IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社酉島製作所の特許一覧

特許7470615軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置
<>
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図1
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図2
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図3
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図4
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図5
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図6
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図7
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図8
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図9
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図10
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図11
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図12
  • 特許-軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/60 20060101AFI20240411BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20240411BHJP
   F04D 29/044 20060101ALI20240411BHJP
   F04D 29/054 20060101ALI20240411BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20240411BHJP
   F16D 3/84 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
F04D29/60 E
F04D29/60 J
F04D29/62 A
F04D29/62 B
F04D29/62 D
F04D29/60 H
F04D29/044
F04D29/054
F04B53/00 D
F04B53/00 H
F16D3/84 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020181329
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072088
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】林 茂美
(72)【発明者】
【氏名】原田 徳博
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013229(JP,A)
【文献】特開2015-205589(JP,A)
【文献】特開2018-091188(JP,A)
【文献】特開2014-074456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/60
F04D 29/62
F04D 29/044
F04D 29/054
F04B 53/00
F16D 3/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側がポンプ本体に固定され、前記ポンプ本体を駆動する原動機の主軸である原動機主軸と、前記ポンプ本体の主軸であるポンプ主軸と、前記原動機主軸と前記ポンプ主軸とを接続する軸継手とを含む伝動部のうち、少なくとも前記ポンプ主軸の一部を覆う固定カバーと、
前記固定カバーの先端側から前記原動機に向けて突出するように、前記固定カバーに対して前記原動機主軸の軸方向に位置調整可能に固定され、前記伝動部のうち前記固定カバーから露出した部分を覆う調整カバーと
を備え、更に
前記固定カバーの基端側の下部に設けられている逃し部と、
前記固定カバーの外部から前記逃し部を介して前記伝動部へアクセス可能な開放部分を閉止するように、前記固定カバーの基端側に取り付けられている閉止部材と
を備える軸継手カバー。
【請求項2】
前記固定カバーは前記ポンプ本体の軸受カバーに固定されている、請求項1に記載の軸継手カバー。
【請求項3】
前記固定カバーと前記調整カバーとは、筒状のカバー本体と、前記カバー本体を長手方向に分断するように設けられたスリット部と、前記スリット部に臨むように前記カバー本体から突出するように設けられた一対のフランジ部とをそれぞれ備え、
前記固定カバーの前記一対のフランジ部を、前記調整カバーの前記一対のフランジ部で外側から挟持することで、前記調整カバーが前記固定カバーに固定されている、請求項1又は2に記載の軸継手カバー。
【請求項4】
前記調整カバーの前記一対のフランジ部の外側への突出長さが、前記固定カバーの前記一対のフランジ部の外側への突出長さより長く、かつ、前記調整カバーの前記一対のフランジ部は、前記固定カバーの前記一対のフランジ部より外側に穴を有し、
前記穴にボルトを通しナットで締結することで、前記固定カバーに前記調整カバーが固定されている、請求項3に記載の軸継手カバー。
【請求項5】
前記固定カバーの前記一対のフランジ部に軸方向に延在する長穴が設けられ、前記調整カバーの前記一対のフランジ部に前記長穴と対応する位置に穴が設けられ、
前記長穴と前記穴とにボルトを通しナットで共締めすることで、前記固定カバーに前記調整カバーが固定されている、請求項3に記載の軸継手カバー。
【請求項6】
前記調整カバーにカバー内部を確認するための長穴が設けられている、請求項1から5のいずれか1つに記載の軸継手カバー。
【請求項7】
前記ポンプ本体と、
前記原動機と、
前記軸継手と、
請求項1からのいずれか1項に記載の軸継手カバーと
を備えるポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸継手カバー及びそれを備えるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部品点数を減らす目的で、脚部等を用いずにポンプ本体に対して固定される軸継手カバーが開示されている。かかる軸継手カバーは、軸継手カバー本体と、当該軸継手カバー本体のポンプ本体側の開口を覆うアタッチメントを備える。アタッチメントがポンプ本体の軸受カバーに固定され、軸受カバーにアタッチメントを介して軸継手カバー本体が固定されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の軸継手カバーでは、軸方向の長さを調整できない。そのため、原動機とポンプ本体との組み合わせが異なる等の理由による、原動機とポンプ本体との間の距離の相違に対応できない。具体的には、原動機とポンプ本体との間の距離が異なる場合、原動機主軸、ポンプ主軸、及び原動機主軸とポンプ主軸とを接続する軸継手とを含む伝動部の露出を最小限にするためには、新たに軸継手カバーを設計しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6671272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、原動機とポンプ本体との距離が相違する場合でも、部品点数増加を抑制しつつ、原動機とポンプ本体との間の伝動部の露出を最小限に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基端側がポンプ本体に固定され、前記ポンプ本体を駆動する原動機の主軸である原動機主軸と、前記ポンプ本体の主軸であるポンプ主軸と、前記原動機主軸と前記ポンプ主軸とを接続する軸継手とを含む伝動部のうち、少なくとも前記ポンプ主軸の一部を覆う固定カバーと、前記固定カバーの先端側から前記原動機に向けて突出するように、前記固定カバーに対して前記原動機主軸の軸方向に位置調整可能に固定され、前記伝動部のうち前記固定カバーから露出した部分を覆う調整カバーとを備え、更に前記固定カバーの基端側の下部に設けられている逃し部と、前記固定カバーの外部から前記逃し部を介して前記伝動部へアクセス可能な開放部分を閉止するように、前記固定カバーの基端側に取り付けられている閉止部材とを備える軸継手カバーを提供する。
【0007】
本発明の軸継手カバーによれば、部品点数増加を抑制しつつ、軸継手カバーを固定できる。すなわち、固定カバーをポンプ本体に固定し、当該固定カバーを介して調整用カバーをポンプ本体に固定することで、軸継手カバーを垂直方向に支持する脚部等の部品を必要とすることなく、軸継手カバーを固定することができる。さらに、本発明の軸継手カバーによれば、部品点数増加を抑制しつつ、軸継手カバーの軸方向の長さを調整できる。すなわち、固定位置を調整できる調整カバーを固定カバーの軸方向の任意の位置で固定することで、軸継手カバーの軸方向の長さを調整でき、原動機とポンプ本体との間の伝動部の露出を最小限に抑制できる。
【0008】
具体的には、前記固定カバーと前記調整カバーとは、筒状のカバー本体と、前記カバー本体を長手方向に分断するように設けられたスリット部と、前記スリット部に臨むように前記カバー本体から突出するように設けられた一対のフランジ部とをそれぞれ備える。前記固定カバーの前記一対のフランジ部を、前記調整カバーの前記一対のフランジ部で外側から挟持することで、前記調整カバーが前記固定カバーに固定されている。
【0009】
固定カバーのフランジ部が軸方向に延在するため、調整カバーの軸方向の固定位置が調整され得る。
【0010】
より具体的には、軸継手カバーの大きさにより、挟持方法が異なる。軸継手カバーが小型の場合、前記調整カバーの前記フランジ部の外側への突出長さが、前記固定カバーの前記フランジ部の外側への突出長さより長い。また、前記調整カバーの前記フランジ部は、前記固定カバーの前記フランジ部より外側に穴を有する。前記穴にボルトを通しナットで締結することで、前記固定カバーに前記調整カバーが固定されている。
【0011】
軸継手カバーが大型の場合、前記固定カバーの前記フランジ部に軸方向に延在する長穴が設けられている。また、前記調整カバーの前記フランジ部に前記長穴と対応する位置に穴が設けられている。前記長穴と前記穴とにボルトを通しナットで共締めすることで、前記固定カバーに前記調整カバーが固定されている。
【0012】
上述の通り、本発明に係る軸継手カバーでは、調整カバーを固定カバーに固定し、軸方向に長さを調整するのに、少なくとも1組のボルトとナットがあればよい。その結果、本発明に係る軸継手カバーを備えるポンプ装置では、組み立て作業効率や作業性が向上され得る。
【0014】
ポンプ本体の原動機側に、ポンプ本体を支持するための軸受箱用支えが設けられている。固定カバーを設置する際、固定カバーと軸受箱用支えとが干渉することがある。固定カバーの基端側の下部には、ポンプ本体側の端部から原動機側に向けて切り欠いた逃し部が設けられている。逃し部は、固定カバーを軸受カバーに取り付けた際、固定カバーと軸受箱用支えとの干渉を回避するために設けられている。一方で、固定カバーに逃し部が設けられていることで、例えば軸継手カバーが大型化した場合等に、開放部分を介した伝動部へのアクセスが容易になり得る。前記の構成によれば、閉止部材によって開放部分が閉止されているため、伝動部へのアクセスを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の軸継手カバーによれば、原動機とポンプ本体との距離が相違する場合でも、部品点数増加を抑制しつつ、原動機とポンプ本体との間の伝動部の露出を最小限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る軸継手カバーを備えるポンプ装置全体の側面図。
図2図1のポンプ装置の分解斜視図。
図3】本発明に係る固定カバーの斜視図。
図4】本発明に係る調整カバーの斜視図。
図5】本発明の第1実施形態に係る軸継手カバーの側面図。
図6図5の線VI-VIでの断面図。
図7】第1実施形態の変形例の図6と同様の断面図。
図8】本発明の第2実施形態に係る軸継手カバーの側面図。
図9図8の線IX-IXでの断面図。
図10】本発明の第3実施形態に係る軸継手カバーを備えるポンプ装置の図1の部分Yにおける拡大図。
図11】本発明の第3実施形態に係る固定カバーの斜視図。
図12図10の固定カバー、軸受カバー、及び閉止部材をポンプ本体から見た図。
図13】本発明の第3実施形態に係る閉止部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して本発明に係る軸継手カバー1の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図2から図4において、符号Xは原動機2とポンプ本体3との主軸2a,3aの軸線を示す。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る軸継手カバー1を備えるポンプ装置4の側面図を示す。ポンプ装置4は、原動機2、ポンプ本体3、軸継手5、及び軸継手カバー1を備える。ここで、原動機2としては、例えば電動機などを例示できる。原動機2とポンプ本体3とは、共通ベース6上に設置されている。原動機2の主軸(原動機主軸)2aとポンプ本体3の主軸(ポンプ主軸)3aとは、原動機2とポンプ本体3との間に設けられた軸継手5によって、軸線X上で連結されている。軸継手カバー1は、軸継手5と主軸2a,3aの露出している部分と(すなわち伝動部)を覆うように設けられている。なお、軸線X方向において、固定カバー7と調整カバー8とのポンプ本体3側を基端部(基端側)、原動機2側を先端部(先端側)とそれぞれ表す。
【0020】
図2を併せて参照すると、軸継手カバー1は、固定カバー7と調整カバー8とを備える。後述するように、固定カバー7は、ポンプ本体3の軸受カバー3bのおおよそ全周を外側から覆うように配置され、固定カバー7の基端部を一組のボルト7aとワッシャ7bとで締結することで軸受カバー3bに固定されている。また、調整カバー8は、固定カバー7の先端部と、伝動部のうち固定カバー7から露出した部分とを外側から覆うように配置され、一組のボルト8a、ワッシャ8b、及びナット8cを用いて固定カバー7に固定されている。
【0021】
図3は、固定カバー7の斜視図である。固定カバー7は、軸線Xに沿って延在する筒状の固定カバー本体7cを備える。本実施形態では、固定カバー本体7cの軸線Xに垂直な断面形状は、円形である。固定カバー本体7cの軸線Xに垂直な断面形状は、例えば四角形等の多角形であってもよい。
【0022】
固定カバー7の基端部には、軸受カバー3bに固定するためのボルトを通すボルト穴7dと切欠き部7eとがそれぞれ設けられている。本実施形態では、1つのボルト穴7dと、軸線Xを中心にそれぞれ120度離れた位置に2つの切欠き部7eとが設けられている。1つのボルト穴7dと2つの切欠き部7eとを、ボルトを用いて軸受カバー3bにそれぞれ締結することで固定カバー7は固定され得る。また、軸受カバー3bに2つの突起を設け、それらの突起に切欠き部7eをそれぞれ嵌合することで、軸線Xを中心とする固定カバー7の回転移動を制限し、その状態でボルト穴7dにボルト7aを通すことで固定カバー7を固定することもできる。すなわち、軸受カバー3bの2つの切欠き部7eに対応する位置に、それらの切欠き部7eの形状に対応する形状の突起を2つ設け、それらの突起に切欠き部7eをそれぞれ嵌合することで固定カバー7を軸受カバー3bに固定することができる。ボルト穴7dと切欠き部7eとの位置と数とは、固定カバー7の固定方法に合わせ適宜調整されてよい。また、ボルト穴7dのみ又は切欠き部7eのみが設けられていてもよい。
【0023】
図5を併せて参照すると、固定カバー7は、軸線Xに平行(長手方向)に固定カバー本体7cを分断するスリット部7fと、そのスリット部7fに臨むように固定カバー本体7cから外側に長さLaで突出する一対のフランジ部7gとを備える。
【0024】
本実施形態では、軸線X方向における固定カバー7の一対のフランジ部7gの長さは、軸線X方向における固定カバー本体7cの長さの1/2程度である。固定カバー本体7cの長さ全体にわたって、一対のフランジ部7gを形成してもよい。
【0025】
図4は、調整カバー8の斜視図である。調整カバー8は、軸線Xに沿って延在する筒状の調整カバー本体8dを備える。本実施形態では、調整カバー本体8dの軸線Xに垂直な断面形状は、円形である。好ましくは、調整カバー本体8dの軸線Xに垂直な断面形状は、固定カバー本体7cの軸線Xに垂直な断面形状と同一である。すなわち、好ましくは、固定カバー本体7cの軸線Xに垂直な断面形状が円形である場合、調整カバー本体8dの軸線Xに垂直な断面形状も円形であり、固定カバー本体7cの軸線Xに垂直な断面形状が四角形等の多角形である場合、調整カバー本体8dの軸線Xに垂直な断面形状も四角形等の多角形である。
【0026】
本実施形態では、後述するように、調整カバー8は固定カバー7を外側から覆うように配置される。そのため、調整カバー本体8dの内径は、固定カバー本体7cの外径と等しく、又はわずかに大きく形成されている。
【0027】
図5を併せて参照すると、調整カバー8は、軸線Xに平行(長手方向)に調整カバー本体8dを分断するスリット部8eと、そのスリット部8eに臨むように調整カバー本体8dから外側に長さLbで突出する一対のフランジ部8fとを備える。一対のフランジ部8fの基端側には、ボルト8aを通すためのボルト穴8gが1つ設けられている。例えば先端側にさらに1つのボルト穴を設ける等、2つ以上のボルト穴が設けられてもよい。
【0028】
図6を併せて参照すると、後述するように、調整カバー8は、調整カバー8の一対のフランジ部8fが固定カバー7の一対のフランジ部7gを挟持することで、固定カバー7に固定されている。また、調整カバー8の一対のフランジ部8fは、調整カバー8の一対のフランジ部8fがボルト8aとナット8cとで締結されることで、固定カバー7の一対のフランジ部7gを挟持している。そのため、調整カバー8の一対のフランジ部8fの長さLbは、固定カバー7の一対のフランジ部7gの長さLaより長く、固定カバー7のフランジ部7gより外側でボルト8aを通せるように、ボルト穴8gの位置は設定されている。
【0029】
本実施形態では、軸線X方向における調整カバー8の一対のフランジ部8fの長さは、軸線X方向における調整カバー本体8dの長さの1/3程度である。調整カバー本体8dの長さ全体にわたって、一対のフランジ部8fを形成してもよい。
【0030】
調整カバー本体8dには、長円形の複数の穴8Hが設けられている。そのため、軸継手カバー1を設置している状態であっても、軸継手カバー1の内側、具体的には軸継手5を目視確認できる。穴8Hの形状は、円形や角形であってもよい。
【0031】
固定カバー7と調整カバー8とはそれぞれ、例えば1枚の鋼板に打抜き加工と曲げ加工とを施すことで形成され得る。
【0032】
図1図2とを参照すると、本実施形態では、固定カバー7は、基端部が軸受カバー3bのおおよそ全周と、少なくともポンプ主軸3aの一部とを外側から覆うように配置されている。固定カバー7は、ボルト7aがワッシャ7bとボルト穴7dとをそれぞれ介して軸受カバー3bの頂部に挿入され締結されることで、固定されている。すなわち、固定カバー7は、ボルト穴7dが上方に配置され一対のフランジ部7gが下方に配置されるように固定されている。また、調整カバー8は、固定カバー7と同様、一対のフランジ部8fが下方に配置され、固定カバー7の先端部に外側から覆うように(固定カバー7の先端側から原動機2に向けて突出するように)固定されている。従って、軸継手カバー1は、軸受カバー3bへの固定部を支持点として片持ち梁状態で固定されている。ポンプ本体3から伝わる振動によりボルト7a,8aが緩むことを解消するために、固定カバー7と軸受カバー3bとが接する部分に緩衝材等を挟み、固定カバー7に伝わる振動を軽減してもよい。
【0033】
図5図6とを併せて参照し、調整カバー8を固定カバー7に固定する方法を説明する。
【0034】
調整カバー8は、ボルト穴8gとワッシャ8bとを介して、ボルト8aとナット8cとを締結し、調整カバー8の一対のフランジ部8fが固定カバー7の一対のフランジ部7gを挟持することで、固定カバー7に固定されている。
【0035】
換言すると、本実施形態における軸継手カバー1では、調整カバー8は固定カバー7の一対のフランジ部7gを挟持することでのみ固定されている。従って、調整カバー8を固定カバー7に固定するには、軸線X方向においてそれぞれのフランジ部7g、8fが重なってさえいればよい。そのため、固定カバー7のフランジ部7gと調整カバー8のフランジ部8fとが重なる位置であれば、調整カバー8の軸線X方向の固定位置は、任意に調整できる。つまり、調整カバー8は、固定カバー7のフランジ部7aが軸線X方向に延在するため、固定カバー7に対して原動機主軸2aの軸方向に位置調整可能に固定され、軸継手カバー1の軸線X方向の長さは任意に調整され得る。
【0036】
かかる構成により、軸継手カバー1の軸線X方向の長さをポンプ本体3と原動機2との間の距離に一致させることで、軸継手カバー1は、それぞれの主軸2a,3aと軸継手5との露出を最小限に調整することができる。また、ポンプ本体3と原動機2との間の距離L(図1参照)が異なる場合であっても、同じ軸継手カバー1を使用できる。
【0037】
また、軸継手カバー1は、軸受カバー3bを介してポンプ本体3に固定されるので、垂直方向に支持する脚部等の部品を必要とすることなく、軸継手カバー1を固定することができる。従って、部品点数の増加を抑制できる。
【0038】
以上のように、本発明の軸継手カバー1によれば、原動機2とポンプ本体3との距離Lが相違する場合でも、部品点数増加を抑制しつつ、原動機2とポンプ本体3との間の伝動部の露出を最小限に抑制できる。
【0039】
本実施形態では、固定カバー7と調整カバー8とは、それぞれのスリット部7f,8eを1つのみ備えるが、2つ以上であってもよい。例えば、図7に1つの変形例を示す。図7に示す変形例では、固定カバー7と調整カバー8とは、2つのスリット部7f,8eと、それらのスリット部7f,8eに臨むように外側に突出する2つの一対のフランジ部7g,7fとをそれぞれ有する。かかる構成では、固定カバー本体7cと調整カバー本体8dとはそれぞれ2つに分割され、二組のボルト8a、ワッシャ8b、及びナット8cをそれぞれ締結することによって固定されている。
【0040】
以下、本発明の第2実施形態と第3実施形態とを説明する。これらの実施形態に関し、特に言及しない点については、前述の第1実施形態と同様である。また、これらの実施形態に関する図面において、第1実施形態と同一の要素には、第1実施形態のものと同一の符号が付されている。
【0041】
(第2実施形態)
図8図9とを参照すると、固定カバー7の一対のフランジ部7gの半径方向の突出端が、調整カバー8の一対のフランジ部8fの半径方向の突出端とおおよそ同じ位置となるように、固定カバー7の一対のフランジ部7gの突出長さLcは設定されている。すなわち、調整カバー8の一対のフランジ部8fの突出長さLbと、固定カバー7の一対のフランジ部7gの突出長さLcとは、おおよそ等しい。さらに、固定カバー7の一対のフランジ部7gには、貫通穴7hが、調整カバー8の一対のフランジ部8fのボルト穴8gと重複する位置に軸線X方向に沿って形成されている。
【0042】
固定カバー7の一対のフランジ部7gの貫通穴7hと、調整カバー8の一対のフランジ部8fのボルト穴8gとは、所定の領域で重複する。かかる状態において、貫通穴7hとボルト穴8gとに、ワッシャ8bを介してボルト8aを挿入し、ナット8cで共締めすることによって、調整カバー8の軸線X方向の位置が固定され得る。
【0043】
本実施形態では、調整カバー8の一対のフランジ部8fは、固定カバー7の一対のフランジ部7gをより広い範囲で挟持している。換言すると、調整カバー8の一対のフランジ部8fと固定カバー7の一対のフランジ部7gとは、第1実施形態と比較して、より広い面積で互いに接している。従って、調整カバー8は、固定カバー7に一層強固に固定され得る。本実施形態に係る軸継手カバー1は、例えば軸継手カバー1の大型化に伴って調整カバー8を一層強固に固定する必要が生じた際に、使用され得る。
【0044】
(第3実施形態)
図10を参照すると、ポンプ本体3の原動機2(図1参照)側に、ポンプ本体3を支持するための軸受箱用支え10が設けられている。固定カバー7を設置する際、固定カバー7と軸受箱用支え10とが干渉することがある。図11を併せて参照すると、固定カバー7の基端側の下部には、ポンプ本体3側の端部から原動機2側に向けて切り欠いた逃し部7iが設けられている。逃し部7iは、固定カバー7を軸受カバー3bに取り付けた際、固定カバー7と軸受箱用支え10との干渉を回避するために設けられている。また、固定カバー7の基端部には、軸線X方向から見て逃し部7iの両側において基端側の端部から形成された一対の切込部7jが設けられている。一対の切込部7jのそれぞれの上下方向の高さは、軸受カバー3bの下端とおおよそ位置揃えされている。
【0045】
図12図13とを参照すると、軸継手カバー1は、固定カバー7の逃し部7iの部分に閉止部材11を備える。
【0046】
閉止部材11は、基板11a、一対の固定板11b、及び閉止板11cを備える。軸線X方向から見た軸受カバー3bの外形は、円の一部(下部)を切り欠いた形状である。そのため、固定カバー7が軸受カバー3bに固定された際、軸受カバー3bの下部に、固定カバーの外部から逃し部7iを介して内部(伝動部)へアクセス可能な開放部分A(図11の平行斜線部を参照)が形成される。その開放部分Aを閉止するように、閉止部材11は固定カバー7の基端側に取り付けられている。すなわち、基板11aは、一対の切込部7jの一方から他方へと延在し、基板11aの上面が軸受カバー3bの下面に接するように配置されている。また、閉止板11cは、基板11aの原動機2側の端部から軸受カバー3bに対向するように下方に延びており、閉止板11cの形状は、固定カバー7と軸受カバー3bとによって軸受カバー3bの下部に形成されている開放部分Aの形状とおおよそ同様である。基板11aのポンプ本体3側の端部は、軸線X方向において固定カバー7のポンプ本体3側の端部におおよそ位置揃えされている。基板11aの原動機2側の端部は、軸線X方向において逃し部7iの原動機2側の端部におおよそ位置揃えされている。一対の固定板11bは、軸線X方向から見て基板11aの両側端部から切込部7jを介して固定カバーの外部へ突出し、固定カバー7の外面に沿って上方に延びている。一対の固定板11bのそれぞれには、固定カバー7の切欠き部7eと重複する位置にボルト穴11dが設けられている。固定板11bのボルト穴11dと固定カバー7の切欠き部7eとにボルト7aを挿入し締結することで、閉止部材11は固定カバー7と共に軸受カバー3bに固定されている。
【0047】
固定カバー7に逃し部7iが設けられていることで、例えば軸継手カバー1が大型化した場合等に、開放部分Aを介した伝動部へのアクセスが容易になり得る。前記の構成によれば、閉止部材11によって開放部分Aが閉止されているため、伝動部へのアクセスを防止することができる。
【0048】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態や変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 軸継手カバー
2 原動機
2a 主軸
3 ポンプ本体
3a 主軸
3b 軸受カバー
4 ポンプ装置
5 軸継手
6 共通ベース
7 固定カバー
7a ボルト
7b ワッシャ
7c 固定カバー本体
7d ボルト穴
7e 切欠き部
7f スリット部
7g フランジ部
7h 貫通穴
7i 逃し部
7j 切込部
8 調整カバー
8a ボルト
8b ワッシャ
8c ナット
8d 調整カバー本体
8e スリット部
8f フランジ部
8g ボルト穴
8H 穴
10 軸受箱用支え
11 閉止部材
11a 基板
11b 固定板
11c 閉止板
11d ボルト穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13