(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】配線層、磁壁移動素子および磁気アレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 29/82 20060101AFI20240411BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20240411BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240411BHJP
H01F 10/14 20060101ALI20240411BHJP
H01F 10/16 20060101ALI20240411BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20240411BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L29/82 Z
H10B61/00
H10N50/10
H01F10/14
H01F10/16
G11B5/39
G11B5/02 R
(21)【出願番号】P 2020138565
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】山田 章悟
(72)【発明者】
【氏名】柴田 竜雄
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/182085(WO,A1)
【文献】特開2015-138863(JP,A)
【文献】特開2016-181598(JP,A)
【文献】特開2005-150303(JP,A)
【文献】特開2009-295607(JP,A)
【文献】国際公開第2007/119748(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138535(WO,A1)
【文献】特開2020-021857(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122990(WO,A1)
【文献】特表2009-536420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/82
H10B 61/00
H10N 50/10
H01F 10/14
H01F 10/16
G11B 5/39
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、内部に磁壁を有することができる磁壁移動層と、
前記磁壁移動層に埋め込まれた部分を有し、材料又は積層構造が前記磁壁移動層と異なる磁性体と、
前記磁性体と前記磁壁移動層との間に、層間領域と、を有し、
前記層間領域は、前記磁壁移動層を構成する元素と異種元素とが混在して
おり、
前記異種元素は、Fe、Co、Ni、Cu、Ta、Ru、Pd、Pt、Wからなる群から選択されるいずれか一つ以上の重金属元素、又は、希ガス元素であり、
前記層間領域は、前記磁性体と前記磁壁移動層との間に凹凸を形成している、配線層。
【請求項2】
前記磁壁移動層は、前記第1方向において前記磁性体の端部のうち前記磁壁移動層の中心側の端部より外側にある第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、
前記磁性体は、前記第1領域と接する、請求項1に記載の配線層。
【請求項3】
前記磁性体を2つ有し、
2つの前記磁性体は、前記第1方向に離間している、請求項1又は2に記載の配線層。
【請求項4】
前記磁性体は、前記層間領域との界面において、前記第1方向と直交する面に対して傾斜する傾斜面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項5】
前記磁性体は、前記層間領域との界面において、湾曲する湾曲面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項6】
前記磁性体の前記第1方向と直交する第2方向の幅は、前記磁壁移動層の前記第2方向の幅より広い、請求項1~5のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項7】
前記磁性体は、前記第1方向において、前記磁壁移動層の第1端と重なる位置にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項8】
前記磁性体は、前記磁壁移動層を厚さ方向に貫通する、請求項1~7のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項9】
前記磁性体は、前記磁壁移動層を厚さ方向に貫通し、前記磁壁移動層の第1面及び前記第1面と対向する第2面から突出する、請求項1~8のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項10】
前記磁性体のうち前記磁壁移動層から露出する部分に接続された第2磁性体をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項11】
前記第2磁性体は、前記第1方向と直交する面に対して傾斜する傾斜面を有する、請求項10に記載の配線層。
【請求項12】
前記第2磁性体は、前記磁壁移動層にも接する、請求項10又は11に記載の配線層。
【請求項13】
前記磁性体と前記第2磁性体とが一体化している、請求項10~12のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項14】
前記磁性体と前記第2磁性体との間にスペーサ層をさらに備える、請求項10~13のいずれか一項に記載の配線層。
【請求項15】
前記磁性体の膜厚と飽和磁化との積は、前記第2磁性体の膜厚と飽和磁化との積と、異なる、請求項14に記載の配線層。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の配線層と、
前記配線層に接続された導電体と、を備え、
前記導電体は、前記磁性体に接続されている、磁壁移動素子。
【請求項17】
請求項11~15のいずれか一項に記載の配線層と、
前記配線層に接続された導電体と、を備え、
前記導電体は、前記第2磁性体に接続されている、磁壁移動素子。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の配線層と、
前記配線層に接続された導電体と、を備え、
前記導電体は、前記磁壁移動層と接続され、
前記磁壁移動層の前記導電体が接続された面は、前記磁壁移動層の前記磁性体側の面と異なる、磁壁移動素子。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載の配線層と、
厚み方向において前記磁壁移動層と重なる位置にある強磁性層と、
前記配線層と前記強磁性層との間にある非磁性層と、を備える磁壁移動素子。
【請求項20】
前記配線層に接続された導電体をさらに備え、
前記磁性体は、厚み方向から見て、前記第1方向に前記導電体と前記非磁性層との間にある、請求項19に記載の磁壁移動素子。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか一項に記載の磁壁移動素子を複数有する磁気アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線層、磁壁移動素子および磁気アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
微細化に限界が見えてきたフラッシュメモリ等に代わる次世代の不揮発性メモリに注目が集まっている。例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistive Randome Access Memory)、PCRAM(Phase Change Random Access Memory)等が次世代の不揮発性メモリとして知られている。
【0003】
MRAMは、磁化の向きの変化によって生じる抵抗値変化をデータ記録に利用している。データ記録は、MRAMを構成する磁気抵抗変化素子のそれぞれが担っている。例えば、特許文献1には、第1強磁性層(磁壁移動層)内における磁壁を移動させることで、多値のデータを記録することができる磁気抵抗変化素子(磁壁移動素子)が記載されている。特許文献1には、磁壁の移動範囲を制御し、第1強磁性層の単磁区化を防ぐために、第1強磁性層の両端に磁化固定領域を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁壁が移動する磁壁移動層は、磁壁がいずれかの端部に至り、磁壁が消滅することを防ぐために、両端に磁化固定領域を有する場合が多い。磁壁が磁化固定領域に侵入すると、磁壁が消滅してしまう場合がある。磁壁移動素子は、磁壁の位置でデータを記録するため、磁壁が消滅するとデータを記録できなくなる。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、単磁区化をより防止できる配線層、磁壁移動素子及び磁気アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の態様にかかる配線層は、第1方向に延び、内部に磁壁を有することができる磁壁移動層と、前記磁壁移動層に埋め込まれた部分を有し、材料又は積層構造が前記磁壁移動層と異なる磁性体と、を有する。
【0008】
(2)上記態様にかかる配線層において、前記磁壁移動層は、前記第1方向において前記磁性体の端部のうち前記磁壁移動層の中心側の端部より外側の第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記磁性体は、前記第1領域と接してもよい。
【0009】
(3)上記態様にかかる配線層は、前記磁性体を2つ有し、2つの前記磁性体は、前記第1方向に離間していてもよい。
【0010】
(4)上記態様にかかる配線層は、前記磁性体と前記磁壁移動層との間に、層間領域をさらに備えてもよい。
【0011】
(5)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体は、前記磁壁移動層との界面において、前記第1方向と直交する面に対して傾斜する傾斜面を有してもよい。
【0012】
(6)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体は、前記磁壁移動層との界面において、湾曲する湾曲面を有してもよい。
【0013】
(7)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体が厚さ方向の第1面に露出していてもよい。
【0014】
(8)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体の前記第1方向と直交する第2方向の幅は、前記磁壁移動層の前記第2方向の幅より広くてもよい。
【0015】
(9)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体は、前記第1方向において、前記磁壁移動層の第1端と重なる位置にあってもよい。
【0016】
(10)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体は、前記磁壁移動層を厚さ方向に貫通してもよい。
【0017】
(11)上記態様にかかる配線層は、前記磁性体のうち前記磁壁移動層から露出する部分に接続された第2磁性体をさらに備えてもよい。
【0018】
(12)上記態様にかかる配線層において、前記第2磁性体は、前記第1方向と直交する面に対して傾斜する傾斜面を有してもよい。
【0019】
(13)上記態様にかかる配線層において、前記第2磁性体は、前記磁壁移動層にも接してもよい。
【0020】
(14)上記態様にかかる配線層において、前記磁性体と前記第2磁性体とが一体化していてもよい。
【0021】
(15)上記態様にかかる配線層は、前記磁性体と前記第2磁性体との間にスペーサ層をさらに備えてもよい。
【0022】
(16)第2の態様にかかる磁壁移動素子は、上記態様にかかる配線層と、前記配線層に接続された導電体と、を備え、前記導電体は、前記磁性体に接続されている。
【0023】
(17)第3の態様にかかる磁壁移動素子は、上記態様にかかる配線層と、前記配線層に接続された導電体と、を備え、前記導電体は、前記第2磁性体に接続されている。
【0024】
(18)第4の態様にかかる磁壁移動素子は、厚み方向において前記磁壁移動層と重なる位置にある強磁性層と、前記配線層と前記強磁性層との間にある非磁性層と、を備えてもよい。
【0025】
(19)上記態様にかかる磁壁移動素子は、前記配線層に接続された導電体と、を備え、前記磁性体は、厚み方向から見て、前記第1方向に前記導電体と前記非磁性層との間にあってもよい。
【0026】
(20)第5の態様にかかる磁気アレイは、上記態様にかかる磁壁移動素子を複数有する。
【発明の効果】
【0027】
上記態様にかかる配線層、磁壁移動素子及び磁気アレイは、配線層が単磁区化しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る磁気アレイの構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る磁気アレイの特徴部分の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る磁壁移動素子の平面図である。
【
図5】第1変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図6】第2変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図7】第3変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図8】第4変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図9】第5変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図10】第6変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図11】第7変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図12】第8変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図13】第9変形例に係る磁壁移動素子の平面図である。
【
図14】第10変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【
図15】第11変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0030】
まず方向について定義する。x方向及びy方向は、後述する基板Sub(
図2参照)の一面と略平行な方向である。x方向は、後述する配線層10が延びる方向である。x方向は、第1方向の一例である。y方向は、x方向と直交する方向である。y方向は、第2方向の一例である。z方向は、後述する基板Subから磁壁移動素子100へ向かう方向である。z方向は、例えば、配線層10の積層方向と一致する。z方向は、厚み方向の一例である。また本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。
【0031】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる磁気アレイの構成図である。磁気アレイ200は、複数の磁壁移動素子100と、複数の第1配線Wpと、複数の第2配線Cmと、複数の第3配線Rpと、複数の第1スイッチング素子SW1と、複数の第2スイッチング素子SW2と、複数の第3スイッチング素子SW3と、を備える。磁気アレイ200は、例えば、磁気メモリ、積和演算器、ニューロモーフィックデバイス、磁気光学素子に利用できる。
【0032】
<第1配線、第2配線、第3配線>
第1配線Wpのそれぞれは、書き込み配線である。第1配線Wpはそれぞれ、電源と1つ以上の磁壁移動素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気アレイ200の一端に接続される。
【0033】
第2配線Cmのそれぞれは、共通配線である。共通配線は、データの書き込み時及び読み出し時の両方に用いることができる配線である。第2配線Cmのそれぞれは、基準電位と1つ以上の磁壁移動素子100とを電気的に接続する。基準電位は、例えば、グラウンドである。第2配線Cmは、複数の磁壁移動素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の磁壁移動素子100に亘って設けられてもよい。
【0034】
第3配線Rpのそれぞれは、読み出し配線である。第3配線Rpはそれぞれ、電源と1つ以上の磁壁移動素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気アレイ200の一端に接続される。
【0035】
<第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子>
図1において、複数の磁壁移動素子100のそれぞれに、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、第3スイッチング素子SW3が接続されている。第1スイッチング素子SW1は、磁壁移動素子100と第1配線Wpとの間に接続されている。第2スイッチング素子SW2は、磁壁移動素子100と第2配線Cmとの間に接続されている。第3スイッチング素子SW3は、磁壁移動素子100と第3配線Rpとの間に接続されている。
【0036】
第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をONにすると、所定の磁壁移動素子100に接続された第1配線Wpと第2配線Cmとの間に書き込み電流が流れる。第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3をONにすると、所定の磁壁移動素子100に接続された第2配線Cmと第3配線Rpとの間に読み出し電流が流れる。
【0037】
第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3は、電流の流れを制御する素子である。第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3は、例えば、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子である。
【0038】
第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、第3スイッチング素子SW3のいずれかは、同じ配線に接続された磁壁移動素子100で、共用してもよい。例えば、第1スイッチング素子SW1を共有する場合は、第1配線Wpの上流に一つの第1スイッチング素子SW1を設ける。例えば、第2スイッチング素子SW2を共有する場合は、第2配線Cmの上流に一つの第2スイッチング素子SW2を設ける。例えば、第3スイッチング素子SW3を共有する場合は、第3配線Rpの上流に一つの第3スイッチング素子SW3を設ける。
【0039】
図2は、第1実施形態に係る磁気アレイ200の要部の断面図である。
図2は、
図1における一つの磁壁移動素子100を配線層10のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。
【0040】
図2に示す第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、トランジスタTrである。トランジスタTrは、ゲート電極Gと、ゲート絶縁膜GIと、基板Subに形成されたソース領域S及びドレイン領域Dと、を有する。基板Subは、例えば、半導体基板である。第3スイッチング素子SW3は、第3配線Rpと電気的に接続され、例えば、
図2においてy方向にずれた位置にある。
【0041】
トランジスタTrのそれぞれと磁壁移動素子100とは、配線w1、w2を介して、電気的に接続されている。配線w1、w2は、導電性を有する材料を含む。配線w1は、z方向に延びるビア配線である。配線w2は、xy面内のいずれかの方向に延びる面内配線である。配線w1、w2は、絶縁層90の開口内に形成される。
【0042】
絶縁層90は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。磁壁移動素子100とトランジスタTrとは、配線w1、w2を除いて、絶縁層90によって電気的に分離されている。絶縁層90は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)等である。
【0043】
「磁壁移動素子」
図3は、磁壁移動素子100を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図4は、磁壁移動素子100をz方向から平面視した平面図である。
【0044】
磁壁移動素子100は、配線層10と非磁性層30と強磁性層20とを有する。磁壁移動素子100は、絶縁層90に覆われている。磁壁移動素子100にデータを書き込む際は、配線層10に沿って書き込み電流を流す。磁壁移動素子100からデータを読み出す際は、磁壁移動素子100のz方向に電流を印加し、電極Eと配線層10に接続されたいずれかの配線w1との間に読み出し電流を流す。
【0045】
配線層10は、磁壁移動層11と磁性体12と磁性体13とを有する。磁性体13は、第2磁性体の一例である。配線層10は、データの書き込み時に、書き込み電流が流れる配線である。
【0046】
磁壁移動層11は、x方向に延びる。磁壁移動層11は、内部に複数の磁区を有し、複数の磁区の境界に磁壁DWを有する。磁壁移動層11は、例えば、磁気的な状態の変化により情報を磁気記録可能な層である。磁壁移動層11は、強磁性層、磁気記録層と呼ばれる場合がある。
【0047】
磁壁移動層11は、第1領域A1と第2領域A2とを有する。第1領域A1は、磁壁移動層11のx方向において、磁性体12の端部のうち磁壁移動層11のx方向の中心側の端部より外側の領域である。第1領域A1は例えば2つあり、2つの第1領域A1は、第2領域A2をx方向に挟む。第1領域A1は、例えば、z方向から見て、磁性体12と重なる領域である。第2領域A2は、磁壁移動層11の第1領域A1以外の領域である。
【0048】
第1領域A1は、磁化の向きが一方向に固定された領域である。「磁化の向きが一方向に固定された」とは、第2領域A2の磁化が反転する程度の外力が印加された際に、磁化の向きが変化しないことをいう。第2領域A2を挟む2つの第1領域A1の磁化の配向方向は、反対である。
【0049】
第2領域A2は、磁化の向きが変化し、磁壁DWが移動できる領域である。第2領域A2は、第1磁区A21と第2磁区A22とを有する。第1磁区A21の磁化MA21と第2磁区A22の磁化MA22とは、配向方向が反対である。第1磁区A21は、隣接する第1領域A1と磁化の配向方向が同じであり、第2磁区A22は、隣接する第1領域A1と磁化の配向方向が同じである。
【0050】
第1磁区A21と第2磁区A22との境界が磁壁DWである。磁壁DWは、原則、第2領域A2内を移動し、第1領域A1内に侵入しない。
【0051】
第2領域A2内における第1磁区A21と第2磁区A22との比率が変化すると、磁壁DWが移動する。磁壁DWは、第2領域A2のx方向に書き込み電流を流すことによって移動する。例えば、第2領域A2に+x方向の書き込み電流(例えば、電流パルス)を印加すると、電子は電流と逆の-x方向に流れるため、磁壁DWは-x方向に移動する。第1磁区A21から第2磁区A22に向って電流が流れる場合、第2磁区A22でスピン偏極した電子は、第1磁区A21の磁化MA21を磁化反転させる。第1磁区A21の磁化MA21が磁化反転することで、磁壁DWは-x方向に移動する。
【0052】
磁壁移動層11は、磁性体により構成される。磁壁移動層11は、Co、Ni、Fe、Pt、Pd、Gd、Tb、Mn、Ge、Gaからなる群から選択される少なくとも一つの元素を有することが好ましい。磁壁移動層11に用いられる材料として、例えば、CoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜、MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料が挙げられる。MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料等のフェリ磁性体は飽和磁化が小さく、磁壁DWを移動するために必要な閾値電流が小さくなる。またCoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜は、保磁力が大きく、磁壁DWの移動速度が遅くなる。
【0053】
磁性体12は、その一部が磁壁移動層11に埋め込まれている。磁性体12は、磁壁移動層11に形成された開口に嵌合している。磁性体12は、その一部が第1領域A1に埋め込まれている。磁性体12の一部は、例えば、磁壁移動層11から露出していてもよい。例えば、磁性体12は2つあり、互いに離間している。例えば、2つの磁性体12は、z方向から見て、非磁性層30をx方向に挟む。
【0054】
磁性体12は、例えば、底面及び側面で磁壁移動層11と接している。
図3に示す磁性体12は、配線層10の第1面10aに露出している。配線層10の第2面10bは、平坦である。第1面10aは、配線層10の非磁性層30と接する側の面であり、第2面10bは第1面10aと反対の面である。磁性体12は、磁壁移動層11に内包されていてもよく、第2面10bに露出していてもよい。
【0055】
磁性体12は、磁壁移動層11と同様の材料を用いることができる。ただし、磁性体12は、材料又は積層構造が磁壁移動層11と異なる。積層構造が異なるとは、積層される層の組成、材質、層数等の層構成が異なることを意味する。磁性体12は、単一の磁性体でも、複数の層の積層体でもよい。磁性体12が単一の磁性体の場合は製造が容易であり、磁性体12が複数の層からなる場合は保磁力等を細かく調整できる。
【0056】
磁性体12は、磁壁移動層11との界面において、x方向と直交するyz面に対して傾斜する傾斜面12cを有する。傾斜面12cは、例えば、磁性体12の非磁性層30側の側面である。磁性体12の側面が傾斜すると、磁性体12と磁壁移動層11との接触面積が増え、磁性体12と磁壁移動層11との磁気結合が強まる。また磁性体12と磁壁移動層11との界面がx方向に幅を有することで、磁壁DWの第1領域A1への侵入をより防止できる。
【0057】
図4に示すように、磁性体12をz方向から見た形状は、例えば、矩形である。磁性体12をz方向から見た形状は、この場合に限られない。例えば、磁性体12をz方向から見た形状は、矩形、円形、楕円形、オーバル等でもよい。
【0058】
また
図4に示すように、例えば、磁性体12のy方向の幅L12は、磁壁移動層11の幅L11より長い。磁性体12と磁壁移動層11の境界が磁壁移動層11のy方向に延びることで、磁壁移動層11内のy方向の磁気特性分布が均一になる。磁壁移動層11内のy方向の磁気特性分布が均一になると、磁壁DWがy方向に対して傾くことを抑制できる。
【0059】
磁性体13は、磁性体12のうち磁壁移動層11内に埋め込まれておらず、磁壁移動層11から露出する部分に接続されている。磁性体13は、例えば、磁壁移動層11のz方向の上面から突出する。磁性体13は、磁性体12と接する。磁性体13の磁化M13の向きは、例えば、隣接する磁性体12の磁化M12の向きと同じである。磁性体12上に磁性体13を積み増すことで、第1領域A1の磁化がより反転しにくくなり、磁壁DWの第1領域A1への侵入をより防ぐことができる。
【0060】
磁性体13は、磁性体12と同様の材料を用いることができる。磁性体13と磁性体12とは、同じ材料からなり、一体化されていてもよい。磁性体13は導電体であり、配線w1と配線層10とを接続する電極を兼ねる。また強磁性層20で生じた熱が磁性体13を介して排熱され、磁壁移動素子100の放熱性が高まる。
【0061】
磁性体13は、例えば、yz面に対して傾斜する傾斜面13cを有する。傾斜面13cは、例えば、磁性体13の非磁性層30側の側面である。磁性体13の側面が傾斜すると、傾斜面13cからの漏れ磁場が第1領域A1に印加され、第1領域A1への磁壁DWの侵入をより防ぐことができる。
【0062】
また
図4に示すように、磁性体13をz方向から見た形状は、磁性体12と略同一である。また例えば、磁性体13のy方向の幅は、磁性体12のy方向の幅と略同一である。磁性体13のy方向の幅は、磁性体12のy方向の幅より広くてもよい。
【0063】
磁性体13には、導電体である配線w1が接続されている。磁性体13は、配線w1等を介してトランジスタTrに接続されている。
【0064】
非磁性層30は、磁壁移動層11と強磁性層20との間に位置する。非磁性層30は、磁壁移動層11の一面に積層される。
【0065】
非磁性層30は、例えば、非磁性の絶縁体、半導体又は金属からなる。非磁性の絶縁体は、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、MgAl2O4、およびこれらのAl、Si、Mgの一部がZn、Be等に置換された材料である。これらの材料は、バンドギャップが大きく、絶縁性に優れる。非磁性層30が非磁性の絶縁体からなる場合、非磁性層30はトンネルバリア層である。非磁性の金属は、例えば、Cu、Au、Ag等である。非磁性の半導体は、例えば、Si、Ge、CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In,Ga)Se2等である。
【0066】
非磁性層30の厚みは、例えば、20Å以上であり、25Å以上でもよい。非磁性層30の厚みが厚いと、磁壁移動素子100の抵抗面積積(RA)が大きくなる。磁壁移動素子100の抵抗面積積(RA)は、1×104Ωμm2以上であることが好ましく、5×104Ωμm2以上であることがより好ましい。磁壁移動素子100の抵抗面積積(RA)は、一つの磁壁移動素子100の素子抵抗と磁壁移動素子100の素子断面積(非磁性層30をxy平面で切断した切断面の面積)の積で表される。
【0067】
強磁性層20は、非磁性層30に積層されている。強磁性層20は、磁壁移動層11の第2領域A2とz方向に重なる位置にある。強磁性層20の磁化M20は、磁壁移動層11の第2領域A2の磁化MA21,MA22より反転しにくい。強磁性層20の磁化M20は、第2領域A2の磁化が反転する程度の外力が印加された際に向きが変化せず、固定されている。強磁性層20は、磁化固定層、磁化参照層と言われる場合がある。
【0068】
強磁性層20は、強磁性体を含む。強磁性層20は、例えば、磁壁移動層11との間で、コヒーレントトンネル効果を得やすい材料を含む。強磁性層20は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を含む。強磁性層20は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feである。
【0069】
強磁性層20は、例えば、ホイスラー合金でもよい。ホイスラー合金はハーフメタルであり、高いスピン分極率を有する。ホイスラー合金は、XYZ又はX2YZの化学組成をもつ金属間化合物であり、Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金として例えば、Co2FeSi、Co2FeGe、Co2FeGa、Co2MnSi、Co2Mn1-aFeaAlbSi1-b、Co2FeGe1-cGac等が挙げられる。
【0070】
磁壁移動素子100の各層の磁化の向きは、例えば磁化曲線を測定することにより確認できる。磁化曲線は、例えば、MOKE(Magneto Optical Kerr Effect)を用いて測定できる。MOKEによる測定は、直線偏光を測定対象物に入射させ、その偏光方向の回転等が起こる磁気光学効果(磁気Kerr効果)を用いることにより行う測定方法である。
【0071】
次いで、磁気アレイ200の製造方法について説明する。磁気アレイ200は、各層の積層工程と、各層の一部を所定の形状に加工する加工工程により形成される。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。
【0072】
まず基板Subの所定の位置に、不純物をドープしソース領域S、ドレイン領域Dを形成する。次いで、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極Gを形成する。ソース領域S、ドレイン領域D、ゲート絶縁膜GI及びゲート電極GがトランジスタTrとなる。
【0073】
次いで、トランジスタTrを覆うように絶縁層90を形成する。また絶縁層90に開口部を形成し、開口部内に導電体を充填することで配線w1が形成される。第1配線Wp、第2配線Cm、第3配線Rp、配線w2は、絶縁層90を所定の厚みまで積層した後、絶縁層90に溝を形成し、溝に導電体を充填することで形成される。
【0074】
磁壁移動層11は絶縁層90上に積層される。非磁性層30及び強磁性層20は、磁壁移動層11上に積層される。非磁性層30及び強磁性層20は所定の形状に加工される。磁壁移動層11の所定の位置に開口を設け、開口内を磁性体12で埋める。磁性体12上に磁性体13を積み増してもよい。磁壁移動層11、磁性体12、13で配線層10となる。上記の手順で、磁壁移動素子100が得られる。
【0075】
第1実施形態に係る磁壁移動素子100は、磁性体12が磁壁移動層11に埋め込まれていることで、第1領域A1の磁化が強く固定される。その結果、意図せぬ外力等が生じた場合でも、磁壁DWが第1領域A1に侵入せず、磁壁移動層11の単磁区化を防ぐことができる。
【0076】
第1実施形態に係る磁気アレイ200及び磁壁移動素子100の一例について詳述したが、第1実施形態に係る磁気アレイ200及び磁壁移動素子100は、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0077】
(第1変形例)
図5は、第1変形例にかかる磁壁移動素子101を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図5において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0078】
磁壁移動素子101は、磁性体12と磁性体13との間にスペーサ層14を有する。スペーサ層14は、非磁性層である。スペーサ層14は、例えば、Ru、Ir、Rhである。磁性体12、スペーサ層14及び磁性体13は、絶縁層90及び磁壁移動層11に形成した開口に沿って積層される。開口は、例えば、磁壁移動層11、非磁性層30、強磁性層20を順に積層し、その周囲を絶縁層90で埋めた後に、所定の位置に形成する。
【0079】
磁性体12と磁性体13とは、例えば、反強磁性結合している。磁性体12の磁化M12と磁性体13の磁化M13とは、磁化の配向方向が反対である。磁性体13は、例えば、磁性体12と同様の材料、反強磁性膜等を用いることができる。磁性体12と磁性体13とは強磁性結合していてもよい。磁性体12の磁化M12は、磁性体13の磁化M13と結合することで強く固定される。
【0080】
磁性体12の膜厚と飽和磁化との積は、磁性体13の膜厚と飽和磁化との積と略同一である。例えば、磁性体12と磁性体13とは、スペーサ層14を挟んで、シンセティック反強磁性構造をしている。磁性体12の膜厚と飽和磁化との積は、磁性体13の膜厚と飽和磁化との積と異なっていてもよい。膜厚と飽和磁化との積が、磁性体12と磁性体13とで異なると、製造時において磁化の初期状態を決定しやすくなる。外部磁場を印加した後に外部磁場の印加をやめると、膜厚と飽和磁化との積が大きい方の磁性体の磁化が外部磁場の印加方向に配向し、膜厚と飽和磁化との積が小さい方の磁性体の磁化が外部磁場の印加方向と反対方向に配向する。また磁壁移動層11の第1端部に接続する磁性体12の膜厚と飽和磁化との積を磁性体13の膜厚と飽和磁化との積より大きくし、磁壁移動層11の第2端部に接続する磁性体12の膜厚と飽和磁化との積を磁性体13の膜厚と飽和磁化との積より小さくしてもよい。当該構成であれば、外部磁場は一方向に印加するだけで、磁化の初期状態を簡単に決定できる。
【0081】
第1変形例に係る磁壁移動素子101は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。また磁性体12と磁性体13とが反強磁性結合すると、磁性体12及び磁性体13からの漏れ磁場の影響を小さくできる。
【0082】
(第2変形例)
図6は、第2変形例にかかる磁壁移動素子102を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図6において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0083】
磁壁移動素子102の磁性体12は、磁壁移動層11との界面において、湾曲する湾曲面12dを有する。磁性体12と磁壁移動層11との界面が湾曲すると、書き込み電流の局所的な集中を避けることができる。電流は、角等の形状が急激に変化する部分に集中しやすいためである。
【0084】
第2変形例に係る磁壁移動素子102は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。また書き込み電流の局所的な集中を抑制することで、磁性体12と磁壁移動層11との界面における電流密度の偏り、発熱を抑制できる。
【0085】
(第3変形例)
図7は、第3変形例にかかる磁壁移動素子103を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図7において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0086】
磁壁移動素子103は、磁性体12と磁壁移動層11との間に、層間領域15を有する。層間領域15は、例えば、磁壁移動層11を構成する元素と異種元素とが混在している。異種元素は、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、Ta、Ru、Pd、Pt、W等の重金属元素や、Ar、Kr、Xe等の希ガス元素である。
【0087】
異種元素は、磁壁DWのトラップサイトとなり、磁壁DWの移動を阻害する。また異種元素が打ち込まれることで、磁壁移動層11と磁性体12との界面に凹凸が生じ、磁壁移動層11と磁性体12の接触面積が増える。磁壁移動層11と磁性体12との接触面積が増えると、磁壁移動層11と磁性体12との磁気結合が強まり、第1領域A1の磁化が強く固定される。
【0088】
この他、第3変形例に係る磁壁移動素子103は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
【0089】
(第4変形例)
図8は、第4変形例にかかる磁壁移動素子104を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図8において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0090】
磁壁移動素子104は、磁性体12がz方向において磁壁移動層11の第1端と重なる位置にある。磁性体12の一部は、磁壁移動層11からx方向に突出している。
【0091】
磁性体12が磁壁移動層11の端部にあると、第2領域A2を広く確保できる。磁壁DWは、第2領域A2内を移動し、磁壁移動素子104は磁壁DWの位置によってデータを記憶する。磁壁DWの移動範囲が広がることで、磁壁移動素子104のデータの階調を増やすことができる。
【0092】
この他、第4変形例に係る磁壁移動素子104は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
【0093】
(第5変形例)
図9は、第5変形例にかかる磁壁移動素子105を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図9において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0094】
磁壁移動素子105は、磁性体12が磁壁移動層11をz方向に貫通している。磁性体12の一部は、磁壁移動層11の下面から突出している。
【0095】
第5変形例に係る磁壁移動素子105は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。また磁性体12が磁壁移動層11を貫通することで、磁性体12が磁壁移動層11をx方向に分断することで、磁壁DWが磁壁移動層11の端部まで至ることをより防止できる。
【0096】
(第6変形例)
図10は、第6変形例にかかる磁壁移動素子106を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図10において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0097】
磁壁移動素子106は、磁性体13が磁性体12及び磁壁移動層11と接している。磁性体13の下面のx方向の幅は、例えば、磁性体12の上面のx方向の幅より広い。
【0098】
第6変形例に係る磁壁移動素子106は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。また第1領域A1の磁化が磁性体12及び磁性体13によって固定されることで、第1領域A1の磁化がより反転しにくくなる。
【0099】
(第7変形例)
図11は、第7変形例にかかる磁壁移動素子107を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図11において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0100】
磁壁移動素子107は、磁性体13を有さない。磁壁移動素子107の磁性体12には、導電体である配線w1が直接接続されている。
【0101】
第7変形例に係る磁壁移動素子107は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
【0102】
(第8変形例)
図12は、第8変形例にかかる磁壁移動素子108を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図12において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0103】
磁壁移動素子108は、z方向から見て、配線w1と磁性体12とが重ならない位置にある。磁性体12は、x方向に、配線w1と非磁性層30との間にある。配線w1は、磁壁移動層11と磁性体12以外の位置で接続される。
【0104】
第8変形例に係る磁壁移動素子108は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。書き込み電流が配線w1に流れる点より手前に磁性体12が存在することで、磁壁DWが磁壁移動層11の端部まで至ることをより防止できる。また第1領域A1の面積が大きくなることで、第2領域A2に至る電子のスピン偏極が強まる。
【0105】
(第9変形例)
図13は、第9変形例にかかる磁壁移動素子109をz方向から見た平面図である。
図13において、
図4と同様の構成についての説明は省く。
【0106】
磁性体12のy方向の幅L12は、磁壁移動層11の幅L11より短い。磁性体12は、磁壁移動層11と底面及び側面で接する。磁性体12のy方向の側面も磁壁移動層11と接することで、磁壁移動層11と磁性体12との接触面積が増える。
【0107】
第9変形例に係る磁壁移動素子109は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
【0108】
(第10変形例)
図14は、第10変形例にかかる磁壁移動素子110を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。
図14において、
図3と同様の構成についての説明は省く。
【0109】
磁壁移動素子110は、非磁性層30、強磁性層20を有さない。磁壁移動素子110は、磁気光学効果を利用して光学素子である。磁壁移動層11における磁壁DWの位置によって、磁壁移動層11に入射した光の反射光又は透過光の位相が変化する。
【0110】
第10変形例に係る磁壁移動素子110は、第1実施形態にかかる磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
【0111】
この他、磁性体12の側面は傾斜又は湾曲していなくてもよい。また磁性体12は、磁壁移動層11の表面に露出せず、磁壁移動層11に内包されていてもよい。また
図15に示す磁壁移動素子111のように、磁壁移動層11に対して配線w1が接続された面と、磁性体12が露出する面とが一致しなくてもよい。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述した。実施形態及び変形例における特徴的な構成は、それぞれ組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0113】
10 配線層
10a 第1面
10b 第2面
11 磁壁移動層
12、13 磁性体
12c、13c 傾斜面
12d 湾局面
14 スペーサ層
15 層間領域
20 強磁性層
30 非磁性層
90 絶縁層
100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110 磁壁移動素子
200 磁気アレイ
A1 第1領域
A2 第2領域
A21 第1磁区
A22 第2磁区
DW 磁壁