検出するものであってもよい。
【0017】
その他、車載センサ73は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど自車両の絶対位置を計測する位置検出センサなど、自車両の絶対位置を計測する位置検出センサを用いて、自車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両の位置、姿勢及び速度を計測するセンサを含んでいてもよい。
【0018】
地図情報取得部75は、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図情報取得部75が取得する地図情報には、車線の絶対位置、車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。また、地図情報取得部75が取得する地図情報には、駐車場、ガソリンスタンドなどの施設情報も含まれうる。その他、地図情報には、信号機の位置情報や、信号機の種別、信号機に対応する停止線の位置などが含まれうる。地図情報取得部75は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図情報取得部75は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
【0019】
自車両の周囲の環境情報は、少なくとも自車両の周囲の物体の位置の情報を含む。物体の位置の情報は、撮像部71によって撮像された画像、車載センサ73によって得られた情報を解析することによって算出されるものであってもよい。また、自車両の周囲の環境情報は、地図情報取得部75によって得られた地図情報を含むものであってもよい。その他、自車両の周囲の環境情報は、環境情報取得部70によって取得される以外にも、車車間通信、路車間通信によって、自車両の外部から取得されるものであってもよい。
【0020】
車両制御装置400は、コントローラ100によって得られた結果に基づいて、自車両を制御する。例えば、車両制御装置400は、所定の走行経路に従って自車両のアクセル開度や制動装置の制動力を制御すると共にステアリングの操舵角を制御することにより、加減速や転舵輪の転舵角を自動制御する自動運転によって自車両を走行させるものであってもよい。あるいは自車両のアクセル開度、制動装置の制動力、あるいはステアリングの操舵角や操舵反力のうちの一部を制御することによって加減速、転舵輪の転舵角、ステアリングの操舵力の少なくとも一部を制御することによって、自車両の乗員の運転操作を支援するものであってもよい。また、所定の走行経路を表示装置等に表示することにより、運転者の走行経路に沿った走行を支援するものであっても良い。
【0021】
コントローラ100(制御部または処理部の一例)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ100には、走行支援装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(走行支援プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ100は、走行支援装置が備える複数の情報処理回路(120、130、140、170、180)として機能する。
【0022】
なお、ここでは、ソフトウェアによって走行支援装置が備える複数の情報処理回路(120、130、140、170、180)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(120、130、140、170、180)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(120、130、140、170、180)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(120、130、140、170、180)は、自車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0023】
コントローラ100は、複数の情報処理回路(120、130、140、170、180)として、自己位置推定部120、第1軌道予測部130、第2軌道予測部140、影響判定部170、走行経路設定部180を備える。
【0024】
自己位置推定部120は、撮像部71又は車載センサ73を介して、自車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両の現在の位置(自車両が走行している地図上の位置)を取得する。その他、自己位置推定部120は、車載センサ73を介して自車両の現在の速度、加速度、姿勢を取得するものであってもよい。
【0025】
第1軌道予測部130は、環境情報取得部70で取得した環境情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体の移動を示す第1軌道を予測する。第1軌道の予測の方法としては、例えば、Constant Curvature and Acceleration(CCA)モデルや、Constant Turn Rate and Acceleration(CTRA)モデルといった、物体の運動モデルを用いて行われる。(CCAモデル、CTRAモデルの詳細については、R. Schubert, E. Richter, and G. Wanielik, “Comparison and Evaluation of Advanced Motion Models for Vehicle Tracking”, IEEE 11th International Conference on Information Fusion, 2008を参照のこと)。
【0026】
例えば、CCAモデルによれば、物体の位置x,y、姿勢θ(物体の向く方向)、速度v、加速度a、曲率cを用いて、次の数式1の状態ベクトルによって物体の状態が表現される。
【数1】
【0027】
なお、加速度aは速度vの単位時間当たりの変化量から算出され、曲率cは姿勢θの単位時間当たりの変化量ωを速度vで除算することにより算出される。このとき、加速度a及び曲率cが一定であることを仮定すると、状態ベクトルの時間微分は、次の数式2で表現される。なお、v0、θ0は、時刻t=0における速度、角度を示す。
【0028】
【0029】
したがって、時刻tから所定時間Tだけ経過した後の物体の状態は、数式2を積分することによって得ることができ、次の数式3の状態ベクトルによって表現される。
【0030】
【0031】
数式3により、所定時間T経過後までの物体の第1軌道を予測することができる。なお、数1に示される時刻tにおける状態ベクトルは、環境情報取得部70によって取得した環境情報の他、時刻t以前の時刻における状態ベクトルを用いて、物体の運動モデルによって推定するものであってもよい。これにより、物体検出に誤差が含まれる場合であってもロバスト性を向上させて安定して第1軌道の予測を実現できる。
【0032】
第1軌道予測部130による第1軌道の予測は、各物体それぞれの個々の動きからわかる短期的な軌道を高速で予測するものであれば、運動モデルによる方法に限定されない。例えば、第1軌道予測部130による第1軌道の予測は、急な割り込みなどの緊急的な動きを予測するための軌道の予測方法であれば、機械学習など他の方法を用いるものであってもよい。
【0033】
なお、第1軌道予測部130による第1軌道の予測は、第1所定周期ごとに行われ、第1軌道における所定時間Tは第1所定周期と同程度の大きさ、もしくは、第1所定周期よりも大きく設定される。
【0034】
ここで、第1所定周期は、統計的なデータから設定されるものであってもよい。車線変更などの自車両への他車両の割り込みを想定した場合、割り込みに要する時間は、おおむね1.5~4秒程度であることが統計的なデータからわかっている。この場合、割り込み時間の半分程度の時間(約1~2秒)を第1所定周期として設定することで、第1軌道予測部130は、他車両が動き出したタイミングで当該他車両による割り込みを予測することが可能になる。
【0035】
他にも、第1所定周期の設定の方法は、計算速度(計算負荷)と予測精度に基づいて適応的に設定されるものであってもよい。より具体的には、所定時間Tが大きくなるほど短期予測の処理時間は大きくなる傾向があるため、物体の動きを更新して予測を実行するため、「物体検出の処理時間>短期予測の処理時間」となる範囲で可能な限り大きな時間をt1とする。一方、所定時間Tが大きくなるほど所定時間T経過後の誤差は大きくなる傾向があるため、過去の物体検出結果を予測結果と比較して、誤差が車線幅の半分未満となる最大予測時間をt2とする。そして、t1とt2の小さいほうの時間を第1所定周期として設定するものであってもよい。
【0036】
これにより、車線変更などの自車両への他車両の割り込みを想定した場合において、他車両が実際には割り込みをしないにもかかわらず、車線区分線を超えると予測するような誤った予測を減らしつつ、計算負荷を低減することが可能となる。
【0037】
第2軌道予測部140は、環境情報取得部70で取得した環境情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体の移動を示す第2軌道を予測する。例えば、第2軌道予測部140は、物体の情報と自車両の走行する道路の情報に基づいて第2軌道を予測する。より具体的には、第1軌道予測部130によって予測された第1軌道に関わるパラメータと、道路形状に従う軌道に関わるパラメータとを、次の数式4~6に基づいて統合する。
【数4】
【数5】
【数6】
【0038】
数式5におけるφtとψtは、それぞれ、第1軌道における予測時刻tの角度パラメータと、第1軌道の位置での車線の角度(方向)を表す。また、数式6におけるwtが重みづけを与えるベクトルであり、αtは第1軌道に対する重み、βtは道路形状に対する重みを表す。第1軌道予測部130によって予測された第1軌道に関わるパラメータと、道路形状に従う軌道に関わるパラメータとを、数式4を用いて重み付きで統合し、方向ベクトルvtを算出する。そして、方向ベクトルvtから角度θtを求め、第2軌道における角度パラメータとする。
【0039】
一方、第2軌道における位置をt秒前の角度に基づいて推定するものであってもよい。その他、第2軌道における速度は、第1軌道の予測結果を使ってもよく、環境情報から取得した制限速度や自車両の周囲の他車両の速度を用いて同様に第1軌道の予測結果と統合してもよい。
【0040】
また、第2軌道予測部140は、物体の情報、道路の情報、第1軌道に基づいて、物体ごとに複数の軌道候補を算出し、物体ごとに算出された複数の軌道候補の中から選択された一の軌道候補を、物体の第2軌道とするものであってもよい。より具体的には、第2軌道予測部140は、環境情報に基づいて、物体がとりうる挙動の確率値を算出し、確率値に基づいて、物体ごとに複数の軌道候補を算出し、物体ごとに算出された複数の軌道候補の中から選択された一の軌道候補を、物体の第2軌道とするものであってもよい。
【0041】
物体のとりうる挙動の確率値の算出としては、統計的なモデルから、挙動ごとの確率値を算出してもよく、ルールベース、機械学習などから挙動の確率値を取得してもよい。例えば、特徴(物体自身の車速や物体と車線との位置関係、物体と車線の角度、地図上で取り得る行動、先行車両との位置関係など他物体との相互情報など)を入力値とし、物体の挙動(直進、停止、L/C、左折、右折など)を出力値とする学習データを元に機械学習を行い、入力値に対して出力値の生じる確率値を出力する方法により、物体がとりうる挙動の確率値を算出するものであってもよい。
【0042】
このように、物体がとりうる挙動の確率値に基づいて軌道を予測することによって、計算時間を削減しつつ、生じやすい挙動の軌道を重点的に予測することができる。
【0043】
また、第2軌道予測部140は、軌道候補ごとに尤度を算出し、物体ごとに算出された複数の軌道候補の中で、最も尤度が高い軌道候補を、物体の第2軌道とするものであってもよい。軌道候補の尤度Lは、例えば、他の物体との干渉しにくさCと軌道のスムーズさSから、「L=C×S」として定義するものであってもよい。
【0044】
ここで、干渉しにくさCは、軌道候補が他物体やその予測軌道と干渉しなければ1、干渉すれば0に設定してもよく、また干渉する際には、干渉しにくさCを、干渉する予測時間/全体の予測時間長によって算出してもよい。また、軌道のスムーズさSは、軌道候補上の所定時間区間において、軌道候補のパラメータの変化量を求めたうえで、0から1までの間の値になるように標準化し、軌道候補上での平均値をとった値としてもよい。
【0045】
他の物体との干渉しにくさCと軌道のスムーズさSを考慮して軌道候補の尤度Lを算出することにより、第2軌道予測部140は、他の物体とできるだけ干渉しない滑らかな軌道を、第2軌道として予測することができ、複数の物体の間の相互干渉に基づいて、第2軌道を予測することができる。
【0046】
なお、第2軌道予測部140による第2軌道の予測は、第2所定周期ごとに行われる。この第2軌道予測部140による第2軌道の予測の演算負荷は、第1軌道予測部130による第1軌道の予測よりも演算負荷が高く、第2所定周期は、第1所定周期よりも長い周期として設定される。また、第2軌道における所定時間Tは第2所定周期と同程度の大きさ、もしくは、第2所定周期よりも大きく設定される。
【0047】
なお、上記においては第1軌道予測部130による第1軌道の予測は、各物体それぞれの個々の動きに基づいた複数物体の間の相互干渉を考慮しない軌道予測としているが、第2軌道予測部140と同様に、第1軌道予測部130も、複数の物体の間の相互干渉に基づいて第1軌道を予測するものであってもよい。この場合、第1軌道予測部130における計算負荷が大きく、第1所定周期が設計的に考慮された周期以上に長くなり過ぎないように(少なくとも第2所定周期未満となるように)、第1軌道予測部130において考慮の対象となる複数の物体の間の相互干渉は、第2軌道予測部140において考慮の対象となる複数の物体の間の相互干渉よりも少ないものであってもよい。
【0048】
考慮の対象となる複数の物体の間の相互干渉の多寡は、1つの軌道候補の尤度を算出する際に考慮する他の物体の個数を指標として測ることができる。考慮する他の物体の個数が多くなるほど、考慮の対象となる複数の物体の間の相互干渉が多くなる。
【0049】
影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する。ここで、自車両が走行を予定する走行経路自体は、後述する走行経路設定部180によって設定されるものであってもよいし、事前に、他の走行支援システムによって設定されるものであってもよい。
【0050】
他にも、影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定するものであってもよい。
【0051】
走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道又は第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する方法としては、走行経路と第1軌道又は第2軌道が交わるか否かで判定する。これにより、影響判定部170は、他車両による割り込みや対向車両の飛び出しなどを予測する。
【0052】
なお、影響判定部170は、走行経路と第1軌道が時空間的に交わる第1領域が存在する場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する。また、影響判定部170は、走行経路と第2軌道が時空間的に交わる第2領域が存在する場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する。
【0053】
ここで、「時空間的に交わる」とは、第1領域又は第2領域に自車両が位置するタイミングで、第1軌道又は第2軌道上を移動する物体も、第1領域又は第2領域に自車両が位置することを意味する。すなわち、時間的、空間的に同じ位置に、自車両と物体が位置する場合を意味する。その他、影響判定部170は、自車両の走行経路、第1軌道、第2軌道のそれぞれに車両幅分の幅を設定し、空間的に軌道同士が重なり合う領域が存在するかどうかを判定した後に、当該領域において自車両と他車両が時間的に近い位置にあるかどうかを判定するものであってもよい。
【0054】
また、影響判定部170は、第1軌道又は第2軌道に沿って移動する物体の、走行経路上での滞在時間が所定時間以上である場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道又は第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定するものであってもよい。
【0055】
その他、影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する際に、第1軌道予測部130による第1軌道の予測結果が更新されているか否かを判定するものであってもよい。第1軌道予測部130による第1軌道の予測結果が更新されていると判定された場合、影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定するものであってもよい。
【0056】
予測結果の更新有無の判定の方法としては、第1軌道予測部130による予測の完了に基づくフラグを用いて判定してもよいし、あらかじめ、第1軌道予測部130による予測にかかる処理時間を計測し、計測した処理時間に基づいて判定してもよい。
【0057】
影響判定部170は、第1軌道予測部130による第1軌道の予測結果が更新されていない場合、第1軌道予測部130による第1軌道の予測結果が更新されるまで、影響有無の判定の処理を行わないで待機するものであってもよい。予測結果が更新されていない場合に影響判定部170による影響有無の判定の処理を行っても、影響判定部170による判定の結果は変わらない。そのため、予測結果が更新されていない場合に影響有無の判定の処理を行わないで待機することで、無駄な計算処理を省略することができる。
【0058】
その他、影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に第1軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定した後に、影響なしと判定した場合に、走行経路に沿った自車両の走行に第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定するものであってもよい。影響ありと判定した場合には、走行経路に沿った自車両の走行に影響を与える物体に係る軌道(第1軌道又は第2軌道)に基づいて、後述する走行経路設定部180による走行経路の変更の処理を行うものであってもよい。
【0059】
走行経路設定部180は、環境情報取得部70によって取得した、自車両の位置、自車両の周囲の環境情報、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報、目的地などの情報に基づいて、目的地までの走行ルートを検索して、自車両の走行に用いるべき走行経路を設定する。
【0060】
自車両の現在地から目的地までの自動運転が行われる場合には、自動運転を想定した走行経路であってもよいし、所定の車線における自車両の直進のみの運転支援(車線維持、アダプティブ・クルーズ・コントロールなど)が行われる場合には、走行経路設定部180によって設定される走行経路として、自車両が走行中である車線が設定されてもよい。
【0061】
自車両の走行に第1軌道に沿った物体の移動が影響すると判定された場合には、走行経路設定部180は、第1軌道に基づいて走行経路を変更して設定する。そして、自車両の走行に第1軌道に沿った物体の移動が影響しないと判定された場合には、第2軌道に基づいて走行経路を設定する。その他、自車両の走行に第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定された場合に、走行経路設定部180は、第2軌道に基づいて走行経路を変更して設定するものであってもよい。
【0062】
なお、走行経路設定部180による「走行経路の設定」とは、影響を回避するために自車の加減速や横方向の移動を含む概念である。例えば、自車両の走行に第1軌道又は第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定される場合として、自車両の進行方向の前方に隣接車両が割り込んでくると判定された場合には、走行経路設定部180は、自車両が減速するよう、走行経路の設定を行ってもよい。また、自車両の進行方向の前方を走行する先行車両が所定時間以上、自車両の走行経路に滞在、又は、停止すると判定された場合には、自車両が車線変更可能な車線へ移動するよう、走行経路の設定を行ってもよい。
【0063】
車線変更可能な車線に移動するような、自車両が横方向に移動するような回避では、物体を回避する走行経路候補を算出し、走行経路候補において滞在時間よりも長い待ち時間が発生するか否かを判定し、走行経路候補において滞在時間よりも長い待ち時間が発生しないと判定された場合に、走行経路候補を自車両の変更後の走行経路として設定するものであってもよい。これにより、変更後の走行経路における自車両の移動効率が低下してしまうことを抑制できる。
【0064】
その他にも、走行経路設定部180は、変更後の走行経路から変更前の走行経路に復帰可能であるかどうか、変更後の走行経路において不要な待機(停車、減速)が発生しないかどうか、などを考慮して、走行経路の設定を行ってもよい。
【0065】
走行経路設定部180によって設定あるいは変更して設定された自車両の走行経路は、車両制御装置400に出力され、走行経路に基づいて自車両の走行が制御される。
【0066】
[走行支援装置の処理手順]
次に、本実施形態に係る走行支援装置の処理手順を、
図2のフローチャートを参照して説明する。
図2に示す走行支援装置の処理は、所定の周期で繰り返し実行されるものであってもよいし、取得部で自車両の周囲の環境情報を取得するたびに実行されるものであってもよい。
【0067】
ステップS101において、環境情報取得部70は、自車両の周囲の環境情報を取得する。
【0068】
ステップS103において、自己位置推定部120は、自己位置(自車両の現在の位置)を取得する。
【0069】
ステップS105において、走行経路設定部180は、環境情報取得部70によって取得した、自車両の位置、自車両の周囲の環境情報、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報、目的地などの情報に基づいて、目的地までの走行ルートを検索して、自車両の走行に用いるべき走行経路を設定する。なお、既に走行経路が設定されている場合には、ステップS105の処理は省略されてもよい。
【0070】
ステップS107において、第1軌道予測部130は、環境情報取得部70で取得した環境情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体の移動を示す第1軌道を予測する。また、第2軌道予測部140は、環境情報取得部70で取得した環境情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体の移動を示す第2軌道を予測する。
【0071】
なお、第1軌道予測部130による第1軌道の予測は、第1所定周期ごとに行われるため、最後に第1軌道の予測を行ってから第1所定周期での単位周期の時間が経過していない場合には、第1軌道予測部130による第1軌道の予測は行われない。また、第2軌道予測部140による第2軌道の予測は、第2所定周期ごとに行われるため、最後に第2軌道の予測を行ってから第2所定周期での単位周期の時間が経過していない場合には、第2軌道予測部140による第2軌道の予測は行われない。
【0072】
その他、ステップS107に示す処理を実行する代わりに、第1軌道予測部130による第1軌道の予測、及び、第2軌道予測部140による第2軌道の予測は、
図2のフローチャートに示す処理とは独立して並列に実行されるものであってもよい。
【0073】
ステップS109において、影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する。
【0074】
走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響すると判定された場合(ステップS111でYESの場合)には、ステップS113において、走行経路設定部180は、第1軌道に基づいて走行経路を変更して設定し、ステップS115に進む。
【0075】
一方、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響しないと判定された場合(ステップS111でNOの場合)には、ステップS121において、影響判定部170は、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定する。
【0076】
走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定された場合(ステップS123でYESの場合)には、ステップS125において、走行経路設定部180は、第2軌道に基づいて走行経路を変更して設定し、ステップS115に進む。
【0077】
走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響しないと判定された場合(ステップS123でNOの場合)には、ステップS115に進む。すなわち、ステップS105において設定した走行経路を変更する事無く、走行経路として設定する。
【0078】
その後、ステップS115において、走行経路設定部180は、設定あるいは変更された自車両の走行経路を、車両制御装置400に出力する。出力された自車両の走行経路に基づいて、車両制御装置400は自車両を制御する。
【0079】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車両の周囲の物体の位置を含む環境情報を取得し、物体の移動を示す第1軌道を、環境情報に基づいて、第1所定周期ごとに予測し、物体の移動を示す第2軌道を、環境情報に基づいて、第1所定周期よりも長い第2所定周期ごとに予測し、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定し、自車両の走行に第1軌道に沿った物体の移動が影響すると判定された場合には、第1軌道に基づいて走行経路を設定し、自車両の走行に第1軌道に沿った物体の移動が影響しないと判定された場合には、第2軌道に基づいて走行経路を設定する。
【0080】
これにより、急な環境変化に対応しつつ円滑な自車両の運転支援制御を実現できる。特に、短期的な軌道である第1軌道を予測して緊急性が高い急な割り込みなどに対応しつつ、長期的な軌道である第2軌道を予測して自車両の予備的な自車両の走行経路の設定を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置において、第1軌道は、環境情報に基づいて予測された、物体の将来の移動を示す軌道であり、第2軌道は、環境情報と共に、複数の物体の間の相互干渉に基づいて予測された、物体の将来の移動を示す軌道であってもよい。これにより、他の物体とできるだけ干渉しない滑らかな軌道を、第2軌道として予測することができ、自車両の周囲に他の物体が存在するような環境においても、円滑な自車両の運転支援制御を実現できる。
【0082】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置において、第1軌道は、環境情報と共に、第1個数からなる複数の物体の間の相互干渉に基づいて予測された、物体の将来の移動を示す軌道であり、第2軌道は、環境情報と共に、第1個数よりも大きい第2個数からなる複数の物体の間の相互干渉に基づいて予測された、物体の将来の移動を示す軌道であってもよい。これにより、他の物体による干渉を受けない滑らかな軌道を第2軌道として算出しつつ、第2軌道の予測よりも少ない計算コストで、第1軌道の予測を行うことができる。その結果、限られた計算機資源の下で、緊急性が高い急な割り込みなどに対応しやすくなる。
【0083】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、走行経路と第1軌道が時空間的に交わる第1領域が存在する場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響すると判定し、第1領域を回避するように走行経路を変更するものであってもよい。これにより、自車両の前方に割り込んでくる他車両や、障害物などを避けて自車両が走行する車線に進入する対向車両を回避した走行経路を算出することができる。その結果、安全面に配慮して自車両の走行支援を行うことができる。
【0084】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、第1軌道に沿って移動する物体の、走行経路上での滞在時間が所定時間以上である場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第1軌道に沿った物体の移動が影響すると判定し、物体を回避する走行経路候補を算出し、走行経路候補において滞在時間よりも長い待ち時間が発生するか否かを判定し、走行経路候補において滞在時間よりも長い待ち時間が発生しないと判定された場合に、走行経路候補を自車両の変更後の走行経路として設定するものであってもよい。これにより、自車両の前方を走行する他車両が、右左折待ちなどして停止する際に、他車両が右左折することを予測し、自車両が待つことなく、自車両が進行するための走行経路に変更することができる。また、現在の走行経路を走行した場合における、自車両の前方を走行する他車両を待つための時間と比較して、走行経路を変更した場合には、より短い時間で自車両は進行方向に進むことができる。
【0085】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響するか否かを判定し、自車両の走行に第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定された場合には、第2軌道に基づいて走行経路を設定するものであってもよい。これにより、長期的な軌道である第2軌道を予測して自車両の予備的な自車両の走行経路の設定を行うことができる。その結果、安全面に配慮して自車両の走行支援を行うことができる。
【0086】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、走行経路と第2軌道が時空間的に交わる第2領域が存在する場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定し、第2領域を回避するように走行経路を設定するものであってもよい。これにより、長期的な軌道である第2軌道を予測して自車両の予備的な自車両の走行経路の設定を行うことができる。その結果、安全面に配慮して自車両の走行支援を行うことができる。
【0087】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、第2軌道に沿って移動する物体が、走行経路上での滞在時間が所定時間以上である場合に、走行経路に沿った自車両の走行に、第2軌道に沿った物体の移動が影響すると判定し、物体を回避する走行経路候補を算出し、走行経路候補において滞在時間よりも長い待ち時間が発生するか否かを判定し、走行経路候補において滞在時間よりも長い待ち時間が発生しないと判定された場合に、走行経路候補を自車両の変更後の走行経路として設定するものであってもよい。これにより、自車両の前方を走行する他車両が、右左折待ちなどして停止する際に、他車両が右左折することを予測し、自車両が待つことなく、自車両が進行するための走行経路に変更することができる。また、現在の走行経路を走行した場合における、自車両の前方を走行する他車両を待つための時間と比較して、走行経路を変更した場合には、より短い時間で自車両は進行方向に進むことができる。
【0088】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、物体の情報と自車両の走行する道路の情報に基づいて、第2軌道を予測するものであってもよい。これにより、単一の物体から予測するのと比較して、より長期的な将来を表した第2軌道を予測できる。例えば、ある他車両の前方を走行する先行車両が減速しうる状況において、その隣接車線には車線変更可能な空間がない場合、先行車両が減速に合わせて、当該他車両も減速することを予測することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、物体の情報、道路の情報、第1軌道に基づいて、物体ごとに複数の軌道候補を算出し、物体ごとに算出された複数の軌道候補の中から選択された一の軌道候補を、物体の第2軌道とするものであってもよい。これにより、短期的な予測軌道を利用した近い将来を考慮した、より精度の高い予測ができるようになる。さらには、道路形状、車線形状などに基づいて、他車両の直進、右折、左折などの取り得る挙動を考慮した予測ができる。
【0090】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、環境情報に基づいて、物体がとりうる挙動の確率値を算出し、確率値に基づいて、物体ごとに複数の軌道候補を算出し、物体ごとに算出された複数の軌道候補の中から選択された一の軌道候補を、物体の第2軌道とするものであってもよい。これにより、生じうる確率の高い挙動に限定して軌道の予測を行うことができ、軌道の予測に必要な計算負荷を低減し、計算時間を短縮することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、軌道候補ごとに尤度を算出し、物体ごとに算出された複数の軌道候補の中で、最も尤度が高い軌道候補を、物体の第2軌道とするものであってもよい。これにより、複数の軌道候補のうち、尤もらしい軌道を選出できる。例えば、尤度を他物体との接触しにくさと、軌道の滑らかさに基づいて計算する場合、他物体の存在やその動きも考慮しつつ、交通が滑らかになる軌道を予測することができる。
【0092】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、物体の情報、過去の物体の情報に基づいて、第1軌道を予測するものであってもよい。また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置において、物体の情報は、物体の位置、姿勢、速度の情報を含むものであってもよい。これにより、単一の物体の動きを考慮して、当該物体自身に起因する割り込みなどの挙動を、高速で予測できる。その結果、急な割り込みへの対応が可能となる。
【0093】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置において、第1所定周期は、統計的データに基づいて設定されるものであってもよい。これにより、他車両が動き出したタイミングで、当該他車両による割り込みを予測することが可能になる。
【0094】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0095】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0096】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0097】
70 環境情報取得部
71 撮像部
73 車載センサ
75 地図情報取得部
100 コントローラ
120 自己位置推定部
130 第1軌道予測部
140 第2軌道予測部
170 影響判定部
180 走行経路設定部
400 車両制御装置