(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】点火信号伝送媒体の収容パイプ及びそれを用いた発破準備方法
(51)【国際特許分類】
F42D 1/08 20060101AFI20240411BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F42D1/08
E21D9/00 C
(21)【出願番号】P 2020141141
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】308010365
【氏名又は名称】カヤク・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】由良 隆博
(72)【発明者】
【氏名】山越 眞澄
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111397459(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0149854(US,A1)
【文献】特開2003-130600(JP,A)
【文献】特開2008-111628(JP,A)
【文献】実公昭45-023359(JP,Y2)
【文献】特開2018-021744(JP,A)
【文献】特開2011-174697(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110986713(CN,A)
【文献】特開平11-173800(JP,A)
【文献】実開平04-138600(JP,U)
【文献】特開2017-125674(JP,A)
【文献】中国実用新案第203785563(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 1/08
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚線、導火管等の点火信号伝送媒体を材軸方向に沿って収容できるように構成されるとともに
トンネルの切羽に形成された発破孔に先端から挿入されるようになっているパイプ状本体を備え、
該パイプ状本体は、前記発破孔に挿入されたときに基端側が切羽面から離隔するのに伴って、該基端側から前記点火信号伝送媒体が切羽面から離隔した状態で垂れ下がるようになっているとともに、前記パイプ状本体の材軸方向に沿ってかつ全長にわたって延びる取り外し用開口を介して前記点火信号伝送媒体を前記パイプ状本体から取り外すことができるようになっていることを特徴とする点火信号伝送媒体の収容パイプ。
【請求項2】
前記パイプ状本体のうち、前記発破孔に挿入される予定の部分と切羽から露出する予定の部分との
境界となる位置であってその外周面に前記発破孔の切羽面開口に係止される係止部を突設した請求項1記載の点火信号伝送媒体の収容パイプ。
【請求項3】
前記パイプ状本体のうち、前記発破孔に挿入される予定の部分と切羽から露出する予定の部分との
境界となる位置であってその外周面に該境界を識別可能なマーキングを設けた請求項1記載の点火信号伝送媒体の収容パイプ。
【請求項4】
前記パイプ状本体を横断面がC字状となるように形成してその材軸方向に沿った開口を前記取り外し用開口とした請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の点火信号伝送媒体の収容パイプ。
【請求項5】
前記パイプ状本体を、前記取り外し用開口の開口幅が変化する形で径方向の収縮拡張が可能となるよう弾性材料で形成するとともに、その外径が前記発破孔の内径よりも大きくなるように形成することにより、前記発破孔に挿入された状態では該パイプ状本体の外周面が前記発破孔の内周面に当接されるように構成した請求項4記載の点火信号伝送媒体の収容パイプ。
【請求項6】
前記パイプ状本体のうち、基端側を半筒状に形成して収容開口とするとともに、該収容開口を前記取り外し用開口の一部とした請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の点火信号伝送媒体の収容パイプ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の点火信号伝送媒体の収容パイプを構成する前記パイプ状本体をその基端側が前記切羽から離隔した場所に位置決めされるように前記発破孔に挿入し、
前記パイプ状本体の挿入工程と相前後して前記点火信号伝送媒体が接続された雷管を埋設してなる親ダイを該点火信号伝送媒体が前記パイプ状本体内に収容される形となるように
なおかつ切羽面から離隔した状態で前記パイプ状本体の基端側から垂れ下がるように前記発破孔の孔尻近傍に装填し、
前記親ダイの装填工程と同時に又は該装填工程の後、増ダイ、アンコ等の追加装填物を前記親ダイに続く形で前記発破孔に装填し、
前記点火信号伝送媒体を結線し、
結線完了後、前記パイプ状本体を前記発破孔から引き抜きつつ、前記点火信号伝送媒体を前記取り外し用開口を介して該パイプ状本体から取り外すこと
により、前記点火信号伝送媒体の収容パイプを前記切羽から撤去することを特徴とする発破準備方法。
【請求項8】
前記親ダイを、前記パイプ状本体内に収容してから、前記点火信号伝送媒体が前記パイプ状本体に収容された状態を維持しつつ、該パイプ状本体の内周面を摺動面として該摺動面上を滑らせるようにして前記親ダイを前記発破孔へと押し出すことにより、該親ダイを前記発破孔の孔尻近傍に装填し、
前記追加装填物を前記パイプ状本体内に個別に又は一括して収容してから該パイプ状本体の内周面を摺動面として該摺動面上を滑らせるようにして前記追加装填物を個別に又は一括して前記発破孔へと押し出すことにより、該追加装填物を前記発破孔に装填する請求項7記載の発破準備方法。
【請求項9】
装填機に備えられた装填パイプの先端に前記親ダイを取り付け、前記点火信号伝送媒体が前記パイプ状本体内に収容された状態を維持しつつ前記装填パイプを前記発破孔に挿入することにより、該親ダイを前記発破孔の孔尻近傍に装填し、
前記追加装填物を前記装填機によって個別に又は一括して前記発破孔へと圧送することにより、該追加装填物を前記発破孔に装填する請求項7記載の発破準備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてトンネル発破を行う際、発破孔から引き出された脚線や導火管を配置する際に適用される点火信号伝送媒体の収容パイプ及びそれを用いた発破準備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル発破を行うにあたっては、まず切羽に発破孔を穿孔し、次いで、発破孔に、親ダイ、増ダイ及びアンコと呼ばれる込物を順次装填するとともに、電気点火の場合には、親ダイに埋め込まれた雷管から延びる脚線を発破母線あるいは補助母線に連結し、導火管発破の場合であれば、導火管付き雷管から延びる導火管(チューブ)を導爆線に連結する、いわゆる結線作業を行い、しかる後、親ダイを起爆して岩盤を破砕する。
【0003】
発破が完了した後は、あらたな切羽から浮石や緩んでいる個所を適宜取り除き、次の発破に備える。
【0004】
ここで、あらたな発破孔を穿孔する際、その振動等によって切羽の緩みが進行し、肌落ちが発生する場合があるが、かかる事態は、発破準備を行う作業員に不測の被害が及ぶ懸念があるため、切羽から離れて発破準備作業を行う遠隔化や、作業員の手によらずに作業を進める機械化が開発されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-266670号公報
【文献】特開2006-308177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、岩盤が柔らかく、あるいは岩盤に節理が多いと、発破孔の内周面が荒れて装填機の装填パイプを奥まで挿入することができないことがあり、その場合には、装填パイプの先端に親ダイを取り付けて該親ダイを発破孔の孔尻近傍に配置したり、増ダイ、アンコ、粒状爆薬といった種々の装填物を装填パイプを介して圧送したりすることが困難になる。
【0007】
かかる場合には、込棒を用いた手作業によって装填作業を行うしかないが、その場合、切羽に近接した状況での作業を強いられるため、肌落ちの危険から作業員を守ることが困難になるという問題を生じていた。
【0008】
加えて、装填作業を遠隔で行うことができたとしても、結線作業においては、発破孔から切羽の露出面(以下、切羽面と呼ぶ)に沿って垂れ下がっている雷管からの脚線や導火管付き雷管からの導火管を発破母線や補助母線あるいは導爆線に連結する必要があるため、切羽に近接した状況での作業を余儀なくされ、いずれにしろ、肌落ちの危険に対する作業員の安全を十分に確保することが難しいという問題を生じていた。
【0009】
なお、従来においても切羽面にコンクリートを吹き付ける対策が講じられていたが、かかる対策では、肌落ちを十分に防止することが困難であり、さらなる肌落ち防止策の開発が急務となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、発破コストの増加を抑制しつつ、結線作業における作業員の安全を十分に確保することが可能な点火信号伝送媒体の収容パイプ及びそれを用いた発破準備方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプは請求項1に記載したように、脚線、導火管等の点火信号伝送媒体を材軸方向に沿って収容できるように構成されるとともにトンネルの切羽に形成された発破孔に先端から挿入されるようになっているパイプ状本体を備え、該パイプ状本体は、前記発破孔に挿入されたときに基端側が切羽面から離隔するのに伴って、該基端側から前記点火信号伝送媒体が切羽面から離隔した状態で垂れ下がるようになっているとともに、前記パイプ状本体の材軸方向に沿ってかつ全長にわたって延びる取り外し用開口を介して前記点火信号伝送媒体を前記パイプ状本体から取り外すことができるようになっているものである。
【0012】
また、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプは、前記パイプ状本体のうち、前記発破孔に挿入される予定の部分と切羽から露出する予定の部分との境界となる位置であってその外周面に前記発破孔の切羽面開口に係止される係止部を突設したものである。
【0013】
また、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプは、前記パイプ状本体のうち、前記発破孔に挿入される予定の部分と切羽から露出する予定の部分との境界となる位置であってその外周面に該境界を識別可能なマーキングを設けたものである。
【0014】
また、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプは、前記パイプ状本体を横断面がC字状となるように形成してその材軸方向に沿った開口を前記取り外し用開口としたものである。
【0015】
また、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプは、前記パイプ状本体を、前記取り外し用開口の開口幅が変化する形で径方向の収縮拡張が可能となるよう弾性材料で形成するとともに、その外径が前記発破孔の内径よりも大きくなるように形成することにより、前記発破孔に挿入された状態では該パイプ状本体の外周面が前記発破孔の内周面に当接されるように構成したものである。
【0016】
また、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプは、前記パイプ状本体のうち、基端側を半筒状に形成して収容開口とするとともに、該収容開口を前記取り外し用開口の一部としたものである。
【0017】
また、本発明に係る発破準備方法は請求項7に記載したように、請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の点火信号伝送媒体の収容パイプを構成する前記パイプ状本体をその基端側が前記切羽から離隔した場所に位置決めされるように前記発破孔に挿入し、
前記パイプ状本体の挿入工程と相前後して前記点火信号伝送媒体が接続された雷管を埋設してなる親ダイを該点火信号伝送媒体が前記パイプ状本体内に収容される形となるようになおかつ切羽面から離隔した状態で前記パイプ状本体の基端側から垂れ下がるように前記発破孔の孔尻近傍に装填し、
前記親ダイの装填工程と同時に又は該装填工程の後、増ダイ、アンコ等の追加装填物を前記親ダイに続く形で前記発破孔に装填し、
前記点火信号伝送媒体を結線し、
結線完了後、前記パイプ状本体を前記発破孔から引き抜きつつ、前記点火信号伝送媒体を前記取り外し用開口を介して該パイプ状本体から取り外すことにより、前記点火信号伝送媒体の収容パイプを前記切羽から撤去するものである。
【0018】
また、本発明に係る発破準備方法は、前記親ダイを、前記パイプ状本体内に収容してから、前記点火信号伝送媒体が前記パイプ状本体に収容された状態を維持しつつ、該パイプ状本体の内周面を摺動面として該摺動面上を滑らせるようにして前記親ダイを前記発破孔へと押し出すことにより、該親ダイを前記発破孔の孔尻近傍に装填し、
前記追加装填物を前記パイプ状本体内に個別に又は一括して収容してから該パイプ状本体の内周面を摺動面として該摺動面上を滑らせるようにして前記追加装填物を個別に又は一括して前記発破孔へと押し出すことにより、該追加装填物を前記発破孔に装填するものである。
【0019】
また、本発明に係る発破準備方法は、装填機に備えられた装填パイプの先端に前記親ダイを取り付け、前記点火信号伝送媒体が前記パイプ状本体内に収容された状態を維持しつつ前記装填パイプを前記発破孔に挿入することにより、該親ダイを前記発破孔の孔尻近傍に装填し、
前記追加装填物を前記装填機によって個別に又は一括して前記発破孔へと圧送することにより、該追加装填物を前記発破孔に装填するものである。
【0020】
本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプにおいては、切羽に形成された発破孔に挿入可能なパイプ状本体を備えるが、該パイプ状本体は、脚線や導火管といった点火信号伝送媒体を材軸方向に沿って収容できるように構成してあるとともに、材軸方向に沿ってかつ全長にわたって延びる取り外し用開口を設けてあり、該取り外し用開口を介して点火信号伝送媒体を取り外すことができるようになっている。
【0021】
このようにすると、発破孔への挿入深さがパイプ状本体の先端側所定範囲、いわば挿入予定部分になるように挿入の程度を適宜調整することにより、パイプ状本体は、挿入予定部分を除く手前側範囲、いわば露出予定部分が挿入されずに発破孔から露出し、その露出長さだけ基端側が切羽面から離隔するとともに、それに伴って、パイプ状本体内に収容されている点火信号伝送媒体も、上述の露出長さに相当する距離だけ切羽面から離隔し、その状態でパイプ状本体の基端側から垂れ下がる。
【0022】
そのため、点火信号伝送媒体の結線作業を切羽面から離隔した場所で行うことが可能となり、かくして、切羽で肌落ちが発生したとしても、結線作業における作業員の安全を十分に確保することが可能となる。
【0023】
また、結線作業が完了した後は、パイプ状本体を発破孔から引き抜きつつ、点火信号伝送媒体を取り外し用開口を介してパイプ状本体から取り外すことにより、点火信号伝送媒体の収容パイプを切羽から撤去することができるので、これらを次の発破に転用することが可能となる。
【0024】
[点火信号伝送媒体]
適用対象となる発破には、電気発破や導火管発破が包摂されるが、電気発破の場合には電気雷管から延びる脚線が、導火管発破の場合には導火管付き雷管から延びる導火管がそれぞれ点火信号伝送媒体となる。
【0025】
[パイプ状本体~長さ~]
パイプ状本体の長さは、挿入予定部分が例えば30cm程度、露出予定部分が例えば100cm程度となるように全長を設定することが想定されるが、挿入予定部分については、結線作業中に発破孔から抜け落ちることなく切羽に安定保持されるように、露出予定部分については、切羽で肌落ちが発生したとしても、作業員が安全に結線作業を行うことができるだけの切羽面からの離隔距離が確保されるようにそれぞれ設定すればよい。
【0026】
パイプ状本体を発破孔に挿入するにあたっては、該パイプ状本体の露出長さをそのつど計測することによって、挿入予定部分が予定通りに発破孔に挿入されているかどうか、あるいは露出予定部分が予定通りに切羽から露出しているかどうかを判断することが可能であるが、パイプ状本体のうち、挿入予定部分と露出予定部分との境界となる位置であってその外周面に該境界を識別可能なマーキングを設けた構成とするならば、挿入予定部分と露出予定部分との境界を容易に目視できるので、パイプ状本体の挿入不足や挿入過剰を未然に防止することが可能となり、発破孔への挿入不足によって結線作業中にパイプ状本体が発破孔から抜け落ちたり、挿入過剰によって結線作業場所を切羽面から十分に離隔させることができなかったりといった事態が生じるのを未然に防止することができる。
【0027】
また、これに代えて、パイプ状本体のうち、挿入予定部分と露出予定部分との境界となる位置であってその外周面に発破孔の切羽面開口に係止される係止部を突設した構成とするならば、パイプ状本体を発破孔に挿入する際、該パイプ状本体をその係止部が発破孔の切羽面開口に係止されるまで発破孔に押し込むだけで、上述したパイプ状本体の挿入不足や挿入過剰をより確実に防止することができる。
【0028】
[取り外し用開口]
取り外し用開口は、点火信号伝送媒体の結線が完了した後、該取り外し用開口を介して点火信号伝送媒体をパイプ状本体から取り外すことができるようになっている限り、その開口形状や開口幅は任意であって、例えば、パイプ状本体を半筒状に形成し、その材軸方向に沿った開口を取り外し用開口とした構成も採用可能である。
【0029】
なお、かかる構成では、点火信号伝送媒体の取り外しが容易である反面、結線作業前や作業途中に点火信号伝送媒体がパイプ状本体から意図せずに外れてしまい、あるいは発破孔から抜け落ちてしまうことがある。
【0030】
その場合には、横断面における取り外し用開口の中心角が180゜未満、望ましくは90゜未満となるように構成すればよい。
【0031】
かかる構成によれば、パイプ状本体の横断面における中心角が180゜よりも大きく、さらには270゜よりも大きくなって、点火信号伝送媒体がパイプ状本体に取り囲まれる配置形態となるので、結線作業前や作業途中に点火信号伝送媒体がパイプ状本体から外れてしまうのを防止することができるとともに、パイプ状本体の挿入部分が発破孔にしっかりと保持されるため、該発破孔からの抜け落ちについても確実に防止される。
【0032】
特に、横断面における開口の中心角をさらに小さくして45゜未満~30゜未満となるようにした場合、パイプ状本体の横断面がC字状、取り外し用開口がスリット状となり、かかる構成によれば、該スリット状の取り外し用開口が上向きとなるようにパイプ状本体を発破孔に挿入することで、結線作業前あるいは結線作業中に点火信号伝送媒体がパイプ状本体から外れてしまうのをより確実に防止することができる。
【0033】
[パイプ状本体~径と材質~]
パイプ状本体は、その内側空間に材軸方向に沿って点火信号伝送媒体を収容可能であってかつ収容状態の点火信号伝送媒体を取り外し用開口を介して取り出すことができる限り、径や材質は任意であるが、パイプ状本体を、取り外し用開口の開口幅が変化する形で径方向の収縮拡張が可能となるよう弾性材料で形成するとともに、その外径が発破孔の内径よりも大きくなるように形成することにより、発破孔に挿入された状態では該パイプ状本体の外周面が発破孔の内周面に当接されるように構成したならば、結線作業中においては発破孔からの抜け落ちを防止しつつ、引抜きの際には、作業員が容易に引き抜くことが可能となる。
【0034】
弾性材料は、樹脂材料から適宜選択すればよい。
【0035】
[収容開口]
点火信号伝送媒体が接続された雷管が埋設された親ダイやそれに続いて装填される増ダイ、アンコ等の追加装填物は、パイプ状本体の端部開口から該パイプ状本体内に収容することができるが、パイプ状本体のうち、基端側を半筒状に形成して収容開口とするとともに、該収容開口を取り外し用開口の一部としたならば、親ダイや追加装填物をパイプ状本体に載せるだけで該パイプ状本体内への収容操作が終わるため、パイプ状本体の端部開口からその材軸方向に押し込むよりも、パイプ状本体内への収容がより簡単になる。
【0036】
加えて、親ダイや追加装填物をパイプ状本体に並べて載せるようにすれば、これらをまとめて押し出すことが可能となり、発破孔への装填を一括して行うことが可能となる。
【0037】
収容開口は、パイプ状本体の基端側にのみ設けられている場合のみならず、全長にわたって設けられている場合、すなわちパイプ状本体を半筒状に形成した構成も包摂される。
【0038】
[発破準備方法]
本発明に係る発破準備方法においては、まず、上述した点火信号伝送媒体の収容パイプを構成するパイプ状本体を、その基端側が切羽面から離隔した場所に位置決めされるように発破孔に挿入する。
【0039】
位置決めにあたっては、
(a) パイプ状本体の露出長さをそのつど計測する
(b) パイプ状本体のうち、挿入予定部分と露出予定部分との境界となる位置であってその外周面に該境界を識別可能なマーキングを設けた構成としてある場合には、そのマーキングが発破孔の切羽面に一致するように挿入の程度を調整する
(c) パイプ状本体のうち、挿入予定部分と露出予定部分との境界となる位置であってその外周面に発破孔の切羽面開口に係止される係止部を突設した構成としてある場合には、その係止部が発破孔の切羽面開口に係止されるまでパイプ状本体を発破孔に押し込む
といった方法から適宜選択して行えばよい。
【0040】
パイプ状本体を発破孔に挿入するにあたり、パイプ状本体を、取り外し用開口の開口幅が変化する形で径方向の収縮拡張が可能となるよう弾性材料で形成するとともに、その外径が発破孔の内径よりも大きくなるように形成してある場合には、挿入前にパイプ状本体を径方向に収縮させ、その状態で発破孔に挿入する。
【0041】
このようにすれば、発破孔に挿入された状態では、パイプ状本体がその弾性復元力で元の径に戻って該パイプ状本体の外周面が発破孔の内周面に当接されるため、上述した発破孔からの抜け落ちを防止することができる。
【0042】
次に、パイプ状本体の挿入工程と相前後して、点火信号伝送媒体が接続された雷管を埋設してなる親ダイを該点火信号伝送媒体がパイプ状本体内に収容される形となるように発破孔の孔尻近傍に装填する。
【0043】
親ダイを発破孔に装填するにあたっては、パイプ状本体の基端側の端部開口を介して、あるいは収容開口が設けられている場合にはその収容開口を介してパイプ状本体内に収容された親ダイを、点火信号伝送媒体がパイプ状本体に収容された状態を維持しつつ、込棒等の押込み用ロッドを用いて押し出すようにしてもよいし(以下、これを手動装填と呼ぶ)、装填機に備えられた装填パイプの先端に親ダイを取り付けた上、該装填パイプをパイプ状本体内に配置し、そのまま前進させた後、発破孔の孔尻近傍で空気圧等により先端から離脱させるようにしてもよい((以下、これを機械装填と呼ぶ))。
【0044】
ここで、パイプ状本体の挿入と親ダイの装填との順序は、前者を先行させることを典型例とするものの、パイプ状本体の挿入完了時点で、親ダイから延びる点火信号伝送媒体がパイプ状本体内に収容されていれば足りるものであって、機械装填の場合、親ダイの装填を先行させ後、点火信号伝送媒体がパイプ状本体内に収容された状態で該パイプ状本体を発破孔に挿入するようにしてもかまわない。
【0045】
次に、親ダイの装填工程と同時に又は該装填工程の後、増ダイ、アンコ等の追加装填物を親ダイに続く形で発破孔に装填する。
【0046】
追加装填物の装填は、装填順序の観点では、そのすべてを親ダイとは別に装填する方法と、少なくとも先頭に位置する追加装填物だけは親ダイと一緒に装填する方法に大別され、前者の方法はさらに、各追加装填物をすべて一緒に装填する方法と任意の組み合わせで複数回に分けて装填する方法に細分され、後者の方法はさらに、親ダイとともに追加装填物の一部又は全部を装填した後、一部の場合には残りの追加装填物をすべて一緒に装填する方法と任意の組み合わせで複数回に分けて装填する方法に細分される。
【0047】
また、追加装填物の装填は、手動装填と機械装填に大別され、手動装填の場合には、親ダイと同様、パイプ状本体の基端側の端部開口を介して、あるいは収容開口が設けられている場合にはその収容開口を介してパイプ状本体内に収容された追加装填物を込棒等の押込み用ロッドを用いて押し出すようにすればよいし、機械装填の場合には、装填機に備えられた装填パイプをパイプ状本体内で適宜進退させつつ、該装填パイプを介して追加装填物を空気圧で圧送すればよい。
【0048】
ちなみに、手動装填においては、パイプ状本体は、点火信号伝送媒体を切羽面から離隔させるという基本的機能に加えて、その内周面を摺動面として該摺動面上を滑らせることで親ダイや追加装填物をスムーズにかつ確実に発破孔に装填するという、いわば案内機能をも併せ持つが、機械装填においては、パイプ状本体は、点火信号伝送媒体を切羽面から離隔させるという基本的機能のみを有することになる。
【0049】
次に、点火信号伝送媒体を結線する。
【0050】
ここで、結線作業においては、点火信号伝送媒体がパイプ状本体内に収容されていて、そのパイプ状本体は基端側が切羽面から離隔しているので、点火信号伝送媒体も、切羽面から離隔した形でパイプ状本体の基端側から垂れ下がった状態となる。
【0051】
そのため、点火信号伝送媒体の結線作業を切羽面から離隔した場所で行うことが可能となり、かくして、切羽で肌落ちが発生したとしても、結線作業における作業員の安全を十分に確保することが可能となる。
【0052】
また、結線作業前や結線作業中においては、横断面における取り外し用開口の中心角が180゜未満、望ましくは90゜未満となるように構成されている場合には、点火信号伝送媒体がパイプ状本体に取り囲まれる配置形態となるので、点火信号伝送媒体がパイプ状本体から外れてしまう懸念が小さくなるとともに、パイプ状本体の挿入部分が発破孔にしっかりと保持されるため、該発破孔からの抜け落ちについても防止される。
【0053】
特に、横断面における開口の中心角をさらに小さくして45゜未満~30゜未満となるように構成してある場合には、パイプ状本体の横断面がC字状、取り外し用開口がスリット状となるので、該スリット状の取り外し用開口が上向きとなるようにパイプ状本体を発破孔に挿入することで、パイプ状本体からの点火信号伝送媒体の脱落がより確実に防止される。
【0054】
結線完了後、パイプ状本体を発破孔から引き抜きつつ、点火信号伝送媒体を取り外し用開口を介して該パイプ状本体から取り外すことにより、点火信号伝送媒体の収容パイプを切羽から撤去する。
【0055】
パイプ状本体を発破孔から引き抜くにあたっては、発破孔に挿入されたパイプ状本体をそのまま、若しくは円筒状楔材とともに、又は径方向に収縮させてから行うようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本実施形態に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ1を示した図であり、(a)は一部を省略して描いた全体斜視図、(b)は配置状況と併せて示した全体側面図。
【
図2】本実施形態に係る発破準備方法の手順を示した説明図。
【
図3】引き続き本実施形態に係る発破準備方法の手順を示した説明図。
【
図4】点火信号伝送媒体の収容パイプ1及びそれを用いた発破準備方法の作用を示した説明図。
【
図5】
図3に続いて本実施形態に係る発破準備方法の手順を示した説明図。
【
図6】変形例に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ61を、一部を省略して描いた全体斜視図。
【
図7】別の変形例に係る点火信号伝送媒体の収容パイプを示したものであり、(a),(b),(c)は横断面図、(d)は、一部を省略して描いた全体斜視図。
【
図8】さらに別の変形例に係る点火信号伝送媒体の収容パイプを示したものであり、(a)は、一部を省略して描いた全体斜視図、(b),(c)は通常の状態で示した横断面図と側面図、(d),(e)は挿入直前の状態で示した横断面図と側面図。
【
図9】さらに別の変形例に係る点火信号伝送媒体の収容パイプを、一部を省略して描いた全体斜視図。
【
図10】さらに別の変形例に係る点火信号伝送媒体の収容パイプを示した図であり、(a)は一部を省略して描いた全体斜視図、(b)は全体側面図。
【
図11】機械装填の場合における発破準備方法の手順を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ及びそれを用いた発破準備方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0058】
図1は、本実施形態に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ1を、一部を省略して描いた全体斜視図及び発破準備方法で配置される際の配置状況と併せて示した全体側面図である。
【0059】
これらの図に示すように、点火信号伝送媒体の収容パイプ1は、半筒状をなすパイプ状本体5を備えており、その先端近傍を切羽3に形成された発破孔4に挿入できるようになっている。
【0060】
パイプ状本体5は、発破孔4の孔底に装填される親ダイ7に埋設された雷管(図示せず)に接続された点火信号伝送媒体としての脚線2を、その内周面8の上に載置する形で、材軸方向に沿って収容できるように構成してあるとともに、材軸方向に沿ってかつ全長にわたって延びる取り外し用開口6を設けてあり、該取り外し用開口を介して脚線2を取り外すことができるようになっている。
【0061】
ここで、取り外し用開口6のうち、基端側に延びる部分は、親ダイ7やそれに続いて装填される後述の追加装填物を収容パイプ状本体5内に収容するための収容開口として機能する。
【0062】
パイプ状本体5には、発破孔4に挿入される予定の長さL1の部分(以下、挿入予定部分11)と切羽3から露出する予定の長さL2の部分(以下、露出予定部分12)との境界となる位置であって、その外周面に発破孔4の切羽面開口9に係止される係止部10を鍔状に突設してある。
【0063】
パイプ状本体5は、挿入予定部分11については、結線作業中に該パイプ状本体が発破孔4から抜け落ちることなく切羽4に安定保持されるように、露出予定部分12については、切羽3で肌落ちが発生したとしても、作業員が安全に結線作業を行うことができるだけの切羽面21からの離隔距離が確保されるようにそれぞれ設定すればよく、例えば挿入予定部分11の長さL1が例えば30cm程度、露出予定部分12の長さL2が例えば100cm程度となるように全長を決定するとともに、係止部10の突設位置を定めればよい。
【0064】
パイプ状本体5は、例えば外径を38mm程度、内径を36mm程度とすることが可能であり、形成材料としては、公知の樹脂材料から適宜選択して形成すればよい。
【0065】
本実施形態に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ1を用いて発破準備を行うには、まず、
図2(a)に示すように、点火信号伝送媒体の収容パイプ1のパイプ状本体5を、その基端側が切羽3の露出面(以下、切羽面21)から離隔した場所に位置決めされるように発破孔4に挿入する。
【0066】
位置決めにあたっては、パイプ状本体5の外周面に突設した係止部10が発破孔4の切羽面開口9に係止されるまで(
図2(b))、該パイプ状本体を発破孔4に押し込むだけでよい。
【0067】
次に、親ダイ7を発破孔4の孔尻近傍に装填する。
【0068】
親ダイ7を発破孔4に装填するにあたっては、
図2(c)に示すように、親ダイ7をパイプ状本体5の内周面8に載置する形で該パイプ状本体内に収容するとともに、親ダイ7から延びる脚線2についてもこれをパイプ状本体5内に収容し、かかる状態で、親ダイ7が発破孔4の孔尻近傍に配置されるまで(
図3(a))、該親ダイを押込み用ロッドである込棒22を用いて発破孔4に押し込めばよい(以下、これを手動装填と呼ぶ)。
【0069】
次に、
図3(b)に示すように、追加装填物としての増ダイ31a,31b及びアンコ32a,32b,32c,32dを親ダイ7に続く形で発破孔4に装填する。
【0070】
これらの追加装填物を発破孔4に装填するにあたっても、親ダイ7と同様、増ダイ31a,31b及びアンコ32a~32dをパイプ状本体5の内周面8に載置する形で該パイプ状本体内に収容し、かかる状態で、親ダイ7に続く形となるまで(
図3(c))、それらの追加装填物を込棒22で発破孔4に押し込んで、手動装填すればよい。
【0071】
次に、脚線2を結線する。
【0072】
ここで、結線作業は、
図4(a)に示すように脚線2を発破母線41(あるいは補助母線)に連結する作業となるが、パイプ状本体5の基端側が切羽面21からL
2だけ離隔しているため、パイプ状本体5内に収容されている脚線2についても、その結線作業中は、切羽面21からL
2だけ離隔した形でパイプ状本体5の基端側から垂れ下がった状態となる。
【0073】
そのため、脚線2の結線作業を切羽面21から離隔した場所で行うことが可能となる。
【0074】
ちなみに、従来においては、
図4(b)に示すように、脚線2が切羽面21に沿って発破孔4から垂れ下がるため、切羽面21に近接して結線作業を行うか、
図4(c)に示すように、いったん切羽面21に近づくことで、切羽面21に沿って垂れ下がる脚線2を手前に延ばす必要があるため、いずれにせよ切羽面21に近接せざるを得ない。
【0075】
結線作業が完了した後は、
図5に示すように、パイプ状本体5を発破孔4から引き抜きつつ、脚線2を取り外し用開口6を介してパイプ状本体5から取り外すこと
により、点火信号伝送媒体の収容パイプ1を切羽3から撤去する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ1及びそれを用いた発破準備方法によれば、パイプ状本体5は、露出予定部分12が挿入されずに発破孔4から露出し、その露出長さL2だけ基端側が切羽面21から離隔するとともに、それに伴って、パイプ状本体5内に収容されている脚線2も、上述の露出長さL2に相当する距離だけ切羽面21から離隔し、その状態でパイプ状本体5の基端側から垂れ下がる。
【0077】
そのため、脚線2の結線作業を切羽面21から離隔した場所で行うことが可能となり、かくして、切羽3で肌落ちが発生したとしても、結線作業における作業員の安全を十分に確保することが可能となる。
【0078】
加えて、本実施形態に係る発破準備方法によれば、親ダイ7や追加装填物の装填作業についても切羽面21から離隔した場所で行うことができるため、結線作業と同様、切羽3で肌落ちが発生したとしても、作業員の安全を十分に確保することが可能となる。
【0079】
また、結線作業が完了した後は、パイプ状本体5を発破孔4から引き抜きつつ、脚線2を、取り外し用開口6を介してパイプ状本体5から取り外すことにより、点火信号伝送媒体の収容パイプ1を切羽3から撤去することができるので、これらを次の発破に転用することも可能となる。
【0080】
また、本実施形態に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ1及びそれを用いた発破準備方法によれば、パイプ状本体5のうち、挿入予定部分11と露出予定部分12との境界となる位置であってその外周面に発破孔4の切羽面開口9に係止される係止部10を突設した構成としたので、パイプ状本体5を発破孔4に挿入する際、該パイプ状本体をその係止部10が発破孔4の切羽面開口9に係止されるまで発破孔4に押し込むだけで、パイプ状本体5の挿入不足や挿入過剰を確実に防止することが可能となり、発破孔4への挿入不足によって結線作業中にパイプ状本体5が発破孔4から抜け落ちたり、挿入過剰によって結線作業場所を切羽面21から十分に離隔させることができなかったりといった事態が生じるのを未然に防止することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る点火信号伝送媒体の収容パイプ1及びそれを用いた発破準備方法によれば、本発明に係るパイプ状本体を、半筒状に形成してなるパイプ状本体5で構成したので、取り外し用開口6の開口幅が大きくなり、脚線2の収容及び取り外しを容易に行うことができるとともに、その基端側に延びる部分が、親ダイ7やそれに続いて装填される増ダイ31a,31b及びアンコ32a,32b,32c,32dをパイプ状本体5内に収容するための収容開口として機能し、該収容開口を介してそれらをパイプ状本体5に載せるだけで該パイプ状本体内への収容操作が終わるため、パイプ状本体の端部開口からその材軸方向に押し込むよりも、収容作業が簡単になる。
【0082】
加えて、取り外し用開口6のうち、収容開口として機能する基端側を利用して親ダイや追加装填物をパイプ状本体5に並べて載せることができるので、これらをまとめて押し出すことが可能となり、発破孔4への装填を一括して行うことが可能となる。
【0083】
本実施形態では、電気発破を前提としたので、点火信号伝送媒体を電気雷管から延びる脚線2としたが、適用対象となる発破には導火管発破も包摂されるものであり、この場合には、導火管付き雷管から延びる導火管が点火信号伝送媒体となる。
【0084】
また、本実施形態では、パイプ状本体5のうち、挿入予定部分11と露出予定部分12との
境界となる位置であってその外周面に発破孔4の切羽面開口9に係止される係止部10を突設した構成とすることにより、パイプ状本体5の挿入不足や挿入過剰を確実に防止するようにしたが、これに代えて、
図6に示すように、挿入予定部分11と露出予定部分12との
境界となる位置であってその外周面に該境界を識別可能なマーキング62が設けられたパイプ状本体65を備えた点火信号伝送媒体の収容パイプ61としてもよい。
【0085】
かかる構成であっても、マーキング62を目視しつつ、該マーキングが発破孔4の切羽面開口9に一致するように、パイプ状本体65の挿入程度を調整することにより、パイプ状本体65の挿入不足や挿入過剰を未然に防止することができる。
【0086】
なお、本変形例は、パイプ状本体の挿入程度を調整するための構成を除き、上述した実施形態とほぼ同様の構成及び作用効果を有するものであるが、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0087】
また、本実施形態では、本発明に係るパイプ状本体を半筒状に形成してなるパイプ状本体5としたが(
図7(a))、かかる構成では、脚線2の収容及び取り外しが容易である反面、結線作業前や作業途中に該脚線がパイプ状本体5から意図せずに外れてしまい、あるいはパイプ状本体5が発破孔4から抜け落ちてしまうことが懸念される。
【0088】
その場合には、横断面における取り外し用開口6の中心角が180゜未満、望ましくは90゜未満となるように構成すればよい。
【0089】
図7(b)は、横断面における取り外し用開口6の中心角を90゜未満としたパイプ状本体75aを示したものである。
【0090】
かかる構成によれば、脚線2がパイプ状本体75aに取り囲まれる配置形態となるので、結線作業前や作業途中に該脚線がパイプ状本体75aから外れてしまうのを防止することができるとともに、パイプ状本体75aの挿入部分が発破孔4にしっかりと保持されるため、該発破孔からの抜け落ちについても確実に防止される。
【0091】
特に、横断面における開口の中心角をさらに小さくして45゜未満~30゜未満となるようにした場合、一例として
図7(c),(d)に示すように、該中心角を30゜未満としたパイプ状本体75bによれば、横断面がC字状、取り外し用開口がスリット状の取り外し用開口76となるため、該スリット状の取り外し用開口が上向きとなるようにパイプ状本体75bを発破孔4に挿入することで、結線作業前あるいは結線作業中に脚線2がパイプ状本体75bから外れてしまうのをより確実に防止することができる。
【0092】
なお、本変形例は、既に延べた変形例にも適用が可能であるとともに、パイプ状本体の横断面に関する構成を除き、上述した実施形態とほぼ同様の構成及び作用効果を有するものであるが、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0093】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、
図8に示すように、本発明のパイプ状本体を、スリット状をなす取り外し用開口76の開口幅が変化する形で径方向の収縮拡張が可能となるよう弾性材料で形成するとともに、その外径が発破孔4の内径よりも大きくなるように形成した構成とすることができる。
【0094】
かかる構成によれば、発破孔4に挿入された状態では、パイプ状本体85がその弾性復元力で元の径に戻って該パイプ状本体の外周面87が発破孔4の内周面86に当接されるため、上述した発破孔からの抜け落ちを防止することができるとともに、引抜きの際には、パイプ状本体85をその径が縮小する方向に縮めることで、作業員が容易に引き抜くことが可能となる。
【0095】
また、本変形例は、既に延べた変形例にも適用が可能であって、
図9に示すように、パイプ状本体85の係止部10に代えて、マーキング62を外周面に設けてなるパイプ状本体95で本発明のパイプ状本体を構成することができる。
【0096】
なお、本変形例は、パイプ状本体の弾性変形能に関する構成を除き、上述した実施形態とほぼ同様の構成及び作用効果を有するものであるが、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0097】
また、本実施形態では、半筒状に形成してなるパイプ状本体5を採用することにより、上述したように脚線2がパイプ状本体5から意図せずに外れてしまったり、パイプ状本体5が発破孔4から抜け落ちてしまう懸念が残るとともに、かかる懸念が取り外し用開口76(
図7~
図9)の採用によってが解消される反面、該構成では、親ダイ7や追加装填物の収容操作が煩雑になる懸念が生じる。
【0098】
この場合には、パイプ状本体75b,85,95のうち、基端側を半筒状に形成すればよい。
【0099】
図10は、パイプ状本体95の基端側を、横断面がC字状となる形状に代えて、半筒状に形成してなるパイプ状本体105を示した全体斜視図及び全体側面図であり、基端側を収容開口としても機能する取り外し用開口106bで、基端側を除く部分をスリット状の取り外し用開口106aで、本発明の取り外し用開口を構成してある。
【0100】
かかる構成によれば、脚線2がパイプ状本体5から意図せずに外れてしまったり、パイプ状本体5が発破孔4から抜け落ちてしまったりするのを防止しつつ、親ダイ7や追加装填物の収容を容易に行うことができるとともに、それらを一括して押し出すことも可能となる。
【0101】
また、本実施形態では、親ダイ7を装填した後、追加装填物としての増ダイ31a,31b及びアンコ32a,32b,32c,32dを発破孔4に装填するようにしたが、この場合、追加装填物をすべて一緒に装填するようにしてもよいし、任意の組み合わせで複数回に分けて装填するようにしてもよい。
【0102】
また、追加装填物のうち、先頭側のいくつかについては、親ダイ7と一緒に装填するようにしてもよい。
【0103】
また、本実施形態では、親ダイ7や追加装填物を込棒22を用いて押し出すようにしたが(手動装填)、この手動装填に代えて、
図11(a)に示すように、装填機(図示せず)に備えられた装填パイプ122の先端に親ダイ7を取り付けた上、該装填パイプをパイプ状本体5内に配置し(同図(b))、そのまま前進させた後、発破孔4の孔尻近傍で空気圧等により先端から離脱させ、次いで、追加装填物を装填パイプ122を介して圧送することで、同図(c)に示すように発破孔4に装填するようにしてもよい(機械装填)。
【0104】
ちなみに、機械装填においては、粒状爆薬を増ダイとして圧送することが可能である。
【0105】
なお、機械装填の場合、親ダイ7の装填及び追加装填物の装填を先行させ、その後、脚線2がパイプ状本体5内に収容された状態となるように、該パイプ状本体を発破孔4に挿入するようにしてもかまわないが、発破孔4の切羽面開口9から垂れ下がっている脚線2をパイプ状本体5で下方から掬い上げるようにしながら、該パイプ状本体の先端を発破孔4に挿入する作業は容易ではないため、上述の手順で行うことが望ましい。
【0106】
手動装填においても、親ダイ7を装填した後、場合によってはさらに追加装填物を装填した後、パイプ状本体5内に脚線2が収容された状態となるように該パイプ状本体を発破孔4に挿入する手順が排除されるものではなく、この構成であっても、結線作業を切羽面21から離隔して行うことができる点については上述の実施形態と同様であるが、機械装填の場合について説明したと同様、発破孔4の切羽面開口9から垂れ下がっている脚線2をパイプ状本体5で下方から掬い上げるようにしながら、該パイプ状本体の先端を発破孔4に挿入する作業は容易ではなく、加えて、親ダイ7や追加装填物の装填を切羽面21に近接して手作業で行わなければならないため、実施形態記載の順序で行うのが望ましい。
【0107】
ちなみに、実施形態記載の手順における手動装填においては、パイプ状本体5は、脚線2を切羽面21から離隔させるという基本的機能に加えて、その内周面8を摺動面として該摺動面上を滑らせることで親ダイ7や追加装填物をスムーズにかつ確実に発破孔4に装填するという、いわば案内機能をも併せ持つが、機械装填においては、パイプ状本体5は、脚線2を切羽面21から離隔させるという基本的機能のみを有することになる。
【符号の説明】
【0108】
1,61 点火信号伝送媒体の収容パイプ
2 脚線(点火信号伝送媒体)
3 切羽
4 発破孔
5,65,75a,75b,85,95,105
パイプ状本体
6,76,106a
取り外し用開口
7 親ダイ
8 内周面
9 切羽面開口
10 係止部
11 挿入予定部分
12 露出予定部分
21 切羽面
31a,31b 増ダイ(追加装填物)
32a,32b,32c,32d
アンコ(追加装填物)
62 マーキング
86 発破孔4の内周面
87 パイプ状本体85の外周面
106b 取り外し用開口、収容開口