(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】原子ベースの電磁場感知要素および測定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20240411BHJP
G01R 29/12 20060101ALI20240411BHJP
G01R 33/32 20060101ALI20240411BHJP
G01N 21/63 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G01R29/12 F
G01R33/32
G01N21/63 Z
(21)【出願番号】P 2020552678
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018066006
(87)【国際公開番号】W WO2019126038
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520215681
【氏名又は名称】リッドバーグ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, デイビッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】レイセル, ジョージ エー.
(72)【発明者】
【氏名】パラディス, エリック ジー.
(72)【発明者】
【氏名】サピロ, レイチェル イー.
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0363617(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0111198(US,A1)
【文献】特開2014-53661(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107179450(CN,A)
【文献】特表2006-526794(JP,A)
【文献】特表平11-503865(JP,A)
【文献】特開2015-64388(JP,A)
【文献】A. K. Mohapatra 他,Coherent optical detection of highly excited Rydberg states using electromagnetically induced transparency,arXiv:quant-ph/0612200v2,2007年01月10日,p.1-4,https://arxiv.org/pdf/quant-ph/0612200.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
G01R 29/00
G01R 33/26
G01R 33/00
G01N 21/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電磁場を感知または測定するための方法であって、前記方法は、
a.エンクロージャ内でガスの原子をRydberg状態の分布の中に励起させることであって、前記エンクロージャは、前記第1の電磁場に対して露出されている、ことと、
b.少なくとも1つの他の電磁場との干渉関係の中に前記第1の電磁場を設置することによって、前記第1の電磁場を構造化することと、
c.前記原子ガスのスペクトル特徴に重複する1つ以上の周波数において、電磁放射の少なくとも1つのプローブビームの前記エンクロージャを横断する経路に沿って、伝送を測定することと、
d.前記スペクトル特徴の変化に少なくとも基づいて、前記第1の電磁場の物理的特性を導出することと
を含み、
前記第1の電磁場は、単色であり、
前記第1の電磁場の物理的特性は、基準位相に対するその位相である、方法。
【請求項2】
前記ガスは、原子蒸気である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原子蒸気の原子は、ルビジウム、セシウム、アルカリ、アルカリ土類原子を含む原子の群から選定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記原子をRydberg状態の分布の中に励起させるというステップは、前記原子をRydberg状態の分布の中に光学的に励起させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記原子をRydberg状態の分布の中に励起させるというステップは、電磁波誘起透明化および電磁波誘起吸収のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スペクトル特徴の変化は、Autler-Townes分裂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の単色電磁場の物理的特性は、非線形光学要素を使用して前記他の電磁場のうちの1つを変調するRF場の基準位相に対するその位相である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の電磁場を構造化することは、付加的静的場または無線周波数場を重畳することにより、前記第1の電磁場を原子遷移を伴う共鳴の中に設置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の電磁場を構造化することは、測定するというステップに先立って前記第1の電磁場を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記変調することは、周波数変調すること、振幅変調すること、ステップ変調することのうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Rydberg状態の分布は、原子と無線周波数場との間の相互作用のための非ゼロ双極子モーメントを伴う少なくとも1つの対の状態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
a.前記第1の電磁場内に存在するインコヒーレントRF雑音場の存在下、または、前記第1の電磁場を構成するインコヒーレントRF雑音場の存在下、所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはRydberg-EITスペクトルを計算するステップと、
b.光を原子蒸気セルの中に伝搬するステップと、
c.前記原子蒸気セルを通して伝搬される光を伴うスペクトル特徴を測定するステップと、
d.合致されたスペクトルを識別するステップと、
e.前記インコヒーレントRF雑音場の属性を導出するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、
a.強静的磁場または低周波数磁場と同一である前記第1の電磁場内の原子に関する所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはスペクトルを計算するステップと、
b.少なくとも1つの他の電磁場を光学プローブとして原子蒸気セルの中に伝搬するステップと、
c.前記原子蒸気セルを通して伝搬される光のスペクトル特徴を測定するステップと、
d.合致されたスペクトルを識別するステップと、
e.前記強静的磁場または前記低周波数磁場の物理的性質を導出するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記光は、振幅変調されるか、または、周波数変調される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
所定の原子エネルギーレベルまたはスペクトルは、Rydberg原子状態または低位原子状態に関するものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
強磁場の小磁場変化は、1つ以上の原子同位体または種を使用して導出される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するための一方的に結合されるモノリシックセンサであって、前記一方的に結合されるモノリシックセンサは、
エンクロージャ内に含有される原子蒸気と、
前記原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起ビームを生成するための励起源と、
前記励起ビームおよびプローブビームのうちの少なくとも1つの伝搬方向を前記原子蒸気の中に再指向するかまたは前記原子蒸気から再指向する少なくとも1つの光学構成要素と
を備える、一方的に結合されるモノリシックセンサ。
【請求項18】
前記励起ビームおよび前記プローブビームは、略平行方向に、前記少なくとも1つの光学構成要素上に入射する、請求項17に記載の一方的に結合されるモノリシックセンサ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの光学構成要素は、プリズムである、請求項17に記載の一方的に結合されるモノリシックセンサ。
【請求項20】
第1のプリズムは、前記励起ビームを前記原子蒸気の中に、前記プローブビームを前記原子蒸気から外に結合するために、再指向し、第2のプリズムは、前記プローブビームを前記原子蒸気の中に結合する、請求項19に記載の一方的に結合されるモノリシックセンサ。
【請求項21】
電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのセンサであって、前記センサは、
a.前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つと、
b.前記調整材料または構造内に配置されるエンクロージャ内に含有される原子蒸気と、
c.前記原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源と、
d.前記原子蒸気の横断後、プローブビームを検出し、検出器信号を生成するための検出器と、
e.前記検出器信号に少なくとも基づいて、前記電磁場を特性評価するパラメータを導出するためのプロセッサと
を備え、
前記電磁場は、単色であり、
前記電磁場を特性評価する前記パラメータは、基準位相に対するその位相である、センサ。
【請求項22】
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、RF共鳴器である、請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、導波管である、請求項21に記載のセンサ。
【請求項24】
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、メタ材料である、請求項21に記載のセンサ。
【請求項25】
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、アンテナを含む、請求項21に記載のセンサ。
【請求項26】
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、1つ以上の電極である、請求項21に記載のセンサ。
【請求項27】
前記材料および構造のうちの少なくとも1つは、伝導性であり、電流または電圧を前記原子蒸気内の前記電磁場に変換することによって、前記電磁場を調整し、前記電流または電圧または抵抗を通る関連付けられた電力の属性は、前記検出器信号から導出される、請求項21に記載のセンサ。
【請求項28】
前記原子蒸気の原子をRydberg状態の中に励起させるための励起源は、1つ以上の光ビームを備え、電磁波誘起透明化または電磁波誘起吸収を前記原子蒸気内に確立する、請求項21に記載のセンサ。
【請求項29】
前記原子蒸気を含有するエンクロージャは、ガラス蒸気セルである、請求項21に記載のセンサ。
【請求項30】
前記電磁場を調整するための材料または構造のうちの少なくとも1つは、前記原子蒸気エンクロージャに進入するかまたはそこから退出する電磁場のための周波数選択的フィルタまたは反射体を含む、請求項21に記載のセンサ。
【請求項31】
前記検出器は、前記原子蒸気の励起および前記原子蒸気からの放出によって生成された電磁場を検出するために使用される、請求項21に記載のセンサ。
【請求項32】
前記電磁場は、定在電磁波および進行電磁波のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項21に記載のセンサ。
【請求項33】
エンクロージャ内に含有される着目プラズマの領域内の電場を測定するためのプラズマ診断の方法であって、前記方法は、
a.規定された種のパルス状トレーサ粒子を前記プラズマの中に組み込むことであって、前記パルス状トレーサ粒子は、前記プラズマに向かって束においてシーケンシャルにパルス状にされている、ことと、
b.前記パルス状トレーサ粒子を規定されたRydberg状態の中に励起させることと、
c.少なくともプローブビームおよびカプラビームを印加することにより、前記プラズマ内の前記パルス状トレーサ粒子のEIT伝送スペクトルを導出することと、
d.前記プラズマのEIT伝送スペクトルとスペクトルモデルとを比較することにより、場誘起スペクトル形状変化および場誘起スペクトル偏移のうちの少なくとも1つに基づいて、前記プラズマの領域内で電場を推定することと
を含み、
前記推定される電場は、3次元で入手され、
前記プローブビームおよび前記カプラビームは、空間的に、かつ、時間的に、前記プラズマ内の前記パルス状トレーサ粒子と重複する、方法。
【請求項34】
前記方法は、磁場またはRF場を前記プラズマに印加することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記パルス状トレーサ粒子は、原子である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記パルス状トレーサ粒子は、ルビジウム原子である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記方法は、前記パルス状トレーサ粒子を冷却原子源から生成することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記推定される電場は、電場の分布である、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に、米国国防高等研究計画局(DARPA)および米国陸軍によって付与された契約番号第W911NF-17-C-0007号下の政府支援を受けて行われた。政府は、本発明のいくつかの側面における権利を有し得る。
【0002】
本願は、2017年12月18日に出願された、米国仮出願第62/607,034号、および2018年9月6日に出願された、米国仮出願第62/727,764号の優先権を主張する。前述の用途は両方とも、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、原子ベースの場感知要素および測定システムならびに方法に関し、より具体的には、Rydberg原子を採用し、RF場振幅、偏光、または位相、変調RF信号、インコヒーレントRFまたはRF雑音を測定、受信、または撮像し、連続周波数RF場検出を実施する、要素、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
高位Rydberg状態(高主量子数、典型的には、n>20によって特徴付けられる)における準自由電子を伴う原子は、それぞれ、約n7および約n2としての主量子数nに対応する、大偏光率および電気双極子モーメントを呈し、それらを電場に極めて敏感にする。本書の慣例によると、Rydberg状態ではない、原子の状態は、本明細書では、「低位状態」と称され得る。
【0005】
原子蒸気内のRydberg状態の分光応答を電場の測定に適用する概念は、少なくとも、Mohapatra et al.の「Rydberg States using Electromagnetically Induced Transparency」Phys.Rev.Lett.,vol.98,113003(2007年)(参照することによって本明細書に組み込まれる)以降、公知となっている。原子ベースの場感知に関連する以前の研究(全て先行技術に見られる)は、Anderson et al.の米国特許第9,970,973号(以降、「Andersonの第973特許」)(参照することによって本明細書に組み込まれ、本明細書に参照として引用される)の主題である。より具体的には、Floquet法が、例えば、Anderson et al.の「Two-photon microwave transitions and strong-field effects in a room-temperature Rydberg-atom gas」Phys.Rev.A,vol.90,043419(2014)(参照することによって本明細書に組み込まれる)に示されるように、蒸気セル実験におけるRydberg原子マイクロ波スペクトルをモデル化するための好適な手段として以前に確立されている。
【0006】
電磁波誘起透明化(EIT)は、3つのレベル原子系内の2つの励起経路が、プローブレーザビームに破壊的に干渉し、その伝送の増加を生産する、量子干渉プロセスである。例えば、
図8Bに描写される、Rydberg-EITカスケードスキームでは、透明化は、基底およびRydberg状態のコヒーレント重畳によって形成される。Rydberg-EITは、冷却原子ガスおよび室温蒸気セルの両方内に実装される。これは、Rydbergスペクトル、量子情報処理、ならびに弱および強マイクロ波電場の両方の測定のための非破壊光学検出技法として広く使用されている。蒸気セル内の電極を使用したRydbergレベルのAC Starkシフトは、Bason et al.の「Enhanced electric field sensitivity of rf-dressed Rydberg dark states」
New J.Phys.,vol.12,065015(2010年)(参照することによって本明細書に組み込まれる)によって議論されている。
【0007】
用語は、本明細書で使用されるように、単語「センサ」は、物理的量を検出または測定する、任意のデバイスを指すものとし、センサおよびセンサと併用されるコントローラまたはプロセッサへまたはそこからの電気または電磁エネルギーを結合する、配線または導波管を除外し得る。用語「モノリシックセンサ」は、本用語が本明細書で使用されるように、その全体が単一基板上に具現化され得る、またはその構成要素が恒久的に接続され、単一の物理的デバイスを形成する、センサを指す。接続の実施例は、マイクロ加工、融合、アノード接合、および糊着を含む。本明細書の発明者らの知る限り、モノリシックRydbergセンサは、これまで提案されていない。
【0008】
Rydberg分光法の方法は、これまで提案されていないが、しかしながら、これまでは、電磁場の位相(基準点となる位相基準に対して)を測定するために好適であった。その欠落を埋めるため、とりわけ、下記に説明される本発明の実施形態は、対処される。
【0009】
実践的原子ベースのRF感知、測定、または撮像デバイスを実現するために、好適な感知要素が、要求される。以前の研究において説明または提案されている、全ての先行技術感知要素は、本発明による下記に説明される洞察によって克服された、物理的原理によって課される限界を有する。先行技術感知要素は、例えば、Anderson et al.の「Optical measurements of strong microwave fields with Rydberg atoms in a vapor cell」https://arxiv.org/pdf/1601.02535.pdf(2016年1月11日)(参照することによって本明細書に組み込まれる)によって教示されている。
【0010】
原子ベースの電磁場感知の他の教示は、Gordon et al.の「Millimeter Wave Detection via Autler-Townes Splitting in Rubidium Rydberg Atoms」https://arxiv.org/pdf/1406.2936.pdf(2014年6月11日)、およびSimons et al.の「Using frequency detuning to improve the sensitivity of electric field measurements via electromagnetically induced transparency and Autler-Townes splitting in Rydberg atoms」Appl.Phys.Lett.,vol.108,174101(2016年)(両刊行物もまた、参照することによって本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0011】
既存のRydbergの電磁波誘起透明化(EIT)技法の性能限界は、以下を含む。
【0012】
(1)低感度;1mV/mレベルにおいて現在までに実証されている最高場感度は、主に、EIT線幅によって限定される。さらに、本感度レベルは、EITピーク線形状の小変化を監視することによってのみ達成されている。場が基本定数および不変原子パラメータに対してトレース可能である、Rydbergエネルギーレベル分裂を直接測定することと異なり、RF電場を詳細なEIT線形状分析から抽出することは、レーザビームパワーおよび蒸気圧力等の実験パラメータに依存する、比較的に複雑なモデルを要求し、それによって、絶対場測定を不可能にし、それを日々の動作において信頼性のないものにする。これまで、先行技術における最も敏感な測定感度である、約3μV/cm/Hz1/2のショット雑音制限感度が、Kμmar et al.の「Rydberg-atom based radio-frequency electrometry using frequency modulation spectroscopy in room temperature vapor cells」Opt.Express,vol.25,284263(2017年1月21日)の研究において実証されており、その感度の大きさの約半分の改良が、これまで、Fan et al.の「Effect of Vapor Cell Geometry on Rydberg-Atom-Based Measurements of Radio-Frequency Electric Fields」Phys.Rev.Appl.,044015(2015年)において報告されている(両論文とも、参照することによって本明細書に組み込まれる)。後者の研究は、微細な変化がレーザパワーおよびセル圧力等の多くの詳細に依存するため、日々の場測定動作において、幾分、信頼性がないことが予期される方法である、弱共鳴RF場によるRydberg-EIT線の微細なRF誘起EIT増強を採用している。感度を増強させるためのよりロバストな手段が、所望される。
【0013】
(2)連続周波数範囲にわたってRF場を測定することができない。弱RF場では、本方法は、Rydberg状態間の双極子許容遷移で共鳴する、RF場の測定に限定される。任意の遷移からのオフおよび遠共鳴である、弱RF場は、全くではないにしても、容易に測定されることができない。
【0014】
(3)RF偏光測定は、現在、原子スペクトルの複雑な分析を要求する。
【0015】
(4)全ての先行技術Rydberg-EIT測定は、必然的に、場振幅測定となっている一方、RF場の位相に関する情報は、本明細書で議論される物理的制約のため、部分的に取得することが可能となっていない。
【0016】
(5)Rydberg-EIT測定のために今日使用されている測定装置の形状因子は、必然的に、大構成要素である、可搬性ではない、すなわち、大誘電占有面積を有する、アセンブリを要求しており、それによって、多くの実践的用途において測定を実施する能力、または既存のRF測定および伝送システムの中に統合されることを不可能にしている。
【0017】
(6)本明細書の下記に説明される本発明以前は、Rydberg-EIT技法は、コヒーレント場の測定のためのみの役割を果たしてきた。以前の方法は、インコヒーレント場または雑音のいずれかを測定することが不可能であった。
【0018】
蒸気セル内でRydberg-EITを採用する、RF測定方法は、典型的には、原子蒸気を通したレーザビームの対向伝搬を採用し、熱原子サンプル内の分光レーザビームのドップラー偏移を考慮する。本側面は、これまで、レーザビームがセルに進入し、自由空間伝搬またはセルの両側上の光ファイバのいずれかを介して、両側から退出することを要求するため、適用のための実践的センサ設計における蒸気セル内のRydberg-EITの実践に課題を呈してきた。これは、測定用途のために望ましくない大誘電占有面積およびサイズを伴う、センサヘッドにつながり得る。さらに、マルチピクセルセンサアレイに拡張するために、セルの両側からの光学ビームの進入は、アレイ内で達成可能なピクセル充塞密度および分解能を限定し得る。
【0019】
蒸気セルの中への片側光学結合が、例えば、George et al.の「Pulsed high magnetic Field Measurement via a Rubidium Vapor Sensor」https://arxiv.org/pdf/1704.00004.pdf(2017年3月31日)(参照することによって本明細書に組み込まれる)による原子磁力計の文脈において議論されているが、別個のファイバが、そこでは、入力および出力ビームならびに同一または類似波長のビームのために採用されている。さらに、先行技術では、プローブビームは、常時、蒸気セルの片側に進入し、異なる側から退出する。
【0020】
観測可能な宇宙における問題の大部分は、プラズマ状態下に存在するが、プラズマの領域内の電場の特性の測定または推定は、プラズマの集団運動が観察され得ない限り、または物理的プローブがプラズマの中に挿入され得ない限り、特定の課題を科学に呈する。前者の技法の実施例は、ポロイダル回転速度から推定される、トカマク内の半径方向電場の推定である。これらのプロービングモダリティのいずれも不在の場合、原子プローブが使用される、ある仮定が立てられる必要がある。例えば、Paris et al.の「Intensity ratio of spectral bands of nitrogen as a measure of electric field in plasmas」J.Phys.D,vol.38,pp.3894-99(2005年)(参照することによって本明細書に組み込まれる)によって議論されるように、窒素のスペクトル帯域の強度比が使用される場合、計算は、窒素分子が、主として、直接、電子衝突によって、基底状態から励起されることを要求する。
【0021】
これまで、プラズマ場の測定のための光学診断技法は、主に、放出および吸収分光法、レーザ誘起蛍光、ならびにRaman分光法を用いた、プラズマ分子内のStarkシフトの測定を伴っている。既存の方法は、受動的非貫入型測定をもたらすが、それらはまた、プラズマ成分の光学吸収または放出スペクトルの先験的に知識を要求し得る。これは、診断読取において、成分プラズマ粒子を伴う少数多体系プロセスから、着目集団プラズマ現象を区別することを困難にし得る。また、プラズマタイプ研究対象に特有の診断ツールのカスタム化を要求し、診断を異なるプラズマシステム上で実施することが可能な一般化された技法を不可能にする。このように、いくつかのプラズマは、従来の検出器および分光計を使用して検出することが困難である周波数および放出強度における放出プロファイルを有することが予期される。プラズマ成分内の振動遷移からの弱IR放出は、例えば、いくつかの事例では、有用な情報を提供し得るが、これらの低IR強度レベルを測定するために要求される検出器は、容易に利用可能ではない。これらの制限に起因して、適用は、プラズマが、良好に特性評価される光学診断を実装するためのある原子/イオン粒子を用いてエンジニアリングされることを要求し得る。これは、有意な短所を基本プラズマ研究に呈し得、プラズマの性質自体が、研究の対象となる。
【0022】
前述の種類の先験的知識が、常時、利用可能ではない限り、科学は、プラズマ内の電場の遠隔測定のためのより汎用的モダリティを待つことになる。そのようなモダリティは、本発明のある実施形態に従って下記に詳細に説明される。
【0023】
1~100テスラ範囲内の強磁場の高分解能感知、測定、および較正のためのプローブは、種々の産業における強磁石システムの研究および開発、生産、ならびに保守において、ますます重要になりつつある。しかしながら、そのような場の測定のための原子蒸気またはRydberg-EITシステムは、提供されておらず、初めて、下記に説明される本発明を用いて可能にされる。以前に実践されたようなRydberg-EIT分析による超微細レベルのZeeman分裂を使用して、Rydberg原子のモデルに基づいて測定され得る、最大磁場強度は、最大で約103ガウスである。より強い磁場の測定は、本発明に従って本明細書に説明されるように、新しい方略を要求する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のある実施形態によると、第1の電磁場を感知または測定するための方法が、提供される。本方法は、
Rydberg状態の分布の中に、少なくとも部分的に、第1の電磁場と同延の試験体積を占有するガスの原子を励起させるステップと、
少なくとも1つの他の電磁場と干渉関係に設置することによって、第1の電磁場を構造化するステップと、
原子ガスのスペクトル特徴に重複する1つ以上の周波数において、電磁放射の少なくとも1つのプローブビームの試験体積を横断する経路に沿って、伝送を測定するステップと、
少なくとも、スペクトル特徴の変化に基づいて、第1の電磁場の物理的特性を導出するステップと、
を有する。
【0025】
本発明の他の実施形態によると、ガスは、原子蒸気であってもよく、原子蒸気の原子は、ルビジウム、セシウム、および他のアルカリを含む、原子の群から選定されてもよい。原子をRydberg状態の分布の中に励起させるステップは、原子をRydberg状態の分布の中に光学的に励起させるステップならびに電磁波誘起透明化および電磁波誘起吸収のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0026】
本発明のさらなる実施形態によると、スペクトル特徴の変化は、Autler-Townes分裂を含んでもよく、第1の電磁場の物理的特性は、場振幅であってもよい。
【0027】
第1の電磁場は、単色であってもよく、第1の電磁の物理的特性は、基準位相に対するその位相であってもよい。
【0028】
本発明の他の実施形態によると、第1の電磁場を構造化するステップは、測定するステップに先立って、電磁場の変調を含んでもよい。変調は、周波数、振幅、およびステップ変調のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態によると、Rydberg状態の分布は、原子と無線周波数場との間の相互作用のための非ゼロ双極子モーメントを伴う少なくとも1つの対の状態を含んでもよい。
【0030】
本発明のなおもさらなる実施形態によると、
第1の電磁場内に存在する、またはそれを構成する、インコヒーレントRF雑音場の存在下、所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはRydberg-EITスペクトルを計算するステップと、
光を原子蒸気セルの中に伝搬するステップと、
原子蒸気セルを通して伝搬される光を伴うスペクトル特徴を測定するステップと、
合致されたスペクトルを識別するステップと、
インコヒーレントRF雑音場の属性を導出するステップと、
の付加的ステップが存在してもよい。
【0031】
本発明の別の実施形態によると、
強静的または低周波数磁場と同じ第1の電磁場内の原子に関する所定の原子エネルギーレベルまたはスペクトルを計算するステップと、
少なくとも1つの他の電磁場を光学プローブとして原子蒸気セルの中に伝搬するステップと、
原子蒸気セルを通して伝搬される光のスペクトル特徴を測定するステップと、
合致されたスペクトルを識別するステップと、
強磁場の物理的性質を導出するステップと、
の付加的ステップが存在してもよい。
【0032】
光は、変調周波数または複数のその周波数におけるロックイン検出と併せて、振幅または周波数変調されてもよく、所定の原子エネルギーレベルまたはスペクトルは、低位原子状態のためのものであってもよい。
【0033】
本発明の別の側面によると、電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのモノリシックセンサが、提供される。センサは、エンクロージャ内に含有される、原子蒸気と、原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源と、プローブビームまたはより多くのビームを原子蒸気の中に結合し、プローブビームと原子蒸気の相互作用後、プローブビームを収集するための少なくとも1つの導波管とを有する。
【0034】
本発明の他の実施形態によると、少なくとも1つの導波管は、光ファイバであってもよい。少なくとも1つの導波管のうちの少なくとも1つは、励起源およびプローブビームの両方からの放射を原子蒸気の中に結合してもよい。エンクロージャは、誘電材料またはガラス蒸気セルを含んでもよい。エンクロージャは、コンパートメント化されてもよく、より具体的には、線形に、または面積で、コンパートメント化されてもよい。
【0035】
さらなる実施形態では、明確に異なるプローブビームは、光学要素のアレイ等を介して、コンパートメントのアレイのそれぞれの中に結合されてもよく、原子蒸気との相互作用後に収集され、光学要素のアレイを介して、検出器要素に結合されてもよい。エンクロージャは、吸光表面を含んでもよく、また、温度調整器を有してもよい。
【0036】
本発明のさらなる側面によると、電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するための一方的に結合されるモノリシックセンサが、提供される。一方的に結合されるモノリシックセンサは、誘電エンクロージャ内に含有される、原子蒸気と、原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起ビームを発生させるための励起源とを有する。加えて、一方的に結合されるモノリシックセンサは、励起ビームを原子蒸気の中に結合し、プローブビームを原子蒸気から外に結合するための第1のプリズムと、プローブビームを原子蒸気の中に結合するための第2のプリズムとを有する。励起ビームおよびプローブビームは、略平行方向に、個別の第1および第2のプリズム上に入射してもよい。
【0037】
本発明のなおもさらなる側面によると、電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのセンサが、提供される。センサは、電磁場を調整するための材料または構造のうちの少なくとも1つと、調整材料または構造内に配置されるエンクロージャ内に含有される、原子蒸気とを有する。センサはまた、原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源と、原子蒸気の横断後、プローブビームを検出し、検出器信号を発生させるための検出器と、少なくとも、検出器信号に基づいて、電磁場を特性評価するパラメータを導出するためのプロセッサとを有する。
【0038】
他の実施形態では、電磁場を調整するための材料または構造は、RF共鳴器または導波管であってもよい。また、メタ材料であってもよい。
【0039】
電磁場を調整するための材料または構造は、アンテナまたは1つ以上の電極を含んでもよい。材料または構造は、伝導性であってもよく、原子蒸気セル内の電磁場への電流または電圧信号の変換によって、電磁場を調製してもよい。電流または電圧信号の属性は、検出器信号から導出されてもよい。
【0040】
本発明の他の実施形態では、原子蒸気の原子をRydberg状態の中に励起させるための励起源は、1つ以上の光ビームを有し、電磁波誘起透明化または電磁波誘起吸収を原子蒸気内に確立してもよい。原子蒸気を含有するエンクロージャは、ガラス蒸気セルであってもよい。
【0041】
本発明のさらに他の実施形態では、電磁場を調整するための材料または構造は、原子蒸気エンクロージャに進入する、またはそこから退出する、電磁場のためのフィルタまたは反射体を含んでもよい。検出器は、原子蒸気の励起およびそこからの放出によって発生された電磁場を検出するために使用されてもよい。電磁場は、定在電磁波および進行電磁波のうちの少なくとも1つと関連付けられてもよい。
【0042】
本発明の別の側面によると、電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのセンサが、提供される。センサは、エンクロージャ内に含有される、原子蒸気を有し、これは、ひいては、光吸収面を有する。センサはまた、光吸収面上に入射する加熱ビーム源と、原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源とを有する。センサはまた、原子蒸気の横断後、プローブビームを検出し、検出器信号を発生させるための検出器と、原子蒸気を特性評価する温度を調整するような様式において、加熱ビームを光吸収面に印加するためのプロセッサとを有する。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、光吸収面は、フィルム、ポリマー、またはガラスであってもよい。
【0044】
本発明の別の側面によると、エンクロージャ内に含有されるプラズマの領域内の電場を測定するための方法が、提供される。本方法は、
規定された種のトレーサ粒子をプラズマの中に組み込むステップと、
トレーサ粒子を規定されたRydberg状態の中に励起させるステップと、
少なくともプローブビームおよびカプラビームを印加し、プラズマのEIT伝送スペクトルを導出するステップと、
プラズマのEIT伝送スペクトルとスペクトルモデルを比較し、場誘起スペクトル形状変化および場誘起スペクトル偏移のうちの少なくとも1つに基づいて、プラズマの領域を伴う電場を推定するステップと、
を有する。
【0045】
本発明のさらなる実施形態によると、本方法は、磁場またはRF場をプラズマに印加するさらなるステップを有してもよい。トレーサ粒子は、より具体的には、ルビジウム原子を含む、原子であってもよい。本方法はまた、トレーサ粒子を冷却原子源から発生させるステップを含んでもよい。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
第1の電磁場を感知または測定するための方法であって、前記方法は、
a.Rydberg状態の分布の中に、少なくとも部分的に、前記第1の電磁場と同延の試験体積を占有するガスの原子を励起させるステップと、
b.少なくとも1つの他の電磁場と干渉関係に設置することによって、前記第1の電磁場を構造化するステップと、
c.前記原子ガスのスペクトル特徴に重複する1つ以上の周波数において、電磁放射の少なくとも1つのプローブビームの試験体積を横断する経路に沿って、伝送を測定するステップと、
d.少なくとも、前記スペクトル特徴の変化に基づいて、前記第1の電磁場の物理的特性を導出するステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記ガスは、原子蒸気である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記原子蒸気の原子は、ルビジウム、セシウム、アルカリ、およびアルカリ土類原子を含む原子の群から選定される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記原子をRydberg状態の分布の中に励起させるステップは、前記原子をRydberg状態の分布の中に光学的に励起させるステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記原子をRydberg状態の分布の中に励起させるステップは、電磁波誘起透明化および電磁波誘起吸収のうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記スペクトル特徴の変化は、Autler-Townes分裂を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記第1の電磁場の物理的特性は、場振幅である、項目1に記載の方法。
(項目8)
第1の電磁場は、単色であり、前記第1の電磁場の物理的特性は、基準位相に対するその位相である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記第1の単色電磁場の物理的特性は、非線形光学要素を使用して前記他の電磁場のうちの1つを変調するRF場の基準点位相に対するその位相である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記第1の電磁場を構造化するステップは、付加的静的または無線周波数場を重畳させ、前記第1の電磁場を原子遷移を伴う共鳴の中に設置するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記第1の電磁場を構造化するステップは、測定するステップに先立って変調された第1の電磁場を含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
変調は、周波数、振幅、およびステップ変調のうちの少なくとも1つである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記Rydberg状態の分布は、前記原子と無線周波数場との間の相互作用のための非ゼロ双極子モーメントを伴う少なくとも1つの対の状態を含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
a.前記第1の電磁場内に存在するかまたはそれを構成するインコヒーレントRF雑音場の存在下、所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはRydberg-EITスペクトルを計算するステップと、
b.光を原子蒸気セルの中に伝搬するステップと、
c.前記原子蒸気セルを通して伝搬される光を伴うスペクトル特徴を測定するステップと、
d.合致されたスペクトルを識別するステップと、
e.前記インコヒーレントRF雑音場の属性を導出するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
a.強静的または低周波数磁場と同じ第1の電磁場内の原子に関する所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはスペクトルを計算するステップと、
b.少なくとも1つの他の電磁場を光学プローブとして原子蒸気セルの中に伝搬するステップと、
c.前記原子蒸気セルを通して伝搬される光のスペクトル特徴を測定するステップと、
d.合致されたスペクトルを識別するステップと、
e.前記強磁場の物理的性質を導出するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記光は、振幅または周波数変調される、項目15に記載の方法。
(項目17)
所定の原子エネルギーレベルまたはスペクトルは、Rydberg原子状態または低位原子状態に関するものである、項目15に記載の方法。
(項目18)
強磁場の小磁場変化は、1つ以上の原子同位体または種を使用して導出される、項目15に記載の方法。
(項目19)
電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのモノリシックセンサであって、前記センサは、
a.エンクロージャ内に含有される原子蒸気と、
b.前記原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源と、
c.プローブビームまたはより多くのビームを前記原子蒸気の中に結合するための少なくとも1つの導波管と、前記プローブビームと前記原子蒸気の相互作用後、前記プローブビームを収集するための同一または異なる導波管と
を備える、センサ。
(項目20)
前記少なくとも1つの導波管は、光ファイバである、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目21)
少なくとも1つの導波管は、前記励起源および前記プローブビームからの両放射を前記原子蒸気の中に結合する、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目22)
前記エンクロージャは、誘電材料またはガラス蒸気セルを含む、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目23)
前記エンクロージャは、コンパートメント化される、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目24)
前記エンクロージャは、線形にコンパートメント化される、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目25)
前記エンクロージャは、面積でコンパートメント化される、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目26)
明確に異なるプローブビームは、コンパートメントのアレイのそれぞれの中に結合される、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目27)
前記明確に異なるプローブビームは、光学要素のアレイを介して、前記コンパートメントのアレイのそれぞれの中に結合される、項目26に記載のモノリシックセンサ。
(項目28)
前記明確に異なるプローブビームは、前記原子蒸気との相互作用後に収集され、前記光学要素のアレイを介して、検出器要素に結合される、項目27に記載のモノリシックセンサ。
(項目29)
前記エンクロージャは、光吸収面を含み、さらに、温度調整器を備える、項目19に記載のモノリシックセンサ。
(項目30)
電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するための一方的に結合されるモノリシックセンサであって、前記一方的に結合されるモノリシックセンサは、
エンクロージャ内に含有される原子蒸気と、
前記原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起ビームを発生させるための励起源と、
前記励起ビームおよびプローブビームのうちの少なくとも1つ伝搬方向を前記原子蒸気の中に再指向するかまたはそこから再指向する少なくとも1つの光学構成要素と
を備える、一方的に結合されるモノリシックセンサ。
(項目31)
前記励起ビームおよび前記プローブビームは、略平行方向に、前記少なくとも1つの光学構成要素上に入射する、項目30に記載の一方的に結合されるモノリシックセンサ。
(項目32)
前記少なくとも1つの光学構成要素は、プリズムである、項目30に記載の一方的に結合されるモノリシックセンサ。
(項目33)
第1のプリズムは、前記励起ビームを前記原子蒸気の中に、前記プローブビームを前記原子蒸気から外に結合するために、再指向し、第2のプリズムは、前記プローブビームを前記原子蒸気の中に結合する、項目32に記載の一方的に結合されるモノリシックセンサ。
(項目34)
電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのセンサであって、前記センサは、
a.電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つと、
b.前記調整材料または構造内に配置されるエンクロージャ内に含有される原子蒸気と、
c.前記原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源と、
d.前記原子蒸気の横断後、プローブビームを検出し、検出器信号を発生させるための検出器と、
e.少なくとも、前記検出器信号に基づいて、前記電磁場を特性評価するパラメータを導出するためのプロセッサと
を備える、センサ。
(項目35)
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、RF共鳴器である、項目34に記載のセンサ。
(項目36)
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、導波管である、項目34に記載のセンサ。
(項目37)
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つと、メタ材料である、項目34に記載のセンサ。
(項目38)
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、アンテナを含む、項目34に記載のセンサ。
(項目39)
前記電磁場を調整するための材料および構造のうちの少なくとも1つは、1つ以上の電極である、項目34に記載のセンサ。
(項目40)
前記材料および構造のうちの少なくとも1つは、伝導性であり、電流または電圧を原子蒸気内の電磁場に変換することによって、電磁場を調整し、前記電流または電圧または抵抗を通る関連付けられたパワーは、前記検出器信号から導出される、項目34に記載のセンサ。
(項目41)
前記原子蒸気の原子をRydberg状態の中に励起させるための励起源は、1つ以上の光ビームを備え、電磁波誘起透明化または電磁波誘起吸収を前記原子蒸気内に確立する、項目34に記載のセンサ。
(項目42)
前記原子蒸気を含有するエンクロージャは、ガラス蒸気セルである、項目34に記載のセンサ。
(項目43)
前記電磁場を調整するための材料または構造は、前記原子蒸気エンクロージャに進入するかまたはそこから退出する電磁場のための周波数選択的フィルタまたは反射体を含む、項目34に記載のセンサ。
(項目44)
前記検出器は、前記原子蒸気の励起およびそこからの放出によって発生された電磁場を検出するために使用される、項目34に記載のセンサ。
(項目45)
前記電磁場は、定在電磁波および進行電磁波のうちの少なくとも1つと関連付けられる、項目34に記載のセンサ。
(項目46)
Rydberg原子を用いて電磁場を特性評価するパラメータを検出および/または測定するためのセンサであって、前記センサは、
a.誘電光吸収材料を含むエンクロージャ内に含有される原子蒸気と、
b.前記誘電光吸収材料上に入射する加熱ビーム源と、
c.前記原子蒸気の原子をRydberg状態の分布の中に励起させるための励起源と、
d.前記原子蒸気の横断後、プローブビームを検出し、検出器信号を発生させるための検出器と、
e.前記原子蒸気を特性評価する温度を調整するような様式において、前記加熱ビームを前記誘電光吸収材料に印加するためのプロセッサと
を備える、センサ。
(項目47)
前記誘電光吸収面は、フィルムである、項目46に記載のセンサ。
(項目48)
前記誘電光吸収面は、ポリマーである、項目46に記載のセンサ。
(項目49)
前記誘電光吸収面は、ガラスである、項目40に記載のセンサ。
(項目50)
エンクロージャ内に含有されるプラズマの領域内の電場を測定するための方法であって、前記方法は、
a.規定された種のトレーサ粒子を前記プラズマの中に組み込むステップと、
b.前記トレーサ粒子を規定されたRydberg状態の中に励起させるステップと、
c.少なくともプローブビームおよびカプラビームを印加し、前記プラズマ内のトレーサ粒子のEIT伝送スペクトルを導出するステップと、
d.前記プラズマのEIT伝送スペクトルとスペクトルモデルを比較し、場誘起スペクトル形状変化および場誘起スペクトル偏移のうちの少なくとも1つに基づいて、前記プラズマの領域を伴う電場を推定するステップと
を含む、方法。
(項目51)
磁場またはRF場を前記プラズマに印加するステップをさらに含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記トレーサ粒子は、原子である、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記トレーサ粒子は、ルビジウム原子である、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記トレーサ粒子を冷却原子源から発生させるステップをさらに含む、項目50に記載の方法。
(項目55)
前記推定される電場は、電場の分布である、項目50に記載の方法。
(項目56)
前記推定される電場は、1、2、または3次元で入手される、項目50に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の前述の特徴は、付随の図面を参照して検討される、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0047】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による、片側が光学的に結合されたRF感知要素を図式的に描写する。
【0048】
【
図2A】
図2Aは、本発明のある実施形態による、ペン状再帰EIT構成を使用して取得される、
87Rbの30D Rydberg状態のEITスペクトルを示す。
【0049】
【
図2B】
図2Bは、本発明のある実施形態による、その中に励起およびプローブビームがプリズムを介して蒸気セルに結合される、片側原子蒸気センサを示す。
【0050】
【
図3】
図3は、本発明のある実施形態による、単一側が結合された個々の蒸気セルセンサ要素から成る、マイクロ波撮像アレイを示す。
【0051】
【
図4A】
図4Aは、本発明のある実施形態による、いくつかの周波数に関する、125μm直径の先端の軸に沿ったRF場増強係数の計算を示す。
図4Bは、伝導性先端と関連付けられた表皮深さを示す。
【
図4B】
図4Aは、本発明のある実施形態による、いくつかの周波数に関する、125μm直径の先端の軸に沿ったRF場増強係数の計算を示す。
図4Bは、伝導性先端と関連付けられた表皮深さを示す。
【0052】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、本発明のある実施形態による、ハイブリッド式原子キャビティ構造のタイプを示す。
【0053】
【
図6】
図6は、1V/mの近共鳴4GHz入射RF場に関する
図5A-5Bに示されるハイブリッド式原子キャビティ構造内の電場の計算を示す。
【0054】
【
図7】
図7A-7Dは、本発明のある実施形態による、ハイブリッド式原子共鳴器デバイスを示す。
図7Aは、分光セルの内側の共鳴器電極/キャビティを示し、
図7Bは、電極整合および安定化のためのセラミックピンを示す、共鳴器の上面図であって、
図7Cは、ガラススペーサおよび間隙が示される、共鳴器の側面図であって、
図7Dは、外部電圧/電流制御のための、または電極を接地/短絡させるために接続される、ワイヤ導線を伴う、ルビジウム蒸気セルの内側の共鳴器電極/キャビティ構造を示す。
【0055】
【
図8】
図8Aは、本発明のある実施形態による、場特性の測定のための実験設定を示す一方、
図8Bは、関連Rydberg-EITエネルギーレベル略図を示す。
【0056】
【
図9】
図9A-9Dは、本発明のある実施形態による、ハイブリッド式原子キャビティ場増強を実証する。
図9Aは、固定-10dBm注入パワーにおけるRF/マイクロ波周波数の関数として測定された、31S Rydberg-EITスペクトルをプロットする。
図9Bは、印加される二乗平均平方根電場E
RMSに関する31S
1/2 Rydberg状態を中心として計算されたStarkマップをプロットする。
図9Cは、マイクロ波E
RMS対
図9Aおよび9Bを使用して取得された周波数をプロットする一方、
図9Dは、それぞれ、2.5および4.35GHzマイクロ波に関して測定されたEIT線をプロットする。
【0057】
【
図10】
図10Aおよび10Bは、本発明のある実施形態による導波管の内部の原子蒸気セルを伴う、場測定システムの側面および端面図を示す。
【0058】
【
図11】
図11Aは、垂直軸に対する異なる角度位置Θに関する固定注入パワーにおいて印加されるマイクロ波周波数の関数として、実験31S Rydberg AC-Starkシフトを示す。
図11Bは、
図11Aに示されるデータに関するΘの関数として、4.35GHzにおけるマイクロ波電場をプロットする。
【0059】
【
図12】
図12Aは、本発明のある実施形態による、電場振幅の計算の結果を示し、
図12B-12Dは、
図7A-7Dのハイブリッド式原子キャビティ構造内の電場ベクトル方向である。
【0060】
【
図13】
図13Aおよび13Bは、それぞれ、印加されるDC電場に関する30D Rydberg状態の実験および計算されたDC Starkマップを示す。
【0061】
【
図14】
図14は、100MHzRF場内のルビジウム47Sおよび47PレベルのAC-StarkシフトのFloquet計算を描写する。
【0062】
【
図15】
図15は、ルビジウム47S状態に関するRF強度および電場較正をプロットする。
【0063】
【
図16】
図16は、4つの異なる注入RFパワーに関する、固定-14dBIマイクロ波強度(別個の較正)における47S状態の測定されたEITスペクトル対37.51663492GHzからのマイクロ波周波数離調をプロットする。
【0064】
【
図17】
図17は、約200V/cmまでの一連の値に関する印加されるRF電場の関数として、測定された擬交差の中心をプロットする。
【0065】
【
図18A】
図18Aは、印加される周波数の関数としての、1V/m入射場に関する4つの異なるスプリットリングキャビティ構造の内側に発生された、シミュレートされた電場を示す。
【
図18B】
図18Bは、本発明のある実施形態による、スプリットリングキャビティ構造の間隙内の測定チャネルを図示する。
【
図18C】
図18Cおよび18Dは、100GHzの近傍の共鳴につながる幾何学形状を伴うスプリットリング共鳴器に関する、シミュレートされた共鳴曲線を示す。
【
図18D】
図18Cおよび18Dは、100GHzの近傍の共鳴につながる幾何学形状を伴うスプリットリング共鳴器に関する、シミュレートされた共鳴曲線を示す。
【0066】
【
図19】
図19Aおよび19Bは、4mm内径原子蒸気セル1903を包囲する、IR-ガラスカプセル1901を示す。
図19Cは、全光型加熱試験プラットフォームを示す。
【0067】
【
図20】
図20Aは、本発明のある実施形態による、RF電場の位相敏感測定のための感知要素後端および動作原理を図式的に描写する。
図20Bは、位相敏感RF電場測定において使用される、量子機械的レベルスキームおよび光学/RF励起経路を描写する。
【0068】
【
図21】
図21は、本発明のある実施形態による、初めて可能となった、磁場の属性のRydberg-EIT測定におけるステップを描写する、フローチャートである。
【0069】
【
図22】
図22は、本発明のある実施形態による、初めて可能となった、規定されたスペクトル範囲にわたるRF雑音の属性のRydberg-EIT測定におけるステップを描写する、フローチャートである。
【0070】
【
図23】
図23A-23Cは、本発明のある実施形態による、Rydberg原子トレーサのEITを採用する、プラズマ内のプロービング電磁場を図式的に描写する。
【0071】
【
図24】
図24A-24Cは、本発明のある実施形態による、2レベルRydberg量子システムの飽和吸収分光法を使用した強磁場の測定を図式的に描写する。
【0072】
【
図25】
図25A-25Cは、本発明のある実施形態による、3レベルRydberg量子システムの飽和吸収分光法を使用した強磁場の測定を図式的に描写する。
【0073】
【
図26】
図26Aは、本発明のある実施形態による、ハイブリッド式の原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器およびセンサを図式的に描写し、
図26Bは、変換器およびセンサの電極を横断して印加される電圧の種々のレベルにおいて取得される信号のプロットを示す。
【0074】
【
図27】
図27Aは、本発明のある実施形態による、電磁波の波長選択的伝送のための対向窓を伴う、原子蒸気セルコンパートメントを図式的に描写する。
図27Bは、
図27Aの原子蒸気セルコンパートメントの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
定義:以下の用語は、文脈によって決定付けられない限り、示される意味を有するものとする。
【0076】
本発明のある実施形態は、本明細書では、同義的に、「感知要素」、「場感知要素」、および「センサ」とも称され得る、原子ベースの場感知要素に関する。
【0077】
「調整」は、本明細書および任意の添付の請求項では、電磁場、もしくはそのモード、電場振幅、偏光、周波数、位相、およびスペクトル成分を含む、EM場の物理的属性の閉じ込め、誘導、操作、またはフィルタリングを指す。
【0078】
用語「増強」は、電磁波を指すとき、電磁波の任意の物理的属性の値を増加させるような様式におけるその電磁波の調整として定義されるものとする。
【0079】
「短調場」は、中心周波数の1%以下の周波数の範囲によって特徴付けられる、静的場または電磁場のいずれかを指すものとする。
【0080】
電磁場は、単色場であって、少なくとも1つの他の電磁場と干渉関係にある場合かつその場合のみ、「構造化」と称されるものとする。したがって、電磁場を「構造化」することは、場を1つ以上の他の電磁場との干渉関係に設置することである。
【0081】
原子ベースの場感知要素は、本明細書では、RF場を調整するように作用する、少なくとも1つの材料または構造を含有する場合かつその場合のみ、「統合化」と称されるものとし、用語「調整」は、上記に定義される通りである。調整される、RF場は、本明細書では、「着目RF場」と称され得る。
【0082】
本明細書で使用されるように、単語「分布」は、連続または離散であるかどうかにかかわらず、集合を参照するとき、単一要素の場合を含むものとする。したがって、Rydberg状態間の原子集団の分布は、例えば、単一状態も同様に包含する。
【0083】
本明細書で使用されるように、その用語が、本明細書では、周波数νの任意の関数を指す、スペクトルでは、「スペクトル特徴」は、定義された連続的周波数サブドメインにわたるその関数の挙動を指すものとし、サブドメインの境界における関数の値は、関数の極小値または極大値を構成する。
【0084】
スペクトル特徴の「分裂」は、機能物理的効果に起因する関数の極大値の減少を指すものとし、元の極大値のものを上回る周波数におけるものと、元の極大値のものを下回る周波数におけるものとの2つの新しい極大値の出現を生じさせる。用語「分裂」はまた、文脈上適切である場合、元の極大値の代わりに出現する、新しい極大値の軌跡間の周波数の差異を指し得る。
【0085】
用語「電磁場」は、DCおよびAC場の両方を包含する。
【0086】
「RF」は、本明細書では同義的に、「マイクロ波」、「ミリメートル-波」、「テラヘルツ」、またはDC超~THzの周波数を伴う任意の電磁放射を指し得る。
【0087】
磁場は、約10-3テスラ(10G)を超える場合、「強」と指定されるものとし、その時点で、磁場によって分解される、いくつかの原子超微細レベルのm-縮退が、弱場(線形Zeeman)領域からPaschen-Back領域への遷移を開始する。
【0088】
「電磁波誘起透明化」(EIT)は、光学システムの(少なくとも)3つの状態と相互作用するように同調されたコヒーレント光学場が、媒体中のそうでなければ吸収性の量子遷移に対応する波長において透明化を生じさせる、物理的現象学を指す。EITの物理学および専門用語は、Marangosの「Topical review: Electromagnetically induced transparency」J.Mod.Opt.,vol.45,pp.471-503(1998年)(参照することによって本明細書に組み込まれる)によって考察されている。
【0089】
「誘電」は、本用語が本明細書で使用されるように、伝導を伴わずに電気力を伝送する、材料または物質、すなわち、絶縁体として定義される。
原子ベースの電磁場感知要素および測定システム
【0090】
本発明のある実施形態によると、片側が光学的に結合されたRF感知要素(別様に、本明細書では、「センサ」および「ペン状構成」とも称される)が、提供され、概して、数字100によって指定され、
図1を参照して説明される。
図1に描写されるペン状線形センサ設計は、別様に、本明細書では、「蒸気セル」または「原子蒸気セル」とも称される、エンクロージャ106内に含有される、蒸気セル体積108の中に、およびそこから外に、要求されるレーザビーム103、104を光ファイバ結合するための単一入口ポート102の使用をもたらす。蒸気セル体積108は、原子または分子ガスを含有する。ビーム103および104によってプローブされる、蒸気セル体積108内のガスの領域は、本明細書および任意の添付の請求項では、「試験体積」と称され得る。
【0091】
片側から活性測定体積110に進入するセンサ100を用いることで、
図1の構成は、1つを除く全ての側から、活性測定体積110を入射RF/マイクロ波場112に対して妨げられないままにする。
図1に描写される実装では、線形に偏光されたプローブ103およびカプラ104ビームが、単一偏光維持ファイバ120を通して送信され、レンズ122によって、蒸気セル106内の約200μmの半値全幅(FWHM)にコリメートされる。プローブおよびカプラビーム103、104は、原子蒸気セル106を通して共伝搬し、プローブビーム103は、次いで、短通過ダイクロイックミラーコーティング130によって、セルを通して戻るように選択的に再帰反射される一方、カプラビームは、それを通して通過し、薄誘電吸収材ビームブロック132によって遮断される。再帰反射されたプローブビーム134は、その経路を再トレースし、出射カプラビームに重複し、レンズ122によって、ファイバ120の中に戻るように再結合される。再帰反射の前(
図1におけるレンズと蒸気セルとの間)に位置付けられる、4分の1波長板140は、線形に偏光された入射プローブビームが、偏光維持(PM)ファイバ後の読取のために偏光選択的要素(図示せず)を用いて選択的に分裂され得るように、再帰反射された出射ビーム上で90度回転されることを確実にする。
【0092】
図1に描写されるようなセンサ100は、本発明に先行する蒸気セルEITの他の実装と比較して、いくつかの利点を提供し得る。第1に、線形片側設計は、小誘電占有面積を有する、小型で薄型プローブ先端およびセンサ要素を可能にする。本設計はまた、光学ビームをファイバから外におよびセルの中に再指向するための任意の光学要素の必要性を排除する。蒸気セルEITの典型的実装と比較して、より大きいビーム直径の入力および出力結合のための単一レンズを利用することは、有利には、より少ない相互作用時間の広がりと、それに伴う、より高い達成可能分光分解能とだけではなく、読取プローブビームを同一ファイバの中に逆結合することにより、不整合に対するデバイス感度を低減させることによって、改良された動作安定性をもたらすことによって、測定精度および感度を改良し得る。
【0093】
図2Aは、概して、数字200によって指定される、
図1のペン状再帰EIT構成100を使用した
87Rbの30D Rydberg状態のEITスペクトルを示す。片側EIT構成は、本明細書では、「再帰EIT構成」と称され得る。微細構造特徴204の分裂は、明白である。内側セル壁からのカプラビーム104の内部反射は、複製EITスペクトル202につながる。スペクトルは、Siフォトダイオードの信号のロックイン検出を伴わずに得られる。
【0094】
複製スペクトル202は、ドップラープロファイルの中心における速度v=0原子に対するプローブビーム103の周波数離調と等しい量だけ、一次EIT線200から青色偏移される。蒸気セル内の内部反射に起因する複製スペクトルは、一般に、蒸気セルEIT実験内で観察される。これらは、セルをEITビームの直角入射からある角度に設置する、またはセル窓を入射光学ビームに対してある角度で有することによって、回避されることができる。
【0095】
図2Bは、概して、数字230によって指定される、ルビジウム蒸気カプセル232を通して片側がファイバに結合される、感知要素の実施形態を示す。本発明の別の実施形態による、感知要素の実装は、片側がファイバに結合される励起ビーム216および片側がファイバに結合されるプローブビーム218を蒸気カプセル232の中に再指向させる、第1のプリズム212と、第2のプリズム214とを伴う。プリズム212および214は、レンズ235によって、個別のファイバ誘導ビーム216および218に結合する。
【0096】
本発明の他の実施形態によると、片側が光学的に結合された蒸気セルRF/マイクロ波感知要素は、マルチセンサアレイに拡張されてもよく、セルのアレイの片側結合は、集合的に、マイクロのアレイレンズ上に衝突する、カプラおよびプローブのための大単一ビームを使用して達成される。1つのそのような実施形態が、ここで、
図3を参照して説明される。再び、カプラ104およびプローブ103ビームの片側入口は、アレイ内の単一要素の高密度充塞を可能にし、活性測定体積/表面を測定または撮像されるべき入射RF/マイクロ波放射に対して妨げられないままにする。より低い密度のアレイに関して、
図1および3に示されるもの等の個々の片側要素のグリッドが、本発明の範囲内で採用されてもよい。
【0097】
図3は、概して、数字300によって指定される、マイクロ波撮像アレイを示す。マイクロ波撮像アレイ300は、線形または面積(2次元)アレイに配列される、個々の蒸気セルセンサ要素302の片側結合から成る。光学カプラ304およびプローブ306EITビームは、ダイクロイックミラー308を使用して、相互から分裂される。レーザ-ビームアレイ310は、マイクロレンズ(MLアレイ)314のアレイを通して通過される、大径レーザビーム312から導出される。マイクロレンズアレイは、市販される。レーザビームアレイは、原子蒸気(1mm未満のサブセル周期を伴う、着目RF波長のある割合の大きさの層厚)を含有する、サブセル316の平面アレイと合致される。蒸気セルアレイ上の誘電コーティング318は、780-nmプローブレーザビームを反射させ、480-nmカプラおよびマイクロ波場を伝送させる。偏光ビームスプリッタによって反射されたプローブビーム画像は、マイクロ波情報を含有する。これは、CCDカメラ320を使用して記録され、画像プロセッサ322を用いて分析される。偏光ビームスプリッタ(PBS)324もまた、示される。
キャビティ増強場感度
【0098】
上記で定義されたような、原子Rydberg蒸気が、異なる共鳴材料または構造と統合され、着目RF場を調整する、RF検出のための、ハイブリッド式原子検出器の概念が、ここで提示される。本発明による、ハイブリッド式原子検出器は、有利には、検出能力を達成し得る。
【0099】
近接場効果は、増強された電場の領域を発生させることが周知である。本発明に従って初めて説明される、ハイブリッド式原子検出器の前述の概念は、有利には、例えば、ナノ粒子内のプラズモン共鳴において使用されてもよい。本発明による、ハイブリッド式原子検出器の一実施例は、スプリットリング共鳴器を採用する。単純近接場場増強デバイスは、サブ波長径の金属先端である。先端は、雷雨の中でロッドの近傍の電場を増強させる避雷針のように、RF電場を増強させる。
図4Aは、いくつかの周波数に関する、125μm径の先端401の軸に沿ったRF場増強係数の計算を示す。例証およびプロットは、原子蒸気セルの中に統合される金属先端等の単純構造が、9.5dBの強度に対応する、約3倍、場を増強させ得ることを示す。増強のために、先端直径は、
図4Bに描写される表皮深さを超えることが重要であって、これは、着目例(Cr、ベリリウム銅等)に関して、10~100GHz範囲内において約1μmである(かつ1/周波数
0.5としてスケーリングされる)。原子蒸気セルの中に埋め込まれた金属先端等のハイブリッド式デバイスは、局所的近接場増強を介して、場感度を増強させるということになる。
【0100】
RF場に伴って共鳴する、キャビティ構造は、場の局所増強のための別の手段を提供する。キャビティ構造は、RF場偏光および周波数等のRF場パラメータの追加制御を容易に提供することができる。本発明の範囲内では、キャビティは、原子RF場相互作用体積内の場不均質性を低減させるようにエンジニアリングされ得、これは、適用において望ましくあり得、先端状構造を伴う近接場効果を利用するときに達成することが困難である。
【0101】
Rydberg-EIT感知のために採用されるハイブリッド式原子キャビティ構造の新規概念が、ここで、
図5Aおよび5Bを参照して説明され、概して、数字500によって指定される、例示的タイプのハイブリッド式原子キャビティ構造、およびRF場増強のためのその動作原理が、示される。構造500は、本明細書では、「電極」とも称され得る、2つの中実金属フレーム502から成り、ルビジウム蒸気セル506の正面において、ギャップ504によって分離される。
図5Bを参照すると、2つの金属フレーム502間のギャップ504は、衝突RF場508に共鳴結合し、対応するRF電場512をキャビティ体積内で局所的に圧縮する、キャビティ510を形成する。単語「キャビティ」は、本明細書では、規定された空間体積にわたってMaxwellの方程式の解に任意の種類の境界条件を課す、任意の構造を指すために、一般的意味において使用される。「キャビティ」は、本明細書では、同義的に「共鳴器」または「共鳴構造」とも称され得る。
【0102】
Rydberg原子蒸気内側キャビティ510は、場512の測定のために光学的に照会される。
図6は、ルビジウム蒸気セルの内側に従来の機械加工された電極を伴い、
図5Aおよび5帯域
図7A-7Dを参照して図示および説明される、ハイブリッド式原子キャビティ構造500によって提供される場増強の計算を示す。構造500は、ギャップ504内において、20dBの強度に対応する、約10倍、Y(
図5Bにおける垂直方向)に沿って線形に偏光された4GHzマイクロ波の電場512を局所的に増強させる、460μmのギャップサイズを有する。50~100ミクロンの範囲内のEITレーザビームウェストを用いると、増強された電場は、寸法約0.46×0.5×9mmを伴う測定チャネルの内側の活性測定体積内で非常に均質のままである。9mm長の「キャビティチャネル」(本明細書では、「ギャップ」および「キャビティ」の両方と同義語として使用される用語)は、測定の間、より高い光学吸収のための十分に長い相互作用体積を提供し、また、有利には、EITスペクトル内の改良された信号対雑音比を提供する。
【0103】
概して、数字700によって指定される、本発明のある実施形態による、ハイブリッド式原子共鳴器デバイスが、ここで、
図7A-7Dを参照して説明される。
図7Aに示される斜視図は、Starkチューナ/コンプレッサ704に対応する内部構造を伴う、分光セル702(別様に、「蒸気カプセル」の「原子蒸気カプセル」と称される)をハイライトする。
図7Bは、ハイブリッド式原子共鳴器デバイス700の上面図である。
図7Cにおける側面図はスペーサ708によって分離され、「キャビティ」とも称される、ギャップ710を形成する、上部電極706と、底部電極707とを示す。
図7Dに描写されるハイブリッド式原子共鳴器デバイス700の斜視図は、電極接続714を介して、蒸気カプセル702の中に結合される、電極ワイヤ導線712を示す。
【0104】
高感度原子ベースのRF場測定のためのハイブリッド式原子キャビティデバイスを用いて場増強を実証するために、
図7A-7Dのハイブリッド式原子共鳴器デバイス700は、
図8Aに示される実験設定において展開され得る。キャビティ710内のRF場は、キャビティ710内の
85Rb原子の高位Rydberg状態の場誘起レベル偏移の高効率非破壊光学プローブとして、Rydberg-EITを使用して測定される。関連ルビジウムRydberg-EITエネルギーレベル略図は、
図8Bの差込図に示される。λ=780nm(720)および480nm(722)を伴う、2つのレーザビームは、対向伝搬しており、
図5Bおよび8Aに図示されるように、キャビティ710の中心を通して重複される。本発明の例示的実施形態では、780nmビーム720は、セル702の中心における70ミクロンの半幅に集束され、8μWのパワーを有する一方、480nmビーム722は、70ミクロンの半幅に集束され、40mWのパワーを有する。Rydberg-EIT分光法が、480nmレーザの周波数が、数Hzの繰り返し率において、選定されるRydbergレベルを横断して線形に走査される間、
85Rb5S
1/2(F=3)~5P
3/2(F=4)遷移に安定化されたレーザ周波数を用いて、蒸気を通した780nm伝送を監視することによって実施される。光学周波数基準は、Rydberg-EITスペクトルを較正するために、480nmレーザビーム720から導出される。
【0105】
EITスペクトル内の改良された信号対雑音比のために、本発明のある実施形態によると、変調分光法が、実装されてもよい。本明細書で使用されるように、変調は、周波数、振幅、およびステップ変調、またはそれらの組み合わせのいずれかを包含する。例えば、480nmビーム720は、50/50デューティサイクルにおいて、約20kHz平方パルスで振幅変調されてもよく、光検出器732を用いて780nmビームの検出によって導出される、780nm信号730は、例えば、ロックイン増幅器(図示せず)を使用して、復調されてもよい。ハイブリッド式原子キャビティ構造700は、増加されたルビジウム蒸気密度および780nm吸収のために、約45℃の周囲温度に維持される。キャビティ710を形成する、2つの電極706および707は両方とも、セル702の外側で接地に電気的に結合される。一実施例では、RF場は、信号発生器を使用して発生され、WR229開放端導波管(2.577~5.154GHz)735(別様に、本明細書では、「ガイド」と称される)の中への20dB供給によって増幅される。Rydberg-EITレーザビーム720、722がそれを通して通過する、測定チャネル/キャビティ710は、ガイド735の正面から約1cm離れて設置される。示される実施例では、RFおよび光学ビームは、線形に偏光され、偏光は、キャビティ710の短軸(Y)に沿って平行に指向される。
【0106】
図9Aは、注入マイクロ波パワーの固定-10dBmに関するRF/マイクロ波周波数の関数として、相対的31S Rydberg-EITスペクトル線偏移を示す。31S Rydbergレベルは、実験において網羅される2.5~5.2GHzマイクロ波周波数範囲に関して、印加されるマイクロ波が、任意のRydberg遷移から遠共鳴であって、31S状態が、マイクロ波電場振幅に比例するAC-Starkシフトを呈するように選定される。
図9Aに示されるプロットの最左では、レーザ周波数軸は、印加される2.5-GHzマイクロ波場では、31S線を中心とする。マイクロ波周波数を増加させるために、31Sレベルは、約3.5GHzを4.35GHz(ここには示されないより高い分解能走査では、4.37+/-0.01GHz)における大マイクロ波キャビティ誘起場共鳴に実質的に偏移させ始める。4.85GHzにおける顕著な共鳴を含む、他の特徴も、スペクトル内で明白である。複数の共鳴は、電極/キャビティ整合のためのアルミナロッドおよび各電極706、707の背面における長電極ワイヤ712を含有する、バルクキャビティ構造(例えば、3つの孔740(
図7Bに示される))の複雑性に起因して、本デバイスからは予期されない。
【0107】
図9Bは、印加される二乗平均平方根(RMS)電場E
RMSに関する、31S
1/2 Rydberg状態を中心とする、計算されたStarkマップをプロットする。
図9Cは、
図9Aおよび9Bを使用して取得される、マイクロ波E
RMS対周波数をプロットする一方、
図9Dは、それぞれ、2.5(トレース902)および4.35GHz(トレース904)マイクロ波に関して、測定されたEIT線をプロットする。
【0108】
本明細書で議論される実施例は、所望の用途特有のRF/マイクロ波周波数における高電場測定感度のための、ハイブリッド式デバイスの幾何学形状の当業者による設計選択肢の問題として、適合性を図示する。本実施例では、マイクロ波電場振幅は、分光学的に測定されたマイクロ波誘起AC-Starkシフト線をGaussian関数に適合させ、ルビジウム31S Rydberg状態の計算されるStarkシフトを使用して、ピーク周波数偏移を電場値に変換することによって取得される。
図9Bは、印加される電場に関する、無場31S
1/2 Rydberg状態を中心とする、計算されたStarkマップを示す。
図9Cは、マイクロ波周波数の関数としてキャビティの内側で測定される、結果として生じるマイクロ波電場を示す。4.35+/-0.05GHz共鳴では、キャビティ増強マイクロ波場E
RMS>=13.5V/cmが、ピーク位置の<0.1MHz適合不確実性によって与えられる、相対的不確実性<0.3V/cmを伴って測定された。
【0109】
図9Aでは、EIT線幅は、2.5GHzにおける21.7MHzから4.35GHzにおける84.0MHzに増加する(また、
図9D参照)。本増加は、測定体積内の場不均質性に起因し、これは、EITビーム720、722およびキャビティチャネル710が、サイズ匹敵するし、キャビティ縁における近接場効果が、光学ビームによってサンプリングされるために生じる。EITビームが、原子蒸気内のキャビティに進入し、そこから退出する、9mm長キャビティチャネル710の端部における縁および角もまた、寄与し得る。より狭い分光線幅を要求する測定用途のために、不均質場の広がりは、より大きいキャビティ体積を伴うキャビティ構造を実装することによって、および/またはより空間的に局所化された測定のためのより小さいビームサイズを使用することによって、緩和され得る。
【0110】
電場のためのキャビティ増強係数を推定するために、
図9A-9Dを参照して上記に説明されるキャビティ増強4.35GHz場測定が、キャビティ710の外側で測定された場と比較され得る。このために、EITビーム720、722は、蒸気セル702および導波管735の正面に向かってキャビティ710の中心からΔz=-0.9mm移動される。キャビティの外側の本位置における測定可能線偏移を取得するために、注入マイクロ波パワーは、-10から-5dBmに増加される。これは、
図9A-9Dの議論において使用されるものと比較して、パワーが3.16倍高い(かつ場が1.78倍高い)。これらの条件下、E
RMS=1.47V/cmに対応する、-3.80MHzの4.35GHzマイクロ波場誘起AC-Starkシフトが、測定される。キャビティの外側のRF場に関する本値を使用して、増加された注入パワーを考慮し、小Δz(|Δz|/d=0.03<<1(式中、|Δz|=0.9mmは、キャビティに対するビーム位置であって、d=29.1mmは、導波管の短軸である)にわたる導波管から放出される場の変化を無視すると、感度の24dB増加に匹敵する、
【化1】
のキャビティ場増強係数が、取得される。
【0111】
yに沿って線形に偏光された1V/mの振幅を伴う入射4.37GHzマイクロ波場に関する、ハイブリッド式原子キャビティ構造の内側の場をシミュレートする、シミュレーションが、
図12を参照して下記に議論される。本シミュレーションは、18.6の増強係数をもたらし、これは、4.35GHz場に関して測定された値より約14%高い。差異は、測定された場とシミュレートされた場との間の周波数の0.02GHz差によって説明され得る。シミュレーションは、着目マイクロ波周波数に関する、壁寸法および材料誘電定数を含む、正確なセル幾何学形状に依存する、誘電セル702に起因する、マイクロ波損失を考慮しない。
【0112】
ハイブリッド式デバイスの相補的実装では、共鳴構造510を原子蒸気を含有するセルの中に挿入する代わりに、原子蒸気はまた、本発明の範囲内において、共鳴構造内に組み込まれてもよい。これは、例えば、原子測定がRFパワーおよび場の絶対平準化のために既存のRFシステム(ホーン受信機、導波管等)の中に組み込まれる必要がある、用途において望ましくあり得る。実施例として、
図1を参照して議論される感知要素100では、原子蒸気を含有する、類似する狭誘電カプセル232が、
図5A-5Bまたは7A-7Dに示されるもののように、共鳴構造510の測定チャネル710内に組み込まれ得る。本発明の範囲内では、共鳴構造510は、任意のタイプのRF共鳴器または構成要素であってもよい。
【0113】
導波管1004の内側に蒸気セル1002を有する、本発明の範囲内の別の実装が、ここで、
図10Aおよび10Bを参照して説明され、それぞれ、概して、数字1000によって指定される、場測定システムの側面および端面図が、示される。導波管1004内の孔1006は、EITカプラ1008およびプローブ1010ビームの通路を提供する。本システムは、導波管の内側の高強度場測定のために使用されている。そのようなハイブリッド式システムは、有利には、回路を通したパワーの絶対平準化のために、既存のRF回路の中に挿入され得る。実施例として、ホーン、ダイオード、導波管構造、または同軸ケーブル内に原子蒸気を組み込む、ハイブリッド式デバイスは、マイクロ波源、伝送システム、ならびに地上、海上、空中、および宇宙ベースの用途における他の器具において、測定、較正、またはパワー平準化等のための多用途のコンパクトな内部モジュールを提供する。
【0114】
本明細書に説明されるようなハイブリッド式原子共鳴器デバイス700を使用して達成可能な絶対感度は、全て当業者の設計能力内である、より高い主および/または軌道量子数を伴うRydbergレベルならびにキャビティ増強RF場に共鳴結合されるRydberg状態を実装することによって、目的に合わせられ、さらに増加され得る。全てのそのような増強は、本発明の範囲内である。場増強および感度は、例えば、従来説明されるもの以外の共鳴構造を用いて、かつ当技術分野において公知である、または将来的に発見されモジュール、メタ材料を用いて、ハイブリッド式デバイスをエンジニアリングすることによって、さらにカスタマイズされてもよい。同様に本発明の範囲内である、原子蒸気が共鳴構造内に組み込まれる、相補的実装は、原子測定能力を既存のRFシステム(ホーン受信機、導波管等)およびDC回路/構成要素の中に統合するとき、特定の利点であり得る。
ハイブリッド式システムにおける偏光選択性
【0115】
1つの上記に説明されるもののようなハイブリッド式デバイスの別の特徴は、異なるRF/マイクロ波偏光を区別し、偏光に敏感な原子ベースの場測定を達成する、その能力である。
図5A-5帯域7A-7Dに示されるキャビティ構造に関して、キャビティ710は、キャビティ軸Yに沿って線形偏光成分を伴うRF場のみが、キャビティの中に結合され、活性測定体積内で場増強される、RF偏光フィルタとして作用する。
【0116】
図11Aは、垂直(Y軸)に対するマイクロ波場偏光ベクトルの異なる角度位置Θに関する固定注入パワーにおける印加されるマイクロ波周波数の関数として、実験31S Rydberg AC-Starkシフトを示す。これは、10
0ステップずつ、Θ=0
0(Yに沿った導波管の短軸)から90
0度(Xに沿った導波管の短軸)に、導波管735(
図8Aに示される)をXY-平面においてZ軸を中心として反時計回りに回転させることによって行われる。Θ=0
0では、マイクロ波偏光は、
図11Aに示される曲線1102から明白であるように、キャビティの中への最大結合のために、キャビティ710のキャビティ軸と整合される。Θが増加するにつれて、信号は、キャビティ軸と平行なマイクロ波場の線形(Θ=0
0)成分が減少するため減少する。
図10Bは、
図10Aに示されるデータに関するΘの関数として、4.35GHzにおけるマイクロ波電場をプロットする(前述のような31S線偏移および計算されたStarkマップから取得される)。Θが、増加するにつれて、場は、マイクロ波場ベクトルのΘ=0
0成分(共鳴の中に結合する成分)がΘ依存性に伴って減少するため減少する。
図10Bにおける鎖線曲線1110によって与えられる、データへのコサイン適合は、本予想を確認するが、キャビティ内の4.35GHz場が、若干の電極不整合および表面品質等のキャビティ欠陥に起因して、Θ=90
0においてゼロに到達しない。共鳴器の中に結合され、共鳴器ギャップ内の原子によって検出される、線形に偏光された共鳴電磁波のパワーは、cos
2Θ依存性(Θは、上記に定義されたマイクロ波偏光角度である)を有するということになる。したがって、そのようなキャビティ共鳴器は、統合されたマイクロ波偏光子の機能性を模倣することが分かる。
電極統合蒸気セルを利用したDC場同調能力
【0117】
弱RF場のRydberg-原子ベースの測定の主要な限界は、それらが、概して、RF場が、大電気双極子モーメントおよび電場への強原子応答をもたらす、双極子許容Rydberg遷移を伴って共鳴することを要求することである。その結果、弱場測定は、所与の原子内の有限数の離散遷移のうちの1つに伴って共鳴する、RF周波数の離散セットに関してのみ行われ得る。本限界を克服するために、外部場を使用して、原子レベルエネルギーおよび遷移を、測定のために十分な原子感度をもたらす、着目RF場に伴って共鳴または近共鳴するように、同調させることが望ましい。本発明に従って初めて提案される、ハイブリッド式原子共鳴器は、本目的のために、キャビティ/アンテナ/電極構造自体を使用して、局所場を原子に印加するための実践的手段を提供する。
【0118】
上記に説明されるハイブリッド式原子共鳴器700を使用して、本発明のさらなる実施形態によると、RF場増強の文脈において上記に説明される同一電極が、同時に、または別個に、DC電場を印加し、Rydberg遷移周波数を弱RF場に伴って共鳴するようにStark同調させために使用される。
図13Aおよび13Bは、それぞれ、印加されるDC電場に関する30D Rydberg状態の実験および計算されたDC Starkマップを示す。Starkマップは、ゼロ場を中心として対称であることに留意されたい。
図13Aにおける実験スペクトルマップは、一方の電極を接地し、電圧を他方の電極上に印加し、DC場を測定チャネル710(
図5Bに示される)内に発生させることによって、キャビティを使用して取得される。
図13Aのマップは、j=2.5微細構造成分の3つの|mj|=0.5、1.5、2.5サブレベルおよびj=1.5微細構造成分の|mj|=0.5、1.5サブレベルの両方を示す。ゼロ場および線形に偏光された光学ビームでは、
図5Bに図示されるルビジウムEITラダースキームは、5P3/2超微細構造によるm-混合に起因して、|mj|=0.5および1.5Rydbergサブレベルを光学的に励起させる。実験スペクトル内の弱j=2.5、すなわち、|mj|=2.5 Rydbergレベルの出現は、光学-ビーム偏光の若干の不整合または楕円率に起因し得る。
【0119】
図13Aおよび13Bは、原子蒸気またはガスと統合された電極を伴うハイブリッド式原子キャビティまたは類似構造内のDC電場を使用した、Rydbergレベルおよび遷移の調整の実証を提供する。実施例として、30D
5/2および30D
3/2mj=1.5レベル間の2RF光子遷移が、検討され得る。0V/cmの電場が印加される状態では、これは、約540MHzにおいて共鳴し、2個の約270MHz RF光子を使用して、二次において双極子許容される、遷移に匹敵する。+/-10V/cmの電場では、状態間のエネルギー差は、約h*700MHz(hは、適切な単位におけるPlanck定数である)まで増加し、遷移は、2個の約350MHzRF光子を使用して、双極子許容される。0~+/-10V/cmのDC場の印加によって、遷移を約270~350MHzのRF光子に伴って共鳴するように持続的に同調させることができる。可同調性の範囲は、例えば、より高い場値、異なる偏光率および電気双極子モーメントを伴う異なる原子状態、ならびに多光子励起プロセスを使用して、本発明の範囲内において拡張されることができる。
外部電極を使用したAC-Stark同調
【0120】
弱Ka帯域マイクロ波電場の連続周波数測定も同様に、両方とも上記に説明されるような内部または外部同調電極を用いて印加される、低周波数RFを使用して、AC-Stark同調Rydberg遷移によって、遂行されることができる。本発明の一実施形態では、AC-Stark同調100MHz RF場が、外部電極を使用して、蒸気セルに印加され、遷移を無RF場遷移からオフ共鳴にマイクロ波に伴って共鳴するようにStark同調させる。
図14は、100MHzRF場によって変調47S状態(1401)および47P状態(1403)の両方に関する、計算されたFloquetスペクトルマップを示す。47Sおよび47Pマップは、オーバレイされ、同一ゼロ場周波数を基準とされ、47S1/2から47P3/2遷移のRF誘起微分偏移を示す。したがって、0~200V/cmの印加される100MHzRFでは、共鳴マイクロ波遷移は、約200MHzずつ持続的に下方同調されることが予期され得る。
【0121】
47S状態におけるRF強度および電場較正が、
図15に示され、入射RFパワーを励起ビームの異なるStark離調における47S状態の偏移にマッピングする。実験および計算されたマップは、良好に合致し、dBI=dBm+50.5のdBI/dBm変換およびI=I
0*10
dBI/10=1/2εcE
0
2(式中、I
0=1W/m
2であって、εは、自由空間誘電率であって、cは、光の速さである)を使用した電気(E
0)場較正をもたらす。
図15における較正は、次いで、K
a帯域マイクロ波が共鳴に同調される、47Sから47P遷移(
図14における曲線1405)の所望の微分偏移のために、RF電場を設定するために採用される。
【0122】
擬交差が、例えば、Zhang et al.の「Stark-induced L-mixing interferences in ultracold cesium Rydberg atoms」
Phys.Rev.A,vol.87,033405(2013年)によって報告されるように、高l状態における電場誘起l-混合集団の解釈において使用されている。
図16では、セル内の4つの異なる注入RFパワー/場強度に関する、固定-14dBIマイクロ波強度(別個の較正)における、47S状態の測定されたEITスペクトル対37.51663492GHz(無RF遷移周波数)からのマイクロ波周波数離調が示される。RFが印加されない状態(
図16における上のプロット)では、47S線は、マイクロ波周波数が無RF場共鳴遷移を横断して走査されるにつれて、予期されるAutler-Townes挙動を呈する。擬交差の中心は、0MHz離調にあり、Autler-Townes分裂ピークは、対称的に分裂される。RFパワー/場が、増加されるにつれて(図中の下プロット)、擬交差は、より大きいマイクロ波離調に偏移し、AC-Stark同調遷移周波数を追跡する。RFの-38.2dBm印加(
図16の最下プロット)では、マイクロ波は、約60MHzの離調における遷移に伴って共鳴する。
【0123】
図17では、測定された擬交差の中心は、約200V/cmまでの一連の値に関する印加されるRF電場の関数としてプロットされる。不確実性バーが、+/-10MHzの近似EIT線幅に設定される。
図14に示される計算された微分偏移は、再びここで、実験偏移との比較のために、曲線1701によってプロットされる。実験と計算との間の合致は、ほぼ範囲全体にわたって良好であって、測定されたAC-Starkシフトは、印加されるRF場への予期される二次依存性を呈する。最高RF場では、47Sおよび47P状態の変調側波帯間の結合は、原子マイクロ波場結合強度の変動とともに、ある実験条件(大光学Rabi周波数およびEIT線幅)下では、スペクトル内の擬交差の中心を判別することを困難にし、プロットされた測定値と計算値との間の逸脱につながる。ここで測定された約200MHzマイクロ波離調を超える連続AC-Stark同調が、可能性として考えられ、変調側波帯と強場内の他のFloquet状態との間の遷移もまた、使用されてもよい。
【0124】
本発明の範囲内では、AC-Stark同調はまた、連続周波数マイクロ波電場測定のために、感知要素内にあるが、蒸気セルの外部の電極を使用してもよいことを理解されたい。
統合されたスプリットリング共鳴器
【0125】
本発明の範囲内である、場調整構造の一実施例が、
図18A-18Dを参照して説明される、スプリットリング共鳴器1801によって提供される。スプリットリング共鳴器1801は、一般に、電磁スペクトルのマイクロ波、mm-波場、およびTHz領域におけるメタ材料のために使用される、単純共鳴構造である。スプリットリング場増幅器は、分光法および光採取用途のための光学および赤外線スペクトル範囲において使用されるマイクロスフェアのプラズモン共鳴と、概念上の類似性を共有する。原子ベースのRF電場感知用途において、低雑音場増幅、高感度、および偏光選択性を達成するようにエンジニアリングされる、統合されたスプリットリング構造を有する、量子RF感知要素内の原子蒸気セルは、高度感知能力のための原子キャビティ構造の別の実施形態を構成する。
【0126】
図18Aは、1つの基本タイプのスプリットリング構造の構造、すなわち、単一スリットを伴う管状リングを図示する。共鳴時、入射mm-波場1803の電場は、スリット(または「ギャップ」)1805において圧縮された状態になる。ギャップ1805はまた、測定チャネル710を画定し、そこで、原子蒸気が、増幅された場の測定のために、光学的にプローブされる。本動作原理は、差込図に示されるスプリットリングのための1×0.2×0.2mm寸法を伴うスリット/ギャップおよび右からキャビティ上に入射する垂直に偏光されたマイクロ波場に関して、
図18bに図示される。
図18aでは、入射マイクロ波場周波数(固定1V/m入射場振幅)の関数として、3つの異なるギャップサイズおよび幾何学形状に関して、本共鳴器タイプのスリットの内側のシミュレートされた電場値が、プロットされる。これらのスプリットリングは、14、44、および54GHzにおいて共鳴を呈し、それぞれ、46.8倍、74.1倍、および27.3倍の場増幅係数を伴う。共鳴周波数は、スプリットリングの単純幾何学的パラメータを用いてエンジニアリングされる。
図18Cおよび18Dでは、正方形管状構造を含む、他のスプリットリング共鳴器構造のシミュレートされた共鳴挙動が、プロットされ、これは、42.5、125、および94GHzにおける増幅を提供し、81.9倍、12.5倍、および9.4倍の個別の増幅係数を伴う。これらの増幅係数は、約20dB~35dBに及ぶ、固有の非電子利得に対応する。1mV/mを増幅を伴わない標的場測定感度に対する上限として使用すると、42.5GHzマイクロ波の81.9×場増幅をもたらす、ハイブリッド式デバイスは、(入射場に関して)0.01mV/mレベルにおいて有効感度を達成し得る。
【0127】
蒸気セル内の場増強に適用される、同心高Qマイクロ波キャビティ等の他のスプリットリング共鳴器構造ならびに他のタイプの共鳴器も、本発明の範囲内である。
温度安定化のための蒸気セルの非接触光学加熱
【0128】
ここで、
図19A-19Cを参照して説明される、無接触全光型蒸気セル加熱は、温度制御ハードウェア(電子機器、金属ワイヤ)が検出器のRF場応答を改変してはならない、Rydberg RFセンサおよびハイブリッド式デバイスのための活性蒸気圧力制御システムとして不可欠な構成要素であり得る。本発明の実施形態によると、1つ以上の光学的に吸収性の材料が、セルの中に組み込まれる。光学的に吸収性の材料は、入射光ビームの吸収または非弾性散乱を介して加熱され、これは、ひいては、より高い原子蒸気密度のために、セル内の原子蒸気(または固体金属)を加熱する。原子は、例えば、IR吸収性ガラスから構築されたセルを使用することによって、光学的に加熱された要素と伝導性に熱接触する、または蒸気エンクロージャと熱接触する、光学的に吸収性の材料要素によって、間接的に加熱されてもよい。
【0129】
加熱に加え、動作の間、セルの温度を安定化させることが重要である。これは、測定が、外部空気温度がセル温度を有意に改変し得る、環境において実施されるとき、重要であり得る。これは、特に、その原子温度および密度が、そのより小さい体積に起因して、環境温度変動をより受けやすい、小セル(約mmまたはより少ない)を使用するときに懸念される。これに対処すために、能動的安定化が、本発明の範囲内において、原子遷移に伴って共鳴する第2のレーザビームのセルを通した光学吸収を介した原子蒸気温度または密度の変化を能動的に監視することによって、実装されてもよい。本吸収信号は、所望の温度および密度に到達するために要求される、光学加熱パワーの量に対する能動的フィードバックを提供する。さらに、セルは、例えば、絶縁真空層を光学的に加熱されたセルと環境との間に組み込むことによって、その環境から断熱されることができる。
【0130】
図19A-19Cを参照すると、Rydberg RFセンサの中に統合される全光型蒸気セル加熱方法に従って、IR吸収性ガラスカプセルが、明るい光源によって照明され、原子蒸気セルが位置する、内側温度を上昇させる。
図19Aおよび19Bは、4mm内径原子蒸気セル1903を包囲する、IR-ガラスカプセル1901を示す。
図19Cは、全光型加熱試験プラットフォームを示す。50ワットハロゲン球等の光源1905が、カプセル上で撮像され、IRガラスカプセル1901の温度が、IRガラスカプセル体積内に設置されたサーミスタ(図示せず)等の温度センサを使用して監視される。サーミスタと光源強度との間のフィードバックループが、カプセルの内側の温度を調整し、原子蒸気セルの均一加熱のために、安定化された動作温度を提供するために実装される。カプセル内で均一に分散される、最大130℃の定常状態温度が、一実施形態では、達成される。50℃(小4mm内径Rbセルを使用するときの典型的動作温度)におけるカプセル温度の能動的温度安定化もまた、実現されている。
変調レーザ場を使用したRF位相測定能力
【0131】
感知要素を採用して、RF場の位相を抽出するための方法が、ここで説明される。本発明の実施形態によると、表面上のコヒーレント電磁場の位相敏感記録は、有利には、全ての空間内の場の再構成を可能にし得る。本再構成原理の用途は、豊富であって、光学におけるホログラフィ、SARおよびInSAR等の干渉スキームに基づくレーダ、ならびに試験下のアンテナによって放出される場の振幅および位相の近接場測定に基づくアンテナ放射パターンの遠方場特性評価を含む。列挙された最後の用途では、測定は、表面上で実施され、近接場/遠方場変換は、全ての空間内の場を計算するために印加される。
【0132】
場測定における位相感度を達成するために、ホログラフィック方法が、典型的には、採用される。そこでは、参照波が、物体によって放出される波に干渉する。この場合、物体は、完全に特性評価される必要があるRF場を放出する、試験下のアンテナであると見なされる。明確に定義された振幅および位相を伴う、参照波は、好ましくは、原子蒸気セルまたはハイブリッド式原子キャビティセル構造内の物体波に干渉する、平面RF場である。ここでは、セルは、原子場相互作用体積が任意の所与の方向に横断して1つ未満のRF波長を測定するように製造される。原子場相互作用体積は、原子蒸気と、プローブレーザビームと、カプラレーザビームとの間の重複によって与えられる。物体および基準mm-波またはマイクロ波場のコヒーレント電場和の大きさが、次いで、明確に確立された方法を使用して測定される。
【0133】
測定された大きさは、参照波と物体波との間の位相差異に依存する。原理上、そのような読取値は、物体を囲繞する表面上で取得されることができる。これは、例えば、RF波長よりはるかに小さい空間分解能を用いて、蒸気セルセンサユニットを好適なグリッド上に移動させることによって達成され得る。グリッド上で測定された位相敏感電場値は、次いで、物体波の完全3次元再構成を可能にする。試験下のアンテナの遠距離を取得するために、近接場/遠方場変換のための公知のアルゴリズムを使用することができる。本測定方法は、ハイブリッド式原子キャビティ構造(上記参照)または他の分光技法を利用する電場ベクトルのために、完全偏光感度を含むように容易に拡張されることができる。
【0134】
RF場位相測定では、明確に特性評価された参照波の発生は、大きな問題を提示する。比較のために、最初に、光学ホログラフィを検討する。そこでは、参照波は、典型的には、写真乳剤(または同等物質)の層内に散乱する物体に干渉する、拡張されたほぼ完璧な平面波レーザビームである。光学ホログラフィでは、参照波の純度が重要であることは、周知である。システムは、主として、塵埃粒子および他の欠陥によって生じる回折リングがないべきである。平滑ガラス表面からの参照波のスプリアス反射は、さらに大きな問題である。RF測定の文脈では、本条件は、最先端無エコー性チャンバを使用するときでさえ、遭遇することが非常に困難である。定量的研究のために、また、参照波は、固定振幅、または少なくとも、周知のゆっくりと変動する振幅関数を有することが重要であろう。大表面にわたって平滑振幅挙動を有する、無欠陥RF参照波の調製は、大きな課題を提示し、常時、可能ではない。
【0135】
図20Aは、本発明のある実施形態による、概して、数字2000によって指定される、感知要素後端と、RF電場の位相敏感測定のための動作原理を図式的に描写する。マイクロ波ホーン2002(MW)は、試験または他の着目物体波下の任意のアンテナを表す。RF源2006によって駆動される、ファイバ変調器2004は、RF参照ビートを蒸気セル106内の原子に送信されるカプラビーム104上に位相コヒーレントに転写する。RF参照ビートは、通常、位相敏感(ホログラフィック)場測定において必要とされる、参照ビームに取って代わる。原子ベースのRF感知要素内の蒸気セル106は、寸法約1mmであって、780nmおよび480nmレーザビームにファイバ結合される。片側がファイバ結合された感知要素100は、最小限の誘電プロファイルを伴う、センサスティック(図示せず)上に搭載される。感知要素およびスティックは、実際にRF場内にある、検出器の唯一の部分である。ファイバ変調器および光学位相制御要素は、感知要素100の外部のセンサの遠隔制御ステーション(図示せず)と統合され、分析のために、レーザ、信号読取電子機器、および算出ユニットを含む。
図20Bは、位相敏感RF電場測定において使用される、量子機械的レベルスキームおよび光学/RF励起経路を描写する。
【0136】
これらの実践的測定の必要性に対処すために、解決策が、原子ベースのRF感知要素および測定の中に統合される。動作原理は、電気光学変調技法を介して、位相コヒーレントRF基準を光学結合レーザビーム上に転写することである。市販されている、ファイバ光学高周波数変調器を使用して、カプラビームが、測定されるべきRF場の周波数と同じ周波数ω
RFにおいて周波数または振幅変調される。一実装では、場周波数は、2つの近隣S型Rydbergレベル間の分離の半分とも同じであるように選定される。レベルエネルギーおよびその分離は、非常に高精度まで把握される。そのような遷移に関して、多くの選択肢が存在する。さらに、カプラレーザビーム104の搬送波周波数は、Sレベルの合間のnP
3/2 Rydbergレベルへの遷移2010に伴って共鳴するように調節される。Rydberg nPレベルは、2つのS Rydbergレベル間の中間点になく、S状態共鳴からの変調カプラ周波数2012の離調Δにつながる。ルビジウムでは、これらの離調は、約100MHzであって、典型的には、関与する遷移のいずれかのRabi周波数より大きい。故に、1つの結合レーザ光子の吸収ならびにRF光子の吸収(
図20BにおけるチャネルB)または誘導放出(
図20BにおけるチャネルA)を介した5PからnPへの遷移を説明する、2光子Rabi周波数は、以下によって与えられる。
【化2】
【0137】
そこでは、
【化3】
および
【化4】
は、S Rydbergレベルへの光学カプラレーザ遷移のRabi周波数であって、
【化5】
は、S RydbergレベルからnP
3/2 RydbergレベルへのRF遷移のRabi周波数であって、
【化6】
は、RF場の位相である。また、
【化7】
および
【化8】
は、結合レーザの変調側波帯の位相である。方程式における
【化9】
の前の符号には、重要な差異が存在することに留意されたい。さらに、RF場振幅E
RFは、
【化10】
であるため、
【化11】
内に含まれ、式中、
【化12】
は、RF Rydberg/Rydberg遷移に関する周知のRF電気双極子遷移行列要素である。5P状態とnP Rydberg状態との間の正味結合
【化13】
が、次いで、
図20BにおけるチャネルAおよびBのコヒーレント和によって与えられる。
【化14】
式中、便宜上、
【化15】
および
【化16】
は、同一であって、両RF Rabi周波数は、同一である(その両方とも、良好な近似に該当する)と仮定されている。これらの仮定は、重要ではないが、数学を解明することに役立つ。光学位相
【化17】
および
【化18】
は、変調結合レーザビームの全ての周波数成分が正確な同一幾何学的経路を辿るため、明確に定義され、ドリフトを受けにくい。有用な光学構成要素として、変調カプラレーザビーム内の4プリズム位相制御要素または均等物が、光学位相
【化19】
と
【化20】
との間の差異を制御するために使用される。前の方程式から、正味結合が以下の形態をとることが分かる。
【化21】
式中、
【化22】
は、(複合)位相独立前因子であって、Φは、カプラビーム内の分散制御要素2003を用いて調節され得る、オフセット位相である(
図20Aでは、これは、プリズムユニット2005を左/右に偏移させることによって行われる)。スペクトル内で観察される、Rydberg-EIT線の強度は、概して、
【化23】
に比例するため、EIT線強度は、
【化24】
に比例する。EIT線強度は、したがって、RF場に関する位相情報を搬送する。5PからnPへの遷移は、禁止されることに留意されたい。したがって、カプラビーム搬送波(
図24bにおける薄青色線)は、分析に付加的項を導入しない。より一般的場合では、そのような項は、当然ながら、含まれ得る。さらに、前因子
【化25】
の大きさは、カプラビーム内の分散制御要素に伴ってΦを変動させながら、ピークEIT線強度を見出すことによって、判定されることができる。
【化26】
に関する取得されるピーク値は、次いで、
【化27】
を明らかにし、これは、ひいては、RF電場の大きさをもたらす。このように、E
RFおよび
【化28】
の両方が、測定されることができる。
【0138】
本説明では、RF場位相(および振幅)測定能力は、光学周波数変調を介してRF参照波を導入することによって遂行される。本アプローチの新規性は、量子RF感知要素内の原子に直接印加されるレーザビームの光学変調と置換することによって、外部RF参照波の必要性を排除するという点にある。実際は、参照波はまた、
図5Aおよび5Bに図示されるようなセル統合電極またはキャビティ構造(ハイブリッド式システム)を使用して、もしくは外部参照波を使用することによって、原子ベースのRF感知要素内の感知原子の場所にも導入され得る。
原子蒸気セル内の変調RF検出
【0139】
電気通信用途のために、変調RF場の検出が、所望される。<100nsのEIT応答時間に起因して、高周波数場の振幅および周波数変調が、直接、量子干渉に依拠せずに、原子ベースの感知要素をRF/光学変換器として使用して検出されることができる。同様に、RF位相変調検出は、上記に説明される位相検出能力から得られる。以下では、典型的シナリオが、説明される。
【0140】
音響周波数におけるAM変調:約100MHz~数100GHzの任意の搬送波周波数におけるFloquetマップ内の大部分のRydberg状態は、数千デバイに及ぶ大きさを伴う、微分動的双極子モーメントを呈する。マップ上のEIT線は、カプラおよびプローブRabi周波数によって与えられる線幅を有する。変調目的のために、中程度のプローブおよび大カプラRabi周波数が、AMに対して高速EIT応答時間を維持し、EIT線を数十MHzまで広げるように、使用されてもよい。搬送波RFがEIT試験セルに印加され、Rydberg-EIT線の変動点のうちの1つ上でカプラレーザ周波数の動作点を選定すると、RF信号のAMは、EIT感知要素のフォトダイオード読取における直接応答につながるであろう。微分双極子モーメントdに関して、場内のAM深さdEは、dE<h×dL/dでなければならず、式中、dLは、EIT線幅である。故に、相対的変調深さは、dE/E<h×dL/(Ed)である。本値は、正確な条件および感度要件に応じて、数10%から1%まで及び得る。
【0141】
本発明の一実施形態によると、マイクロホン、線形増幅器、および電圧制御RF減衰器を使用して、音響信号に変換し、AM変調RF試験場を生産してもよい。EIT試験信号は、アンテナまたはマイクロ波ホーンを使用して伝送される。EITセルは、受信機として使用される。説明されるように動作点を選定することによって、EITプローブフォトダイオード信号は、音響周波数範囲を伝送させる、帯域通過を通して送信される。検出された信号は、増幅され、記録デバイスおよび/またはラウドスピーカに送信される。本方法では、受信機側(EITセルおよびEITプローブレーザ信号の処理)において、復調は、要求されないことに留意されたい。EIT物理学は、復調器としての役割を果たす。同一受信機原理は、他の場所からAM変調伝送を検出するときにも適用されることができる。アンテナ受信機の中に組み入れられる、EITセンサセルは、光学的に結合されるため、それに基づくAM受信機は、高度に耐EMIおよびEMP性であって、通常動作条件下で敏感なAM無線受信機を構成しながら、高電圧スパイクに耐えることができる。FM場の変調は、類似方式において実装されることができる。
インコヒーレントRF場およびRF雑音測定能力
【0142】
本発明に先立って、Rydberg-EITシステムは、Autler-Townes分裂がコヒーレント場の相互作用を要求するため、コヒーレントRF場のみを特性評価することが可能であった。その物理的制約は、ここで説明されるように、本発明に従って初めて取り除かれた。本発明のある実施形態による、RF雑音属性を定量化する際のステップが、ここで、
図22を参照して説明される。第1のステップ2201では、インコヒーレントRF雑音場の存在下の所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはRydberg-EITスペクトルが、計算される。雑音の存在下のRydberg-EITのモデルは、以下の節に提示される。測定光が、原子蒸気セル内で伝搬され(2203)、原子蒸気のスペクトル特徴が、測定される(2205)。測定および計算されたスペクトル特徴が、比較され(2207)、合致されるスペクトルが、識別される(2209)。これは、スペクトル雑音密度、スペクトルパワー、電場振幅、偏光、RF雑音場伝搬方向、およびそのようなRF雑音を放出し得る、ホーンアンテナの利得等の源特性を含む、インコヒーレントRF雑音の存在およびRF雑音の属性を定量化するステップ(2211)を提供する。
【0143】
原子蒸気内のRydberg-EITおよびAutler-Townesを用いたRF電場測定では、EITプローブビームは、2つの原子レベル|1>および|2>を結合し、EIT結合ビームは、レベル|2>をRydbergレベル|3>に結合し、測定されるべきRF場は、レベル|3>を別のRydbergレベル|4>に結合する。RF駆動遷移のRabi周波数ΩRFが、次いで、EITスペクトル内で観察される2つの線のAutler-Towns(AT)分裂において明白となり、これは、ひいては、基本原子物理学計算を介して、電場につながる。本タイプの原子ベースのRF電場測定におけるブロードバンドRF場雑音の影響を考慮するために、ブロードバンドマイクロ波雑音の影響の定量的説明が、要求される。考慮される状況は、マイクロ波増幅器が、典型的には、ブロードバンド雑音を増幅器の出力に追加するため、非常に一般的であり得る。すなわち、雑音は、したがって、原子ベースの電場測定に影響を及ぼすであろう。
【0144】
汎用実験試験状況に準拠するために、本処理では、その振幅が測定されるべきコヒーレントマイクロ波信号と雑音信号の両方が、ホーンの遠方場限界を上回る距離に位置する、共通マイクロ波ホーンからから伝送されると仮定される。本明細書に説明される基本理論は、雑音誘起影響の物理学を提示するために十分である。理論は、後に、より一般的タイプの場幾何学形状を網羅するように拡張され、より広範囲使用に広げることができる(実質的に新しい基本物理学洞察を追加せずに)。
【0145】
Rydberg-原子系に及ぼすブロードバンド雑音の影響は、2つの主要部分から成る。コヒーレント源(レーザ、コヒーレントマイクロ波放射)によって取り込まれる、Rydbergレベル|3>および|4>は、Rydberg状態間の遷移に伴って共鳴する雑音スペクトルの周波数成分に起因して、他のRydbergレベルに遷移し得る。本プロセスは、黒体放射によって駆動される減衰に類似する。放射場が量子化され、遷移率がFermiの黄金律ならびに可能性として考えられる場偏光および利用できる最終角運動量状態にわたる総和から取得される、通常の処理は、(マイクロ波ホーンの幾何学形状によって与えられる)明確に定義された偏光および伝搬方向を有する雑音場に適用されるように修正される必要がある。また、場の黒体エネルギー密度は、状況特有の雑音特性によって置換されなければならない。原子の場所では、雑音は、既知であり得るか、または実際には研究の対象であり得るかのいずれかである、スペクトル強度、すなわち、W/(m
2Hz)で測定される、周波数間隔あたりの雑音強度を有する。
【化29】
【0146】
測定されるべきコヒーレントマイクロ波場および雑音が、同一マイクロ波ホーンを介して、原子に印加され、原子が、そのホーンの遠距離に位置する、仮定されたRF場試験シナリオをモデル化するために、1つの寸法(ホーンから発出するマイクロ波場の伝搬方向)のみにおいて場を量子化し、固定場偏光を仮定する。初期状態|i>から最終状態|f>への雑音誘起遷移率R
fiに関して、分析は、以下であることを示す。
【化30】
式中、nは、場偏光単位ベクトルであって、ν
fiは、遷移周波数(E
f-E
i)/hであって、E
fおよびE
iは、初期および最終Rydbergレベルのエネルギーを示す。これらの率は、SI単位であって、「原子あたりかつ秒あたり」単位を有する。R
if=R
fiであることに留意されたい。所与の着目状態(本場合では、|3>および|4>と標識される)に関して、既知の雑音スペクトルI
ν(|ν|)に関する率R
fiを計算する。
【0147】
仮定された測定シナリオでは、測定されるべきコヒーレントマイクロ波場は、Rydberg状態|3>と|4>との間の遷移を駆動する。雑音スペクトルが、遷移|3>および|4>を網羅する場合、雑音誘起遷移が、等率R34=R43を伴う2つの雑音誘起双方向減衰項の形態において、Master方程式内に含まれなければならない。さらに、レベル|3>または|4>もしくは両方を伴う任意のオフ対角線密度行列要素のコヒーレンス減衰率内に、R34およびR43を含むことが必要である。
【0148】
コヒーレントに駆動される|3>←→|4>遷移と異なる遷移|3>→|f>および|4>→|f>に関して、雑音は、Rf3=R3fおよびRf4=R4fの原子あたりの率で遷移を駆動する。雑音取込レベル|f>は、雑音誘起遷移がランダム量子位相を有するため、相互およびレベル|1>-|4>のいずれとの間にもコヒーレンスを有していないことに留意されたい。故に、雑音に起因してレベル|3>から取り込まれた状態にある、全てのレベル|f>は、仮説上のレベル|d>にまとめられ得る。同様に、レベル|4>から取り込まれた状態にある、全てのレベル|f>は、仮説上のレベル|e>にまとめられる。電気双極子選択ルールに起因して、仮説上のレベル|d>(|3>からの雑音によって取り込まれた状態にある)にまとめられるレベルと仮説上のレベル|e>(|4>からの雑音によって取り込まれた状態にある)にまとめられるレベルとの間には、重複が存在しない。
【0149】
仮説上のレベルへの正味率は、以下となる。
【化31】
また、R
d3=R
3dおよびR
e4=R
4eとなる。雑音はまた、同一場量子化モデルに基づいて、二次摂動理論を使用して計算される、AC偏移を誘起する。レベル|i>=|3>または|4>の偏移は、以下のように見出される。
【化32】
【0150】
積分限界νminおよびνmaxは、雑音スペクトル全体が被覆されるために十分に広く選定される。νfi
3項に起因して、遷移周波数の符号は、重要である(予期される通り)ことに留意されたい。レベル|3>および|4>のAC偏移は、雑音誘起離調項としてMaster方程式の中に追加される必要があるであろう。それらを仮説上のレベル|d>および|e>にまとめることを介してモデル内に含まれる、全ての他のRydbergレベルの雑音誘起AC偏移は、重要ではない。
【0151】
上記の3つの方程式を比較すると、AC偏移は、減衰よりも計算することが困難であることが分かる。減衰に関しては、雑音帯域内にある周波数に伴う遷移のみが、影響を有し、雑音スペクトル密度は、これらの周波数においてのみ要求される。典型的には、レベル|3>または|4>を伴う、いくつかのみの(時として、全く存在しない場合もある)Rydberg-Rydberg遷移が、雑音帯域内にある。対照的に、雑音帯域の外側の周波数に伴う遷移を含む、レベル|3>または|4>を伴う全ての許容遷移が、原理上、上記の方程式では関連する。また、これらの遷移毎に、雑音帯域全体にわたる積分が、評価される必要がある。雑音帯域内の遷移に関して、極性のため、ある程度の配慮が、払われる必要がある。
【0152】
上記の方程式を評価するために、雑音スペクトル強度関数I
ν(ν)を要求する。多くのシナリオでは、ユーザは、スペクトル分析器を使用して、ホーンの中に注入される雑音のパワースペクトル密度関数dP/dνを測定することが可能であろう。教本において利用可能な伝搬方程式は、次いで、I
ν(ν)に関する方程式をもたらす。
【化33】
式中、dP/dνは、単位W/Hzにおいて、メートル単位のホーンからの距離xに挿入される。スペクトルパワーdP/dνは、ホーンの中に注入される総雑音パワーに積分するように正規化される(ワット単位で)。ホーンに関する線形利得g
L(ν)は、典型的には、ホーンの製造業者の仕様によって提供される。I
ν(ν)の結果は、次いで、雑音誘起減衰率およびACレベル偏移を求めるために、上記の方程式に入力される。
【0153】
上記の方程式の結果を用いて、本問題の4階Master方程式が、二次までの雑音の影響を含むように拡張され得る。Master方程式の状態空間は、個別のレベル|3>および|4>(その電場が測定されるべきコヒーレントマイクロ波信号によって結合されるレベル)からの雑音によって伝達される、正味集団ρ
ddおよびρ
eeを保持するであろう、仮説上の「レベル」|d>および|e>によって改訂される。改訂されたMaster方程式は、Rydberg状態|3>および|4>のレベル集団に関する付加的項を方程式内に含む。
【化34】
【0154】
レベル|3>および/または|4>を伴うコヒーレンスの減衰に関する方程式もまた、それらが、全てのR
3d、R
3e、およびR
34項を含むように改訂される必要がある。仮説上のレベル|d>および|e>に関する新しい方程式は、以下である。
【化35】
修正されたMaster方程式は、仮説上のレベルに関する任意のコヒーレンスに関する方程式を含まない(仮説上のレベルを伴うコヒーレンスは、常時、恒等ゼロである)。全てのこれらの項を伴う標準的4階Master方程式を改訂後、標準的方法を使用して解法されカプラレーザ周波数の関数として、コヒーレンスρ
12が求められ、これは、EITスペクトルを抽出するために必要とされる。
【0155】
モデルEITスペクトルは、例えば、使用される所与の原子蒸気およびセル温度に関するカプラレーザ離調α(ΔC)の関数として、媒体中のBeerの吸収係数を算出することによって、取得されることができる。これは、各速度クラスがカプラおよびプローブビームのその独自のドップラー偏移を有するため、セル内のMaxwell速度分布にわたる積分を伴うことに留意されたい。入力と出力プローブパワーの比率が、次いで、e-αLによって与えられ、式中、Lは、セル長である。全ての実験的に利用可能な入力および全ての雑音駆動遷移に関する算出された原子特有の行列要素<f|r|i>を使用後、モデル結果を調節するために残っている適合パラメータは存在しないことに留意されたい。これは、ブロードバンド雑音の影響下のRydberg-EIT-ATスペクトルの測定およびモデル化されたスペクトルを比較するとき、絶対無適合一致をもたらす。
強原子場相互作用領域を使用した連続周波数RF電場測定能力
【0156】
本用語が本明細書で使用されるように、用語「強原子場相互作用領域」は、2処理が観察されるスペクトル線分裂を説明するために十分となる、Autler-Townes領域のものを超える電場強度によって特徴付けられる、マイクロ波場を指す。強原子場相互作用領域内におけるRF電場を測定するために、Floquet状態は、高密度状態、全体を通して変動する微分動的双極子モーメント、および複数の擬交差を呈すると見なされる。そのような処理は、第1の時間本発明のある実施形態に従って初めて提案される。
プラズマ診断
【0157】
本発明の実施形態による、ある方法は、プラズマ場、粒子相互作用、およびパラメータの測定のための、プラズマ埋設粒子またはプラズマ成分上で電磁波誘起透明化を使用した、プラズマ診断と称され得る。大ダイナミックレンジを伴う高度に敏感な局所電場センサとしての役割を果たす、プラズマ埋設Rydberg原子のエネルギーレベル偏移の高分解能量子光学プローブとして、電磁波誘起透明化(EIT)または電磁波誘起吸収(EIA)を採用する、プラズマ場測定および診断のための方法が、説明される。
【0158】
EITベースのプラズマ診断の一実施形態が、ここで、
図23A-23Cを参照して説明される。EITのために好適なルビジウムまたは別の種のトレーサ粒子が、その発生の間、プラズマ2300の中に組み込まれる。トレーサ原子は、EITを使用して光学的に照会され、EITビーム2303は、示されるように、プラズマ内のトレーサ原子と空間的に重複される。関連原子レベル構造およびRydberg-EIT構成が、
図23Cにおいてルビジウム原子に関して図示され、これは、その周波数が5S1/2から5P3/2D2の遷移に伴って共鳴する、780nmプローブレーザビーム2320と、その周波数が5P3/2からRydberg状態の遷移の周囲で走査される、対向伝搬する480nmカプラビーム2322から成る。本実施例では、58S Rydberg状態が、選定される。EITビームは、重複され、ビームウェストに集束され、プラズマ2300内のEIT信号強度および所望の空間分解能を最適化する(典型的には、約100マイクロメートル)。プローブビーム伝送が、読取のために、光検出器2306上で検出される。カプラビームが、Rydberg状態共鳴を横断して走査されるにつれて、カプラ周波数が、5PからRydberg状態への共鳴に合致し、プローブビーム伝送内の低減が、検出されると、トレーサ原子は、プローブ光に対して透明になる。このように、Rydberg-EIT分光法が、プラズマ環境(場、粒子)を受けやすい、プラズマ内のトレーサ原子上で実施される。EITスペクトルから、プラズマ場および粒子に関する情報が、次いで、プラズマ誘起Rydberg線偏移および線形状変化から取得され、これは、高精度まで計算されることができる。
【0159】
低角運動量Rydberg状態の偏光率は、約n7としてスケーリングされ、nは、主量子数である。本強スケーリングは、カプラレーザ周波数を同調させ、測定のための所望のRydbergレベルを標的化することによって、診断のための広場測定および感度範囲をもたらす。
【0160】
プラズマ科学および用途では、プラズマは、プラズマの特性に直接影響を及ぼす、磁場を使用して閉じ込められることができる。さらに、プラズマの内側の電荷電流から生じる磁場自体が、着目される。EITプラズマ診断はまた、同一方法論に従って、プラズマ磁場の測定のために使用されることができる。磁場内のRydberg原子の計算されたスペクトルならびに組み合わせられた磁気および電場内のスペクトルは、例えば、磁気的に閉じ込められたプラズマ内のトレーサ原子から測定されたEITスペクトルが、その対応する電気および/または磁場上にマッピングされることを可能にする。
【0161】
図23Bを参照して説明される、診断の別の実施形態では、トレーサ原子群2330が、磁気光学的トラップ内に収集され、パルス状プッシャビーム2334を使用して、着目プラズマの中に注入される原子等、冷却原子源2332から発生される。同様に、高温原子または分子のパルス状ビームが、使用され得る。原子は、プラズマの中に播種され、そこで、それらは、プラズマおよびその環境と相互作用することができる。原子は、次いで、プラズマ内の原子群と空間的および時間的に重複される、Rydberg-EIT光学プローブ2336を使用して光学的に照会される。光学プローブ伝送も同様に、読取および分析のために、光検出器2306上で検出される。本構成では、プラズマを通して通過し、プラズマと相互作用するにつれた原子群からの衝突誘起損失を介して、または同様に、原子とプラズマ成分との間の相互作用から生じる電荷/分子の検出によって、プラズマ密度に関する付加的情報を提供する、マイクロチャネルプレート(MCP)等の粒子コレクタ/検出器2340もまた、統合され、原子群束を測定するために使用され得る。
原子高磁場センサおよび測定方法
【0162】
本発明のさらなる実施形態によると、高磁場感知および測定のための新しいプローブ技術の基礎となる、方法が、開示される。
【0163】
本明細書に説明される場測定方法は、小(約1cm直径またはそれ未満)ガラスセル内にカプセル化された低密度原子蒸気の原子分光法に基づく。原子ベースの場測定方法では、レーザビームが、Zeeman効果によって生じる磁気場誘起原子エネルギーレベル偏移を測定するために使用される。高度な実装ではまた、強場内でより高い感度に到達するために、高度に励起されたRydberg原子の磁場に対する強化された反磁性応答を利用することが提案される。数時間0.1Tを数倍上回る磁場は、Rydberg状態の超微細レベルを複数のZeemanサブレベルに分裂し、弱場(線形Zeeman)領域からPaschen-Back領域の中に遷移する。結果として生じる飽和吸収スペクトルは、著しくより拡散する、線を呈し、交差共鳴は、核の分離および電子スピンのため消失する。それらの間の絶対線位置および相対的分離は、優れた磁気場マーカである。
【0164】
図25Aに描写される、飽和分光法は、ドップラー効果によって生じる不均質線の広がりを排除するための周知の方法である。これは、原子および分子遷移ならびに外部場によって生じるその偏移についての正確な分光情報を取得することが要求される、科学および技術における広範囲の用途を有する。弱磁場内のアルカリ原子の飽和分光法では、
図25Aにおいて|2>および|2’>として記号的に示される、励起された状態の超微細レベルは、ドップラー幅未満によって分裂され、所与のドップラーによって広げられた吸収線のプローブレーザスペクトル内の複数の飽和ピークおよび交差共鳴につながる。教本の量子力学から公知のように、0.1Tの数倍を上回る磁場では、超微細レベルは、複数のZeemanサブレベルに分裂し、弱場(線形Zeeman)領域からPaschen-Back領域の中に遷移する。結果として生じる飽和吸収スペクトルは、著しくより拡散する、線を呈し、交差共鳴は、核の分離および電子スピンのため消失する。それらの間の絶対線位置および相対的分離は、優れた磁気場マーカである。
【0165】
強磁場は、本発明によると、
図24A-24Cに描写されるように、Rydbergレベルの標準的飽和分光法を使用してか、またはそうでなければ、
図25A-25Cに示されるように、3つのレベル原子構造内の2つの励起経路が、利用されるレーザビームのうちの1つの伝送に破壊的に干渉し、その増加を生産する、量子干渉プロセスを使用してかのいずれによって測定されてもよい。個別の場合では、
図24Aおよび
図25Aは、2および3レベルシステムのための個別の量子レベルスキームを示す一方、
図24Bおよび25Bは、原子蒸気セル106の中への電磁場の結合を示す。
図24Cは、0.7T磁場内のルビジウムの飽和スペクトルをプロットする。線位置およびその相対的分離は、分光セル内に存在する磁場を明らかにする。
【0166】
図25A-25Cに描写されるEITの分光方法では、3レベル原子構造内の2つの励起経路が、利用されるレーザビームのうちの1つの伝送に破壊的に干渉し、その増加を生産する、量子干渉プロセスが、使用される。結果として生じるEIT伝送窓は、原子エネルギーレベルおよび任意の外部場(ここでは、磁場)に対するその応答のための便宜的光学読取を提示する。Rydberg-EITカスケードスキームでは、透明化は、基底状態およびRydberg状態のコヒーレント重畳によって形成される。Rydberg-EITは、冷却原子ガスおよび
図1に描写されるもの等の室温蒸気セルの両方内に実装されている。
【0167】
ルビジウムの飽和およびEIT分光法に最も関連する原子状態は、ルビジウムの5S1/2基底、5P3/2励起、ならびにnS1/2、nD5/2、およびnD3/2 Rydberg状態である。着目磁場では、これら全て、超微細構造のPaschen-Back領域内にある。中間状態は、微細構造の(線形)Zeeman領域内にある一方、Rydberg状態は、典型的には、微細構造のPaschen-Back領域内にある。また、Rydberg状態は、典型的には、原子反磁性に起因して、強偏移を有する。
【0168】
その大サイズに起因して、Rydberg原子は、大反磁性偏移を被る。S型Rydberg状態に関して、Rydberg状態エネルギー偏移は、原子単位において、以下となる。
【化36】
式中、n、l、m
l、m
sは、それぞれ、主量子、角運動量、磁気軌道、およびスピン量子数である。S状態に関して、
【化37】
である。座標rおよびqは、Rydberg電子の球状座標(zに沿った磁場点)である。偏移は、スピンZeeman項(右辺の第1の項)と、反磁性項(右辺の第2の項)とから成る。個別の微分磁気モーメントは、磁場Bに対する負の導関数である。Bohrマグネトロンは、原子単位において1/2であって、半径方向行列要素は、n
4としてスケーリングされ、Bohrマグネトロン内の反磁性微分磁気モーメントは、n
4B/2であることに留意されたい。1テスラ場(原子単位において4.25×10
-6)では、反磁性は、nが約25より大きいとき、常磁性(スピン)微分双極子モーメントを超える。容易に到達可能である、n=50では、反磁性は、約16倍の常磁性微分双極子モーメントを超える。故に、強磁場では、Rydberg原子の反磁性効果は、小磁場変動に対する数桁の感度の増加をもたらす。量子カオス挙動の役割を含む、付加的側面は、Ma et al.の「Paschen-Back effects and Rydberg-state diamagnetism in vapor-cell electromagnetically induced transparency」
Phys.Rev.A.,vo.95,061804(R)(2017年6月27日)(参照することによって本明細書に組み込まれる)に議論される。
【0169】
本発明のある実施形態による、磁場属性を定量化する際のステップが、ここで、
図21を参照して説明される。第1のステップ2101では、強磁場内の所定のRydberg原子エネルギーレベルまたはRydberg-EITスペクトルが、計算される。FM変調測定光が、原子蒸気セル内で伝搬され(2103)、原子蒸気のスペクトル特徴が、測定される(2105)。測定されたスペクトル特徴は、計算されたスペクトル特徴と比較され(2107)、合致されたスペクトルが、識別される(2109)。これは、磁場属性を定量化するステップ(2111)を提供する。
原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器およびセンサ
【0170】
本発明の別の側面が、ここで、
図26Aおよび26Bを参照して説明される。
図26Aは、概して、数字2600によって指定される、ハイブリッド式原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器およびセンサを図式的に描写する。ハイブリッド式原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器およびセンサ2600は、場に敏感な原子状態の分光法を介して光学的に測定されるセル内電場への着目RF信号の変換のために、RF受信機または回路2608内に埋設される統合された電極2604を伴う、原子蒸気セル2602を採用する。原子媒介光学読取へのRF電気信号の直接変換によって、原子ベースの変換器は、パワーまたは電圧の高帯域幅(DC~THz)絶対(原子)測定を提供する。60Hz電気信号測定におけるそのような原子ベースの変換器の実証は
図26Bに示され、有利には、マイクロ波の傍受におけるアンテナの基礎において、RF受信機要素として採用され得る。測定および受信機の両方の場合において、原子セルの分光読取が、着目電気または電磁信号のパワー同等場を検出および判定するために使用される。
【0171】
図26Bは、6つの電圧レベルに関する、電極に印加される60Hz電気信号の原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器からの読取のプロットを示す。光学レーザは、場に敏感な原子Rydberg状態に近共鳴し、蒸気を通したプローブレーザの伝送が、検出される。場同等パワーが、次いで、検出された伝送信号と既知の原子応答の比較によって判定される。選定される電極および構造の詳細な幾何学形状ならびに使用される選定材料の電気および熱性質から、原子検出器読取が、RFパワー/電圧の原子較正のために使用されてもよい。
【0172】
概して、数字2700によって指定される、原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器およびセンサが、
図27Aおよび27Bを参照して説明される。原子ベースの光学RFパワー/電圧変換器およびセンサ2700は、統合された内部伝導性プレートを伴う、小円筒形セシウム蒸気セルから成る。伝導性プレートまたは電極は、4mm離間され、それぞれ、その側面のうちの一方において、セル本体に、他側において、窓に融合される、0.5mm厚のリングである。その結果、セルを通した総経路長は、5mmである。セルの内径および外径は、それぞれ、3.4mmおよび5mmである一方、電極リングの内径および外径は、それぞれ、2mmおよび5mmである。したがって、2つの0.7-mm厚のリング電極は、蒸気セル内に埋設され、それに対して外部電気接続が行われる。
【0173】
原子蒸気2701は、原子のRydberg状態への励起のために使用される、光学ビームに対して透明の窓2705と、発生されたEM場の抽出のために光学的に励起された原子媒体によって発生されたEM場に対して透明である、別の統合された窓2707とを伴う、原子蒸気セルコンパートメント2703内に含有される。EMフィルタ2710は、Rydberg-EITプローブならびにカプラビーム103および104の伝送を不可能にする。
【0174】
本発明の本明細書に説明される実施形態は、単に、例示的であるように意図され、変形例および修正が、当業者に明白となるであろう。全てのそのような変形例および修正は、任意の添付の請求項に定義されるような本発明の範囲内であるように意図される。
【0175】
本発明の主題に関連する付加的教示はまた、参照することによって本明細書に組み込まれる、以下の刊行物に見出され得る。
・ Anderson et al., “A vapor-cell atomic sensor for radio-frequency field detection using a polarization-selective field enhancement resonator,” Appl. Phys. Lett., vol. 113, 073501 (2018)
・ Simons et al., “Electromagnetically Induced Transparency (EIT) and Autler-Townes (AT) splitting in the presence of band-limited white Gaussian noise,” J. Appl. Phys., vol. 123, 203105 (2018).