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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】回転角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/30 20060101AFI20240411BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01B7/30 H
G01D5/14 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020190049
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079087
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-075109(JP,A)
【文献】特開2014-144753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137225(US,A1)
【文献】特表2008-514476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/30
G01D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール(101)に連動して回転するステアリングシャフト(102)の第1回転角度を検出する第1検出部(210)と、
前記ステアリングシャフトに減速機構(302)を介して連結されるモータシャフト(301)の第2回転角度を検出する第2検出部(230)と、
前記第1検出部から前記第1回転角度を入力すると共に、前記第2検出部から前記第2回転角度を入力し、前記第1回転角度と前記第2回転角度との差角に基づき、前記ステアリングシャフトの舵角を演算する演算部(250)と、
を含み、
前記第1検出部は、
前記ステアリングシャフトに連動して回転する主動歯車(213)と、
前記主動歯車に噛み合わされると共に、前記主動歯車に連動して回転する従動歯車(214)と、
前記従動歯車に固定されると共に、前記従動歯車と共に回転する磁石(215)と、
前記磁石から受ける磁束の変化に基づいて前記ステアリングシャフトの前記第1回転角度を検出する磁束検出部(216)と、を有し、
前記ステアリングシャフトと前記モータシャフトとの間の前記減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、前記主動歯車と前記従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、前記演算部で取得される前記舵角の角度範囲をθと定義すると、
前記第1減速比Z EPS 、前記第2減速比Z angle 、及び前記舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle )×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle )×θ|<180°
の条件を満たすように設定される、回転角度検出装置。
【請求項2】
ステアリングホイール(101)に連動して回転するステアリングシャフト(102)の第1回転角度を検出する第1検出部(210)と、
前記ステアリングシャフトに減速機構(302)を介して連結されるモータシャフト(301)の第2回転角度を検出する第2検出部(230)と、
前記第1検出部から前記第1回転角度を入力すると共に、前記第2検出部から前記第2回転角度を入力し、前記第1回転角度と前記第2回転角度との差角に基づき、前記ステアリングシャフトの舵角を演算する演算部(250)と、
を含み、
前記第1検出部は、
前記ステアリングシャフトに連動して回転する主動歯車(213)と、
前記主動歯車に噛み合わされると共に、前記主動歯車に連動して回転する従動歯車(214)と、
前記従動歯車に固定されると共に、前記従動歯車と共に回転する磁石(215)と、
前記磁石から受ける磁束の変化に基づいて前記ステアリングシャフトの前記第1回転角度を検出する磁束検出部(216)と、を有し、
前記ステアリングシャフトと前記モータシャフトとの間の前記減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、前記主動歯車と前記従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、前記第2減速比を整数倍する仮想ギヤ比をNと定義し、前記演算部で取得される前記舵角の角度範囲をθと定義すると、
前記第1減速比Z EPS 、前記第2減速比Z angle 、前記仮想ギヤ比N、及び前記舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle ×N)×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle ×N)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される、回転角度検出装置。
【請求項3】
ステアリングホイール(101)に連動して回転するステアリングシャフト(102)の第1回転角度を検出する第1検出部(210)と、
前記ステアリングシャフトに減速機構(302)を介して連結されるモータシャフト(301)の第2回転角度を検出する第2検出部(230)と、
前記第1検出部から前記第1回転角度を入力すると共に、前記第2検出部から前記第2回転角度を入力し、前記第1回転角度と前記第2回転角度との差角に基づき、前記ステアリングシャフトの舵角を演算する演算部(250)と、
を含み、
前記第1検出部は、
前記ステアリングシャフトに連動して回転する主動歯車(213)と、
前記主動歯車に噛み合わされると共に、前記主動歯車に連動して回転する従動歯車(214)と、
前記従動歯車に固定されると共に、前記従動歯車と共に回転する磁石(215)と、
前記磁石から受ける磁束の変化に基づいて前記ステアリングシャフトの前記第1回転角度を検出する磁束検出部(216)と、を有し、
前記磁石は、前記従動歯車が1回転する間に複数の周期の磁束の変化を発生させ、
前記ステアリングシャフトと前記モータシャフトとの間の前記減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、前記主動歯車と前記従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、前記磁石の対極数をP angle と定義し、前記演算部で取得される前記舵角の角度範囲をθと定義すると、
前記第1減速比Z EPS 、前記第2減速比Z angle 、前記対極数P angle 、及び前記舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle ×P angle )×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle ×P angle )×θ|<180°
の条件を満たすよう設定される、回転角度検出装置。
【請求項4】
ステアリングホイール(101)に連動して回転するステアリングシャフト(102)の第1回転角度を検出する第1検出部(210)と、
前記ステアリングシャフトに減速機構(302)を介して連結されるモータシャフト(301)の第2回転角度を検出する第2検出部(230)と、
前記第1検出部から前記第1回転角度を入力すると共に、前記第2検出部から前記第2回転角度を入力し、前記第1回転角度と前記第2回転角度との差角に基づき、前記ステアリングシャフトの舵角を演算する演算部(250)と、
を含み、
前記第1検出部は、
前記ステアリングシャフトに連動して回転する主動歯車(213)と、
前記主動歯車に噛み合わされると共に、前記主動歯車に連動して回転する従動歯車(214)と、
前記従動歯車に固定されると共に、前記従動歯車と共に回転する磁石(215)と、
前記磁石から受ける磁束の変化に基づいて前記ステアリングシャフトの前記第1回転角度を検出する磁束検出部(216)と、を有し、
前記磁石は、前記従動歯車が1回転する間に複数の周期の磁束の変化を発生させ、
前記ステアリングシャフトと前記モータシャフトとの間の前記減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、前記主動歯車と前記従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、前記磁石の対極数をP angle と定義し、前記第2減速比を整数倍する仮想ギヤ比をNと定義し、前記演算部で取得される前記舵角の角度範囲をθと定義すると、
前記第1減速比Z EPS 、前記第2減速比Z angle 、前記対極数P angle 、前記仮想ギヤ比N、及び前記舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle ×P angle ×N)×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle ×P angle ×N)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される、回転角度検出装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第1回転角度の角度周期を整数倍する角度補正部(251)を有する、請求項1ないしのいずれか1つに記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
ステアリングホイール(101)に連動して回転するステアリングシャフト(102)の第1回転角度を検出する第1検出部(210)と、
前記ステアリングシャフトに減速機構(302)を介して連結されるモータシャフト(301)の第2回転角度を検出する第2検出部(230)と、
前記第1検出部から前記第1回転角度を入力すると共に、前記第2検出部から前記第2回転角度を入力し、前記第1回転角度と前記第2回転角度との差角に基づき、前記ステアリングシャフトの舵角を演算する演算部(250)と、
を含み、
前記演算部は、前記第1回転角度の角度周期を整数倍する角度補正部(251)を有する、回転角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のステアリングシャフトの操舵角度を検出する舵角検出装置が、例えば特許文献1で提案されている。舵角検出装置は、バーニヤ演算部、中立周期特定部、及び中立点特定部を備える。
【0003】
バーニヤ演算部は、モータ角度及びステアリングシャフト角度に基づいて基準角度を演算する。中立周期特定部は、推定もしくは測定されたセルフアライニングトルク値を入力する。中立周期特定部は、セルフアライニングトルク値に基づいて基準角度の中立周期を特定する。
【0004】
中立点特定部は、予め記憶されたハンドル中立点の基準角度の値を中立点値として入力する。中立点特定部は、中立点を含む中立周期を特定された角度信号を中立周期特定部から入力する。そして、中立点特定部は、中立点値及び角度信号に基づいて、操舵角度を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/132878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、操舵角度の取得のためにセルフアライニングトルク値が必要である。このため、セルフアライニングトルク値を推定するための複雑な推定手段や、セルフアライニングトルク値を測定するための測定手段が、舵角検出装置に必要になってしまう。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、セルフアライニングトルク値を必要とせずに、舵角演算を簡素化することができる回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1~4、6に記載の発明では、回転角度検出装置は、第1検出部(210)、第2検出部(230)、及び演算部(250)を含む。
【0009】
第1検出部は、ステアリングホイール(101)に連動して回転するステアリングシャフト(102)の第1回転角度を検出する。第2検出部は、ステアリングシャフトに減速機構(302)を介して連結されるモータシャフト(301)の第2回転角度を検出する。
【0010】
演算部は、第1検出部から第1回転角度を入力すると共に、第2検出部から第2回転角度を入力し、第1回転角度と第2回転角度との差角に基づき、ステアリングシャフトの舵角を演算する。
また、請求項1~4に記載の発明では、第1検出部は、ステアリングシャフトに連動して回転する主動歯車(213)と、主動歯車に噛み合わされると共に、主動歯車に連動して回転する従動歯車(214)と、従動歯車に固定されると共に、従動歯車と共に回転する磁石(215)と、磁石から受ける磁束の変化に基づいてステアリングシャフトの第1回転角度を検出する磁束検出部(216)と、を有する。
さらに、請求項1に記載の発明では、ステアリングシャフトとモータシャフトとの間の減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、主動歯車と従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、演算部で取得される舵角の角度範囲をθと定義すると、第1減速比Z EPS 、第2減速比Z angle 、及び舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle )×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle )×θ|<180°
の条件を満たすように設定される。
請求項2に記載の発明では、ステアリングシャフトとモータシャフトとの間の減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、主動歯車と従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、第2減速比を整数倍する仮想ギヤ比をNと定義し、演算部で取得される舵角の角度範囲をθと定義すると、第1減速比Z EPS 、第2減速比Z angle 、仮想ギヤ比N、及び舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle ×N)×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle ×N)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される。
請求項3に記載の発明では、磁石は、従動歯車が1回転する間に複数の周期の磁束の変化を発生させる。ステアリングシャフトとモータシャフトとの間の減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、主動歯車と従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、磁石の対極数をP angle と定義し、演算部で取得される舵角の角度範囲をθと定義すると、第1減速比Z EPS 、第2減速比Z angle 、対極数P angle 、及び舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle ×P angle )×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle ×P angle )×θ|<180°
の条件を満たすよう設定される。
請求項4に記載の発明では、磁石は、従動歯車が1回転する間に複数の周期の磁束の変化を発生させる。ステアリングシャフトとモータシャフトとの間の減速機構の第1減速比をZ EPS と定義し、主動歯車と従動歯車との間の第2減速比をZ angle と定義し、磁石の対極数をP angle と定義し、第2減速比を整数倍する仮想ギヤ比をNと定義し、演算部で取得される舵角の角度範囲をθと定義すると、第1減速比Z EPS 、第2減速比Z angle 、対極数P angle 、仮想ギヤ比N、及び舵角の角度範囲θは、
|(Z EPS -Z angle ×P angle ×N)×θ|<360°
または、
|(Z EPS -Z angle ×P angle ×N)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される。
請求項6に記載の発明では、演算部は、第1回転角度の角度周期を整数倍する角度補正部(251)を有する。
【0011】
これによると、ステアリングシャフトの第1回転角度とモータシャフトの第2回転角度との差角に基づいてステアリングシャフトの舵角を演算する構成である。したがって、セルフアライニングトルク値を必要とせずに、ステアリングシャフトの舵角演算を簡素化することができる。
【0012】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るステアリングシステムを示した図である。
図2】舵角センサの分解斜視図である。
図3】モータ及びモータ制御装置を示した断面図である。
図4】舵角センサの出力及び回転角センサの出力を示した図である。
図5】第1回転角度と第2回転角度との差角と舵角との関係を示した図である。
図6】第2実施形態において、舵角センサの出力と回転角センサの出力とが大きく異なる場合の舵角を示した図である。
図7図6に示された各回転角度の差角と舵角との関係を示した図である。
図8】第2実施形態に係る舵角センサの磁石の斜視図である。
図9】第3実施形態に係る演算部を示した図である。
図10】舵角センサの出力を5倍した内容を示した図である。
図11】演算部の角度補正処理の内容を示したフローチャートである。
図12】角度補正処理によって整数倍された角度波形を示した図である。
図13】拡大された舵角検出範囲と差角との関係を示した図である。
図14】第3実施形態に係るトルクセンサの分解斜視図である。
図15】第3実施形態に係るトルクセンサの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。図1に示されるように、ステアリングシステム100は、ステアリングホイール101、ステアリングシャフト102、ピニオンギヤ103、ラック軸104、車輪105、回転角度検出装置200、及び電動パワーステアリング装置300を備える。
【0016】
ステアリングホイール101は、運転者によって操作される操舵部材である。ステアリングシャフト102は、ステアリングホイール101に連動して回転軸を中心に回転する。ピニオンギヤ103は、ステアリングシャフト102の回転をラック軸104の動きに変換する。車輪105は、ラック軸104に接続される。
【0017】
回転角度検出装置200は、ステアリングシャフト102の舵角を推定する装置である。図1図3に示されるように、回転角度検出装置200は、舵角センサ210、回転角センサ230、及び演算部250を有する。
【0018】
電動パワーステアリング装置300は、運転者がステアリングホイール101を軽い力で操作することを可能にする操舵装置である。図1に示されるように、電動パワーステアリング装置300は、指令に従ってモータシャフト301を回転させる。これにより、電動パワーステアリング装置300は、減速機構302を介してステアリングシャフト102にトルクを与える。減速機構302は、モータシャフト301の回転をステアリングシャフト102に機械的に伝える減速ギヤである。
【0019】
回転角度検出装置200の舵角センサ210は、ステアリングシャフト102の第1回転角度を検出する。第1回転角度は、0°~360°の絶対角度である。図2に示されるように、舵角センサ210は、筐体211、212、主動歯車213、従動歯車214、磁石215、磁束検出部216、基板217、及びコネクタ218を有する。
【0020】
筐体211、212は、互いに組み合わされることで、主動歯車213等の各部品を収容する。筐体211、212は、ステアリングシャフト102に通されると共に、ステアリングシャフト102に対して位置が固定される。
【0021】
主動歯車213は、ステアリングシャフト102に固定されると共に、ステアリングシャフト102に連動して回転する。従動歯車214は、主動歯車213に噛み合わされると共に、主動歯車213に連動して回転する。従動歯車214は、筐体212の窪みに配置される。
【0022】
磁石215は、ステアリングシャフト102の径方向に着磁された一対のN極及びS極からなる2極磁石である。磁石215は、従動歯車214に固定されると共に、従動歯車214と共に回転する。磁束検出部216は、磁石215から受ける磁束の変化に基づいてステアリングシャフト102の第1回転角度を検出する。
【0023】
磁束検出部216は、ホール素子や磁気抵抗素子を含むモールド体として構成される。磁束検出部216は、基板217に実装される。磁気式の検出方式は、ポテンショメータやロータリエンコーダ等の角度検出手段と比較して、コスト、体格、耐久性等の量産面で優れる。
【0024】
基板217は、例えばプリント基板である。コネクタ218は、磁束検出部216の検出結果を演算部250に出力するための配線に接続される。
【0025】
回転角センサ230は、電動パワーステアリング装置300に収容される。回転角センサ230は、モータシャフト301の第2回転角度を検出する。第2回転角度は、0°~360°の絶対角度である。回転角センサ230は、上述の磁気式、あるいはレゾルバ等の回転角センサとして構成される。
【0026】
演算部250は、舵角センサ210から第1回転角度の情報を入力すると共に、電動パワーステアリング装置300内の回転角センサ230から第2回転角度の情報を入力する。演算部250は、第1回転角度と第2回転角度との差角に基づき、ステアリングシャフト102の舵角を演算する。演算部250は、舵角センサ210や電動パワーステアリング装置300に収容される。あるいは、演算部250は、単独で車両に搭載される。
【0027】
図1図3に示されるように、電動パワーステアリング装置300は、減速機構302の他に、トルクセンサ310、モータ330、及びモータ制御装置350を有する。トルクセンサ310は、運転者がステアリングホイール101を操作することにより入力される操舵トルクを検出する。トルクセンサ310は、ステアリングシャフト102に設けられる。
【0028】
モータ330は、ブラシレスタイプのEPSモータ(Electric Power Steering)として構成される。図3に示されるように、モータ330は、筐体331、モータシャフト301、ロータ332、磁石333、ステータ334、及び巻線335を有する。
【0029】
モータシャフト301は、回転軸を中心に回転可能に筐体331に設けられる。モータシャフト301は、筐体331に設けられた軸受に支持される。モータシャフト301は、減速機構302に連結される。ロータ332は、モータシャフト301に固定される。磁石333は、ロータ332に設けられる。ステータ334は、筐体331に固定されると共に、巻線335が巻かれている。
【0030】
モータ制御装置350は、モータ330の筐体331に収容される。モータ制御装置350は、基板351を有する。基板351には、モータ330を制御するための図示しない電子部品が実装されている。モータ制御装置350は、回転角センサ230によって検出される第2回転角度に基づき、モータ330を制御する。
【0031】
回転角センサ230は、磁石231及び磁束検出部232を有する。磁石231は、モータシャフト301の端面に固定される。磁石231は、モータシャフト301の径方向に着磁された一対のN極及びS極からなる2極磁石である。磁束検出部232は、磁石231に対向するように基板351に実装される。回転角センサ230は、回転角度検出装置200と電動パワーステアリング装置300との両方で用いられる。
【0032】
次に、ステアリングシャフト102の舵角の検出原理について説明する。舵角センサ210は、ステアリングシャフト102の第1回転角度を検出する。回転角センサ230は、モータシャフト301の第2回転角度を検出する。
【0033】
図4に示されるように、ステアリングシャフト102が1回転する間において、舵角センサ210の出力である第1回転角度と回転角センサ230の出力である第2回転角度とは異なる。そして、演算部250は、バーニヤ演算を行う。すなわち、演算部250は、第1回転角度と第2回転角度との差角を演算する。これにより、図5に示されるように、差角に対する舵角が得られる。したがって、演算部250は、第1回転角度と第2回転角度との差角から舵角を推定することができる。
【0034】
ここで、任意の舵角範囲において舵角を一意に特定するためには、任意の舵角範囲における差角を舵角センサ210や磁束検出部232によって検出可能な角度よりも小さい角度になるようにすれば良い。
【0035】
具体的には、ステアリングシャフト102とモータシャフト301との間の減速機構302の第1減速比をZEPSと定義する。主動歯車213と従動歯車214との間の第2減速比をZangleと定義する。減速比は、ギヤ比である。
【0036】
また、演算部250で取得される舵角の角度範囲をθと定義する。例えば、ステアリングホイール101が-500°から+500°まで回転する場合、舵角の角度範囲θは1000°である。舵角の角度範囲θは、2000°に設定されても良い。
【0037】
そして、第1減速比ZEPS、第2減速比Zangle、及び舵角の角度範囲θは、
|(ZEPS-Zangle)×θ|<360°
または、
|(ZEPS-Zangle)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される。これにより、演算部250はバーニヤ演算によって容易に舵角を一意に特定することができる。
【0038】
条件が360°または180°に分けられているのは、磁束検出部216、232に採用される検出素子に依存するためである。磁束検出部216、232の検出素子として、例えばGMR(Giant Magneto Resistance)やTMR(Tunneling Magneto Resistance)が採用される場合、360°未満の条件が適用される。磁束検出部216、232の検出素子として、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)が採用される場合、180°未満の条件が適用される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、ステアリングシャフト102の第1回転角度とモータシャフト301の第2回転角度との差角に基づいてステアリングシャフト102の舵角を演算する。このため、セルフアライニングトルク値は不要である。もちろん、セルフアライニングトルク値を推定するための複雑な推定手段や、セルフアライニングトルク値を測定するための測定手段も、不要となる。したがって、ステアリングシャフト102の舵角演算を簡素化することができる。
【0040】
また、舵角センサ210は、主動歯車213、従動歯車214、磁石215、及び磁束検出部216を備えた構成とすることができる。よって、舵角センサ210及び回転角度検出装置200の大幅な低コスト化及び小型化が可能となる。
【0041】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、舵角センサ210が特許請求の範囲の「第1検出部」に対応し、回転角センサ230が特許請求の範囲の「第2検出部」に対応する。
【0042】
(第2実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。一般的には、減速機構302の第1減速比ZEPSは、車種によって異なるが、13~20:1程度である。これに対し、舵角センサ210の体格の制約上、主動歯車213と従動歯車214との第2減速比Zangleは2~4:1程度が現実的な値である。したがって、舵角センサ210に2極の磁石215が採用される場合、電動パワーステアリング装置300のギヤ比と舵角センサ210のギヤ比との差が大きくなる。このため、充分な舵角検出範囲を確保できない可能性がある。
【0043】
例えば、電動パワーステアリング装置300の減速機構302の第1減速比ZEPSを18.5とする。また、主動歯車213と従動歯車214との第2減速比Zangleを78:21=3.71とする。この場合、図6に示されるように、ステアリングシャフト102が1回転する間において、ステアリングシャフト102の第1回転角度とモータシャフト301の第2回転角度とが大きく異なる。そして、図7に示されるように、バーニヤ演算によって舵角を演算する場合、舵角が一意に決まるのは0°~約25°の範囲に限定される。
【0044】
そこで、本実施形態では、図8に示されるように、舵角センサ210の磁石215は、多極磁石として構成される。これにより、磁石215は、従動歯車214が1回転する間に複数の周期の磁束の変化を発生させる。磁束検出部216は、磁石215の側面に対向配置される。
【0045】
また、任意の舵角範囲において舵角を一意に特定するため、磁石215の対極数をPangleと定義する。対極数とは、N極とS極の対の数である。図8に示された磁石215は、磁極の対が3であるので、対極数は3である。対極数は少なくとも2以上であれば良い。
【0046】
したがって、第1減速比ZEPS、第2減速比Zangle、対極数Pangle、及び舵角の角度範囲θは、
|(ZEPS-Zangle×Pangle)×θ|<360°
または、
|(ZEPS-Zangle×Pangle)×θ|<180°
の条件を満たすよう設定される。
【0047】
以上の条件を満たすことにより、(ZEPS-Zangle×Pangle)の値を小さくすることができる。すなわち、ステアリングシャフト102の回転周期とモータシャフト301の回転周期との差を小さくすることができる。したがって、充分な舵角検出範囲を確保することができる。
【0048】
(第3実施形態)
本実施形態では、主に第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。近年、ステアリングシャフト102の舵角検出範囲は拡大傾向にある。一般的な車両では、ステアリングホイール101の回転数は3回転程度である。しかし、6回転以上を検出したいというニーズもある。第2実施形態では、磁石215を多極化することによって舵角の検出可能な範囲を拡大したが、磁石215の磁極数を増やすにも物理的な限界がある。
【0049】
そこで、本実施形態では、ソフトウェアの演算によって、体格の制約下において、舵角の検出範囲を拡大する。具体的には、図9に示されるように、演算部250は、角度補正部251を有する。角度補正部251は、第1回転角度の角度周期を整数倍する。このように、舵角センサ210の出力を整数倍することで、仮想的にギヤ比を高めることができる。
【0050】
例えば、主動歯車213と従動歯車214との間の第2減速比Zangleは約3.71とすると、ステアリングホイール101の1回転中に3.71周期の変化を伴う。これに対し、整数倍として、例えば周期を5倍する。このように、主動歯車213と従動歯車214との間の第2減速比Zangleを整数倍する仮想ギヤ比をNと定義する。
【0051】
したがって、第1減速比ZEPS、第2減速比Zangle、仮想ギヤ比N、及び舵角の角度範囲θは、
|(ZEPS-Zangle×N)×θ|<360°
または、
|(ZEPS-Zangle×N)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される。
【0052】
仮想ギヤ比Nを5倍とした場合、舵角センサ210の出力は、5倍される。これにより、図10に示されるように、舵角センサ210の出力は、ギヤ比が18.55に相当する角度波形に補正される。
【0053】
具体的には、図11に示されるように、角度補正処理が行われる。角度補正処理は、演算部250が実行する。また、仮想ギヤ比Nを3倍とする。
【0054】
まず、ステップS261では、仮想ギヤ比Nが定義される。例えばN=3とする。続いて、ステップS262では、閾値θth=0°に設定される。ステップS263では、舵角センサ210の出力である第1回転角度が取得される。例えば、第1回転角度は、θ=125°とする。
【0055】
続いて、ステップS264では、第1回転角度がθth≦θ<θth+(360°/N)の条件を満たすか否かが判定される。N=3、θth=0°であるので、0°<θ<120°の条件を満たすか否かが判定される。θ=125°であるので、ステップS264の条件を満たさない。したがって、ステップS265に進む。
【0056】
ステップS265では、閾値θthが閾値θth=θth+(360°/N)に再設定される。N=3、θth=0°であるので、θth=0°+(360°/3)=120°となる。この後、ステップS264に戻る。
【0057】
ステップS264では、再設定された閾値θthに従って条件を満たすか否かが判定される。閾値はθth=120°に再設定されたので、θ=125°は120°<θ<240°の条件を満たす。よって、ステップS266に進む。なお、ステップS264の条件を満たさない場合、ステップS265とステップS264とを繰り返す。
【0058】
ステップS266では、θ=θ-θthが取得される。θ=125°、閾値θth=120°であるので、θ=5°となる。ステップS267では、θ=N×θが取得される。N=3、θ=5°であるので、θ=15°となる。つまり、125°の第1回転角度が15°に補正されたことになる。こうして、角度補正処理が終了する。これにより、図12に示されるように、舵角センサ210の125°の第1回転角度は、回転角度を3倍した角度波形に補正される。
【0059】
以上の角度補正処理により、舵角センサ210の主動歯車213と従動歯車214とのギヤ比を仮想的に高めることができるので、(ZEPS-Zangle×N)の値が小さくなる。このため、図13に示されるように、舵角検出範囲を2000°以上に拡大することができる。仮想ギヤ比Nは、舵角検出範囲に応じて整数の範囲で適宜設定すれば良い。
【0060】
変形例として、磁石215を多極化しても良い。この場合、第1減速比ZEPS、第2減速比Zangle、対極数Pangle、仮想ギヤ比N、及び舵角の角度範囲θは、
|(ZEPS-Zangle×Pangle×N)×θ|<360°
または、
|(ZEPS-Zangle×Pangle×N)×θ|<180°
の条件を満たすように設定される。
【0061】
(第4実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、ステアリングシャフト102の回転トルクを検出するトルクセンサ310を利用して第1回転角度を検出する。
【0062】
図14及び図15に示されるように、トルクセンサ310は、磁石311、ヨーク312、313、トーションバー314、及び基板315を有する。磁石311は、円筒状である。磁石311は、例えば16極や24極の多極磁石である。磁石311は、ステアリングシャフト102と共に回転する。
【0063】
各ヨーク312、313は、磁路を構成するための磁性体の部品である。各ヨーク312、313は、複数の突起が円筒部に設けられている。各ヨーク312、313は、円筒部の中空部に磁石311が通されると共に、各突起が噛み合うように組み合わされる。
【0064】
トーションバー314は、ステアリングシャフト102の回転に伴ってねじれが発生する部品である。トーションバー314は、磁石311の中空部に通されると共に、両端部がステアリングシャフト102に固定される。
【0065】
基板315は、磁束検出部216等の電子部品が実装される。磁束検出部216は、磁石311の側面に対向配置される。磁束検出部216は、磁石311から受ける磁束の変化として、トーションバー314のねじれに応じて変化する各ヨーク312、313の磁気バランスを検出する。これにより、磁束検出部216は、ステアリングシャフト102の第1回転角度を取得する。なお、磁気バランスを検出するための専用の素子が基板315に実装されていても良い。
【0066】
演算部250は、トルクセンサ310を構成する磁束検出部216の第1回転角度と回転角センサ230の第2回転角度との差角に基づいて、ステアリングシャフト102の舵角を演算する。
【0067】
以上の構成によると、トルクセンサ310の磁石311を利用してステアリングシャフト102の回転角度を検出することができるので、舵角センサ210として主動歯車213等の部品が不要になる。このため、舵角センサ210の大幅な小型化と低コスト化が期待できる。ステアリングシャフト102の角度検出のために歯車部品を使用しないので、角度検出精度の向上が期待できる。
【0068】
また、トルクセンサ310の磁石311が多極磁石であることから、上述のように、舵角検出範囲を拡大することができる。もちろん、第3実施形態と同様に仮想ギヤ比Nを考慮することによって舵角検出可能な範囲を拡大することも可能である。
【0069】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された回転角度検出装置200の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記各実施形態で示された舵角の検出方法は一例である。差角と舵角とを一対一で対応させるのではなく、差角から主動歯車213、従動歯車214、あるいはモータ330が何回転したかを演算し、回転数をもとに演算した絶対角から舵角を演算する方法を採用しても良い。
【0070】
また、第1減速比ZEPS、第2減速比Zangle、舵角の角度範囲θ、対極数Pangle、仮想ギヤ比N等の各数値は一例である。もちろん、他の数値が採用されても構わない。
【符号の説明】
【0071】
101 ステアリングホイール
102 ステアリングシャフト
210 舵角センサ(第1検出部)
230 回転角センサ(第2検出部)
250 演算部
301 モータシャフト
302 減速機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15