(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】二次電池の充電制御回路
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20240411BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240411BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240411BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240411BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240411BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240411BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240411BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20240411BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240411BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240411BHJP
B60L 3/00 20190101ALN20240411BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20240411BHJP
B60L 58/26 20190101ALN20240411BHJP
B60L 58/27 20190101ALN20240411BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/643
H02J7/00 Y
H02J7/10 L
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/26
B60L58/27
(21)【出願番号】P 2020552176
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2019058757
(87)【国際公開番号】W WO2020084386
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018200636
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018200638
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】上妻 宗広
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】三上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-086774(JP,A)
【文献】特開2010-124688(JP,A)
【文献】特開2018-142544(JP,A)
【文献】特開2018-151443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H01M 10/48
H01M 10/44
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/651
H01M 10/625
H01M 10/643
H02J 7/00
H02J 7/10
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 58/26
B60L 58/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサからのアナログ信号を入力し、パルス信号を生成する第1の温度比較回路及び第2の温度比較回路と、
前記第1の温度比較回路で設定した2つの温度範囲内で動作する前記二次電池の加熱装置と、
前記第2の温度比較回路で設定した2つの温度範囲内で動作する前記二次電池の冷却装置と、
記憶手段と、を有し、
前記第1の温度比較回路は、2つの閾値を持つコンパレータを有し、
前記記憶手段は半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタと、
容量素子と、第1の配線と、第2の配線と、第3の配線と、を有し、
前記トランジスタは第1のゲートと第2のゲートと、を有し、
前記トランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記第1の配線と電気的に接続し、
前記トランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記容量素子の電極の一方と電気的に接続し、
前記トランジスタの第1のゲートは、前記第2の配線と電気的に接続し、
前記トランジスタの第2のゲートは、前記第3の配線と電気的に接続し、
前記記憶手段はアナログ信号を保持する機能を有する、二次電池の充電制御回路。
【請求項2】
二次電池の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサからのアナログ信号を入力し、パルス信号を生成する第1の温度比較回路及び第2の温度比較回路と、
前記第1の温度比較回路で設定した2つの温度範囲内で動作する前記二次電池の加熱装置と、
前記第2の温度比較回路で設定した2つの温度範囲内で動作する前記二次電池の冷却装置と、
記憶手段と、を有し、
前記第1の温度比較回路は、2つの閾値を持つコンパレータを有し、
前記記憶手段は半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタと、容量素子と、第1の配線と、第2の配線と、第3の配線と、を有し、
前記トランジスタは第1のゲートと第2のゲートと、を有し、
前記トランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記第1の配線と電気的に接続し、
前記トランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記容量素子の電極の一方と電気的に接続し、
前記トランジスタの第1のゲートは、前記第2の配線と電気的に接続し、
前記トランジスタの第2のゲートは、前記第1のゲートと電気的に接続し、
前記記憶手段はアナログ信号を保持する機能を有する、二次電池の充電制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器、またはそれらの製造方法に関する。本発明の一態様は、車両、または車両に設けられる車両用電子機器に関する。特に、二次電池の充電制御回路、二次電池の充電制御方法、二次電池の異常検知システム、及び二次電池を有する電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの二次電池、リチウムイオンキャパシタ、全固体電池、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0004】
携帯情報端末や電気自動車などにおいては、複数の二次電池を直列接続または並列接続して保護回路を設け、電池パック(組電池ともよぶ)として使用される。電池パックとは、二次電池の取り扱いを容易にするため、複数個の二次電池を、所定の回路と共に容器(金属缶、フィルム外装体)内部に収納したものを指す。電池パックは、動作状態を管理するために、ECU(Electronic Control Unit)が設けられる。
【0005】
また、電気自動車は電動モータのみを駆動部とする車両であるが、エンジンなどの内燃機関と電動モータの両方を備えたハイブリッド自動車もある。自動車に用いられる二次電池も複数個を一つの電池パックとして、複数セットの電池パックが自動車の下部に配置されている。
【0006】
また、電気自動車やハイブリッド自動車に用いる二次電池は、充電回数、放電深度、充電電流、充電する環境(環境温度変化)などによって劣化が生じる。使用者の使い方にも依存し、充電時の環境温度や、急速充電する頻度や、回生ブレーキによる充電量や、回生ブレーキによる充電タイミングなども劣化に関係する可能性がある。
【0007】
特許文献1にはセンサにより二次電池の電池残量、電圧、電流、温度などの状態を測定できる記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電気自動車は動作状態や環境に依存して温度変化が起きやすいため、温度に対する安全対策が必要になる。電気自動車の搭載部品の中でも二次電池は電気自動車の動力源で最重要な機能を果たす。一方で、リチウムを用いる二次電池が正常に動作できる温度範囲(マイナス20℃以上60℃以下)は電気自動車の使用される環境温度(マイナス50℃以上100℃以下)に対して許容範囲が狭いという問題がある。
【0010】
環境温度が正常範囲から外れてしまうと、二次電池の充放電性能や寿命に大きな影響を及ぼす可能性があるため、できる限り一定の環境温度下で使用されることが望まれる。周辺環境の問題だけではなく、二次電池は充放電によって大量の電流が流れることでも二次電池自身の温度が上昇する。
【0011】
二次電池は環境温度が高い状態で内部の化学反応が起きると劣化が進みやすい問題がある。また、環境温度がマイナス50℃にもなる極寒地では二次電池内の液体成分が凍結することで放電が起こせず、二次電池としての機能を失ってしまう問題がある。
【0012】
極寒地でなくとも、電気自動車の使用される環境温度が低温であれば、リチウムイオン二次電池は、容量が低下し、温度が低いほど内部抵抗が上がり、出力電圧が下がってしまう。また、環境温度が低温時に充電を行うとリチウム金属の電析が生じて急激な劣化を招く恐れがある。
【0013】
そこで、二次電池の異常検知システムによって、二次電池の異常を検知し、例えば二次電池の安全性を低下させる現象を早期に検知し、使用者に警告、または二次電池の使用を停止することにより、安全性を確保することを課題の一つとしている。
【0014】
二次電池を搭載した電気自動車は、二次電池の残量の情報に基づき、走行の可能な距離を運転者(または搭乗者)が知りえて、走行の可能な距離の推定を正確にリアルタイムに行うことが要求されている。また、数少ないが、二次電池の機能停止に繋がる二次電池の異常が急に生じることがあり、従来ではその異常を予見することが困難であった。本発明の一態様は、電気自動車の二次電池の残量や内部抵抗を算出し、異常特性を示す二次電池の警告、または使用停止、または二次電池の交換、または充電条件の変更を行う二次電池の制御システムを提供する。
【0015】
本発明の一態様は、新規な電池管理回路、蓄電装置、及び電子機器等を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
二次電池の温度が正常動作可能な温度範囲内であるか、温度センサで取得した温度情報に基づき、二次電池の異常検知システムが検知し、ユーザーに報告する。もし二次電池の温度が高温になった場合、二次電池の異常検知システムの制御信号によって冷却装置を駆動する。もし二次電池の温度が高温になった場合、警告音を発して電気自動車のシステム異常が発生する危険が迫っていることをユーザーに知らせる。また、二次電池の温度が低温になる場合、さらに温度が下がって凍結してしまう前に加熱装置を駆動し、二次電池の温度を上昇させる。
【0017】
上記二次電池の異常検知システムは、少なくとも記憶手段を有し、記憶手段はアナログ信号を保持する機能を有し、酸化物半導体を半導体層とするトランジスタを含む。酸化物半導体を半導体層とするトランジスタを用いることで低消費電力を実現した異常検知システムとすることができる。
【0018】
本明細書で開示する二次電池の充電制御回路は、二次電池の温度を検出する温度センサと、温度センサからのアナログ信号を入力し、パルス信号を生成する第1及び第2の温度比較回路と、第1の温度比較回路で設定した2つの温度範囲内で動作する二次電池の加熱装置と、第2の温度比較回路で設定した2つの温度範囲内で動作する二次電池の冷却装置とを有する。
【0019】
上記構成において、第1の温度比較回路または第2の温度比較回路は、2つの閾値を持つコンパレータを含む。
【0020】
上記構成において、二次電池の充電制御回路は、二次電池の充電の電流を遮断するスイッチのオンオフを制御する。
【0021】
上記構成において、二次電池の充電制御回路は、少なくとも記憶手段を有し、記憶手段はアナログ信号を保持する機能を有し、酸化物半導体を半導体層とするトランジスタを含む。
【0022】
また、他の発明の構成として、本明細書で開示する二次電池の充電制御回路は、二次電池の温度を検出する温度センサと、温度センサからのアナログ信号を入力し、パルス信号を生成する温度比較回路と、温度比較回路で設定した温度範囲内で動作する音響装置と、記憶手段を有し、温度比較回路は、2つの閾値を持つコンパレータを含み、記憶手段はアナログ信号を保持する機能を有し、酸化物半導体を半導体層とするトランジスタを含む。
【0023】
上記各構成において、二次電池の充電制御回路は、プリント基板上に設けられる二次電池の充電制御回路である。
【0024】
また、開示する二次電池の異常検知システムの構成は、二次電池の温度調節装置がある温度範囲内のみで駆動するように充電制御回路で設定するステップと、二次電池の充電の電流を遮断するスイッチをオフとして二次電池の充電を行うステップと、二次電池の温度を温度センサで検出するステップと、二次電池の温度が設定した温度範囲の上限に達した時、二次電池の充電の電流を遮断するスイッチをオンとして充電を停止するステップと、二次電池の温度が設定した温度範囲内、即ち上限の温度未満となるように温度調節装置を駆動させて二次電池の温度を低下させるステップと、を有する。
【0025】
また、開示する二次電池の異常検知システムの構成は、二次電池の温度調節装置がある温度範囲内のみで駆動するように充電制御回路で設定するステップと、二次電池の温度を温度センサで検出するステップと、二次電池の温度が設定した温度範囲外(下限温度以下の温度または上限温度以上)となると音響装置が起動して警報を発するステップとを有する。
【0026】
上記構成において、警報を発する温度範囲は、45℃以上60℃以下、またはマイナス50℃以上10℃以下である。
【0027】
上記温度範囲は、電気自動車などの外気温ではなく、二次電池の外装体周辺の温度を指している。外装体(ラミネートフィルムや、封止缶を含む)は放熱性のよい材料で構成されることが多く、外装体の厚さが1mm以下と薄い場合には外装体表面の温度が二次電池内部の温度とほぼ同じとみなせる。また、二次電池の内部構成、リード線配置、封止方法によっては温度が局所的に上昇しやすい箇所も生じる恐れがある。二次電池の温度センサは、温度上昇しやすい箇所に設けることが好ましい。
【0028】
また、開示する二次電池の異常検知システムの他の構成は、二次電池の温度調節装置がある温度範囲内のみで駆動するように充電制御回路で設定するステップと、二次電池の充電の電流を遮断するスイッチをオフとして二次電池の充電を行うステップと、二次電池の温度を温度センサで検出するステップと、二次電池の温度が設定した温度範囲の下限に達した時、二次電池の充電の電流を遮断するスイッチをオンとして充電を停止するステップと、二次電池の温度が設定した温度範囲内、下限温度より高い温度となるように温度調節装置を駆動させて二次電池の温度を上昇させるステップとを有する。
【発明の効果】
【0029】
本明細書で開示する二次電池の異常検知システムにより、二次電池の異常を検知し、例えば二次電池の安全性を低下させる現象を予見し、使用者に警告、または二次電池の動作条件を変更することにより、安全性を確保する。
【0030】
また、本明細書で開示する二次電池の異常検知システムにより、二次電池の温度異常を検知し、ユーザーに注意を促すために警告することで、深刻な事態を回避することができるようになる。
【0031】
本明細書で開示する二次電池の異常検知システムにより、電気自動車の使用される環境において正常に動作できる温度範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
温度制御する二次電池(以下バッテリとも呼ぶ)の異常検知システムBTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)(BMS:バッテリーマネージメントシステム)の全体ブロック図を
図1に示す。
【0035】
図1において、車両140は、電気自動車の異常検知システムの他の部分を示しており、充電制御回路以外の制御回路や空調設備などを含む。
【0036】
異常検知システム110は、充電制御回路や、記憶手段を少なくとも有している。
【0037】
第1のバッテリ121は温度センサ122で温度を測定され、異常検知システム110で温度管理される。充電中において、温度が高くなり許容範囲を超えそうであれば、異常検知システム110から電流遮断スイッチ123に制御信号が入力され、充電を停止する。また、温度が高くなり許容範囲を超えそうであれば、異常検知システム110から冷却装置131に指示信号が入力され、第1のバッテリ121の温度を低下させる。また、温度が低くなり許容範囲を下回りそうであれば、異常検知システム110から加熱装置132に指示信号が入力され、第1のバッテリ121の温度を上昇させる。二次電池の温度制御装置130は、冷却装置131及び加熱装置132を含む。
【0038】
なお、異常検知システム110は、具体的にはプリント基板などに設けられた複数のIC(CPUなど)などの集合体を示す。
【0039】
異常検知システム110は、第1のバッテリの温度管理をアナログ信号処理またはデジタル信号処理で行う。
【0040】
温度検出をアナログ信号で処理する場合、
図2Aに示すように温度検出回路111は温度センサの出力信号(温度情報)をアナログ信号のままバッテリの温度状態を検出することができる。バッテリの温度データは、温度センサから(From温度センサ)アナログデータで異常検知システム110に入力され、デジタル信号の温度制御信号として温度制御装置に(To温度制御装置)出力される。
【0041】
温度センサ122は、例えば
図6Cに示す記憶素子430を含む回路による温度検出が利用できる。酸化物半導体は、温度が上昇すると抵抗値が小さくなる性質を有する。この性質を利用して、環境温度を電位に変換することができる。
図6Cに示す記憶素子430を用いる場合、始めにトランジスタM1をオン状態にして配線BLに0Vを供給し、ノードNDに0Vを書き込む。次に、配線BLにVDDを供給し、一定時間後にトランジスタM1をオフ状態にする。酸化物半導体は、温度によって抵抗値が変化する。よって、測定時の環境温度に対応した電位(「環境温度情報」ともいう。)がノードNDに保持される。また、環境温度が高いほど、ノードNDに保持される電位が高くなる。
【0042】
このように、記憶素子430は温度センサとして機能できる。
【0043】
また、温度センサ122は、記憶素子430を用いなくとも、温度に依存した特性を示すサーミスタを用いることができる。サーミスタとしてはNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタなどを用いることができる。
【0044】
保護回路112に入力されるバッテリ電圧はアナログ電位で供給され、例えばコンパレータを用いて過充電、過放電、過充電電流、過放電電流、などの異常動作を監視する。もし異常を検出した場合、スイッチ制御信号は電源遮断スイッチをオフ(非導通)にするための論理となる。
【0045】
また、温度検出をデジタル信号で処理する場合、
図2Bに示すようにADC113はバッテリ温度(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、出力する。温度検出演算回路114は温度制御装置130を動作させるための制御信号を、入力されたデジタル信号を演算(判別、検知)することで生成、出力する。例えば、温度制御信号として、温度制御装置のON/OFF制御を細かく実施することを目的としたパルス信号を生成することで、バッテリ温度を微調整することや、間欠的に制御することができる。温度検出演算回路114には例えばマイコンが利用できる。なお、マイコンとは、演算などのアルゴリズムを実行できるプログラムをマイクロコンピュータもしくはマイクロプロセッサに移植したものを指している。
【0046】
例えば温度検出111は、
図3に示すようなヒステリシスコンパレータを用いることでON/OFF制御のためのパルス信号を生成できる。ヒステリシスコンパレータは電位の比較に2つの閾値を持つ。高温設定(高)、高温設定(低)、低温設定(高)、低温設定(低)のそれぞれの電位は、温度に対応する電位を外部から供給してもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタと容量素子で構成されたメモリ回路にそれぞれの電位を保持して、外部から常時供給しない構成としてもよい。このメモリ回路の構成例は、
図6に示している。また、このメモリ回路を含む回路、又は上記異常検知システム110を、BTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)またはBMS(バッテリーマネージメントシステム)と呼称する場合がある。
【0047】
温度制御の動作としては、バッテリ温度の電位が低温設定(低)を下回るとヒステリシスコンパレータの出力である温度制御信号(加熱)がON信号として出力される。その後、加熱されることによってバッテリ温度の電位が低温設定(高)を上回るとヒステリシスコンパレータの出力である温度制御信号(加熱)がOFF信号として出力される。
【0048】
具体的には、例えば、低温設定(低)を温度0℃で設定し、加熱をON、低温設定(高)を温度5℃で設定し、加熱をOFFにするように閾値を設けることで、常時動作し続けるのではなく、必要時のみの温度制御動作に留めることができるため、省電力に駆動できる。
【0049】
本明細書で開示するバッテリの異常検知システムにより、電気自動車の使用される環境に対して正常に動作できる温度範囲を広くすることができる。環境温度が変化してもバッテリの異常検知システムによりバッテリの温度を調節することで正常に電気自動車を駆動させることができる。
【0050】
(実施の形態2)
本実施の形態では、
図4Aを用いて電気自動車(EV)に適用する例を示す。
【0051】
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ121と、モータ204を始動させるインバータ212に電力を供給する第2のバッテリ211が設置されている。本実施の形態では、バッテリーコントローラ202が温度センサ122、電流遮断スイッチ123、及び第1のバッテリ121を少なくとも含むバッテリーモジュール120を監視する。バッテリーモジュール120は電池パックとも呼ぶ場合がある。
【0052】
第1のバッテリ121は、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ211は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ211は鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。鉛蓄電池はリチウムイオン二次電池と比べて自己放電が大きく、サルフェーションとよばれる現象により劣化しやすい欠点がある。第2のバッテリ211をリチウムイオン二次電池とすることでメンテナンスフリーとするメリットがあるが、長期間の使用、例えば3年以上となると、製造時には判別できない異常発生が生じる恐れがある。特にインバータを起動する第2のバッテリ211が動作不能となると、第1のバッテリ121に残容量があってもモータを起動させることができなくなることを防ぐため、第2のバッテリ211が鉛蓄電池の場合は、第1のバッテリから第2のバッテリに電力を供給し、常に満充電状態を維持するように充電されている。
【0053】
本実施の形態では、第1のバッテリ121にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ211は鉛蓄電池や全固体電池を用いる。
【0054】
円筒型の二次電池の例について
図12A及び
図12Bを参照して説明する。円筒型の二次電池616は、
図12Bに示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0055】
図12Bは、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF
4やLiPF
6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0056】
円筒型の二次電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構617に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構617は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構617は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0057】
電解液を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0058】
図12Cに示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池1400が充電される。蓄電池1400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
図12Cでは、蓄電池1400の外部の端子から、正極1402の方へ流れ、蓄電池1400の中において、正極1402から負極1404の方へ流れ、負極から蓄電池1400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。蓄電池1400は、正極1402と負極1404の間に電解液1406を有し、セパレータ1408を有している。
【0059】
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、二次電池の正極材料として例えば、元素A、元素X、及び酸素を有する材料を用いることができる。元素Aは第1族の元素および第2族の元素から選ばれる一以上であることが好ましい。第1族の元素として例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、第2族の元素として例えば、カルシウム、ベリリウム、マグネシウム等を用いることができる。元素Xとして例えば金属元素、シリコン及びリンから選ばれる一以上を用いることができる。また、元素Xはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄、及びバナジウムから選ばれる一以上であることが好ましい。代表的には、マンガン酸リチウムや、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。
【0060】
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0061】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。
【0062】
また、二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0063】
また、タイヤ216の回転による回生エネルギーは、ギア205を介してモータ204に送られ、モータコントローラ203やバッテリーコントローラ202から第2のバッテリ211に充電、または第1のバッテリ121に充電される。
【0064】
また、第1のバッテリ121は主にモータ204を回転させることに使用されるが、DCDC回路206を介して42V系の車載部品(第1のバッテリ121の冷却装置131、第1のバッテリ121の加熱装置132、電動パワステ、デフォッガなど)に電力を供給する。後輪にリアモータを有している場合にも、第1のバッテリ121がリアモータを回転させることに使用される。
【0065】
また、第2のバッテリ211は、DCDC回路210を介して14V系の車載部品(音響制御装置151、オーディオスピーカー、パワーウィンドウ、ランプ類など)に電力を供給する。
【0066】
また、第1のバッテリ121は、複数の二次電池で構成される。例えば、
図12Aに示した円筒形の二次電池616を用いる。
図4Bに示すように、円筒形の二次電池616を、導電板613および導電板614の間に挟んで電池パックを構成してもよい。
図4Bには二次電池間にスイッチを図示していない。複数の二次電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池616を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0067】
車載の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ121に設けられる。例えば、2個から10個のセルを有する電池パックを48個直列に接続する場合には、24個目と25個目の間にサービスプラグまたはサーキットブレーカを有している。
【0068】
図11において、本発明の一態様である二次電池の異常検知システムを用いた車両を例示する。
図11Aに示す自動車8400の二次電池8024は、電気モータ8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。自動車8400の二次電池8024は、
図12Bに示した円筒形の二次電池616を、導電板613および導電板614の間に挟んで電池パックとしたものを用いてもよい。
【0069】
図11Bに示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図11Bに、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0070】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0071】
また、
図11Cは、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。
図11Cに示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0072】
また、
図11Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。また、スクータに代えてスノーモービルや水上バイクの動力源にも本実施の形態を適用することができる。
【0073】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【0074】
(実施の形態3)
本実施の形態では、記憶手段の回路構成例を
図6A乃至
図6Gに示す。
図6A乃至
図6Gは、それぞれが記憶素子として機能する。
図6Aに示す記憶素子410は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。記憶素子410は、1つのトランジスタと1つの容量素子を有する記憶素子である。
【0075】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BLと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM1の第1端子と容量素子CAの第1端子が電気的に接続される節点をノードNDという。
【0076】
実際のトランジスタにおいて、ゲートとバックゲートは、半導体層のチャネル形成領域を介して互いに重なるように設けられる。ゲートとバックゲートは、どちらもゲートとして機能できる。よって、一方を「バックゲート」という場合、他方を「ゲート」または「フロントゲート」という場合がある。また、一方を「第1ゲート」、他方を「第2ゲート」という場合がある。
【0077】
バックゲートは、ゲートと同電位としてもよいし、接地電位や、任意の電位としてもよい。また、バックゲートの電位をゲートと連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0078】
バックゲートを設けることで、更には、ゲートとバックゲートを同電位とすることで、半導体層においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタのオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0079】
したがって、トランジスタを占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタにすることができる。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0080】
配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0081】
データの書き込みおよび読み出しは、配線WLに高レベル電位を印加し、トランジスタM1を導通状態にし、配線BLとノードNDを電気的に接続することによって行われる。
【0082】
配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。配線CALには、固定電位を印加するのが好ましい。
【0083】
図6Bに示す記憶素子420は、記憶素子410の変形例である。記憶素子420では、トランジスタM1のバックゲートが、配線WLと電気的に接続される。このような構成にすることによって、トランジスタM1のバックゲートに、トランジスタM1のゲートと同じ電位を印加することができる。よって、トランジスタM1が導通状態のときにおいて、トランジスタM1に流れる電流を増加することができる。
【0084】
また、
図6Cに示す記憶素子430のように、トランジスタM1をシングルゲート構造のトランジスタ(バックゲートを有さないトランジスタ)としてもよい。記憶素子430は、記憶素子410および記憶素子420のトランジスタM1からバックゲートを除いた構成となっている。よって、記憶素子430は、記憶素子410、および記憶素子420よりも作製工程を短縮することができる。
【0085】
記憶素子410、記憶素子420、および記憶素子430は、DRAM型の記憶素子である。
【0086】
トランジスタM1のチャネルが形成される半導体層には、酸化物半導体を用いることが好ましい。本明細書などでは、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を含むトランジスタを「OSトランジスタ」ともいう。
【0087】
例えば、酸化物半導体として、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)、亜鉛のいずれか一つを有する酸化物半導体を用いることができる。特に、酸化物半導体は、インジウム、ガリウム、亜鉛を含むことが好ましい。
【0088】
OSトランジスタは、オフ電流が極めて少ないという特性を有している。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができる。よって、記憶素子のリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、記憶素子のリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、記憶素子410、記憶素子420、記憶素子430において多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0089】
本明細書などでは、OSトランジスタを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)という。
【0090】
図6Dに、2つのトランジスタと1つの容量素子で構成するゲインセル型の記憶素子の回路構成例を示す。記憶素子440は、トランジスタM1と、トランジスタM2と、容量素子CAと、を有する。
【0091】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、ビット線WBLと接続され、トランジスタM1のゲートは、ワード線WWLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM2の第1端子は、ビット線RBLと接続され、トランジスタM2の第2端子は、ワード線RWLと接続され、トランジスタM2のゲートは、容量素子CAの第1端子と接続されている。トランジスタM1の第1端子と、容量素子CAの第1端子と、トランジスタM2のゲートと、が電気的に接続される節点をノードNDという。
【0092】
ビット線WBLは、書き込みビット線として機能し、ビット線RBLは、読み出しビット線として機能し、ワード線WWLは、書き込みワード線として機能し、ワード線RWLは、読み出しワード線として機能する。トランジスタM1は、ノードNDとビット線WBLとを、導通または非導通とするスイッチとしての機能を有する。
【0093】
トランジスタM1にOSトランジスタを用いることが好ましい。前述したとおり、OSトランジスタはオフ電流が非常に少ないため、トランジスタM1にOSトランジスタを用いることで、ノードNDに書き込んだ電位を長時間保持することができる。つまり、記憶素子に書き込んだデータを長時間保持することができる。
【0094】
トランジスタM2に用いるトランジスタに特段の限定は無い。トランジスタM2として、OSトランジスタ、Siトランジスタ(半導体層にシリコンを用いたトランジスタ。)、またはその他のトランジスタを用いてもよい。
【0095】
なお、トランジスタM2にSiトランジスタを用いる場合、半導体層に用いるシリコンは、非晶質シリコン、多結晶シリコン、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)、または単結晶シリコンとすればよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合があるため、読み出しトランジスタとして、Siトランジスタを用いると、読み出し時の動作速度を高めることができる。
【0096】
トランジスタM1にOSトランジスタを用い、トランジスタM2にSiトランジスタを用いる場合、両者を異なる層に積層して設けてもよい。OSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置および同様のプロセスで作製することが可能である。よって、OSトランジスタとSiトランジスタの混載(ハイブリッド化)が容易であり、高集積化も容易である。
【0097】
また、トランジスタM2にOSトランジスタを用いると、非選択時のリーク電流を極めて少なくすることができるため、読み出し精度を高めることができる。トランジスタM1およびトランジスタM2の両方にOSトランジスタを用いることで、半導体装置の作製工程が低減され、生産性を高めることができる。例えば、400℃以下のプロセス温度で半導体装置を作製することもできる。
【0098】
トランジスタM1およびトランジスタM2にバックゲートを有するトランジスタ(4端子型のトランジスタ。「4端子素子」ともいう。)を用いる場合の回路構成例を
図6E乃至
図6Gに示す。
図6Eに示す記憶素子450、
図6Fに示す記憶素子460、および
図6Gに示す記憶素子470は、記憶素子440の変形例である。
【0099】
図6Eに示す記憶素子450では、トランジスタM1のゲートとバックゲートが電気的に接続されている。また、トランジスタM2のゲートとバックゲートが電気的に接続されている。
【0100】
図6Fに示す記憶素子460では、トランジスタM1のバックゲート、およびトランジスタM2のバックゲートを配線BGLと電気的に接続している。配線BGLを介して、トランジスタM1およびトランジスタM2のバックゲートに所定の電位を印加することができる。
【0101】
図6Gに示す記憶素子470では、トランジスタM1のバックゲートが配線WBGLと電気的に接続され、トランジスタM2のバックゲートが配線RBGLと電気的に接続されている。トランジスタM1のバックゲートとトランジスタM2のバックゲートをそれぞれ異なる配線に接続することで、それぞれ独立してしきい値電圧を変化させることができる。
【0102】
記憶素子440乃至記憶素子470は、2Tr1C型のメモリセルである。本明細書などにおいて、トランジスタM1にOSトランジスタを用いて、2Tr1C型のメモリセルを構成した記憶装置をNOSRAM(Non-volatile Oxide Semiconductor Random Access Memory)という。また、記憶素子440乃至記憶素子470は、ノードNDの電位をトランジスタM2で増幅して読みだすことができる。また、OSトランジスタはオフ電流が非常に少ないため、ノードNDの電位を長期間保持することができる。また、読み出し動作を行ってもノードNDの電位が保持される非破壊読み出しを行うことができる。
【0103】
記憶素子に保持されている情報は、書き換え頻度が少ない情報である。よって、記憶素子としては、情報の非破壊読み出しが可能かつ長期保持が可能であるNOSRAMを用いることが好ましい。
【0104】
また、
図6A、
図6B、
図6E乃至
図6Gに示したトランジスタは、4端子素子であるため、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)特性を利用したMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistive Random Access Memory)、相変化メモリ(Phase-change memory)などに代表される2端子素子と比較して、入出力の独立制御が簡便に行うことができるといった特徴を有する。
【0105】
また、MRAM、ReRAM、相変化メモリは、情報の書き換えの際に、原子レベルで構造変化が生じる場合がある。一方で、本発明の一態様の記憶装置は、情報の書き換えの際にトランジスタを介した電荷のチャージ、またはディスチャージにより動作するため、繰り返し書き換え耐性に優れ、構造変化も少ないといった特徴を有する。
【0106】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した記憶素子の構成に適用可能なトランジスタの構成、具体的には異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設ける構成について説明する。特に本実施の形態では、半導体装置を構成するメモリ回路が有する各トランジスタの構成について説明する。当該構成とすることで、半導体装置の設計自由度を高めることができる。また、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設けることで、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0107】
図7に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有している。
図9Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図9Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図9Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0108】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が小さいため、これを半導体装置が有するOSトランジスタに用いることにより、長期にわたり書き込んだデータ電圧あるいは電荷を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度が少ない、あるいは、リフレッシュ動作を必要としないため、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0109】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図7に示すようにトランジスタ300、トランジスタ500、容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600はトランジスタ300、及びトランジスタ500の上方に設けられている。なお、容量素子600は、メモリ回路における容量素子などとすることができる。
【0110】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bを有する。なお、トランジスタ300は、例えば、上記実施の形態におけるメモリ回路が有するトランジスタ等に適用することができる。
【0111】
トランジスタ300は、
図9Cに示すように、半導体領域313の上面及びチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0112】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0113】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、又はドレイン領域となる低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0114】
低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、又はホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0115】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、又は酸化物半導体材料などの導電性材料を用いることができる。
【0116】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0117】
なお、
図7に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路(nチャネル型トランジスタのみ、などと同極性のトランジスタを意味する)とする場合、
図8に示すとおり、トランジスタ300の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
【0118】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0119】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0120】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0121】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0122】
また、絶縁体324には、基板311、又はトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0123】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0124】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0125】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0126】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には容量素子600、又はトランジスタ500と接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0127】
各プラグ、及び配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0128】
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0129】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0130】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0131】
絶縁体354、及び導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0132】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0133】
絶縁体364、及び導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0134】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0135】
絶縁体374、及び導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図7において、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0136】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0137】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、及び導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0138】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0139】
例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、例えば、基板311、又はトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0140】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0141】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0142】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0143】
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0144】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516には、導電体518、及びトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0145】
特に、絶縁体510、及び絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0146】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0147】
図9A、
図9Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514及び絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516及び導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542a及び導電体542bと、導電体542a及び導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面及び側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0148】
また、
図9A、
図9Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図9A、
図9Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図9A、
図9Bに示すように、絶縁体580、導電体560、及び絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0149】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0150】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、又は4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図7、
図9Aに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0151】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542a及び導電体542bは、それぞれソース電極又はドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a及び導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0152】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542a又は導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542a及び導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0153】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0154】
導電体503は、酸化物530、及び導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、及び導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0155】
また、本明細書等において、surrounded channel(S-channel)構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造およびプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0156】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503a及び導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、又は3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0157】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、又は酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、又は上記酸素のいずれか一又は、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0158】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0159】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体505は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0160】
絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0161】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0162】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素が脱離する酸化物膜とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、又は3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0163】
また、上記過剰酸素領域を有する絶縁体と、酸化物530と、を接して加熱処理、マイクロ波処理、またはRF処理のいずれか一または複数の処理を行っても良い。当該処理を行うことで、酸化物530中の水、または水素を除去することができる。例えば、酸化物530において、VoHの結合が切断される反応が起きる、別言すると「VOH→VO+H」という反応が起きて、脱水素化することができる。このとき発生した水素の一部は、酸素と結合してH2Oとして、酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体から除去される場合がある。また、水素の一部は、導電体542に拡散または捕獲(ゲッタリングともいう)される場合がある。
【0164】
また、上記マイクロ波処理は、例えば、高密度プラズマを発生させる電源を有する装置、または、基板側にRFを印加する電源を有する装置を用いると好適である。例えば、酸素を含むガスを用い、且つ高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを、効率よく酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体中に導入することができる。また、上記マイクロ波処理は、圧力を133Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは400Pa以上とすればよい。また、マイクロ波処理を行う装置内に導入するガスとしては、例えば、酸素と、アルゴンとを用い、酸素流量比(O2/(O2+Ar))が50%以下、好ましくは10%以上30%以下で行うとよい。
【0165】
また、トランジスタ500の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で、加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(VO)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で行ってもよい。または、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行っても良い。
【0166】
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「VO+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素に供給された酸素が反応することで、当該水素をH2Oとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVOHが形成されるのを抑制することができる。
【0167】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0168】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0169】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又は(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層又は積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0170】
特に、不純物、及び酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0171】
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0172】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520や、絶縁体526を得ることができる。
【0173】
なお、
図9A、
図9Bのトランジスタ500では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、又は4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0174】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種)等の酸化物半導体を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite oxide semiconductor)であることが好ましい。CAAC-OSとはCAAC構造を有する酸化物を指しており、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面においては配向せずに連結した結晶構造である。また、CAC-OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、又はパッチ状ともいう。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0175】
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、酸化物半導体中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0176】
特に、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)を形成する場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。VOHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。本発明の一態様においては、酸化物530中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0177】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0178】
よって、酸化物半導体を酸化物530に用いる場合、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0179】
また、酸化物530に酸化物半導体を用いる場合、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0180】
また、酸化物530に酸化物半導体を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0181】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0182】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0183】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する酸化物半導体は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0184】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0185】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる酸化物半導体において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる酸化物半導体における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる酸化物半導体において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる酸化物半導体における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる酸化物半導体において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる酸化物半導体における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530a又は酸化物530bに用いることができる酸化物半導体を、用いることができる。
【0186】
また、酸化物530a及び酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530a及び酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0187】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0188】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530a及び酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0189】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0190】
酸化物530b上には、ソース電極、及びドレイン電極として機能する導電体542a、及び導電体542bが設けられる。導電体542a、及び導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、又は、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。更に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0191】
また、
図9では、導電体542a、及び導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0192】
また、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0193】
また、
図9Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543a、及び領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0194】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア濃度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0195】
絶縁体544は、導電体542a、及び導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、及び導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0196】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタン又は、マグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた酸化物半導体を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコン又は窒化シリコンなども用いることができる。
【0197】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウムよりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、及び導電体542bが耐酸化性を有する材料、又は、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0198】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、及び水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0199】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、及び側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0200】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0201】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0202】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0203】
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合があるため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0204】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図9A、
図9Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0205】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、又は酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0206】
また、導電体560bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0207】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、及び導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0208】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0209】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0210】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0211】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、及び絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、及び絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0212】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた酸化物半導体を用いることができる。
【0213】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、及び窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0214】
なお、トランジスタ500の形成後、トランジスタ500を囲むように開口を形成し、当該開口を覆うように、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体を形成してもよい。上述のバリア性の高い絶縁体でトランジスタ500を包み込むことで、外部から水分、および水素が侵入するのを防止することができる。または、複数のトランジスタ500をまとめて、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体で包み込んでもよい。なお、トランジスタ500を囲むように開口を形成する場合、例えば、絶縁体514または絶縁体522に達する開口を形成し、絶縁体514または絶縁体522に接するように上述のバリア性の高い絶縁体を形成すると、トランジスタ500の作製工程の一部を兼ねられるため、好適である。なお、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体としては、例えば、絶縁体522と同様の材料を用いればよい。
【0215】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0216】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、及び導電体540bを配置する。導電体540a及び導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540a及び導電体540bは、後述する導電体546、及び導電体548と同様の構成である。
【0217】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0218】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0219】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0220】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、及び絶縁体586には、導電体546、及び導電体548等が埋め込まれている。
【0221】
導電体546、及び導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体546、及び導電体548は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0222】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0223】
また、導電体546、及び導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、及び導電体610は、同時に形成することができる。
【0224】
導電体612、及び導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0225】
図7では、導電体612、及び導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0226】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0227】
導電体620、及び絶縁体630上には、絶縁体640が設けられている。絶縁体640は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体640は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0228】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化又は高集積化を図ることができる。
【0229】
(実施の形態5)
本実施の形態では、加熱装置132、及び冷却装置131に加えて、さらにアラームなどを鳴らして使用者に警告を示す例を
図10に示す。
図10はブロック図であり、
図1と一部異なるだけであるため、同じ部分の説明はここでは省略することとする。
【0230】
電気自動車などにおいて、二次電池の温度が上昇または下降して正常動作可能な温度範囲を超えそうな場合、警告音を発してEVのシステム異常が発生する危険が迫っていることをユーザーに知らせる。警告音は、異常検知システム110からの信号により、音響装置150の音響制御装置151からスピーカー装置152を介して鳴らすことができる。
【0231】
また、二次電池の温度が上昇または下降して正常動作可能な温度範囲内に収まらなかった場合にも、警告音を発してEVのシステム異常が発生する危険が迫っていることをユーザーに知らせることができる。
【0232】
また、音響装置150は、音響での警告に限定されず、振動による警告、発光による警告のいずれか一またはそれらの組み合わせとしてもよい。
【0233】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0234】
(実施の形態6)
温度制御する二次電池(以下バッテリとも呼ぶ)の異常検知システムの全体ブロック図を
図5に示す。
【0235】
図5において、車両140は、電気自動車の他の部分を示しており、充電制御回路以外の制御回路や空調設備などを含む。
【0236】
異常検知システム110は、充電制御回路や、記憶手段を少なくとも有している。
【0237】
第1のバッテリ121は温度センサ122で温度を測定され、異常検知システム110で温度管理される。充電中において、温度が高くなり許容範囲を超えそうであれば、音響装置150を起動させてユーザーに警告を与えるとともに、異常検知システム110から電流遮断スイッチ123に制御信号が入力され、充電を停止する。
【0238】
第1のバッテリ121には、
図4Aに示したように冷却装置131と加熱装置132が近接して設けられている。冷却装置131と加熱装置132は、第1のバッテリ121の温度制御装置130と呼べる。また、温度が高くなり許容範囲を超えそうであれば、異常検知システム110から冷却装置131に指示信号が入力され、第1のバッテリ121の温度を低下させる。また、温度が低くなり許容範囲を下回りそうであれば、異常検知システム110から加熱装置132に指示信号が入力され、第1のバッテリ121の温度を上昇させる。二次電池の温度制御装置130は、冷却装置131及び加熱装置132を含む。
【0239】
なお、異常検知システム110は、具体的にはプリント基板などに設けられた複数のIC(CPUなど)などの集合体を示す。
【0240】
異常検知システム110は、バッテリの温度管理をアナログ信号処理またはデジタル信号処理で行う。
【0241】
温度検出をアナログ信号で処理する場合、
図2Aに示すように温度検出111は温度センサの出力信号(温度情報)をアナログ信号のままバッテリの温度状態を検出することができる。
【0242】
温度検出をデジタル信号で処理する場合、
図2Bに示すようにADC113はバッテリ温度(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、出力する。
【0243】
温度検出111は、
図3に示すようなヒステリシスコンパレータを用いることでON/OFF制御のためのパルス信号を生成できる。
【0244】
また、車に用いた場合、実施の形態1に示したブロック図である
図4を用いて説明する。
図4Aには、温度制御装置130を図示しているが、第1のバッテリ121の温度調節機構を設けず、温度範囲を超えた場合に警報のみをスピーカー装置152から出力する構成としてもよい。
【0245】
警告音を発するための音響装置150の動作としては、バッテリ温度に対応する電位が低温設定(低)を下回るとヒステリシスコンパレータの出力である警告制御信号(低温)がONになる。例えば、一定間隔でONになるパルス信号が入力される場合、その周期によって警告音の音量を調整する。周期が短いと大きく、長いと小さくなる。もし、バッテリ温度に対応する電位が低温設定(高)を上回るとヒステリシスコンパレータの出力である警告制御信号(低温)がOFFになり、音響装置150は警告音の発生を停止する。
【0246】
音響装置150は電気自動車のクラクションを利用したシステム構成でもよい。また、人間の感覚に訴えるために、音の出力(聴覚刺激)だけではなく、電気自動車の発光素子(ヘッドライトなど)を利用した光の出力(視覚刺激)をシステムに組み込んでもよい。
【0247】
本明細書で開示するバッテリの異常検知システムにより、二次電池の温度異常を検知し、ユーザーに注意を促すために警告することで、深刻な事態を回避することができるようになる。
【0248】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0249】
110:異常検知システム、111:温度検出、112:保護回路、113:ADC、114:温度検出演算回路、120:バッテリーモジュール、121:バッテリ、122:温度センサ、123:電流遮断スイッチ、130:温度制御装置、131:冷却装置、132:加熱装置、140:車両、150:音響装置、151:音響制御装置、152:スピーカー装置、202:バッテリーコントローラ、203:モータコントローラ、204:モータ、205:ギア、206:DCDC回路、210:DCDC回路、211:バッテリ、212:インバータ、216:タイヤ、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、410:記憶素子、420:記憶素子、430:記憶素子、440:記憶素子、450:記憶素子、460:記憶素子、470:記憶素子、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、510:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、526:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、546:導電体、548:導電体、550:絶縁体、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、574:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、601:正極キャップ、602:電池缶、603:正極端子、604:正極、605:セパレータ、606:負極、607:負極端子、608:絶縁板、609:絶縁板、610:導電体、611:PTC素子、612:導電体、613:導電板、614:導電板、616:二次電池、617:安全弁機構、620:導電体、630:絶縁体、640:絶縁体、1400:蓄電池、1402:正極、1404:負極、1406:電解液、1408:セパレータ、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モータ、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納