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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ロックボルト施工装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020122981
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019247
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年4月22日、戸田建設のウェブサイト https://www.toda.co.jp/news/2020/20200422.html (2)令和2年4月23日、建設通信新聞 (3)令和2年4月23日、日刊建設産業新聞 (4)令和2年4月23日、日刊建設工業新聞 (5)令和2年4月23日、日刊工業新聞
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595056675
【氏名又は名称】サンドビック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】三上 英明
(72)【発明者】
【氏名】北原 淳史
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-094364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NATM工法による山岳トンネル工事において、壁面に対してロックボルトのための穿孔、グラウト材の充填及びロックボルトの挿入の作業を行うためのロックボルト施工装置であって、
前記ロックボルト施工装置は、走行可能な基体と、基体から延びるアームユニットと、アームユニットの先端部に設けられた装置本体とを含み、
前記装置本体は、第1ガイドシェルと、第1ガイドシェルに沿って前後進可能に設けられた第1ドリフタと、この第1ドリフタに保持される穿孔ロッドとを備えるロックボルト穿孔装置部と、
第2ガイドシェルと、第2ガイドシェルに沿って前後進可能に設けられた第2ドリフタと、前記ガイドシェルに隣接して配置された、周囲に複数本のロックボルトを保持可能であるとともに、前記第2ドリフタにロックボルトを供給するためのロックボルトラックとを備えるロックボルト挿入装置部と、
前記ロックボルト穿孔装置部と、前記ロックボルト挿入装置部との間に配置された、グラウト材を穿孔内に充填するための注入ホースを進退自在に保持するグラウト材充填装置部とが並列状態で設けられ、
前記基体にグラウト材供給装置が搭載されているとともに、該グラウト材供給装置は、前記基体の側面において、上段側に配置された練混ぜ用ミキサー装置部と、下段側に配置されたグラウト材圧送ポンプ装置部とからなり、前記グラウト材圧送ポンプ装置部は、鉛直軸周りの支軸によって左右方向に揺動可能とされ使用時位置と待避位置との間で移動可能とされ、前記練混ぜ用ミキサー装置部はリンク機構によって上下動可能とされ、前記グラウト材圧送ポンプ装置部が待避位置にある時に下降可能となっていることを特徴とするロックボルト施工装置。
【請求項2】
前記装置本体の先端部に回転当接支点部が設けられ、この回転当接支点部をトンネル壁面に押し当て固定した状態で、前記ロックボルト穿孔装置部と前記ロックボルト挿入装置部と前記グラウト材充填装置部とが前記回転当接支点部を回転中心として揺動可能とされ、かつ前記装置本体を先端側から視た際、前記ロックボルト穿孔装置部の第1ドリフタの軸部と、前記ロックボルト挿入装置部の第2ドリフタの軸部と、前記グラウト材充填装置部の注入ホース部とが前記回転当接支点部を中心とする円弧線上に位置している請求項1記載のロックボルト施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NATM工法による山岳トンネル工事において、掘削直後の地山に穿孔を行い、この穿孔内に挿入され、グラウト材によって固定されるロックボルトのための施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、NATM工法に代表される山岳トンネル工事では、発破による掘進毎に、掘削壁面に対してコンクリートの吹付けを行うとともに、多数のロックボルトをトンネル壁面に対して垂直に地山中に挿入しグラウト材によって固定することにより、吹付けコンクリートとロックボルトとを主たる支保部材として地山補強を図った後、その外面に防水シートを張設し、最終的なコンクリート覆工を行うようにしている。
【0003】
従来は、前記ロックボルトの施工は、穿孔機によって穿孔を行った後、バスケットに作業員が搭乗し、穿孔にロックボルトを手作業で挿入し、更にグラウト材を充填することによりロックボルトの固定を図るようにしていたが、近年このロックボルトの施工を機械化することが行われている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、トンネル用ドリルジャンボのガイドシェルに搭載されたトンネル用ロックボルト施工装置であって、前記ガイドシェルに、該ガイドシェルの長手方向に沿って並列状態を保持して複数本の削孔ロッドとロックボルトとをラックに格納し、前記削孔ロッドとロックボルトのうち、特定の1本を前記ガイドシェル上の所定位置に位置決め可能に前記ラックを作動する駆動部を有する格納装置と、前記ガイドシェルの所定位置に位置決めされた前記特定の1本を把持可能なクランプ装置と、前記格納装置の一部に収容された定着材注入管をガイド管とする注入ホースをロックボルト孔内に挿入可能な注入ホース供給装置とを搭載したことを特徴とするトンネル用ロックボルト施工装置が提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、地山に設けられた孔と、前記孔に充填された充填材と、前記充填材に埋め込まれるロックボルトと、により構成される支保構造を施工するために、移動式台車に搭載されるロックボルト施工装置であって、
前記孔を削孔する削孔ロッドと、第1軸線を有し前記削孔ロッドを駆動する第1ドリフタと、前記第1ドリフタを前記第1軸線に沿う方向へ往復移動可能に支持する第1ガイドセルと、前記第1ガイドセルを前記移動式台車に連結すると共に、前記地山に対する前記第1ガイドセルの姿勢を制御する第1ブームとを有する第1アームユニットと、前記削孔ロッドが削孔した前記孔に挿し込まれて、前記孔に充填材を充填する充填ロッドと、第2軸線を有し前記充填ロッドの基端を保持する第2ドリフタと、前記第2ドリフタを前記第2軸線に沿う方向へ往復移動可能に支持する第2ガイドセルと、前記第2ガイドセルを前記移動式台車に連結すると共に、前記地山に対する前記第2ガイドセルの姿勢を制御する第2ブームとを有する第2アームユニットとを備えるロックボルト施工装置が提案されている。この場合、前記第1ガイドセルは、前記第1軸線に沿う方向へ延びる第1ガイドと、前記第1軸線に沿う方向に往復移動可能に前記第1ガイドに取り付けられると共に、前記第1ドリフタが搭載される第1キャリッジとを含み、前記第1アームユニットは、前記第1キャリッジに設けられると共に、前記ロックボルトの基端を着脱可能に保持するボルト保持部と、前記第1ガイドに配置されると共に、前記ボルト保持部に保持された前記ロックボルトを支持するボルト支持部と、前記第1ガイドの先端に設けられると共に、前記ロックボルトの基端が着脱可能に嵌め込まれるボルト押圧部とをさらに有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-96196号公報
【文献】特開2019-65536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に係るトンネル用ロックボルト施工装置や特許文献2に係るロックボルト施工装置は、ロックボルトのための地山削孔、定着材(グラウト材)の注入、ロックボルトの挿入などの一連の作業を機械化している点で優れているものである。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に係る装置の場合は、1台のガイドシェル(油圧ドリフタ含む)と、複数本の削孔ロッドとロックボルトとを収納したラック及び注入ホース供給装置を含む格納装置によって、ロックボルトの穿孔、定着材の注入、ロックボルトの挿入までを可能としたものであり、1台のガイドシェル装置部分に複数の機能を持たせるために装置自体が複雑であり製作費が嵩むとともに、更に一連のオペレータ操作が煩雑になるなどの問題があった。
【0009】
一方、前記特許文献2に係る装置の場合は、複数のアームの内、一つのアームに対して穿孔とロックボルトの挿入とを行わせ、他のアームに充填材の充填を行わせることによってアーム毎に役割分担を行い、作業の効率化を進めたものであるが、アーム毎に異なる作業を行わせることは操作が煩雑化しオペレータにかなりの負担を強いることになるなどの問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、ロックボルトのための穿孔作業と、グラウト材の充填と、ロックボルトの挿入作業とを行わしめるようにしたロックボルト施工装置であって、装置構造を単純化するとともに、一連の操作を行うオペレータの負担を軽くし、かつロックボルト穿孔、グラウト充填及びロックボルト挿入までの一連の作業の更なる効率化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、NATM工法による山岳トンネル工事において、壁面に対してロックボルトのための穿孔、グラウト材の充填及びロックボルトの挿入の作業を行うためのロックボルト施工装置であって、
前記ロックボルト施工装置は、走行可能な基体と、基体から延びるアームユニットと、アームユニットの先端部に設けられた装置本体とを含み、
前記装置本体は、第1ガイドシェルと、第1ガイドシェルに沿って前後進可能に設けられた第1ドリフタと、この第1ドリフタに保持される穿孔ロッドとを備えるロックボルト穿孔装置部と、
第2ガイドシェルと、第2ガイドシェルに沿って前後進可能に設けられた第2ドリフタと、前記ガイドシェルに隣接して配置された、周囲に複数本のロックボルトを保持可能であるとともに、前記第2ドリフタにロックボルトを供給するためのロックボルトラックとを備えるロックボルト挿入装置部と、
前記ロックボルト穿孔装置部と、前記ロックボルト挿入装置部との間に配置された、グラウト材を穿孔内に充填するための注入ホースを進退自在に保持するグラウト材充填装置部とが並列状態で設けられ、
前記基体にグラウト材供給装置が搭載されているとともに、該グラウト材供給装置は、前記基体の側面において、上段側に配置された練混ぜ用ミキサー装置部と、下段側に配置されたグラウト材圧送ポンプ装置部とからなり、前記グラウト材圧送ポンプ装置部は、鉛直軸周りの支軸によって左右方向に揺動可能とされ使用時位置と待避位置との間で移動可能とされ、前記練混ぜ用ミキサー装置部はリンク機構によって上下動可能とされ、前記グラウト材圧送ポンプ装置部が待避位置にある時に下降可能となっていることを特徴とするロックボルト施工装置が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、ロックボルト施工装置は、走行可能な基体と、基体から延びるアームユニットと、アームユニットの先端部に設けられた装置本体とを含み、この装置本体は、ロックボルトのための穿孔を行うロックボルト穿孔装置部と、ロックボルトの挿入を行うロックボルト挿入装置部と、前記ロックボルト穿孔装置部と前記ロックボルト挿入装置部との間に配置された、グラウト材の充填を行うためのグラウト材充填装置部とを夫々独立した構造としたことにより、装置構造を単純化することが可能になると同時に操作が単純化するため一連の操作を行うオペレータの負担も軽くなる。
【0013】
また、前記基体にグラウト材供給装置が搭載されているとともに、該グラウト材供給装置は、前記基体の側面において、上段側に配置された練混ぜ用ミキサー装置部と、下段側に配置されたグラウト材圧送ポンプ装置部とからなり、前記グラウト材圧送ポンプ装置部は、鉛直軸周りの支軸によって左右方向に揺動可能とされ使用時位置と待避位置との間で移動可能とされ、前記練混ぜ用ミキサー装置部はリンク機構によって上下動可能とされ、前記グラウト材圧送ポンプ装置部が待避位置にある時に下降可能となっている。
【0014】
従来は、グラウト材供給車が別途用意され、ロックボルト施工装置に対してグラウト材をホースを介して供給するようにしていたが、本発明では基体にグラウト材供給装置を搭載することにより、運転手の人数の削減やトンネル施工重機数の低減により切羽前での輻輳を防止でき、かつグラウト充填作業の効率化を図ることが可能になる。
【0015】
従来は、グラウト材供給装置をロックボルト穿孔装置などに搭載することは設置スペースの確保等の点から困難であった。そのため、基体の側面において、上段側に練混ぜ用ミキサー装置部を配置し、下段側にグラウト材圧送ポンプ装置部することとし、前記グラウト材圧送ポンプ装置部は、鉛直軸周りの支軸によって左右方向に揺動可能とされ使用時位置と待避位置との間で移動可能とされ、前記練混ぜ用ミキサー装置部はリンク機構によって上下動可能とされ、前記グラウト材圧送ポンプ装置部が待避位置にある時に下降可能とすることにより、作業員が基体に搭乗することなく、基体脇の地上スペースで前記練混ぜ用ミキサー装置部へのグラウト材料の投入を容易に行うことが可能になる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記装置本体の先端部に回転当接支点部が設けられ、この回転当接支点部をトンネル壁面に押し当て固定した状態で、前記ロックボルト穿孔装置部と前記ロックボルト挿入装置部と前記グラウト材充填装置部とが前記回転当接支点部を回転中心として揺動可能とされ、かつ前記装置本体を先端側から視た際、前記ロックボルト穿孔装置部の第1ドリフタの軸部と、前記ロックボルト挿入装置部の第2ドリフタの軸部と、前記グラウト材充填装置部の注入ホース部とが前記回転当接支点部を中心とする円弧線上に位置している請求項1記載のロックボルト施工装置が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前記回転当接支点部をトンネル壁面に押し当て固定した状態で、前記ロックボルト穿孔装置部と前記ロックボルト挿入装置部と前記グラウト材充填装置部とが前記回転当接支点部を回転中心として揺動可能とされ、かつ正面視で(前記装置本体を先端側から視た際)、前記ロックボルト穿孔装置部の第1ドリフタの軸部と、前記ロックボルト挿入装置部の第2ドリフタの軸部と、前記グラウト材充填装置部の注入ホース部とが前記回転当接部を中心とする円弧線上に位置するようにしている。従って、前記回転当接支点部を中心とする揺動制御操作のみによって、前記ロックボルト穿孔装置部、前記ロックボルト挿入装置部、前記グラウト材充填装置部の位置決めが簡単にできるようになるため、一連の操作を行うオペレータの負担が軽くなるとともに、ロックボルト穿孔、グラウト充填及びロックボルト挿入までの一連の作業の更なる効率化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、ロックボルトのための穿孔作業と、グラウト材の充填と、ロックボルトの挿入作業とを行わしめるようにしたロックボルト施工装置であって、装置構造を単純化するとともに、一連の操作を行うオペレータの負担を軽くし、かつロックボルト穿孔、グラウト充填及びロックボルト挿入までの一連の作業の更なる効率化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】山岳トンネルの掘削施工要領を示すトンネル縦断面図である。
図2】本発明に係るロックボルト施工装置4全体側面図である。
図3】装置本体12を示す斜視図である。
図4】その正面図である。
図5】装置本体12を構成する各装置部の位置関係を示す模式図である。
図6】グラウト材供給装置17を示す斜視図である。
図7】その正面図である。
図8】その平面図である。
図9】練混ぜ用ミキサー装置部18を示す斜視図である。
図10】その正面図である。
図11】その側面図である。
図12】グラウト材圧送ポンプ装置部19を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
切羽Sの近傍では、図1に示されるように、ドリルジャンボ1、吹付け機2、ホイールローダ3、ロックボルト施工装置4などのトンネル施工重機が配置され掘削作業が行われる。図示の例は、上半及び下半の一括の併行作業により掘削を行うミニベンチ工法の例であり、上半ベンチ長を3~5.5mと極端に小さくした上で、上半及び下半のそれぞれにおいて、ドリルジャンボ1によって切羽Sに対して削孔と装薬を行い、上半と下半とを一気に切り崩し(発破)、その後にホイールローダ3によってズリ出しを行った後、壁面に対して吹付け機2を用いて一次吹付けを行い、必要に応じて鋼製支保工の建込みを行い、二次吹付けを行った後、ロックボルトの施工の手順に従って掘削が行われるようになっている。
【0022】
本発明は、前記山岳トンネルの施工において、ロックボルトの施工作業を機械化するための装置である。ロックボルトの施工は、壁面に対してロックボルトのための穿孔、グラウト材の充填及びロックボルトの挿入、ロックボルト頭部の定着作業に分類されるが、ロックボルトのための穿孔からロックボルトの挿入までの作業を機械化するものである。
【0023】
〔ロックボルト施工装置4〕
前記ロックボルト施工装置4は、図2に示されるように、走行可能な基体10と、基体10から延びるアームユニット11と、アームユニット11の先端部に設けられた装置本体12と、前記基体10に搭載されたグラウト材供給装置17を含むものである。前記基体10の走行方式は、図示例ではホイール式を示したがキャタピラ式でもよい。走行可能とすることにより、ロックボルトの施工手順になった際に、待避場所から切羽S近傍まで移動して施工を行うようになっている。前記アームユニット11は、滑節部と油圧シリンダとの組合せ機構によってアームの旋回動作、伏仰動作が可能になっているとともに、先端に保持された装置本体12が滑節部と油圧シリンダとの組合せ機構によって任意の姿勢状態に制御可能になっている。
【0024】
<装置本体12>
先ず最初に前記装置本体12について、図3図5に基づいて詳述する。
【0025】
前記装置本体12は、詳細には図3に示されるように、ロックボルト穿孔装置部13と、ロックボルト挿入装置部14と、グラウト材充填装置部15とが並列状態で配置された構造となっている。
【0026】
前記ロックボルト穿孔装置部13は、第1ガイドシェル20と、第1ガイドシェル20に沿って前後進可能に設けられた第1ドリフタ21と、この第1ドリフタに保持される穿孔ロッド22と、前記第1ガイドシェル20の先端に配置され穿孔ロッド22を保持するセントラライザ23とを備えるものである。前記第1ドリフタ21は、第1ガイドシェル20上のレールに沿って前後方向に移動可能に制御されるとともに、所定の油圧回路又は空圧回路によって、穿孔ロッドに対して回転力と打撃力を与えながら地盤に押し込むことによって地盤に穿孔ロッドの外径に相当する穿孔を形成することが可能になっている。
【0027】
前記ロックボルト挿入装置部14は、第2ガイドシェル25と、第2ガイドシェル25に沿って前後進可能に設けられた第2ドリフタ26と、前記ガイドシェルに隣接して並列状態で配置され、周囲に複数本のロックボルトを保持可能であるとともに、前記第2ドリフタ26にロックボルトを供給するためのロックボルトラック27とを備えるものである。
【0028】
前記ロックボルトラック27は、軸部29の前後端及び中間部に、円周部の所定の間隔でロックボルト収容凹部28a、28a…が設けられた円形ラック板28A~28Cが配設されるとともに、前記軸部29の両端がそれぞれ揺動アーム30A、30Bによって支持されている。また、前記第2ガイドシェル25の隣接部に前後一対で一組のグリッパ30A、30Bが設けられている。
【0029】
従って、前記円形ラック板28A~28Cの周囲のロックボルト収容凹部28a、28a…にロックボルトが複数本収容された状態から前記揺動アーム30A、30Bを揺動させて第2ガイドシェル25の上面部分にロックボルトが供給される。ロックボルトは前記グリッパ30A、30Bが基端を回転中心として揺動することによりロックボルトを押えることができ、ロックボルトの位置が保持されるようになっている。第2ガイドシェル25に供給されたロックボルトの後端面に第2ドリフタ26の軸部が当接させた後、第2ドリフタ26を前進させることによりロックボルトを穿孔内に挿入させるようになっている。
【0030】
なお、前記第2ドリフタ26は、第2ガイドシェル25上のレールに沿って前後方向に移動可能であればよく、ロックボルトに対して回転力と打撃力を与える必要はない。
【0031】
前記グラウト材充填装置部15は、前記ロックボルト穿孔装置部13と前記ロックボルト挿入装置部14との間に配置されており、構造は、先端にホース吐出口31が保持させるとともに、ホース吐出口31の後側に連続するようにホースガイド32が設けられており、ホースガイド32の後部にホース送出し・引込み機構部33が設けられている。このホース送出し・引込み機構部33はホースを挟持するように1又は複数組のローラが配設され、これらローラの回転によってホースを送り出したり、引き込んだりできるようにしたものである。従って、グラウト充填に当たっては、穿孔内にホースを奥まで送り込んだならば、グラウト材をホース先端から排出させながらホースを徐々に引き込むようにする。
【0032】
一方で、前記ロックボルト穿孔装置部13と、前記ロックボルト挿入装置部14と、前記グラウト材充填装置部15とは、直線状の主フレーム34を含むフレーム部材に対して一体的に組み付けられ、前記装置本体12の先端部に設けられた回転当接支点部16を回転中心として揺動可能になっている。すなわち、前記主フレーム34から延在するリング部材35が支軸36に対して外嵌して設けられている。また、前記支軸36の先端に前記回転当接支点部16が設けられた構造となっており、回転当接支点部16をトンネル壁面に押し当て固定した状態で、前記主フレーム34を油圧シリンダによって揺動制御することによって、前記ロックボルト穿孔装置部13と前記ロックボルト挿入装置部14と前記グラウト材充填装置部15とが一体的に前記回転当接支点部16を回転中心として揺動可能とされる。なお、前記回転当接支点部16の先端面は、平坦面としてもよいが、押し当て状態を確実に維持するために、図示例のように、先端が尖った円錐ピン16aを設けるようにしてもよい。
【0033】
図4に示されるように、装置本体12を先端側から視た状態(正面視)で、前記ロックボルト穿孔装置部13の第1ドリフタ21の軸部と、前記ロックボルト挿入装置部14の第2ドリフタ25の軸部と、前記グラウト材充填装置部15の注入ホース吐出口31とが前記回転当接支点部16を中心とする円弧線上に位置している。模式的に図6にその配置状態を示したが、前記回転当接支点部16をトンネル壁面に押し当て固定した状態としたならば、前記回転当接支点部16を中心とする揺動制御操作のみによって、前記ロックボルト穿孔装置部13、前記ロックボルト挿入装置部14、前記グラウト材充填装置部15の位置決めが簡単にできるようになるため、一連の操作を行うオペレータの負担が軽くなるとともに、ロックボルト穿孔、グラウト充填及びロックボルト挿入までの一連の作業の更なる効率化を図ることが可能になる。
【0034】
なお、前記ロックボルト穿孔装置部13と前記ロックボルト挿入装置部14との間に前記グラウト材充填装置部15を配設したのは、正面視で右側から順にロックボルト穿孔、グラウト充填及びロックボルト挿入という作業手順の順番通りに配置することで、各装置部13~15の位置決めを容易化するとともに、作業の効率化を図るためである。
【0035】
<グラウト材供給装置13>
次に、前記基体10に搭載されたグラウト材供給装置17について、図6図12に基づいて詳述する。
【0036】
前記グラウト材供給装置17は、図2に示されるように、前記基体10の側面、すなわち基体10の後側タイヤの近傍部分に設けられている。前記グラウト材供給装置17は、図6にその全体図が示されるように、上段側に設けられた練混ぜ用ミキサー装置部18と、下段側に配置されたグラウト材圧送ポンプ装置部19とから構成される。すなわち、グラウト材の各材料(セメント、水、細骨材など)が投入され、これらの材料が練混ぜられる練混ぜ用ミキサー装置部18が相対的に上段側に配置され、練混ぜが完了したグラウト材が送り出され、下段側に配置されたグラウト材圧送ポンプ装置部19に投入され、ここからホースを介して送り出され、地山に形成されたロックボルトの穿孔内に充填される。なお、符号37は集塵装置であり、前記練混ぜ用ミキサー装置部18に材料を投入した際に粉塵が周囲に飛散しないようにするための設備である。吸込口は前記練混ぜ用ミキサー装置部18が下降させた際に材料投入口の上方に位置し、ダクトによって粉塵を吸い込み、フィルター(図示せず)によってろ過されるようになっている。
【0037】
以下、更に具体的に詳述する。
【0038】
前記グラウト材圧送ポンプ装置部19は、図6に示されるように、基体10に対してボルトによって固定される固定用基板40に対して、支持フレーム41が支軸42、42によって鉛直軸周りに揺動可能に支持され、前記支持フレーム41に対して、図12に示されるポンプユニット43が搭載されている。前記ポンプユニット43は、上側のホッパ44と、これに連続して下側に配置されたグラウトポンプ45とからなり、前記ホッパ44に投入されたグラウト材を先端の吐出口に接続されたホースを介して連続的に送給するものである。前記支持フレーム41には、折畳みステップ46が設けられており、作業員がこれに乗って制御盤を操作できるようになっている。
【0039】
前記グラウト材圧送ポンプ装置部19は、支持フレーム41が支軸42、42によって鉛直軸周りに揺動可能に支持されることにより、使用時位置と待避位置との間で移動可能とされる。使用時位置とはグラウト材圧送ポンプ装置19によってグラウト材を圧送又は圧送し得る状態を言い、待避位置とは前記練混ぜ用ミキサー装置部18を後述するように下降させて、グラウト材料を投入し得る状態を言う。
【0040】
一方、前記練混ぜ用ミキサー装置部18は、図9図11に示されるように、練混ぜタンク47と、この練混ぜタンク47の両側に夫々配置され、前記練混ぜ用タンク47を上下動可能に支持する上下動リンク機構50、50とからなり、前記グラウト材圧送ポンプ装置部19が待避位置にある時に下降可能となっている。
【0041】
前記練混ぜタンク47は、図9に示されるように、開閉可能な蓋47Aを備えるとともに、内部に撹拌羽根を備えた立方函体状のタンクであり、底板は奥行き方向の断面形状はV字状断面とされ、かつ正面視で一方側に傾斜して構成されている。この底板部分には長手方向に沿って駆動スクリューが内設されたフィード管48が配設され、タンク47内のグラウト材を一方側方向(上り方向)に移送し、排出管49から前記グラウト材圧送ポンプ装置部19のホッパ44にグラウト材を投入するようになっている。
【0042】
前記上下動リンク機構50は、基体10にボルトによって固定される下側第1リンク51と、この下側第1リンク51の上端に対して軸53によって連結された上側第2リンク52と、一端が前記下側第1リンク51の下部側に連結され他端が前記上側第2リンク52に連結された油圧シリンダ54とからなり、前記油圧シリンダ54を図11に示される状態から収縮させることにより練混ぜタンク47を下降させることが可能になっている。
【0043】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、グラウト材供給装置17を基体10の側面に対して設けたが、基体10の背面に対して設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ドリルジャンボ、2…吹付け機、3…ホイールローダ、4…ロックボルト施工装置、10…基体、11…アームユニット、12…装置本体、13…ロックボルト穿孔装置部、14…ロックボルト挿入装置部、15…グラウト材充填装置部、16…回転当接支点部、17…グラウト材供給装置、18…練混ぜ用ミキサー装置部、19…グラウト材圧送ポンプ装置部、20…第1ガイドシェル、21…第1ドリフタ、22…穿孔ロッド、23…セントラライザ、25…第2ガイドシェル、26…第2ドリフタ、27…ロックボルトラック、28A~28C…円形ラック板、29…軸部、30A・30B…揺動アーム、31…ホース吐出口、32…ホースガイド、33…ホース送出し・引込み機構部、34…主フレーム、37…集塵機、40…固定用基板、41…支持フレーム、42…支軸、43…ポンプユニット、44…ホッパ、45…グラウトポンプ、S…切羽
図1
図2
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図5
図6
図7
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図11
図12